異文化コラボレーション:2.子供たちの異文化間コミュニケーション
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(2) 02. 子供たちの異文化間コミュニケーション. の理解の促進と異文化教育を目的としている.2000 年 に発足した 26 カ国 4,500 校以上が参加する Web ベー スのプロジェクトで,学校紹介,地域紹介などによる学 校間交流,オンライン教材を使った授業,自国の旅行パ ンフレット作りなどのワークショップが行われている. こうした活動は,複数の学校でパートナーシップを組ん で行うことが多く,パートナー校を探すための電子掲示 板が用意されている.最近では EU 加盟の是非が問われ ているトルコの学校からの書き込みが多いのが興味深い.. 図 -1 つながり 3 フェーズ. ePALS は,学級間での電子メールのやりとりを通し た国際交流を目的とする組織で,1996 年に設立され た. 5). .全世界でのべ約 550 万人(子供たち,教員含む) ,. 一方,世界のインターネット基盤が徐々に整い始めて いる.ガーナの難民キャンプにもコンテナを改造して. フランス語・ドイツ語・ポルトガル語,スペイン語,中. インターネットカフェが作られている.カンボジアの奥. 国語)の機械翻訳機能,不適切な表現を含んだメールを. 地にも太陽発電で PC の電源を確保し,衛星によりイン. フィルタするサービスなど, コミュニケーションを安全・. ターネットが使用できるところもある. 「インターネッ. 円滑に行うための技術を提供している.また相手との共. トは世界をつなぐ」といわれて久しいが,本当に人々は. 通の話題・タスクを提供するために, 地域に昔から伝わっ. つながり始めているだろうか.世界の子供たちがイン. ている神話を紹介しあったり,読書感想文を交換したり,. ターネットを通して,言葉,文化,距離の違いを越えて. 環境について議論するプロジェクトを提供している.. つながりを感じられる環境を構築することができている. 以上のように,子供たちを対象とする国際交流活動に. だろうか.図 -1 に,私たちの考える,つながり 3 フェー. は以下の共通した特徴がある.. ズを示す. 「出会い」「伝え合い」「つながる」という 3. (1)学級を単位とした活動であるため,子供たちにとっ. つの段階を各拠点のアクティビティを通して実現して いる.. 動という意識があること.. 個人の顔が見えるコミュニケーションを,子供たち. (2)学校教育の一環であるためにコンテンツやプロジェ クトのテーマ設定が学習教材的であること. (3)結果的に英語主体になり,特定数カ国のみで機械翻 訳を利用するなど, 多言語の問題を抱えていること.. が共通のタスクを通じて体験し,意見を交換し,知り 合っていく.そのために必要なコンテンツ,ソフトウェ ア,ハードウェア,システムを実証しながら開発してい る.共通タスクとは,子供たちが拠点(小中学校・児童 館・商業スペース・大学のキャンパスなど)に集い・行. ちが主体的・自主的に,遊びとして楽しめる参加形態を. う,自主的な創作活動(絵・音楽・写真・映像・アニメー. とる.文化多様性の上で大切な要素である言語の多様性. ションなど)を意味する.それらの創作活動はアナログ. を認めつつ,世界の子供たちと個人的なつながりを育め. (クレヨンや鉛筆を使う)からディジタル(アニメーショ. る場を提供する.. ンソフトや音楽)まで,子供たちが興味を持つさまざま なメディアが用いられる.子供たちがつながりを感じら. パンゲアのアクティビティ. れる環境づくりには,子供たち同士が共に活動できるこ と,自分のことを人に伝えることができること(自己表 現の手法を身につける) ,相手の立場に立ってものを考. 私 た ち は 2001 年 9 月 11 日 の 事 件 を き っ か け に,. え,見ることができること(相手に合わせて変えられる),. NPO 法人パンゲア. 人に興味を持ち,他の文化・言語・国を想起できること. 6). を創設した.多様な民族・国家・. が重要である.. することが多くあったからである.米国では, 「イスラ. 図 -2 に子供たちをつなぐアクティビティの構成を,. ムは怖い」という発言がラジオから流れていた.そし. 図 -3(a)に会場の様子を示す.アクティビティはファ. シリテータ,技術スタッフによって運営され,出会い・. の国にも良い人はいるし,悪い人もいる」ということが,. 伝え合い・つながる過程を,楽しみながら実践できるよ. 交流体験がないために分かりにくいのだと認識するに. う構成されている.. 至った.. アクティビティは,人と出会い互いに伝え合うことか IPSJ Magazine Vol.47 No.3 Mar. 2006. 277. 04 オフショア開発現場における 異文化間コミュニケーション摩擦. 文化を知らないが故に持つステレオタイプな考えを耳に. て現地の人々と交流する機会があれば理解できる「ど. 03 遠隔授業による 異文化コラボレーション. 私たちが始めた国際交流活動「パンゲア」は,子供た. 02 子供たちの 異文化間コミュニケーション. ても個人対個人というより,教員を介した学級間活. 01 機械翻訳を用いた 異文化コラボレーション. 約 11 万学級が登録されている.7 カ国(日本語・英語・.
(3) 小特集. 02. 異 文 化 コラボレーション パンゲ アネットシステム パンゲアネットに 自分のことを登録. アクティビティ. 家づくり. パンゲアムに 作品を公開 同期で 出会う. カレンダー. 名刺交換. 非同期で 出会う. こえつな. ビデオ レター. 名刺づくり. フレンズフォト インタラクティブ 絵本. タコ紹介. PSN 大好きマップ. ピクトン メッセージ. 集合写真. トランプ. パスポート. (参加者による記録). RFID パスポート発行. アルバムに 思い出を保存. 図 -2 アクティビティの構成. ら始まる.他者をインタビューしてその結果を発表しあ. 期・非同期のアクティビティを通じてつながる体験が得. う「タコ紹介(他のメンバの紹介) 」がその一例である.. られる.. インターネットを用いた同期アクティビティには,子 供たちが自然に参加していけるよう工夫がなされている. たとえば,アイスブレークとして「こえつな(声の綱引 き)」 (図 -3(b) )を行い,ことばを越えた出会いの「場」. 壁を越える. を作り出している.. つながりを感じるためには,人と人の間に双方向のコ. パンゲアの実施拠点は,2006 年度からは東京,京都. ミュニケーションが必要である.大人は言語を用いて伝. に加え,ナイロビ(ケニア) ・ウィーン(オーストリア) ・. え,相手を理解する.しかし,子供たちにとってのユニ. ソウル(韓国)などが予定されている.各拠点では,同. バーサルプレイグラウンドを作るためには 3 つの壁を. 大好きマップ・テーブル. インタラクティブ絵本テーブル. 全体進行. 大. こどもたちの 主体性重視. 大. 大. 全体監修. 技術支援 大. 参加者(こども). (a)会場 図 -3 アクティビティの様子. 278. パンゲアトランプ・テーブル. ファシリテータ. 47 巻 3 号 情報処理 2006 年 3 月. (b)アイスブレーク「こえつな」.
(4) 02. 子供たちの異文化間コミュニケーション. 越えなくてはならない.第 1 に言葉の壁,第 2 に文化 の壁,そして第 3 に環境の壁である.. ■言葉の壁 現在,異言語間のコミュニケーションでは英語が使用 されることが多い.日本語の分からない韓国人と韓国語 の分からない日本人が会話をするときに使用するのは英 ). 語である 7 .インターネット社会ではその傾向がさら に顕著であり,異言語間のビジネスはほぼ英語で行われ る.我が国においても英語教育には特に力を入れてきた. しかし,「英語でコミュニケーションしよう」と言うと, 英語の分からない小学生や苦手な中学生は途端に枠の外 に出てしまう.子供たちの国際交流プログラムも,その. 図 -4 コミュニケータのインタフェース. 多くが英語中心であり,非英語圏の参加者は裕福な家庭 の子供たちが多い.しかし,普通の子供たちが異文化交 はないだろうか.. 分の家づくり」というタスクでは,クレヨンや絵の具を. 言葉の壁を越えるために,英語ではないコミュニケー. 使って自分の家を描くものだが,同じタスクをこなした. ションが簡単に楽しく行えるツールが必要となる.携帯. 違う場所にいる子供たちは,作品からそれぞれの持つ文. 文化全盛期の日本では,若者たちは絵文字や顔文字を駆. 化や個性を理解できる.そういう事前の準備や情報があ. 使している.海外においても同様の傾向が見受けられる.. ると,絵文字でつながり感を高めることができる.また. この場合の絵文字は,文字というより,むしろ絵として. 環境は違っていても子供たちの心身の発達には類似点が. 感情を相手に伝えるために使われている.私たちが目. 多い.興味や日常(学校へ行く,遊ぶ,手伝う,家族,. 的とするのは,気持ちを伝え合う感性コミュニケーショ. 友達,先生など)が共通するため,それらを可視化した. ンである.であるならば,絵文字が異言語間,異文化間. 絵文字は,文字による翻訳よりも直接的で分かりやすい. のコミュニケーションに通用するか否かを試してみよ. 場合がある.. う.開発中の「コミュニケータ」は,図 -4 に示すよう. しかし,絵文字が常に伝わりやすいわけではない.. に,子供たちが頻繁に使う定型文と絵文字を組み合わせ. 1 つの絵文字に対しての多様な解釈が生まれる場合もあ. て使えるツールである.開発にあたり,8 歳から 18 歳. る.同一グループでは解釈がほぼ同じであるのに,違. までの子供たちが絵文字を実際に使用する実験を 1 年. う言語・文化のグループ間ではまったく違う解釈にな. 半にわたり行った.最初は日本国内で 4 拠点の子供た. る.私たちは,図 -5 に示すように,多くの絵文字を. WordNet に対応づけている 8).たとえば,「 朝 」 とい. た.現在では,ソウルと東京の子供たちがコミュニケー. う絵文字の解釈が日本とケニアでまったく違っていた.. タを使って交流している.500 の絵文字が多摩美術大学. 日本の子供たちはニワトリと朝日の絵を見て,全員が. 上野毛キャンパスの学生の協力により作成された.現在,. 「朝」と答えた.しかしケニアでは誰一人これを「朝」 と答えるものがいなかった. 「鳴いているにわとり」と. を調査している.このデータをもとに,絵文字の選定作. 答えたのである.ケニアの子供たちはベッドの上で腕を. 業を行い,意味の明確な約 200 個に絞って用いている.. 伸ばして起き上がる絵を「朝」 としている.コミュニケー. 調査で分かったことは,まず,絵文字によるコミュニ. タは絵文字相互の翻訳も行う.そして,変換された絵文. ケーションを子供たちが楽しいと感じることである.絵. 字メッセージだけではなく,元の絵文字メッセージも表. 文字でいろいろな国の子供たちと交流できることに大き. 示する.日本の子供たちには,なぜニワトリがケニアの. な期待を感じている.そして最も重要なのは,絵文字に. 朝を意味しないのかと疑問に感じることが,相手に尋ね. よって子供たちがコミュニケーションできるという事実. たいと思うきっかけとなる.分からないことを相手に聞. である.アクティビティに飛び入りで参加する大人の書. いてみる.聞かれたらできるだけ相手に分かりやすく伝. いた絵文字は子供たちには分からないことがあるが,子. える.そこからコミュニケーションが始まる.コミュニ. 供たち同士の絵文字は理解されやすい.それにはいくつ. ケータというツールを開発するだけではつながりは形成. かの理由がある.まず,子供たちは絵文字メッセージを. できない.相手に伝えたい・理解したいと思う気持ちを IPSJ Magazine Vol.47 No.3 Mar. 2006. 279. 03. 04 オフショア開発現場における 異文化間コミュニケーション摩擦. 日韓独英の 4 カ国語の Web アンケートで絵文字の解釈. 02. 遠隔授業による 異文化コラボレーション. ちが互いにメッセージを書き,Web カメラで見せ合っ. 01. 子供たちの 異文化間コミュニケーション. 作る前に,共通のタスクを経験している.たとえば, 「自. 機械翻訳を用いた 異文化コラボレーション. 流をすることが,異文化を許容する社会を生み出すので.
(5) 小特集. 02. 異 文 化 コラボレーション the time period between dawn and noon. Users Developer/Kids. Japan. Japan. Ireland. 朝 (JP). Kenya. asubuhi (Swahili). Kenya. Pangaea PictNet. Ireland. night. maidin (Gaelic). Reification. morning. noon. Association. Subject. Topic. Occurrence. scope. 図 -5 創作絵文字の「WordNet」への対応づけ. 日本. 韓国. 日本. ケニア 『ハートの7は教会ですか? オフィスですか?』. 図 -6 パンゲアトランプ:面白い建物. 図 -7 韓国の男子から日本の子へのメッセージ. 生み出す絵文字コンテンツが不可欠なのである.. スクを事前に経験する.子供たちはトランプに関する質 問を,絵文字を用いて用意する.図 -7 は,韓国の子供. ■文化の壁. たちから図 -6 の日本の建物に対する質問である.. 文化の違いの中には,習慣やタブーの違い,衣食住の. 言語によるコミュニケーションができない状況で,つ. 違い,宗教なども含まれる.私たちの仮説は,共通タス. ながりを感じられる環境を作り出すためには, (1)顔. クを経験し共に創作できる環境からつながりを感じる土. が見える(写真でも Web カメラでもよい) ,(2)共通. 壌が生まれ,子供たちは文化の違いの現れるコンテンツ. のタスクや同じ体験をしている, (3)個人的な特徴が. に興味を持ち始める,というものである.そのため,ア. 事前に分かっている,ことが必要である.かしこまった. クティビティには文化の差異が興味深く楽しめるものを. 写真よりも,笑っていたりふざけたりしている写真の. 選んでいる. 「パンゲアトランプ」 はトランプの 「A」 (エー. 方が,生き生きとした表情が見えるため親近感を持てる.. ス)から「K」(キング)まで 1 スーツ 13 枚のカードか. 表情が動くとなおよい.たとえば,ビデオレターをケニ. らなる.それぞれの数に設定された日常のテーマに応. アの子供たちが作り日本へ送る.日本の子供たちは言葉. じ,子供たちのディジタルカメラによる写真,手描きの. を理解しようとするが,それが無理であっても,ケニア. 絵,ディジタルで創作した絵などを配していく.たとえ. の子供たちの身振り手振りを交えた自己紹介にポジティ. ば「A」は学校へ行くときの服装,「7」は身近にある. ブに反応する.ケニアの子供たちがバスケットボールや. 面白い建物などである(図 -6 参照).. 木登りをしていたり,踊ったりという映像があると,さ. このような創作活動をそれぞれの拠点が行い,共通タ. らに興味を抱き始める.. 280. 47 巻 3 号 情報処理 2006 年 3 月.
(6) 02. 子供たちの異文化間コミュニケーション. 子供たちがネットを通して互いの創作物を見ることが, コミュニケーションのきっかけとなる.文化の多様性を 認め合うためには,自然に対等にいろいろなものが見え るという仕掛けが必要である.たとえば図 -8 のように, 子供たちに家を描かせる.すると,描かれた家に子供を 取り巻く環境の特徴が現れる.家の窓には,その子の顔 が見えるようにする.表情もいくつかのパターン(嬉し い顔,悲しい顔,好きな顔)をディジタルカメラで取り 込み,子供の気分で好きなものを選べるようにする.ま たその子の名前がその国の文字で表示されるようにする. ハングルだと日本の子供は読むことができない.しかし,. 図 -8 パンゲアハウス:自分で描ける自分の家. その国の文字を知り,そこをクリックするとその子の声 で名前が聞けるようにしておく.家に対するコメントを 絵文字にして送りあえるようにする.このように随所に. 記を最低限にとどめたパッケージを開発している.今後,. コミュニケーションをしたくなる仕掛けを盛り込んでおく.. パッケージの評価を,日本,韓国,オーストリア,ケニ. ■環境の壁 第 3 に,IT 環境がまったく異なる拠点でアクティビ ティが可能でなければばらない.たとえば,ケニアでは インターネットのスピードは遅い.常時接続ブロードバ. 01 機械翻訳を用いた 異文化コラボレーション. アで進めていく予定である.. 見えてきた課題. アでは問題が生じる.どのような環境であっても楽し. ツールが手に入ったとき,子供たちは互いにメールを送. く参加できるコンテンツと仕組みが必要である.子供. りあい始めた.絵文字を使いながら大人には分からない. たちの活動は同期と非同期に分けることができる.ネッ. メールを仲間同士で送りあう.テキストだけでは伝えら. トワークのスピードが遅いために,Web カメラでの同. れない温かみや気持ち,親近感を伝えるために,絵文字. 期アクティビティに参加しにくい地域では,非同期アク. は広まった.新しいコミュニケーションメディアの誕生. ティビティによって互いの創作物を閲覧し,さまざまな. である.ネット社会が子供たちをおかしくしているとい. 国の子供たちの家を訪れるようにする.絵文字を使った. う意見がある.家族との会話の時間が少なくなったとい. コメントや,共同創作への誘いを送れるようにする.. う.ネットの使い方を家庭内でしっかり決めないから,. さらにさまざまな個人情報なしではつながりを感じる. 子供たちが何を考えているのか分からなくなるのではな. ことは難しい.顔の見えないコミュニケーションの中で. いか.インターネットは高い料金を払うことなく,世界. は,誹謗や中傷が頻繁に起こる.しかし,自分の顔が相. のさまざまな場所に情報を送信できる素晴らしい仕組み. 手に見える環境ではそれは起きにくい.相手が知らない. である.その仕組みを使って,世界の子供たちと友達に. 場所(他校や他国)であっても,人には人から好かれた. なりたいという気持ちが湧いてくるのは自然なことだ.. いという素直な気持ちがある.子供たちは互いに拠点の. それを実現するコンテンツやコミュニケーションツール. 作品を見せ合い,相手に好感を持たれるようメッセージ. の開発を進めてきたが,その過程でいくつかの課題が見. を送りあう.. えてきた.. 02. 03 遠隔授業による 異文化コラボレーション. 子供たちは未来を予言する.携帯電話という身近な. 子供たちの 異文化間コミュニケーション. ンドを前提したアクティビティは,日韓ではよいがケニ. 環境の違いは IT 環境だけではなく,人的環境もあ る.子供たちをサポートするファシリテータの IT リテ. (1)絵文字ツールの拡張性 当初 800 程度の絵文字の開発を進めてきた.しかし,. これを克服するにはアクティビティパッケージの開発が. 各地の文化に根ざした絵文字をすべて開発チームで制作. 必要となる.パッケージ化されるものには, ファシリテー. しようとするのは無謀であった.それよりも,子供たち. ションマニュアル,技術マニュアル,講習会資料,活動. 自身が絵文字を作り,その新しい絵文字を追加してい. 素材のテンプレート,ソフトウェアなどが含まれる.私. く方がよい.しかし,どのように辞書に加えていくのか.. たちは,IT リテラシーが十分でなくてもファシリテー. またどのように絵文字をカテゴライズしていくのか.こ. ションができるようなパッケージ開発を進めている.さ. うした問いに答えるには,活動と研究の連携が不可欠で. まざまな国で使えるよう,可能な限り図で示し,言語表. ある. IPSJ Magazine Vol.47 No.3 Mar. 2006. 281. 04 オフショア開発現場における 異文化間コミュニケーション摩擦. ラシーの格差は大きい.現地での講習会にも限界があり,.
(7) 小特集. 02. 異 文 化 コラボレーション. (2)音声翻訳の工夫. きていこうと思えるようになるかは,子供たちがどのよ. 映像と声が共に伝わるビデオレターはつながり感を高. うに世界を知り,他国に住む人たちとコミュニケーショ. める.しかし,子供たちが母国語で話す場面が必ずあり,. ンしていけるかにかかっている.インターネットの出現. この翻訳をどうしていくかが問題である.たとえば,子. により,人と人とがつながるための基盤はすでに存在す. 供たちが話す内容を簡素化し, (1)名前, (2)年令, (3). る.ツールやコンテンツが足りないだけである.昨年の. 住んでいる町・村・国,(4)好きなモノや事柄,の順. 11 月 20 日,国連が定めた世界子供の日に実施した日. 番で話してもらう.それを拠点のファシリテータが書き. 韓の同期アクティビティでは,短い時間ではあったが子. 起こし,テキスト入力し機械翻訳する.モニタ上では,. 供たちがお互いに対して親近感を持ち, 「もっと知り合. 愛嬌のあるキャラクタが翻訳しているかのように見せる.. いたい,一緒に遊びたい」と感想を書いた.技術者,コ. 子供たちの,互いに理解したいと強く思う気持ち,頻繁. ンテンツ制作者,研究者,学生,さまざまなボランティ. に間違うキャラクタを助けたいと思う気持ちが,機械翻. アが活動を支える Peace Engineering ─それはきっと. 訳の限界を超えてくれないだろうか.. 世界の子供たちをつないでくれるに違いない.. (3)多拠点でのユーザビリティテスト ユーザビリティテストを多拠点で同時に実施するため. 謝辞 (独)メディア教育開発センターの稲葉利江子 氏,NPO 法人パンゲアの高崎俊之氏からご協力をいた. には,高度な技術力を必要としない簡単かつ客観的な計. だいたことを深く感謝いたします.コミュニケータの開. 測手段を持つ必要がある.アンケート調査を用いた計測. 発は(独)情報処理推進機構の 2004 年度未踏ソフトウェ. 以外に,たとえば,生体センサを用い,ストレスレベル. ア創造事業の助成を受けました.. を計測することによって,子供たちがさまざまな創作物 を作ったり,閲覧したりする際のユーザビリティをテス トすることを考えている. (4)交流が文化を薄める危険性 子供たちがネットで出合い,共に作品を閲覧し,コメ ントし,コラボレーションする過程で,相互に影響を受 け,新たな作品が生み出されていく.しかし,それは同 時に各地のオリジナリティの喪失につながる危険をはら んでいる.多様な文化を守ることの大切さを,アクティ ビティの中で,どう培っていけるのかが課題である. 未来は子供たちの手の中にある.それが憎しみに満ち たものになるか,地球という小さな星で力を合わせて生. 282. 47 巻 3 号 情報処理 2006 年 3 月. 参考文献 1)Benesse 教育研究開発センター:第 1 回子ども生活実態基本調査報 告書,ベネッセコーポレーション (2005). 2)Nishida, H.: A Cognitive Approach to Intercultural Communication based on Schema Theory , International Journal of Intercultural Relations, 23 (5), pp.753-777 (1999). 3)http://www.iearn.org 4)http://www.europeanschoolnet.org 5)http://www.epals.com 6)http://www.pangaean.org 7)Ishida , T.: Language Grid : An Infrastructure for Intercultural Collaboration, IEEE/IPSJ Symposium on Applications and the Internet (SAINT-06), pp.96-100 (2006). 8)Takasaki , T.: PictNet : Semantic Infrastructure for Pictogram Communication , The Third International WordNet Conference (GWC-06), pp.279-284 (2006). (平成 18 年 1 月 23 日受付).
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