大学における教員業績評価 : 設置者別にみた特徴と課題
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(2) 研究動機は,次の点にある。筆者の勤務校では,. 学本来の教育力を取り戻すことにある。そのため. 注1). 2004年度より教員業績評価制度が本格実施された. 。 の方策として,ファカルティ・ディベロップメン. しかし,期待された程度の効果が確認されていな. トなどによって教員の職業的なスキルやモラルの. い。そのため,他大学の取り組み状況や課題を分. 向上を目指す方向と,教育を積極的に評価する方. 析することにより,今後の改善策の参考にしたい. 「教育に対 向の二つがある」と述べた 。さらに,. と考えた。設置者別の特徴と課題に焦点をあてた. するインセンティブは,最近の外部評価や大学評. 理由は,文部科学省の調査(2011)より,教員業. 価・学位授与機構による評価などによって徐々に. 績評価の実施割合が大学設置者別にみて大学格差. 高まりつつあるものの,これまでの制度では教員. 2). 3). が生じている点に注目したからである 。これは,. 個人のレベルまで十分に働いていないというきら. 高等教育における教育・研究の質的向上を検討す. いがあった」と述べた。教育は教員業績評価の重. ることにもつながる。. 要なファクターの一つでだが,小笠原ほかの指摘. 冒頭の目的を達成するため,次の展開により検. は,教育に対する評価の重要性と個人レベルでの. 討する。第一に,教員業績評価の先行研究を紹介. 評価の難しさを論じたものである。なお,中央教. する。まず,教員業績評価の意義や基本的理念を. 育審議会大学分科会(2008)は「学士課程教育の. 整理した。そのうえで,教員業績評価に関するア. 構築に向けて(審議のまとめ)」において「教育業. ンケート調査結果を紹介する(本稿の 2.)。第二に,. 績の評価は,研究業績の評価に比して難しい面が. 国立大学,公立大学,私立大学に対するアンケー. あり,諸外国でも様々な試行錯誤が行われている」. ト調査結果の比較検討を行った。その結果, 「現段. と述べた 。. 4). 階において,多くの大学が教員業績評価の目的を. 阿部(2009)は,教員業績評価について「各大. 十分達成していない」 「多くの大学において教員業. 学の教育の質向上,発展には,それを担う教員を. 績評価が十分活用されていない」などの分析結果. 適正に評価することが重要である。教員は,その. を示した(本稿の 3.)。第三に,今後の課題として. 大学の使命・目的・教育目標を達成する人的資源. 「教員業績評価制度の検証を適宜行う必要があ. として雇用され,その職務を果たすことを責務と. る」 「教員業績評価結果の活用は教員の教育・研. する。教員評価は,教育と関係して,教員の職務. 究のインセンティブになっているか疑問が残. である①教育,②研究,③社会貢献,④管理運営. る」を示した(本稿の 4.)。. について,大学への貢献度を評価する。このなか で,その大学の使命・目的・教育目標と関連して,. 2.教員業績評価の先行研究. 教育改善への努力や貢献を大きく評価する必要が. 近年,教員業績評価に関する調査研究が増加傾. ある。また,教員の業績の量や質の成果のみなら. 向にある。その理由は,教員業績評価の実施割合. ず,大学の使命・目的・目標達成に積極的に関与. が増加傾向にあり,事例が蓄積されてきたことで. し,活動していること,努力していることのプロ. 様々な観点により事例研究が可能になったためで. セス評価により,その大学の教育が活性化される」. ある。本章では,まず教員業績評価の基本的理念. と整理した. 5). 。ここでは,教員業績評価の根本的. や必要性について整理された研究成果を紹介する。 な趣旨が述べられている。教員が果たすべき役割 そのうえで,教員評価に関する先行調査を紹介す. を着実に検証する方策としての評価システムの必. る。. 要性に触れている。すなわち,教員業績評価は教 員が大学に対して,職責を果たしているのか確認 する手段としての役割を担っている。. 2.1 教員業績評価の先行研究 教員業績評価は大学改革という潮流のなかで,. 八尾坂(2007)は,教員評価の基本的理念につ. どのような課題を持つのか。小笠原ほか(2003). いて「①合目的性:評価の目的に合致したシステム. は,「1990 年代後半以降の日本の大学改革の目的. であること。評価制度の意義・必要性を提示。②. の一つは,教育と研究のバランスを回復させ,大. 公平・公正性:評価システム及び評価結果が評価者. − 22 −.
(3) 間で隔たりがなく,適正なものになること。③客. 2.2 教員業績評価の先行調査. 観性:評価基準(要素・項目を含む)が明確で,か. 文部科学省(2011)のアンケート調査結果では,. つ複数の評価者による評価手法が示されているこ. 大学全体の教員業績評価(教育面)の実施数が増. と。④透明性:評価の仕組みが評価者と被評価者間. 加していた(2007 年度は 319 校であったが 2009. の間のみならず,一般の人にも明らかで分かりや. 年度は 354 校になった) 。. 7). 日本生産性本部(2012)は,教員業績評価に関. すいものであること。⑤納得性:評価システム及び 評価結果が被評価者等に論理的に説明性,納得性, 6). するアンケート調査を実施した注 2)。図 1 は,教員. 。評. 評価の導入状況を示したものである。「既に導入. 価制度の公平性,透明性を担保することは,制度. している」「既に一部の学部で導入している」の. を適正に運営するうえで重要な要件である。制度. 合計は 42.9%に止まっている。ただし,「今後,. 設計を図る際に十分留意しなければならない。何. 導入を検討している」が 35.7%あるため,今後,. かが欠落すると被評価者の支持は得られにくくな. 導入割合が増加すると思われる。「既に導入して. り,機能不全に陥る可能性がある。. いる」を設置者別にみると,国立大学 100.0%,公. 信頼性を有するものであること」と述べた. 特に導入予定はない, 21.4%. 既に導入している, 40.5%. 既に一部の学部で導 入している, 2.4%. 今後、導入を検討し ている, 35.7%. 図1 教員評価の導入状況の割合(n=42)(日本生産性本部,p.10,2012). 最終評価結果をフィード バックしていないが,賃 金表などから本人に分か る仕組みになっている, 5.6%. 最終評価結果をフィード バックしておらず,本人 にも分からない仕組みに なっている,38.9%. 最終評価結果をフィード バックしている, 55.6%. 図2 教員評価の本人へのフィードバックの割合(n=18)(日本性再生本 部,p.13,2012). 賞与に反映. 33.3%. 昇格(昇任)に反映. 33.3%. 月例賃金に反映. 22.2%. 研究費配分に反映. 22.2%. 任期制教員の再任判定資料. 22.2%. 特に反映せず(今後も予定なし). 22.2% 5.6%. 特に反映せず(今後は反映予定) 0. 35. 図3 教育職員の評価結果の処遇への反映割合(n=18)(日本生産性本 部,p.14,2012) − 23 −.
(4) 立大学 36.4%,私立大学 35.7%であった。図 2 は,. 3.2 調査方法(対象者). 評価結果のフィードバック状況を示すものである。. 設置者別の調査依頼方法は,次の通りである。国. 「最終評価結果をフィードバックしている」. 立大学については,2010 年 6 月~8 月に 85 大学の. (55.6%)が最も高い割合であった。一方,フィ. 評価担当課長宛に依頼した。その結果,81 校より. ードバックしていない割合は 44.5%あった。「最. 回答があった(回答率 95.3%) 。公立大学につい. 終評価結果をフィードバックしている」を設置者. ては,2011 年 5 月~7 月に 75 大学の評価担当課長. 別にみると,国立大学 100.0%,公立大学 40.0%,. 宛に依頼した。その結果,50 校より回答があった. 私立大学 50.0%であった。図 3 は,評価結果の処. (回答率 66.7%) 。私立大学については,2011 年. 遇への反映方法を示すものである。「賞与に反映」. 5 月~7 月に 475 大学の担当課長に依頼した。その. (33.3%),「昇格(昇任)に反映」(33.3%)が. 結果,136 校より回答があった(回答率 28.6%) 。. 9). 10). 11). 比較的高い割合だった。「特に反映せず(今後も 8). 予定はなし)」の割合が 22.2%あった 。. 3.3 調査結果 調査結果を表 1(質問 1~11)に示す。. 教員評価の状況をみると,まだ浸透していない 段階と推察される。教員評価の導入割合及び最終 評価結果をフィードバックしていない割合は約 4. 3.4 結果の考察. 割だった。一方,処遇への反映割合(図 3)をみ. 質問 1 は,教員業績評価の実施状況を問うもの. ると,すべての項目において低い割合であった。. である。国立大学 100.0%,公立大学 76.0%,私立. ただし,設置者別の状況をみると,国立大学が教. 大学 27.9%と設置者別に大きく異なっていた。た. 員評価に積極的に取り組んでいた。. だし,私立大学は「検討中」が 17.6%あり,今後 実施割合が増加する可能性がある。 質問 2 は,教員業績評価の実施校の学生収容定. 3.教員業績評価に関するアンケート調査結果 前章は,日本生産性本部による教員評価に関す. 員数別にみた分類である。国立大学は 5,000 人以. る先行調査結果を紹介した。しかし,教員業績評. 上の中規模校以上のグループが比較的多かった。. 価の効果や課題など詳細な設置者別の実態につい. 公立大学は 1,999 人以下の小規模校のグループが. ては不明な点が多い。本章は先行調査を踏まえ,. 過半数を超えていた。私立大学も小規模校のグル. 設置者別にみた教員業績評価の結果分析を行う。. ープが過半数を超えていた。 質問 3 は,教員業績評価の実施時期を問うもの である。国立大学は 2004 年度以降の実施が最も高. 3.1 問題設定(調査の意図) 調査目的は,設置者別(国立大学,公立大学,. かった。公立大学も 2004 年度以降の実施が比較的. 私立大学)にみた教員業績評価の効果と課題を明. 高かった。ただし,それ以前に約 1 割の大学が実. らかにするためである。筆者は,これまで国立大. 施済みだった。私立大学は公立大学と同様の傾向. 学,公立大学,私立大学に対して教員業績評価に. が示されたが,2003 年度以前に実施済みの大学は. 関するアンケート調査報告を行った(拙著,2011,. 約 3 割あった。. 2012)。本章は,その調査結果をとりまとめて比較 検討を行う。. 質問 4 は,教員業績評価の実施サイクルを問う ものである。すべての設置者において「一年」が. 調査にあたり,以下の予測を行った。 「国立大学. 最も高かった。ただし,国立大学は「二年」 「三年」. が最も教員業績評価について積極的に取り組みし. の合計が約 2 割あった。一方,公立大学,私立大. ている」 「評価結果のフィードバックは低い割合で. 学は「必要に応じて行う」と回答した割合が約 1. ある」。その理由は,先行調査の調査結果(図 1,. 割あった。. 図 3)において,そのような傾向が示されていた からである。. 質問 5 は,教員業績評価の実施目的について問 うものである。すべての設置者において「教育・ 研究活動の促進」の割合が最も高かった。また,. − 24 −.
(5) 表 1 大学に対する教員業績評価に関するアンケート調査結果(質問 1~11). 質問 1 教員業績評価を実施しているか(試行を含む)回答数(%) (国立大学:n=81,公立大学:n=50,私立大学:n=136). はい. いいえ. 検討中. 答えられない. 合計. 国立大学. 81(100.0). 0(0.0). 0 (0.0). 0(0.0). 81(100.0). 公立大学. 38 (76.0). 11(22.0). 0 (0.0). 1(2.0). 50(100.0). 私立大学. 38 (27.9). 71(52.2). 24(17.6). 3(2.2). 136 (99.9). 質問 2 教員業績評価実施校の学生収容定員数 回答数(%) (国立大学:n=81,公立大学:n=38,私立大学:n=38). 回. 答. 国立大学. 公立大学. 私立大学. 1.. 500 人未満. 4 (5.0). 11 (28.9). 6 (15.8). 2.. 500~999 人. 4 (5.0). 9 (23.7). 11 (28.9). 3.. 1,000~1,999 人. 10 (12.3). 8 (21.1). 5 (13.2). 4.. 2,000~2,999 人. 8 (9.9). 5 (13.2). 8 (21.1). 5.. 3,000~4,999 人. 12 (14.8). 3 (7.9). 3 (7.9). 6.. 5,000~9,999 人. 30 (37.0). 2 (5.3). 4 (10.5). 7.. 10,000 人以上. 13 (16.0). 0 (0.0). 1 (2.6). 81(100.0). 38(100.1). 38(100.0). 合計. 質問 3 教員業績評価の実施時期(試行を含む)回答数(%) (国立大学:n=81,公立大学:n=38,私立大学:n=38). 1999 年度以前. 2000~2003 年度 2004 年度以降. 答えられない. 合計. 国立大学. 0 (0.0). 5 (6.2). 74(91.4). 2(2.5) 81(100.1). 公立大学. 2 (5.3). 3 (7.9). 31(81.6). 2(5.3) 38(100.1). 私立大学. 6(15.8). 5(13.2). 25(65.8). 2(5.3) 38(100.1). 質問 4 教員業績評価の実施サイクル. 回答数(%). (国立大学:n=81,公立大学:n=38,私立大学:n=38). 回. 答. 国立大学. 公立大学. 私立大学. 1.. 一年. 54 (66.7). 25(65.8). 29(76.3). 2.. 二年. 4 (4.9). 1 (2.6). 1 (2.6). 3.. 三年. 12 (14.8). 1 (2.6). 0 (0.0). 4.. 四年以上. 2 (2.5). 4(10.5). 3 (7.9). 5.. 部局により異なる. 0 (0.0). 1 (2.6). 0 (0.0). 6.. 必要に応じて行う. 2 (2.5). 4(10.5). 4(10.5). 7.. 答えられない. 7 (8.6). 2 (5.3). 1 (2.6). 81(100.0). 38(99.9). 38(99.9). 合計. − 25 −.
(6) 質問 5 教員業績評価実施の目的(複数回答可). 回答数(%). (国立大学:n=81,公立大学:n=38,私立大学:n=38). 回. 答. 国立大学. 公立大学. 私立大学. 1.. 査定の手段. 17(21.0). 8(21.1). 12(31.6). 2.. 教員個人の能力開発の手段. 34(42.0). 23(60.5). 15(39.5). 3.. 人事の適正化. 12(14.8). 8(21.1). 12(31.6). 4.. 教育・研究活動の促進. 70(86.4). 32(84.2). 34(89.5). 5.. 社会に対する説明責任. 40(49.4). 9(23.7). 6(15.8). 質問 6 教員業績評価結果の活用(複数回答可) 回答数(%) (国立大学:n=81,公立大学:n=38,私立大学:n=38). 回. 答. 国立大学. 公立大学. 私立大学. 1.. 給与. 43(53.1). 7(18.4). 7(18.4). 2.. 賞与・一時金・報奨金. 53(65.4). 10(26.3). 10(26.3). 3.. 昇任. 8 (9.9). 7(18.4). 18(47.4). 4.. 雇用継続・任期延長. 12(14.8). 13(34.2). 8(21.1). 5.. 教員の基盤的研究費の配分. 10(12.3). 8(21.1). 5(13.2). 6.. 一部業務免除(研究時間確保等). 4 (4.9). 1 (2.6). 0 (0.0). 7.. 学内・研究所内の表彰・賞. 19(23.5). 4(10.5). 2 (5.3). 8.. 評価が悪い教員に対する指導. 31(38.3). 11(28.9). 5(13.2). 質問 7 評価者訓練を実施しているか. 回答数(%). (国立大学:n=81,公立大学:n=38,私立大学:n=38). はい. いいえ. 検討中. 答えられない. 合計. 国立大学. 5 (6.2). 64(79.0). 7 (8.6). 5(6.2). 81(100.0). 公立大学. 5(13.2). 21(55.3). 9(23.7). 3(7.9). 38(100.1). 私立大学. 2 (5.3). 33(86.8). 2 (5.3). 1(2.6). 38(100.0). 質問 8 教員より教員業績評価の基礎資料が提出されない場合のペナルティ. 回答数(%). (国立大学:n=81,公立大学:n=38,私立大学:n=38). ある. ない. 検討中. 答えられない. 合計. 国立大学. 17(21.0). 48(59.3). 9(11.1). 7(8.6). 81(100.0). 公立大学. 7(18.4). 24(63.2). 4(10.5). 3(7.9). 38(100.0). 私立大学. 6(15.8). 24(63.2). 6(15.8). 2(5.3). 38(100.1). − 26 −.
(7) 質問 9. 教員業績評価の実施効果(複数回答可). 回答数(%). (国立大学:n=81,公立大学:n=38,私立大学:n=38). 回. 答. 国立大学. 公立大学. 私立大学. 1.. 教員の教育力向上. 23(28.4). 10(26.3). 14(36.8). 2.. 教員の研究生産性の向上. 20(24.7). 7(18.4). 11(28.9). 3.. FD 活動の活性化・充実. 12(14.8). 3 (7.9). 4(10.5). 4.. 教育実施体制の改善. 7 (8.6). 3 (7.9). 6(15.8). 5.. カリキュラムの改善. 0 (0.0). 3 (7.9). 1 (2.6). 6.. 研究実施体制の改善. 5 (6.2). 3 (7.9). 5(13.2). 7.. 人事や給与体系の改善. 9(11.1). 2 (5.3). 5(13.2). 8.. 学内運営体制の改善. 5 (6.2). 4(10.5). 0 (0.0). 9.. 社会貢献活動の活性化. 13(16.0). 6(15.8). 5(13.2). 10. 外部資金・委託事業等の増加. 6 (7.4). 4(10.5). 3 (7.9). 11. 外部資金等獲得戦略の見直し. 3 (3.7). 1 (2.6). 0 (0.0). 60(74.1). 14(36.8). 18(47.4). 2 (2.5). 1 (2.6). 7(18.4). 12. 教員意識の変化 13. 現状の変化はない. 質問 10 教員業績評価の実施における課題(複数回答可). 回答数(%). (国立大学:n=81,公立大学:n=38,私立大学:n=38). 回. 答. 国立大学. 公立大学. 私立大学. 1.. 学内合意の形成. 41(50.6). 19(50.0). 16(42.1). 2.. 評価領域・指標の策定. 49(60.5). 19(50.0). 24(63.2). 3.. 評価担当者の選定. 6 (7.4). 8(21.1). 4(10.5). 4.. インセンティブの措置. 25(30.9). 13(34.2). 2 (5.3). 5.. 人事・昇給・昇進等への反映. 32(39.5). 16(42.1). 12(31.6). 6.. コストや人的労力の増加. 41(50.6). 14(36.8). 8(21.1). 7.. 責任者の変更に伴う業務の継承. 7 (8.6). 3 (7.9). 5(13.2). 8.. データベースの構築・活用. 30(37.0). 6(15.8). 5(13.2). 9.. 総合(最終)評価の判断. 13(16.0). 8(21.1). 11(28.9). 20(24.7). 2 (5.3). 4(10.5). 10. 教員より評価資料が未提出. 質問 11 教員業績評価結果の検証や分析を行っているか. 回答数(%). (公立大学:n=38,私立大学:n=38)※国立大学は調査時に当該質問が設定されていなかった. はい. いいえ. 答えられない. 合計. 公立大学. 16(42.1). 17(44.7). 5(13.2). 38(100.0). 私立大学. 11(28.9). 22(57.9). 5(13.2). 38(100.0). − 27 −.
(8) 公立大学については「教員個人の能力開発の手段」. ックは低い割合である」 )は,ほぼその通りだった. が約 6 割あったが,それら以外に過半数を超える. といえる。前者については,国立大学における教. 項目は公立大学で一つだけである。 「査定の手段」. 員業績評価の実施割合が最も高かった。後者につ. については,すべての設置者において比較的低い. いては,質問 6 の回答の通り比較的低い割合の項. 割合に止まっていた。. 目ばかりであった。. 質問 6 の教員業績評価の活用については,国立 大学において「賞与・一時金・報奨金」 「給与」が. 以上の検討を踏まえ,本章の検討結果を整理す る。. 過半数を超えた。公立大学,私立大学については 過半数を超える項目はなかった。. 第一に,現段階において,多くの大学が教員業 績評価の目的を十分達成していない。教員業績評. 質問 7 は,評価者訓練の実施有無について問う. 価の目的(質問 5)では,すべての設置者におい. ものである。公平性,客観性のある人事評価を実. て「教育・研究活動の促進」が 7~8 割と比較的高. 現するために重要と考えたため,この設問を設け. い割合だった。しかし,教員業績評価の実施効果. た。すべての設置者において,実施していない割. (質問 9)をみると, 「教員の教育力向上」は 3~4. 合が高かった。ただし,公立大学において「はい」. 割,「教員の研究生産性の向上」は 2~3 割に止ま. 「検討中」の合計が約 4 割あり,今後,増加する. っていた。すなわち,期待された程度の効果が挙. ことが予想される。. がっていない状況を示している。. 質問 8 は,教員業績評価に協力しない教員に対. 第二に,多くの大学において,教員業績評価が. するペナルティの有無を問うものである(一般的. 十分活用されていない(質問 6)。過半数を超えて. に被評価者となる者は,制度への全員参加が義務. いる項目は,国立大学の給与・賞与等(5~6 割). 付けられる) 。すべての設置者において,教員業績. だけである。また,この結果に関しては,教員業. 評価に協力しない場合にペナルティを科さない割. 績評価の目的(質問 5)が教員業績評価の活用に. 合が高かった。ただし,すべての設置者において,. うまく連結しているか疑問を感じる。その理由は,. 「ある」 「検討中」の合計が約 3 割あり,今後,増. 教員業績評価の目的(質問 5)の国立大学「査定. 加することが予想される。. の手段」は約 2 割だが,教員業績評価の活用(質. 質問 9 は,教員業績評価の実施効果について問. 問 6)国立大学の給与・賞与等は 5~6 割ある。こ. うものである。国立大学における「教員意識の変. れは,国立大学の一部において,教員業績評価の. 化」が約 7 割あったが,それ以外で過半数を超え. 目的に掲げられていないにもかかわらず,給与・. るものはなかった。「教員の教育力向上」「教員の. 賞与等に反映されている実態があることを示して. 研究生産性の向上」は 2~4 割程度であった。. いる。. 質問 10 は,教員業績評価の課題について問うも. 第三に,設置者別の特徴をみると,次のように. のである。すべての設置者において, 「評価領域・. なる。国立大学については,法人化(2004 年度). 指標の策定」 「学内合意の形成」が比較的高い割合. 以降に教員業績評価を実施した大学が多かった。. だった。「教員より評価資料が未提出」は 1~2 割. ただし,実施割合は 100.0%であるが,活用・実施. 程度であり,大きな課題として捉えられていない. 成果は全般的に低かった。公立大学については,. ことがわかる。. 法人化制度(2004 年度)導入以降に教員業績評価. 質問 11 は,教員業績評価の結果に対する検証や. を実施した大学が多かった。実施割合は約 8 割で. 分析の実施有無を問うものである。公立大学,私. あるが,活用・実施成果は低かった。私立大学に. 立大学ともに行っていない割合が高かった(なお,. ついては,制度の実施割合及び活用・実施成果が. 国立大学については,調査時に当該質問を設定し. ともに低かった。ただし,評価者訓練の実施割合. ていなかったため調査結果はない) 。. 及び教員より教員業績評価の基礎資料が提出され. 予測(「国立大学が最も教員業績評価について積 極的に取り組みしている」 「評価結果のフィードバ. ない場合のペナルティを科す割合が比較的高かっ た。. − 28 −.
(9) 次に,本稿の検討を通じ,推察できる点を述べ る。. 質的向上につながる割合はどの程度あるのだろう か。むしろ,表彰や昇任など別の反映方法が教員. 第一に,多くの大学において,教員業績評価の. のインセンティブを高める手段になるかもしれな. 実践的な効果がもたらされる以前の段階と思われ. い。そのような教員の意識調査を踏まえた活用法. る。教員業績評価の実施効果(質問 9)では,す. を検討する必要もある。. べての設置者において「教員意識の変化」が最も. 本稿の検討結果を通じて,教員業績評価は改善. 高い割合であり,その他の項目については比較的. を要するべき課題がいくつかあると思われる。し. 低い割合に止まっていた。. かし,それは画一的ではなく大学によって異なる。. 第二に,公立大学,私立大学の一部の大学にお. その理由は,制度の趣旨や大学を取り巻く環境が. いて,教員業績評価の正確な効果や課題を把握で. 同じではないためだ。そのため,各大学は自校に. きていない危惧が持たれる。質問 11 では,教員業. おいて期待される教員業績評価の効果(あるいは. 績評価結果の検証や分析を行う割合が 3~4 割に. 目標設定)を想定したうえで反映方法を設定する. 止まっていた。検証等を行わないことは,制度実. 必要がある。. 施の効果や課題が不明確になる可能性が高い。さ. 大学における教員業績評価は実施後,一定期間. らに,どのように改善したよいのか具体的な検討. が経過した大学が少なくない。しかし,制度の効. が難しくなる。PDCA の観点においても Check(検. 果を向上させるためには,さらなる検証やリフォ. 証)が不十分であることは,制度の機能不全に陥. ームが要求される。以上の状況を踏まえ,効果的. ることになりかねない. 注 3). 。. な制度改善を実現するための研究を継続する予定 である。. 4.小括 本稿は,「大学における教員業績評価について, 設置者別にみた特徴と課題を示すこと」を目的と. 注 1) 高知大学ウェブサイト. して,国立大学,公立大学,私立大学に対するア. (http://www.kochi-u.ac.jp/outline/tenken_hyouten.. ンケート調査結果の比較検討を行った。その結果,. html)を参照されたい。. 「現段階において,多くの大学が教員業績評価の. 2) 日本生産性本部が 758 大学(国立大学 86 校,. 目的を十分達成していない」 「多くの大学において. 公立大学 77 校,私立大学 595 校)に対して依. 教員業績評価が十分活用されていない」などの分. 頼したものである。なお,2012 年 10 月 10 日. 析結果を示した。その検討結果を踏まえ,今後の. に日本生産性本部より引用許可を得た。 3) PDCA とは,Plan(計画),Do(実行),Check. 課題点を示す。 第一に,教員業績評価制度の検証を適宜行う必. (検証),Action(改善)の略である。事業活. 要がある。 「教員業績評価の実践的な効果がもたら. 動を目標管理することにより改善する方法を. される以前の段階と思われる」と前述したが,制. いう。. 度の実効性,有効性を担保する検証システムの構 築が望まれる。それがなければ制度改善に結びつ. 参考文献. く可能性が低くなる。. 1) 文部科学省,大学改革実行プラン―社会の. 第二に,教員業績評価結果の活用は,教員の教. 改革のエンジンとなる大学づくり,1,13,20 12.. 育・研究のインセンティブになっているか疑問が 残る。この点については,制度の目的と活用方法. 2) 文部科学省高等教育局大学振興課大学改革推. がマッチングしていないことが制度の効果の低さ. 進室,大学における教育内容等の改革状況に. につながっている可能性がある。例えば,教員業. ついて(概要),36,2011.. 績評価結果の活用を給与・賞与等に反映する場合,. 3) 小笠原正明・阿部和厚・山岸みどり・西森敏. 年額で数万円ならば,それが教員の教育・研究の − 29 −. 之・細川敏幸:大学教員の教育業績をどのよ.
(10) うにして評価するか? ,北海道大学高等教育 機能開発総合センター,高等教育ジャーナル ―高等教育と生涯学習(11)150,2003. 4) 中央教育審議会大学分科会制度・教育部会, 学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ) , 39,2008. 5) 阿部和厚:大学教員の職務に関連して,日本 教育情報学会,日本教育情報学会学会誌(増 刊)103,2009. 6) 八尾坂修:大学教員評価の今後の展開,九州 大学教育経営学研究紀要 10,2,2007. 7) 文部科学省高等教育局大学振興課大学改革推 進室,大学における教育内容等の改革状況に ついて(概要),36,2011. 8) 日本生産性本部大学人事戦略クラスター:大 学 教職員の人事処遇制度に関するアンケー ト結果概要,10-11,13,2012. 9) 岩崎保道:国立大学における教員業績評価の 現状―アンケート調査分析を踏まえて,大 学教育研究ジャーナル,8,46-49,2011. 10) 岩崎保道:大学における教員業績評価の現状, 大学評価学会第 9 回全国大会研究発表資料,2 012. 11) 岩崎保道:私立大学における教員業績評価の 現状,大学行政管理学会学会誌編集委員会, 大学行政管理学会誌,15,96-98,2012.. − 30 −.
(11)
図
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