当院における関節リウマチ患者へのフットケア実践の現状と課題
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(2) RA患者へのフットケア実践の現状と課題. 表 1 当院のリウマチフットケアの概要. RA 患者へのフットケアの重要性を認識していた.筆者 がこれまで行ってきた糖尿病患者へのフットケア実践を もとに,RA 患者へのセルフケア支援として,また足病. 対象者. 足のトラブルを抱えているリウマ チ科通院患者(生物学的製剤点滴 投与の入院患者も対象) ①手足の変形等でセルフケアが困難 ②糖尿病を持つ. 実施日. 毎週月・木曜日午前中(5 枠 / 週). 変を予防し,フットケアの重要性を伝える教育的支援と して,2016 年 12 月よりリウマチフットケアを開始した. 開始より約 1 年が経過し,実践の状況と今後の課題につ いて報告する.. 1 人あたりのケア時間 60 分 (準備,片付け,記録含む). 【看護実践の内容】. 1)リウマチフットケアの概要(表 1) 対象者は,リウマチ科に通院中で,①手足の変形等で セルフケアが困難な患者,②糖尿病を持つ RA 患者とし. た.希望者は担当医師を通じて予約を取り,それを医師 からの指示とした.当院では生物学的製剤の点滴投与を 1 泊入院で行っており,入院患者も対象とした.実施日 は毎週月・木曜日の午前中で,1 人 60 分の完全予約制 とし,リウマチ外来の処置室内にフットケアが実施でき るスペースを確保し,必要な設備を整えて行った. 看護師が医師の指示のもとフットケアを実施して診療. 図 1 フットケア実施件数. 報酬として算定できるのは,現在のところ,在宅療養指 導料と糖尿病合併症管理料である(いずれも 170 点).在 宅療養指導料は,生物学的製剤の自己注射を行っている. ソックスの着用等)の説明である.ただ単に足のケアを. 患者が対象であり,糖尿病合併症管理料は,足病変のハ. 行うだけでなく,体調の変化やライフヒストリーを聴き,. イリスク要因 (足潰瘍,足趾・下肢切断の既往,閉塞性. リウマチとともに生活するうえで行っている療養調整に. 動脈硬化症,糖尿病神経障害)を有する患者が対象であ. ついて確認し,セルフケアやサポート状況についての情. る.. 報を得て,リウマチという慢性疾患とともにどのように 生活しているのかを理解する機会となることを意識し. 2)実施状況と対象患者の概要. て,日々実践している.. 2016 年 12 月~2017 年 11 月の実施件数は延べ 149 件. 実際の足のケアにおいては,患者自身で困難な爪切り. であった(図 1) .. や胼胝の処置を行い,患者の手の動かし具合やサポート. 実施患者は 42 名で,患者の属性は,男性 2 名,女性. 体制等の状況に合わせて,患者自身が自宅で実践できる. 40 名であった.年代の内訳は 40 歳代 3 名,50 歳代 5 名,. セルフケアの方法について一緒に考えている.. 60 歳代 18 名,70 歳代 12 名,80 歳代 4 名であった.. 患者がフットケアに来院されたきっかけは,胼胝・鶏. 実施患者が使用していたリウマチ治療薬は,ステロイ. 眼による歩行時の痛みにより処置を希望された患者が最. ド,生物学的製剤,メトトレキサート(以下 MTX と略. も多く,35 名であった.また,足の変形に伴う巻き爪や. する)に着目すると,1 剤のみ 18 名(ステロイドのみ 5 名,. 肥厚爪の処置を行った患者は 15 名,手の変形や握力の. 生物学的製剤のみ 1 名,MTX のみ 12 名),2 剤併用 18. 低下,手術の影響などで手が足に届かず,患者自身での. 名 (ステロイドと生物学的製剤は 7 名,ステロイドと. 爪切りが困難な患者は 14 名であった(図 3) .フットケ. MTX5 名,生物学的製剤と MTX が 6 名),3 剤併用は 1. アに来られる前から,胼胝による痛みを軽減するために. 名であった.上記に示した治療を行っていない患者(免. 厚めの靴下を着用する,足趾保護のため 5 本指ソックス. 疫調整薬のみ,服薬なし等)は 5 名であった(図 2).. を着用する,市販の外反母趾装具を装着する,保湿ケア. 診療報酬に関してこれまでに算定できたのは,実施件. を行うなど,何らかの対処を行っていた人が 16 名いた.. 数 149 件のうち在宅療養指導料 14 件,糖尿病合併症管. ケアの回数は,1 回のみの患者は 8 名であり,34 名の. 理料 11 件と非常に少ない件数となっているが,組織に. 患者には 2 回以上のケアを行った.2 回以上のケアを行っ. おいてそのことは周知のうえで実施している.. た 34 名のうち 7 名は,途中でセルフケア可能となり支. 3)実際のケア内容. 足の状態に合わせて,1~3 ヶ月に 1 回程度継続的にケ. 援終了としたが,それ以外の 27 名の患者には,患者の ケアの主な内容は,足の観察,足浴,爪切り,胼胝・. アを行った.. 鶏眼の処置,自宅での手入れの方法や靴の選び方・足を. 上記のようなケアを行うなかで,これまでの病気の体. 守るための方法(正しい爪の切り方,保湿ケア,5 本指. 験,RA に関する現在の症状や体調の変化,今後の治療. 193. 症例・実践-正井.indd 193. 2019/12/04 12:04.
(3) 日本フットケア学会雑誌Vol.17 No. 4. 図 2 フットケア実施患者の治療内容 (n=42). に関すること,あるいは体重コントロールについてなど, 様々な語りを聴いている.「リウマチと分かるまでに時 間がかかって,痛みが辛かった.そのことを思えば今は ホントに楽なの.こんな話初めてしたわ」とこれまでの 経験を語られる方や, 「最近,痛みがひどくなってきてね. そろそろ薬増やしてもらおうかと思っている.先生に 言ってもいいかしら?」といった相談をされる方,たわ いもない日常の話をされ,「いろいろ話を聴いてもらえ てよかった」と言って退室される方など様々である. 足の変形を要因として発症した胼胝・鶏眼に関して は,再形成予防のためには除圧が重要であり,適切な靴. 図 3 来院されたきっかけ・ケア内容 (n=42 重複あり). の選び方・履き方について助言するだけでなく,靴やイ ンソール,外反母趾装具などの作製について担当医と相 談しながら,義肢装具士に依頼している.実際に装具を 作製した患者は 13 名であり(図 4),作製した装具を装. 木 2)は,「関節リウマチ患者さんはフットケアトラブル. 着した結果,「タコができにくくなった」 「歩くときに楽. に対処しようとする意欲が高い傾向にあります」と述べ. になった」等の反応が患者から聞かれた.また胼胝下に. ているように,そのなかでも患者自身でできるケアは実. 潰瘍を形成している場合には,担当医を通じて,皮膚科. 施しようという意欲はみられ,またフットケアを受ける. あるいは形成外科医師に診察・治療を依頼しているが,. 前から自分なりに保湿ケアや 5 本指ソックスの着用等の. これまでに 5 名が皮膚科・形成外科での治療を必要と判. ケアを行っていた患者も多く,RA 患者は足への関心が. 断し受診した.. 高いように感じられた.糖尿病患者では神経障害により 痛みの感覚が低下するが,一方,RA 患者では関節の痛. 【考察】. みを含めて足の痛みを実感すること,そのため,自分な. 1)RA 患者の足への関心とセルフケア状況. りの対処法を日々模索し確立しているのが 1 つの要因で. RA 患者にフットケアが重要であると考え,外来での. はないかと思われた.. 実践を開始した.当初は足に関心をもってもらい,足の 2)看護ケアとして行うフットケアの意義. トラブルを回避できるよう予防的フットケアを行うこ と,それを自宅で実践してもらうことを目標としていた. フットケアという 1 つの手段を通じて,RA 患者の療. が,実際に開始してみると,筆者が予想していたよりも. 養生活全般に関わることができるのが看護師として行う. 足への関心は高いが,完全に自立したケアにつなげられ. フットケアの意義であると考える.RA 患者は日々の療. る患者は限られており,複数回,あるいは継続的なケア. 養のなかで様々な思いを抱え,痛みや変形に伴う生活へ. 実施が必要な状況が明らかになってきた.その要因とし. の支障に患者なりの対処をしながら生活を送っている.. ては,① RA による手の変形による困難さ,②関節変形. ただ,RA 患者がそのような病気の体験について語る場. や手術に伴う関節可動域の制限,③高齢独居であること. 面は少ない.筆者はフットケアを行うなかで,何度とな. によるサポート不足等が考えられた.しかしながら,元. く「こんな話初めてしたわ」 「いろいろ話を聴いてもらえ. 194. 症例・実践-正井.indd 194. 2019/12/04 12:04.
(4) RA患者へのフットケア実践の現状と課題. 図 4 足の状態と作製した装具 (例). てよかった」等と患者から言われたこともあり,フット. アとして自立するのが困難であることが多いと実感し. ケアが日頃の療養生活について語る場の 1 つになってい. た.今後,より多くの患者にフットケアが提供できる環. るように感じられた.そのような語りから,看護師は目. 境作りが必要となる.RA 患者に対するフットケアに対. の前の患者を生活者として捉え,必要な支援を行ってい. して算定できる診療報酬はなく,現在行っているフット. くことができる存在である.足は患者の生活がみえる 1. ケアは専門看護師でなくてもスタッフナースが行えるケ. つの部分であり,そこから患者の病気の体験を聴き,生. アであると考える.しかしながら,巻き爪や胼胝の処置. 活を捉えることで,病気とともにどのように療養生活を. を実際に患者に対して行うには経験が必要と思われ,ス. 送っているのかを理解し,足のケアのみならず,今,目. タッフナースを対象に実技を含む研修を企画・実施する. の前にいる患者が療養生活全般において必要としている. ことが必要である.また当院のような急性期病院におい. 支援を見出し,提供することができるのではないかと考. ては,在院日数が短縮し患者のケアが複雑化するなかで,. える.. 比較的時間を要するフットケアを現場で行うには業務負 担感が大きいのではないかと懸念する.各部署での実施. 3)他職種連携の重要性. に向けてそのような背景を理解したうえで,実施可能な 方法について模索していきたいと考える.. 上述したように看護師がフットケアを行う意義は大き いと考えるが,看護師ができる範囲には限界がある.潰 瘍や痛みを伴う巻き爪の処置,白癬の治療等は皮膚科医. なお,本論文は,第 16 回日本フットケア学会年次学. 師に,靴やインソールなどの装具の作製は義肢装具士に. 術集会において発表したものに加筆・修正を加えたもの. 相談する必要がある.当院には生活習慣病センターがあ. である.. り,そのなかで足病変に対するチーム医療を提供するシ 「利益相反なし」. ステムがすでに確立していた.筆者はこれまで足病変 チーム医療に参加しており,その経験が RA 患者の足病. 【文献】. 変に対してもスムーズな対応につながったのではないか と考えられる.RA 患者の特徴を考えると今後もチーム. 1)西田壽代:身につけたい看護技術 フットケア.村澤 章,納得実践シリーズ リウマチ看護パーフェクトマ ニュアル,189-196,東京,羊土社,2013 2)元木絵美:リウマチ患者さんへのフットケア.神崎初 美,三浦靖史,最新知識と事例がいっぱいリウマチケ ア入門,143-148,大阪,メディカ出版,2017. での介入が必須であり,他職種が連携して行うことが重 要であると考える.. 【今後の課題】 フットケアを開始して約 1 年で,まだ十分な分析が行 えていないが,RA 患者にとってフットケアはセルフケ. 195. 症例・実践-正井.indd 195. 2019/12/04 12:04.
(5) 日本フットケア学会雑誌Vol.17 No. 4. Status and Challenges of Foot Care for Patients with Rheumatoid Arthritis at Our Hospital Abstract In rheumatoid arthritis (RA), several joints become inflamed, and swelling and pain affect daily life, resulting in reduced self-care abilities in many cases. Ingrown nails and calluses due to foot deformities increase the risk of wound development. Furthermore, as drugs for RA treatment reduce immune defense mechanisms, precautions against infection are required. Based on these findings, we placed importance on foot care for RA patients. Our nurses began to perform foot care for RA patients after the opening of a center for rheumatism and collagen disease within the hospital. During the approximately 1-year period from December 2016, they performed a total of 149 foot care sessions for 42 RA patients; nearly 80% of these patients received foot care several times during this period. Foot care mainly consisted of foot observation, foot baths, nail-cutting, callus/corn treatment, and guidance for home care and shoe selection. When performing daily foot care, the nurses listen to patients to clarify changes in their physical conditions and life histories, collect information regarding methods to coordinate care and the status of care support, and consider each session as an opportunity to understand how the patient lives while coping with rheumatism, a chronic disease. The provision of foot care to RA patients by nurses is of marked significance. At the same time, collaboration with other professionals to perform such care may also be important, and the establishment of systems to provide it for a larger number of patients may be a future challenge. Key Words:rheumatoid arthritis, foot care, care support, self-care. 196. 症例・実践-正井.indd 196. 2019/12/04 12:04.
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