香川生物(Kagawa Seibutsu)(15り16)23N25,1989・
徳島県・剣山のウサギコウモリと滋賀県・比叡山の
トウヨウヒナコウモリについて
森 井 隆 三
〒760 高松市西宝町2−4−18 香川県教育センター
Observation of a Colony and a Note of Measurements of
Plecotus auTitus from Mt。Tsur・ugi,Tokushima Prefecture and New Co11ectingRecord ofl々5peT・tiTio oT・ientalis from
Mtり Hiei,Shiga Prefectur・e,Japan Ry融古MoⅢⅠ,瓜軍α∽α朗びCα孟わ花αgG邪亡ち2・凄−Jβ助iん前砺 7bゐαmαとぷ比 四国におけるウサギコウモリ.円eco亡び8 α昆r・払購 の採集としては,愛媛県の石鎚山(Abe et al, 1970)および徳島県の剣山(阿部はか,1971)で の記録がある。・仙方その採集記録の多くは,1 ・、ノ教頭で,集団の記録としては横山(1985)の 報告だけである。 今回,徳島県の剣山でウサギコウモリ15頭( 雄2頭,雌13頭)が捕獲され,外部形態を計測 すること.ができたので ,今後の資料のために報 告する。また,トウヨウヒナコウモリVe5perとigわ orze花とαgよsについては,滋賀県の比叡山で採集さ れたので,新しい産地として報告する。外部形 態はものさしで01mmまで,体重は上皿天秤で 01gまでそれぞれ計測した。 ウサギコウモリは,1988年9月18日に徳島県 の剣山(1,955m)の標高約1,800m付近にあ る不動窟に棲息していた。この洞窟のすぐそば には沢があり,まわりはシコクシラベAわieβ sゐよゐ0ゐよα乃αを主にした雑木林である。洞窟の奥 行きは約10m,高さは約15mで幅は約1mくら いである。洞窟の中には水が流れている。ウサ ギコウモリがコロニーをつくっていたのは,入 口から4′−5m入った高さ約10mの岩の突き出 たところである。コロニーは19頭からなってい た。このコロニーを見たのは午前9時ごろであ る。昆虫網で下からすくったが,なかなかコロ ニーをとこうとはしなかった。その朝の最低気 制,Jqpα花 温は,山頂で約7℃であった。気温がかなり低 下していたことから考えると,冬眠状態に入っ ていたのかもしれない。 この場所では,1965年に阿部によって1頭, 1967年8月5日に木内,吉田によって5頭のウ サギコウモリが採集されている(阿部,1971)。 今回の捕獲は四国では約20年ぶりの記録である。 四国ではこのほかに,1969年に愛媛県の石鎚山 (1,981dl)の山楚(1,600m)で,前田によっ てカスミ網で1頭採集されている(Abe et al, 1970)。四国を含んだ過去の採集例では,洞窟 (阿部,1971;鈴木他,1975;横山,1985), 随道(赤羽,1958;佐野−・上馬,1981;前田他, 1985)およびカスミ網(Abe et al,1970)があ る。ウサギコウモリは山地の森林に棲息すると いわれている(今泉,1978)。しかし,採集場 所としては,今回も洞窟であったし,過去にも 洞窟や隠退が多い。これは,たまたま洞窟や随 道にウサギコウモリが迷いこんでいたのが採集 されたのではないだろうか。今泉(1970)は, 洞窟で越冬することが多いとしている。このこ とから考えると,今回の洞窟での発見は,冬眠 のためにコロニーをつくっていた可能性もある。 このようにウサギコウモリが冬眠のためにコロ ニーをつくっていた記録は今までにはない。 一方,標高についてみると,300m′㌦1,000 m(佐野”上馬,1981),1,6.00m(Abe et al, −23−
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1970),1,800m(阿部,1971)で採集されさてい る。今泉(1970)によると,富士山では,2,400 mの森林限界までかなり多数棲息している。ウ サギコウモリはこのように,かなり標高の高い 場所に棲息しているようである。姿が見られな いので種は分からないが,ウサギコウモリと思 われるものが剣山の頂上(1,955m)でも,19
86年8月8日,8月30日,1987年9月14日,19
88年9月18日にかなりの個体が鳴きながら採食 しているのが観察ざれた。 今回のコロニーは19頭からなっていたが,今 までの最大のものは,約30頭の繁殖集団である (横山,1985)。日本での採集記録を見ると, 九州を除く各地で,1′、3頭が洞窟や随道で確 認されている(前田,1984)。今泉(1970)は, ウサギコウモリは大群をなすことはまれで,1 頭ないし数頭の小さなコロニーですむようであ るとしている。この点から見ると.,今回の19頭 からなるコロニー・は珍しいものといえる。1986 年8月8日にもこの洞窟で調査を試みたが,そ の時にはウサギコウモリは観察されなかった。 ウサギコウモリの外部形態の計測値を表1に 示しておく。 −・方,トウヨウヒナコウモリは,1988年7月 26日に香川県漆芸研究所の青木健一・氏が比叡山 で拾った。拾得したのは,滋賀県比叡山の延暦 寺(標高約848m,大津市坂本町)の根本中堂 の近くの階段に落ちていたものである,周囲は杉 の巨木(直径約1m)の林で,杉の木の高さ12 ∼3mのところには,直径5′、6cmの穴が5〃、− 6個あったという。拾得したのは,その杉の木 の夷下で,5′、−6個休のトウヨウヒナコウモリが 落ちていた。朝の7時30分ころ見付けたが,ア リがたかっており,そのうちの比較的完全な個体2個体(雄1頭,雌1頭)が拾われた。前田
(1984)によると,現在までにトウヨウヒナコ ウモリが滋賀県比叡山で採集された記録はない。 トウヨウヒナコウモリの外部形態の計測値を 表1に示しておく。 謝 辞 この調査をするにあたって,終始ご指導いた だき,さらに原稿の検閲をいただいた香川大学 教育学部生物学教室の金子之史教授,および資 料を提供いただいた青木健一・氏,捕獲に協力い ただいた佐古一博氏,渡辺忠俊氏に感謝いたし ます。 表1 剣山(徳島県)のウサギコウモリPgeeo£uぶααr£亡αざ(P岬a)および比叡山(滋賀県) のトウヨウヒナコウモリl々5pr・亡fgわor・孟e花とαg孟s(Ⅴ・0)の体重(軌外部形態の計測値伽め. 種名 標本番弓 性 体重 頭胴長 前腕長 尾 長 耳介長 耳珠長 後足長 脛骨長 000 ・ ・ 一 7 1 6 5 3 5 7 7 4 8 9 9 5 8 8 4 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 1 6 1 8 0 9 0 0 9 1 8 5 1 1 2 9 2 0 9 2 5 0 4 9 3 2 9 0 1 3 8 2 1 0 5 4 5 5 5 5 4 5 5 4 5 5 5 4 5 5 4 3 1 0 8 0 1 3 6 8 8 8 0 9 1 2 0 0 8 1 2 1 1 2 0 1 2 1 0 0 1 2 1 1 6 3 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 7 0 5 5 5 9 8 1 0 0 0 1 1 0 5 1 1 6 9 7 0 2 9 2 8 3 3 9 0 2 8 4 7 6 4 4 4 5 5 4 5 4 5 5 4 5 5 4 4 5 5 4 4 9 8 1 2 3 2 9 4 7 4 4 1 8 5 8 6 7 6 7 7 7 7 7 6 7 6 8 7 7 6 2 2 11︿○ ︿0 0† OT O十 ○† ○† OT O十 ○† ○十 ○十 ○十 OT O† ︵00†
7 0 8 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 5 6 2 3 2 2 3 3 3 3 3 3 3 3 3 4 4 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 M M M M M M M M M M M M M M M M M a a a a a a a a a a a a a a a O O P P P P P P P p▲ P P P P P P P P P 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 1 1 1 8 7 9 8 8 8 7 9 8 7 0 0 8 9 9 7 8 1 1 9 0 1 0 1 0 8 0 0 9 9 1 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 1 0 1 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 9 0 1 8 0 1 1 8 4 0 0 6 0 0 0 2 6 9 0 5 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1ユ 1 0 0 0 0 1 1 1 1 0 0 0 1 0 0 0 6 8 8 7 8 8 8 0 1 1 5 2 8 2 2 6 2 5 0 24
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文 献