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ICTを活用した睡眠の大切さに気付かせるための保健授業の開発-小学3年生および4年生を対象として-

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1 研究の背景と目的 新しい時代の小中学校が目指すべき教育の姿につい て,中央審議会の初等中等教育分科会(2020)は,「『令 和の日本型学校教育』の構築を目指して」と題し,議論 の中間まとめを公表した。そこでは,人口知能(AI) やビッグデータの活用などで変化する社会を踏まえ, ICT(情報通信技術)を活用し,教育ですべての子供た ちの可能性を引き出すことを求めている。また,AI技 術が高度に発達する Society5.0 時代こそ,教師の対面 指導や児童生徒の学び合いを高める手段として ICT を 活用することにより,個別最適な学びと協働的な学びを 実現することが必要であると述べられている。教科指導 における ICT 活用の考え方として,学習指導要領総則 編第 2 章「教育課程の基準」(2018)によれば,個別指 導やグループ別指導,教師の協力的指導等の指導方法や 指導体制の工夫改善とともに,教育効果が期待できる指 導方法として取り上げられている。現在学校現場では, デジタル教科書の活用は認められるが,単に視聴させる だけでは児童の学習を充実させることはできない。そこ で,子どもが書き込みをしたりすることができるデジタ ル教材を開発することで,個々の子どもの考えをリアル タイムで共有することができ,より充実した協働学習が 展開できるのではないかと考えられる。特に体育科の保 健領域の授業においては,他者の多様な考えを共有した り,思考し判断し表現する場面や自分のデータなどを客 観的に評価したりする時に活用することができると考え られる。 ところで,子どもの生活リズム夜型化(日本保健健康 協議会平成 22 年度幼児健康度調査委員会,2011)に 加え,睡眠時間の短縮化(日本学校保健会,2014)が 深刻な社会問題となっている。睡眠を中心とした生活習 慣と子供の自立等との関係性に関する調査の結果(文部 科学省,2014)によれば,学校段階が上がるにつれて 就寝時間が遅くなっており,小学生は 49.2%が午前 10 時までに就寝しているが,中学生では 22.0%が 0 時以 降に就寝しており,学校段階が上がるにつれて就寝時間 が遅かったり睡眠不足を感じたりする子どもの割合が増 える傾向が見られる。寝る直前まで各種の情報機器(テ レビ,ゲーム,携帯・スマホ,パソコン等)に接するこ とがある子どもほど,朝にふとんから出るのがつらいと 感じることがあると回答する割合が高いという結果の報 告がある。夜更かし・睡眠不足で生体リズムが狂うと, 知的・情緒的発育の遅れ,自律神経系の失調や低体温に よる朝の体調不調,そして不登校や引きこもり,意欲の 低下や肥満などの危険性が高まる(大川,2010)こと からも,睡眠教育によって心身の健康を保持増進してい くことが必要であると考えられる 。睡眠教育を実施した 実践研究については,辻・佐藤らの研究グループが精力 的に報告しており(辻ほか,2008;佐藤ほか,2009; 辻ほか,2010;辻,2011;辻ほか,2013; 辻,2014), 小学校から高校までの学習教材が開発されている。また, 指導者用の睡眠に関わる解説書(辻ほか,2010)や DVD(辻,2011)を提供することで,各校園所での睡 眠教育の実践化を支援しようとする活動もみられる。一 方,田村ほか(2012)の小学生に対する睡眠教育の効 果を検討した研究によれば,生活習慣や睡眠習慣に加え て日中の状態に改善が示されなかったことが報告されて いる。この報告から,生活に生かす睡眠教育の難しさと ともに,学校の実態とニーズに応じた方法論の提案が必 要であると考えられる。しかしその後,睡眠教育の現状 や課題についての研究報告は充分ではなく,少ないのが 現状である。さらに,ICT を活用した睡眠教育の実践報 告は筆者の管見の限り見当たらない。 そこで本研究では,小学校体育科において ICT を活 用した睡眠の大切さに気付かせるための保健授業の開発 を行い,その効果について検討することを目的とした。 2 方法 2.1 対象 いずれの授業もS県下O小学校に在籍する第 3 学年 1 学級の児童 29 名および第 4 学年 1 学級の児童 30 名を 対象とした。どちらの学年の授業実践においても日本睡

−小学 3 年生および 4 年生を対象として−

Utilizing ICT to Develop Health Classes Intended for Educating

Third- and Fourth-Graders on the Importance of Sleep

山田 淳子

Junko YAMADA

滋賀大学教育学部

  延浩

Nobuhiro TSUJI

滋賀大学大学院教育学研究科 < キーワード> ICT 活用 睡眠教育 体育科「保健領域」 小学校中学年

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眠教育機構 睡眠健康指導士上級者の資格をもつ大学教 員(以下,授業者と示す)が指導した。 倫理的配慮として,対象校の学校長と各学級担任(授 業担当者)に対して研究内容を説明し,調査等の許可を 得た。また,各学級担任から保護者に研究内容について 文書を配布し,研究協力に対する同意を得た。 2.2 ICT 活用について 研究対象校の所属するK市では 2009 年度より ICT 機器を積極的に導入し,先進的な取り組みを行っている。 各学校にタブレット PC(Windows 版)を配備し(K 市全 14 校で 3,360 台)各校では,1 人 1 台のタブレッ ト PC を使用した学習が展開されている。なお本授業実 践では,ミライシード(Benesse)のタブレット学習ソ フト「オクリンク」というアプリケーションを活用した。 また,使用した学習教材は辻ら(2009)が開発したも のをデータ化して児童の説明資料として使用した。また, 滋賀大学睡眠教育プロジェクト作成「みんなのすいみん」 (小学生用)(2014)で作成されたワークシートに使用 されている絵図をデジタル教材として使用した。 2.3 授業実践の概要 2.3.1 第 3 学年での実践 第 3 学年体育科保健領域「健康な生活」の発展学習 として「睡眠」の学習を 1 単位時間行った。図 1 は第 3 学年の睡眠教育の学習指導案を示している。導入では, 授業日の朝の元気度を「◎,〇,△」の記号で表し,学 級全員の元気度を LIVE モニタリング機能で共有した。 元気のない子どもの一つの理由が睡眠であることに気づ かせた後,「元気な 1 日をスタートさせるにはどんなこ とが大事なんだろうか」という本時のめあてが提示され た。展開では,タブレットを使用して個々に「わたしの 元気さリズムグラフ」(図 2)を作成させた。授業者は 常に LIVE モニタリング機能を使用しながら子どもたち の活動状況を把握していた。学級全員のグラフが完成し たところで,電子黒板に映し出される一覧表示を見なが ら授業者と子どもたちでグラフを分類していった。さら に,分類したグラフの特徴や自分の作成したグラフを紹 介するなどの活動が行われた。その後,授業者が理想的 な昼や夜の体の状態やリズムの変化について資料「元気 さグラフ」を電子黒板に提示し説明を加えた。また ,デ ジタル動画「あさひをあびてスイッチオン」(睡眠教育 に 関 す る 教 員 研 修 モ デ ル カ リ キ ュ ラ ム 開 発 委 員 会, 2011)を視聴させた。まとめでは,子どもたちに本時 の学びの成果をカードに「◎,〇,△」の記号で表記さ せた。また,LIVE モニタリング機能で授業者や子ども たちが学習の成果を確認した後,子どもに対してこれか 2.3.2 第 4 学年での実践 第 4 学年体育科保健領域「体の発育・発達」の発展 学習として「睡眠」の学習を 1 単位時間行った。図 3 は第 4 学年の睡眠教育の学習指導案を示している。導 入では就寝時刻の実態や睡眠に関することわざ「寝る子 は育つ」についての考えを話し合わせた後,「なぜ『ね る子は育つ』のだろうか」という本時のめあてが提示さ れた。展開では,睡眠の種類(レム睡眠・ノンレム睡眠) やその特徴について確認した後,「眠りの周期」につい ての資料(図 4)が電子黒板に提示され,その資料が子 どもたちのタブレットに転送された。子どもたちはその 資料から気づいたことをカードに書き,「提出ボックス」 に提出をした。授業者は常に LIVE モニタリング機能を 使用しながら子どもたちの活動状況を把握していた。学 級全員の気づきがカードで提出されると,そのカードを もとに子どもたちは自分の気づきについて仲間との意見 交流が行われた。その後,授業者からの資料「すいみん と成長ホルモン」を使った説明とデジタル動画「あさひ をあびてスイッチオン」(睡眠教育に関する教員研修モ デルカリキュラム開発委員会,2011)を視聴することで, 睡眠の働きについての理解を深めた。まとめでは,心地 よく眠るためにはどんなことが大事かを話し合った後, 本時の学びを通してわかったことや自分がこれから気を 付けたいことをカードに記入し「提出 BOX」に提出し たり,発表をしたりした。 2.4 学習成果の測定と評価 学習者による評価と観察者による評価を実施した。学 習者による評価は授業実践後各学級の児童に対して,「す いみん授業に対する調査票(小学校)」を授業終了後に 実施した。そこでは「授業の楽しさ」,「内容の理解度」, 「生活への活用度」,「教材の適切度」の 4 項目について 質問し,「大いにある」,「まあまあある」,「あまりない」, 「ほどんどない」の 4 つの選択肢から回答させた。また, ビデオカメラを用いて各授業を撮影し,そのデータをも とに授業分析を行った。観察者による評価については, 参観者に「睡眠の授業研修に関する調査」を授業終了後 に実施するとともに,授業者に対しても同様の調査票で の評価を行った。 3 結果 3.1 第 3 学年における授業実践 導入時の「朝の元気さ」を交流する活動では,子ども たちはタブレットを使用して「◎,〇,△」を瞬時に書 き「提出 BOX」に提出をした。子どもたちからは,「朝 は自分が好きなことができるから,元気で花丸にした」, 「(元気度が△の児童)いつも起きた時,たおれそうぐら 滋賀大学教育実践研究論集 第 3 巻 2021

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いる友だちのグラフを参考にして表現してよいことを伝 えていた。「元気グラフ」は,算数科で既習済の棒グラ フに似た表現方法であったので,全員がグラフを仕上げ ることができた。授業者は,電子黒板の一覧表示を随時 確認し,子どもたちの活動状況を把握していた。全員の グラフが完成すると,一覧表示を見ながら授業者と子ど もたちでグラフを分類した。子どもたちが作成したグラ フを分類すると,全てが塗られているグラフ,上下の変 動があるグラフ,右上がりのグラフ,さらに山型のグラ フがあった。まず,授業者は全てが塗られているグラフ と右上がりのグラフでその違いについて児童からの意見 を求めた。右上がりのグラフについて「朝は元気じゃな い」,「朝は全く食欲ないわ」,「朝はまだ眠たいから元気 でないけど昼になると元気になっている」,「朝は体がだ るいけど登校するとだんだん元気になってくる」という 発言があった。次に山型のグラフをみて「朝起きた時に はとても眠たくて朝ごはんでちょっと元気になった。登 校 して長休みも元気になり,やっと勉強が終わってうれ しくて,給食はおいしくて元気が出て,夜ご飯はおいし いから,そして寝るときはつかれて元気がない。」,「朝 起きるときと眠る前はパワーダウンしている」,「朝は目 さらに,授業者が理想的な代謝のリズムの資料グラフを 見せながら,昼の体と夜の体の違い,メラトニンの働き, 朝の光が体内時計をリセットすることについて説明を加 えた。まとめとして,動画を視聴した後の感想では「早 寝早起きが大事だと思った」「おはようちゃんは,朝日 を浴びていたから元気いっぱいだった」という発言がみ られた。振り返りの場面では,導入時と同様に本時の学 びを「◎,〇,△」で評価したカードを提出させて,一 覧表示によって授業者と子どもたちが本時の学習の成果 を確認した。子どもたちからは「今日の学びは花丸です。 なぜかというと,メラトニンは眠らせるパワーがあるこ ととか新しいことがいっぱいわかったからです。」,「太 陽の光をあびると元気になれることがわかった」,「ぐっ すり眠れるように夜にゲームをしないように気を付け る」という発言があった。また学習カードには「みんな のグラフをみて振り返れたのでよかった」,「グラフをつ くることが楽しかった」,「朝起きたら,カーテンを開け て太陽の光を浴びるようにしたい」「元気になるために は早く寝たらいいだけじゃなく,太陽の光をあびること も大事だということがわかった」という記述がみられた。 第 3 学年の授業実践における学習者評価(表 1)では,                       図 2 「わたしの元気さリズムグラフ」 滋賀大学教育実践研究論集 第 3 巻 2021

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ると,授業の楽しさ(93%),生活への活用度および教 材の適切度(86%),内容の理解度(83%)の順で,い ずれにおいても 80%以上の児童が「ある」と評価した。 主に ICT 活用による本授業の展開についての授業者の 評価からは「描いたグラフが共有できたり,グループ分 けしたりする活動を通して話し合える活動ができてよ かった」という成果が書かれていた。観察者からは「画 面共有によって,子どもの同志の意見交流ができたこと がよかった。一部共有や全体共有をうまく使い分けるこ とで学びを深めることができる。」という意見があった。 3.2 第 4 学年における授業実践 導入時には,「なぜ寝る子は育つのか」という問いか ら授業がスタートした。その後,授業者から眠りにはノ ンレム睡眠とレム睡眠の 2 種類あることを子どもたち に説明した。展開では,ねむりの周期のついての資料の 読み取りを行った。資料が各自のタブレットに転送され それを見ながら,カードに気づいたことを書いていった。 授業者は,電子黒板の一覧表示を随時確認し,子どもた ちの活動状況を把握していた。意見交流の活動では,「夜 はノンレムがたくさんある朝はレムが多くなる」,「ノン レムとレムが交互に出てきている」,「夜中は眠りが深い, 4 ぐらいまでいっているから,朝は浅い」,「ノンレムと レムが 1 時間ごとにでてきている」という発言がみら れた。発言の最中には「ぼくいっしょ!」,「わかる」,「えっ どこ?」という発言がみられ,その都度授業者がグラフ るようにしたい」,「これからは早く寝て,すっきりと起 きたいです」,「これからは 9 時までに寝られるように 頑張ります」,という発言がみられた。学習カードからは, 「眠ると頭の中を整理してくれると知ったからはやく寝 ようと思った」,「発表が聞きとれなくても電子黒板で友 だちの意見が書いてあって助かった」,「ねる子は育つが なんで?と思っていたけれどそれがわかった」という記 述がみられた。 第 4 学年の授業実践における学習者評価(表 2)では, 授業の楽しさ,授業の理解度,生活への活用度,教材の 適切度において「大いにある」の割合が 57%から 73% で最も高かった。「大いにある」と「まあまあある」を 合わせると,授業の楽しさ(97%),授業の理解度(93%), 生活への活用度(100%),教材の適切度(93%)とい ずれの項目においても 90%以上の児童が「ある」と評 価した。 主に ICT 活用による本授業の展開についての授業者 の評価からは「電子黒板を使って絵図を見せながら授業 を進めていくことは,児童とのやりとりもやりやすかっ た。しかし,タブレットで文字を書く活動は時間がかか るので,従来通りワークシートに書かせる等,アナログ とデジタルをうまく使い分けたい。」という成果と課題 が書かれていた。観察者からは「教師側から提示する絵 図については,手元で見やすくたいへん有効であった。 文字を書くという活動は難しい。ワークシートに鉛筆で 書いたプリントを画像で送ってみんなで共有するという 図 4 「眠りの周期」についての資料 滋賀大学教育実践研究論集 第 3 巻 2021

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4 考察 4.1 第 3 学年の授業実践における ICT 活用の効果 学習者評価から,授業の楽しさ,授業の理解度,生活 への活用度,教材の適切度の全項目において 80%以上 の子どもが「ある」と評価した。これはいずれの項目に おいても 90%以上の子どもたちが「ある」と評価して いる辻ほか(2009)の実践報告と比べるとやや劣るが, 一定の効果があったと考えられる。「元気さリズムグラ フ」における子どもたちの発表内容については,辻ほか (2009)の報告と概ね変わらなかった。しかし,本実践 での学習カードから子どもたちは,一覧表示でみんなの グラフを共有し,話し合っていく活動の価値に気づいて いると考えられ,それは ICT 活用の成果であると考え られる。本実践での新しい発見として「私と同じような グラフの友だちがいて安心した」「動画を見て,あっそ うかと思えてわかりやすかった」「毎日わたしはあさひ ちゃんのピカピカビームをあびているから元気であるこ とがわかった」という記述がみられた。このことより, 一覧表示により意見の多様性に気づいたり,動画視聴に より昼や夜の体の状態やどうような生活が望ましいかに ついての知識が整理できたりするなど,ICT 活用の効果 がみられた。また,「夜遅くまでテレビやゲームをして いたらぐっすりねむれないから夜はしないようにする」 という記述がみられた。このことから,ICT 機器の活用 と同時に子どもたちへ望ましい ICT 機器との付き合い 方についてもこの実践を通して子どもに学ばせることが できたことが成果であると考えらえる。 4.2 第 4 学年の授業実践における ICT 活用の効果 学習者評価の授業の楽しさ,授業の理解度,生活への 活用度,教材の適切度の全項目において 90%以上の子 どもが「ある」と評価し,これは辻ほか(2009)の実 践報告と同様の結果であった。授業の楽しさの理由は「タ ブレットを使って学習ができたから」,「睡眠のくわしい ひみつがわかったから」,「体の仕組みが不思議でおもし ろかった」という記述がみられたことより,子どもたち は睡眠の学習に興味関心を抱きながら授業に参加できた ことが伺える。さらに ICT 機器を使うことそのものが 子どもたちの学ぶ意欲の源となっていることが考えられ た。学習カードに「友だちの発言で聞き取りにくかった ときに電子黒板に書いてわかりやすかった」,「絵がカ ラーで見やすかった」と記述されていたことより,ICT 活用によって子ども授業の理解度を支援することができ ると考えられた。ただカードに文字を書くという活動は, 時間がかかったり,一覧表示の際に読み取りにくかった りするので,カードにはキーワードを書き,詳細は発表 するという具合に使い分けをする必要があると考えられ た。 4.3 睡眠教育と ICT 活用について 保健学習と睡眠について本実践における授業者および 観察者(6 名)に保健学習として,「睡眠を重点的に取 り上げる意義はあるかどうか」を聞いたところ,全員が 睡眠を重点的にとりあげることに対して「大変ある」と 回答した。その理由として「睡眠は毎日のことだから」, 「ゲームなどによって生活リズムがくずれている子ども が多いから」,「個人差はあるが寝る時間が遅くなってき ている」,「体の成長とも関わり,食事や運動は取り上げ て学ぶことが多いが睡眠は少なく感じているので,しっ かりとやるべき」「早寝早起き朝ごはんの言葉が出回っ ているが,なぜというところを教えていくべきだ」とい う記述回答がみられ,睡眠教育の意義は理解されている ことが伺えた。しかし,現行の保健の教科書には睡眠に 対する科学的知見がほとんどなかったり,年に 1 単位 時間程度しか授業時間がとれなかったりする実情から, 睡眠教育は教員の経験による曖昧な指導になっているこ 表 1 第 3 学年の授業実践における学習者評価 ኱ ኱ ࠸ ࡟ ࠶ ࡿ ࡲ ࠶ ࡲ ࠶ ࠶ ࡿ ࠶ ࡲ ࡾ ࡞ ࠸ ࡯ ࡜ ࢇ ࡝ ࡞ ࠸ 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 Q   ᤵ ᴗ ࡢ ᴦ ࡋ ࡉ   㸦     㸧   㸦     㸧     㸧  㸦     㸧 ᤵ ᴗ ࡢ ⌮ ゎ ᗘ   㸦     㸧   㸦     㸧     㸧  㸦     㸧 ⏕ ά ࡬ ࡢ ά ⏝ ᗘ   㸦     㸧   㸦     㸧     㸧  㸦     㸧 ᩍ ᮦ ࡢ 㐺 ษ ᗘ   㸦     㸧   㸦     㸧     㸧  㸦     㸧 ⾲㸯 ➨㸱Ꮫᖺࡢᤵᴗᐇ㊶࡟࠾ࡅࡿᏛ⩦⪅ホ౯ ኱ ࠸ ࡟ ࠶ ࡿ ࡲ ࠶ ࡲ ࠶ ࠶ ࡿ ࠶ ࡲ ࡾ ࡞ ࠸ ࡯ ࡜ ࢇ ࡝ ࡞ ࠸ 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 Q   ᤵ ᴗ ࡢ ᴦ ࡋ ࡉ  㸦   㸧  㸦   㸧 㸦  㸧  㸦   㸧 ᤵ ᴗ ࡢ ⌮ ゎ ᗘ  㸦   㸧  㸦   㸧 㸦  㸧  㸦   㸧 ⏕ ά ࡬ ࡢ ά ⏝ ᗘ  㸦   㸧  㸦   㸧 㸦  㸧  㸦   㸧 ᩍ ᮦ ࡢ 㐺 ษ ᗘ  㸦   㸧  㸦   㸧 㸦  㸧  㸦   㸧 ⾲㸰 ➨㸲Ꮫᖺࡢᤵᴗᐇ㊶࡟࠾ࡅࡿᏛ⩦⪅ホ౯表 2 第 4 学年の授業実践における学習者評価 ኱ ࠸ ࡟ ࠶ ࡿ ࡲ ࠶ ࡲ ࠶ ࠶ ࡿ ࠶ ࡲ ࡾ ࡞ ࠸ ࡯ ࡜ ࢇ ࡝ ࡞ ࠸ 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 Q   ᤵ ᴗ ࡢ ᴦ ࡋ ࡉ   㸦     㸧   㸦     㸧     㸧  㸦     㸧 ᤵ ᴗ ࡢ ⌮ ゎ ᗘ   㸦     㸧   㸦     㸧     㸧  㸦     㸧 ⏕ ά ࡬ ࡢ ά ⏝ ᗘ   㸦     㸧   㸦     㸧     㸧  㸦     㸧 ᩍ ᮦ ࡢ 㐺 ษ ᗘ   㸦     㸧   㸦     㸧     㸧  㸦     㸧 ⾲㸯 ➨㸱Ꮫᖺࡢᤵᴗᐇ㊶࡟࠾ࡅࡿᏛ⩦⪅ホ౯ ኱ ࠸ ࡟ ࠶ ࡿ ࡲ ࠶ ࡲ ࠶ ࠶ ࡿ ࠶ ࡲ ࡾ ࡞ ࠸ ࡯ ࡜ ࢇ ࡝ ࡞ ࠸ 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 㹬 㸦 㸣 㸧 Q   ᤵ ᴗ ࡢ ᴦ ࡋ ࡉ  㸦   㸧  㸦   㸧 㸦  㸧  㸦   㸧 ᤵ ᴗ ࡢ ⌮ ゎ ᗘ  㸦   㸧  㸦   㸧 㸦  㸧  㸦   㸧 ⏕ ά ࡬ ࡢ ά ⏝ ᗘ  㸦   㸧  㸦   㸧 㸦  㸧  㸦   㸧 ᩍ ᮦ ࡢ 㐺 ษ ᗘ  㸦   㸧  㸦   㸧 㸦  㸧  㸦   㸧 ⾲㸰 ➨㸲Ꮫᖺࡢᤵᴗᐇ㊶࡟࠾ࡅࡿᏛ⩦⪅ホ౯

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とが予測される。「このような教材があることを初めて 知った」,「ICT を使ってできる,より効果のある教材を 作成することが必要である」,「睡眠教育で知識を教える ために根拠となる情報を紹介することが大事である」と の意見により,今後小学校での発達段階に応じた科学的 知見が学習していけるようなデジタル教材の開発が必要 であると考えられる。また,「授業前,授業後の実際の 睡眠時間はどうだったかなどの記録をタブレットに残し ておくことで生活にいかしていける気がする」,「今回学 習した内容も,子どもは時間が経つにつれ睡眠に対する 意識が薄れていくと思うので,睡眠に対する意識を継続 的に持たせるように声かけなどをすることが必要であ る」との意見があった。これらのことより,ICT 活用と して,デジタルポートフォリオを作成し学習したカード を保存したり,過去の学習履歴を引き出し自らの生活を 振り返ったりする活動を取り入れることで,自らの健康 についての興味や関心を高め,健康についての課題の解 決に向けて考察し判断したりするなどの主体的な学びを 促すことができると考えられる。 5 結論 本研究では,小学校体育科において ICT を活用した 睡眠の大切さに気付かせるための保健授業の開発を行 い,その効果について検討することを目的とした。 得られた結果の概要は以下の通りである。 1 .授業実践における学習者評価から ,授業の楽しさ, 授業の理解度,生活への活用度,教材の適切度の全項 目において第 3 学年の授業実践では 80%以上の子ど もが,第 4 学年の授業実践では 90%以上の子どもが 「ある」と評価した。 2 .ICT 活用においては,電子黒板への一覧表示によっ て,子どもたちは作成したグラフや意見を共有したり, 多様性に気づいたりすることができた。また,授業中 や授業後に友だちの意見等の再確認が可能となり,授 業の理解度を高めていけることが示唆された。 3 .小学校教員は睡眠教育の意義を十分に理解してお り,今後子どもたちが睡眠教育を通して自己の健康に ついて興味関心がもてるような効果的な提示資料やデ ジタル教材の開発が必要である。 付記 本研究は JSPS 科研費 JP17K04683 の助成を受けた ものです。 文献 中央教育審議会初等中等教育(2020)令和 2 年 10 月 22 日第 15 回特別部会資料 5-2「令和の日本型学校 mxt_syoto02-000010502_7.pdf,(参照日 2020 年 10 月 28 日). 文部科学省(2014)睡眠を中心とした生活習慣と子供 の自立等との関係性に関する結果. 日本学校保健会(2014)児童生徒の健康状況サーベイ ランス事業報告書. 日本小児保健健康協議会平成 22 年度幼児健康度調査委 員会(2011)平成 22 年度幼児健康度調査速報版, 小児保健研究,70:448-457. 大川匡子(2010)子どもの睡眠と脳の発達-睡眠不足 と夜型社会の影響-,学術の動向,15(4) :34-39. 佐藤尚武,辻延浩,田中滋規,北村裕一,黒川俊文,山 田淳子,藏本龍樹(2009)小学校における睡眠学 習教材の開発.滋賀大学教育学部附属教育実践総合 センター紀要,17:103-107. 田村典久,高浜康夫,箕岡江美,田中秀樹(2012)小 学生に対する授業形式での睡眠教育が睡眠,日中の 眠気,イライラ感に与える効果,広島国際大学心理 臨床センター紀要,11:21-35. 辻延浩(2011)「健やかな体をつくる睡眠の教育」授業 実践支援 DVD.平成 22 年度教員研修モデルカリ キュラム開発プログラム. 辻延浩(2014)みんなのすいみん 小学生.滋賀大学 睡眠教育プロジェクト,1-6. 辻延浩,櫻井みずき,冨田文裕(2013)高等学校にお ける睡眠学習教材の開発と実践化.滋賀大学教育学 部附属教育実践総合センター紀要,21:23-30. 辻延浩,佐藤尚武,宮崎総一郎,大川匡子(2008)中 学校における睡眠学習教材の開発―保健体育科の実 践による有効性の検討―.日本教科教育学会誌, 31(1):1-10. 辻延浩,佐藤尚武,宮崎総一郎,大川匡子(2010)健 やかな体をはぐくむ睡眠の科学.滋賀大学教育学部・ 滋賀医科大学,1-24. 滋賀大学教育実践研究論集 第 3 巻 2021

図 1 第 3 学年の睡眠教育の学習指導案
図 3 第 4 学年の睡眠教育の学習指導案

参照

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