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依頼表現の異文化比較(日中) : ポライトネスの視点から中間言語を探る

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Academic year: 2021

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依 頼 表 現 の異 文 化 比 較(日

中)

-ポ ラ イ トネ ス の 視 点 か ら中 間 言 語 を 探

Request Strategies in Japanese and Chinese; A Contrastive Study of the Interlanguage of Chinese Students of Japanese from Viewing Politeness.

賀代

Kayo HAYASHI 〈要 旨 〉   本 研 究 で は、 中 国 人 非 日本 語 学 習 者 と中 国 人 日本 語 学 習 者 、 日本 語 母 語 話 者 の 依 頼 表 現 の 変 化 に つ い て 見 て い く。 特 に学 習 者 の 在 日年 数 、 日本 語 能 力 に よ る依 頼 ス ト ラ テ ジー の 比 較 対 象 を す る。 学 習 者 の 中 間 言 語 に 対 す る 目 標 言 語 で あ る 日本 語 の 影 響 を 調 べ る た め に 、 中 国 語 話 者 を 三 つ の グ ル ー プ に分 け 、 依 頼 相 手 の 感 じ る負 担 度 の 度 合 い が 異 な る と 考 え ら れ る4つ の 場 面 を 設 定 し、 親 疎 上 下 関 係 の 異 な る相 手 に 対 して 、 ど の よ う に 表 現 す るか に つ い て ス トラ テ ジ ー の 検 証 を 行 った 。 キ ー ワ ー ド:キ ー ワ ー ド:依 頼 、 ス ト ラ テ ジ ー 、 ポ ジ テ ィ ブ ・ ポ ラ イ トネ ス 、 ネ ガ テ ィ ブ ・ポ ラ イ ト ネ ス は じめ に   依 頼 表 現 と は 日々 の 生 活 で 欠 くこ との で き な い言 語 活 動 で あ り、 そ の 用 途 、 場 所 は多 岐 にわ た る。 ま た、 依 頼 相 手 との 関 係 や 相 手 が 負 うで あ ろ う負 担 な ど に対 して の 配 慮 も考 慮 し、 ス ム ー ズ に依 頼 した い 内 容 を 相 手 に伝 え る と い う ス トラ テ ジー に は、 文 化 的 背 景 が 大 き く影 響 して い る と考 え られ て い る。   本 研 究 で は、 日本 語 と中 国 語 の 依 頼 に関 す る ス ト ラ テ ジーの 比 較 対 照 を す るが 、 特 に中 国 語 話 者 の 依 頼 方 略 に 日本 語 の 依 頼 方 略 が ど う影 響 す るか を探 っ て い く。 比 較 対 照 す る言 語 に中 国 語 を 選 ん だ の は、 現 在 多 くの 中 国 人 留 学 生 が 来 て お り、 さ らに中 国 の 経 済 発 展 、 政 治 的 か っ 歴 史 的 摩 擦 な ど メ デ ィアを 通 して よ く目 に し、 社 会 的 関 わ りも深 くな って い くと 思 わ れ るか らで あ る。   中 国 人 日本 語 学 習 者 の 中 間 言 語 に対 す る 目標 言 語 で あ る 口本 語 の 影 響 を 調 べ る た め に、 中 国 語 話 者 を 三 つ の グ ル ープ に分 け た。 日本 在 住 歴 の な い中 国 在 住中 国語 話 者 、 さ らに 日本 在 住 歴5年 以 上 の者 、 日 本 語 一 級 能 力 資 格 未 取 得 の 学 習 者 、 日本 語 一 級 能 力 試 験 合 格 の 学 習 に分 け た。 そ して 、 依 頼 の四 つ の 場 面 を 設 定 し、 親 疎 上 下 の 異 な る対 話 相 手 に対 しど の よ うに依 頼 す るか、 自由記 述 の 質 問紙 調 査 を行 った。   日本 語 の 依 頼 表 現 ス トラ テ ジー は どの よ うな形 式 が 用 い られ 、 ス ム ー ズ に 依 頼 内 容 を 達 成 して い る の か 、 中 国 の 依 頼 表 現 と は ど の よ う な 相 違 が あ る の か を 先 行 研 究 の 知 見 も参 考 に し な が ら明 らか に し、 少 しで も 日 本 語 学 習 者 の 役 に た ち た い と 思 っ て い る 。 目次 第1章 依 頼 表 現 と は 第2章  日本 語 と中 国 語 の依 頼 方 略 につ いて 第3章 依 頼 表 現 につ いて の調 査 第4章   考 察 第1章   依 頼 表 現 と は 1.1依 頼 と は   私 た ち は 日常 生 活 にお いて コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンを 円滑 に行 うた め に、 さ ま ざ ま な工 夫 を して い る。 そ の中 で も依 頼 行 為 は 「自 己 の実 現 した い事 柄 を他 者 の好 意 に よ る行 為 に よ って 叶 え られ る よ う働 きか け る表 現 行 為 」 と規 定 で き、 そ の よ うな相 手 に あ る こ とを 求 め る と い う行 為 は、 両 者 の社 会 的 権 力 差 な ど の上 下 関 係 や 、 知 人 関 係 にお いて の親 密 度 、 ま た依 頼 相 手 の 負 担 度 を考 慮 し、 そ の相 手 が 否 定 的 な感 情 を持 た な い配 慮 をす る必 要 が あ る。 配 慮 を示 す 方 法 は さ ま ざ ま あ るが 、 相 手 と の関 係 を良 好 に保 ちつ つ 依 頼 の 目的 内 容 を効 果 的 か っ ス ム ー ズ に達 成 す る た *本 学大学院教育学専攻修了生

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め に も 、 さ ま ざ ま な ス トラ テ ジ ー を 用 い て い る 。   ま た 、 山 岡 、 李(2004)は 依 頼 の 表 現 形 式 と そ こ に 込 め られ た 配 慮 に つ い て 考 察 し、 以 下 の よ う に 語 用 論 的 条 件 と 依 頼 表 現 に つ い て 分 類 を して い る 。 (1)依 頼 と い う 発 話 機 能 を 判 断 す る 基 準 と す る 語 用 論 的 条 件 1.命 題 内 容 が 表 す 行 為Aは 、 聞 き 手 に と っ て 実 行 可 能 な 行 為 で あ る 。 2.通 常 の 事 態 の 進 行 に お い て 聞 き 手 が 行 為Aを 実 行 す る こ と は 自 明 の こ と で は な い 。 3.話 し手 は 命 題 内 容 の 実 現 を 欲 して い る 。 4.行 為Aの 実 行 は 話 し手 の 利 益 を も た らす 。   こ の 中 で 、 特 に 条 件4が 依 頼 表 現 が 成 り立 っ の に 必 須 不 可 欠 の 弁 別 要 素 で あ る 。 す な わ ち 、 相 手 の 行 為 が 話 し手 自 身 の 利 益 と な る よ う な 、 そ う い う行 為 の 実 行 を 相 手 に 促 す と き 、 そ れ を 「依 頼 」 と 呼 ぶ の で あ る 。 発 話 状 況 の 中 で こ の 条 件 が 満 た さ れ て い な け れ ば 、 命 令 、 忠 告 、 助 言 等 、 別 の 発 話 機 能 と な る 。 (2)語 用 論 的 条 件 を も と に 表 現 系 に よ る 依 頼 表 現 の 分 類 ① 遂 行 文 系 依 頼 表 現   →   遂 行 文 と は 、 発 話 す る こ と が 、 そ の 文 が 示 す 行 為 の 遂 行 に 当 た る と い う特 殊 な 文 の こ と を 指 す 。 例 え ば 、 「(お先 に 失 礼 し ま す の で)後 を 頼 み ま す 」 は 、 依 頼 の 予 告 で も依 頼 の 決 意 で も な く、 ま さ に 「依 頼 行 為 」 そ の も の で あ る 。 ② 疑 問 系 依 頼 表 現   →   疑 問 表 現 が な け れ ば 依 頼 表 現 に な ら な い よ う な もの を 「疑 問 文 系 」 の 依 頼 表 現 と 呼 ぶ 。 依 頼 表 現 に お い て 疑 問 文 を 用 い る と い う こ と が 配 慮 に 起 因 して い る 。 疑 問 文 と い う の は 、 相 手 に 返 答 を 求 め る も の で あ る か ら、 そ れ に 応 じ る か 否 か の 決 定 は 相 手 に 委 ね られ 、 拒 否 と い う可 能 性 も あ る 分 、 相 手 の 積 極 的 フ ェ イ ス に 配 慮 して い る 。 ③ 願 望 系 依 頼 表 現   →   「∼ て も ら い た い 」 「∼ て ほ し い 」 の よ う な 願 望 表 現 が 、 相 手 に 対 す る 依 頼 と して 機 能 す る よ う な 場 合 の 依 頼 表 現 、 願 望 文 の 形 を と る こ と に よ っ て 、 娩 曲 的 な 依 頼 と な る 。 相 手 に か か る 負 担 を 軽 く し よ う と す る 配 慮 に よ っ て 、 こ の 表 現 形 式 が 取 られ る 。 ④ 命 令 文 系 依 頼 表 現   →   本 来 命 令 は、 話 者 の 自 己 利 益 が 含 意 され て お らず 、 聞 き手 に対 して 強 制 力 を 行 使 しよ うとす る もので あ り、 依 頼 とは一 線 を画 す 。 しか し、 語用 論 的 に 自己利益 が 含意 され る こ とによ っ て 、 依 頼 と な る可 能 性 が あ る。 そ の場 合 を 「命 令 文 系 依 頼 表 現 」 とす る。 ⑤ 条 件 文 系 依 頼 表 現   →   依 頼 表 現 の一 種 に、 条 件 節 を用 いて 娩 曲 的 ・仮 定 的 に表 現 す る。 日本語 で は、 「Vて も らえ る とあ りが た いで す 」 「Vて い た だ けれ ば幸 いで す 」 な どを 多 用 す る。 これ らの表 現 は、 依 頼 と い うフ ェ イ スを 脅 か す 行 為 に対 す る最 大 限 の配 慮 が 表 現 され て い る。   この よ う に、 「依 頼 」 は相 手 の行 為 が 話 し手 の 利 益 と な る行 為 の実 行 を促 す 言 語 行 為 で あ るが 、 そ の 表 現 形 式 は多 様 で あ る。 それ は、 話 し手 が 依 頼 を行 う際 に さ ま ざ ま な要 因 に配 慮 し、 発 話 効 果 を高 め る ため に、 表現 を工 夫 しな が ら依 頼 を行 うた めで あ る。 1.2  依 頼 方 略 の 分 析   こ こで は依 頼 に関 わ る要 因 、 そ して 依 頼 表 現 を分 析 す る上 で 重 要 と な る分 析 方 法 にっ いて 書 く。 1.2.1  依 頼 方 略 の 質 問 紙 調 査   李(2006)は 、 相 手 と の上 下 ・親 疎 関 係 を組 み 合 わ せ た依 頼 の言 語 行 動 が 行 わ れ る各 場 面 で の ポ ライ トネ スを 表 わ す 意 識 につ いて 明 らか に し、 そ の上 で 特 に調 査 内 に お け る 「目上 の人 に依 頼 す る」 場 面 に 焦 点 を当 て なが ら考 察 を加 え 、 日中語 に お け る依 頼 の言 語 行 動 の相 違 を 、 自 由記 述 に よ る質 問 調 査 と、 5段 階 の 評 定 を行 う選 択 式 の意 識 調 査 の組 み 合 わ せ に よ って 検 討 して い る。   調 査 は、 口頭 表 現 を 記 述 す る 「質 問 紙 調 査 」、 各 依 頼 場 面 で の ポ ラ イ トネ ス意 識 を問 う 「依 頼 場 面 に お け る意 識 調 査 」 を 、 日本 語 母 語 話 者94名 と台 湾 人 中 国 語 母 語 話 者94名 に行 っ た。 「質 問 紙 調 査 」 で は、 表1の 四 つ の場 面 を 文 章 で 示 し、 各 場 面 で ど う依 頼 す るか を 記 入 す る と い う ものだ 。 表1  依 頼 場 面 に お け る意 識 調 査 の場 面 設 定

場面①

場面②

場面③

場面④

上 下 関係 上 上 同 同

親疎関係

場面

親 しい 指 導 教 員 に 本 を借 りる場 面 親 し くな い 同 じ学 科 の教 員 に 本 を借 りる場 面 親 しい 同 じ学 科 の 友 人 に本 を借 りる場 面 親 し くな い 同 じ学 科 の友 人 に 本 を借 りる場 面

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  調 査 の 結 果 、 日 本 語 と中 国 語 を 比 較 す る と 、 配 慮 度 、 間 接 度 、 改 ま り度 に っ い て 同 様 の 結 果 が 表 れ て い る 。 しか し、 親 近 度 、 距 離 度 に つ い て は 違 い が 見 られ る 。 中 国 語 で は 、 親 近 度 お よ び 距 離 度 に は 、 上 下 関 係 よ り親 近 関 係 が 影 響 を 及 ぼ して い る が 、 日 本 語 で は 、 上 下 親 疎 と も に 同 じ よ う に 影 響 して い る 。 日 中 語 と も配 慮 度 お よ び 改 ま り度 に つ い て は 、 上 下 関 係 に 影 響 さ れ や す い 。 こ の 調 査 結 果 は 第2章 で 紹 介 す る が 、 依 頼 に は 上 下 親 疎 と い う要 因 が 影 響 し、 依 頼 方 略 に 関 わ っ て い る こ と が わ か る 。 1.2.2  イ ン タ ビ ュ ー に よ る 依 頼 方 略 の 調 査   エ レ ン ・ナ カ ミ ズ(1992)は 日 本 語 学 習 者 の 依 頼 表 現 に お け る ス トラ テ ジ ー の 使 い 方 に つ い て の 研 究 す る中 で 以 下 の よ う な 調 査 を 行 っ た 。   日 本 人 大 学 生30人 、 日 本 の 大 学 に 通 っ て い る 中 国 人 留 学 生22人 、 韓 国 人 留 学 生15人 、 ア メ リ カ 人 留 学 生17人 を 対 象 と して 、 調 査 用 紙 を 渡 し、 そ の 場 で 答 え て も ら い 、 内 容 を 確 認 す る た め に 何 人 か に は 直 接 口 頭 で 質 問 を 行 っ た 。   イ ン タ ビ ュ ー ・ シ ー トを 作 成 す る 上 で エ レ ン ・ナ カ ミ ズ(1992)は 以 下 の3点 を 要 因 と して 設 定 し た 。 1)親 疎 関 係:話 し手 と 聞 き 手 と の 親 し さ の 度 合 い は 、 依 頼 の 仕 方 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る の か 。 2)非 対 称 的 な 関 係:聞 き 手 が 目 上 の 人 で あ る 場 面 に 出 て くる ス トラ テ ジー は親 疎 関 係 だ けが 要 因 に な っ て い る 場 面 の ス トラ テ ジ ー と ど う 違 う の か 。 3)依 頼 の 負 担:依 頼 負 担 の 高 低 で イ ン フ ォ ー マ ン トが ど の よ う に ス トラ テ ジ ー を 使 い 分 け て い る の か 。   こ の 調 査 の 結 果 、 親 疎 関 係 が 重 視 さ れ る 場 面 で は 、 日 本 人 話 者 の 場 合 、 依 頼 表 現 の 形 式 は 切 り替 え る が 依 頼 表 現 以 外 の ス トラ テ ジ ー は ほ と ん ど 切 り替 え な い 。 そ れ に 対 し、中 国 人 と ア メ リ カ 人 学 習 者 は 、 語 形 よ り も 「常 体 」 と 「丁 寧 体 」 と の 間 で 切 り替 え る 人 が 多 い 。 ま た 、 聞 き手 が 目 上 の 人 で あ る場 面 で は 、 日 本 人 、 外 国 人 話 者 ど ち ら に お い て も ス トラ テ ジ ー の 切 り替 え が 少 な く 「願 望 表 現 」 の 使 用 頻 度 が 高 い 。 そ して 、 依 頼 の 負 担 が 高 い 場 面 に お け る 結 果 は 、 聞 き手 が 親 し くな い ク ラ ス メ ー トの 場 面 の 結 果 に 近 い 。 日 本 人 、 韓 国 人 学 習 者 は 、 あ る 語 形 か ら も っ と 丁 寧 さ の 高 い 語 形 へ の 切 り替 え が 多 く、 中 国 人 、 ア メ リ カ 人 学 習 者 は 語 形 よ り も、 「常 体 」 か ら 「丁 寧 体 」 へ の 切 り替 え が 多 い 。 しか し、 一 般 的 に 韓 国 人 学 習 者 の 回 答 は 、 中 国 人 、 ア メ リ カ 人 学 習 者 の 回 答 か ら は 遠 く、 日 本 人 話 者 の ス トラ テ ジ ー に 近 い 傾 向 が あ る 。 韓 国 語 は 最 も 日 本 語 に 近 い 言 語 で あ る た め 、 ス ト ラ テ ジ ー の 使 い 分 け が 日 本 人 に 近 い と 思 わ れ る 。 しか し、 韓 国 人 学 習 者 の 回 答 に ぼ か し表 現 は少 な か っ た 。 こ の こ と は、 学 習 者 の 専 門 分 野 、 日本 語 学 習 歴 、 勉 学 の 目 的 な ど の 影 響 だ と 考 え られ る 。   この よ う に 言 語 表 現 に 関 す る調 査 に は、 上 下 関 係 、 依 頼 の 負 担 度 が 影 響 す る こ と が 先 行 研 究 で 指 摘 さ れ て い る 。 そ して 、 調 査 方 法 に は 、 ア ン ケ ー ト調 査 、 ロ ー ル プ レ イ 調 査 、 イ ン タ ビ ュ ー 調 査 な ど が 用 い ら れ る 。 本 研 究 で は 先 行 研 究 に 倣 い 、 上 下 関 係 、 依 頼 の 負 担 度 に よ り場 面 を 設 定 し、 場 面 毎 で ど の よ う に 依 頼 す る の か を 書 い て も ら う 自 由 記 述 に よ る ア ンケ ー ト調 査 を 行 う こ と に し た 。 ま た 、 分 析 を 進 め る 過 程 で 、 随 時 母 語 話 者 へ の イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を 加 え た 。 第2章   日本 語 と中 国 語 の 依 頼 方 略 につ いて   本 章 で は、 本 稿 で 扱 う日本 語 と 中国 語 の依 頼 表 現 にっ いて 概 観 した い。 日本 語 と中 国 語 の母 語 話 者 の 依 頼 表 現 を比 較 した対 照 研 究 を と りあ げ、 次 に中 国 人 日本 語 学 習 者 と 日本 語 母 語 話 者 の依 頼 表 現 を概 観 す るが 、 これ は母 語 の言 語 文 化 と対 照 言 語 の言 語 文 化 の 干 渉 を探 る、中 間 言 語 方 略 研 究 に あ た る。 2.1  日本 語 と中 国 語 の 依 頼 方 略 の 対 照 研 究   日本 語 の母 語 話 者 と中 国 語 の母 語 話 者 は、 それ ぞ れ の言 語 文 化 圏 で ど の よ うに依 頼 を行 って い るのか 、 日本 語 と中 国 語 の依 頼 表 現 を扱 った対 照 研 究 を見 て い き た い。 2.1.1  依 頼 の 言 語 行 動 に 関 す る 日 中 語 対 照 研 究 一 ポ ラ イ トネ ス の 観 点 か ら 一   李(2006)の 「依 頼 場 面 に お け る 意 識 調 査 」 で は 「質 問 紙 調 査 」 で 提 示 さ れ た 各 場 面 に 対 し ど の よ う な 意 識 を 持 って い る か に つ い て 、 五 つ の 「ポ ラ イ ト ネ ス の 軸 」 を 援 用 し、 五 段 階 の 評 定 を して も ら う と い う もの だ 。 調 査 表 にⅠ 「配 慮 の 軸 」Ⅱ 「間 接 性 の 軸 」Ⅲ 「親 近 感 の 軸 」Ⅳ 「距 離 の 軸 」V「 改 ま り の 軸 」 の 五 つ の 「ポ ラ イ トネ ス の 軸 」 を 提 示 し た 。 (1)調 査 の 結 果 分 析 お よ び 考 察 ① 「依 頼 の 場 面 に お け る 意 識 調 査 」 の 結 果 分 析 お よ び 考 察   日 本 語 の 場 合 、 検 証 方 法 と して は 、 配 慮 度 、 間 節 度 、 親 近 度 、 距 離 度 、 改 ま り度 を 見 る た め に、 フ リー ドマ ン検 定 、 ま た 、 ど の 場 面 の 組 み 合 わ せ に 有 意 差

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が あ る か を 見 る た め に 、 ス テ ィ ー ル ・ ド ゥ ワ ス 検 定 に よ る 多 重 比 較 法 を 用 い た 。   意 識 調 査 で は 、 日 中 語 と も に 相 手 の フ ェ イ ス の 保 持 に 配 慮 す る と い う 「ポ ラ イ トネ ス の 普 遍 的 原 理 」、 間 接 に 表 現 す る 「オ フ ・ レ コ ー ド」、 距 離 を 置 く 「ネ ガ テ ィ ブ ・ポ ラ イ トネ ス 」、 改 ま りを 示 す 「わ き ま え の ポ ラ イ トネ ス 」 の 結 果 に っ い て 同 様 の 結 果 が 表 れ て い る 。 しか し、 親 近 感 を 示 す 「ポ ジ テ ィ ブ ・ ポ ラ イ ト ネ ス 」、 距 離 を 置 く 「ネ ガ テ ィ ブ ・ ポ ラ イ トネ ス 」 の 度 合 い に は 違 い が 見 られ る 。中 国 語 に お い て 上 下 関 係 よ り 親 疎 関 係 が 、 親 近 感 を 示 す 「ポ ジ テ ィ ブ ・ポ ラ イ トネ ス 」 距 離 を 置 く 「ネ ガ テ ィ ブ ・ ポ ラ イ トネ ス 」 の 度 合 い に 影 響 を 及 ぼ して い る 。   「目 上 の 人 に 依 頼 す る 場 面 」 で は 、 日中 語 共 に 親 し い 指 導 教 員 に 依 頼 す る 場 面 ① で は 「ポ ラ イ トネ ス の 普 遍 的 原 理 」、 「オ フ ・ レ コ ー ド」、 「ネ ガ テ ィ ブ ・ ポ ラ イ トネ ス 」、 「わ き ま え の ポ ラ イ トネ ス 」 を 表 わ す 意 識 は 、 親 し くな い 教 員 に 依 頼 す る 場 面 ② よ り、 低 く な る が 「ポ ジ テ ィ ブ ・ポ ラ イ トネ ス 」 を 表 わ す 意 識 の み が 場 面 ② を 上 回 る 。 目 上 の 人 に 依 頼 す る 場 面 に お け る ポ ラ イ トネ ス 意 識 の 強 弱 に つ い て は 、 日 中 語 同 じ傾 向 を 示 して い る が 、 相 手 と の 親 疎 関 係 に よ っ て 同 一 の 機 能 的 な 発 現 頻 度 の 増 加 と 数 種 類 の 機 能 的 な 単 位 の 使 い 分 け に 違 い が 見 られ た 。 2.1.2  依 頼 の ス トラ テ ジ ー の 中 日 対 照   楊(2004)は 中 国 と 日 本 の 大 学 生 の 書 い た 依 頼 文 を 分 析 し、 両 者 の 依 頼 の ス トラ テ ジ ー の 違 い と中 国 人 日 本 語 学 習 者 の中 間 言 語 の 特 徴 を 検 討 し た 。 (1)調 査 概 要   調 査 内 容 は 、 被 験 者120名 に 外 国 へ 留 学 し た い と い う前 提 で 、 あ ま り親 し く な い 高 校 時 代 の 同 級 生 に 相 手 の い る 外 国 の 有 名 な 大 学 の パ ン フ レ ッ トを 送 っ て も ら う た め の 手 紙 を 書 い て も ら い 、 そ こ で 産 出 さ れ た ス トラ テ ジ ー を 分 析 す る と い う もの だ 。   被 験 者 は4グ ル ー プ30名 ず っ に 分 け 、 そ れ ぞ れ 中 国 語 と 日 本 語 で 手 紙 を 書 い て も ら う。 第1グ ル ー プ は 、中 国 に あ る 英 語 学 部3年 生(中 国 語 母 語 話 者) こ の グ ル ー プ に は 、 中 国 語 の み で 手 紙 を 書 い て も ら う 。 第2グ ル ー フ゜は 、 同 大 学 日 本 語 学 部2年 生(日 本 語 学 習 歴 約1年 半 、 初 級 学 習 者)。 第3グ ル ー プ は 同 大 学 日本 語 学 部3年 生(日 本 語 学 習 歴 約2年 半 、 中 級 学 習 者)。 第4グ ル ー プ は 、 日本 に あ る 日 本 語 教 育 コ ー ス 学 部 生(日 本 語 母 語 話 者)。 こ の 第2、 第3及 び 第4グ ル ー フ゜は 日 本 語 で 記 述 して も ら う。 (2)考 察 ① 主 依 頼 ス トラ テ ジ ー   ま ず 主 依 頼 ス ト ラ テ ジ ー を 直 接 依 頼 と 間 接 依 頼 に 二 分 す る 。 こ こ で 言 う主 依 頼 と は 、 パ ン フ レ ッ トを 送 って も ら う よ う依 頼 す る 表 現 で あ る 。   「一 て くだ さ い 」 や 「一 を お 願 い し ま す 」 の よ う な表 現 を 直 接 依 頼 、 依 頼 を 承 諾 す る可 能 性 を 聞 く 「一 て い た だ け な い で し ょ うか 」 や 希 望 を 述 べ る 「一 て い た だ き た い 」 の よ う な 表 現 を 間 接 表 現 と み な す 。  中 国 人 も 日 本 人 も本 調 査 の 条 件 で は 、 同 じ よ う に 間 接 依 頼 の ほ うが ポ ラ イ トな 頼 み 方 だ と 思 って い る こ と が わ か っ た 。 日 本 人 に と っ て 、 あ ま り親 し く な い 同 級 生 に 「一 て く だ さ い 。」 と依 頼 す る の は 考 え に く い が 、中 国 人 の 場 合 極 少 数 で は あ る が 直 接 依 頼 で 相 手 の 仲 間 意 識 を 喚 起 す る 傾 向 が 見 られ た 。 ② ポ ジ テ ィ ブ ポ ラ イ トネ ス   「感 謝 」 「お 祈 り で 結 ぶ 」 「褒 め 」 「う ら や ま し さ の 表 現 」 「仲 の 良 さ の 強 調 」 「近 況 の 報 告 」 「お 返 し の 表 現 」 「受 け る 恩 恵 の 明 示 」 の 八 種 類 の ポ ジ テ ィ ブ ポ ラ イ トネ ス が 産 出 さ れ た 。   中 国 人 の 書 い た 手 紙 の 中 に は 「感 謝 」 の 表 現 が よ くみ られ る 。 前 も って 感 謝 す る の が 相 手 の 承 諾 を 確 信 して い る 明 示 で あ り、 双 方 が 信 頼 関 係 に あ る こ と が 強 調 さ れ る 。 手 紙 文 の 終 わ り に み ら れ る お 祈 り は 、 相 手 へ の 関 心 を 示 し、 褒 め る と い う こ と は 相 手 の 認 め られ た い と い う ポ ジ テ ィ ブ フ ェ イ ス を 満 足 さ せ る ス トラ テ ジ ー で あ る 。 相 手 へ の う らや ま し い 気 持 ち を 伝 え る の は 、 間 接 的 に 相 手 が 好 ま し い 状 態 に あ る こ と を 認 め る こ と で あ り、 「褒 め 」 と 同 じ働 き だ と い え る 。 依 頼 者 を あ ま り親 し く な い 同 級 生 に 設 定 し た に も関 わ らず 、 相 手 と の 仲 の 良 さ を 強 調 す る 表 現 が 多 く産 出 さ れ 、 これ は 相 手 の 仲 間 意 識 を 喚 起 す る 役 割 を し、 自分 の 近 況 を 知 らせ る こ と も同 じで あ る 。   「受 け る 恩 恵 の 明 示 」 は ネ ガ テ ィ ブ フ ェ イ ス と の 見 方 もで き る が 、 相 手 が 恩 恵 を 施 す 能 力 が あ る と も と れ 、 これ に よ り相 手 の 認 め られ た い と い う ポ ジテ ィ ブ フ ェ イ ス を 満 足 さ せ る と 考 え られ る 。 ③ ネ ガ テ ィ ブ ポ ラ イ トネ ス   「相 手 の 気 持 ち や 時 間 へ の 配 慮 」 「お 詫 び 」 「前 置 き」 「送 料 の 配 慮 」 「事 情 の 説 明 」 の 五 種 類 の ネ ガ テ ィ ブ ポ ラ イ トネ ス が 産 出 さ れ た 。   相 手 の 気 持 ち や 時 間 へ の 配 慮 で 相 手 に か け る 負 担 を 最 小 限 に す る 。 お 詫 び を す る の は 相 手 に 負 担 を か け る こ と に 気 づ い て い る こ と の 表 明 で あ る 。 依 頼 表 現 の 前 置 き は 、 相 手 に 心 の 準 備 を して も ら う役 割 で

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あ る 。 ま た 、 「送 料 の 配 慮 」 は 一 見 「お 返 し」 と 同 じ よ う で あ る が 、 こ れ は 相 手 に か け る 金 銭 的 負 担 を な くす 配 慮 で あ る 。 事 情 の 説 明 に よ り、 依 頼 し な け れ ば な ら な い こ と を 相 手 に 理 解 して も ら い 心 理 的 負 担 を 軽 減 す る と い え よ う。 (3)ま と め   本 調 査 の 結 果 は 以 下 の よ う に な っ た 。 1.中 口 の 主 依 頼 ス トラ テ ジ ー は 直 接 依 頼 に ほ ぼ 一 致 して い る が 、 補 助 ス トラ テ ジ ー に は は っ き り し た 違 い が 見 られ た 。 2.中 国 人 の 依 頼 は 感 性 的 で あ り、 ポ ジ テ ィ ブ ポ ラ イ トネ ス を 多 用 し、 日 本 人 の 依 頼 は 理 性 的 で あ り、 ネ ガ テ ィ ブ ポ ラ イ トネ ス を 多 用 す る 。 3.学 習 者 の中 国 式 ス トラ テ ジ ー の 使 用 率 は 学 習 歴 と と も に 減 少 す る 傾 向 に あ る 。       表2 4.学 習 者 の ネ ガ テ ィ ブ ポ ラ イ トネ ス の 使 用 率 は 学 習 歴 と あ ま り関 係 が な い 。 5.中 国 も 日 本 も女 性 の ほ うが ポ ラ イ トネ ス の 使 用 率 は 高 い 傾 向 に あ る 。 2.1.3  依 頼 表 現 の 日 中 対 照 研 究 一 相 手 に 応 じ た 表 現 選 択 一   相 原(2008)は 、 相 手 と の 親 し さ と 相 手 の 地 位 が 依 頼 表 現 に ど の よ う に 反 映 さ れ る か に つ い て 、 日本 語 と中 国 語 を 用 い 比 較 、 分 析 して い る 。 (1)調 査 内 容   依 頼 場 面 を 設 定 し た 質 問 紙(日 本 語 版 と中 国 語 版) を 日本 語 母 語 話 者51名 と 中 国 語 母 語 話 者49名 に配 り、 ど の よ う に 言 う か 記 述 して も ら う と い う も の で あ る 。 依 頼 相 手 の 設 定 は 表2に 記 し た 通 りで あ る 。 依 頼 相 手 とそ の 略 記 法

親疎

挨拶程度

親 しい

地位

やや上

同 上

やや上

具体的な人物設定

会 え ば挨 拶 す る程 度 の 間 柄 の教 授 会 え ば挨 拶 す る程 度 の 間 柄 の 一 、 二 歳 上 の 先 輩 会 え ば挨 拶 す る程 度 の 間 柄 の 同 学 年 、 同年 齢 の 学 生 親 しい教 授 親 し い 一 、 二 歳 上 の 先 輩 同学 年 、 同 年 齢 の親 しい 友 人

略記法

疎 ・上 疎 ・や や 上 疎 ・同 親 ・上 親 ・や や 上 親 ・同   依頼 内容 は 「写 真 を撮 って も らう」 とい う もの を、 「卒 業 式 の 日、 校 門 の 前 で、 誰 か に頼 ん で 何 人 か で 記 念 撮 影 を した い と い う時 に、 表2の 人 物 が 偶 然 通 りか か っ た」 と い うもの だ 。 (2)分 析 ① 文 の タ イ プ、 分 類 方 法   両 言 語 の 依 頼 表 現 を 直 接 か 間 接 か と い う視 点 か ら 二 つ の タ イ プ に分 類 し 「直 接 依 頼 文 」 「間 接 依 頼 文 」 と呼 ぶ 。 日本 語 で は、 両 形 式 の比 較 は相 手 に よ って 異 な る が 、 「親 ・同 」 に お いて も間接 依 頼 文 の 出 現 率 の ほ うが 高 く、 相手 に関 わ らず 間接 依 頼 文 が多 い。 これ に対 し、 中 国語 で は、 「親 ・同」 と 「親 ・や や 上 」 で は、 間 接 依 頼 文 の 出 現 率 が 高 く、 それ 以 外 の 相 手 で は間 接 依 頼 文 の 出 現 の ほ うが 高 い。 親 疎 差 も 地 位 差 も中 国 語 の ほ うが 大 き い。 従 って 中 国 語 の ほ うが 日本 語 よ り直 接 依 頼 文 を 用 い るか の 選 択 に、 相 手 との 親 しさ と相 手 の 地 位 が 関 わ る と言 え る。 ② 受 理 表 現 の タ イ プ   話 し手 が 利 益 を 得 る こ とを 明 示 す る表 現 を 「受 理 表 現 」 と呼 び、 相 手 の 違 いが 受 理 表 現 の 選 択 に与 え る影 響 を 見 て い く。   日本 語 で は与 え 手 主 語 タ イ プ の授 受 動 詞 を使 うか 受 け手 主 語 タ イ プの 授 受 動 詞 を使 うか と い う選 択 に 相手 との親 しさ と相 手 の地 位 が 大 きな影 響 を与 え る。 これ に対 し、中 国 語 の各 受 益 表 現 の 出現 率 は、 相 手 が 違 って も大 き な変 化 は見 られ ず 、 調 査 で 設 定 した 依 頼 場 面 につ いて は、 相 手 の違 い は受 益 表 現 の選 択 に ほ とん ど影 響 を与 え て い な い と思 わ れ る。 ③ 敬 語 の 使 用   相 手 と の親 しさ と相 手 の地 位 が 敬 語 の 出現 率 を大 き く左 右 す る とい う点 は 日本 語 も中 国語 も同 じだが 、 中 国 語 で は二 人 称 代 名 詞 が 現 れ な い回 答 が 多 く、 敬 語 形 と非 敬 語 形 の選 択 自体 が な い ケ ー スが 多 い。 (3)ま と め ① 文 の タ イ プ   日本 語 で は、 直 接 依 頼 文 と間 接 依 頼 文 の比 率 は変 化 す る もの の、 どの 相 手 にお いて も直 接 依 頼 文 よ り も間 接 依 頼 文 の 出現 率 が 高 い の に対 し、 中 国 語 で は 相 手 に よ って 間 接 疑 問 文 を使 うか 直 接 疑 問 文 を使 う か が は っ き り して い る。 この結 果 は、中 国 語 の方 が 、 相 手 との 親 しさや 相 手 の 地 位 が 、 間 接 疑 問 文 を使 う か 直 接 依 頼 文 を使 うか と い う選 択 に大 き な影 響 を与

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え て い る と い うこ とを 示 して い る。 ② 受 益 表 現 の タ イプ   受 益 表 現 の 選 択 に は親 疎 や 地 位 の 影 響 が ほ とん ど 見 られ な か った 。 ③ 敬 語 の 使 用   日本 語 で は、 相 手 との 親 しさ と相 手 の 地 位 が 敬 体 か 常 体 か の 選 択 に深 く関 係 して い る。 一 方 、 中 国 語 で は二 人 称 代 名 詞 が 使 用 され た回 答 が 少 な く、 そ の 選 択 自体 が 起 こ って いな い ケ ー スが 多 い。 2.1.4  依頼 表現 の 日中 対 照 研 究   山 岡 ・李(2004)は 日本 語 と中 国 語 にお け る表 現 形 式 とそ こ に込 め られ た配 慮 につ いて 、 両 者 を比 較 しな が ら、 共 通 点 ・相 違 点 を 考 察 して い る。   依 頼 表 現 の 類 別 は、 日中 語 共 に① 遂 行 文 系 ② 疑 問 文 系 ③ 願 望 文 系 ④ 命 令 文 系 ⑤ 条 件 文 系 の5っ に 分 類 され る点 で 共 通 して い る。 配 慮 の 度 合 は、 依 頼 の 意 味 の 露 出 度 、 す なわ ち直 戴 的 な表 現 よ りは娩 曲 的 な 表 現 の 方 が 消 極 的 配 慮 の 度 合 が 高 く、 依 頼 され る側 が 断 りや す い発 話 で あ る ほ ど、 積 極 的 配 慮 の 度 合 が 高 い。 従 って 、 各 系 の 基 本 的 形 式 を もと に配 慮 の 度 合 を 考 え る と、 ④ → ① → ③ → ② → ⑤ の 順 で 高 くな っ て い くと考 え られ る点 も両 語 は共 通 して い る。   日中 語 にお け る最 大 の 相 違 点 は 日本 語 に は配 慮 を 表現 す る派生 的 な文 法形 式 が多 数存 在 す るの に対 し、 中 国 語 に はそ の よ うな文 法 形 式 が 少 な い。 例 え ば 、 日本 語 の 「∼ て も らう」 と 「∼ て い ただ く」、 「∼ て くれ る」 と 「∼ て くだ さ る」 の よ うな待 遇 表 現 上 の 区 別 、 常 体 と敬 体 の よ うな文 体 上 の 違 い に相 当 す る もの が 中 国 語 に は見 当 た らな い。 た だ し語 彙 の交 替 と い う形 を と って 中 国 語 に も存 在 す る。 この よ うな 事 情 は依 頼 表 現 に限 らず 両 語 の対 照 全 般 にお いて 従 来 か ら知 られ て い る こ とで もあ る と述 べ て い る(山 岡 ・李 、2004参 照)。 2.2  日本 語 と中 国 語 の 中 間言 語 方 略 研 究  中 間 言 語 と は第 二 言 語 学 習 者 が 、 母 語 と は違 う言 語 を 学 ん で い く過 程 で 発 生 す る、 目標 言 語 と は さ ま ざま な点 で異 な る学 習者 に起 こる言 語 の こ とで あ る。 ラ リー ・セ リ ンカ ー に よ って1972年 に提 唱 され 、 全 て の 言 語 学 習 にお いて 、 学 習 内 容 や 母 語 に よ る影 響 を 受 け個 々の中 間 言 語 が 存 在 す る。中 間 言 語 は、 習 得 レベル や 学 習 内 容 、 母 語 な ど に影 響 を 受 け る。 例 え ば 中 国 語 を 母 語 とす る者 が 話 す 日本 語 は、 日本 語 を 母 語 とす る者 と は違 う。 清 音 、 濁 音 の 発 音 が 少 し 違 って い た り、中 国 語 「的 」 が 干 渉 し、 「白 い の 本 」 な ど 特 定 の 表 現 が 多 く用 い られ た りす る 。 こ の よ う に 、 あ る 一 定 の 規 則 を 持 ち な が ら も、 目 標 言 語 と は 異 な っ て い る 学 習 者 の 言 語 を 中 間 言 語 と い う。 2.2.1  日 本 語 学 習 者 に お け る 依 頼 表 現 一 ス トラ テ ジ ー の 使 い 分 け を 中 心 と して 一   エ レ ン ・ナ カ ミズ(1992)は 、 日 本 語 学 習 者 に お け る依 頼 表 現 に っ い て 、 母 語 に 注 目 し調 査 を 行 っ た 。 (1)調 査 方 法   ア ン ケ ー ト。 日本 人 大 学 生30人 、 日本 の大 学 に通 っ て い る 中 国 人 留 学 生22人 、 韓 国 人 留 学 生15人 、 ア メ リ カ 人 留 学 生17人 を 対 象 と して 、 調 査 用 紙 を 渡 し、 そ の 場 で 答 え て も ら い 、 内 容 を 確 認 す る た め に 何 人 か に は 直 接 口 頭 で 質 問 を し た 。 ① ア ン ケ ー トを 作 る 際 に 留 意 し た 点 1)親 疎 関 係:話 し手 と 聞 き 手 と の 親 し さ の 度 合 い   は 、 ど の よ う に 依 頼 の 仕 方 に 影 響 を 与 え る の か 。 2)非 対 称 的 な 関 係:聞 き 手 が 目 上 の 人 で あ る 場 面   に 出 て く る ス ト ラ テ ジ ー と ど う違 うの か 。 3)依 頼 の負 担:依 頼 の負 担 の 高 低 に よ って イ ン フ ォ ー   マ ン トが ど の よ う に ス ト ラ テ ジ ー を 使 い 分 け て い   る の か 。 ② ア ン ケ ー ト内 容 場 面1、2)あ な た は 昨 日 気 分 が 悪 か っ た の で 、 大 学 の 講 義 を 休 み ま し た 。 そ の 講 義 ノ ー トを 親 し い 日 本 人 の ク ラ ス メ ー トに 貸 して も ら う よ う に 頼 み た い と 思 っ て い ま す 。 そ の 時 に あ な た は ど う し ま す か 。 (親 し く な い ク ラ ス メ ー トの 場 合 は 場 面2) 場 面3、4)明 日 あ な た は 大 学 の 授 業 で 発 表 す る 予 定 で し た が 、 週 末 に 友 達 が あ な た の と こ ろ に 遊 び に き た た め 、 発 表 の 準 備 が で き ま せ ん で した 。 そ こ で 、 発 表 の 日 を 延 期 して も ら う よ う に 先 生 に 頼 み た い と 思 っ て い ま す 。 そ の 授 業 の 先 生 は あ な た と あ ま り親 し く な い 日 本 人 の 先 生 で す 。 そ の 時 に あ な た は ど う し ま す か 。(親 し く して い る 先 生 の 場 合 は 場 面4) 場 面5)大 学 の レ ポ ー トを 書 く た め に あ な た の 先 生 の 部 屋 に あ る 本 を 貸 して も ら う よ う に 先 生 に 頼 み た い と 思 って い ま す 。 そ の 先 生 は あ な た と 親 し い 日本 人 の 先 生 で す 。 そ の 時 あ な た は ど う し ま す か 。 場 面6)あ な た は ひ ど い 風 邪 を ひ き 、2週 間 入 院 す る こ と に な り ま し た 。 少 し前 に 旅 行 を し た 時 、 お 金 を 使 い す ぎ た の で 、 今 入 院 費 を 払 う お 金 を 持 って い ま せ ん 。 親 し い 大 学 の 友 達 に5万 円 貸 して も ら う よ う に 頼 み た い と思 っ て い ま す 。(1ヶ 月 後 お 金 を 返

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す と 約 束 す る)そ の 時 に あ な た は ど う し ま す か 。 (2)考 察 「依 頼 表 現 」 以 外 の 要 素 は 全 て 常 に 現 れ る と は 限 ら な い 。 「依 頼 表 現 」 以 外 の 要 素 は 依 頼 の 負 担 を 弱 め る ス トラ テ ジ ー で あ る た め 、 依 頼 を 支 持 す る ス トラ テ ジ ー と して 扱 う。 依 頼 を 支 持 す る ス トラ テ ジ ー は 、 呼 び か け → 依 頼 を 導 入 す る 言 葉 → 依 頼 前 提 確 認 表 現 → 謝 罪 → ぼ か し表 現 → 依 頼 の 理 由 → 依 頼 → 保 証 す る す る 表 現 → 懇 願 と 、 日 本 人 話 者 と 外 国 人 話 者 、 い ず れ の 場 合 で も 同 じ1順序 に 出 て き た 。 こ の 順 序 が 日 本 語 に よ る 依 頼 発 話 行 為 の 典 型 で あ る と 思 わ れ る 。   ま た 、6場 面 に お い て の 親 疎 関 係 、 非 対 称 的 な 関 係 、 依 頼 の 負 担 、 こ の3つ の 要 因 に よ っ て 、 次 の ス トラ テ ジ ー が 使 い 分 け られ て い る 。:1語 形 の 切 り 替 え(く れ な い → も らえ な い 、 あ る い は 、 願 望 表 現 → 聞 き手 の 都 合 を 聞 く表 現)、2肯 定 形 ・否 定 形 の 切 り替 え(く れ る→ くれ な い)、3「 常 体 」 と 「丁 寧 体 」 の 切 り 替 え(く れ な い → くれ ま せ ん か)。   全 体 的 に 「聞 き 手 の 都 合 を 聞 く表 現 」(∼ くれ る 、 も らえ な い 等)の 方 が よ く使 わ れ た が 先 生 が 聞 き 手 で あ る場 合 、 願 望 表 現 を 使 う割 合 が 高 い(下 線 部1)。   日 本 人 話 者 は 、 親 し い ク ラ ス メ ー トに ノ ー トを 借 り る 際 「くれ る 」 の 否 定 形 が 多 い の に 対 し、 親 し く な い 場 合 「も ら え る 」 の 否 定 形 が 多 く使 わ れ て い る 。 しか し場 面6で は 、 親 し い に も関 わ らず 丁 寧 な 「も らえ る 」 の 使 用 が 多 く、 ノ ー トよ り5万 円 の 方 が 負 担 が 高 く な る た め だ と 考 え られ る(下 線 部2)。   外 国 人 学 習 者 の 場 合 は 、 同 じ状 況 で 「くれ る 」 か ら 「も ら え る 」 の 切 り替 え で は な く、 「常 体 」 か ら 「丁 寧 体 」 の 切 り 替 え が 一 般 的 に 使 わ れ る(下 線 部 3)。 しか し韓 国 人 学 習 者 は 、 日本 人 に 近 い 表 現 を 使 用 して お り 、 母 語 か らの 転 移 に よ る と 思 わ れ る 。   そ して 、 日 本 人 話 者 は 、 「くれ る 」 や 「も らえ る 」 の 表 現 に 「(か)な あ」 「(か)し ら」 と い う ぼ か し 表 現 が っ く こ と が あ る 。 こ の よ う な 表 現 を っ け る こ と に よ り、 依 頼 を 柔 らか くす る こ と が で き る 。 しか し、 ぼ か し表 現 は コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン に 絶 対 に 必 要 な 表 現 で は な く教 室 内 で は 普 通 教 え られ な い こ と か ら、 外 国 人 学 習 者 の 回 答 に は 頻 繁 に 出 て こ な い 。 (3)ま と め ① 親 疎 関 係 が 重 視 さ れ る 場 面 で は 、 日 本 人 話 者 の 場 合 、 依 頼 表 現 の 形 式 は 切 り替 え る が 依 頼 表 現 以 外 の ス トラ テ ジ ー は 殆 ど 切 り替 え な い 。 そ れ に 対 し、中 国 人 と ア メ リ カ 人 学 習 者 の 場 合 、 語 形 よ り 「常 体 」 と 「丁 寧 体 」 と の 間 で 切 り替 え る 人 が 多 い 。 ② 聞 き 手 が 目 上 の 人 で あ る 場 面 で は 、 日 本 人 、 外 国 人 話 者 ど ち ら に お い て も ス ト ラ テ ジ ー の 切 り替 え が す く な く、 「願 望 表 現 」 の 使 用 頻 度 が 高 い 。 ③ 依 頼 の 負 担 が 高 い 場 面 に お け る 結 果 は 、 聞 き 手 が 親 し く な い ク ラ ス メ ー トの 場 面 の 結 果 に 近 い 。 日本 人 、 韓 国 人 学 習 者 は 、 あ る 語 形 か ら も っ と 丁 寧 さ の 高 い 語 形 へ の 切 り替 え が 多 く、 中 国 人 、 ア メ リカ 人 学 習 者 は 語 形 よ り も、 「常 体 」 か ら 「丁 寧 体 」 へ の 切 り替 え が 多 い 。 ④ 一 般 的 に 、 韓 国 人 学 習 者 の 回 答 は 、中 国 人 、 ア メ リ カ 人 学 習 者 の 回 答 か ら は 離 れ て お り、 日 本 人 話 者 の ス ト ラ テ ジ ー に 近 い 傾 向 が あ る 。 韓 国 語 は 最 も 日 本 語 に 近 い 言 語 で あ る た め 、 ス ト ラ テ ジ ー の 使 い 分 け が 日 本 人 に 近 い と 思 わ れ る 。 しか し、 韓 国 人 学 習 者 の 回 答 に ぼ か し表 現 は 少 な か っ た 。 こ の こ と は 、 学 習 者 の 専 門 分 野 、 日 本 語 学 習 暦 、 勉 学 の 目 的 な ど の 影 響 だ と 考 え られ る 。 2.2.2  日 本 語 学 習 者 の 依 頼 に お け る ポ ラ イ トネ ス ス トラ テ ジ ー 一 日 本 語 学 習 者 の 母 語 と 日 本 語 の 比 較 一   和 田 、 堀 江 、 北 原 、 吉 本(2007)は 日 本 語 母 語 話 者 と 日 本 語 学 習 者 に お け る 依 頼 表 現 の 話 し言 葉 を 調 査 比 較 と し、 日 本 語 学 習 者 の 発 話 に お い て 母 語 と 日 本 語 と で 違 い は あ る の か 、 ま た 、 依 頼 す る 相 手(上 下 ・親 疎 関 係)に よ っ て 表 現 の 違 い が あ る の か を 母 語 と 口 本 語 で 比 較 ・分 析 し た 。 (1)調 査 の 概 要   調 査 対 象 、中 国 人 日 本 語 学 習 者18名 、 韓 国 人 日本 語 学 習 者6名 の 計24名 。 相 手 へ の 負 担 度 が 小 さ い も の か ら大 き い も の の5種 類 の 状 況 を 設 定 し、 そ の 状 況 に お い て ど の よ う に 発 話 す る か 記 入 して も ら い 、 分 析 す る 。 設 定 を し た 状 況 は 、 以 下 の5つ で あ る 。 Al A2 A3 A4 A5 ペ ンをか りた い 借 りる相 手 が 使 うか も しれ な い本 を借 りた い 携 帯 電 話 を借 りた い お金 を借 りた い 招 待 状 を書 いて ほ しい(先 生 の み) ま た 、 以 下 の 上 下 ・親 疎 関 係 を 想 定 して も ら う。 Bl B2 B3 B4 対 等 な関 係 で 親 しい 対 等 の関 係 だ が 親 し くな い 上 下 関 係 で あ るが 親 しい 上 下 関 係 で あ り親 し くな い   そ して 、 回 答 の依 頼 文 を分 の構 造 に よ り、 前 置 き 部 分 、 本 題 、 終 結 部 分 にわ け、 前 置 き部 分 と本 題 の

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順 番 や 表 出 方 法 にっ いて 分 析 す る と い う もの だ 。 (2)結 果 と考 察 く韓 国 人 と中 国 人 の 母 語 に よ る依 頼 の 比 較 〉   韓 国 語 で 依 頼 の 際 に最 も注 意 を して い たの は上 下 関 係 で あ っ た。 親 疎 関 係 にっ いて は、 親 しい相 手 も 親 し くな い相 手 も同 様 の 依 頼 表 現 を して い るが 、 上 下 関 係 が あ る場 合 に は、 丁 寧 に謝 罪 の 言 葉 を 述 べ 、 次 いで 状 況 ・理 由 説 明 にっ いて も詳 し く述 べ て か ら 依 頼 の 本 題 に入 り、 依 頼 本 題 の あ と に もお 礼 や 再 び 謝 罪 の 言 葉 を 発話 す る場 合 が 多 い。   逆 に中 国 語 の 場 合 に は、 あ ま り上 下 関 係 に よ る差 はな か った。 ほ とん ど同様 の表 現 が使 用 され て お り、 ど ち らか と い うと依 頼 の 負 担 度 が 高 い と感 じ られ る 依 頼 の 際 に上 下 関 係 に あ る相 手 へ の 説 明 が 長 くな っ て い る よ うで あ った 。 〈韓 国 人 と中 国 人 の 日本 語 に よ る依 頼 の 比 較 〉   韓 国 人 日本 語 学 習 者 は、 日本 語 で の 依 頼 の 際 、 母 語 で あ る韓 国 語 と ほ ぼ同 様 の 内 容 と な って い る。 対 して、中 国人 日本 語 学 習者 は、 日本 語 での依 頼 の際 、 母 語 で の 依 頼 よ り も丁 寧 な表 現 を 使 って い る場 合 が 多 い よ うで あ る。 ま た、 母 語 で 謝 罪 を 使 用 しな い場 合 で も、 日本 語 での依 頼 の際 に は多 く使 用 して い た。 2.3  日 本 語 と 中 国 語 の 依 頼 方 略 の 特 徴 一 先 行 研 究 の ま と め 一 2.3.1  日 本 語 母 語 話 者 と 中 国 語 母 語 話 者 の 依 頼 方 略 の 特 徴  中 国 語 で は 、 親 近 度 お よ び 距 離 度 に は 、 上 下 関 係 よ り親 疎 関 係 が 影 響 を 及 ぼ して い る と い う こ と で あ る 。 ま た 、 日 中 語 と も 配 慮 度 お よ び 改 ま り度 に っ い て は 、 上 下 関 係 に 影 響 さ れ や す い 。 目 上 の 人 に 依 頼 す る 場 面 に お け る 、 ポ ラ イ トネ ス 意 識 の 強 弱 に っ い て は 、 日中 語 で は 同 じ傾 向 を 示 して い る が 、 相 手 と の 親 疎 関 係 に よ っ て 同 一 の 機 能 的 な 発 現 頻 度 の 増 加 と 数 種 類 の 機 能 的 な 使 い 分 け に 違 い が 見 ら れ た 。 (李 、2006)。   親 近 度 、 距 離 度 に つ い て は 、 日 本 語 よ り中 国 語 の 方 が 親 疎 関 係 に 影 響 さ れ て い る と い こ と は 、中 国 語 の 方 が 、 親 疎 に よ る 依 頼 方 略 の 使 い 分 け は は っ き り して い る と い う こ と に な る 。   相 原(2008)も 日 本 語 と 中 国 語 の 依 頼 表 現 の 使 い 分 け に つ い て 論 じて い る 。 日 本 語 で は 、 直 接 依 頼 文 と 間 接 依 頼 文 の 比 率 は 変 化 す る も の の 、 ど の 相 手 に お い て も直 接 依 頼 文 よ り も間 接 依 頼 文 の 出 現 率 が 高 い の に 対 し、 中 国 語 で は 相 手 に よ っ て 間 接 疑 問 文 を 使 うか 直 接 疑 問 文 を 使 うか が は っ き り して い る と し て い る 。 こ の 結 果 は 、中 国 語 の 方 が 、 相 手 と の 親 し さ や 相 手 の 地 位 が 、 間 接 疑 問 文 を 使 うか 直 接 依 頼 文 を 使 うか と い う選 択 に 大 き な 影 響 を 与 え て い る(相 原 、2008)。 日本 語 で は ど の 相 手 に 対 して も遠 慮 が ち に 間 接 依 頼 文 を 用 い る の に 対 し、中 国 語 で は 相 手 と の 関 係 に よ り直 接 表 現 を 用 い 率 直 に 依 頼 が 行 わ れ る と 言 え よ う。   同 様 の 知 見 は 、 李(2006)で も示 さ れ て い る 。 李 は 、 ポ ラ イ トネ ス の 視 点 か ら中 国 語 と 口 本 語 の 依 頼 表 現 を 観 察 し、中 国 人 の 依 頼 は 感 性 的 で あ り、 親 し さ を 表 現 す る ポ ジ テ ィ ブ ・ポ ラ イ トネ ス を 多 用 し、 日 本 人 の 依 頼 は 理 性 的 で あ り、 礼 儀 正 し さ を 表 現 す る ネ ガ テ ィ ブ ・ポ ラ イ トネ ス を 多 用 す る と 論 じて い る 。 ポ ジ テ ィ ブ ・ポ ラ イ トネ ス は相 手 を 評 価 した り、 相 手 と の 親 し さ に 言 及 す る 方 略 に 現 れ る 。 例 え ば 、 翻 訳 を 依 頼 す る よ う な 場 面 で 、 「あ な た の 翻 訳 は 素 晴 ら し い よ ね 」 と 相 手 の 能 力 を 評 価 した り、 「あ な た な ら手 伝 って くれ る で し ょ」 と 親 し さ を 表 現 す る 方 略 が 用 い られ る 。 こ れ に 対 して 、 ネ ガ テ ィ ブ ・ポ ラ イ ト ネ ス は 「わ き ま え 」 を 示 す と も 言 わ れ 、 「迷 惑 を か け て し ま う け ど 、 す み ま せ ん 」 と 相 手 の 負 担 に 言 及 し謝 る こ と で 、 相 手 へ の 思 い や り を 示 す の が ネ ガ テ ィ ブ ・ポ ラ イ トネ ス の 方 略 で あ る 。 山 岡 ・李 (2004)は 、 こ の 方 略 に っ い て 、 日本 語 に は 配 慮 を 表 現 す る 派 生 的 な 文 法 形 式 が 多 数 存 在 す る の に対 し、 中 国 語 に は そ の よ う な 派 生 的 な 文 法 形 式 が 少 な い こ と を 見 出 して い る(山 岡 ・李 、2004)。 日本 語 で は さ ま ざ ま な 間 接 表 現 を 用 い 、 遠 慮 を 表 現 し た り、 相 手 の 負 担 に 言 及 す る ネ ガ テ ィ ブ ・ポ ラ イ トネ ス が 示 さ れ る が 、 中 国 語 の 依 頼 は よ り率 直 に な さ れ 、 相 手 へ 思 い や り を 示 す よ り、 相 手 へ の 親 し さ を 表 現 す る ポ ジ テ ィ ブ ・ポ ラ イ トネ ス が 優 勢 で あ る こ と が 予 想 さ れ る 。 そ れ で は 、 日 本 で 日 本 語 を 学 習 し た中 国 人 日 本 語 学 習 者 の 依 頼 表 現 は ど の よ う な 特 徴 を 持 っ の だ ろ うか 。 2.3.2  中 国 人 日本 語 学 習 者 の 中 間 言 語 方 略 の 特 徴   日本 語 を学 習 して い な い中 国 人 母 語 話 者 と、 日本 語 を学 習 し、 日本 に在住 す る 日本 人母 語 話 者 とで は、 後 者 は 日本 の言 語 文 化 の 影 響 を受 け、 よ り 口本 人 の 依 頼 方 略 に近 づ くの で は な いか と言 わ れ て い る。 っ ま り、中 国 人 日本 語 学 習 者 の依 頼 方 略 に は、 母 語 で あ る中 国 語 の依 頼 方 略 が 干 渉 す る部 分 と 目標 言 語 で あ る 口本 語 の依 頼 方 略 が 影 響 す る部 分 、 そ して 表 現

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の 簡 略 化 に 見 られ る よ う な 第 二 言 語 学 習 者 独 特 の 依 頼 方 略 が 入 り 混 じ る と 考 え られ る 。 な お 、 本 研 究 で は 、 母 語 で あ る 中 国 語 の 干 渉 と 、 目 標 言 語 で あ る 日 本 語 の 影 響 に 焦 点 を あ て る た め 、 母 語 で あ る 中 国 語 で 回 答 して も ら っ た 。 こ の た め 第 二 言 語 学 習 者 独 特 の中 間 言 語 方 略 に っ い て は 、 考 察 か ら外 して い る 。   日 本 語 と 中 国 語 の 中 間 言 語 方 略 に つ い て は 、 親 疎 関 係 が 重 視 さ れ る 場 面 で は 、 日 本 人 話 者 の 場 合 、 依 頼 表 現 の 形 式(語 形)は 切 り替 え る が 依 頼 表 現 以 外 の ス トラ テ ジ ー は ほ と ん ど 切 り替 え な い の に 対 し、 中 国 人 学 習 者 の 場 合 、 語 形 よ り も 「常 体 」 と 「丁 寧 体 」 と の 間 で 方 略 そ の もの を 切 り替 え る 人 が 多 い 。 依 頼 の 負 担 が 高 い 場 面 に お い て も 、 日 本 人 話 者 は 、 あ る 語 形 か ら も っ と 丁 寧 さ の 高 い 語 形 へ の 切 り替 え が 多 く、中 国 人 学 習 者 は 語 形 よ り も 「常 体 」 か ら 「丁 寧 体 」 へ の 方 略 の 切 り替 え が 多 い(エ レ ン ・ナ カ ミズ 、1992)。 日 本 語 で は 依 頼 方 略 自 体 は 定 型 化 し単 一 で あ る の に 対 し、 中 国 語 学 習 者 の 依 頼 方 略 は 、 さ ま ざ ま な 方 略 が 用 い られ る こ と が う か が え る 。   さ ら に 、中 国 人 日 本 語 学 習 者 の 母 語 で の 依 頼 と 日 本 語 で の 依 頼 表 現 の 違 い を 見 て み る と 、 中 国 人 日 本 語 学 習 者 が 日 本 語 で の 依 頼 の 際 、 母 語 で の 依 頼 よ り も 丁 寧 な 表 現 を 使 っ て い る 場 合 が 多 い よ うで あ る 。 ま た 、 母 語 で 謝 罪 を 使 用 し な い 場 合 も 、 日 本 語 で の 依 頼 の 際 に は謝 罪 を 多 く使 用 して い た(和 田 、 堀 江 、 北 原 、 吉 本 、2007)。 そ し て 、 依 頼 の 「予 告 」 や 「先 行 発 話 」 に お い て 、 差 が 見 ら れ た と い う知 見 も あ る 。中 国 人 留 学 生 は 「予 告 」 を 多 くの 者 が 用 い て お り、 会 話 の 早 い 段 階 で そ の 会 話 の 意 図 が 依 頼 で あ る と 相 手 に 伝 え て い る 。 ま た 、 日 本 人 学 生 は 依 頼 に あ ま り関 わ り が な い と 見 られ る 「先 行 発 話 」 が 多 く 見 られ 、 中 国 人 留 学 生 は 、 相 手 が は っ き り断 っ て い る 時 は 、 依 頼 を 繰 り替 え さ な い が 、 否 定 的 な 反 応 を 示 す だ け で は 依 頼 を 繰 り返 す 。 ま た 、 日 本 人 学 生 は 「詫 び る」 方 略 を 頻 繁 に 使 用 して い る こ と も見 出 し て い る(小 林 、2004)。   こ う して中 国 人 日 本 語 学 習 者 の中 間 言 語 方 略 に 関 す る 先 行 研 究 か ら は 、 そ の 依 頼 方 略 に は 母 語 の 依 頼 方 略 と 日 本 語 の 依 頼 方 略 の 影 響 が あ る こ と が 予 測 さ れ る 。 そ れ で は 、 依 頼 方 略 の ど の 部 分 に 母 語 の 干 渉 が 残 り、 ど の 部 分 が 日 本 語 の 方 略 の 影 響 を 受 け る の だ ろ う か 。 ま た 、 そ の よ う な 方 略 の 使 用 傾 向 と 学 習 者 の 日 本 語 学 習 歴 と は 関 係 が あ る の だ ろ う か 。   楊(2004)は 、 親 し さ を 示 す 中 国 式 ス トラ テ ジ ー で あ る ポ ジ テ ィ ブ ・ポ ラ イ トネ ス の 使 用 率 は 学 習 歴 と と も に減 少 す る傾 向 に あ る が 、 日本 式 ス トラ テ ジ ー と さ れ る 遠 慮 を 示 す ネ ガ テ ィ ブ ポ ラ イ トネ ス の 使 用 率 は 学 習 歴 と あ ま り 関 係 が な い と して い る(楊 、 2004)。 中 国 人 日 本 語 学 習 者 の 親 し さ を 示 す 依 頼 方 略 は 、 日 本 語 学 習 歴 が 長 く な る と 、 減 少 す る が 、 遠 慮 を 示 す 依 頼 表 略 は 日 本 語 学 習 歴 が 長 くて も、 な か な か 身 に っ か な い こ と が わ か る 。   しか し、 日 本 語 能 力 に よ る 違 い が あ って も、 日本 語 学 習 歴 、 口 本 在 住 期 間 が 長 け れ ば 、 中 国 人 日 本 語 学 習 者 の 依 頼 方 略 は 同 じ よ う な 傾 向 を 示 す の だ ろ う か 。 先 行 研 究 で は 、 こ の 点 に つ い て 論 じ た 研 究 は ほ と ん ど な い 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 、 非 日 本 語 学 習 者 と 、 口 本 に 長 期 間 在 住 す る 中 国 人 日 本 語 学 習 者 に 対 し、 依 頼 方 略 に 関 す る ア ン ケ ー ト調 査 を 行 うが 、 さ ら に 後 者 を 一 級 能 力 試 験 に 合 格 し た 学 習 者 と 、 ま だ 合 格 して い な い 学 習 者 の グ ル ー プ に分 け た 。 こ れ は 、 先 行 研 究 で 言 及 さ れ て い な い 、 口本 語 学 習 能 力 の 違 い に よ る 、 依 頼 方 略 の 使 用 傾 向 を 探 る た め で あ る 。 第3章   依 頼 表 現 につ いて の 調 査   本 研 究 で は、 日本 人 母 語 話 者 と 中国 人 母 語 話 者 及 び中国人 日本語 学習 者 の依 頼方 略 に関 す る調 査 を行 っ た。 被 験 者 に想 定 して も ら う依 頼 場 面 は大 学 生 が 日 常 的 に行 う もので 負 担 度 が 異 な る と考 え られ る4場 面 「駅 へ の迎 え を 頼 む 」 「携 帯 電 話 を 借 りる依 頼 」 「一 ヶ月 前 に貸 した本 の返 却 依 頼 」 「約 束 した 日時 変 更 の 依 頼 」 を親 疎 上 下 関 係 の異 な る相 手 に対 しど の よ うに表 現 す るか 、 自 由記 述 して も ら った。 3.1  調 査 の 概 要 〈 調 査 の 方 法 と時 期 〉   依 頼 場 面 を設 定 した ア ンケ ー ト用 紙 を 日本 人 母 語 話 者 と中 国 人 母 語 話 者 に配 り、 ど の よ うに依 頼 す る か を 記 述 して も ら う方 法 を と っ た。 質 問 紙 の配 布 と 回 収 は2008年6月 か ら11月 の間 に行 い、 そ の後 随 時 イ ンタ ビュ ー に よ る調 査 を加 え た。 〈被 験 者 〉   本 研 究 で は、中 国 人 日本 語 学 習 者 の母 語 の干 渉 を 見 る た め、 ① 在 日年 数0年 、 非 日本 語 学 習 者(20代 女 性)10人 、 ② 在 日年 数5年 以 上 、 日本 語 検 定1級 以 下(20代 女 性)11人 、 ③ 在 日年 数5年 以 上 、 日本 語 検 定1級 所 持(20代 女 性)11人 、 ④ 日本 人 母 語 話 者(20代 女 性)20人 の 被験 者 に協 力 を して もら った。 〈設 定 した依 頼 内 容 と依 頼 相 手 〉   依 頼 場 面 は親 疎 関 係 や 上 下 関 係 に 日本 文 化 圏 よ り

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中国 文 化 圏 の ほ う が 影 響 さ れ や す い と い う先 行 研 究 の 結 果 を も と に 作 成 し た 。 在 日 年 数5年 以 上 の 日 本 語 検 定1級 所 持 者 は 日 本 語 母 語 話 者 の 依 頼 方 略 を ど こ ま で と っ て い る か 、 ど の 部 分 に 母 語 の 干 渉 が 見 ら れ る か を 見 る た め 四 っ の 依 頼 場 面 を 設 定 し た 。 場 面 ① 「(駅か ら 自 宅 ま で 歩 い て 帰 る に は 遠 い の で) 駅 ま で 迎 え に 来 て ほ し い と 頼 む 。」 「因 力 杁 李 立占走 回 家,路 程 太 近 。 所 以 拝 托 拝 来 接 一 下 。」 依 頼 相 手:家 族(両 親)〈 親 ・上 〉 、 親 し い 近 所 の 友 人 く 親 ・同 〉 場 面 ② 「(ケ ー タ イ を 忘 れ て し ま い)電 話 を か け る た め に ケ ー タ イ を 貸 して ほ し い と 頼 む 。」 「因 力 忘 氾 帯 手 机,所 以 向 別 人 借 手 机 打 屯 活 。」 依 頼 相 手:親 し い先 輩 く親 ・上 〉、 親 しい後 輩 く親 ・ 下 〉 、 親 し い 友 人(同 年 代)〈 親 ・同 〉 、 親 し く な い 友 人(同 年 代)〈 疎 ・同 〉 場 面 ③ 「(一 ヶ 月 前 に 貸 し た)本 を 早 く返 し て ほ し い と 頼 む 。」 「希 望 皇 回 一 ノト月 前 借 出 去 的 弔 。」 依 頼 相 手:親 し い 先 輩 く親 ・上 〉、 親 しい後 輩 く親 ・ 下 〉 、 親 し い 友 人(同 年 代)〈 親 ・同 〉 、 親 し く な い 友 人(同 年 代)〈 疎 ・同 〉 場 面 ④ 「(相談 の た め に)自 分 か ら 申 し 出 た 約 束 を 都 合 が 悪 い の で 日 を 変 え て ほ し い と 当 日 頼 む 。」 「我 主 功 定 的 釣 会,因 力 突 然 那 天 有 事,所 以 想 改 吋 同 。」 依 頼 相 手:親 し い 先 生 く 親 ・上 〉 、 親 し く な い 先 生 く 疎 ・上 〉 、 親 し い 友 人(同 年 代)〈 親 ・同 〉 、 親 し く な い 友 人(同 年 代)〈 疎 ・同 〉 〈 表 現 機 能 〉   本 研 究 で は 表 現 機 能 に 注 目 を し、 そ の 発 話 頻 度 を 見 て い き 、 使 用 さ れ た 表 現 機 能 に っ い て 発 話 例 と と も に 説 明 を して お き た い 。 ま ず 、 下 記 の 表 現 機 能 を も と に ア ン ケ ー トを 集 計 し た 結 果 を 表3に て 見 て い く。 表3  表 現 機 能

表現機能

依頼

質 問(依 頼) 説 明 呼 び か け

質問

配慮

謝罪

感謝

相談

貢献

提案

急 か し

事実確認

機能説明

依 頼 の 意 を表 す 。 依 頼 の 意 を質 問型 に して表 す 。 事 情 ・理 由 を 話 す 。 相 手 に 呼 び か け る表 現 。 相 手 の 現 在 の状 況 や 意 見 を 聞 い て い る表 現 。 心 配 り を 表 す 。 お 詫 び を表 す 。 感 謝 の 意 を表 す 。 相 手 の 意 見 を求 め る表 現 。 物 な ど で 奉 仕 す る と い っ た 表 現 。 依 頼 の 遂 行 を促 す た め に 、案 を提 示 して い る表 現 。 相 手 を 急 が せ る表 現 。 す で に あ っ た こ と を 確 認 す る 表 現 。

発話例

迎 え に 来 て 。 返 し て 。 借 り て も い い? ケ ー タ イ 忘 れ た か ら 、 先 生 、 先 輩 、 本 、 読 み 終 わ っ た? 時 間 が あ れ ば 、 す み ま せ ん 。 あ り が と う 。 ど う し ま し ょ う? 今 度 、 ご ち そ うす る 。 タ ク シ ー 呼 ん で(迎 え に 来 て)。 早 く  (返 し て)。 前 に本 貸 した よね? 3.2  調 査 結 果 (1)在 日年 数0年 の 中 国 在 住 非 口本 語 学 習 者(中 国 人)の 依 頼 在 日年 数0年 の 非 日本 語 学 習 者(中 国 人)が 設 定 し た① ∼ ④ の 依 頼 を 行 う と表 現 機 能 の 使 用 は次 の表4 の よ う に な った 。 例 と共 に説 明 を して お き た い。   場 面 ① で は家 族 、 親 しい近 所 の 友 人 共 に質 問 型 の 依 頼 よ りも直 接 的 な 依 頼 の 使 用 の 方 が や や 多 く見 ら れ 、 質 問 、 配 慮 に関 して は家 族 と親 しい近 所 の友 人 で 差 が 見 られ た 。 家 族 に は して いな い質 問 、 配 慮 だ が、親 しい近 所 の友 人 には 「弥 有空 喝(時 間 あ る?)」 と 言 っ た 質 問 や 配 慮 が 見 られ 、 相 手 の 状 況 を ふ ま え 断 る 余 地 を あ た え て い る こ と が わ か る 。   場 面 ② で は 、 親 し い 後 輩 と 親 し い 友 人 に 質 問 型 の 依 頼 で は な く 「手 机 借 我 打 企 屯 活(ケ ー タ イ、 ち ょ っ と 使 わ せ て)」 と 直 接 的 な 依 頼 を して い る の に 対 し、 親 し い 先 輩 と 親 し く な い 友 人 に っ い て は 直 接 的 な 依 頼 と 質 問 型 の 依 頼 は 半 々 と な って い る 。 謝 罪 機 能 に っ い て は 親 し い 後 輩 ・親 し い 友 人 に は 見 られ ず 、 親 し い 先 輩 ・親 し く な い 友 人 に 「清 向,手 机 可 以 借 我 打 ・↑'屯活 喝(ご め ん 、 ケ ー タ イ ち ょ っ と 使 わ せ て も ら って も い い?)」 と 言 う よ う な 形 で や や 見 られ る 。

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表4「 在 日年 数0年 の 中 国 在 住 非 日本 語 学 習 者 の 発 話 機 能 」

依頼

質 問(依) 説 明 呼 び か け

質問

配慮

謝罪

感謝

相談

貢献

提案

急 か し

事実確認

依 頼 しな い

場面①

親上 6 4 2 2 1 1 親同 6 3 1 1 3 5 1

場面②

親上 5 5 3 2 3 親下 8 2 3 2 親 同 10 4 1 疎 同 4 6 3 1 3 4

場面③

親上 1 3 1 1 8 4 親下 3 3 1 5 2 4 親 同 4 4 3 2 1 3 疎 同 4 3 4 5 1 4

場面④

親上 1 9 10 1 8 疎上 4 6 10 1 9 親 同 8 2 10 5 疎 同 5 5 10 9 こ の 二 点 か ら、 親 し い 後 輩 と 親 し い 友 人 へ の こ の 依 頼 は と て も行 い や す い もの と 言 え 、 親 し い 先 輩 と 親 し く な い 友 人 に は 少 し気 を 使 う依 頼 と 言 え る 。 しか し、 謝 罪 よ り も感 謝 の 意 を 述 べ る 者 が 多 く ポ ジ テ ィ ブ に 依 頼 して い る こ と が わ か る 。   場 面 ③ で は 他 の 依 頼 場 面 と は 異 な り、 「弔 看 好 了 公(本 読 み 終 わ っ た?)」 と 言 う よ う な 質 問 や 、 「上 月 借 弥 的 …(前 に 貸 して た 本 …)」 と 言 う よ う な 事 実 確 認 が 頻 繁 に 見 られ る 。 ま た 、 場 面 ① 、 ② と 比 べ て 直 接 的 な 依 頼 を 避 け て い る が 、 直 接 的 な 依 頼 を し な か っ た 者 全 て が 質 問 型 の 依 頼 を して い る わ け で は な い 。 「弔 什 公 吋 候 看 好(本 は い つ 読 み 終 わ る?)」 と 言 っ た 質 問 の 使 用 が 多 く な っ て お り間 接 的 に 依 頼 して い る こ と が わ か る 。 ま た こ の よ う な 質 問 、 事 実 確 認 が 見 られ る と こ ろ か ら、 依 頼 相 手 か ら何 らか の ア ク シ ョ ンを 期 待 して い る と 考 え られ る 。   場 面 ④ で は 、 親 し い 友 人 に 対 す る 謝 罪 機 能 以 外 で は 、 ほ ぼ 全 て の 被 験 者 が 全 て の 依 頼 相 手 に 対 して 依 頼 、 説 明 、 謝 罪 だ け を 使 用 して い る 。 しか し、 直 接 的 な 依 頼 と 質 問 型 の 依 頼 と で は 差 が 出 て い る 。 こ の 依 頼 場 面 で の 直 接 的 な 依 頼 と 質 問 型 の 依 頼 は 、 親 し い 先 生 に 対 して は 質 問 型 の 依 頼 に 偏 り、 親 し く な い 先 生 と 親 し くな い 友 人 が ほ ぼ 半 々 に 分 か れ て い る 。 ま た 、 親 し い 友 人 に は 直 接 的 な 依 頼 に 偏 りを 見 せ て い る 。 こ の 依 頼 の 場 合 、 親 し い 友 人 に は 気 兼 ね な く 頼 む こ と が で き る と 考 え られ 、 親 し く な い 先 生 よ り 親 し い 先 生 の 方 が 質 問 型 の 依 頼 が 多 い こ と に つ い て は 、 親 し く な い 先 生 に 対 して は 事 務 的 に 対 応 を し、 親 し い 先 生 に 対 して は 、 親 し く な い 先 生 よ り気 を 使 う な ど の 感 情 が 入 る た め だ と イ ン タ ビ ュ ー 調 査 で 答 え て い る 。 ま た 、 他 の 依 頼 場 面 と 比 べ る と 説 明 と謝 罪 の 出 現 頻 度 が 格 段 に 上 が って い る こ と か ら、 他 の 依 頼 場 面 よ り も理 由 もふ ま え て 理 解 し ほ し い も の だ と 見 られ る 。 ま た 「不 好 意 思,我 那 天 有 事,下 一 次 好 喝(す み ま せ ん 。 あ の 日 、 用 事 が で き て し ま っ た ん で 日 を 変 え て も らえ ま せ ん か?)」 の よ う に く 謝 罪 → 説 明 → 質 問(依 頼)〉 の 順 で 依 頼 を 行 う が 多 く、 こ の 依 頼 場 面 ④ で は 定 型 表 現 が あ る よ うだ 。 (2)在 日年 数5年 以 上 の 日本 語 能 力 検 定1級 以 下 の 日本 語 学 習 者(中 国 人)の 依 頼   在 日年 数5年 以 上 の 日本 語 学 習 者 で 日本 語 検 定1 級 以 下 の 者 が 、 設 定 した① ∼ ④ の依 頼 を行 うと表 現 機 能 の使 用 は次 の表5の よ うに な った。   場 面 ① で は、 在 日年 数0年 の非 日本 語 学 習 者 同 様 に質 問 型 の依 頼 よ り も直 接 的 な依 頼 の使 用 の方 が や や 多 く見 られ る。 ま た家 族 へ の説 明 に関 して 見 る と 在 日年 数0年 の非 日本 語 学 習 者 よ り、 や や 増 え て い る。 しか し親 しい近 所 の 友 人 に関 して は説 明 の機 能 は在 口年 数0年 の非 日本 語 学 習 者 と同 様 あ ま り見 ら れ な い。 配 慮 に関 して も、 近 所 の親 しい友 人 に対 し 半 数 の者 が 使 用 して い るが 、 家 族 へ は あ ま り使 用 し て お らず 「我 在 牟 立占,快 点 来 接 我(駅 に い るか ら、 早 く迎 え に来 て ほ しい)」 と言 った説 明 と依 頼 の 形

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表5「 在 日年 数5年 以 上 の 日本 語 能 力 検 定1級 以 下 の 日本 語 学 習 者(中 国 人)の 発 話 機 能 」

依頼

質 問(依) 説 明 呼 び か け

質問

配慮

謝罪

感謝

相談

貢献

提案

急 か し

事実確認

依 頼 しな い

場面①

親上 7 4 5 3 1 2 1 1 親 同 6 3 1 1 3 5 1

場面②

親上 1 10 3 2 1 1 親 下 5 6 2 1 1 親 同 9 2 1 1 疎 同 3 7 3 1 1

場面③

親上 2 4 4 1 6 2 2 6 親 下 6 1 3 4 1 8 親 同 6 2 5 4 2 5 疎 同 4 1 5 5 3 5 1

場面④

親上 1 7 9 4 8 2 疎上 1 7 8 2 10 親 同 7 3 9 2 1 疎 同 4 4 8 5 が 多 く見 られ 、 家 族 に は ほぼ 迎 え に来 て も らえ る と 言 う前 提 で 依 頼 を して お り、 ま た近 所 の 親 しい友 人 に は 「有 吋 同喝,来 接 我 一 下 我 喝(時 間 が あれ ば 、 ち ょ っ と迎 え に来 て くれ な い?)」 と言 った配 慮 と 依 頼 の 形 が 多 く見 られ 、 近 所 の親 しい友 人 に は断 る 余 地 を 残 した依 頼 と な って い る こ とが わ か る。   場 面 ② で は、 親 しい先 輩 へ 対 して 質 問 型 の 依 頼 に 偏 り、 親 しい後 輩 に対 して は半 々 、 親 しい友 人 で は 直 接 的 な 依 頼 に偏 り、 親 し くな い友 人 で は親 しい先 輩 ほ どで はな い が質 問型 の依 頼 に偏 りを見 せ て い る。 依 頼 を 質 問 型 にす る こ と に よ り依 頼 相 手 に断 る余 地 を 与 え 依 頼 相 手 が 負 うで あ ろ う負 担 を 軽 減 して い る と考 え られ る。 また 、 親 しい先 輩 と親 し くな い友 人 に は質 問 型 の 依 頼 に偏 っ た こ と と合 わ せ て 考 え て も 親 しい先 輩 と親 し くな い友 人 に はや や 行 い に くい依 頼 と言 え そ うだ 。 ま た、 他 の 依 頼 相 手 に は見 られ る 説 明 が親 しい友 人 に は全 く見 られ な い。 「屯活 接 我 一 下(ケ ー タ イ貸 して)」 な ど の よ う に直 接 依 頼 だ けで 終 わ って い る者 も多 く、 親 しい友 人 に は とて も 行 いや す い依 頼 内 容 と言 え る。   場 面 ③ で は、 依 頼 相 手 が 親 しい先 輩 で あ る場 合 、 質 問 型 の 依 頼 が 直 接 的 な 依 頼 に比 べ や や 多 くな り、 他 の 親 しい後 輩 ・友 人 、 親 し くな い友 人 へ は質 問 型 の 依 頼 で は な く、 直 接 的 な依 頼 を 用 いて い る。 在 日 年 数0年 の 非 日本 語 学 習 者 に比 べ る と依 頼 機 能 は多 く使 用 され て い る。 しか し、 直 接 的 な依 頼 と質 問 型 の 依 頼 を 合 わ せ て も全 員 が ど ち らか の 依 頼 を 使 用 し て い るわ けで は な く 「我 要 用 一 下 上 回 我 借 祢 的 弔, 弥 看 完 了 喝(前 に貸 して た本 使 い た いん で け ど見 終 わ った?)」 の よ うに説 明、 質 問 、 事 実 確 認 で 終 わ らせ て い る者 もお り、 依 頼 相 手 か らの何 らか の ア ク シ ョ ンを 期 待 して い る と考 え られ る。 ま た、 在 日年 数0年 の 非 日本 語 学 習 者 と違 うと ころ は説 明 の機 能 が 増 え て い る と こ ろだ 。 依 頼 相 手 に 自分 の状 況 を理 解 して も らい た い現 れ だ ろ う。 よ りス ム ー ズ に 自 ら の依 頼 を 達 成 させ る た め に依 頼 場 面 ① 、 ② と は全 く 違 う被 験 者 の 意 図 が 見 られ る。 親 しい先 輩 に関 して は、 自分 が 貸 した本 を返 して も ら うの に謝 罪 の機 能 も見 られ る。 気 を まわ して い る印 と言 え るだ ろ う。 場面 ④ で は、在 日年 数0年 の非 日本語 学 習 者 と同様 、 依 頼 、 説 明 、 謝 罪 の 機 能 に偏 って い る。 直 接 的 な依 頼 と質 問 型 の依 頼 の 依 頼 相 手 に対 す る使 い分 け も在 日年 数0年 の非 日本 語 学 習 者 と似 て い る。 説 明 、 謝 罪 の 機 能 も似 て お り、 他 の依 頼 場 面 と比 べ 高 頻 度 で 使 用 され て い る こ とか ら、 他 の依 頼 場 面 よ り も理 由 もふ まえ て 理 解 いて ほ しい もの と見 られ る。 (3)在 日年 数5年 以 上 の 日本 語 能 力 検 定1級 合 格 の 日本 語 学 習 者(中 国 人)の 依 頼   在 口年 数5年 以 上 の 日本 語 学 習 者 で 日本 語 能 力 検 定1級 所 持 者 が、 設 定 した ① ∼ ④ の依 頼 を行 う と表 現 機 能 の 使 用 は次 の 表6の よ うに な っ た。   場 面 ① で は、 家 族 に対 して は質 問 型 の依 頼 で は な く直 接 的 な依 頼 に大 き く偏 り、 逆 に親 しい近 所 の友

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