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奈良盆地南部,大阪層群のオーソコーツアイト礫の発見とその意義

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Academic year: 2021

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2020 年 5 月 14 日受付.2020 年 9 月 23 日受理.担当エディター 鈴木博之

* 山陽支部 有限会社「エイグ」 〒 731-3272 広島市安佐南区沼田町吉山 10811-45

Sanyo Branch, AEG Co. Ltd., 10811-45 Numata-Cho Yoshiyama, Asaminami-Ku, Hiroshima 731-3272, Japan ** 京都市上京区聚楽町 851-1-307

851-1-307 Jyuraku-Cho, Kamigyo-Ku, Kyoto 602-8156, Japan

奈良盆地南部,大阪層群のオーソコーツアイト礫の発見とその意義

庄司勝信 *・川村孝一 **

Discovery of an orthoquartzite gravel from the Osaka Group in the southern Nara basin

and its geological significance

SHOJI Katsunobu* and KAWAMURA Ko-ichi**

Abstract We discovered one piece of orthoquartzite gravel (Oq gravel in short) from a gravelly sand in drilled-core of the Plio-Pleistocene Osaka Group in the southern Nara basin, Southwest Japan. It is 30 mm across, 0.7 to 0.9 in sphericity, 0.9 in roundness and pale yellowish brown in color. Under microscopic ob-servation it consists of 96% of quartz, 2% of plagioclase, 0.7% of K-feldspar and 1.3% of muscovite. On the basis of modal composition it is classified as quartz arenite. Size of sand grains included varies from 0.1 to 0.7 mm and is 0.25 mm in average (n=130). Some of quartz grains have dust rings and many show weak to moderate wavy-extinction.

The gravelly layer including Oq gravel is mostly composed of gneissose or mylonitic granites, aplite and pegmatite, with a little amount of chert, sandstone, shale and basic rocks. The granitoid gravels are supposed to be derived from the southern margin of the Ryoke Belt to the south and the sedimentary gravels are also from the Izumi Group, the Chichibu Belt or the Shimanto Belt to the further south. The Oq gravel thus seems to have derived from the same provenance of the sedimentary gravels.

The provenance of the sedimentary gravels indicates that the head of the Plio-Pleistcene northerly river has been around or beyond (cross over) the Median Tectonic Line. This result may much contribute to reconstruct the Plio-Pleistocene paleogeography around the Nara Basin.

Key Words : orthoquartzite gravel, Nara Basin, Osaka Group, Plio-Pleistocene paleogeography

はじめに

オーソコーツアイトは,先古生代基盤岩類を構成する地質 であることが多い.そのため日本列島の基盤構造を推定する 重要な岩石と考えられてきた(紀州四万十帯団体研究グルー プ 1968;徳岡・大上 1979). 奈良盆地の地下には,大阪層群が広く分布する.筆者らは, 同盆地南部の大和高田市におけるボーリングで地下 23 m か らオーソコーツアイトの円礫を発見した(Fig. 1).大阪層群 中の同種の礫は,千里丘陵と宇治丘陵で既に報告されている (山城 Oq 礫研究グループ 1980a, b;天白ほか 1981, 1982). しかし,それらの報告はかつての臨海域にあり,新しくオー ソコーツアイト礫が見出された内陸盆地とでは後背地などに 違いがあるかもしれない.今回の発見は,基盤構造の問題だ けでなく,第四紀の古地形や堆積盆の変遷にも関連する可能 性がある.そこで,ここに報告する.

大和高田のオーソコーツアイト礫の特徴と産状

オーソコーツアイト礫(以後 Oq 礫と略す)は,近鉄南大 阪線の浮うきあな孔駅から南東に約 300 m の地点で掘削されたボーリ ングコアから 1 個発見された(Fig. 1).コアはオールコアで はなく,1 m 毎に 50 cm 長のコアと標準貫入試験試料から構 成されている.Oq 礫を含む層準は地下 23 m で,大阪層群の シルト分に富む砂礫層(層厚 13 m 以上)からなる.礫は長 径 30 mm の亜円礫で,Krumbein and Sloss (1963) にしたがう と球形度は 0.7 ~ 0.9,円磨度は 0.9 である(Fig. 2).礫の色 は淡黄褐色で,肉眼でも細かい粒状石英の集合体であること が観察される.産出層準の礫種構成は,花崗岩類・アプライ ト・ペグマタイトなどが主で,少量のチャート・砂岩・頁岩・ 塩基性岩なども含まれる.これらの礫の大半は,角ないし亜 角礫である.マトリックスは,石英・長石類が主で,半固結 の中粒~粗粒砂からなる(N 値は 25 ~ 50,挟在する粘土薄 33 ( 33 ) 地球科学 75 巻,33 ∼ 36(2021 年)

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庄司勝信・川村孝一 ( 34 ) 層の N 値は 15 ~ 20 である). 構成礫の多くは周辺に分布する領家帯の岩石に由来する. 花崗岩類は,中粒で強弱の片麻状構造ないしマイロナイト組 織を持つものが多い.チャートは,現在周辺に分布する基盤 に見られない.この地点周辺で沖積層(層厚 5 ~ 13 m;N 値 1 ~ 20)の砂礫層にみられる構成礫は花崗岩類を主体とし, チャートが殆ど含まれない点もチャートの給源が比較的遠く にあることを示唆している.Oq 礫の鏡下での特徴は以下の 通りである(Fig. 3). モード組成は石英 96%,斜長石 2.0%,カリ長石 0.7%, 白雲母 1.3%であり,組成的には石英アレナイト(Okada 1971)に属する.他に極少量のジルコンが含まれる.粒径は 0.1 ~ 0.7 mm の範囲,平均粒径は 0.25 mm(n=130 個)で比 較的淘汰が良い.石英粒子は,互いに噛み合った亜円ないし 亜角粒子で,マトリックスは二次的に成長した石英からなる. 一部の粒子には,明瞭なダストリングが認められる.石英粒 子は,弱い~普通程度に波動消光を伴うものが多い.しかし 変成・変形作用にともなう細粒再結晶粒子は認められない .

産出地点周辺の地下地質

Fig. 4 は大和高田市(橿原・高田 IC 付近)~御所市(御 所南 IC 付近)の全長 7.2 km の地下地質断面である(断面線 は Fig. 5).図は土木研究所(2020)が公開する KuniJiban の ボーリングデータ(http://www.kunijiban.pwri.go.jp/)と筆者 らが行った 1/2.5 万地形図判読にもとづき作成したものであ る.ボーリング孔に付された番号は,KuniJiban 中のボーリ ング ID の下四桁で,Oq 礫は 2476 孔付近の×印より産出した. 全域にわたり地表直下に大阪層群が広く分布し,北西—南東 方向の平行断層群によって複雑に変位している.2430~2450 孔では浅所に花崗岩が潜在することが確認・推定される.大 阪層群はシルト層,シルト・砂互層,砂層,砂礫層などか らなり,最大確認層厚は約 60 m である.これらの堆積物の 詳細な層序的位置や堆積年代は不明である.しかし佐野ほ か(2007)によるアズキ火山灰の発見層準(Ma3: Fig. 4 中 の太い短線,N 値は 10 程度でこれ以深の砂礫層の N 値は 25 ~ 50 以上)を参考にすれば,厚い砂礫層から下位は大阪層 群下部とみなされる.厚い砂礫層は,佐野ほか(2007)に示 されたボーリング地点近傍の 2433 孔の層相と N 値の変化状 況から,周辺に広く分布している大阪層群下部(市原 1993) の相当層であることは確実であろう.断面図に示される岩相 境界は,全体に北へ緩傾斜している.岩相層序の対比は著し い断層変位のために困難であるが,広く分布する厚い砂礫層 がほぼ同一層準であるとすると,Oq 礫の岩相層序は徐々に 南方へ高度を増している可能性がある .

供給源の推定

今回見出した Oq 礫の供給源について検討する.本地域か

Fig. 1 Locality of the drilled site of orthoquartzite gravel, marked with X.

Fig. 2 Occurrence of the orthoquartzite gravel in the drilled core. The two-direction arrow shows 5 cm for scale.

Fig. 3 Microphotograph of thin section of the orthoquartzite gravel from Yamato-Takada City. The quartz grain in center has a clear dust ring. Authigenic quartz grows over from the ring about 0.03 to 0.05 mm width as matrix. Ten division of the scale is 0.1 mm.

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奈良盆地南部,大阪層群のオーソコーツアイト礫の発見とその意義 ( 35 ) ら北方約 45 ~ 50 km の宇治丘陵や千里丘陵でも大阪層群中 に Oq 礫が見出されている(石賀ほか 1977; 山城 Oq 礫研究 グループ 1980a, b).これらの産地における砂礫層の構成礫 は,主にチャートや酸性火砕岩類からなり,給源は周辺に分 布する美濃-丹波帯,湖東流紋岩類や有馬層群などの後期中 生代火砕岩類などに求められている.また調査地近隣に分布 する二上層群や曽爾層群などの中新統は,礫種構成に花崗岩・ 領家変成岩が記載されているものの,輝石安山岩やサヌカイ トが含まれたり,中古生層の砂岩・頁岩・チャートが多いな ど礫種構成とその比率が調査地の砂礫層と異なる(中沢ほか 1987 参照). 一方,大和高田市で新たに発見された Oq 礫を含む砂礫層 の構成礫は,前述したように片麻状構造やマイロナイト組織 をもつ角~亜角礫の花崗岩類が多く,チャートは少量である. このことは,より延性的変形が進んだ領家帯南部からの礫の 供給を示す.また少量ながらも共に産出するチャート・砂岩・ 頁岩・塩基性岩類などの礫の給源としては,約 15 ~ 20 km 南に分布する和泉層群あるいはより南方の秩父帯や四万十帯 日高川層群などが考えられる.日高川層群からは頻度は少な いものの pebble サイズの Oq 礫が報告されている(徳岡・大 上 1979).この推定は,Oq 礫が仮により下位の大阪層群か らの再堆積としても同様であろう.以上のことから Oq 礫を 含む砂礫層の堆積場へは主に南側近傍の領家帯南部から大量 の礫が供給され,更に少量ながら和泉層群や中央構造線を越 えた外帯からも礫が運搬されていたという一つの可能性があ る .

供給経路の推定

大和高田~御所間の大阪層群は,前述のとおり南へ高度を 増し(Fig. 4),黒田・宮村(1971)の表層地質図「五条」と 土木研究所(2020)KuniJiban のボーリングデータによれば, 更に南方の御所市・五條市境界の風の森峠(標高 257 m)付 近まで,領家帯の広い谷を覆う未固結~半固結堆積物の下位 に大阪層群が連続的に分布する.同峠の西方約 1 km でも深 度 40 m 付近まで砂・粘土層主体の大阪層群が確認されてい る(黒田・宮村 1971 の No.16 孔).風の森峠を南に越えると 西へ流下する吉野川河谷に入り,河谷に沿って菖蒲谷層が東 西に分布する(Fig. 5).菖蒲谷層はこの部分で分布が最も広 く,吉野川の上流および下流で,分布が見掛け上狭くなる. 菖蒲谷層は大阪層群下部に対比される堆積物であり(例えば 市原 1993;Maruyama et al. 2018;水野ほか 1994),市原(1993) によれば,吉野川北岸地域では三波川帯由来の片岩類は礫と して少なく,花崗岩類に富むとされている.前述のとおり大 和高田市の Oq 礫を含む砂礫層も同様である.後者に少量な がら含まれるチャートなどの礫は和泉層群あるいは外帯に給 源をもつことから,五條付近では大阪層群下部の堆積盆地が 中央構造線を越えて南北に連続していたと考えられる . この南北の堆積盆地は,今日では西南日本の内帯と外帯を 結ぶ近畿地方で唯一の低地帯になっていて,国道 24 号が幹 線交通路として奈良県の南北を連絡している.この南北方向 の低地帯が吉野川-紀ノ川河谷に接合していることは,古地 理や第四紀地殻変動の研究のみならず,人文地理学的にも興

Fig. 4 Geological profile through Gose and Yamato-Takada Cities, compiled after drilling data of KuniJiban (http://www.kunijiban.pwri.go.jp/jp/). See Fig. 5 for the location of the profile line. The occurrence of the orthoquartzite gravel marked with bold X.

(4)

庄司勝信・川村孝一 ( 36 ) 味深い事象であり,今後幅広い研究の進展が待望される.こ の低地帯は,地質調査所による重力データ(産業技術総合研 究所 2020)にも示されており,仮定密度 2.3 g/cm3で求めた ブーゲ異常の低重力帯(34 ~ 37 mgal)が,東西方向の中央 構造線沿いだけでなく,大和高田から五條にかけて南北に点 在する(Fig.5 の低重力異常帯).中野ほか(1995)も同様の 指摘をしている.それは,領家帯の花崗岩類や和泉層群より 密度の低い大阪層群や菖蒲谷層が南北に延びることを示唆す る.この低地帯は現在,標高約 300 m の山で遮断されている ものの,かつて五條から大和高田にかけて南北に延び,古い 吉野川が古い葛城川につながっていた可能性がある. 大和高田市で発見された Oq 礫は秩父帯か四万十帯あるい は和泉層群から供給された可能性があろう.しかし,現在 Oq 礫が見つかっているのは四万十帯だけでその頻度も低い ことから,今後さらなる検討が必要とされる.この地帯には, 主に西側に中位から低位の段丘堆積物が各所に広く分布して おり,南北の低地帯の連続性に関連する可能性があろう. Fig. 4 に示された砂礫層に相当する層準が野外で追跡でき れば,堆積相・古流向・礫種構成などの検討から Oq 礫の供 給源や大阪層群中の層位的位置と共に,周辺の活構造の変位 速度に対し,より詳しい検討ができる可能性がある. 謝辞 この短報を作成するにあたり,次の方々にお世話に なった.日本工営(株)の川口泰廣氏には本文とともに公開 データとの関連を検討して頂いた.松本支部の矢野孝雄会員 には,小論の詳細な検討・修正・投稿要領などに多大な尽力 を頂いた.また査読された別所孝範・三田村宗樹両博士およ びエディターの鈴木博之博士には,細かな議論と誤りのご指 摘を頂いた.ここに記して感謝の意に代える.

文 献

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to Gojo, compiled after Mizuno et al. (1994), Nishioka et al. (2001), Hirayama and Kishimoto (1957), Kuroda and Miyamura (1971), Sangawa (1977) and this work. The locality of orthoquartzite gravel marked with bold X.

Fig. 2  Occurrence of the orthoquartzite gravel in the drilled core. The two- two-direction arrow shows 5 cm for scale.
Fig. 5  Generalized geological map of the area from Yamato-Takada  to Gojo, compiled after Mizuno et al

参照

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