東アジア日系企業における技術移転
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(2) 40@ (198). 横浜経営研究. 考えられる・ 企業は有形資源 ( 人的資源,物的 資源,資金的資源 ) と無形資源 ( 情報,知識) の集合体として 捉えられるが LPenrose l959 ; 岡本 1985], 海外子会社設立の 際には,本国親 会社の経営資源が 一括して海外子会社に 移転さ れる [小宮 1975 . こうして,本国から海外に 移転される経営資源の 一部は,国際的な優位性. いて優秀な技術者や 管理者が確保できなかった り,あるいは現地の 作業者の間で 本国とは異な る作業慣行や 労務慣行が浸透しているために ,. 本国の技術が 現地に定着しない 場合も生じるの であ る.. 以上の考え方は ,. コ. の源泉となり 考えられる.. 第 2 号 (1998). 第 XIX 巻. ,海外子会社の競争力を支えると. 日本企業を念頭に 置いても. 当然当てはまるはずであ る.すなわち,. 日本企. 業の国際的な 優位性は日本国内で 蓄積してきた 技術によってもたらされると 考えられる. その. このように,本国から海外子会社へ 移転され る経営資源の 中でも,特に重要な資源は ,無形 の経営資源と 考えられる・それは ,企業が持っ 情報や知識などの 無形の資源の 中には, 自ら事 業経験を積まないと 蓄積できず,市場から対価 を 出して購入することが 難しいものが 含まれて いるからであ る [Penrose l959 ; 岡本 1985 . このような無形の 経営資源は,他社が模倣する. と言われる作業管理,生産管理,品質管理の方 式の移転が重要になってくる.そのような 日本. のが難しく,企業の独自性の源泉となる.すな. 型生産システムが. わち,競争上の優位性の中核となると 考えられ. で,. コ. る. [ 岡本. 1985 .. ため, 日本企業は海外子会社に 対して, 日本で 蓄積されてきた 技術の移転を 図るはずであ る.. その際, 日本企業の技術上の 優位性は,製品技 術よりも生産技術や 管理技術の面に 求められる ことが多い点を 考えると [ 岡本 1987L, トョ タ. ,システムに代表される日本型生産システム. ,現地のいろいろな条件の下. どの程度定着可能なのかを 探る研究は ,. れまでにも行われてきた. コ. こ. 2).. 以上のような 考え方に立っと ,企業が保有す る 技術は,企業に 国際的な優位,性を. 与える重要 な無形経営資源の 一つとして考えられる.技術. 2. 仝 業 グローバリゼーショ ン の時代における 企業内技術移転の 意味. の中にはマニュアルや 図面の形でやり 取りが可. 以上の議論は ,海外子会社を設立する時点で , どのように技術移転を 行な う のか, という立場. 能な部分もあ るが, 自ら事業経験を 積まないと 獲得できない 部分もあ ると考えられるからであ る.技術の中には,製品の設計図面に体化され た製品技術以覚に ,生産設備とその使い方に関 わる生産技術,生産活動を管理するための 管理. からのものであ った.. しかし仝日では ,. この. ような見方だけでは ,多国籍企業内部の技術移 転を十分には 捉えられなくなってきた. 海外子会社は ,設立された後も,現地での競. 技術があ る [ 吉原 1997]. 製品技術は図面の 形 で容易に伝えられると 考えられるが ,生産技術 の中でも機械・ 設備の使い方に 関する部分や 管 理 技術は事業経験を 積んで修得される 性格が強 く,マニュアルの形では現れせない 部分が存在 する. 企業が海外子会社を 設立する際には ,国際的 な優位性を与える 技術を,適切に現地に移転で きるか否かが 重要になってくる. しかし,現地. 会社の立地する 一国の範囲を 超えて地域レベル. 0 社会的・経済的事情によっては. や世界的レベルで 競争優位を高めることも 可能. ,必ずしも)ll 頁. 誠 に技術が移転されるとは 限らない.現地にお. 争の中で長期的に 存続・成長することを 求めら. れる・そうした 中で,競争環境が変われば,新 たな競争優位を 獲得して い くことが不可欠とな る.. また,海外子会社は自らの事業経験を 通じ. て独自の経営資源を 獲得し 自ら競争条件の 変 化を引き起こすこともあ り ぅる .そして,多国 籍企業の側から 見れば,新しい競争優位を獲得 した海外子会社を 戦略的に活用すれば ,海外子. であ. る. [ 拙稿. 1989 .このように ,企業活動の コ.
(3) 東アジア日系企業における 技術移転 グローバリゼーションに 伴って,海外子会社を. 見る視点も変わることを 要請される. 以上のような 観点に立脚すれば ,技術移転は ,. 海外子会社の 設立時点だけの 問題としては 捉え られなくなってきた.. 第一に,海外子会社設立以降も ,継続的に本 国から海外子会社への 技術移転が行われる 可能 性があ ることを指摘できる [ 拙稿 1993 ; 曹 1994]. 競争条件が変わると ,今まで国際的な 優位性をもたらしていた 製品技術や生産技術が 陳腐化してしまう 危険があ る.そのような事態. (局促. 書札 ). (199) 41. させることは 難しいと考えられる. そのため, 技術移転のプロセスは ,短期間に終了するもの ではなく,海外子会社の技術面の能力が 順次高 度化して い くプロセスと 考えられる。曹 1994]. この第一の点と 第二の点とは ,互いに関連, 性 を 持っている.すなわち ,海外子会社への継続 的な技術移転が 効果をあ げるためには ,海外子 会社側が新しい 技術の吸収力を 持っていなけれ ばならないからであ る.海外子会社の技術面の 能力があ るレベル以上に 高度化していないと ,. 転して,新しい 競争優位を定着させることが 求. 新しい技術の 移転は円滑に 進まないであ ろう. かえって,既存の生産技術や生産管理に 慣れた 現地 側 従業員は,新設の 生産拠点以上に 新しい. められる.具体的には ,新しい製品の生産が本. 技術に抵抗を 示すかもしれない. したがって ,. 国から移管されたり ( 製品機種の切り 替え ), それを生産するための 新しい生産設備が 導入さ. 海外子会社の 能力高度化がどこまで 進行してい. れたりする.. ンの時代の技術移転の 成果を捉える 上では,下. になった際には ,海外子会社に新しい技術を 移. 第二に,海外子会社側に , な. 行なうだけでなく ,. 日常的な生産活動. るかを捉えることが ,. 企業グローバリゼーショ. 町 欠 であ る.. 自ら環境変化に 適応する. 能力を獲得させることまでを. 視野に含める 必要. 3. 海外子会社の 技術高度化の 段階モデル. があ る・前述の多国籍企業の 技術移転の議論は ,. 海外子会社への 技術移転によって ,海外子会. 日常的な生産活動を 支障なく遂行できれば技術 移転の成果はあ ったものと暗に 前提していた. しかし これでは,現地子会社が直面する競争 条件が変化すると ,本国親会社がその都度,対 処を考えなければならない.多国籍企業の 本国. 社の技術面の 能力がどういう 段階やプロセスを. 親会社と い えども経営資源の 保有量は限られて. ると,海外子会社の技術面の能力高度化は , 似. いることを考えると ,海外子会社の 数が増えれ. 経て高度化していくのかを では 曹. 「. 捉えるために ,本稿. 1994 」が提示したモデルを 用いる. こ. の モデルは, 日本企業を念頭に 置いて作られた. もので, その概要は表 ド. 1. に示される. それに. の 四つの段階を 踏んで発展するものとして. よ. 捉. ば, 本国から海外子会社に 実施できる支援の 量. えられる.. も自ずと限られることになる. したがって,海 外子会社の側も 環境条件の変化に 対応してあ る. 第一段階は,現地でモノ作りを実施する 体制 を整える段階であ る.本国から製品図面と同時. 程度新しい能力を 自ら獲得することを 考える 必. に生産設備と 作業マニュアルが 持ち込まれ, そ. 要 が生じる [拙稿 1989]. 場合によっては ,海 外子会社が特定の 事業領域において ,他の海外 子会社や,場合によっては 本国親会社まで 統括 しリードすることまで 考えられる㈲.. れに従った生産活動の 実現が図られる.そして ,. このように考えると ,海外子会社には ,. 日常. の生産活動を 遂行できるレベルを 超えた高度な 能力が要求されることになる. う. しかし, この. ょ. な高度な能力を ,短期間で現地子会社に 定着. 機械設備が使いこなせるまで ,生産現場の作業 者. ( オペレータ一 ). の技能を向上させることが. ,. この段階での 到達点となる.作業者の 技能を向 上させる上で ,本国からの指導者の派遣 と,現. 地から本国への 派遣研修が大きな 役割を果たす. 第二段階は,機械のメンテナンス ,操業管理, 各種の管 工程管理,品質管理,資材管理などの.
(4) 第 XIX 巻. 横浜経営研究 表. 海外子会社の 技術定着. 1. I第 1. 移転される 技. 段階. 能 ・能力の内容 現地子会社に 定 着する能力 技術移転の担 い. 操作技術 Operation 日本人主導. 手. ・. 段階. l第 2. モノ作りの方法. 第. 2. 甘皮. (200). (1998). 化の進展 段 階. 高. I第 3. 段階. I第 4. 段階. 変化・異常への. 改善・改良能力. イノベーション. 対応能力. 企業間関係構築. 創出能力. 導入機械の保. 修理と一連の 改. 設計と計画. 全 ・管理 Maintenance 日本人主導 現地人育成. 善 ・改良. Innova. Ⅰ. on. Improvement 現地人中心. 現地人主導. 日本人がサポー @. 編. の し Ⅰノ ア ユ. 7. 二成. エ チ ヤー・. 発生する.そうした事態を. エ チ. 堪能力を現地に 定着させる段階であ る.工場の 生産現場では ,生産活動の遂行を停止させるよ. 低い 々一. や マン. やイジ. 解. ア再. ア職 二型. 設計エンジニ. ン級 エ上. 、 /. ヤ一. シャ 二ジ. テマ. ほとんどなし. リサーチヤ 一. 出所 : 曹 [1994]. うな事態が定常的に. 少人数の往来. @. L. 非常に低い. 通. 応力. ノ Ⅰ ア. 環境変化への 対. 二 小天. 冊 方法. ユ施. マニュアルの 7音. 作業長 (作業者の長 ) マの. る中心の人材. 少数の日本人派 遣. クネ. 現地で育成され. 日本と現地との. 間で大量の往来. ジ管. 人材の往来. 変化の先取り. 第三段階は,製品,生産設備,作業方式にお ける独自の改善を ,現地子会社が行なっていく 段階であ る.本国と海外現地との間には,顧客 の 要求,生産工程の設備集約 度 ,納入される素. もたらす要因の 一 つは ,生産工程における生産. 材や部品の規格・ 性能,作業者の職場慣行など の面での 違 いがあ るのが普通であ る. こうした. 替えなどの変化であ る. こうした際 に,機械設備の段取り替えや 各工程に補填され る部品の切り 替えを適切に 行なれないと 機械の 停止時間が長くなってしまう. また,機械故障 の発生,納入された部品の品質トラブル ,作業 者の欠勤などの 一種の異常事態と 呼べる状況に どのように対処できるのかという 問題は,いっ. く段階であ る.同時に,子会社の 関心が企業の 外側にも広がり ,外部の企業との間の適切な関 係の構築まで 模索されるようになる. この段階. そう重要であ る. この面での対応能力によって. まで到達すると , 自社工場の日常的な 生産管理. 品口目の切り. ,. 工場の効率は 大きく左右されると 考えられる. この ょ うな変化と異常への 対応に当たっては ,. 作業者よりも 保全要員や生産管理の 担当者が重 要な役割を果たす. したがって, この段階では ,. こうした現地の 人材に対する 教育・訓練が 中心 となる. この段階まで 到達すると,生産活動に おける問題を 現地子会社自らが 解決して い く姿. 勢が出てくる・. 本国と現地との 間のさまざまな 条件の違いに 適 応 するために,現地子会社が改善を展開して い. には問題がなくなるため ,外部のサプライヤー や 研究機関との 関係を考える 素地ができてくる. ためであ る. この段階では ,現地子会社のェン ジニアや上級管理者などの 職位階層上の 上位の 人材育成がキ ー となる.技術的な専門知識がな. いと,本格的な改善・改良を 行な う のは難しい からであ る. この段階まで 到達すると,現地子 会社には,単に与えられた問題を 考えるだけで.
(5) 東アジア日系企業における 技術移転 はなく, 自ら問題を探して 解決するという 姿勢 が定着するので ,変化への適応力がついてくる・ 第四段階は,現地子会社がイノベーションを 発信していく 段階であ る.すなわち,現地子会 社が自主的に 独自の技術を 開発して,新製品や 新しい生産技術を 開発していく 段階であ る.そ の意味では, 限られた技術領域の 中ではあ るが, 本国親会社からの 自立が達成される 段階と考え られる. この段階では ,海外子会社で 本格的な 研究・開発が 行なわれるため ,研究・開発者の 養成が不可欠となる. この段階まで 到達すれば, 海外子会社は 自ら変化を先取りし 変化を引き 起こして自己変革を 遂げていく存在になる. この現地子会社の 技術高度化の 段階モデルは ,. くまでもモデルであ り,現実の海外子会社す べてが最後の 段階まで到達するということを 主 張しているわけではない.多国籍企業の 戦略上, あ. (局促. 書札 ). 43. (201). ケート調査の 結果に依拠しつつ ,. インタビュ一. 調査の内容も 折り込みながら 検討を加えていき たい.. ,岡本 [1998]. 調査企業の概要については. tこ. 詳細に述べられているが ,以下に簡単に要約す る.. 訪問した企業数は 58 社, アンケートで 何ら. の回答を得られた 企業数は 48 社に達する. 対 象地域は,韓国・ 台湾・中国・タイ・マレーシ ア ・シンガポール・インドネシアの. 7 つの国と. 地域に及ぶ. アンケート調査で 回答を得られた 48 社の国・地域別の 内訳は,韓国が 4 社,台湾 が 6 社, 中国が 7 社, タイが 13 社, マレーシ アが 9 社, シンガポールが 4 社, インドネシア. が. 5. 社となっている.. 内訳は, 自動車が. 8. 同じく 48 社の業種別の 社, 電機・電子が 32 社,. 起こりうる. しかし, このモデルは ,海外子会. 広義の化学が 8 社となっている 4,. 48 社を操業開始年次別に 見ていくと, 1960 年代が 9 社, 1970 年代が 12 社, 1980 年代が 12 社, 1990 年代が 15 社となる.東アジアの 日系 企業には,操業年数が異なる生産拠点が 混在し ていることがわかる. この間に東アジアが 置か. 社への技術移転の 成果を捉える 上で -定の役割. れた世界経済の 状態とこの地域の 経済的発展の. は 果たしうるであ. ろう.現地子会社の技術面の 能力高度化の 達成度を技術移転の 成果と捉える. 進展度は当然大きく 変化しており , 日系企業側 から見た東アジア 地域の戦略的位置づけも 大き. のであ る.以下では,. アジアの代表的な 日系企業における 技術移転の. く変わってきたはずであ る.その結果,東アジ アの生産子会社に 要求される技術能力水準も 変. 現状について 検討してみたい.. 化したはずで ,現地子会社がその 要請に応えて. 海外子会社に 求められる技術面の 能力水準は ,. 子会社ごとに 違ってくるであ ろう. また, さま ざまな制約要因のために ,海外子会社の技術力 が期待されていたレベルまで. 到達しないことも. このモデルを 用いて,東. Ⅲ.東アジア 日系仝業における 技術移転の現状 1 ,. 調査対象企業の 概要. いるのか否かが 問われているはずであ る. 企業規模の指標として 年間売上高を 取ると 1. 本稿が依拠する ,東アジア地域の 日系企業を 対象とした海外実地調査は , 1995 年度と 1996. 億米ドル未満が m3 社,. ドル未満が 2(M社,. 3. 1. 億ドル以上・. 億ドル以上・. 5. 3. 億. 億ドル未. ねられなかった 項目に関してアンケ - ト調査へ. 満が 6 社, 5 億ドル以上が 9 社となっている・ 東アジア地域の 生産子会社の 企業規模は北米地 域などと比べると 小さく, これが現地子会社に 要求される技術水準を 低める方向で 作用する 可 能 性があ る. しかし,電機・ 電子などでは ,他 地域の海覚子会社や 日本国内の事業拠点、と上ヒ較 しても規模的に 遜色のないところも ,一部で出. の協力を依頼した.本稿では ,基本的にはアン. 現している. このような生産拠点は ,. 年度の. 2. 年間に分けて 行なわれた.調査は ,. イ. ンタビュ一調査とアンケート 調査の :: っ から構. 成される. まず,現地子会社を訪問 L,て ,半日 から. 1. 日かけて現地駐在の 日本人派遣社員を. 心に聞き取り 調査を実施し ,. 中. インタビュ一で 尋. グローバ.
(6) 44 (202) 表2. 第 2 号 (1998). 第 XIX 巻. 横浜経営研究. 東アジアの日系企業における. 工程 内 不良率の実態. 自動車. 電機・電子. 化学. 日本よりも低い (良好 ). 2社. 6 社. 1 ネ土. 日本と同程度. 0社. 8 社. 3社. 2社. 5社. 3社. 3社. 5社. 0 ネ生. 日本よりも高い. (10% 未満 ) 日本よりも高い (10% 以上 ). * 日本のマザー 工場と比較した 値. 御水準は,必然的に 高くなると考えられる. 東 アジア地域の 生産子会社に 要求される技術水準. る・生産拠点の 競争力は, コスト ( 生産性 ), 品質,納期達成度などの指標で測定される. 本 稿 では,その中の品質水準における 成果を取り 上げて,現地子会社の競争力を検討して い きた. は,規模の面から見ても多様性に 富んで い ると. v¥. ルな 輸出用拠点として 位置付けられているとこ ろが多 い . このような生産拠点に 要求される 技. あ. 考えられる. 日本側出資比率に 関しては, 日本側の完全 所 有 (100% 所有 ) の子会社が 16 社,多数所有 (51% 以上 100% 未満 ) が 20 社, 少数所有. 他の成果指標を 達成する上でも ,品質水準の確 保 が前提となるためであ る.生産工程で不良品. (50% 以下 ). が 大量に生産される. 現地子会社の 生産活動の成果指標として 質を取り上げたのは ,. , 品. コストや納期達成度など. 26 では,作りすぎの無駄. が 12 社となっている.欧米などの 先進諸国へ進出した 場合と比べて ,合弁事業が. が 生じてコスト 面に影響を及ぼす. 不良品が出. 多いのが東アジア 地域の事業拠点の 特徴となっ. る. ている・現地 側 パートナーが 存在する場合は ,. が無駄になるからであ る. また,品質水準が不. 現地子会社への 技術移転をめぐってコンフリ. 安定な状態では ,顧客に対する納期の達成度が. ク. トが 発生する可能性があ る. 今回のインタビュ. 一調査でも,合弁パートナーが短期的利益を 優 克 して長期的な 技術投資を拒むという 声や ,現 地子会社の採算を 考えずに最先端技術を 常に要 求 するという意見を 耳にした. このように, 合. こ. と. を想定して,作りだめをすると,その分. 困難になる.不良品が大量に発生してしまう. ょ. では,納期が不安定になるためであ る.そこ で ,生産拠点の競争力を見る 上では,品質の 問 題 が最も重要とも 言える. ぅ. 生産拠点の品質水準がどれだけ. 確保されて ぃ. 弁 パートナーとの 間にコンフリクトが 発生する. るのかを見る 指標としては. ,工程何不良率を見. と ,現地子会社への技術移転はそれだけ. る.. これが高 い ほど品質. 困難に. なり,それは現地子会社の 能力高度化の 進展に も 影響を及ぼすと 考えられる. 2. 現地子会社への 技術移転の成果 現地子会社への 技術移転の成果は ,子会社の 競争力の向上となって 現れて意味を 持つ. D で 触れた 26 に,海外子会社に技術移転を行な 6 目的は,子会社の競争力の向上であ るからで. この逆数が直行率で ,. 面 での成果が良好であ ることを示す.表2 に ,. 有効回答が得られた 38 社の工程 内 不良率の実 態を示す. 表 2 は, 日本のマザー 工場と海外現地生産拠 点との工程 内 不良薬の数字を 比較したものであ る. 日本の水準よりも 悪いところが 18 社, 日 木 と同水準のところが 10 社, 日本よりも良好 なところが. 9. 社となっている. 日本と同レベル.
(7) 東アジア日系企業における. 技術移転. (同位. 書札 ). (203)@45. や日本よりもむしろ 良い水準のところが 意外に 多い反面, 日本の水準よりも 10% 以上悪いと ころも存在し ,企業間の差が大きいと言える. もっとも, この工程 内 不良薬の数字を 読む際. 成果の達成度の 背後には, それを支える 技術面. には,若干の注意が必要であ る. この数値が低. での能力の裏 付けがあ る.すなわち, 製品技術,. いからと言って ,. 生産技術,管理技術などが 十分に定着した 結果. 日本のマザー 工場よりも現地. 子会社の実力がそれだけ. 高いとは限らない. 生. 3. 現地子会社の 技術力の水準 生産拠点におけるコスト. ,. 品質,納期などの. として, これらの成果指標が 高くなると考え. ろ. 産している製品の 技術レベルや 品目の数が異な れば,工程内 不良率も変わってくる.現地子 会. の中の機械設備の 使 い 方に関わる部分と 管理 技. 社 が生産している 製品の種類が 少なくなれば ,. 術に焦点を当てる.. それだけ品質水準の 達成は,容易になるはずで. に,. あ る.. 心 になっていると 考えられるからであ る. しかし,一部の生産拠点が, 日本と比較して も 良好な品質水準を 確保しているのは ,否定で. は ,作業標準レベル ,小集団活動のレベル , 作. きない. マレーシアに 立地する電機・ 電子や化. 学の グローバル. な 輸出向け生産拠点の. 中には,. このようなところが 多い. グローバル な 企業間. 競争に勝ち抜くためには ,それだけ厳しい 品質 水準が要求されるが , こうしたところは ,その 厳しい要請に 応えているのであ る. しかし, 同じ電気・電子や 化学に属する 生産 拠点の中でも ,. タイに立地する 現地国向けの 生. 産 拠点の工程 内 不良率は, 日本国内と比べて 高 いところが目につく.現地向けの 生産拠点には , それほど厳しい 競争上の要請がなかったのかも. れる. ここでは,技術の中でも, まず生産技術 Ⅱ.一 1 . でも述べた よう. この部分が, 日本の製造業の 競争優位の中. アンケート調査の 中で , ニ に 該当する項目. 葉長の能力,段取り 替えの能力,保全専門要員 の能力の項目であ る. いずれも, 日本のマザー 工場の水準を 100 とした場合の 現地子会社の 水 単を, 日本人派遣経営者が 主観的に評価したも のであ る. その結果は, 表 3 にまとめられる. この結果からは , 企業間で能力の 定着度にばら つ きがあ ることがうかがえる.. 作業標準レベルは ,生産現場の作業者が機械 設備や治工具を 使いこなして 日常の生産活動を 円滑に遂行できる 能力として考えた.その 結果 は ,全体的に高 い 数値が出ている・. 日本の でザ. ー工場の 50% 程度の水準と 回答したところも. しれない.. 4. 表, 3. 社あ ったが, 日本の 80% 以上という高い 水. 現地子会社の 技術力の水準. 作業標準 レ ベル. の. 日本よりも 高 い (100 を. 超える. 2社. ). 80. 一. 100. 32 社. 65. 一. 79. 2社. 50. 一. 64. 4社. 49 以下. 0社. 平均. 89.8. * 日本のマザー 工場のレベルを 100 とした場合の 評価. 0社. 0 千士.
(8) 46 (204). 横浜経営研究. 第 XIX 巻. 第 2 号 (1998). 準 のところが 34 社あ った. 日本と同レベル か ,. じる変化への 対応力を見るための 指標の一 つ で. それ以上のところだけでも , 2(M社 とこの質問. あ. に対する解答企業数の 半数を占める. この結果. 効率を高めることができるのは 言うまでもな い. から,東アジアの 生産拠点では ,. この能力の平均は ,. 日常的なモノ. 作りはこみせる 段階に到達していると 言える. 小集団活動の 東アジア生産拠点への 定着に関 しては,すでに安西 [1998] でも検討されてい るので, ここでは詳細については 扱わない.た だし本稿のモデルに 添って解釈すると ,小集 団 活動とは, 日常の生産現場において 発生する 諸問題に対して ,作業現場で 実際に作業する 者 の知恵を動員する 仕組みだと考えられる.すな わち, 日常レベルで 発生する変化と 異常に対す る対応を作業現場レベルで 考える仕組みであ る.. る・段取り替えを 素早く行な. う. ことで,生産 ・. 日本の 75% の水準で意外. に高いと言えそうであ る. ただし, 日本の. 50% 程度の実力しかないところも ,無視でき ないくらい存在しており ,やはり企業間で格差 が見られる. 保全専門要員の 能力は,生産活動の 中で生じ る 異常への対応能力を 見る一つの指標であ る.. 機械トラブルが 発生した際に 修理するのはもち ろん, トラブルの原因を 解明して同じ 問題が発. きいのが目に 付く. 日本の水準並みを 実現して. 生しないように 手を打つのも 彼らの役割であ る. 同じトラブルを 繰り返さないように 予防するこ とで,機械設備の稼動率は向上し ,生産効率は 高まる. しかし,東アジアの生産子会社におけ るこの能力の 平均は, 日本の約 65% の水準に. いるところもあ れば, まったく成果を 出してい. 留まり,決して 高いとは言えない.そして , 企. ないところもあ る.. 案問のばらつきが段取り替え能力や 作業長の能. この小集団活動は , 必ずしも現地子会社に 広く. 定着しているとは 言えない.企業ごとの 差が大. 作業長の能力は ,. 日本の生産現場でキ. ー. とな. 力以上に大きいのが 目に付く. 日本の 80%/0 以. る能力であ る [板垣 1994]. 日本の工場におけ る作業長は,労務管理機能だけを 果たす存在で. 上の水準のところも 多いが, 50% にも満たな いところも全体の 2 割弱存在する. こうした保. はない・作業チームの 編成・管理を 行なったり. 全専門要員の 能力の低さは , 日本人派遣社員へ. 担当職場の生産技術や 生産管理に対して 適切な 提言を行な う 存在であ る.生産変更が生じた際 の作業現場での 生産指図の変更や ,生産設備や. の 依存度にっながると 考えられる.電機・ 電子. 生産方法の改善提案まで 行なうのであ る. この ように作業長は , 単に日常の生産活動を 遂行す るだけでなく ,生産活動の 中で生じる変化と 異 常への対応, さらには改善活動の 展開の上でも. 重要な役割を 果たしているのであ る. 東アジアの生産拠点における 作業長の能力の 能力は,平均すると日本の 67.4% の水準であ る・. ただし,企業間でのばらつきが 大きく, 日. のあ る生産拠点では 3 百制を敷いているが ,. 日. 本人のメンテナンス 担当者は 1 直しか担当して. いない. しかし, 日本人が帰宅した 後の勤務 時 間内にトラブルが 生じると, 日本人メンテナン ス担当者を呼ぶ 事態になってしまう.そのため , 日本人メンテナンス 担当者は, 1 日 24 時間緊 張が絶えないと 言う.. 4. 日本本社への 依存度 ここでは,製品技術と生産設備自体に 関わる. 本の 80% 並みの高い水準に 達しているところ と, 50% から 60% 程度のところとが 同数存在 する・この能力が 低いところでは ,それを補う ために, 日本人派遣社員を 送る措置も必要にな. 生産技術に焦点を 当てる. 日本から海外子会社 に移転される 製品技術や生産技術は ,製品図面 や生産設備の 形で直接現地に 持ち込まれる. そ ぅ すると,現地子会社が 製品技術や生産技術の. ると考えられる.. 面で, 日本本社への 依存度を高めることになる.. 段取り替え能力は ,. 日常の生産活動の 中で生. 表 4 は,製品図面と生産設備における 日本本社.
(9) 東アジア日系企業における 技術移転 表4. (周佐. 書札 ). (205) 47. 現地子会社の 日本への依存度 %. ユム. 抑猪囲. コ 5 2. 0 5. コ 5 7. 冤. ユム. 国 設. 面備. 製品生産. * 現地子会社で 使用されるもののうち , 日本の親会社から 持ち込まれた 部分の割合. への依存度を 示したものであ る. 表 4 の結果は,製品図面と生産設備の双方に おいて, 日本本社への 依存度が非常に 大きいこ. とを示している.特に,製品図面における 日本 への依存度は 高い. これは,現地子会社に製品 の 設計機能が事実上な い ことを意味ずる. [ 玉木. 1998]. 現地で行われる 設計活動は,現地調達 する部品に合わせるための. 詳細設計の一部変更. に設計・発注できるところは ,着実に増えて いる.ある電機・電子の 企業のように ,本国本 社 側が驚くほどの 能力を現地子会社が 蓄積した ケースも出てきた.今後の事業経験の蓄積によ 自. り. , この面での能力は 着実に向上していくと 期. 侍 される. W. 現地子会社における 技術高度化の 評価と課 題. か 製品改良程度に 留まっているのであ る. しかし, 東アジア地域の 生産拠点の中では ,. 1 ,. n. では,海外生産拠点の技術高度化の 実状. 製品の設計活動を 本格化させようとするところ も 出てきた.たとえば ,. 現地子会社の 技術高度化の 段階. グローバル な 輸出拠点. を 評価するために. ,現地子会社の能力高度化の. の中には, 日本ではもはや 生産されていない 製. 発展段階モデルを 示した. このモデルを 用いる. ココロロ. 口 ロ 目を扱 う ところが出てきており , そこでは. @と 今回の調査対象となった. 製品開発部隊が 日本から現地に 移りっ っ あ ると. ァ 生産拠点への 技術移転の実態の 位置付けを 行. ただし,その 2 6 なところでも ,. 調査時. なうことができる.. 点では,現地での 設計活動の成果はまだ 出てい ないと結論せざるをえな. い.. 他方,生産設備に 関しては,製品図面と比較 すると, 日本本社への 依存度は低くなる. しか し , 日本への依存度が 75% 以上のところが 45 社中 35 社を占め,依存度の絶対値は非常に 高. 日系企業の東アジ. 総じて言. う. ならば,調査対象企業は,第一段. 階の モノ作りのための 技能形成段階は 終えてい た .前節で見た よう に,作業者に対する作業 標 準 レベルでは, 日本と比較してほとんど 差は見 られなくなっている.. 地 に導入されていることを 意味するので , 決し. しかし第二段階の 変化と異常に 対応するた めの管理能力に 関しては,企業ごとに成果の違 いが大きかった.特に 問題になるのは ,後者の 異常事態への 対応能力であ る. 日常の生産活動 における変化に 対する適応能力の 点では,段取 替え能力の数値が 示す よう に,現地子会社の. て 非合理的なことではない.. レベルはかなり 高 い .. ぃ.. 日本で設計され ,. 日本で使用されて 生産 方. 法も固まってきた 機械設備が現地に 導入されて い る割合が高いということであ. る. ただし. こ. れは, 日本で改善成果を 蓄積した機械設備が 現. ただし, インタビュ一調査の 内容を吟味する. 設計の能力 は ,一定レベルで 向上しているのは 間違いない.. り. しかし各種のトラブル. に 対応する際のキ ー となる作業長や 保全専門 要. と ,現地子会社の 機械設備の改善や. 員の能力水準は , 決して高くな い .. 最初の機械は 日本から持ち 込んでも,現地で 一. 現場の問題解決能力の 指標となる小集団活動の 成果に対する 評価も低かった. これは,生産活 動 における各種トラブルへの 対応の面で, まだ. 定の改善を行なったり. ,. 2. 台目の機械からは 独. また,生産.
(10) ㎎ (206). 横浜経営研究. 第 2 号 (1998). 第 xlx 巻. 日本人派遣社員に 頼る部分が大きいことを 示唆 する. しかし全体の 約半数のところでは ,第二段 階の能力を形成できていることも ,同時に指摘 しておきたい.作業長や保全専門要員の 能力に 関しては, 日本と同等かやや 落ちるくらいの 水 準に達しているところが 少なくないからであ る.. かわらず,結果はほぼ 同じであ った㍉.今回の 調査対象企業は ,いずれも日本製造業の 中でも 企業規模などの 指標で見て,当該業界の 中では トップ・クラスのところであ. る.その意味では,. 日系企業全体の 平均像からは ,ずれている.し かし 日系企業の代表事例としての 意味はあ る と考えられる.. 第三段階の改善に 関しては, ほとんどの企業 が 仝後の課題の 段階だと考えられる.それは,. しかし,一部の生産子会社では ,第三段階の. 2. 現地子会社の 技術高度化を 妨げる要因 前述の通り,現地子会社の 技術高度化の 段階 は,企業ごとの差が大きい.それは ,現地子会 社の技術高度化が 単に時間をかければ 自動的に 進行するものではなく ,制約要因が存在するこ とを示している・そうした 制約要因に対する 対 応の仕方によって ,企業ごとに技術移転の成果 の違いが出てくると 考えられる.. 改善能力の獲得が 目指されており ,部分的に成. 技術を導入し 吸収する現地側の 問題点を,. 製品図面と生産設備を 日本から直接持ち 込む比 率が高いところに 端的に現れている. このよう に,改善に関しては, 日本本社の側に 大きく依 存しているのが 現状であ る.あるいは,現地に. 派遣されている 日本人社員の 役割もあ るかもし れない.. 果を出しているところもあ. る.韓国や台湾など. アジア NIES に立地する生産拠点は ,現地の賃. 金水準の高騰や 為替レートの 変動などの要因に より,従来のような標準品の量産に 代わって 高 付加価値製品の 導入を余儀なくされている. そ の ょう なところは, 自ら改善を行なって 付加価 値を高めて い く能力が求められている・そして. まず考えてみたい.. 第一の問題点は ,現地における離職率の水準 の高さであ る・モノ作りの 技能と比べれば ,生 産活動における 変化と異常に 対応するためには , り広範で深 い 知識が要求される.問題の 真相. よ. ,. を突き止め,それに適切な措置を 取って,問題 の 再発を防止するためには ,単に機械設備が操. 一部のところでは ,機械設備の改善・設計能力. 作できるだけでは 不十分で,広範かっ 深 い 知識. の 獲得などの形で 成果が出ている. また, グロ. が要求されるからであ る. さらに,改善活動を 遂行するために 要求される知識の 広がりと深さ. ーバル な 輸出向け生産拠点の 中には,製品設計 機能を付加する 動きもあ った.すでに,一部の 生産拠点では 製品の設計変更が 試みられている. この 26 なところは,全体的にはまだ 少数派で あ る・ しかし東アジア 地域を取り巻く 環境要 因の変化の大きさを 考えると, この動きは無視. 手- となるエンジニアを 養成するために 必要な時. できないと考えられる.. 間は ,. 以上の結果は , 周佐 [1993 コ,冑 [199 Ⅱ,同 位・ 曹 [1996] による韓国・ 台湾の日系部品ロメ ーカー 13 社 ( 自動車部品と 電子部品 ) とタ イ・マレーシア・シンガポールの 日系メーカー 15 社 ( 自動車と電機・ 電子で,組立と部品の. ニアの離職率が 高いことは,せっかく 企業内で 時間をかけて 形成したこれらの 技能が無駄にな ることを意味する. このような状態が 繰り返さ. 両方を含む. ). の調査結果と 基本的には差がな い .. 調査時期や,調査対象業種が 若干異なるにもか. は , もっと大きくなる. したがって,一般作業 者の養成に比べると. ,第二段階の各種管理能力. の担い手となる 保全工や生産管理担当者を 育成 するのは時間がかかる・ 第三段階の改善の 担い さらに長い・そのため ,保全壬やエンジ. れると,現地子会社の 能力はなかなか 向上しな レ Ⅰ. ・. しかし,現地の離職率の水準は ,全般的には 高 い .元来,現地側には ,機会があれば他社に.
(11) 東アジア日系企業における 技術移転 移ることに対する 抵抗感は薄い. しかも,調査 時点は東アジア 経済の成長期で 他の雇用機会は 多く,離職率の水準を押し上げていた・. さらに,. 日系企業は同じ 地域に短期間に 集中して進出す. (周 佐. 官札 ). 考え方が欠如しているのであ. (207)@49. る.. 調査対象の日系企業は ,現地の作業者に対し ては, しっかりした 教育システムを 持っている.. 深刻化させていた.結果として,離職率は高ま り,社内の技術定着・ 技術高度化への 妨げとな. 操業経験を積んだ 現地子会社の 中には,現地で 作業者の教育プロバラムを 整備しているところ が多い.保全専門要員や生産管理担当者に 関し ても,東南アジアを統括する地域本社や 日本本. った. 社の職能 別 訓練プロバラムを 利用するなどして ,. る傾向が強く ,. これが現地の 人材不足をさらに. ・. 場と技術部門との 間のコミュニケーションの 間. かなりのところまで 整備が進んでいる. しかし, 技術高度化の 第二段階から 第三段階以降の 担い 手となるエンジニアや 上級管理者に 対する教育. 題 であ る.現地の大卒エンジニアは,エリート. プロバラムは , 未 整備であ る.特に,現地子会. 意識が強く,作業現場に足を運ぶことに 抵抗を 示す. しかし生産活動で 起こる異常事態への 対応や改善において ,エンジニアが適切な貢献 を果たすためには ,彼らが生産現場の問題に精 通していることが 求められる.技術部門と生産 現場のコミュニケーションが 悪いと,こうした 能力の形成が 妨げられる. 以上のような 現地側の問題点に 関しては, 現 他人従業員教育などを 通じて,ある程度までの 解決が試みられている.その結果,周辺企業と ヒ駁すれば離職率の 水準を低くしたり ,生産現 場と技術部門との 間のコミュニケーションも 向 上できている. しかし 日本国内と同水準にま で 達する可能,性は 薄い.ある程度の離職率の 水. 社の経営者を 体系的に訓練するための 仕組みは, 今後の課題というところが 圧倒的に多かった・. 現地側の問題点の 第二は,部門間のコミュニ ケーションの 悪さであ る.具体的には,生産現. 上. 準やコミュニケーションの. 悪さを前提とした 上. での生産システムの 構築が求められている.そ のような割り 切りが必要であ ると考えられる・ 現地子会社の 技術高度化を 妨げる現地側の 要. ただし. ェ ンジニアや上級管理職の 養成のた. めに, 日本で作られた 人材育成システムがその まま通用できるかは 疑問であ る.現地のエンジ. ニアや上級管理職を 目指す人材は , 自分のキャ リアを会社に 委ねるのではなく ,. 自ら自分のキ. ャリアを考えて ,必要な手段を選択するという 傾向が強 い .. こうした人材の 求める要求を 満た. すような人材開発システム ,. さらにはキャリ. ア・パスを整備しなければ ,優秀な現地の人材 は集まらないし 定着しないと 思われる.その ょう に考えると, 日本で行われている 管理者の 階層別教育が 有効かは,疑問符が付く・潜在的 な管理者・経営者の 候補に横並びの 教育を行な っているだけでは ,彼らの要求を満たせないと 考えられるからであ. る・. 本稿の論旨からは 少しはずれるが ,. さらに付. 因は ついて指摘したが ,本稿では同時に, 日本. 言すると, 日本国内での 経営者・管理者教育は ,. 側の問題点 は ついても強調したひ.現地側の要 して, 日本側の要因は 経営側で対処できるから. 日本人派遣社員に 対しても役立っているのか 疑 問の余地があ る. 日本人派遣社員の 管理能力の 向上には,あ まり貢献していない 可能性があ る・. であ る.. タイにあ る電機・電子産業の 生産子会社では ,. 因が一定部分,所与と考えざるをえな い のに対. その問題点を 以下のように 指摘した. 日本人を 日本側の要因としても 幾つかの要因を 指摘で きるはずだが ,本稿では人材育成システムの未 海外に派遣する 場合, 日本国内での 地位よりも 整備の問題点を 特に指摘したい ,すなわち,現 海外子会社での 地位の方が高くなる・たとえば , 日本国内で課長だった 者が,現地では部長や, 地子会社において , どれだけの能力水準を 持っ 場合によっては 社長になる. その場合,現地子 た 人材を, どのように育成していくのかという.
(12) 50 (208). 横浜経営研究. 第 XIX 巻. 第 2 号 (1998). 会社も規模は 小さいなりに 一つの会社であ る以. た 企業は,現地政府の 輸入規制に対応するため. 上,部長や社長としての 役割を果たす 必要があ. に現地生産を 開始したころが. る. たとえば,人事考課にしても ,. 域の当時の低賃金労働力を. 日本では直. 属の部下の査定だけをやっていたのが ,現地で は部門全体や 全社レベルで 査定に関与すること. 多く. , 東アジア地. 利用して輸出を 行な. うために進出した 企業も若干見られた. こうし た企業は,現地で生産さえすれば ,販売にっぃ. な部長や社長として 要求される技能について ,. ては心配ないという 状況であ った.特に,前者 の範時に属する 企業は,進出先の 政府が高率関. ほとんど教育されないまま 現地に来る.その 結. 税を課すなど 輸入規制を行なったため. 果, 現地で問題が 発生すると言. 管理,生産管理,保全管理などが 若干弱くとも ,. になる. しかし. 日本人派遣社員は , このよう. う. . 要するに,. 日本国内の教育システムでは ,経営者として必 要な技能を体系的に 教育するという 姿勢がなり のであ る.. , コスト. 生産さえすれば 市場は確保されている 状態であ った.市場の急速な拡大は 望めないまでも ,利 益水準は確保できていた. ,. しかしこのような. 以上のように ,現地子会社の技術高度化の 中. 状況では, 現地子会社の 技術高度化の 第二段階. 核機能を担う 人材の育成は , 仝後の課題の 面が. 以降への進展は 期待できない.仝回の 調査結果. 強い. しかし,それは日本型経営システムの 現 地への移転という 形で解決を図る 問題とは考え られない.現地子会社の技術高度化の 第三段階 以降は,現地子会社が独自に問題を 発見して, 独自の解決を 考えて い く段階であ る・そこで無 理に日本的経営システムを 導入しても,現地独 自の問題解決には 結び付かないであ ろう. 日本. からも,操業年数の 長 い 企業の競争力や 能力が. では得られない 現地の人材を 育成してはじめて , 現地子会社が 日本側にはできない 独自の貢献が. できる. よう. になると考えられる.. ただし逆説的だが ,. この ょう な現地の人材. は自然に育っていくものではない.その ょう. な. 考え方を取れば ,優秀な人材が他社に流出して いくだけであ る. どのような人材を 求め,育成 していくのか ,明確な方針を打ち出し しっか りした制度を 整えることが 求められる.. 必ずしも高くな い ことが示されている. 1998]. しかし今日の 東アジアの事業拠点が ,すべ て 前記のような 動機から進出しているわけでは ない・ アジア域内,あ るいは欧米・ 中近東・日 本など世界に 向けた輸出向け 生産拠点も現れる よ うになった. この動きが本格化するのは 1980 年代半ばの急速な 円高の進行以降であ る 当初は,韓国や台湾などのアジア NIES がこう. した生産拠点の 立地先として 注目され,後に ASEAN. 諸国に中心が 移った. こうしたところ. は, グローバル な 企業間競争の 中で存続・成長 していくための 拠点として位置付けられており. 最初から高い 水準の生産管理・ 品質管理・保全 管理・コスト 管理が望まれた・ 要求される技術 能力水準が高かったのであ. 3. 東アジア生産拠点の 戦略的課題と 技術高度 化 Ⅲ.. る. こうしたところ. は,現地へ派遣された 日本人社員が 要所を占め るなどして, 一定の成果を 出している. 一. 2. では,東アジア 地域の日系企業の. 操業年数には ,大きなばらつきがあ ることを指 摘した・ この進出時期の 違いによって ,それぞ れの生産子会社の 戦略的位置付けが 異なり,結 果として要求される 技術力の水準も 異なってい たと考えられる. 1960 年代から 70 年代の比較的初期に 進出し. [ 岡本. [ 岡本. 1998J. 今回の調査対象となった 東アジアの日系企業 の生産拠点は ,両者のタイプが混在している. その結果,現地子会社の技術力の水準もばらつ きが大きかったと 考えられる. しかし総じて 言えば,企業間競争は 激化する方向にあ り,早 期に進出した 日本からの輸出を 代替する型の 現.
(13) 東アジア日系企業における 技術移転 地子会社. (対象市場は,進出先の 国内市場 ). も変革が迫られている.. に. 自動車では, ASEAN. において, 自動車部品の 域内関税が下がって 国 ごとの分業が 可能になった.電機・ 電子の分野. でも貿易の自由化が 進み,小規模な 生産拠点は 国境を超えて 集約化されようとしている 6,. 国 内向け生産拠点も ,. より広い地域を 対象とした. 生産拠点になることを 求められている. これは, 一種の戦略転換であ る. このため,従来は低い段階の技術能力で 十分 だったところが ,それではすまなくなってきた.. しかし戦略転換に 伴って,急速な 能力向上を 実現できたところは ,. ほとんど見当たらない.. (同位. 書札 ). (209). 51. 山 市場を模索しているが ,前述の通り ,輸出に. 必要な高度な 技術力は急速に 修得できないため ,. 苦戦を強いられている.他方,輸出向け 生産拠 点も製品を輸出する 際の為替レートは 有利な方 向に作用しているが ,機械設備や 素材,部品を 日本から買い 付ける際には 為替レートが 逆に作 用してしまうため ,やはり苦しい立場に立たさ れている.. しかしその ょう な中でも少数ながら 成長を 続けているところも 存在する. タイにあ る電機 メーカーは欧州に 輸出攻勢をかけており ,それ まで欧州市場を 支配していた 同社の欧州生産拠 点の経営に脅威を 与えているほどであ る. これ. インドネシアのあ る電機・電子メーカーは ,従. は, 同社が短期間ではあ ったが,技術高度化に. 来は緩やかな 競争に慣れて 人材育成の面でも 厳 しさが欠けていたと 認めている.それを ,急速 に転換するのは 難しいと言う.組織の 慣,性力 が. 地道に取り組み ,品質管理などの 管理技能の面. 作用してしまうのであ. したところがさらに 出現する可能性はあ る.. る.. でも一定レベルに 達した結果であ る.今後,東 アジア市場が 一定の回復を 遂げていけば , こう. ただし韓国や 台湾などに立地する 一部のと ころでは, こうした戦略転換にあ る程度成功し ている. 国内向け生産拠点が 輸出競争力をつけ てきたのであ る・ このようなところも ,短期間. しかし東アジアで 従来のような 高度成長の 再来は期待できないであ ろう.それは,企業間 競争が激化することを 意味する.そうした 中で, 撤退を余儀なくされるところも 出てくるであ ろ. で技術高度化が 実現できたわけではない.時間. う・. をかけて第二段階や 第三段階への 移行を果たし. ますます重要になってくると 考えられる.. 結果として, 現地子会社の 技術高度化は ,. てきた結果なのであ る. この. ょ. 7玉. うに考えると ,現地子会社に対して,. 最初の段階でモノ 作りの技能定着だけを 狙 うの. では,環境要因が 変化した際の 適応力がっかな いと考えられる. 第四段階への 到達をすべての. 海外子会社で 実現するのは 効率性の点で 問題が あ るが, 第三段階,少なくとも 第二段階までを. 視野に入れるのは ,現地子会社の 長期的存続・ 成長を考えると ,意味があると考えられる.. V. 結びに代えて 1997 年の通貨危機以降,東アジア 地域の日 系企業は活動の 停滞・縮小を 余儀なくされてい る.現地向け生産を行なっていた 自動車メーカ ーや家電メーカーは ,国内需要の冷え込みで軒. 並み操業率を 下げている, これらの企業は ,輸. 1) 本稿のデータは , 1995 年度と 1996 年度の文部省. 科学研究費国際学術調査「日本多国籍企業の 現地 化の課題」 (研究代表者 岡本康雄 青 m 学院大学 教授 ) の下で行われた 実態調査に基づいている. その成果は, 岡本 [1998, はきとめられている. 2) たとえば.安保他 [1991], 板垣 [1997 」を参照 それによると , 日本型生産システムは ,海外で部 公 的には導入されているが ,全面的には導入され ていない. しかし,現地型のシステムが全面的に. 導入されているわけでもなく. ,両者のハイブリッ. ドになっていることが ホ される.. 3) Bartletland Goshal. l1989] を参照.そこでは , 海外子会社が 製品開発など 技術面で世界の 事業展 開をリードしていく 可能性が実例に 基づいて示さ れている.. 4) 今回の調査では ,化学の中に化学固有の他, 合.
(14) 52 (210. 横浜経営研究. Ⅰ. 第 XIX 巻. 成 繊維や化粧品まで 含めて広範に 捉えた, この事 情に関しては ,岡本 [1998] を参照. 5) この点に関しては ,今回の共同調査に参加した 他の研究報告結果とも ,大きな矛盾はない はずで あ る.玉木 [1998] を参照. 6) この動きは,訪問調査実施後も続いた.あ る電 機・電子産業のタイの 生産子会社は , メインの製. 品Ⅱの一部をマレーシアに 移管して統合した.. 第 2 号 (1998) テムと アメリカ. 、ンステムの国際移転とハイブ. リッド化 』第 2 章 ) ミネルヴァ書房, 1994 年 板垣 博 編 『日本的経営・ 生産システムと 東アジア 一一台湾・韓国・. 中国におけるハイブリッド 工場 一. 一Ⅰ ミネルヴァ書房, 1997 年. 小宮隆太郎『国際経済学研究』岩波書店, 1975 年 岡本康雄「企業成長と 経営組織」 ( 岡本康雄・小林孝 雄編『企業行動の 分析と課題 第 1 章 ) 日本経済 新聞社, 1985 年 岡本康雄「多国籍企業と 日本企業の多国籍化 (1) 『経済学論集』第 53 巻,第1 号, 1987 年 岡本康雄編『日系企業 in東アジア』 有 斐閣, 1998 年 コ. 参考文献. 」. 安保哲夫・板垣 博 ・上山邦雄・ 河村哲二・公文博 『アメリカに 生きる日本的生産システム. 場の「適用」と「適応」 1991 年. 安西幹夫「組織管理」 Bartlett, C. A. and. ( 岡本. S. GoshaI,. 現地工. 』東洋経済新報社,. 口 ernos. ガ. Bornd せ用,. Ha Ⅳ aFdBusines5SchooIPTess,1989. 菅井 雙 「日本企業の 多国籍化と企業内技術移転」『組 織科学 ] 第 27 巻,第3 号, 1994 年 Hymer, F. えド. S.. H. 。. 冊。. ms,M.I.T.PFess,. Ⅰ. 加 er. 穏 i0 れ 0 O ク er 仰 tio れ Ⅰ。/ 「. 「. ん. ,. Ⅳd i0 れ Ⅰ 7 「. 1976. 稲葉元吉『経営行動論Ⅲ丸善, 1979 年. ス. Ⅰ. ん。. Growfh. 海外子会社の 戦略的役割. げ the Firm,. 」『組織科学. コ. 第 23 巻,第2 号, 1989 年 間 佐 書札「企業内技術移転に 関する一考察」『横浜経 営研究』第 14 巻,第1 号, 1991 年 周佐 書札・ 曹斗雙 「日系企業の 技術移転と技術高度 化. 東南アジア子会社の 事例から. 」『国際 ビ. 、ジネス研究学会年報』第 2 号, 1996 年. 稲葉元吉「企業活動の 国際化」『横浜経営研究』第 6 巻,第3 号, 1985 年. 玉木欽也「現地生産」 吉原英樹ア国際経営Ⅱ. 板垣 博 「日本の自動車・ 電機工場 日本工場のモ デル (安保哲夫編著『日本的経営・ 生産シス. ( し ゆ うさ. 」. r ん ,oryyof. BasilBlackwell,1959 周 佐 書札「バローバル 成長のダイナミック・プロセ. [1998] 第 2 章 ) Ma 挺がれg. Penrose, E. T., T. よしかず. ( 岡本 [1998] 第 有 斐閣, 1997 年. 4. 章). 横浜国立大学経営学部助教授 ).
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