<論文>『四つの四重奏』に見る花
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(2) 教 養 ・外 国語 教 育 セ ン ター紀 要. Into the rose-garden. My words echo Thus, in your mind. [...] Other echoes Inhabit the garden. [...1 There they were, dignified, invisible, Moving without pressure, over the dead leaves,. (Burnt Norton I, 171). バ ラ 園 は 過 去 の 経 験 世 界 で あ り、 若 き 日 の 幸 せ な体 験 を 象 徴 して い る 。 記 憶 の 中 で 足 音 の コ ダ マ を響 か せ な が ら 、 ま だ 開 け た こ と の な い ドア に 向 か い バ ラ 園 へ 入 っ て 行 く。 コ ダ マ につ い て 、 レ イ ンの解 釈 に よれ ば 、 コ ダマ とい うの は音響 的 条 件 を要 求 す る。 と くに 閉 じ 込 め ら れ た 状 態 、 音 を 捉 え 、 音 を 反 響 さ せ る 堅 い 表 面 を 必 要 とす る が 、 こ の 庭 に は そ う い っ た も の は な い 。 い ず れ に せ よ 、 コ ダ マ は 一 種 の 垣 久 性 を 持 っ て い る 。 彼 ら は庭 に棲 息 して い る か ら だ 。 彼 ら は 私 た ち の 後 ろ に い て 、 そ こ か ら 私 た ち も、 彼 ら も 行 儀 正 し く動 き 始 め た 。 彼 ら と は バ ラ 園 に 生 息 す る コ ダ マ で しか あ り え な い … 彼 ら は 亡 霊 で あ る が ゆ え に 、 コ ダ マ な の だ 。 亡 霊 と は 、 い わ ば 人 間 が 死 後 に 残 し て い く コ ダ マ で あ る 。3バ ラ 園 に 棲 息 す る 過 去 の 亡 霊 を 表 象 す る コ ダ マ の イ メ ー ジ は 、 神 秘 的 体 験 の 時 間 に 属 す る もの で あ る。 さ ら に バ ラ 園 を 進 ん で 行 く と 、 水 溜 が あ る 。 水 溜 は 乾 き 、 縁 は 茶 色 に な っ て い る 。 しか し水 溜 に 日 光 の 水 が 満 ち て 蓮(lotUS)が. 伸 び て くる。 水 面 が 光 の 真 芯 か ら き らめ き、 コ. ダ マ が 水 溜 に 姿 を 映 して い る 様 が 描 か れ て い る 。. Dry the pool, dry concrete, brown edged, And the fool was filled with water out of sunlight, And the lotus rose, quietly quietly, The surface glittered out of heart of lights, And they were behind us, reflected in the pool.. (Burnt Norton I, 172). 水 溜 に蓮 の花 が 浮 か び 上 が って 咲 い て い る イ メー ジ は、 過 去 の 体験 に内 在 す る意 義 が 顕 示 さ れ て き た こ と を 象 徴 す る 。 ス ミ ス の 指 摘 に よ れ ば 、 蓮 は よ く知 ら れ た ヒ ン ド ゥー 教 の 象 徴 で あ る 。 ま た 古 代 エ ジ プ ト人 の 間 で は 日 々 生 ま れ 変 わ る 幼 い 太 陽 神 ホ ル ス に つ き もの の 神 聖 な植 物 で あ る 。 仏 教 芸 術 で は 仏 陀 が ホ ル ス神 の よ う に花 弁 の真 ん 中 に座 っ て 描 か れ 、 ま た04y∬. の で は 夢 と 関 係 が あ る 。4水 溜 の 中 で 咲 く 蓮 の 花 の 台 は 仏 陀 を 載 せ る も の で 、.
(3) 「 四 つ の 四重 奏 』 に見 る花. イ ン ド に お い て は 西 洋 の バ ラ に 相 当 す る 意 味 を 持 っ て い る 。 バ ラ と キ リ ス ト との 関 係 は 、 蓮 の 花 と仏 陀 の そ れ と 同 一 で あ る こ と か ら、 バ ラ 園 は 魂 の 目覚 め を 象 徴 す る イ メ ー ジ と考 え られ る。 バ ラ 園 で 聞 こ え る足 音 は 、亡 霊 と して の コ ダ マ の思 い 出 で あ る。 そ して そ の コ ダ マ の 棲 息 す る バ ラ 園 は 、 エ リ オ ッ トの 追 求 す る 静 止 点(stillpoint)を. 見 出 す場 所 とな. る。 『四 つ の 四 重 奏 』 の2番 州 、Yeovil近. 目 の 詩 「イ ー ス ト ・コ ー カ ー 」 は 、 イ ン グ ラ ン ドのSomerset. くの 村 で 、 エ リ オ ッ トの 祖 先 が17世. 紀 中 頃 まで 住 ん で い た 。 この 地 で エ リ. オ ッ トは 、 魂 の 目覚 め へ の 第 一 歩 を 踏 み 出 す こ と に な る 。 祖 先 の 地 へ 向 か う道 す が ら 、 心 の 迷 い を 表 す イ メ ー ジ が 野 バ ラ の 茂 み(bramble)を. 通 して描 か れ て い る 。. In the middle, not only in the middle of the way But all the way, in a dark wood, in a bramble, On the edge of a grimpen, where is no secure foothold, And menaced by monsters, fancy lights, Risking enchantment.. (East Coker I, 179). 野 バ ラ の茂 み の 中、 足 場 の危 な い沼 の縁 、 また暗 闇 の森 に あ っ て は妖 精 が 灯 す 鬼 火 が 人 間 を 惑 わ す 。 祖 先 の 地 に あ っ て 、 エ リ オ ッ トは 人 生 の 探 検 を 試 み よ う と す る 。. If to be warmed, And. quake. Of which. then. in frigid the. flame. I must purgatorial. is roses,. こ こ で の 野 バ ラ(briar)は る が 、brambleに. freeze fires and. the smoke. 、 前 述 のbrambleと. is briars.. (East Coker IV, 181). 同 様 に バ ラ科 に 属 す る 刺 の あ る 灌 木 で あ. purgatorial且res)に. は 黒 苺 の 実 が な り、briarに は さ ま ざ ま な 色 の 花 が 咲 く。 煉 獄 の 火(frigid 身 を任 せ て 、 救 い を待 た ね ば な らな い 。 神 の愛 に よ っ て温 め られ る. に は 、 一 度 煉 獄 の 火 と氷 の 苦 患 を 抜 け な け れ ば な ら な い 。 ス ミ ス は 「バ ラ の 愛 と棘 の 苦 痛 は 救 済 を 象 徴 す る 」5と い う。 バ ラ は キ リ ス ト を 象 徴 し、 人 類 を 救 済 す る た め に 頭 に 戴 い た イ バ ラ の 冠 、 そ の イ バ ラ に 咲 くバ ラ を 暗 示 し て い る 。 つ ま り浄 罪 の 火 は 、 キ リ ス トの 受 苦 を象 徴 す るバ ラ で あ り、 また浄 化 の煙 は野 生 のバ ラ で あ る。 バ ラ は煉 獄 の 中 で の精 神 的 な 生 、{光惚 の 瞬 間 を 表 す と考 え ら れ る 。.
(4) 教 養 ・外 国語 教 育 セ ン ター紀 要. 皿 『四 つ の 四 重 奏 』 の3番 州 、CapeAnnの. 目 の 詩 で あ る 「ドラ イ ・サ ル ヴ ェ イ ジ ー ズ 」 は 、Massachusetts. 沖 合 の 岩 礁 群 の 名 前 で あ る 。 詩 人 は イ ン ドの 神 ク リ シ ナ の 言 葉 を 手 掛 か. りに、 過去 を未 来 との 関 連 にお い て バ ラ と ラベ ン ダー を描 い て い る。. I sometimes wonder if that is what Krishna meant — Among other things — or one way of putting the same thing: That the future is faded song, a Royal Rose or a lavender spray Of wistful regret for those who are not yet here to regret, Pressed between yellow leaves of a book that has never been opened. (The Dry Salvages III, 187). 未 来 は、 い ず れ は 過去 と な る こ とが花 の イ メー ジで 描 か れ て い る。 ロ イヤ ル ロー ズ や ラベ ン ダ ー の 花 枝 が 、 ま だ 開 か れ た こ と の な い 本 の 黄 ば ん だ ペ ー ジ に挟 ん で 、 ま だ 生 ま れ て こ な い 人 々 の 死 を悼 み 悲 しん で い る 。 ラ ベ ン ダ ー は 、 多 年 生 の 草 花 で 青 か 薄 紫 の 芳 香 あ る 花 が 咲 く。 こ れ を押 し花 に した り、 乾 か して 書 物 に挟 ん だ りす る風 習 が 古 くか ら あ り、 衣 類 の 虫 除 け と し て も 使 わ れ た 。 そ の 効 能 か ら、 こ の 一 節 に つ い て ミ ル ワ ー ドは 、 「将 来 を 過 去 と い う パ ラ ドキ シ カ ル な 言 葉 を 用 い て 、 後 悔 の た め に こ の 世 に ま だ 生 ま れ ぬ 者 の た め に 憂 わ しい 悔 恨 を 表 す 」6と述 べ て い る 。 ロ イ ヤ ル ロ ー ズ(RoyalRose)は く、 品 格 の あ る バ ラ と い う 意 味 で あ る 。 バ ラ 戦 争(1455-85)を. バ ラの 品種 で は な. 連 想 させ 、 ヨー ク家 と ラ. ン カ ス タ ー 家 の 死 者 を 呼 び 起 こ す 。 しか し死 者 に 歴 史 を 語 ら せ よ う とい う の で は な い 。 時 間 の 中 で の 人 間 が 営 ん で きた歴 史 も、 や が て 終 わ る 日が 来 る こ と を花 の イ メー ジで 表 象 し て い るの で あ る。 『四 つ の 四 重 奏 』 の4番 Huntingdonshireの. 目 の 詩 で あ る 「リ ト ル ・ギ デ ィ ン グ 」 は イ ン グ ラ ン ドの. 村 落 で 、17世. 紀 初 め 国 教 会 の 共 同 生 活 が 行 わ れ た所 で あ る。 人 間 お. よ び 人 間 を 取 り巻 くす べ て の も の の 終 焉 の 姿 が 描 か れ て い る 。. Ashonanoldman'ssleeve Isalltheashtheburntrosesleave. Dustintheairsuspended Markstheplacewhereastoryended.. (LittleGiddingIr,192).
(5) 「 四 つ の 四重 奏 』 に見 る花. こ こ で の 「バ ラ は 燃 え て 灰 に な る 」 は 、 第2次. 世 界 大 戦 中 の ドイ ッ 戦 闘 機 に よ る ロ ン ド ン. 爆 撃 に 関 係 し、 死 の 意 義 を 表 し た も の で あ ろ う。 破 壊 は 復 活 を 意 味 せ ず 、 な ん ら の 創 造 を も約 束 し な い 。 美 し い バ ラ も 燃 え 尽 き れ ば 微 量 の 灰 に な っ て し ま う。 バ ラ の 燃 え た 灰 は 、 誕 生 か ら死 に 至 る1つ. の 物 語 が 終 わ っ た 証 で あ る 。 万 物 は 塵 に 帰 る と い う こ と を示 し て い. る 。 フ ラ イ は 「17世 紀 の 多 くの 作 家 は 、 一 輪 の 花 を 燃 や し 、 そ れ も大 抵 は バ ラ の 花 を 燃 や し て 灰 に し、 そ し て そ の 灰 の 上 に 残 る 花 の 亡 霊 を 見 る と い う奇 妙 な 実 験 に 魅 せ ら れ て い た が 、 そ れ は 明 ら か に 不 滅 性 、 あ る い は 少 な く と も時 間 の 中 に 存 在 す る 物 質 の 恒 久 性 と い っ た 、 ど ち ら と も決 定 しが た い 議 論 を 醸 し 出 し た 」7と い う。 人 生 の 末 路 は 一 つ ま み の 灰 で あ る。 老 人 の袖 につ い たバ ラ の燃 え た灰 は、 人生 の最 終 の死 の イ メ ー ジ と して 、 この コ ン テ ク ス トに 適 切 な イ メ ー ジ で あ る 。 リ トル ・ギ デ ィ ン グ の 教 会 は 、 死 者 の 憩 い の 地 を も意 味 す る 。 戦 い の 勝 者 も敗 者 も 、 こ の祈 りの地 に あ っ て は、 そ の行 為 は浄 化 され 、故 人 は安 らか に 眠 っ て い る。. Quick now, here, now, always — A condition of complete simplicity (Costing not less than everything) And all shall be well and All manner of thing shall be well When the tongues of flame are in-folded Into the crowned knot of fire And the fire and the rose are one.. こ こ で は 、 火 とバ ラ は1つ. (Little Gidding V, 198). に な る こ とが 描 か れ て い る 。 バ ラ は 愛 の 象 徴 で あ る が 、 無 数 の. 炎 が 結 ば れ て 作 り な す 王 冠 とバ ラ とが 重 な り あ っ て い る 。 こ れ は 神 の 愛 の 完 成 、 静 止 点 の 表 象 で あ る 。 す な わ ち 、 こ の 一 節 に 見 ら れ る バ ラ は 神 の 愛 で あ り 、 キ リ ス トの 愛 と の 合 体 を意 味 して い る。 エ リ オ ッ トは 、 バ ラ の イ メ ー ジ を 通 し て 、 「バ ー ン ト ・ノ ー ト ン 」 で 過 去 の 幸 福 な 瞬 間 、 愛 の 体 験 を 示 唆 し 、 「イ ー ス ト ・コ ー カ ー 」 で 浄 化 の 炎 が 愛 の バ ラ で あ る こ と を 希 求 し、 「リ トル ・ギ デ ィ ン グ 」 で 浄 化 の 火 、 ペ ン テ コ ス テ の 火 の イ メ ー ジ で 神 の 愛 を 暗 示 し た 。 炎 と愛 の バ ラ が 一 体 化 し た イ メ ー ジ は 、 明 確 な 救 済 の ビ ジ ョ ン で あ る と言 え る 。. 一25一.
(6) 教 養 ・外 国語 教 育 セ ン ター紀 要. エ リ オ ッ トの 描 く春 夏 の 花 を 見 て み る 。 春 は サ ン ザ シ の 季 節 で あ る 。 サ ン ザ シ は 植 物 学 的 に 多 少 の 差 が あ る が 、hawthorn,hedgerowthorn,white-thornと. 呼 ば れ る 。5月. になる. と 、 イ ギ リ ス の 田 舎 で よ く見 か け 、 生 垣 や 野 辺 の い た る と こ ろ で 白 や ピ ン ク や 赤 の 小 さ な 花 を つ け る 。 こ の こ と か ら サ ン ザ シ は 、5月. に 咲 く花(may且ower)と. も言 わ れ る 。. If you came this way, Taking the route you would be likely to take From the place you would be likely to come from, If you came this way in may time, you would find the hedges White again, in May, with voluptuary sweetness.. (Little Gidding I, 191). サ ン ザ シ の 花 で 生 垣 は 白 く な り、 む せ か え る 甘 美 な香 り を 放 つ 。 森 山 の 説 明 に よ る と、 こ の植 物 は イギ リス の初 夏 を代 表 す る もの で 、 白い 花 を咲 か せ る。 木 の 高 さ は人 の 背 丈 ぐ ら い か 、4∼5メ. ー トル に 及 ぶ もの も あ る 。 白 の ほ か 赤 や ピ ン ク の 花 も あ る 。 花 は 直 径8ミ. リ か ら2.5セ. ン チ ぐ ら い ま で あ り、 秋 に は 赤 ま た は 榿 色 の 実 が な る 。8ま た 夏 に は 、 ひ ま わ. り(sun且ower)や. ク レマ テ ィ ス(clematis)が. 自然 界 を彩 る。. Time and the bell have buries the day, The black cloud carries the sun away. Will the sunflower turn to us, will the clematis Stray down, bend to us, tendril and spray Clutch and cling?. (Burnt Norton IV, 174). こ の よ う に 、 ひ ま わ りの 花 の 動 作 や ク レ マ チ ス の 巻 き ひ げ が 、 し っ か り と ま と わ りつ く印 象 を 強 め て い る 。 ひ ま わ りは 大 き な 黄 色 い 花 で 、 向 日 性 が あ り、 日 の 出 か ら 日 没 ま で 太 陽 の 軌 道 を 追 う 。 ま た 、 ク レ・マ テ ィ ス は 、 美 しい 白 い 花 が 咲 き、 よ い 香 りの す る つ た に 似 た 植 物 で あ る 。 ス ミ ス は 、 「ひ ま わ り は キ リス ト、 ク レ マ チ ス は マ リ ア を 連 想 させ 、 そ れ が 振 り 向 くの は 再 生 を 意 味 す る 」9と 解 釈 して い る 。 ひ ま わ りが 顔 を 向 け 、 ク レ マ チ ス が さ 迷 い 降 りて 顔 を 寄 せ 、 巻 き ひ げ や 花 の 小 枝 が ま つ わ りつ く と い う イ メ ー ジ は 、 再 生 を 暗 示 して い る と 考 え ら れ る 。 「イ ー ス ト ・コ ー カ ー 」で は 、 詩 人 は 祖 先 ゆ か り の 地 を 訪 れ 、 歴 史 の 重 み を 噛 み し め 、.
(7) 「 四つ の四重奏』 に見 る花. 人 生 の 意 義 に つ い て 瞑 想 す る 。 村 に 続 く小 道 に は 、 ダ リ ア(dahlia)が. 咲 い てい る。. In a warm haze the sultry light Is absorbed, not refracted, by grey stone. The dahlias sleep in empty silence. Wait for the early owl.. (East Coker I, 177). こ れ は催 眠 にか か っ た よ うな村 の光 景 で あ る。 風 もな く陽光 を一 杯 に浴 び て い る村 は 、 け だ る い 温 気 に 包 ま れ て い る。 誰 もい な い 静 寂 の 中 に 眠 って い る イ メ ー ジ を表 象 す る た め に 、 ダ リ ア の 花 が 描 か れ て い る 。 何 も動 い て い な い 村 は 、 ま さ に 仮 眠 状 態 で ダ リ ア は 何 も 語 っ て くれ な い。 そ れ ゆ え に亡 霊 が 現 れ る夜 の静 寂 を待 た ね ば な らな い。 エ リ オ ッ トは 、 祖 先 の 地 で 昔 の 村 人 の 亡 霊 に 出 会 え る よ う に 思 え た 。 亡 霊 が 奏 で る 笛 や 太 鼓 の 音 や 農 夫 た ち が 、 か が り火 を 囲 ん で 踊 る 様 子 を 見 て 、 大 地 の 下 に 眠 っ て い る 昔 の 人 々 の生 活 を思 い起 こす 。. In that open field If you do not come too close, if you do not come too close, On a summer midnight, you can hear the music Of the weak pipe and the little drum And see them dancing around the bonefire. (East Coker I, 177). こ れ は 夏 の 真 夜 中 に 聞 こ え る 笛 や 太 鼓 の 音 楽 、 か が り火 を 取 り巻 い て 踊 る 姿 で あ る 。 遠 い 昔 の 村 人 た ち の 踊 り ば や し の 音 は 、 霊 の 耳 を よ く澄 ま し て 聞 か な け れ ば 捉 え ら れ な い 。 リ ズ ム に の っ て踊 る さま は、 息 づ く四季 を生 きて い た 時 の姿 で あ る 。 そ れ は 四季 の 時 の リズ ム で あ る 。 そ し て 、 こ の 亡 霊 を 見 て 、 エ リ オ ッ トは"inmybeginningismyend"(East CokerI,177)を. 確 信 し、 祖 先 の い た 故 郷 は 自分 の 埋 葬 に 適 し た 場 所 で あ る こ と を 知 る 。. 祖 先 の地 は幾 世 代 もさ か の ぼ っ た故 郷 、 自己存 在 の始 まっ た大 地 で あ る。 村 人 は生 前 、 自 然 の 季 節 の リ ズ ム で 暮 ら して い た 。 季 節 に つ い て ト ラバ シ ー が 、 「連 続 し た 普 通 の 季 節 の 外 の 季 節 の 感 覚 で 、 対 立 す る も の の 統 合 で あ り 、 自然 の 図 式 を 超 え た 精 神 的 な 新 た な 具 象 で あ る 」10とい う よ う に 、 こ こ で は 自然 の 継 起 的 時 間 を 超 え て 、 生 と 死 の 世 代 の 合 一 を 暗 示 す る 。 こ れ は3番. 目 の 時 間 の 範 疇 で 、 時 間 の 外 で 起 こ る が 、 時 間 の 中 で し か 思 い 起 こす. こ とが で き な い 、 詩 人 の 神 秘 的 な 体 験 で あ る と考 え ら れ る 。.
(8) 教 養 ・外 国語 教 育 セ ン ター紀 要. 次 に 、 「リ トル ・ギ デ ィ ン グ 」 で 、 イ ラ ク サ(nettle)が. Attachment. 描 か れ て い る 。. to self and to things and to persons, detachment. From self and from things and from persons; and, growing between them, indifference Which resembles the others as death resembles life, Being between two lives — unflowering, between The live and the dead nettle.. (Little Gidding III, 195). イ ラ ク サ は 刺 毛 が 多 く、 野 辺 に 生 え て 雑 草 の 中 で も 厄 介 な 草 で あ る 。 こ こ で はliveと deadが. 対 照 さ れ て い る 。liveは 刺 毛 の 活 発 な こ と を 表 し、deadnettleは. い う 草 で イ ラ ク サ に似 て い る が 、 刺 毛 を持 た な い の でdeadnettleと あ ろ う。 森 山 の 解 説 に よ る と 、livenettleはattachmentの detachmentの. オ ドリ コ ソ ウ と. い う名 が つ い た の で. 形 象 と し て 、deadnettleは. 形 象 と して用 い られ て い る。 世 俗 的 な もの に対 す る愛 着 が 強 い 人 は イ キ イ. キ し て 見 え る し、 世 俗 的 な も の か ら 離 脱 し た 生 は 、 生 命 力 が 枯 渇 し た よ う に 映 る 。11この こ と か ら 、 エ リ オ ッ トは イ ラ ク サ に触 れ る と付 着 す る 性 質 の 有 無 、 そ して そ れ を 生 命 の 強 弱 に こ と よ せ て 、 視 覚 的 に 表 現 し た も の と 言 え る 。 イ ラ ク サ と し てlivenettleとdead nettleは 、 見 か け は そ っ く り で も全 く違 う 生 態 か ら、 物 や 人 に 愛 着 を示 す も の 、 物 や 人 あ る い は 自 己 か ら 離 脱 す る 形 象 と して 描 か れ て い る 。 そ して こ の 中 間 に 育 つ 無 関 心 は 花 を 咲 か せ ない と、 この 一節 は 述 べ て い る。. V 秋 冬 に 咲 く花 を 見 て み る 。 エ リ オ ッ トは1934年. 、Cotswoldsの. 領 主 の 邸 宅 を訪 れ 、 バ. ラ 園 に 感 銘 を 受 け て 、 過 去 の 亡 霊 の コ ダ マ が 棲 息 す る バ ラ 園 の イ メ ー ジ を 「バ ー ン ト ・ ノ ー トン 」 で 描 い た 。 季 節 は 秋 で 、 野 バ ラ の 茂 み(shrubbery)が. 見 られ る 。. There they were, dignified, invisible, Moving without pressure, over the dead leaves, In the autumn heat, through the vibrant air, And the bird called, in response to The unheard music hidden in the shrubbery, And the unseen eyebeam crossed, for the roses Had the look of flowers that are looked at.. 04. (Burnt Norton I, 171-172).
(9) 「 四 つ の 四重 奏 』 に見 る花. 過 去 の亡 霊 で あ る コダマ が 、 堂 々 た る風 格 で秋 の熱 気 の 中、 枯 葉 を見 下 ろ しなが らふ わ ふ わ 飛 び ま わ り、 ま た 野 バ ラ が 見 て も ら い た い 花 の 眼 差 し だ っ た の で 目 に 見 え な い 視 線 が 交 差 し た 、 と 語 っ て い る 。 こ の バ ラ 園 の イ メ ー ジ は 、 回 る 世 界 の 静 止 点"atthestillpoint oftheturningworld."(BurntNortonII,173)へ. と、 詩 の 中 心 的 な ビジ ョンへ 導 くこ と. に な る。 こ こで の野 バ ラ は 、 時 間 の外 で起 こるが 、 時 間 の 中 で思 い だ す神 秘 的体 験 に彩 り を与 え て い る。 次 に 「イ ー ス ト ・コ ー カ ー 」 は 、 エ リ オ ッ トの 祖 先 の 故 郷 と い う だ け で な く、 こ の 地 の す べ て の も の に 、17世. 紀 の 雰 囲気 が 息 づ い て い る。 次 の 一節 は、 祖 先 の 地 を訪 問 した 時. の こ とを述 べ て い る。. What. is the. late November. disturbance. doing. With. the. And. creatures. And. snowdrops. writhing. under. And. hollyhocks. that. too high. Red. into grey. Late. roses. of the. spring. summer. aim. and tumble. filled. 季 節 は11月. of the. with. heat, feet. down. early. snow?. (East Coker II 178) ,. (snowdrop)の. 末 で あ る に も か か わ ら ず 、 自 然 は 春 さ な が ら の 大 騒 ぎ で 、 ス ノ ー ドロ ッ プ 花 が 踏 ま れ て 悶 え 、 タ チ ア オ イ(hollyhock)の. 花 が 赤 か ら灰 色 に 変 わ り、. 遅 咲 きの バ ラ に 初 雪 が 積 っ て い る 情 景 が 描 か れ て い る 。 フ リ ー ス の 説 明 に よ る と、 ス ノ ー ドロ ップ は春 の 早 い 先 触 れ を な す花 で、 雪 が 溶 け て しま わ ない うち に咲 く こ と もあ る 。2月2日(聖. 燭 祭)に. 咲 く と こ ろ か ら 、2月. の 妖 精(FebraryFairyMaids)と. 呼ば. れ る 。 伝 説 で は ア ダ ム と イ ブ が 楽 園 か ら追 放 さ れ た と き は 冬 で あ っ た が 、 天 使 が 春 は 必 ず 来 る と い っ て2人. を 慰 め た 。 そ の 証 拠 に 天 使 が 降 り注 ぐ雪 片 に 息 を 吹 き か け る と 、 そ れ が. 落 ち た と こ ろ に ス ノ ー ド ロ ッ プ が 芽 を 出 し た 。 ス ノ ー ドロ ッ プ が 足 下 で 身 悶 え る と は 、 人 々 に 新 た な 生 活 を 強 い る 春 の ど よ め き を 意 味 す る 。12また 、 タ チ ア オ イ は 、 ア オ イ 科 の 植 物 で ウ ス ベ ニ タ チ ア オ イ に 似 て い る 。 高 望 み しす ぎ る タ チ ア オ イ の 花 は 、 赤 か ら灰 色 に 変 わ っ て 転 落 す る(336-7)。. した が っ て 、 こ こで は タ チ ア オ イ の花 を、 高 い 理 想 を掲 げす. ぎ る 人 の イ メ ー ジ で 捉 え て い る 。 高 く背 伸 び し て い る だ け に 、 落 下 の 勢 い は 相 当 な も の で あ る 。11月. の 末 頃 は 普 通 な ら 霜 が 降 りて 、 植 物 は 枯 れ て 姿 を 消 す の だ が 、 初 春 の ス ノ ー. ドロ ッ プ の 花 が 咲 い た り、 遅 咲 き の バ ラ が 咲 い た と こ ろ に 雪 が 降 る と い っ た 情 景 に 、 季 節. 一29一.
(10) 教 養 ・外 国語 教 育 セ ン ター紀 要. の リズ ム に乱 れ が あ る こ と を窺 わ せ る。 冬 の 最 中 に も 花 が 見 ら れ る 。 イ ブ キ ジ ャ コ ウ ソ ウ(wildthyme)と strawberry)が. 野 イ チ ゴ(wild. 、 次 の よ う に描 か れ て い る。. Wait without thought, for you are not ready for thought: So the darkness shall be the light, and the stillness the dancing. Whisper of running streams, and winter lightning. The wild thyme unseen and the wild strawberry,. (East Coker III, 180). 森 山 に よ れ ば 、 ジ ャ コ ウ ソ ウ は ラ ン ナ ー を 出 して 繁 殖 す る 野 草 で 、 葉 に 芳 香 が あ る 。 夏 に うす紫 の花 をつ け る。花 は蜜 が 多 い の で 、 蜂 が 群 が る。 甘 さの シ ン ボ ル、 妖 精 の棲 家 と考 え ら れ た 。 野 イ チ ゴ は 、 本 来 は初 夏 に花 を つ け 、 夏 に 実 が な る 。 野 生 の も の は 花 も実 も小 さ い 。 こ れ ら の 植 物 は 夏 の 情 趣 を そ そ る 。13どち ら も夏 の 花 で あ る が 、 冬 の 情 景 と して 形 象 さ れ て い る 。 こ の 季 節 の 乱 れ が 表 す こ と は 、 信 仰 も 愛 も 望 み も、 待 つ こ と の 中 に あ る の で 、 考 え ず に待 た ね ば な ら な い こ と に あ る 。 そ の う ち 闇 が 光 に な り、 静 止 して い た もの が 踊 りだ す か ら で あ る 。 た だ 待 つ こ と が 暗 闇 か ら の 脱 出 方 法 で あ る 。 同 様 に 冬 の 稲 妻 も本 来 夏 の も の で あ る が 、 い ま 陰 醗 な 冬 空 に 光 る 一 条 の 光 明 で あ り、 心 の 眼 を 開 け ば い つ で も見 え る 。 つ ま り、 夏 の 季 節 に 見 ら れ る も の で も、 冬 に 見 る こ と が で き る の で あ る 。 冬 の 情 景 は 心 眼 に 映 る も の で あ っ て 、 実 在 し な くて も心 に 再 現 し う る もの で あ る 。 心 眼 で 見 る花 、 同 時 的 時 間 の 中 で 見 ら れ る花 は 、 冬 で も 決 して な く な ら な い 。 だ か ら 何 も 考 え な い で 待 つ こ と が 必 要 と な る 。 そ う す れ ば 暗 闇 に 光 が 差 して く る 。 そ して 暗 闇 か ら 解 放 され る喜 び を、冬 に見 る春 の風 景 で 描 い て い るの で あ る。 これ は真 冬 の 最 中 にあ って も 心 眼 に み る こ と の で き る 春 の 景 物 の イ メ ー ジ 、 い う な れ ば 「静 止 点 」 に 身 を 置 い た と き に 見 え る 時 間 の 同 時 性 の 世 界 で あ る 。 冬 は 闇 で 、 春 の 景 物 が 光 を 代 弁 す る 。 闇 の 中 で も光 が 見 え て くる こ と を 詩 的 イ メ ー ジ で 表 現 した もの で あ る と考 え られ る。 こ れ と同 じ イ メ ー ジ が 「ドラ イ ・サ ル ベ ー ジ ズ 」 に お い て 、"Thewildthymeunseen,orthewinter lightening"(TheDrySalvagesV,190)と. 繰 り返 さ れ 、 ジ ャ コ ウ ソ ウ と冬 の 稲 妻 が 、 時. 間 の 中 にあ って 時 間 の外 にあ る瞬 間 、 至福 の 瞬 間 の 意 味 を強 め て い る。 これ は非 時 間 の 世 界 と 時 間 の 世 界 の 交 差 点 、 つ ま り静 止 点 の 表 象 で あ る と い え る 。 さ ら に 、 「リ トル ・ギ デ ィ ン グ 」 で は 、 冬 の 最 中 で あ る が 、 眼 を つ む る と 春 の 風 景 が 心 に蘇 っ て く る と 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。. 一30一.
(11) Midwinter spring is its own season Sempiternal though sodden towards sundown, Suspended in time, between pole and tropic. C...1 Stirs the dumb spirit: no wind, but pentecostal fire In the dark time of the year. Between melting and freezing The soul's sap quivers. DJ This is the spring time But not in time's covenant.. Now the hedgerow. Is blanched for an hour with transitory blossom Of snow,. (Little Gidding I, 191). 真 冬 に見 る春 は、 永 遠 の季 節 で あ る。 これ は 日 寺問 の 中 に な い春 、 心 眼 に の み 映 る別 格 の春 で あ る。 極 地 と熱 帯 の 問 に あ っ て時 間 の 中 に宙 づ りに な っ て い る真 冬 の春 は 、 い つ で も思 い浮 かべ られ る の だ か ら永 遠 の春 と言 え る。 冬 の短 い昼 間 は 、寒 く無 風 状 態 で 、生 命 の躍 動 は感 じ られ な いが 、 悠 久 の春 の心 象 を得 た エ リオ ッ トの魂 は喜 び に満 ち て い る 。本 来 な ら6月 の聖 霊 降 臨祭 の火 が 、 真 冬 の空 に 白 い光 を放 っ て い る 。 これ は季 節 の循 環 を超 え た 春 の 永 遠 の イ メ ー ジ で あ る。 生 垣 に一 時 咲 く雪 の 花 は 、 芽 ぐみ もせ ず 瞬 時 に咲 く花 で あ る。 心 で見 る春 は、 継 起 的時 間 に は含 まれ な い季 節 で あ る。 季 節 の循 環 の春 にサ ンザ シ の 白 い花 が 咲 くイ メ ー ジ と、 現 実 の冬 に生 垣 に雪 の花 が 咲 くイ メ ー ジ とが2重 写 しに描 か れ てい る。 真 冬 に心 で見 る春 は 時計 的 で直 線 的 な季 節 か ら隔絶 した永 遠 の季 節 で あ る。 春 の 心 象 風 景 は 四季 の な か で他 の季 節 と関係 を持 ち なが ら存 在 す る春 で は な い。 心 の 中 に存 在 す る永 遠 の春 で あ る。 エ リオ ッ トは冬 の午 後 、 リ トル ・ギ デ ィ ング の村 の教 会 で 、古 来 か ら捧 げ られ て きた祈 りを肌 で感 じ、 次 の よ うに述 べ る。. We are born with the dead: See, they return, and bring us with them. The moment of the rose and the moment of the yew-tree Are of equal duration. [...] So, while the light fails On a winter's afternoon, in a secluded chapel History is now and England.. (Little Gidding V, 197).
(12) 教 養 ・外 国語 教 育 セ ン ター紀 要. こ の 一 節 の 意 味 は 、 バ ラ の 瞬 間 も イ チ イ の 瞬 間 も同 じ長 さ で 、 人 は 死 者 と 共 に 生 ま れ 、 過 去 の 亡 霊 は 帰 っ て 来 て 、 わ れ わ れ を 連 れ て く る 。 歴 史 は 過 ぎ 去 っ た もの で は な く、 今 こ こ 英 国 に あ っ て 過 去 の 人 と 語 りあ い 、 彼 ら の 生 を 併 せ て 生 き て い る の で あ る 。 ス ミス に よ れ ば 、 イ チ イ は 死 を 表 す 。14バラ と イ チ イ は 、 そ れ ぞ れ 生 と死 を 表 し、 バ ラ の 瞬 間 は 、 あ っ と い う 間 に 過 ぎ去 る 青 春 の ひ と 時 、 ま た イ チ イ の 木 の 瞬 間 は 、 死 後 の 時 間 で あ る 。 た と え 一 瞬 で も 、 人 生 の 意 義 を 感 得 す る な ら ば 、 そ の 体 験 は あ ら た な 生 命 力 を 得 て 現 在 に 生 き続 け る の で あ る 。 死 者 は 生 者 の な か に 生 き 続 け 、 そ の 生 命 は 幾 世 代 に も及 ぶ の で あ る 。 人 間 は"Nottoofarfromtheyew-tree"(TheDrySalvagesV,190)と. 、 イチ イの 木 か ら ほ. ど 遠 く な い 場 所 で 土 に 帰 る 。 イ チ イ は 生 命 力 の 強 い 木 で 墓 地 に 植 え られ 、 死 を 象 徴 す る 。. エ リ オ ッ トは 、 「リ トル ・ギ デ ィ ン グ 」 で イ ン グ ラ ン ドに 帰 っ て く る 。 そ して 今 一 度 、 現 在 か ら 過 去 を 見 る 。 第 二 次 世 界 大 戦 の 崩 壊 か ら、17世. 紀 の 内 戦 に よ っ て 引 き起 こ さ れ. た 崩 壊 を振 り返 る 。 リ トル ・ギ デ ィ ン グ の 教 会 は 、 か つ て 英 国 国 教 会 の 宗 教 的 な 共 同 社 会 が 存 在 した と こ ろ で あ る 。 こ こ で エ リ オ ッ トは 、"nowandinEngland"と. 精 神 的 な巡 礼. の 終 り を 知 り、 死 者 と の 対 話 に よ っ て 過 去 の 亡 霊 と の 繋 が り を 感 じ る 。 教 会 に イ 宇んで 故 人 た ち の 熱 烈 な 祈 り を 肌 で 感 じ、 こ こ に 探 求 し た 静 止 点 が あ る と確 信 す る 。 エ リ オ ッ ト は "th edrawingofthisLoveandthevoiceofthisCalling"(LittleGiddingV,197)に 従っ て 探 求 を 続 け た が 、 す べ て の 探 求 が 終 わ っ た と き、 元 の 出 発 点 に 到 達 し、 そ の 場 所 を 改 め て 知 る こ と にな る。 継 起 的 時 間 の 外 に あ る永 遠 の 時 間 の 探 索 の 過 程 で 、 四 季 の 花 の イ メ ー ジ が 文 脈 に 色 彩 と 香 り を 添 え る 。 真 冬 の 生 垣 は 、 束 の 間 の 雪 の 花 で 一 時 間 白 く な る 。 そ れ は季 節 の 中 で 咲 く 花 と 同 じ よ う に 美 しい 。 エ リ オ ッ トは 、 こ の 心 象 風 景 を季 節 の サ イ ク ル の 中 で 咲 く花 と 対 比 し、 花 の 色 香 も 芳 しい5月. に 生 垣 が 再 び 白 く変 わ る の を 思 い 浮 か べ る 。 日 寺計 的 で 直 線 的. で 、 過 去 、 現 在 、 未 来 の 順 序 を 持 つ 時 間 に お い て だ け で な く、 日 寺問 の 同 時 存 在 性 の 表 象 で 花 の イ メ ー ジ を捉 え る の で あ る 。 真 冬 に 見 る春 の 心 象 風 景 は 、 季 節 か ら 離 脱 した 春 で 、 継 続 的 な 四 季 の 春 と は 違 い 、 人 の 心 に存 在 す る永 遠 の 春 で あ る 。 私 た ち は 花 を 通 して 視 覚 的 な イ メ ー ジ を 見 せ ら れ る 。 こ の 花 の 情 景 か ら 春 と 冬 が 融 合 す る 。 こ の 融 合 は エ リ オ ッ トの 巧 み な 筆 使 い に よ っ て 文 脈 に色 彩 と 意 味 を 与 え て い る 。 しか し、 さ ら に 生 気 に 満 ち 、 意 義 を 持 つ 永 遠 の 夏 と し て の"Zerosummer"(LittleGiddingI,191)を. 求 め て 、 エ リオ ッ ト. は探 求 の 旅 をす る こ と に な る。 時 間 に支 配 され て い る この 世 界 で 、 永 遠 の 夏 を見 る こ と は で き な い の だ ろ う か 、 と い う探 求 心 が 静 止 点 、 す な わ ち 非 時 間 と 時 間 が 交 差 す る 点 、 美 し. 一32一.
(13) 「 四 つ の 四重 奏 』 に見 る花. く光 り輝 く世 界 を感 知 させ る の で あ る。 『四 つ の 四 重 奏 』 に見 る花 の イ メ ー ジ は 、 自然 界 の花 か ら選 りす ぐっ た 詩 的 連 想 性 の豊 か な もの で あ る。 野 辺 に咲 く花 、 生 垣 に咲 く花 、心 眼 で見 る花 な どが 季 節 の サ イ ク ル や そ の範 疇 を超 え て 、 そ れ ぞ れ の文 脈 の 中 で適 切 な意 味 を包 含 し視 覚 的 な伴 奏 に な っ て い る と 考 え られ る。. 注. 1. FourQuartetsの. 引 用 は す べ て 次 の 版 に よ る 。Eliot,T.S.(1969).TheCompletePoems. andI)laysofT.S.Eliot.London:FaberandFaber. 9自. Raine,C.(2006).T.S.Eliot.Oxford:OxfordUniversitypress.110.. り0. Ibid.,100.. 4. Smith,G.(1794).T.S.E1ガoなPoetryandI)lays.Chicago:TheUniversityofChicago Press.339.. 5 6. Ibid.,275. ミ ル ワ ー. ド.P著,中. 山 理 訳.(1992).「. 英 文 学 の た め の 動 植 物 辞 典 』 大 修 館.372.. 7. Frye,N.(1972).T.S.Eliot.NewYork:OliverandBody.88.. 8. 森 山 泰 夫.(1980).『. 9. Smith,265.. 10. Traversi,D.(1976).T.S.ElioちTheLongerPoem.London:TheBodleyHead.184.. 11. 森 山 泰 夫,127. 12. フ リ ー ス,A.D著,山. 13. 森 山 泰 夫,81.. 14. Smith,265.. 四 つ の 四 重 奏 』 大 修 館.117.. 下 主 一 郎 他 訳.(1984).『. イ メ ー ジ シ ン ボ ル 辞 典 』 大 修 館.589..
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