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自閉スペクトラム症児の保護者を対象とした「支援ツール勉強会」の試み―保護者同士による支援力を高める取組―-香川大学学術情報リポジトリ

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自閉スペクトラム症児の保護者を対象とした

「支援ツール勉強会」の試み

―保護者同士による支援力を高める取組―

武 藏 博 文

<要 旨>  自閉スペクトラム症児の保護者を対象に、保護者が各自で支援ツールを作成し試用・改善する支 援ツール勉強会を開催した。家庭や地域での保護者の子どもへの支援を向上させることを目的とし た。対象者のアンケート結果から、経験談の提示、体系的な作成体験、保護者同士の交流と発表に 対する評価が高かった。保護者が主体的に参加して、子どもへの支援を考え実行する支援の場の必 要性について検討した。 キーワード:支援ツール 保護者支援 家庭・地域支援 ペアレント・トレーニング 自己効力感 1.問題と目的  特別支援教育が進展する中で、特別なニーズ のある子どもの生活の質の向上を図るために、 保護者と協同し、共通した指導方略に基づい て、家庭や地域での支援を進めることが大切で ある。保護者に支援に関する情報や研修の機会 を提供し、保護者が自ら学習を進めて、子ども への支援を実行するようになることが求められ る。  発達障害児の保護者に対する支援の方法とし て、ペアレント・トレーニングがある(原口・ 上野・丹治・野呂,2013;神山,2018)。その 多くは、養育方法への支援、子どもの行動の改 善、子どもの社会性の向上や情緒の安定を目的 としており、さらに、保護者の養育に対する不 安やストレスの軽減を図ることをねらいとして きた。これらの課題や問題に対応するために、 行動論的な立場から指導支援の技術の習得を 目指してきた(藤坂・井上,2012;水内・阿部, 2012;神山・澤田・岸,2016)。  実施形態は、保護者に対して個別に行うも の、複数の保護者に対して集団で行うもの等が ある。神山(2018)は個別型、教室型、自己学 習を組み合わせた階層モデルを提案している。 介入手続きは、面接、講話を主として、保護者 によるグループワークを行うものが多い。その 際に、モデリング、ロールプレイ、行動リハー サル、ビデオモニタリング、トークン・エコノ ミー、フィードバック等の方法がとられてきた (上野・高浜・野呂,2012)。家庭で行うホーム ワーク・宿題、連絡帳や日記記録の活用も試み られている(岡村,2015)。効果の評価として、 香川大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻

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個別の支援では子どもの様子の観察記録、集団 での支援では育児不安等に関する評価尺度を指 標とするものがあるが、客観的な効果の評価を 行っていないものも多く、その必要性が指摘さ れている(原口・上野・丹治・野呂,2013)。  こうした保護者支援にはいくつもの課題があ る。第1に、指導目標は、子どもの生活や学習 での課題の改善、行動・感情や社会性の問題へ の対応であることが多い。子どもにとっても、 保護者にとっても、こうした目標を家庭や地域 で実行することは、負担が大きく困難度が高 い。子どもの強みを伸ばし、肯定感を高め、社 会参加の機会を増やすもの、さらには、保護者 のニーズに合い、子どもへの支援力を向上させ るものであることが大切である。  第2に、介入手続きは、前述の指導目標を達 成するために、構造化や行動形成、行動修正等 の指導技術を習得させることに重きが置かれが ちである。日常生活の文脈や状況で、保護者が 習得した指導技術を実施するのは難しく、続け られない。子ども本人が目的や方法をわかって 自ら取り組み、保護者が子どもへの支援として 行いやすく、継続する方法を検討することが必 要である。  第3に、効果の評価についても、行動観察や 評定尺度による客観的な評価は必要ではある が、保護者自身が自分の行う支援の効力を実感 するという主観的な評価こそが大事にされるべ きといえる。  武藏(2013)は、支援ツールシステムに基づ いた子どもへの支援を提案してきた。学校での 授業づくり・改善や、家庭や地域への支援と してきた(西川他,2010;武藏他,2014;藤原・ 武藏他,2016)。支援ツールシステムでは、「子 ども本人の行動」に着目し、よりよい参加の仕 方、望ましい行動を見つける。さらに、子ども が自ら取り組みやすい「きっかけ」「結果」を工 夫する。「関連する状況」として、環境や周囲 の支援も整える。子どもの行動の流れを「関連 する状況」-「きっかけ」-「本人の行動」-「結果」 のつながりで捉え、それぞれに支援の手立て を工夫し、包括的な支援の実現を図る(図1)。 武藏(2004;2007)、武藏他(2012)は、学校だけ でなく、保護者と協同して支援を進める実践を 試みてきた。講話やホームワークを主としつ つ、実際の支援ツールの様子を説明したり、支 援ツールの作成や体験を取り入れたりしてき た。  そこで、本実践では、保護者が各自で自分の 子どものための支援ツールを作成し改善するこ とを中心に、経験談の提示や作成体験の充実を 図り、段階を踏んだ保護者同士の交流や発表の 機会を取り入れた支援ツール勉強会を実施し た。保護者が主体的に参加して、子どもへの支 援を考え実行する支援の場の必要性について検 討した。 図1 支援ツールシステムによる支援

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2.方法 (1)対象  自閉スペクトラム症児の保護者。岡山県自閉 症児を育てる会の呼びかけで集まった。勉強会 への登録は31名であり、1回の勉強会での参加 者は14名から28名であった。子どもの年齢は3 歳から29歳であった。なお、本研究は個人情報 及び倫理面に配慮して行った。本研究をまとめ るに当たっては、岡山県自閉症児を育てる会の 同意を得た。 (2)取組の概要  支援ツール勉強会は、X年5月からX+1年 3月まで毎月1回、計10回にわたり、A市福祉 センターにおいて行った(表1)。1回の勉強 会は2時間程度で、プログラム全体は、子ども への支援や支援ツールに関する講話に続いて、 アンケートとワークシートの記入や、保護者同 士のグループワークを行った。さらに、保護者 が各自で自分の子どものための支援ツールを作 成し改良を行い、試みた結果を交流し発表する までを含むものであった。それに加えて、2 回目からは経験談の提示として「先輩母の支援 ツール紹介」、3回目からは支援の実際を体験 するために「支援ツール作成体験」を併行して 行った。  経験談の提示としての「先輩母の支援ツール 紹介」では、支援ツールを使って家庭等で子ど もへの支援を行ってきた保護者の方に、実際に 家庭で使用した支援ツールを示しながら、家庭 での取組の様子、よかったこと、苦労したこと 等の経験談を話してもらった。毎回、違った方 に来てもらい、話をしてもらう時間をとった。 話をしてもらった方々の子どもの年齢は、小学 生から、すでに成人した方まで様々であった。  「支援ツール作成体験」では、4種の支援ツー ルのそれぞれについて、目的や支援の目標、作 り方と作るときの注意点、使い方と使うときの 留意点を示し、作成するためのシートや台紙、 用具等を提供し、試みに作ってみる体験を行っ た(表2)。2回の勉強会を一組として作成体 験を行った。最初の回に、説明と見本の提示を 行い、台紙や用具等を提供して作成に取り組 み、仕上げはホームワークとした。次の回に、 内容の復習し、保護者が作成し試みた支援ツー 表1 支援ツール勉強会の概要 X年 X+1年 5月 1回目 2回目6月 3回目7月 4回目9月 5回目10月 6回目11月 7回目12月 8回目1月 9回目2月 10回目3月 ・ 子どもへ の支援を 考えよう ・ 「子 ど も いちばん アンケー ト」を書 こう ・ 子ども自 慢をしよ う ・ 支援ツー ルに触っ てみよう ・ 「ね ら い を 絞 る ワ ー ク シ ー ト 」 を書こう ・ 子どもへ の支援の 復習 ・ アイデア を出し合 おう ・ 支援ツー ルを作っ て試そう ① ・ 子どもへ の支援の 復習 ・ 支援ツー ルを作っ て試そう ② ・ 支援ツー ルを作っ て試そう ③ ・ 子どもへ の支援の 復習 ・ 支援ツー ルを作っ て試そう ④ ・ みんなで 交流 ・ 支援ツー ルを作っ て試そう ⑤ ・ ま と め シートを 書こう ・ 発 表 会・ 修了式 ・ 先輩母の 支援ツー ル紹介① ・ 先輩母の 支援ツー ル紹介② ・ 先輩母の 支援ツー ル紹介③ ・ グループ ホームの 支援ツー ル紹介 ・ 先輩母の 支援ツー ル紹介④ ・ 先輩母の 支援ツー ル紹介⑤ ・ 先輩母の 支援ツー ル紹介⑥ ・ 先輩母の 支援ツー ル紹介⑦ ・ 支援ツー ル作成体 験①:視 覚支援 ・ 支援ツー ル作成体 験①:パ ワーカー ド ・ 支援ツー ル作成体 験②:手 順表・課 題分析 ・ 支援ツー ル作成体 験②:手 順 表(お にぎりレ シピ) ・ 支援ツー ル作成体 験③:自 助具・援 助の仕方 ・ 支援ツー ル作成体 験③:自 助 具(ナ ンバーぞ うきん)、 チャレン ジ日記 ・ 支援ツー ル作成体 験④:周 囲の支援 を引き出 す方法 ・ 支援ツー ル作成体 験④:サ ポートシー ト

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ルを交流し合った。  視覚支援の基本を知るための「パワーカー ド」、課題分析の仕方を体験するための「おに ぎりレシピ」、自助具の特徴と援助の仕方を体 験するための「ナンバーぞうきん」、子どもの 行動を認めて意欲を高める仕組みを学ぶための 「チャレンジ日記」、周囲の支援者の理解を図り 支援を引き出す方法としての「サポートシート」 である。 (3)各勉強会の内容 1 )1から3回目:支援についての理解と各自 で子どもの支援を考える  講話や支援ツールの説明を通して、子どもへ の支援の考え方と支援ツールシステムについて 理解を深めること、アンケートやワークシート を記入し、グループに分かれて交流すること で、保護者が自分の子どもへの支援を考えるこ とを目的に行った。  1回目は、前向きな生活のための子どもへ の支援の考え方と4つの部分で構成される支援 ツールシステムを理解してもらうために、プレ ゼンを使って講話を行い、支援ツールの実物を いくつか示して紹介した。さらに、子どもの様 子や特徴を整理し見直してもらうために、「子 どもいちばんアンケート」を説明し、記入する 時間をとった。記入できなかった部分はホーム ワークとした。「子どもいちばんアンケート」 の内容は、特性シート(指示理解、意思表現、 手順理解、習得の基本)、好みシート(好き・ 嫌い、興味や関心、難しい課題)からなってい る。  2回目は、子どもの長所を見直して支援に つなげることを目的に、保護者が記入してき た「子どもいちばんアンケート」を用いて、「子 ども自慢をしよう」として、4∼5名のグルー プに分かれて、順番に自分の子どもの様子や特 徴を紹介し合った(表3)。話す人には、子ど ものわかること、できること、好きなこと、得 意なこと、興味関心のあること、頑張っている ことを中心に話すようにさせた。聞く人には、 「いいね」「すばらしい」「私もそう思う」と思 うことを話す人に返すこと、自分なり見方や考 え方も加えて伝えることを求めた。その後に、 支援ツールの実物を示して、実際に実物に触れ て、どのようなものか、どのように使うか、ど のように子どもに示すか等を体験してもらっ た。「先輩母の支援ツール紹介」は、小学生の 保護者の支援ツールの紹介であった。  3回目は、保護者が自分の子どもの支援ツー ルを作るために、「ねらいを絞るワークシート 1・2」を順に説明し、記入する時間をとった。 「ねらいを絞るワークシート1」は、支援の目 標をリストアップし、絞り込むためのものであ る。子どもに取り組ませたい内容をなるべく 具体的にいくつかリストアップし、その後に、 「本人ができる・だいたいできる」「自立につな がる」「肯定的・前向きなもの」「皆から認め られる」の4つの点から、目標を絞り込み、ま とめ直すことを求めた。「ねらいを絞るワーク シート2」は、支援の目標を行うための条件を 表2 支援ツール勉強会で行ったワークや作成体験 ワーク・作成 体験 アンケートを書こう ワークシートを書こう 支援ツール作成体験① 支援ツール作成体験② 支援ツール作成体験③ 支援ツール作成体験④ 内容 子どもの特性 を把握する 支援の目標や方法を考える 視覚支援の基礎を学ぶ 課題分析の仕方を体験する 自助具と援助の仕方を体験 する 子どもの意欲 を高める仕組 みを学ぶ 周囲の支援を 引き出す方法 を知る パワーカード おにぎりレシ ピ ナンバーぞうきん チャレンジ日記 サポートシート 準備物 「子 ど も い ち ばんアンケー ト」 「ね ら い を 絞 るワークシー ト1・2」 説 明 シ ー ト、 見本 パワーカード の台紙 説 明 シ ー ト、 見本 おにぎりレシ ピのカード 説 明 シ ー ト、 見本 ぞうきん、シー ル、マジック 説 明 シ ー ト、 見本 日記カード 説 明 シ ー ト、 見本 サポートシー トの台紙

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整理し、子どもの理解度を評価するものであ る。目標の一つ一つについて、「いつ・どこで」 「誰と」「目的・結果」「称賛」「手順・やり方」「程度」 「使う道具」「手助け」の8つの実行条件を書き 出し、その条件を子どもがどの程度理解してい るかを評価させた。その後に、ワークシートに 記入した内容について、4∼5名のグループに 分かれて、紹介し合う時間をとった。ワーク シートの記入には、かなりの個人差があったの で、記入できた部分までで、保護者同士で交流 するようにした。記入できなかった部分はホー ムワークとした。「先輩母の支援ツール紹介」 は、成人した方の保護者の支援ツールの紹介で あった。「支援ツール作成体験」は、視覚支援 の基本を知るために、「パワーカード」の説明 と実物見本を示した。「パワーカード」の台紙 を配り、子どもの好きなキャラクター、子ども に示したい内容、その使い方を考えて、カード を作成することもホームワークとした。 2 )4から6回目:支援ツールを作って試し、 途中経過を交流する  支援ツールの紹介や作成体験等を参考とし、 アンケートやワークシートの記述をもとに、保 護者が各自で自分の子どものための支援ツール の作成に取りかかった。4∼5名のグループに 分かれて作成を進めるとともに、会の終わり に、作成途中の支援ツールについて、その目的 や内容、作成の経過等を保護者同士で交流し 合った。  4回目は、支援ツールによる支援の方法を復 習するとともに、「ねらいを絞るワークシート」 をどのように活用するかを説明し、子どもの支 援ツールを作成することへの見通しを示した。 その上で、子どもの支援目標や方法を具体的に して、支援ツールを考えることにつなげるため に、保護者が記入してきた「ねらいを絞るワー クシート」を用いて、「アイデアを出し合おう」 として、グループに分かれて、順にワークシー トの内容を紹介し合った。話す人・聞く人の両 者に、「こんな経験をしたことがある」「自分な らこうする」「こうした方がわかりやすいので は」等々の思いついたアイデア・工夫を出し合 うように求めた。浮かんだアイデアは、メモに 残すように促した。「先輩母の支援ツール紹介」 は、高校生の保護者がこれまで作成し使用して きた支援ツールを紹介した。「支援ツール作成 体験」は、保護者が各自で作成したパワーカー ドを、グループに分かれて交流し合った。その 後に、手順表、課題分析(課題の小分け)の説 明と具体例を示した。  5回目は、保護者が各自で自分の子どもの 支援ツールづくりを行った。支援ツールを作 るための材料や道具(マジック、蛍光ペン、厚 紙、ラミネーター、カッター、マグネットシー ト、マジックテープ、リング、ファイル等々)、 インターネット上の情報を得るためのパソコ ン、プリンター等を準備して、グループに分か れてそれぞれに開始した。支援ツールづくりに は、かなりの個人差があり、アイデアを考えて いる人から、作成をほとんど終えて使い方を相 表3 2回目:6月の支援ツール勉強会の時程 時間経過 勉強会の内容 備  考 15分 先輩母の支援ツールの紹介① プレゼン、実物を使った説明 45分(∼1:00) 「子どもいちばんアンケート」で、 子ども自慢をしよう 子どもいちばんアンケート用紙4・5人×8グループで交流 30分(∼1:30) 30分(∼2:00) 支援ツールに触ってみよう ・実物を使った説明 ・支援ツールに触って体験 ・ビデオ視聴 ・まとめ プレゼン、実物の使い方を見せる 実物を手にとってみる 支援ツールの紹介ビデオ 10分(∼2:10) 感想アンケート・次回予告 アンケート用紙

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談する人まで様々であった。その後に、保護者 がそれぞれに作成している支援ツールを交流し 合った。「先輩母の支援ツール紹介」は、成人 の方のグループホームで使われている支援ツー ルの紹介であった。「支援ツール作成体験」は、 課題分析の仕方を体験するために、「おにぎり レシピ」づくりを行った。おにぎりの作り方の 手順を示してある、何枚かの絵と文字のカード をもとに、自分の子どもが行う際の手順、おの おのの家庭のやり方に応じて、カードを並べ替 えたり、新たな手順カードを描き足したり、逆 に除いたりして、各自に合わせたレシピを作成 した。グループごとにできあがりを交流し合っ た。仕上げはホームワークとした。  6回目は、支援ツールづくりを前回に続けて 行った(表4)。まず、これまで説明してきた 支援ツールによる支援をまとめて、「支援のア イデアガイドライン」とし、子どもの理解度の 評価から必要な支援を考えること、個々の支援 ツールを組み合わせることを説明し、子ども のつまずきをこえる工夫を紹介した。その後 は、グループに分かれ、保護者がそれぞれに支 援ツールを作成したり、絵や写真を加工した り、ラミネートしたり、互いに話し合ったりし た。さらに、作成している支援ツールを交流し 合った。「先輩母の支援ツール紹介」は、高校 生の保護者がこれまで作成し使用してきた支援 ツールを紹介した。「支援ツール作成体験」は、 自助具の実物見本をいくつか示し、自助具を使 いこなすための援助の仕方を説明した。「ナン バーぞうきん」の体験を行うことを予告した。 3 )7から9回目:支援ツールを作って試し、 発表し合い改良する  支援ツールの紹介や作成体験等と並行して、 保護者が各自で支援ツールの作成を進めた。作 成した支援ツールを試した結果や使うときの工 夫について発表し合い、互いにアドバイスや改 良のアイデアを出し合った。  7回目は、支援ツールづくりを前回に続けて 行った。グループに分かれて作業を進め、子ど もへ支援を行うための仕方を考えたり、試みた 支援ツールの改良を考えたり、新たな支援ツー ルを作成したり、互いに話し合ったりして、時 間が過ぎた。「先輩母の支援ツール紹介」は、 兄弟で支援ツールに取り組んだ保護者の支援 ツールの紹介であった。「支援ツール作成体験」 は、自助具と援助の仕方を体験するために「ナ ンバーぞうきん」づくりを行った。ぞうきんを 1枚ずつ配り、家庭で子どもに拭き掃除をする とした場合に、拭き掃除をする場所、目印の付 け方、ぞうきんの使い方を考えた。家庭で実際 に試してみるように促した。さらに、子どもの 行ったことを記録し、評価するための仕組みと して「チャレンジ日記」を紹介した。日記カー ドの例を配り、子どもにできる記録の付け方、 ファイルに綴じ込んで貯めていく方法を示した。  8回目は、支援ツールづくりを前回に続けて 行った(表5)。支援ツールを使って、子ども 表4 6回目:11月の支援ツール勉強会の時程 時間経過 勉強会の内容 備  考 15分 先輩母の支援ツールの紹介④ 実物を使った説明 10分(∼0:25) 50分(∼1:15) 25分(∼1:40) 子どもへの支援についての復習: 「支援のアイデアガイドライン」 支援ツールを作って試そう②: 支援ツールの作成・改良の続き グループで各自の進行状況を交流。 参加者アンケート記入 資料、プレゼン 4・5人×5グループ 各自で作成・改良 グループごと、1人×1分程度 アンケート用紙 20分(∼2:00) 支援ツール作成体験③:自助具の説明 資料、プレゼン、実物、ビデオ 10分(∼2:10) 感想アンケート・次回予告 アンケート用紙

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が自ら行うための続け方や、手がかりやチャレ ンジ日記等の支援ツールを組み合わせて支援を 行うこと、目標としたこと以外にも効果を広げ ていくこと等を説明した。グループに分かれ、 支援ツールづくりの作業を進めた。その後に、 「みんなで交流」として、全員で、一人ひとり が試して考えていることを簡潔に発表した。皆 に向かって発表することに抵抗のある保護者も いるので、「グループの中でしていたように、 次の人に教えてみせるように話しましょう」と 教示した。「先輩母の支援ツール紹介」は、小 学生の兄弟の保護者の支援ツールの紹介であっ た。「支援ツール作成体験」は、周囲の支援者 の理解を図り支援を引き出すための「サポート ブック・シート」の見本をいくつか示した。「サ ポートシート」の台紙を配り、次回に「サポー トシート」の作成を行うことを予告した。  9回目には、支援ツールづくりを前回に続け て行った。グループに分かれて作業を進めた。 会の終わりに、いつものように、それぞれの進 行状況を交流し合った。最終回(10回目)に発 表会と修了式を行うこと、これまで作成した支 援ツールを「支援ツールまとめシート」に書く ことを説明し、まとめシートの台紙を配った。 支援ツールまとめシートは、支援ツールの名 前、写真や絵、支援のねらい、作るとき・使う ときに工夫したところ、使ってみた様子を記入 するようになっている。「先輩母の支援ツール 紹介」は、高校生の保護者がこれまで作成し使 用してきた支援ツールを紹介した。「支援ツー ル作成体験」は、サポートシートを記入する時 間を取った。すでに、書き込んできた方は、記 述の内容や支援者への伝え方を話し合った。 4)10回目:発表会と修了式  10回目は、発表会と修了式を行った。保護者 一人ひとりが、この1年間に取り組んだ内容を 発表した。それぞれが作成した支援ツールを展 示し、皆で見合う時間を設けた。その後に、修 了式を行い、修了証を手渡した。保護者が各自 で作って試した支援ツールの中から主なものを 「支援ツールまとめシート」に書いて、後日提 出するように求めた。 (4)評価  3回目、6回目、9回目の節目ごとに、参加 者アンケートを実施した。1から3回目、4か ら6回目、7から9回目に取り上げた内容が、 ①「子どもが生活する上で大切なことであった か」、②「すぐに取り組んでみたいことであっ たか」、③「実際の生活に今後も使えることで あったか」を4件法で評価し、感想を自由記述 で求めた。加えて、保護者が各自で作成し試し ている支援ツールの内容と方法を聞いた。  最終回(10回目)に、勉強会全体を通じての アンケートを実施した。勉強会での内容が、㋐ 「勉強会の内容を理解できましたか」、㋑「勉強 会の内容は今後の生活に役立ちそうですか」、 ㋒「勉強会の内容を試してみようという気持ち が高まりましたか」を5件法で評価し、勉強会 表5 8回目:1月の支援ツール勉強会の時程 時間経過 勉強会の内容 備  考 15分 先輩母の支援ツールの紹介⑥ 実物を使った説明 15分(∼0:30) 30分(∼1:00) 子どもへの支援についての復習: 支援ツールをどう使う 支援ツールを作って試そう④: 支援ツールの作成・改良の続き 資料、プレゼン 4・5人×5グループ 各自で作成・改良 40分(∼1:40) みんなで交流 全員で、1人×1分程度 次の人に教えてみせる 20分(∼2:00) 支援ツール作成体験④: サポートブック・シートの説明 説明シート、プレゼン、実物サポートシートの台紙 10分(∼2:10) 感想アンケート・次回予告 アンケート用紙

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に参加してよかった点を自由記述で求めた。加 えて、前述したように、「支援ツールまとめ シート」の提出を求めた。 3.結果  参加者アンケートの評価結果を図2に、全体 を通じてのアンケートの評価結果を図3に示し た。回毎の参加者アンケート及び全体を通じて のアンケートに書かれた自由記述の内容を「保 護者本人、子どもについて」「勉強会について」 「支援ツールについて」の3点で分類し、その主 なものをまとめて表6に示した。保護者が作成 し試みた支援ツールについて、回毎のアンケー トに記された支援ツールを、子どもの年齢と支 援の内容(日課スケジュールや生活技能、手伝 いや余暇・運動、コミュニケーション、家庭外 のディサービス・学校等)によりまとめて表7 に示した。 (1)参加者アンケートの経過  回毎の参加者アンケートの評価平均(4件 法、図2)は、①「子どもが生活する上で大切 なことであったか」が3.67→3.56→3.63であっ た。子どもの年齢や現状によっては、勉強会 で取り上げた支援ツールの内容や方法が、家 庭での支援に直接につながらない部分があっ たためと考えられる。②「すぐに取り組んでみ たいことであったか」が3.67→3.82→3.88、③ 「実際の生活に今後も使えることであったか」 が3.70→3.82→3.87であった。いずれの項目も、 回を追うごとに評価が高まった。保護者同士の 交流が深まり、各自で支援ツールの作成に取り 組んだことにより、子どもへの支援と支援ツー ルの活用が評価されたためと考えられる。  参加者アンケートの自由記述(表6)には、 1から3回目で、「取り組む意欲ややる気につ ながった」「さっそくやってみたい」等という 感想の一方で、「作れるか不安」「進められる心 配」というものや、先んじて取り組んでみたも のの「一人でしていたら、行き詰まってしまっ た」という声もあった。勉強会については、「実 際に行なっている方の話しがよかった」「他の 方と話しができてよかった」等という記述が あった。経験談が聞けたこと、互いに話し合い ができたこと、実物や実例が提示されたことが 評価された。  4から6回目で、「うまくいったときはうれ しい」という感想の一方で、「子どもにあった ツールを作るのは大変」「ようやく作り始めた」 という声があった。勉強会については、「他の 方の話しが参考となった」「作る時間が与えて もらえるのがよい」「アドバイスをいっぱいい ただいた」等という記述があった。保護者同士 の交流で互いに刺激を受けたこと、実際に自分 の子どもの支援ツールの作成に取り組めたこ と、アドバイスやアイデアを得られたことが評 価された。  7から9回目で、「よいツールとなってやる 気が出た」のように、支援ツールを試して改良 図 ン の 図 ン の る い の る を 解 の つ る 図2 参加者アンケートでの評価結果

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自閉スペクトラム症児の保護者を対象とした「支援ツール勉強会」の試み 図 ン の 図 ン の を 解 の つ る 図3 全体アンケートでの評価結果 して取り組んだことに対する感想があった。子 どもの支援に取り組む際に実際に考えたことが 記述された。その一方で、作成には取り組ん だが、「あまりできていない」という声もあっ た。勉強会については、「他の方と情報交換し て、よいツールになった」「アドバイスして、 よくなったツールを見せてもらえるのはうれ しい」「作ったツールを見てもらうのはうれし い」等という記述があった。保護者同士で支援 に関わる情報を交換したり、アドバイスし合っ たりしている様子がわかる。作成体験について は、「子どもに試した」「学校にも置いてもらっ た」「改めて子どものことを考えた」等という 記述があった。作成体験にも慣れて、作成体験 で作った支援ツールを家庭で活用している様子 がわかる。 (2)全体を通じてのアンケートの評価  最終回の全体を通じてのアンケートの評価平 均(5件法、図3)は、㋐「勉強会の内容を理解 できましたか」が4.63、㋑「勉強会の内容は今後 の生活に役立ちそうですか」が4.63、㋒「勉強会 の内容を試してみようという気持ちが高まりま したか」が4.75であった。  全体を通じてのアンケートの自由記述(表6) には、勉強会に参加してよかった点として、前 述の参加者アンケートに挙げられた内容に加え て、「自分自身が成長できた」「一人じゃないと 思えた」「どうしたらできるようになるか考え られるようになった」等という記述があった。 個々の支援技術の習得だけでなく、子どもとの 生活を見直して、保護者の支援力全体を強める 効果があったといえる。また、「自分も認めて もらえてうれしい」「他の方から褒められてう れしい」等という記述があった。保護者自身も、 子どもへの支援を考えることを認めてほめても らいたいと思っていることがわかる。保護者同 士の交流が、保護者同士の肯定的な関係を作り だし、保護者の効力感の向上に役立ったといえ る。  勉強会については、「ツールを作ったり考え たりに集中できた」「ゆっくりと学ぶことがで きた」「改良してよくなったことを聞けた」「他 の方のアイデアやいいところを参考にできた」 「困ったときに相談できた」等という記述があっ た。勉強会が進むにつれて、互いにアドバイス をし合ったり、情報交換したりする等のように 保護者同士の関係の高まりを感じさせた。子ど もへの支援や支援ツールについては、「完璧で なく、作って試せるようになった」「子どもが 成長したら試してみたいツールがいくつもあっ た」「表現の仕方や伝え方などのアイデアをい ただき参考となった」等の記述があった。子ど もへの支援を実際に試す経験を積むことによ り、子どもへの支援の在り方を具体的につかむ ことができたといえる。 (3)保護者が作成し試みた支援ツール  回毎に保護者が考え作成し試した支援ツール は、表7のようであった。なお、支援ツール まとめシートとして、保護者が提出したもの は、支援ツール集としてまとめて、参加した対

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表6 参加者アンケート及び全体アンケートでの自由記述(抜粋) 1から3回目 4から6回目 7から9回目 全  体 保 護 者 本 人、子ども について ・ 取り組む意欲ややる 気につながった。 ・ 早速やってみたい。 ・ 作れるか不安。 ・ 成功体験をつかみた い。 ・ 子どもを理解していな いとできないと思った。 ・ 諦めずに、作ってい きたい。 ・ 進められるか心配。 ・ 取り組んでみようと 思えた。 ・ 子どもに合う支援ツー ルを作りたい。 ・ 子どもが楽しいと思 えることに取り組み たい。 ・ 一人でしていたら、行 き詰まってしまった。 ・ 見たり聞いたりして、 やってみようと思えた。 ・ やってみて報告でき るとよい。 ・ 子どもにうまくいった ときはうれしくなった。 ・ ツールを作ることが でき、一歩踏み出せ た。 ・ アイデアが形になっ て、うまくいったと きはうれしい。 ・ 子どもにあったツー ルを作るのは大変だ。 ・ 親子で楽しんで利用 している。 ・ 子どもも気にしてく れている。小さな一 歩かな。 ・ ようやく作り始めた。 ・ よいツールとなって、 やる気がでた。 ・ 子どもができそうな ことにトライするの が大切。 ・ 子どもに理解できない ので使えないと思って いたら、色分けしたら と教えていただいた。 ・ 諦めずに、何度も試 していくことが大切。 ・ 自分で考えつかない ことも、見本がある と参考となる。 ・ 子どもについてじっ くり考える時間が取 れた。 ・ あまりできていない が、作って試してい きたい。 ・ 自分にアイデアがもらえた。 ・ 作って試すことで、自分自身 が成長した。 ・ 一人じゃないと思えた。 ・ 皆で取り組むことで形にでき た。 ・ アドバイスをもらいながら楽 しくできた。やる気になった。 ・ 他 の 方 の 話 が、 自 分 の モ チ ベーションになった。 ・ 自分も認めてもらえてうれしい。 ・ 実物や他の方の取り組みが刺 激になった。 ・ 子どもが変化していき、それ に合わせてできてよかった。 ・ どうしたらできるようになる かを考えられるようになった。 ・ 他の方から褒められてうれしい。 ・ 期限や発表があると頑張れた。 ・ 本人が興味を示さなかった。 勉強会につ いて ・ もっと話しが聞きた い。 ・ アンケート等の記入 は家でじっくりした い。 ・ アイデアがたくさん あった。 ・ 他の方の考えやアイ デアを聞けてよかっ た。 ・ 実践例から、自分の 子ならと考えた。 ・ 先輩母の話しが面白い。 ・ 実際に行なっている 方の話しがよかった。 ・ 他の方と話しができ てよかった。 ・ 勉強会で作成意欲が 湧いてきた。 ・ 他の方の話しが参考 となった。 ・ 他の方が作ったツー ルが参考となった。 ・ 作る時間が与えても らえるのがよい。 ・ 毎回、復習の時間が あるのが助かる。 ・ 周りからアドバイスを いっぱいいただいた。 ・ それぞれのアイデア と体験を聞けるのが よい。 ・ 毎回、刺激をいただき、 アイデアが出てくる。 ・ 他の方と情報交換し て、 よ い ツ ー ル に なった。 ・ 作ったツールを見て もらうのはうれしい。 ・ アドバイスして、よ くなったツールを見 せてもらえるのはう れしい。 ・ 他の方がしていること が見られてよかった。 ・ 勉強会の中で作成する 時間があってよかっ た。 ・ いろいろなアイデア を聞けて、取り入れ ることができた。 ・ この時間はツールを作ったり 考えたりに集中できた。 ・ 家でも宿題に取り組んだ。 ・ アイデアがたくさんあり、実 物がたくさん見られた。 ・ いろいろな人の経験を聞けた。 ・ いろいろな人と話せた。 ・ グループでの話合いがよかった。 ・ ゆっくりと学ぶことができた。 ・ ツールを改良してよくなった ことを聞けた。 ・ 他の人がどんなツールを作る のか気になった。 ・ 他の方の工夫がすごい。 ・ 他の方のアイデアやいいとこ ろを参考にできた。 ・ 困った時に相談できた。 支援ツール について ・ 作成の手順で進められるか不安。 ・ 支援の奥が深いと感 じた。 ・ 手順書を作ればよい というわけではない と知った。 ・ 子どもに合うものを 試したい。 ・ 考え方から教えても らえてわかりやすい。 ・ 他の方の真似をして 作ってみようと思う。 ・ 繰り返すうちに、改 良するところが見え てきた。 ・ 改良する点もあるが、 まず作って試せた。 ・ 手直しする部分が多 く、大変であった。 ・ 作って試して、作り 変えていけばいいと 思えた。 ・ ツールを作ると、子ど もに使いやすいかを具 体的に考えて試せた。 ・ パワーカードを試した。 ・ おにぎりレシピで一 人で作れた。 ・ ナ ン バ ー ぞ う き ん: いろいろな使い方が あるのを知った。 子 どもと試して練習中。 大 掃 除 の 時 に 試 し た。学校にも置いて もらった。子どもが 気に入って手伝って くれるようになった。 家ですぐに試せた。 ・ サポートシート:完 成させた。子どもに 意見を聞いた。学校 に持っていった。 改 めて子どものことを 考えた。 ・ ほとんどできることに使うと いうのは発見だった。 ・ 完璧でなく、作って試せるよ うになった。 ・ 子どもが成長したら試してみ たいツールがいくつもあった。 ・ いろいろなツールに触れて学 ぶことができた。 ・ 他の方のツールをいろいろと 見ることができた。 ・ これまで試したものを改めて 見直すきっかけになった。 ・ ツールを作成するときに、表 現の仕方や伝え方などのアイ デアをいただき参考となった。

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表7 保護者が作成し試みた支援ツール 子ども の年齢 1から3回目 4から6回目 7から9回目 まとめシート ワークシートを使って 考えた支援ツールは? 作って試そうとしている支援ツールは? 作って試した支援ツールは? まとめシートに記載した支援ツール 幼児 ・自分でトイレに行く ・朝の着替え ・朝の支度 ▽ 「来 て 」の コ ミ ュ ニ ケーション ・ご飯のときの姿勢 ・楽しく歯磨き ・トイレ後の身だしなみ ・歯磨き ・持ち物チェック ▽園での挨拶 ・お風呂で身体洗い ▽気持ちのよい挨拶 ・歯磨き ・朝の支度 ・帰宅後の片づけ ○おもちゃの一覧 ・トイレの中の手がかり ・パジャマの片づけ ○おにぎり手順 ○チャレンジノート ・歯磨きできるかな ・歯磨き習慣 ○お手伝いの選択 ○おにぎり手順 ・課題スケジュール ◇ サポートシート(学校 入学用) 小1∼ 小3 ・登校までの朝の準備○水やり ・歯磨き ・トイレの使い方 ・次の日の時間割確認 ・ふで箱の管理 ・ ふで箱の中身をそろ える ・朝の歯磨きと洗顔 ▽ なぞなぞ、だじゃれ をノートに書きためる ○パソコンを使う時間 ・学校の用意 ・持ち物チェック ○布団敷き(手伝い) ・ランドセルの片づけ ・ ハンカチ、ティッシュ の管理 ・朝の支度 ・帰宅後のスケジュール ・学童への準備 ・歯磨き ○お手伝いの選択 ・物の片づけ ・朝の支度 ・学校の準備 ○パソコンを離れてみる ・家でのスケジュール ▽HELPカード ・朝の運動 ▽テレビ順番 ○おもちゃの一覧 ・パワーカード ○がんばり表  (記録ツール) ◇サポートシート ・ 歯磨き手順とごほう びシール ・朝の支度 ○パソコン離れてみよう ○パソコン休憩しよう ・帰宅後の片づけ記録表 ○なわとび記録表 ○ランニング記録表 ・ 水分の飲む量コント ロール ▽HELPカード ◇ サポートシート(ファ ミリーサポート用) 小4∼ 小6 ・トイレの仕方・歯磨き ○洗面所洗い(手伝い) ・朝の着替えと服選び ・脱いだ服の片づけ ・登校までの朝の手順 ▽食事の挨拶 ▽学校からの伝言 ・トイレの仕方 ・歯磨き ・頭の洗い方 ○運動習慣 ○フープとびなわ ・歯磨き ・身体の洗い方 ・頭の洗い方 ・朝の着替え ・脱いだ物の片づけ ・帰宅後のスケジュール ▽大好き図鑑 ○ お手伝いカードと丸 つけ表 ○おにぎり作り方 ・パワーカード ○ナンバーぞうきん ○チャレンジ日記  (記録ツール) ◇サポートシート・ブック ・ 歯磨き:歯ブラシを 使う ・歯磨き:きれいに磨く ・ 歯磨き:自分で取り 組む ○ チャレンジ日記(剣道 教室) ・トイレの使い方 ○手伝いでおこづかい ・ 宿題リスト・自分で 取り組む ▽大好き図鑑 ○食事後の食器の片付け ・髪のとき方 ○おにぎり作り ○ 運 動 習 慣: 体 操 メ ニュー 中学生 以上 ▽手助けを頼むこと○ストレッチ体操 ・歯磨き▽周りの人への挨拶 ・歯磨き・ひげそり ○ストレッチビデオ ・パワーカード ○ナンバーぞうきん ○チャレンジ日記 ○ お手伝いとチャレン ジ日記 ・歯磨き ・;日課や生活技能 ○;手伝い、余暇、運動 ▽;コミュニケーション ◇;ディサービス・学校等

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象者に後日配布した(武藏他,2018)。日課ス ケジュールに関する支援ツールとして、朝の支 度、学校の準備、帰宅後のスケジュール等が取 り上げられた。日常生活技能に関する支援ツー ルとして、朝の着替え、歯磨き、洗顔、トイ レ、風呂での身体や頭洗い、身だしなみ、持ち 物管理等が取り上げられた。勉強会の最初から 全体を通じて多く取り上げられた。とくに、朝 や帰宅後の日課の管理、歯磨きは、保護者の方 の関心が高かった。水分摂取量のコントロール やトイレの細かな使い方、歯磨きの細かな手順 等の生活自立に関わる内容もあった。  手伝いに関する支援ツールとして、水やり、 洗面所洗い、布団敷き、食後の片付け、手伝い の選択、手伝いとおこづかい等が取り上げられ た。余暇や運動に関する支援ツールとして、お もちゃの片付け、パソコンの使用、運動習慣、 フープとびなわ・なわとび、体操、ストレッチ、 ランニング等が取り上げられた。先輩母の支援 ツールの紹介や作成体験が進んだ、勉強会の後 半になるほど、様々な取り組みが見られ、チャ レンジ日記等の記録ツールと組み合わせて試み られていた。  コミュニケーションに関する支援ツールとし て、挨拶、伝言、順番、HELP(援助要求)等の コミュニケーションを直接に補助する手段や、 だじゃれを書き留める、大好き図鑑等の対人関 係に関わる手がかり等が取り上げられた。勉強 会の講話や作成体験では直接に扱わなかった が、支援ツールの実物や先輩母の支援ツール紹 介等からの影響を受けたと思われる。  家庭外のディサービス・学校等への支援ツー ルとしては、支援ツール作成体験の最後で取り 上げたサポートシートが、早速に作成された。 支援者への説明や共通理解に役立てられること を期待したい。 4.考察  支援ツールシステムによる支援(図1)は、 生活の中で支援を具体的な形として実現する という利点を持っている(武藏,2013)。これ までの支援ツール教室(武藏,2004;2007;武藏 他,2012)でも、講話、ワークシート等を通じ て、支援の考え方と方法を研修していた。今回 の実践では、経験談の提示や作成体験の充実を 図り、保護者同士の交流と発表を充分に取り入 れることで、保護者がより主体的に参加し、自 ら子どもへの支援に取り組むことができた。  今回の勉強会では、保護者が家庭で子どもへ 行う支援の目標として、子どもの強みを伸ばす こと、保護者の支援力を高めることに焦点を当 てた。その点を保護者に理解してもらうため に、支援についての講話では子どもの前向き生 活を強調した。保護者同士の交流として「子ど も自慢をしよう」や「アイデアを出し合おう」「み んなで交流」等を繰り返して行い、子どもの強 みに注目するように促した。保護者が支援ツー ルづくりをする際にも、前向きな支援の実例や つまずきをこえる工夫、効果を広げる取組等を 紹介するように努めた。  支援ツールシステムによる支援は4種の支援 ツールを組み合わせて、子どもへの支援を実現 することである。そのポイントは、子どもの理 解の程度と課題の難度に応じて、子どもがわ かって自ら取り組める支援を形にするところに ある。そのために、理論や技法の講話よりも、 支援ツールの実物を使った説明、すでに支援に 取り組んでいる方の経験談の提示、すぐに取り 組める支援ツールの作成体験を繰り返して行っ た。  実物を使った説明、経験談の提示では、より 多様なニーズに応じ、より多様な支援の在り方 を示すことができた。参加した保護者の子ども の年齢や特性は、違いが大きく、家庭生活の中 での支援の目標も方法も様々であった。講話等 でカバーするには限界があった。実際に使われ ている支援ツールを見て触れ、経験談を聞くこ とにより、自分の子どもへの支援をイメージし て具体化することができた。参加者アンケート の記述でも、経験談を聞けたこと、実物や実例 があったことが評価された。  支援ツールの作成体験では、研修として作成 を体験するだけでなく、保護者みんなで支援を 実行して交流する機会となった。今回の勉強会

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では、4つの支援ツールのそれぞれについて作 成体験を行うように進めた。1回の教室である 程度の形にして持ち帰れる、家庭で子どもに合 わせて行えるパッケージとして提供した。次の 回では、家庭で試したことを保護者同士で交流 した。同じ支援ツールにも、さまざまなものや アイデアがあることを実感する機会となった。 参加者アンケートの記述でも、作成体験でした ことを、家庭で子どもと行ったという報告が多 数あった。  また、グループに分かれての交流・発表、振 り返りの時間を、支援ツールづくりの後に必ず 設けるようにした。作成途中の支援ツールや家 庭で試した経過を報告し合った。始めのうち は、互いの報告を聞き合う様子であったが、後 半になると、つまずきや改良点についてアイデ アを出し合ったり、互いにアドバイスし合った り、子どもへの試みを認め合ったりする様子が 見られるようになった。支援の具体的な仕方や 工夫について協同した取組が見られた。全体を 通じてのアンケートの評価や記述に表れてい る。  今回の勉強会で、保護者同士で支援力を高め 合う協同の場を作り出すことができる可能性が 示された。保護者同士の交流・発表があること、 子どもへの支援を具体化して試すこと、その経 過や改良までを含むことが大切である。今後も こうした試みを検討していきたい。 付記  本研究は、個人情報および倫理面に配慮し 行った。また、発表と掲載については、岡山県 自閉症児を育てる会及び勉強会の参加者の同意 を得た。 文献 藤坂龍司・井上雅彦(2012)自閉症早期家庭療育のた めの集団親指導プログラム.行動療 法研究,38, 1,57-70. 藤原義博・武藏博文監修、香川大学教育学部附属特 別支援学校編著(2016)特別支援教育のための分 かって動けて学び合う授業デザイン.ジアーズ教 育新社. 原口英之・上野茜・丹治敬之・野呂文行(2013)我が 国における発達障害のある子どもの親に対するペ アレントトレーニングの現状と課題―効果評価の 観点から―.行動分析学研究,27,2,104-127. 神山努(2018)自閉スペクトラム症に対するペアレン ト・トレーニングの研究動向―家庭生活中心型の モデルと階層的支援の視点から―.LD 研究,27, 3,365-372. 神山努・澤田智子・岸明宏(2016)通級指導を利用す る発達障害児の保護者に対するペアレント・トレー ニング―全5回のプログラムの効果―.LD 研究, 25,4,476-488. 水内豊和・阿部美穂子(2012)教育相談センターが実 施する「気になる子」の保護者に対する ペアレン ト・トレーニングのあり方と効果.LD 研究,21, 2,270-284. 武蔵博文(2004)積極的行動支援モデルによる障害児 の親支援教室の試み.富山大学教育学部紀要,58, 93-108. 武蔵博文(2007)発達障害児の親を対象とした「支援 ツール教室」の試み―支援ツールによる支援及びそ の研修の在り方の検討.福祉心理学研究,4,1, 74-82. 武藏博文(2013)自立へ向けた支援ツールの活用(特 集 自閉症治療・療育の最前線).そだちの科学, 21,58-62. 武藏博文・惠羅修吉・西田智子・小方朋子・坂井 聡・ 山内雅子・滝澤 健・榎並 浩・丸橋順子・妹尾 恭子・吉川順子(2014)知的障害特別支援学校にお ける主体的な社会参加をめざした「授業づくり」の 方法についての提案.香川大学教育実践総合研究, 28,105-116. 武藏博文編、岡山県自閉症児を育てる会著(2012)支 援ツールでチャレンジしよう 支援ツール集2009-11. 武藏博文編、岡山県自閉症児を育てる会著(2018)支 援ツール集2017. 西川公司監修、筑波大学付属久里浜特別支援学校編 著(2010)明日から使える自閉症教育のポイント. ジアース教育新社. 岡村章司(2015)特別支援学校における自閉症児に対

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する保護者支援―母親の主体性を促す支援方略の 検討―.特殊教育学研究,53,1,35-45. 上野茜・高浜浩二・野呂文行(2012)発達障害児の親 に対する相互ビデオフィードバックを用いたペア レントトレーニングの検討.特殊教育学研究,50, 3,289-304.

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