Title
サトウキビメモ その1 サトウキビ蔗汁の固形物の蓄
積
Author(s)
儀間, 靖; 島袋, 正樹
Citation
沖縄農業, 34(2): 70-77
Issue Date
2000-06
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/1451
Rights
沖縄農業研究会
サトウキピメモその1
サトウキビ薦汁の固形物の蓄積
儀間婿・島袋正樹
(沖縄県農業試験場)
1.個体レベルの蕨汁中における固形物の謹瀬 サトウキビは,葉身の展開,節の形成茎の伸長等の 生長を盛んにしながら下位の節間の開し}中に固形物を 蓄積し上位節間に向かって順次固形物の蓄積を行って いる.図1に示すように,株出サトウキビ101Co310)の場 合,6.7月には生長点付近(_'二から第2節問,以下同じ) の節問のブリックスは5度,最下節(10と12節)の節 間は12度であった.8月には,第2節間は7度,最下節 は17度であった.9月には,第2節間は9度,最下節間 (第22節間)は19度であった.10月には第2fW澗の ブリックスは9度,最-F節間(第叫貫燗)は20度であ った.11月には,第2f1i燗は11度,最~Riif1i澗(第26 節間)は20.5度であった.12月には,第2fii澗は15.5 度,最下位fW澗(第3of1i澗)は22度であった.2月に は,第2節間は20度,最下位節間(第34節間Iは22 度,上|立6から12節間あたりで最も高川直を示した. 以上のように,サトウキビは節を形成しながら生長し, 成長期に1コ茎の下位の節間はブリックスが高く,上位の'-2月+12月-11月÷10月十9月
-.-8月十7月-6月+平均
24 22 20 18 642086420 1111 (ま)K心試う、 246810121416182022242628 節位 図1.サトウキビの藤茎節間のブリックスの経時的変化. 303234 ▲▲▲▲■■-〆..ヘ、-院-6-司巨-前-=L-R変~一心
1-.-Z二回=巧=-月--壇二一・一・
■=/>《ジブチつo//2/△
;1/
o/
▲4口/
07] 儀間・島袋:サトウキピメモその1サトウキビ薦汁の固形物の蓄積 節問は低くなっている.これは節の形成に伴って節間の 月齢と関係し,月齢が大きい下位節間ほどブリックスは 高くなっている.このように貯蔵器官である茎に下位節 間から糖を貯める現象がみられる.蕨汁中のブリックス 蓄積についても茎の上部から下部に向かって茎の生長 曲線と類似の曲線を描く時期がみられる.2月の成熟期 には茎上部の節間のブリックスが下部の節間の値より 高くなり,糖の蓄積からみた収穫適期は茎の上,中,下 部の節問のブリックスが同じになった時期ではなく,上 部節間が下部の節問よりやや高くなった時期と考えら れる. 図2には第Zf11澗,6節間,最下位の211澗および節 位毎の平均ブリックスを示した.第2f1i澗のブリックス は,6-7月には約4度,8~10月には約7度,11月には L1度,12月には15度,2月には20度と経時的に変化す る.第6節間のブリックスは,6月に約6度,7月にj約7 度,8月に約11度,9月に約13度,10月に約14度,11 月に約16度,12月に約18度,2月に約22度を示した. 最下位の節間は6月に約12度,7月に)約13度,8月に 約17度,9月に約19度,10月に約20度,11月,12月 および2月に約21度を示した.節位毎の平均ブリック スは,6月に約8度,7月に約9度,8月に約13度, -◆-第2師岡 +第6節間 ヨト最下位節間 ÷平均 24 22 加旧佃川枢⑪86420 (ま)K心訊「一m士幽 789101112 時期(月) 図2.サトウキビの節位の違いによる藤汁ブリックスの経時的変化. 2 6 9月に約15度,10月に約17度,11月に約19度,12 月に約19度,2月には約21度を示した.第2節間,第 6節間,最下位の節間および節間毎のブリックスの経時 的変化はいずれもS字曲線を描いた.収穫期の2月に は,最下位節間に比べ第6節間のブリックスが高くなり, 下位節間と上位節間が逆転し,最適な収穫条件となった. 2月のブリックスに対する比率は,12月は92%,11月 は90%,10月は82%,9月は72%,8月は62%,7月 は43%,6月は38%である.10月の生長後期までに収 穫期(2月)の約8割が蓄積されていることとなる.要 約すると,サトウキビは植物体を拡大しながら甫升中に 固形物を蓄積し,しかも,固形物の蓄積速度は登熟期, ■ ▲▲ 二二5
/ ̄ ̄-0-二//
/』〆/0---~/
//0-_/~ ̄/「
△一F/o/- ̄~/
■/ン■ ̄/「
--0-//
三一「ノー-「
△/
▼▼72 沖縄農業第34巻第2号(2000) 成熟期よりも伸長旺盛期に多くの糖蓄積を行うことが 明らかになった.登熟期以降は単なる固形物の蓄積では なく,砂糖への質的転換が行われている. 2気象と固形物の蓄積 図3に沖縄の気象要因と固形物の蓄積との関係を示 した.すでに述べたように,サトウキビは生長しながら 茎の下部の節問から糖を蓄積する.固形物の蓄積と気象 因子との密接な関係があることが経験的にも知られて いる.サトウキビは熱帯性の作物であるので高温条件下 で生育は旺盛となり,低温条件下で生育は緩慢となる. 糖の蓄積は,低温,乾燥等のストレスを受けることによ り促進される. 南大東島における気象因子とブリックスとの関係 を解析した.図4には10月の気象因子と12月のブリ ックスとの関係を示した.南大東島では,10月の気 象が特徴的で,10月の温度,湿度が低いと高ブリッ クス,温暖と湿潤になると低ブリックスとなることを 示している. 3品種,場所,作型の差による蕨汁の固形物の蓄積 図5には,株出サトウキビの生長と糖蓄積の模式図を 示した.昭和51/52~61厄年期までの10工場の第1汁 ブリックスのデータを用いた.ただし,10月は工場の 登熟調査データを用いた.この時代の栽培品種は主に NCo310である.10月のブリックスは14.3度,12月は 17.0度,2月は17.9度,3月は182度を示している.3 月のブリックスに対する各月の比率は,10月は79%, 12月は93%,2月は98%である.単位時間当たりのブ リックスの蓄積は,10月までに1.6~2.0度/月,10月 ~12月は0.45度/月,12月~3月は0.1度/月である.
茎収量は9トン/10a,総乾物重は4.5kg/in2,砂糖生産
量は1085kg/10aである.以上要するに,サトウキビは
初めに光合成器官(ソース)を拡大し,次に入れ物とし ての茎を拡大しながら薦汁中に固形物を蓄積していく と考えられる.予想外であったが,植物体の拡大が盛 体の形成(盛) 固形物の蓄積(少) (多湿十高捌 多湿 高温 乾燥(高温十乾燥)高温 体の形成(少~枯死) 固形物の蓄積(盛~枯死) a)生長期(5月~10月)における気象と体の形成、固形物の蓄積 体の形成(中) 固形物の蓄積(少) (多湿十暖温 多湿 暖温 低温(低温十乾燥)乾燥 体の形成沙) 固形物の蓄積(lilD b)登塾期~成熟期(10~4月)における気象と体の形成、固形物の 蓄積 図3サトウキビにおける沖縄の気象因子と固形物の蓄積.73 儀間・島袋:サトウキピメモその1サトウキビ蒔汁の固形物の蓄積 乾燥十低温 (高プリックス) たりの固形物の蓄積は,7月までに13度/月,8月~9 月は0.8度/月,9月~11月は0.3度/月,11月~1月 は065度/月であるNiF4のブリックスは,7月に16.1 度,9月に17.0度,11月に173度,1月に19.7度であ る.同品種の1月のブリックスに対する比率は,7月ま でに82%,9月までに86%,11月までに87%である. 単位月当たりの庶汁中への固形物の蓄積は,7月までは 136度,7月~9月は0.45度,9月~11月は0.15度,11 月~1月はL2度であるFl77のブリックスは,7月に 154度,9月に16.7度,11月に17.1度,1月に19.2度 である.同品種の1月のブリックスに対する比率は,7 月までに80%,9月までに87%,11月までに89%'で ある.単位月当たり蕨汁中の固形物の蓄積は,7月まで は1.54度,7月から11月までは0.65度,9月~11月は 0.2度,11月~1月はL05度である.以上の結果から, 宮古島の夏植サトウキビにおけるNCo310,mK67-L
NiF4,F177の蕨汁中の固形物の蓄積は,1月のブリック
スに比較して7月時点で1月の約80%に達し(図7), 伸長旺盛期の7月ではすでに1月に対する約80%の蒔 汁固形物を蓄積していることが明らかになった.また, 7月にブリックスの品種間差は9月,11月1月でも同様 な傾斜を示した,(図8).この結果は,図5の首里にお ける株出サトウキビでは10月で3月の約80%の蓄積で あった結果と比較して宮古の夏植サトウキビは7月の 時点ですでに80%に達している.この違いは,①夏植 と株出の違い,②収穫時期と場所の違い(首里の株出は 3月収穫であるが宮古の夏植は1月収穫のデータであり, 宮古の場合,3月までブリックスが上昇する),③士壌 の違い(ジャガルの違いと島尻マージ)等,があるので 直接的には比較できない.また,①夏植は株出に比較し て成熟が早い,②島尻マージはジヤガルに比較して轍桑 しやすく,夏期に蒔汁の固形物を蓄積しやすい竿,のた めに7月(宮古)と10月(首里)の差が発生している ものと考えられる.いずれにしても,収穫期を100%と 乾燥 低温 温暖(低ブリックス)湿潤 温暖十湿潤 図4.南大東島における10月の気象と12月のプリツク(1975). んな10月までの固形物の蓄積は2.0度/月で,登熟期 (05度/月)と成熟期(01度/月)に比較して大きい 10月までの植物体の拡大が盛んな時期と同じ時期に, 糖の蓄積からみても蓄積量が大きいことから「基本糖蓄 積期(約80%の蓄積罰」と呼ぶことができる.残りの 約20%を登熟期,成熟期に蓄積しながら固形物の中で 砂糖の部分が多くなるように変換していく.図6には, 宮古における夏植サトウキビの品種BUの固形物蓄積過 程を示している.調査は宮古島でできるだけ隣接する夏 植サトウキビ畑を10箇所選び出し,NCo310,IRK67-L NiF4,Fl77の4品種について7月,9月,11月,2月に 調査した.NCo310のブリックスは,7月に132度,9月 に143度,11月に155度,1月に169度であった.同品 種の1月のブリックスに対する各月の比率は,7月まで に78%,9月までに85%,11月までに85%であった. 単位月当たりのブリックス蓄積は,7月までは132度/ 月,7月~9月は0.55度/月,9月~11月は0.6度/月, 11月~1月は0.7度/月であった.IRK67-lのブリック スは,7月に13.6度,9月に15.2度,11月に158度,1 月に17.1度である.同品種の1月のブリックスに対す る各月の比率は,7月までに80%,9月までに89%,11 月までに92%の固形物を蕨汁中に蓄積する.単位月当J』
く!ごiif>
|⑤
剣都亡く
旨
今㈱
厩
侭
LAL5 MaxLAI:7-9 暮議瓢絲識三味歌い叩(こき)錫
鬘)
霊
中耕 施肥 培土 HzO 「周禰37審霜-面7百] 固形物蓄積0.3度/= 固形物蓄積2.o度/= 固形物蓄積0.45度/二 1.1~1.3ton/月/10a 萌芽 広大 貯蔵器官の拡大 哩期(7%のj多〃 ) 豊熟期(14%の固形物 積) 萌芽期および分けつ期伸長初期伸長旺盛薊 4-5月5月一9月 図5.株出サトウキビの生長、糖蓄積模式図 注)昭和51/52年~61年/62年期の10工場の平均データ品種の固形物蓄積(宮古の例) NCO310(晩熟性) シンクの拡大(中) 固形物蓄積(中) ソングの皿X大U2 司形物蓄稻(農感 植付 7~9月 分けつ期 茎数確保 【累積%) BxO6度/月 7%の上昇 Bx14.3 (85%)】 しり 3%0 妬0 、P、IE 醗囲・帥聴函ヰテ可紮両〆印印S】ヰテq端、無手S国想意S嚇鐡 1(晩熟性) IRK67 シンクの拡大(少)
圖形誓壽鮒、’
ソングの正大(囲 司升ら物蓄積(晶囲 'ンク疵うぐ(巌笠 固形物蓄積(I の吻西 眸瞠昇 日 一= Bxl58 k(92%)) BX171 L(100%) BxO65/月 【u5B n“卜 8%上昇 《Ⅱ NiF4 シンク拡大(最盛 固形物蓄 シンクの拡大(少) 固形物蓄積(中、 質的転換) DmKフミ(盗 問リドノ物1蓄荊 ムフ〔 勿認 更/ 昇 出原。 BX161 Y829p X19.7 (1001 BxL2度/月 13%の上昇 BxO45度/月 4%の上昇 胡間灰 F177(中熟性) ) 'ンク正大(鍾笠 司形物蓄積(少1 固歌 園閉 選 囲篦 20 Bx19.2 《100% BXl.。qBLJ 3o%の上屡 羽間内での兜 (7-9月) (1 1月) 1月) 5月 12-3月 7月 9月 基 積 熟期12月~3月 本 糖 期 10 熟期(10月~1 UI H丁 10 4-5 5-8 9 12 1-3月 10 11 図6.サトウキビ品種別の庶汁中の固形物蓄積過程(宮古、夏植) ヨい76 沖縄農業第34巻第2号(2000) -←NCo310+IRK67-1-NiF4一F177 0000000000 987654321 K心試つ、 11-1 ~77-99-11 時期(月) 図7.夏植サトウキビ品種の単位期間当りの庶汁の固形蓄積率. -←IRK67-1ヨトNiF4-F177司卜 20 8 6 4 1 1 1 (K心訊「一・m)潔豚脚8辱聖胴』 2 1 911 時期(月) 図8.夏植サトウキビにおける品種別の固形物の蓄積. 7
0/
LO ▲口、
、、。
、、
、
、、.
、、、
、L
一」 ̄-=一一一=
77 儀間・島袋:サトウキピメモその1サトウキビ薦汁の固形物の蓄積 して,10月までには80%のサトウキビ固形物が蓄積さ れると考えられる.図8から明らかなように,サトウキ ビの収穫における蕨汁中の固形物含有率の高さは生育 旺盛期ですでに品種間差が出ていることを示している. 表1には,夏植サトウキビ品種におけるブリックスの 変化を示した.7月と1月のブリックス差は,NiF4は 3.6度,F177は38度,IRK67-lは40度,Nco310 は3.7度である.7月から1月までのブリッスの上昇は, 3.6~4.0の範囲にあっていずれの品種でも類似の値を 示した.7月時点でのブリックスの差がそをのまま収穫 時期まで続き,品種間差はすでに7月時点で決定される. このことより,早期高ブリックス品種を選抜する意義が 再確認出来たと考えられる.また,7月時点と1月時点 でのブリックスは品種間で大差なかった. 4土壌特性とブリックス 表Zには,同一圃場におけるサトウキビのブリックス と土壌化学性との相関関係を示した.調査は宮古の夏植 サトウキビ圃場から無作為に10株をサンプリングして, 個体毎に士壌表面から深さ10cmの士壌,20-30cmの 土壌をサンプリングして分析した.ブリックスについて は,全茎を調査して1株の平均値を用いた.ブリックス とほとんどの化学成分が負の相関関係を示し,燐酸がわ ずかに正の方向への傾向を示したが統計的に有意差は 認められなかった. 表1.サトウキビ品種における夏から冬にかけてのブリックスの変化(夏植) 月 NiF4 Fl77 1RK67-1 NCo310 16.1G.6) 17.0(2.7) 173(2.4) 19.7(0) 月 月(月1月 7-911 15.46.8) 16.7(2.5) 17.1(2.1) 192(O) 13.101.0) 152(L,) 15.8(13) 17.1(O) 132(3.7) 14.3(36) 155(1.4) 16.叩) 注:()内は1月に対する差 表2.サトウキビのブリックスと土壌化学性との相関関係. 腐食 NO3-N P205 K205 DU 20~30 Sa) 10 Sm D 20~30 S0 l D 20~30 S0 l D 20~30 -0.5ONS-0.65* 0.58NS‐0.36NS -0.83**‐0.53NS -0.87**‐0.85** 注:。)は10cmの深さの土壌、b)は20~30cmの深さの士壌からサンプリングした. *は1%レベルで有意、**は1%レベルで有意、NSは有意でない