Microscopic
Chromocystoscopyに
よ る 膀 胱 腫 瘍 の
診 断 に 関 す る 臨 床 的 研 究
佐賀医科大学外科学講座泌尿器科部門(主 任: 真崎善二郎教授)
井
口
厚
司
CLINICAL
DIAGNOSIS
OF BLADDER
CANCER
BY MICROSCOPIC
CHROMOCYSTOSCOPY
Atsushi
Iguchi
Division of Urology, Department of Surgery, Saga Medical School, Saga, 840-01, Japan
The present investigations were performed to know whether microscopic chromocystoscopy
(MCC) could predict the histology of bladder urothelium. The study included 57 patients with bladder
tumors. Staining of urothelial surface cells was accomplished with intravesical instillations of 0. 1 per
cent methylene blue solution. MCC observations were undertaken using a
contact-microcolpohy-steroscope with 1--150 magnifications. The microscopic findings of the stained areas were classified
into 5 groups (group X, 0, 1, 2 and 3), depending on configuration, size and distribution of the cell
nuclei: Group X; the nucleus could not be recognized because of amorphous diffuse staining, group 0;
almost normal nuclear features, group 1; relatively minimal abnormalities, group 3; a large number of
abnormal features, group 2; intermediate changes of group 1 and 3.
In tumorous carcinomas which could be detected by conventional cystoscopy, 78 of 92 tumors
were stained; the staining rates were higher in grade 2 and 3 carcinomas compared to grade 1 tumors.
Comparison of MCC with histological grading in 233 areas of flat epithelium were as follows. Of
125 areas which were stained, 53 were estimated to be in groups 1-3. Histologically, forty-seven of
these 53 were diagnosed as either carcinomas (41) or dysplasia (6).
Out of 66 in group 0, only 6 areas were carcinoma in situ or dysplasia. In 108 areas where no
staining was seen, 9 carcinomas and 8 dysplasia were found. These data show that the observations
with MCC are roughly parallel with the histological examinations.
The results indicate that MCC examination is useful not only in estimating the grade of visible
tumors, but also in detecting the abnormal vesical epithelia which can not be recognized by a
conventional cystoscopic examination.
要 旨: 延 べ57名 の膀 胱 腫 瘍 患 者 に 対 し, 0. 1%メ チ レ ン青 の 膀 胱 内 注 入 に よ るmicroscopic chromocys
toscopy(MCC)を 行 っ た.
染 色 さ れ た 部 位 はmicroscopic cystoscope(1∼150倍 率)で 観 察 さ れ る細 胞 像 を 核 の 形 態, 大 き さ,
配 列, お よ び染 色 の 濃 淡 な どか ら5群(group X, 0, 1, 2, 3)に 分 け て 判 定 した. group Xは 無
構 造 に 染 色 さ れ た た め 核 の 判 別 不 能, group Oは 異 型 の な い ほ とん ど正 常 な 核 を もつ もの, group 1か ら 3は 軽 度 か ら順 に 強 く核 異 型 の 見 られ る もの と し た.
隆 起 性 腫 瘍 で は92腫 瘍 の うち78腫 瘍 が 染 色 され, 染 色 率 はgrade 2お よ び3の 腫 瘍 がgrade 1の 腫i瘍に
比 べ て 高 か った. MCCの 判 定 と組 織 学 的 異 型 度 と の 比 較 で は, gradeが 高 い も の ほ どgroupとgradeは
よ く一 致 し た.
平 坦 な 粘 膜 に 関 し て は125ヵ 所 が 染 色 され, こ の うち53ヵ 所 がgroup 1, 2, 3と 判 定 され た. こ の53
ヵ所 の うち47ヵ 所(88. 7%)々 ミ上 皮 内 癌(41ヵ 所), あ る い はdysplasia(6ヵ 所)で あ った. 一 方, group
な い, 17ヵ 所(15. 7%)に 上 皮 内 病 変 が 見 付 か った. こ の 結 果 か らMCCは 隆 起 性 腫 瘍 の 異 型 度 推 定 に有 用 で あ る ぼ か りで な く, 通 常 の 膀 胱 鏡 検 査 で は 見 付 け る こ と の難 しい 上 皮 内 病 変 の 検 出 に お い て 非 常 に 有 用 で あ り, 通 常 のchromocystoscopyに お い て 最 大 の 欠 点 で あ るfalse positiveを 少 な く し, よ り正 確 な診 断 が 可 能 で あ る こ と が わ か っ た. 緒 言 表 在 性 膀 胱 腫 瘍 を 経 尿 道 的 に 治 療 し た 場 合, 高 頻 度 に 再 発 が み ら れ る こ とは よ く知 られ て い る1)2). そ の 原 因 の 一 つ と し て 膀 胱 腫 瘍 の 多 中 心 的 発 生 が 考 え られ て お り, 腫 瘍 と は 離 れ た 一 見 正 常 と思 わ れ る粘 膜 に, 手 術 時 す で にdysplasiaな ど の 前 癌 病 変 やcarcinoma in situ(CIS)が 存 在 し, こ れ ら が 腫 瘍 の 再 発 と密 接 に 関 係 す る とい わ れ て いる3)4). しかし, このよ うな 異 常 上 皮 は 通 常 の 内 視 鏡 で は 正 常 上 皮 と見 分 け が つ き に く
く, 診 断 に は 膀 胱 粘 膜 のmuItiple randam biopsy5)あ
る い はselected site biopsy6)が 用 い られ て い る. 膀 胱 の 生 体 染 色 は 腫 瘍 に 選 択 的 に 取 り込 ま れ る 色 素
を 用 い てinvisible tumorを 染 色 し, in vivoで 正 常 粘
膜 と鑑 別 し よ う とす る 目的 で 試 み られ て き た が7)8), 腫 瘍 以 外 の 炎 症 あ る い は 正 常 粘 膜 も一 部 染 色 さ れ る た め 特 異 性 を 欠 く点 か ら, 膀 胱 腫 瘍 の 診 断 と し て い ま だ 臨 床 的 に 普 及 す る に は 至 っ て い な い. 今 回, 我 々 は 膀 胱 腫 瘍 患 者 に 対 し メ チ レ ン青 に よ る 生 体 染 色 にmicro第
scopic cystoscopyを 併 用(microscopic
chromocys-toscopy 以 下MCCと 略 す)し 検 討 し た の で 報 告 す る. 研 究 対 象 お よ び 方 法 1984年6月 か ら1986年5月 ま で の2年 間 に 佐 賀 医 科 大 学 附 属 病 院 泌 尿 器 科 に 入 院 した 膀 胱 腫 瘍 ま た は そ の 疑 い の 患 考50名 を 対 象 と し た. 患 考 は 男 性35名, 女 性 15名 で, 年 齢 は48歳 か ら82歳(平 均66歳)で あ っ た. 患 考 は 腫 瘍 再 発 に よ る再 入 院 を 含 め て 延 べ57回 入 院 し, 経 尿 道 的 腫 瘍 生 検 が 行 わ れ た. 入 院 の 際 の 診 断 時 点 で 初 発38名, 再 発19名 で あ り, 再 発 患 考 で は 先 行 治 療 と し て17名 に 経 尿 道 的 手 術 が な さ れ, 2名 は 膀 胱 部 分 切 除 が 行 わ れ て い た. そ の うち5名 はMitomycin C, Peplomycin, Cytarabineの 三 者 併 用, ま た3名 は Doxorubicin単 独 の 予 防 的 膀 胱 内 注 入 療 法 が な さ れ て い た. 通 常 の 膀 胱 鏡 検 査 を 行 った 後, 経 尿 道 的 手 術 ま た は 生 検 時 に 生 体 染 色 に よ る検 査 を 施 行 し た. 染 色 に は 生 理 的 食 塩 水 で 溶 解 し た0. 1%メ チ レ ソ青 を 用 い た. 最 初 の20名 は20cmH20の 落 差 で400mlを 越 え な い 量 の 0。1%メ チ レ ン 青 を 膀 胱 内 に 点 滴 注 入 し5分 間 接 触 さ せ, 残 りの37名 は50mlの メ チ レ ソ青 をone shotに 注 入 し60分 前 後 接 触 させ た. 観 察 は90∼100mlの 生 理 食 塩 水 で3回 洗 浄 し た 後 に 行 い, 観 察 時 の 潅 流 液 に も生 理 食 塩 水 を 用 い た. MCCに は ドイ ツ, カ ー ル ス トル ツ 社 製Contacし Micro-Colpohysteroscope 26156B(図1)を 用 い た. これ は 婦 人 科 領 域 に お い て 子 宮 頚 部 な どの 異 常 上 皮 の 観 察 な ど に 使 用 す る た め に 開 発 され た も の で, 尿 路 性 器 表 面 を 種 々 の 距 離 を お い て, ま た は 接 触 観 察 に よ り, マ ク ロ レベ ル(広 角 全 視1倍)か ら 最 高150倍(接 触) の 細 胞 レ ベ ル ま で の 顕 微 鏡 に 匹 敵 す る 高 倍 率 観 察 が 可 能 な多 目的 内 視 鏡 で あ る, 接 眼 レ ン ズ の 近 くの 切 替 ス イ ッチ に よ り, 弱 拡 大60倍 と 強 拡 大150倍 の 倍 率 に 簡 単 に 切 り替 え る こ とが で き る. 光 源 は 高 倍 率 の 場 合 で も 十 分 な 光 量 が 得 られ る よ うに ス トル ッ社 製 キ セ ノ ン 光 源 を 用 い た. ま た 内 視 鏡 写 真 撮 影 に は オ リソ パ スOMー 2を 用 い た. 観 察 後, で き る だ け 速 や か に 染 色 部, 次 い で 非 染 色 部 の 順 に 生 検 を 行 っ た. 染 色 部 位 を よ り確 実 に 生 検 す る た め に は 附 属 の 生 検 用 鉗 子 を 用 い てmicroscope直 視 下 に 生 検 す る の が よ い と思 わ れ た. しか し, この 鉗 子 で は組 織 の 採 取 量 が 少 な い た め 今 回 の 研 究 で は 用 い ず, MCC観 察 結 果 を 記 載 な い し記 憶 し て お い て, 観 察 直 後 に 通 常 のcold punchま た は 電 気 切 除 に よ っ て 組 織 を 採 取 した, 生 検 部 位 は 次 の よ うに定 め た. ま ず 隆 起 性 腫 瘍 か らは 単 発, 多 発 に か か わ らず 同 一 腫 瘍 か ら 1ヵ 所 行 っ た, 次 に 平 坦 な 粘 膜 か ら の 生 検 は, メ チ レ ン青 で 染 色 さ れ た 部 位 は す べ て 採 取 し た が, 非 染 色 部 で あ っ て も発 赤 や ベ ル ベ ッ ト状 変 化 が み られ る粘 膜, 図1 Contact-Micro-Colpohysteroscope
図2 MCCに よ る膀 胱 内 所 見(60×)
図3 group X; 結 石 に 白 苔 が 付 着 し たpapillary tumor, grade 1 (60 x)
図4 group O; notmal urothelium(150 x)
図5 group 1; papillary tumor, grade 1>2(150×)
図6 group 2; carcin/ma in situ, grade 2(150×)
腫 瘍好 発 部位 とされ る後 壁 お よび尿管 口外 側, お よび
主 腫 瘍 に近接 した周 辺部 粘膜 か らも組 織 を採取 した.
生検 部位 の内視 鏡 的所 見 につ いて は, 隆 起性 腫i瘍は
乳 頭状 ・有茎, 非 乳 頭状 ・有 茎, 乳頭 状 ・広 基 性, 非
乳 頭状 ・広 基 性 の4型 に分 けた. また 平坦 な粘膜 につ
いて は, 内視 鏡的 に全 く正常 と思 われ る粘膜 と, 発赤
あ るいは ベ ルベ ッ ト状変化 な ど微細 な変化 がみ られ る
粘膜 の2型 に分類 した.
メチ レ ソ青 に よ る腫 瘍 の染 色度 は次 の よ うな基 準 に
基 づ いて4段 階 に分 けた.
染 色 度A: 濃密 に染 色 された
染 色 度B: 中等 度 の濃度, また は部分 的 に染色 され
た
染 色度C: 淡 く染 色 され た
染 色度D: 全 く染 ま らなか った
これ らの うちAとBは
内 視鏡 的 に他 の 部位 と明 ら
か に識別 可 能 であ る. またCはMCCで
表 層 の上皮 細
胞 の核 を観 察す る ことが可 能 な程 度 に染 色 された もの
で あ る. この場 合 はTURの
潅流 液 に よ って時 間 とと
もに色素 が溶 け出す こ とが あ るため検 査直 後 の早 い時
間 に生検 す る必 要 があ った.
メチ レン青 に よる生体 染 色で は主 に核 が濃染 し細 胞
質 は淡 く染 色 され るた め, MCCに
よ り観察 した場合,
弱拡大(60×)で
は上皮 細胞 の核 の配 列, 形態 がわ か
り(図2),
さ らに 強拡大(150×)で
は一 層詳 細 に核
の形態 の 観察 が 可能 で あ る. そ こで染 色 された 各部位
につ いて 上皮 細胞 の核 の形 態, 大 きさ, 配 列, 濃 淡 な
どか ら以 下 の基 準 に よって5つ のgroupに
分 け て生
検 前 に判 定 した.
group X: 無構 造 に濃染 したた め核 の判 別不能(図
3).
group O: 円形 で 小型 の核, また は小型 で紡 錘形 の細
胞 が ほぼ均 一 の大 きさで み られ る場 合. 時 に大型 の核
が混 じ る こと もあ るがそ の数 は少 な く, また配列 も比
較的 整 ってい る(図4).
group 1: 核 は比較 的sizeが 大 き くな り, group Oに
比べ て大 小 不揃 いの核 が配 列 を乱 して並 ん でい る状態
(図5).
group 2: group 1と3と の 中間 の異形 性 と配列 を示
す(図6).
group 3: 核 は濃染 し全体 に大 型 で多型 性 を示 し大
小不 同 は著 し く,
また その配 列 も密 でかつ 不整(図7).
一人 の患者 につ き平均5. 7ヵ所, 総 計328ヵ 所 の膀 胱
粘 膜 につ い て, 生検 部位 の染色 度, お よびMCCに
よる
group判 定 を 行 い, そ の結果 と実 際 の組織学 的 所見 と
を対 比 させ 以下 の検 討を 行 った.
第 一 に隆起 性腫 瘍 の染 色性 につ いて, 染 色法 や腫 瘍
の大 き さ, 形 態 あ るい は異 型度 な どに よる違 いを検 討
した. 第 二 にMCCの
上皮 内病 変 の診断 に お け る有 用
性 を検討 した. 第三 にMCCに
よ り,
生体 内 におい て腫
瘍 異 型度 の判 定 が可能 か否 か を検 討 した.
なお, 統 計 学的 検定 に は κ二 乗検 定を用 い た.
結
果
再 入院 を含 めた 患者延 べ57名 の うち, 隆 起性腫 瘍 の
認 め られ た者 は50名(単 発17名, 多発33名)で あ り,
その 内訳(多 発 症例 の場 合 は主た る腫瘍 につ い て分類)
は乳頭 状腫 瘍37名, 非 乳頭 状腫瘍11名, inverted
papil-loma 1名 お よび未分 化癌1名 で あ った. 一 方, 内視鏡
的 に明 らかな隆 起 性病変 を認 め ない患者 は7名 お り,
生 検 に よる診 断 は原 発性 上皮 内癌2名, 上皮 異形 成3
名, Brunn細 胞 巣1名 お よび膀胱 炎1名 で あ った.
1. 隆起 性腫瘍 の染色 性 につい ての検討
1)メ チ レン青 接 触時 間 と染 色性
メチ レン青 を5分 間接 触 させた群 と60分間 前後接 触
させた群 につ いて, 隆起 性腫瘍 を もつ患 考50名 を 対象
に腫 瘍(多 発症 例 の場 合 は主 た る腫 瘍 につ いて)の 染
色 性を比 較 した. そ の結 果, 5分 間接触群 で は染 色度
A, B; 14名, C; 1名, D; 3名 に対 し, 60分 接触 群
で は染色 度A, B; 25名, C; 3名, D; 4名 であ り,
どち らの方法 を用 いて も染 色性 に差 は な く, 平 均86%
の 症例 でMCCに
よ る観 察 が可 能 な染 色 度C以
上 の
染色 が得 られた.
2)初 発, 再 発別, お よび抗癌 剤膀胱 内注 入 の染色 性
に対 す る影響
患 者 の初発, 再 発別 に染 色性 をみ る と, 初 発 患者39
名中, 隆 起性 腫瘍 が全 く染 色 され なか った もの4名 に
対 し, 再 発患 者 では19名 中染色 され なか った もの は3
名で両 考 に差 はみ られ な か った.
再発 患者 の うち抗癌 剤 の膀 胱 内注 入療法 を受 けて い
た患者 は8名 いた が, この うち染 色 され なか った症例
は1例 の みで あ った. また1名 は本検 査の1ヵ 月前 に
全 身 的 化 学療 法 を受 けて い た が腫 瘍 の染 色 は 良好 で
あ った.
3)腫 瘍 の発 生部位, 大 きさ, 腫瘍形 態, お よび異型
度(grade)と
染色 性 との関 係
同一 患者 で あ って も腫 瘍 が多発 してい る場 合, それ
ぞ れ の腫瘍 に よ って染色 性 に違 いがみ られ る こ とも少
な くなか った. このため 各腫瘍 別 に発生部 位, 大 きさ,
腫 瘍 形 態, お よ びgradeと 染 色 性 との 関 係 を 調 べ た. 対 象 患 者50名 の 隆 起 性 病 変 の 総 数 は95個 で, この うち 3ヵ 所 は 結 果 的 に正 常 組 織 と の 診 断 が 得 られ た た め 除 き, 残 り92腫 瘍 に つ き検 討 した. まず 発 生 部 位 別 に み る と, 腫 瘍 は 後 壁, 側 壁, 三 角 部 に 多 くみ られ た が, 各 部 位 で 染 色 性 に 差 は み られ ず, 色 素 を膀 胱 内 に 注 入 した 場 合 に 接 触 し に くい と 思 わ れ る頂 部, 前 壁 の 腫 瘍 で も染 色 され た. ま た, 前 立 腺 部 尿 道 の腫 瘍 も染 色 され た. 次 に腫 瘍 の 大 き さ を 直 径1cm以 下, 1∼3cm, 3cm以 上 の3群 に 分 け て 染 色 度 を 見 て み る と, 1cm以 下 の 腫 瘍 で は 染 色 度A, B, C, Dは そ れ ぞ れ23, 7, 3, 10 腫 瘍, 1∼3cmの 腫 瘍 で は そ れ ぞ れ17, 6, 1, 3腫 瘍, ま た3cm以 上 の 腫 瘍 で は そ れ ぞ れ16, 5, 1, 0腫 瘍 で あ っ た. この 結 果, 腫 瘍 の 大 き さ と染 色 性 に は 関 連 は み られ な か っ た が, 全 く染 色 さ れ な い 腫 瘍 は1cm径 以 下 の 小 さ な腫 瘍 に 多 か った. 腫 瘍 増 殖 様 式 と染 色 性 との 関 係 を表1に 示 した. 乳 頭 状 ・有 茎 性 腫 瘍 で は 染 色 度Aが24腫 瘍, 染 色 度B, Cは そ れ ぞ れ13, 4腫 瘍, 全 く染 色 さ れ な か っ た も の は 12腫 瘍 あ っ た. また, 非 乳 頭 状 ・有 茎 性 腫 瘍(inverted papilloma)は1例 し か な く, こ れ は 全 く染 ら な か っ た. 乳 頭 状 ・広 基 性 腫 瘍 で は 染 色 度Aが12腫 瘍, B, Cが そ れ ぞ れ3, 1腫 瘍 あ り, 染 ら な か った もの は な か っ た. ま た 非 乳 頭 状 ・広 基 性 腫 瘍 で は 染 色 度Aが20 腫 瘍, Bが2腫 瘍 で 染 ら な い もの は な く, 乳 頭 状 ・有 茎 性 腫 瘍 と 比 べ 有 意 に 染 色 性 が 優 れ て い た(p< 0. 01), ま た 腫 瘍 の 異 型 度 と染 色 性 の 関 係 を 表2に 示 し た. 92腫 瘍 の う ち3腫 瘍 は 良 性(papilloma, inverted
papilloma, お よ びBrunn's nest)で あ っ た た め, 残 り
の89腫 瘍 に つ き検 討 し た. grade 1の 腫 瘍 で は19腫 瘍 中, 染 色 度A, B, C, Dは そ れ ぞ れ6, 5, 3, 5腫 瘍 で あ った. grade 2で は50腫 瘍 中, 染 色 度Aは32腫 瘍 (64. 0%)あ り, B, Cは そ れ ぞ れ11, 1腫 瘍 で あ り染 色 が 得 られ な か っ た も の が6腫 瘍 あ った. grade 3で は 20腫 瘍 中 染 色 度Aが18腫 瘍(90. 0%), B, Cが 各 々1 腫 瘍 で, 染 色 さ れ な い もの は な か った. この 結 果 か ら 異 型 度 の 高 いgrade 2お よ び3の 腫 瘍 はgrade 1の 腫 瘍 に 対 し染 色 性 が 優 れ て い る こ と が わ か っ た. 2. MCCは ど の 程 度 平 坦 な 粘 膜 の 異 常 病 変 を 検 出 で き る か 1)平 坦 な 粘 膜 全 標 本 に つ い て の 成 績 平 坦 な 粘 膜 か ら の 生 検 は 延 べ57名 の 患 考 を対 象 に, メ チ レ ン青 に よ っ て 青 染 し た 粘 膜 か ら125ヵ 所, 染 ま っ て い な い 粘 膜 か ら108ヵ 所 の 合 計233ヵ 所 行 っ た. な お, 青 染 さ れ た125ヵ 所 の うち 先 の 基 準 でgroup Xが6カ 所 あ っ た の で, これ を 除 い た119ヵ 所 と染 って い な い 粘 膜108ヵ 所 の 合 計227ヵ 所 の 検 討 結 果 を 表3に 示 す. 染 色 さ れ た125ヵ 所 の 上 皮 をMCCに よ る 観 察 所 見 か ら, 先 に 述 べ た 基 準 に よ っ てgroup 1以 上 と判 定 し た も の とgroup Oと 判 定 した もの との2群 に 分 け て, 実 際 の 組 織 学 的 所 見 と対 比 させ た. そ の 結 果, 119ヵ 所 の うちgroup 1以 上 と判 定 した もの が53ヵ 所 で, こ の うち47ヵ 所(88. 7%)が 異 常 上 皮(primary CIS: 10,
secondary CIS: 15, 微 小 浸 潤 癌: 16, dysplasia: 6) で あ り, 6ヵ 所 が 正 常 上 皮 で あ った. 一 方, group Oと
判 定 し た も の66ヵ 所 の うち 異 常 上 皮 は6ヵ
所(pri-mary CIS: 1, dysplasia: 5)で あ り, 残 り58ヵ 所 は
正 常 組 織 で2ヵ 所 が 膀 胱 炎 の 組 織 所 見 で あ った. 次 に 染 色 さ れ て い な い 部 分 か ら行 った 生 検 に お い て は108ヵ 所 か ら組 織 を 採 取 した うち17ヵ 所(15. 7%)に
表1
腫瘍増殖様式 と染色性
*p<0. 01( Z2検 定) 染 色度A: 濃密 に染色 され た B: 中等度 の濃度, または部 分的に染色 された C: 淡 く染色 された D: ま った く染 らなか った表2
腫瘍組織学的異形度 と染色性
*p<0. 05, **p<0. 01(Z2検 定) 染 色 度A: 濃 密 に染 色 され た B: 中 等 度 の 濃 度, また は部 分 的 に染 色 さ れ た C: 淡 く染 色 され た D: ま っ た く染 らな か った異 常 上 皮(primary CIS: 1, secondary CIS: 8, dysplasia: 8)が 検 出 さ れ た が, これ ら の病 変 は 主 腫 瘍 近 接 部 か ら多 く検 出 さ れ た. 残 り88ヵ 所 は 正 常 組 織 で, また3ヵ 所 に は 膀 胱 炎 の 所 見 が 認 め ら れ た. 2)粘 膜 の 発 赤, ベ ル ベ ッ ト状 変 化 を きた して い た 上 皮 内 病 変 に 限 って の 成 績 粘 膜 の 発 赤 や ベ ル ベ ッ ト状 変 化 な どは, 従 来 上 皮 内 病 変 の 存 在 を 示 唆 す る所 見 と さ れ て い る. 今 回, この よ うな 所 見 の 見 られ た 粘 膜 は74ヵ 所 あ っ た. そ の うち の52ヵ 所 が 染 色 さ れ, 31ヵ 所(60%)に 異 常 上 皮 (dysplasia: 6, CIS: 12, 微 小 浸 潤 癌: 13)が 見 つ か っ た. 22ヵ 所 は 染 色 さ れ ず, こ の 中 に は 上 皮 内 病 変 (dysplasia)が3ヵ 所(14%)あ っ た. 一 方, こ の よ う な所 見 の な い 全 く正 常 に み え る粘 膜 は163ヵ 所 あ り, こ の うち 染 色 さ れ た 粘 膜77ヵ 所 か ら22ヵ 所(30%)に 上 皮 内 病 変(dysplasia: 5, CIS: 14, 微 小 浸 潤 癌: 3) が, 染 色 さ れ な か っ た 粘 膜86ヵ 所 か ら は14ヵ 所(16%) に 上 皮 内 病 変(dysplasia: 5, CIS: 9)が 見 つ か っ た. した が っ て, 発 赤 や ベ ル ベ ッ ト状 変 化 の 見 られ る粘 膜 で, か つ メ チ レ ソ青 に よ っ て 染 色 され た 場 合 に は, 上 皮 内 病 変 の 存 在 す る確 率 が 高 い こ と が わ か った. 3. MCCに よ る 腫 瘍 細 胞 異 型 度 の 判 定 MCCを 用 い て 腫 瘍 の 異 型 度 を 生 体 内 に て どの 程 度 正 確 に 判 定 で き る か を 検 討 した. 表4は 隆 起 性 腫 瘍 で 染 色 され た も め79, 平 坦 な 粘 膜 で 染 色 され た も の125の 計204ヵ 所 の 染 色 部 位 に つ い て, 生 検 前 に 判 定 し た groupと 実 際 のgradeと の 関 係 を み た もの で あ る. そ の 結 果group Oと 判 定 した71ヵ 所 の 部 位 の な か に11カ
所 の 異 常 上 皮(dysplasia: 5, grade 1: 1, grade 2:
5)が 含 ま れ て い た. ま たgroup 1と 判 定 した35ヵ 所 の うち6ヵ 所 は 正 常 組 織 で あ っ た が, この 中 に は 上 皮 が 剥 離 脱 落 した もの も3ヵ 所 含 ま れ て い た. 一 方, group 2, 3と 判 定 した もの は ほ とん どが 組 織 学 的 にgrade 2 以 上 で あ った. こ の よ う に核 異 型 の 強 いhigh gradeな 腫 瘍 で はgroupとgradeと が よ く一 致 す る こ と が 判 明 した. ま た 無 構 造 に濃 染(group X)す るの はTURの 切 除 後 の 癩 痕 や 炎 症 性 の 白苔 の 付 着 し て い る 場 合 に 多 か っ た が, 今 回 の 生 検 結 果 で は7/11ヵ 所 に 腫 瘍 組 織 が 認 め られ, ま た 未 分 化 癌 も表 面 が 無 構 造 に 染 色 され た. 考 察 メ チ レ ン青 を 用 い た 膀 胱 腫 瘍 の 生 体 染 色 は 肉 眼 的 に は と ら え る こ と の 難 し いatypia, dysplasiaな ど の前 癌 病 変 や, CIS, 微 小 浸 潤 癌 の局 在 や 拡 が りを 見 つ け だ 表3 平 坦 な粘 膜 にお け るMCCの 所 見 と組 織 学 的所 見 *う ち3例 はsecondary CISと 重 複 表4 MCC判 定 に よるgroup別 と組 織 学 的異 型 度 の 比較
す 方 法 と して 試 み られ て き て い る が, そ の 報 告 は 少 な い7)-9). これ ま で の 報 告 を み て も, メ チ レ ン青 が 腫 瘍 細 胞 内 に 選 択 的 に 取 り込 ま れ る と, 青 い 色 素 が 周 囲 の 正 常 粘 膜 と明 らか な コ ン トラ ス トを つ く るた め, 特 に上 皮 内 病 変 の 識 別 に 有 用 で あ る と さ れ て い る. し か し, 炎 症, び ら ん, あ る い は 正 常 粘 膜 で あ っ て も染 色 さ れ る場 合(false positive)が 比 較 的 多 く見 受 け ら れ る た め7)8), 特異性 を 欠 く とい う欠 点 が あ り, そ の た め 広 く 普 及 す る に は 至 っ て い な い も の と 思 わ れ る. false pos-itiveに 染 色 さ れ た 部 位 を 見 分 け るた め に は, 通 常 の 膀 胱 鏡 で は 染 色 の 濃 淡 の み に よ っ て 鑑 別 す る た め 客 観 性 に乏 し くな り, 結 局 は 生 検 に よ る組 織 学 的 裏 付 け が 必 要 で あ った. これ ら の 欠 点 を 補 うた め に 我 々 は 染 色 部 をmicroscopeで 観 察 す る方 法 を と りい れ た が, そ の control studyの 意 味 で, ま ず 隆 起 性 腫 瘍 に 対 す る メ チ レ ン 青 染 色 の 成 績 に つ い て 検 討 し て み た. メ チ レ ソ 青 に よ る 生 体 染 色 法 に 関 し て はGillら9)10) が 行 っ て い る よ うに, 20cmH20の 落 差 で メ チ レ ン 青 を 膀 胱 内 に 点 滴 注 入 し5分 間 接 触 させ る 方 法 と, 福 井 ら7), 井 川 ら8)が行 っ た よ う に50mlの メ チ レ ン 青 を 注 入 し1時 間 接 触 させ る方 法 の 両 者 を 試 み た が, ど ち ら の 方 法 を 用 い て も主 た る 腫 瘍 の 染 色 率 に 差 は な か っ た た め, 検 査 の 簡 便 性 を 重 視 し, 以 後 は 後 者 の 方 法 を 用 い た. ま た メ チ レ ソ 青 の 濃 度 は 過 去 の 報 告 考 と 同 様 0. 1%液 を 用 い た が, 濃 度 に つ い て は 染 色 性 の 良 否 を 左 右 す る 重 要 な 因 子 と考 え られ, 今 後 さ ら に 研 究 の 余 地 が あ る と 思 わ れ る. 染 色 の 結 果 は, 今 回 の 我 々 の 検 討 で は 従 来 の 報 告 に あ る 成 績 と ほ ぼ 同 等 で あ った. 隆 起 性 腫 瘍 の 染 色 性 の 優 劣 は 腫 瘍 の 発 生 部 位 や 大 き さ に は 無 関 係 で あ り, 腫 瘍 の 異 型 度 が 高 くな る ほ ど良 好 な染 色 性 を 示 し た. 異 型 度 と染 色 性 の 関 係 に つ い て は 福 井 ら, 井 川 ら も 同 様 に 指 摘 し て お り, そ の 理 由 と して 腫 瘍 の 異 型 度 が 高 く な る ほ ど細 胞 間 隙 が 疎 に な るた め に 色 素 が 浸 透 し や す い た め と考 え られ て い る11). 今 回 の 検 討 で 非 乳 頭 状 広 基 性 腫 瘍 が 染 色 性 が 優 れ て い た の も, こ の 形 態 を と る 腫 瘍 は 異 型 度 の 高 い も の が 多 い た め と思 わ れ る. 今 回, 我 々 が 用 い たcolpomicroscopyは1951年, Antonie12)に よ っ て 考 案 され, 婦 人 科 領 域 に お い て 子 宮 頚 癌 の 超 生 体 染 色 に 用 い られ て い る が, 膀 胱 腫 瘍 の 生 体 染 色 へ の 応 用 に つ い て は 未 だ 確 立 さ れ た もの は み られ な い. 我 々 は メ チ レ ン青 に よ っ て 生 体 染 色 を 施 し た 膀 胱 腫 瘍 患 考 を 対 象 に, 拡 大 内 視 鏡 で の 観 察 を 行 い, そ の 診 断 的 価 値 に つ い て 検 討 した.
婦 人科 領 域 で のcolpomicroscopyの
研 究 で は血 管
像, 細胞 像 な どか ら異 型上 皮 と上皮 内癌 の鑑別 が行 わ
れ てい る13)14). このうち
細 胞像 に関 して は剥 離 細胞 診
の判 定基 準(核 の濃染 性, 多型 性 な ど)に加 え,
colpomi-croscopeの 利 点 で あ る細 胞 配 列や 密 集 度 の状 態 な ど
が加 味 され て悪性 度 が判 断 され てい る15)16). 我々はこ
れ らを参 考 に した が, メチ レソ青 に よる生 体染 色で は
核 が濃染 し細 胞質 は淡 く染 まるため,
核/細 胞 質 比 は分
か りに くい こ とが多 く, したが って核 の形態, 大 きさ,
配 列, お よび染色 の度 合 いな どか ら細胞 の異型 度を判
断 し, 後 述 の5群 に分 類 して検討 した.
MCC強
拡 大 で染 色部 位 を観 察 す る こ とに よ って,
通 常 の膀胱 鏡 で観察 した場合 の染 色部位 の濃 淡 は, 細
胞(核)自
体 の染 色の 良 し悪 しに加 え, 染色 された核
の密集 性 が強 く関与 していた こ とがわ か った. 正 常上
皮 が染 色 され た場合(図4)の
よ うに, 染色 が膀胱 上
皮 最表 層 のみ に と どまって い る ときには核 は まぼ らに
見 え, 染色 された核 と核 との間 の染 色 され てい ない部
分 が広 くみ えるが, これは細胞 質 お よび一部 の染 色 さ
れ な か った細 胞 が介 在す るた め と思われ る. 一方, 染
色 が上 皮最表 層 のみ に とどま らず に数層 の深 さまで達
した場 合 には, 表 層細 胞 の細胞 質 を通 して下 層 の核 が
透見 され るため, 図5,
6, 7の よ うに濃 く染 った核
の 間 に下層 の淡 く染 ま った細胞(核)が
混 在 し密集度
を高 め て い る. この よ うな所見 は異 常上皮 や炎 症 の場
合 に多 く認 め られた が, これ は色素 の細胞 間隙 へ の浸
透拡 散 が 大 きいた め11)と思わ れ る. この よ うにMCC
に よ る観 察 は組織 を正 面 か ら見 るこ とに な り, 通常 の
病理 組織 診 断 よ りもむ しろ細胞 診 に近 似 した感 覚が必
要 と思わ れ る.
今 回MCC所
見 を5群 に分 けて検討 した. す なわ ち,
無 構 造 に濃 染 した ため核 の判 別 が不能 な場 合 をgroup
Xと して別 に し, 細胞 像 が観察 で き るものをgroup O,
1, 2, 3の4段
階 に分 けた.
小 円形 の核, あ るいは小型 の紡 錘形細 胞 が ほぼ均一
な大 きさでみ られ る場合 をgroup 0と したが, これ は
正 常粘 膜 が染 色 された場 合 に多 く観察 され た. 膀 胱炎
の場合 に は この よ うな所 見 に加 えて, 比 較的 大型 の淡
染 した細胞 が混 在す るのが常 で あ った が, 全 体 に核 は
小 さ く均一 で, また粘膜 の浮 腫 が存 在す る と核 の配列
は まば らにな り, 染 色 も淡 くな る傾 向がみ られた. 核
の 大 き さが比 較2的大 き くな り,
group Oに 比べ て大 小不
揃 い の核 が 配列 を みだ して な らんで いる状 態 をgroup
1, さ らに一 層核 が多 型性 を示 し, 大 小不 同が 著 しくな
り, 濃 染 し, そ し て 細 胞 が 密 に 配 列 し て い る 場 合 を group 2, 3と し た. これ ら の 分 類 を も とに, まず 正 常, 異 常 と大 き く分 け てMCCに よ り判 定 した 結 果 と実 際 の 組 織 学 的 所 見 とを 比 べ て み る と, 比 較 的 よ く一 致 し た 結 果 が 得 られ た. 今 回, 平 坦 な粘 膜 で 染 色 さ れ た 部 位 が125ヵ 所 あ っ た が, そ の うち53ヵ 所 をgroup 1以 上 と判 定 した の で あ る が, 実 際, 組 織 学 的 に も そ の88. 7%は 判 定 通 り前 癌 病 変, ま た は癌 組 織 で あ っ た. 一 方, group Xを 除 い た 残 りの66ヵ 所 はMCC上 細 胞 異 型 な くgroup Oと 判 定 した が, 組 織 学 的 に は この うち の9. 1%に 上 皮 内 病 変 が み られ た に す ぎ ず, 90. 9%は 判 定 通 り異 常 は み ら れ な か っ た. こ の よ う に, 今 回 の 経 験 か ら メ チ レ ソ 青 に よ る MCCは, 単 に 染 色 の 有 無 し か わ か ら な い 通 常 の 膀 胱 鏡 に 比 べ て 細 胞 レベ ル の 観 察 が で き, 同 じ よ うに 染 色 さ れ た 場 所 を 正 常 と異 常 に 識 別 す る こ とが 大 略 可 能 で あ る こ と が わ か っ た. す なわ ち, MCCで はfalse posi-tiveの 染 色 を 見 分 け る こ と に よ り無 用 な 生 検 を減 らす こ と が で き う る と思 わ れ た. MCCに よ る細 か いgroup分 け に つ い て は 難 点 も 少 な か らず 認 め られ る よ う に 思 わ れ た. す な わ ちgrade 2, 3の よ うな 場 合, 細 胞 異 型 が 強 い と い うこ とは 容 易 に 判 断 で き た が, grade 2と3をgroup 2, 3と き っち り識 別 す る の は 容 易 で な か った. ま たgrade 1と dysplasiaの 識 別 も難 し い こ と が 多 か っ た. す な わ ち 正 常 組 織 と癌 と の 識 別 はMCCに 慣 れ て く る に つ れ 可 能 と な っ た が, gradeの 判 定 と してgroup 1, 2, 3と 分 け る こ と は 必 ず し も容 易 で は な い よ うに 思 わ れ た. 判 定 に 習 熟 す る こ とに よ り成 績 は 向 上 す る と し て も, 組 織 診 と比 べ, あ る 程 度 不 満 足 で あ る の は や む を え な い も の と思 わ れ る. ま た, dysplasiaは 染 色 性 が 悪 い こ と, 染 色 され て も正 常 上 皮 との 鑑 別 が 難 しい こ と か ら, これ ら の 病 変 の 検 出 に つ い て は 本 検 査 法 で は 限 界 が あ る も の と思 わ れ た. ま た, 細 胞 成 分 が わ か な くな る ほ ど無 構 造 に 濃 染 す る場 合 が あ る が, これ は 潰 瘍 や 腫 瘍 の 表 面 に 白苔 が 付 着 して い る 時, あ る い は 腫 瘍 の 異 型 度 が 非 常 に高 い 場 合 が 多 く, 今 回 の 生 検 で も11ヵ 所 中7ヵ 所 に 腫 瘍 細 胞 が 認 め ら れ た. した が っ て 無 構 造 に 濃 染 した 部 位 は 生 検 を して お く必 要 が あ る と 思 わ れ た. MCC操 作 上 の 問 題 点 と し て は, 膀 胱 前 壁 や 頂 部 な ど部 位 に よ っ て はmicroscopeが 届 き に く く観 察 や 生 検 が 困 難 な 場 合 が あ っ た. ま た, 有 茎 性 腫 瘍 の 場 合 microscopeを 近 接 さ せ る と腫 瘍 が 逃 げ る た め, 十 分 接 触 させ て 観 察 で き な い こ とが あ った. この よ うな場 合 に は, 十 分 な 拡 大 観 察 が で き な か った. MCCと 尿 細 胞 診 と の 関 係 に つ い て は 今 回 は 詳 細 に は 検 討 し て い な い が, 本 検 査 を 行 っ て い る 際 に染 色 さ れ た 上 皮 が 機 械 的 損 傷 や 潅 流 液 に よ るwash outに よ っ て 剥 離 し て い く様 子 が 時 々観 察 され た. こ の こ と か ら, 組 織 検 査 で は 検 出 で な い 上 皮 の 変 化 を む し ろ MCCに よ っ て こそ と ら え 得 る 可 能 性 が あ り, こ の 点 はCISの 診 断 と し て し ぼ し ぽ 細 胞 診 が 組 織 診 よ り検 出 率 が 高 い の と似 た 意 味 を も っ て い る. 異 型 度 の低 い 小 さ な 腫 瘍 や 上 皮 内 病 変 の 中 に は染 色 さ れ な い も の が あ り, ま だ 本 法 の 問 題 点 は 多 い. し か し, 染 色 法 そ の も の は 簡 便 で 患 考 の 負 担 や 侵 襲 も ほ と ん ど な く, MCCは 従 来 の 膀 胱 鏡 や 尿 細 胞 診 で は わ か り に く いCISや 前 癌 病 変 の よ り正 確 な 診 断 に 有 用 な 検 査 法 とな り うる と思 わ れ る. 結 語 膀 胱 腫 瘍 患 考, 延 べ57名 に 対 し, 0. 1%メ チ レ ソ青 を 用 い たmicroscopic chromocystoscopy(MCC)を 行 い, 以 下 の 結 果 が 得 られ た. 1)隆 起 性 腫 瘍 の 染 色 性 の 優 劣 は 腫 瘍 の 発 生 部 位, 大 き さ に は 無 関 係 で あ り, 腫 瘍 形 態 で は非 乳 頭 状 腫 瘍 が 最 も 良 好 に 染 色 さ れ, ま た 腫 瘍 の 異 型 度 が 高 い ほ ど濃 く染 ま る こ とが わ か っ た. 2)平 坦 な 膀 胱 上 皮 の うち, メ チ レ ソ 青 で 染 色 され た 125ヵ 所 をMCCに よ って 観 察 し, 細 胞 像 を 核 の形 態, 大 き さ, 配 列, お よ び 染 色 の 濃 淡 よ り5つ の 群 に 分 け た. 細 胞 異 型 な し と判 定 したgroup 0で は66ヵ 所 中60 ヵ所(90. 9%)は 正 常 組 織 で あ った. 細 胞 異 型 あ り と 判 定 し たgroup 1, 2お よ び3で は53ヵ 所 中47ヵ 所 (88. 7%)に 上 皮 内 病 変 が確 か め ら れ た. 非 染 色 部 位 か ら も計108ヵ 所 か ら生 検 を 行 い, 17ヵ 所(15. 7%)に 上 皮 内 病 変 が 見 付 か った. な お, 無 構 造 に 濃 染 し た 場 合 (group X)に は, 高 頻 度 に癌 組 織 が 検 出 さ れ た(11カ 所 中7ヵ 所). 3)MCCに よ るin vivoで の 腫 瘍 異 型 度 判 定 は, 組 織 学 的 にgradeの 高 い も の で はMCCのgroupと 実 際 の 異 型 度 と は よ く一 致 して い た が, grade 1の 腫 瘍 で は 正 確 な 判 定 は 難 し か っ た. dysplasiaに つ い て は 染 色 性 が 悪 い こ と, 染 色 さ れ て も正 常 組 織 と の 判 別 が 難 しい 場 合 が 多 く, これ ら前 癌 病 変 の 検 出 に は 本 検 査 法 で は 限 界 が あ る も の と考 え られ た. 以 上 の 結 果 か ら, MCCは 膀 胱 癌 のin vivoで の 異 型
度推 定 のみ で な く, よ り正確 な上皮 内病 変の検 出に優
れた 検査 法 と思 わ れた.
稿 を終 えるにあた り, 御懇篤な御指導 と御校閲を賜 った
九州大学熊澤浄一教授 に深 く感謝致 します. また直接 御指
導 を賜 った真崎 善二郎教授 に心か らの感 謝 の意 を表 しま
す.
本稿中の症例 はすべ て佐賀医科大学の症例であ り,
病理
学的検査 に快 く御協力, 御指導頂 いた本学病理学教室, 渡辺
照男教授, 杉原甫教授な らびに教室員各位 に深謝致 します.
また本研究 に御協 力下 さった当教室員各位 に厚 く御礼申 し
あげます.
本論文 の要 旨は,
昭和61年4月12日, 第74回 日本泌尿器科
学会総会 において発表 した.
文
献
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