論 文
産業応用工学会論文誌, Vol. 9, No. 1, pp. 25-30 (Mar. 2021)
The Japanese Journal of the Institute of Industrial Applications Engineers
Online edition: ISSN 2187-5146, Print edition: ISSN 2189-373X, DOI: 10.12792/jjiiae.9.1.25
高齢者の「食の安全」を目指す嚥下食の定量化へ向けた
簡易粘性評価法の提案
遠藤 彩華
a高橋 史夫
b小野寺 良二
a宍戸 道明
a, *Proposal of Simple Viscosity Evaluation Method for Quantification of
Swallowing Foods Aiming at "Food Safety" for Elderly
Ayaka Endo
a, Fumio Takahashi
b, Ryoji Onodera
a, Michiaki Shishido
a,*(Received December 8, 2020; accepted January 6, 2021)
Abstract
The review and improvement of dysphagia patient’s diet is effective in prevent aspiration pneumonia onset. However, it is qualitative to add a thickener to the liquid foods in the sites of medical and nursing care, based on the subjectivity and experience of dietitians. Thus, a simple measuring machine that quantitatively evaluates the viscous liquid foods was developed. The obtained value is defined as "Thickness Resistance Value (TRV)" and treated as a unit unique to this machine. However, the relationship between TRV and viscosity has not been clarified yet. In this study, this relationship was clarified by using standard liquids for calibrating viscometers and drinking water with thickener added. As a result, the coefficient of variation of TRV was 4% or less when standard liquids for calibrating viscometers was measured. In addition, TRV and viscosity on drinking water with thickener added showed a strong positive correlation. Thus, by introducing the machine to the sites of medical and nursing care, it will be possible to quantitatively evaluate the viscosity of drinking water with thickener added. Therefore, it is expected to improve the quality of life of people with dysphagia and lighten the burden of nursing care.
キーワード:レオロジー,粘度,嚥下障害,介護支援,生活の質 Keywords : rheology, viscosity, dysphagia, care support, quality of life.
1. 緒言 近年,少子高齢化の進行にともない肺炎患者が増加し ている。とりわけ,2011 年には肺炎による死亡者数が脳 血管疾患による死亡者数を上回り,肺炎が三大死因のひ とつとなった(1)。この肺炎死亡者の約9 割以上が 65 歳以 上の高齢者であり,その多くは誤嚥性肺炎であるといわ れている。誤嚥性肺炎患者の多くが高齢者である要因の ひとつとして,加齢にともなう摂食および嚥下機能の低 下が挙げられる。これにより,食物を唾液と混ぜ合わせ て食塊を形成する機能が低下し,誤嚥しやすくなるとい われている(2)。また,摂食・嚥下障害による誤嚥は,食べ る楽しみや食欲を低下させることから,嚥下困難者の 生 活の質に影響を及ぼしている。このような嚥下困難者の 食事中における液状食品の誤嚥防止には,対象者の摂食 状況レベルに応じた粘性抵抗を液状食品へ付与すること が効果的である。 また,液状食品へ粘性抵抗を付与する 手段のひとつとして,増粘剤を液状食品へ添加すること が挙げられる。 粘性抵抗の指標として,厚生労働省は平成 21 年 4 月 から旧「高齢者用食品」に含まれた「そしゃく・えん下 困難者用食品」を廃止し,新たに「えん下困難者用食品 許可基準」を策定した(3)。また,他の粘性抵抗の指標とし て,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整分 類2013 (とろみ)(4)や,日本食品協議会によるユニバーサ ルデザインフード(以下,UDF)自主規格(5)がある。嚥下困
* Corresponding author. E-mail: [email protected] a 鶴岡工業高等専門学校
〒997-8511 山形県鶴岡市井岡字沢田 104 National Institute of Technology, Tsuruoka College 104, Sawada Inooka, Tsuruoka, Yamagata, Japan 997-8511 b 株式会社ガオチャオエンジニアリング
〒997-0033 山形県鶴岡市泉町 8-27 Gaoqiao Engineering corp.
難者の食事を見直し,栄養状態の改善を図ることは誤 嚥 性肺炎の発症を抑制する効果が認められている(6)。その 一方で,高齢者施設や病院において液状食品に付与する 粘性抵抗の程度は 調理従事者である栄養士や管理栄養士 らの主観に委ねられており,これらの指標を参照にして いない現状にある 。高齢者施設や病院に勤める職員 164 名を対象とし,増粘剤の添加量の目安・基準の有無につ いて調査したところ,人によって基準が異なると回答し た施設は46%,基準がないと回答した施設は 15%であっ た(7)。そのため,液状食品に付与する粘性抵抗の程度は 作り手によってばらつきが生じる(8)と報告されている。 現状において,液状物の粘性抵抗を測定する方法は回 転式粘度計が主流である。しかし,一般的に回転式粘度 計は高価であり操作が複雑であるため,介護や医療現場 への導入は困難である。そのため,粘性抵抗の 定量化に は安価かつ操作が容易な機器が求められる。そこで, 株 式会社ガオチャオエンジニアリングにより 液状食品の粘 性を簡易的に測定するとろみ抵抗測定器が開発された。 本測定器は,液状物の攪拌時に測定子に生ずる抵抗を数 値化する。得られた値を Thickness Resistance Value(Tr 値) と定義し,粘性抵抗を評価する本測定器独自の単位とし て扱う。しかし,Tr 値と従来の測定手法である粘度との 関係は未だ解明されていない 。この解明は,本測定器に よる簡易粘性評価法の確立に必要不可欠である。 また, この簡易粘性評価法を介護産業だけでなく医療産業など に導入することによって,対象者に応じた粘性抵抗を付 与した食事の提供が可能となり,その成果として 医療や 介護現場で働く調理従事者の業務改善や嚥下困難者の生 活の質向上が期待される。 本研究では,粘度計校正用標準液および増粘剤を添加 した飲料水によってTr 値と粘度の関係を明らかにし,医 療や介護現場におけるとろみ抵抗測定器 による簡易粘性 評価法の実用性を検討した。 2. とろみ抵抗測定器の概要 2.1 システム構成
Fig.1 にとろみ抵抗測定器の概略図を示す。Fig.1 (a)は
測定器の全体を,Fig.1 (b)は測定部の構成を示す。本測定 器は,コントロールボックスと測定部から構成される。 コントロールボックスは電源,PLC,モータドライバ,測 定回路,タッチパネルを内蔵し,測定部はモータ, イン ナー,止めネジ,測定子からなる。とくに測定部は,モ ータに測定している液状物が触れないよう,測定子とモ ータの間にインナーを挟む必要がある。 その後,止めネ ジによりモータの回転子に測定子を固定させて使用する 。 また,インナー,止めネジ,測定子,メジャーカップは ステンレス製(SUS316)であるため煮沸消毒可能であり, 食品を衛生的に測定することができる。また,回転数や
(a) Overview of the measuring instrument
(b) Configuration of measuring unit
Fig. 1. Schematic diagram of the Thickening Resistance.
測定時間の設定,測定子の交換が不要であるため, 回転 式粘度計と比較し容易に扱うことができる。 2.2 測定手順 メジャーカップに試料を約300 cc 入れ,その上に測定 部を静置した後に測定を開始する。コントロールボック スに内蔵されているタッチパネルにて,測定開始や中止 などの機器制御を行う。測定を開始すると,静止流体中 を測定子が回転し,それによってモータにかかる負荷(電 流)を読み取り数値として出力する。なお,測定時間は 約2 分であり,測定結果は小数点第一位までの数値がタ ッチパネルに表示される。 3. 実験方法 3.1 粘度計校正用標準液による粘性評価 ニュートン流体として扱える粘度計校正用標準液(株 式会社三商)を試料とした。なお,10,100,500,1000 mPa・s を基準値とする計 4 種の試料を使用し,各試料の 温度は20±2 ℃とした。なお,試料の主成分は無毒性の シリコン流体である。粘度の測定には回転式粘度計 (LV DV1M, 英弘精機株式会社)を,Tr 値の測定にはとろみ抵 抗測定器を用いた。実験に使用した回転式粘度計は単一 Measuring cup h1 h 2 Control box Measuring unit Probe
Set screw Inner
Motor w1 : 170mm w2 : 110mm
h1 : 240mm h2 : 170mm
Hardness
[N/m2] Liquid foods
200 or less French dressing (FD) 200 ~ 400 Tonkatsu sauce (TS) 400 ~ 700 ketchup (KT) 700 or more mayonnaise
Solute Manufacturer
Thickener A The Nisshin OilliO Group, Ltd. Thickener B Clinico Co., Ltd. Thickener C Asahi Group Foods, Ltd.
Solvent Manufacturer
Water Suntory Beverage & Food, Ltd. Tea Coca-Cola (Japan) Co mp any, Ltd. Juice drin k Gold-pak, Ltd.
FD TS KT Thickener A 1.0 2.0 3.0 Thickener B 1.0 2.0 3.0 Thickener C 1.2 2.4 3.6 円筒型であるため,旧特別用途食品の高齢者用食品「咀 嚼・嚥下困難者用食品」の規定を参考にし,測定時間は 2 分,回転数は 12 rpm とした。その後,各試料に対する Tr 値および粘度を 5 回測定した。 3.2 増粘剤を添加した飲料水の粘性評価 Table 1. に日本協議会による UDF 自主規格を示す。日 本食品協議会は,液状食品に付与する粘性抵抗の指標を “硬さ”に基づき定義している(5)。とりわけ,UDF に登 録されている増粘剤は,この指標を基準とした添加量が 記載されている。 Table 2. に実験に使用した増粘剤および飲料水示す 。 UDF の増粘剤 3 種を溶質とし,飲料水 3 種(軟水(以下, 水),緑茶(以下,茶),オレンジジュース(以下,果汁飲料)) を溶媒とした。 Table 3. に各社が定めている 100ml あたりにおける増 粘剤の目安添加量を示す。この添加量を参考にし,各増 粘剤をそれぞれ飲料水に添加した。その後,攪拌機 (AK-16-P12 TL-256,株式会社大創産業)により 15 秒間攪拌し, 5 分間静置した溶液を試料とした。なお,各試料の温度 は20±2 ℃とし,各試料に対する Tr 値および粘度を 10
Table 4. Measurement results of standard liquids for calibrating viscometers by each measuring machine.
Fig. 2. Relationship correlation between TRV and viscosity by standard liquids for calibrating viscometers.
回測定した。なお,回転式粘度計の測定時間および回転 数は粘度計校正用標準液による粘性評価と同様である。 4. 統計処理 とろみ抵抗測定器の測定誤差を評価するため,粘度計 校正用標準液の測定結果から各測定器の変動係数 (CV: coefficient of variation)を求めた。また,Tr 値と粘度の相 関について各実験結果を用いてピアソンの積率相関係数 による無相関検定により評価した。次に,目的変数を粘 度,説明変数を Tr 値として回帰分析し,流体の性質の違 いによる各測定値の関係について評価した。なお,無相 関検定および回帰分析における有意水準は5%とした。 5. 実験結果と考察 5.1 粘度計校正用標準液による粘性評価 Table 4. に各測定器による粘度計校正用標準液の測定 結果を示す。試料の粘度が上昇するにつれ,Tr 値および 粘度は上昇した。次に,変動係数に着目すると ,粘度の 変動係数は 1000mPa・s のとき最大値(0.5%)を示し,それ 以外の試料は最小値(0.0%)を示した。一方で,Tr 値の変 動係数は 10mPa・s のとき最大値(3.8%)を示し,試料の粘 度上昇にともない変動係数は減少し1000mPa・s のとき最 小値(0.4%)を示した。これらの結果より,とろみ抵抗測定 器は市販の回転式粘度計と同等の精度は得られなかった 。 しかし,一般的に複数回測定したときの変動係数が5%以 下の場合,簡易測定器の性能に問題はないといわれてい る(9)。そのため,とろみ抵抗測定器は簡易粘性測定器と 0 200 400 600 800 1000 0 5 10 15 20 V isco si ty [ mP a ・s] TRV [Tr]
Sample [mPa・s] Viscosity [mPa・s] TRV [Tr]
10 10.0±0.00 2.6±0.10
100 90.0±0.00 4.2±0.04
500 490.0±0.00 8.0±0.06
1000 924.0±4.89 14.8±0.06 Table 1. Voluntary standards for thickening
by Japan Care Food Conference.
Table 2. Thickener and drinking water used in the experiment.
Table 3. Standard addition amount determined by each company. [g/100ml]
しての機能を備えているといえる。 Fig.2 に粘度計校正用標準液による Tr 値と粘度の相関 関係を示す。縦軸を粘度,横軸を Tr 値としたところ,極 めて良好な線形性を示した。また,Tr 値と粘度の相関関 係は有意水準 5% にて有意差が認められ,相関係数は r = 0.993 と強い正の相関が確認できた。 日本摂食嚥下リハビリテーション学会における学会分 類2013(とろみ)では,摂食状況レベルに応じて粘度を 50~150,150~300,300~500 mPa・s の三段階に分類してい る(4)。本実験により,とろみ抵抗測定器は 学会の規定に ある粘度範囲におい て簡易的に測定可能であるといえる。 5.2 増粘剤を添加した飲料水の粘性評価 Table 5 に増粘剤を添加した飲料水の測定結果を示す。 各増粘剤の種類により,3 段階の濃度における Tr 値およ び粘度にばらつきがみられた。とくに,増粘剤A は増粘 剤B および C と比較して Tr 値および粘度が高い傾向が あった。この要因のひとつとして,増粘剤は製造者側の 観点に比重を置いて製造されているため,増粘剤 の主成 分として含まれるキサンタンガムやデキストリン といっ た増粘多糖類の配合量の違いが挙げられる。本実験に使 用した増粘剤は増粘多糖類であるキサンタンガムとデキ ストリンを主成分とするため,第三世代に分類される。 増粘剤はこの他にデンプンを主成分とする第一世代や, デンプンとデキストリンを主成分とする第二世代がある (10-11)。本実験の結果から,同じ世代間の増粘剤であって も増粘剤の添加量や添加する液状食品により異なった粘 性となることを理解して増粘剤を使用する必要がある と いえる。 Fig.3 に各増粘剤における Tr 値と粘度の相関関係を示 す。Fig.3 (a)は増粘剤 A,Fig.3 (b)は増粘剤 B,Fig.3 (c)は
(a) Thickener A
(b) Thickener B
(c) Thickener C
Fig. 3. Relationship correlation between TRV and viscosity in each thickener. 0 2 4 6 8 10 0 2 4 6 8 10 V isco si ty [ mP a ・s] TRV [Tr]
Water Tea Juice drink
0 2 4 6 8 10 0 2 4 6 8 V isco si ty [ mP a ・s] TRV [Tr] 0 2 4 6 8 10 0 2 4 6 8 V isco si ty [ mP a ・s] TRV [Tr] FD TS KT
Solvent Thickener TRV [Tr] Viscosity
[×103 mPa・s] TRV [Tr] Viscosity [×103 mPa・s] TRV [Tr] Viscosity [×103 mPa・s] Water A 4.29±0.087 2.13±0.125 6.22±0.122 4.57±0.028 8.63±0.226 7.15±0.044 B 3.19±0.144 0.81±0.076 3.19±0.179 2.35±0.060 5.45±0.150 5.57±0.088 C 3.07±0.115 0.95±0.029 3.78±0.122 2.36±0.114 4.83±0.149 4.26±0.152 Tea A 4.16±0.096 1.77±0.023 6.23±0.133 4.92±0.038 8.55±0.164 8.54±0.025 B 3.36±0.117 0.92±0.022 4.18±0.113 2.47±0.040 5.34±0.150 4.75±0.042 C 3.16±0.164 1.02±0.011 4.10±0.105 2.63±0.046 4.81±0.110 4.23±0.089 Juice drink A 3.75±0.241 1.31±0.028 6.32±0.113 5.36±0.077 7.25±0.126 5.73±0.068 B 3.27±0.082 0.96±0.024 4.49±0.087 2.85±0.104 6.42±0.078 5.65±0.084 C 2.93±0.048 0.30±0.010 3.68±0.139 1.36±0.012 5.40±0.081 3.29±0.041
Table 5. Measurement results of drin king water with th ickener added .
[×103]
[×103]
増粘剤C を示す。なお,各試料の Tr 値および粘度の平均 値を代表値としてプロットした。いずれの増粘剤におい ても,線形性が確認できた。また,各増粘剤におけるTr 値と粘度の相関関係は有意水準 5%にて有意差が認めら れ,強い正の相関が得られた (増粘剤 A:r = 0.979,増粘 剤B:r = 0.939,増粘剤 C:r = 0.904)。この結果から,Tr 値は増粘剤や飲料水の種類によらず粘度に類似した値を 取ることが明らかとなった。 5.3 流体の性質がTr 値および粘度に与える影響 とろみ抵抗測定器による粘性抵抗の測定は, いずれの 試料においても粘度計と強い正の相関が得られた。しか し,医療や介護現場での導入および運用のためにはニュ ートン流体と非ニュートン流体における Tr 値と粘度の 関係を解析する必要がある。ここで,ニュートン流体と して粘度計校正用標準液を,非ニュートン流体として増 粘剤を添加した飲料水を扱う。まず,粘度計校正用標準 液の粘度を目的変数,Tr 値を説明変数として単回帰分析 を行った。その結果,決定係数R2 = 0.985 にて有意差が 認められ,次式が得られた。 Y = 77.11477X-193.692 (1) ここで,Y を粘度[mPa・s],X を Tr 値[Tr]を表す。ニュー トン流体はずり速度により粘度が変動しないため,とろ み 抵 抗 測 定 器 に よ り 測 定 し た ニ ュ ー ト ン 流 体 は(1)式 に て粘度を推定できるといえる。 次に,増粘剤を添加した飲料水の粘度を目的変数,Tr 値を説明変数として単回帰分析を行った。なお,Tr 値は 増粘剤や飲料水の種類によらず粘度に類似した値を得る ことから,増粘剤や飲料水の種類に分けず,得られた 粘 度とTr 値の全ての値を用いた。その結果,決定係数 R2 = 0.903 にて有意差が認められ,次式が得られた。 Y = 1268.176X-2836.64 (2) このことから,Tr 値は第三世代の増粘剤を添加した飲料 水 (水,茶,果汁飲料)を測定する場合において,(2)式に より粘度を推定できるといえる。よって,とろみ抵抗測 定器を医療や介護現場へ導入することにより ,増粘剤を 添加した飲料水の定量的な粘性評価が期待される。一方, 身の回りの液状食品の多くは非ニュートン流体であり, 本実験で使用した単一円筒型回転式粘度計では測定が困 難な流体も存在する(12-13)。そのため,とろみ抵抗測定器 の普及促進のためには粘度とTr 値の相関だけでなく,動 的粘弾性や付着性・凝集性・硬さなど複数の観点から 非 ニュートン流体とTr 値の関係を評価する必要がある。 6. 結言 本研究では,粘度計校正用標準液および増粘剤を添加 した飲料水によってTr 値と粘度の関係を明らかにし,医 療や介護現場におけるとろみ抵抗測定器による簡易粘性 評価法の実用性を検討した。 得られた結果の要約を以下に示す。 (1) 粘度計校 正用標準液を 5 回測定した ときにおける Tr 値の変動係数(CV)値は 4%以下であった。 (2) 増 粘 剤 を 添 加 し た 飲 料 水 に お け る Tr 値 と 粘 度 の 相関関係は,無相関検定により有意差が認められ, 強い正の相関が得られた。 (3) と ろ み 抵 抗測 定 器 を医 療 や介 護 現 場 へ導 入 す る こ とで,増粘剤を添加した飲料水の定量的な粘性評 価が可能となる。 (4) と ろ み 抵 抗測 定 器 の普 及 促進 に は , 動的 粘 弾 性 や 付着性,凝集性といった複数の観点から非ニュー トン流体とTr 値の関係を評価する必要がある。 文 献 (1) 厚 生 労 働 省 :「 平 成28 年人 口動 態 統計( 確定 数) の概況 」,2016 (2) 大 越 ひ ろ :「 嚥 下 障 害 者 の た め の 食 事-高 齢 者 を 対 象 と し た 食 事 の 安 全 性 と テ ク ス チ ャ ー の 面 か ら-」,日本食 生活 学会,Vol. 17,No.4, pp.10-18,2007 (3) 消 費 者 庁 :「 令 和 元 年 特 別 用 途食 品 表 示 許 可 基 準並 び に 特 別 用 途 食 品 の 取 り 扱 い 及 び 指 導 要 領 」,2019 (4) 藤 谷 順 子 ,宇 山 理 紗 ,大 越 ひ ろ ,栢 下 淳 ,小 城 明 子 ,高 橋 浩 二 ,前 田 広 士 ,藤 島 一 郎 ,植 田 耕 一 郎:「 日 本 摂 食・嚥 下 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 学 会 嚥 下 調 整 食 分 類2013」,日 本摂食・嚥 下リ ハビリ テー ショ ン 学 会 誌 ,Vol. 13, No.3,pp.255-267,2013 (5) 日 本 食 品 協 議 会:「 と ろ み 調 整 食 品 の「 と ろ み の 目 安 」設 定 に あ た っ て 」, 缶 詰 時 報 ,Vol. 89,No.4, pp.34-36,2010 (6) 小 原 仁 ,土 肥 守:「 摂 食・嚥 下 障 害 を 有 す る 慢 性 期 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 患 者 に お け る ゼ ラ チ ン を 活 用 し た 嚥 下 障 害 食 の 栄 養 状 態 に 対 す る 効 果 」, 栄 養 学 雑 誌 ,Vol.64,No.4,pp.237-242,2006 (7) 出 戸 綾 子 ,江 頭 文 江 ,栢 下 淳:「 病 院・施 設 に お け る 市 販 ト ロ ミ 調 整 食 品 の 使 用 状 況 」,県 立 広 島 大 学 人 間 文 学 部 紀 要 ,Vol.3,pp.33-42,2008 (8) 山 縣 誉 志 江 ,與 儀 沙 織 ,栢 下 淳:「 官 能 評 価 に よ る 学 会 分 類2013( と ろ み )の 粘 度 範 囲 の 妥 当 性 」,日 本 摂 食・嚥 下 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 学 会 ,Vol.21,No.3,pp.129-135,2017 (9) 向 井 友 花 , 及 川 勉 :「 簡 易 グ ル タ ミ ン 酸 測 定 器 の 開 発 と 利 用 」, 薬 学 雑 誌 ,Vol.136,No.10,pp.1335-1343,2016 (10) 富 田 隆 ,幸 田 幸 直 ,工 藤 賢 三:「 と ろ み 調 整 食 品 が 速 崩 壊 性 錠 剤 の 崩 壊 ,溶 出 ,薬 効 に 及 ぼ す 影 響 」,薬 学 雑 誌 , Vol.138,No.3,pp.353-356,2018 (11) 中 村 愛 美 ,吉 田 智 ,西 郊 靖 子 ,林 静 子 ,鈴 木 靖 志:「 食 材 の 物 性 に
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