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いわゆる「連れ子」と特別養子縁組

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Academic year: 2021

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(1)

愛知工業大学研究報告 第27号A 平成4年

論 文

い わ ゆ る 「 連 れ 子 」 と 特 別 養 子 繰 組

Adoption o

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星雲量 二 三 良

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In 1989

new adoption of chi Idren came into effect. The purpose of the present study is to examine annotation on adoption of chi Idren by step-parent

- 10

(2)

自寸 L.

愛知工業大学研究報告,第

27

A.

平成

4

年,

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はじめに 特別養子制度の制定から約三年が経過した。平成二年までの申立件数 ( 1 ﹀ も五、四八七件と報告され、判例集に報告された審判例も二六件にのぼ ( 2 ) る。詳細は他の研究にゆずるとして、ここではその特徴を要約しよう。 ①当初は、申立件数が多かったが年とともにその件数が減少してきたご ( 3 ﹀ と、②認容例は、約半数の審判例が何らかの斡旋機関の関与を受けてい るのに対し、否定例はほとんどの審判例が斡旋機関の関与を受けていな へ AHd いごと、②いわゆる﹁連れ子﹂養子は、ほとんど認められないこと(詳 細は後述)、③普通養子縁組から特別養子縁組への転換事例は、約半数 ( 5 ) ( 6 ) が認められていること、④取下げ等の件数は急激に減少していることな ど を 、 あげることができる。 ところが、最新の審判例は、公表された審判例として初めて﹁連れ子﹂ の特別養子縁組を認めた。 この審判例は、従来の審判例の流れの中でど のように位置づけることができるのだろうか。この審判例を手がかりと し て ﹁連れ子﹂の養子縁組を考えてみたい。 一 九 九

O

年 。 つぎのものがある。 1 司法統計年報一九八八年、一九八九年、 小稿にとりあげた審判例以外に、 1 2 横浜家審昭和六三年三月一一日家月四

O

巻七号一八一頁︿認容﹀、 [ 2 ] 広島家審昭和六三年三月一二日家月四

O

巻七号一九二頁 [ 3 ] 札幌家審昭和六三年三月一八日家月四

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巻七 ︿ 否 定 ﹀ 、

1

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号一八五頁︿認容﹀、 ︹ 4 ] 奈良家宇陀支審昭和六三年三月

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五日家月四

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巻七号一八八頁︿否定﹀、 [ 5 ︺名古屋家審昭和 六三年四月一五日家月四

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巻八号九七頁︿認容﹀、 { 6 ] 横浜 家審昭和六三年四月一五日家月四

O

巻八号九四頁︿認容﹀、 [ 7 ] 京都家審昭和六三年六月九日家月四

O

巻一二号三九頁 ︹ 8 ] 京都家審昭和六三年六月二八日家月四

O

巻 一 二号四回頁︿認容﹀、 [ 9 ] 東京家八王子支審昭和六三年八月 一二日家月四一巻三号一七七頁︿認容﹀、 ︿ 認 容 ﹀ 、 {叩︺大阪高決昭和 六 三 年 一

O

月二七日家月四一巻三号一六四頁︿否定﹀、 大阪高決昭和六三年一一月一

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臼家月四一巻三号一七二頁︿否 定﹀、[ロ]大阪高決昭和六三年一一月一八日家月四一巻三号

1

1

一七四頁︿否定﹀、 [日}名古屋高決昭和六三年一二月九日家 月四一巻一号二二頁︿否定﹀、[日︺高松高決平成元年二月 二

O

日判タ六九九号二三五頁︿否定﹀、 (日︺名古屋高決平成 元年三月二三日家月四一巻一二号一一二頁(否定﹀、

[ m ]

東 京高決平成元年三月二七日家月四一巻九号一一

O

頁 ︿ 否 定 ﹀ 、 [汀]仙台高秋田支決平成元年五月二四日家月四一巻一一号八 六頁︿認容﹀、 [日]名古屋家審平成元年八月二三日家月四 巻五号九二頁︿否定﹀、 臼家月四二巻二号一八

O

頁 ︿ 認 容 ﹀ {悶]名古屋高決平成元年一

O

月一七 [出︺東京家審平成元年 一

O

月二四日家月四二巻七号四七頁︿認容﹀、 山支審平成元年一

O

月二六日家月四二巻七号五二頁︿認容﹀、 {担︺徳島家審平成元年一一月一七日家月四二巻五号九四頁 [れ︺山口家徳

(3)

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いわゆる「連れ子」と特別養子縁者

E

︿ 否 定 ﹀ 、

(

6

)

一九八八年の既済件数は一七四七件、そのうち取下げ等は八 六二件(四九・三パーセント)を占めた。一九八九年の既済件 数 は て 九

O

四件、そのうち取下げ等は五六

O

件(二九・四パ ーセント)、一九九

O

年 の 既 済 件 数 は て 二 二 五 件 、 そ の う ち

(

3

)

[お]東京高決平成二年一月三

O

日家月四二巻六号 四七頁︿否定﹀、

[

M

]

東京家八王子支審平成二年二月二八日 家月四二巻八号七七頁︿否定﹀、{お]大阪高決平成二年四月 九日家月四二巻一

O

号五七頁︿否定﹀。 司法統計年報によると、特別養子制度が発足した一九八八年 (昭和六三年)から一九九

O

年(平成二年)までの申立件数は、 全国の家庭裁判所で、一九八八年(昭和六三年)に三、二

O

一 ︽ づ ﹃ ︼ 宮崎家裁平成二年一一月三

O

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審判 取下げ等は三

O

五件(二六・八パーセント) で あ っ た 。 ( 4 ) 一九八九年(平成元年)にて-二八七件、一九九

O

年(平 成二年)に九九九件、合計五、四八七件と報告されている。 一九八八年から一九九

O

年までの既済件数は、全部で四、七 まず最初に、宮崎家裁の審判例を紹介しよう。 ︹ 事 案 ] 件 1 八六件であるが、 A 男(養子となる者・昭和五八年生)の母別女は、昭 和五七年之ろ、 B 男との聞に性的関係を持った結果、昭和五八年一 月九日 A 男を出産した。その後 A 男は未認知の非嫡出子として削女 に育てられていたが、昭和六三年一月四日、 A 男を連れて昭男と婚 姻し同居した。 X 夫婦(養親となる者)は婚姻した直後の昭和六三 年一月一八日に、宮崎家裁に対し、

A

男を特別養子とすることを求 める審判の申立てをしたが、当時は、申立入らの夫婦生活の実績も

X

夫婦の聞に子が出生する - 2一 そのうち認容された件数が二、六七八件(五 六 ・

O

パーセント)、却下されたものが三八一件(八・

O

パー セント)、取下げ等が一、七二七件(三六・

O

パーセント)で あった。認容件数の内訳は、児童相談所等の斡旋機関の関与の あ る も の が て

O

二八件(三八・四パーセント)、関与のない ものが一、六五

O

件(六一・六パーセント)であった。もっと 少なかったうえに、昭和六三年秋には、 も、児童相談所などの斡旋を受けて普通養子縁組をした者が特 別養子縁組をするときに児童相談所を経由していないときには 斡旋機関の関与なしの方に含まれているとのことである。とれ ことが予定されていたことなどから、 一定期間後に再度特別養子縁 組の審判を申し立てる予定のもとに、同年六月二回目、右審判の申 A 男を一日でも早く X 夫婦の戸籍に入 立てを取り下げるとともに、 に対して、否定された件数のうち、児童相談所等の斡旋を受け たものはわずか一件にすぎない(司法統計年報一九八八年、 籍したいという気持ちから、同年八月四日、 A 男を普通養子とする 縁組をした。そして、昭和六三年八月九日に、 X 夫婦聞に C 男が誕 九八九年、 生 し た が 、 一 九 九

O

年 ) 。 X 夫 婦 は 、 A 男と C 男とをいずれも実子として分け隔で なく養育し、今回、当初に企画したとおり、特別養子縁組の審判を ( 5 ) 普通養子縁組から特別養子縁組への転換を申し立てた件数は、 全 部 で て 二 九 二 件 で あ っ た が 、 そのうち認容件数が六七三件 再度申し立てた。 (五二・一パーセント)、却下件数が一一二件(八・七パーセ ント)、取下げ等が五

O

七件であった(商法統計年報一九八八 間男は、地方公務員をしており、収入面で A 男を 養育することに問題はなく、現在、主婦専業の川女とともに、 A 男 および C 男を順調に養育し、 A 男は心身ともに健康な状況にある。 年 一 一 九

O

年 ) 。 他 方 、 A 男の出生直後にいわゆる B 男は、妻子を有する者であり、 一 一 八 九 年 、

(4)

愛知]工業大学耐究報告.第27号A,平成4,年.¥01.27-ふトlar.19D2 108 手切金を別女に交付して、 A男に関して今後一切の関わりを持たな いことを誓約させており、これまで、ロ女に A 男 と 会 い た い 旨 の 電 話 が 数 回 か か っ て き た こ と が あ る が 、 そ れ 以 外 に 川 女 お よ び A 男と の接触はまったくない。 認容﹁ A 男 は 、 X 夫婦のもとで順調に養育されており、 X 夫婦と A 男 の 聞 に 特 別 養 子 縁 組 を 成 立 さ せ る に つ い て 、 両 者 間 の 適合性には問題がないと考えられる。しかし、本件では、 A 男 、 が 川 [ 審 判 女 の い わ ゆ る 連 れ 子 で あ り 、 既 に X 夫 婦 と の 簡 に 普 通 養 子 縁 組 を し ている点で、民法八一七条の七が規定する特別養子縁組を成立させ るべき要保護性の要件を満たすかどうかが問題となる。 A 男 は 、 当 初から実母の別女に養育されているのであるから、 A 男が同条の ﹃その他特別の事情がある場合﹄との要件に該当するかどうかがも っぱら問題となるが、右要件は、特別養子縁組の制度の趣旨からす る と 、 縁 組 を 成 立 さ せ る こ と に よ っ て 養 子 と な る べ き 者 に 養 親 の 嫡 出 子 た る 身 分 を 取 得 さ せ る の み な ら ず 、 実 親 と の 親 子 関 係 を 断 絶 さ せることが子の利益に合致するかどうかを基準として判断すべきで いわゆる連れ子を養子とする場合におい て、養子となる者が非嫡出子であり、しかも未認知である場合には、 特 別 養 子 縁 組 に よ っ て 当 該 子 に 嫡 出 子 た る 身 分 を 取 得 さ せ 、 生 理 上 あると解せられるところ、 の父との未然的な法的関係を終局的に断絶させて身分関係の安定を はかることは、子の利益を向上させることが明らかであるというべ き で あ る か ら 、 上 記 特 別 の 事 情 が あ る 場 合 に 当 た る と 解 す る の が 相 も っ と も 、 本 件 の 場 合 に は 、 X 夫 婦 は 、 当 初 の 特 別 養 子 当である。 縁 組 申 立 を 取 り 下 げ た 後 A 男 と 普 通 養 子 縁 組 を し て お り A 男は既に に X 夫婦の嫡出子の身分を取得している、が、ごれは前記認定の経緯 X 夫婦の本来の意 による過渡的な措置としてされたものであって、 図はあくまでも A 男 を 特 別 養 子 と す る こ と に あ る か ら 、 本 件 に お い 2 は 普 通 養 子 縁 組 が な さ れ て い て も な お 上 記 特 別 の 事 情 の 存 在 を 肯 定するのが相当である﹂。 み ぎ 審 判 は 、 公 表 さ れ た 審 判 例 の な か で 、 い わ ゆ る ﹁ 連 れ 子 ﹂ に また、特別養子制度制定 特別養子縁組を認めたはじめての審判である。 後に、普通養子縁組を行ない、 ( 9 ) 表例でもある。 そ の 後 特 別 養 子 縁 組 に 転 換 し た 最 初 の 公 本審判は、 ﹁その他特別の事情がある場合﹂ の 土 安 (民八一七条の七) ﹁特別用縁組の制度の趣旨からすると‘縁組を成立させることに よ っ て 養 子 と な る べ き 者 に 養 親 の 嫡 出 子 た る 身 分 を 取 得 さ せ る の み な ら 件 は 、 ず 、 実 親 と の 親 子 関 係 を 断 絶 さ せ る こ と が 子 の 利 益 に 合 致 す る か ど う か ( 8 ) を 基 準 と し て 判 断 す べ き で あ る ﹂ と 説 明 し 、 具 体 的 に 、 ① 未 認 知 の 非 嫡 出 子 を 嫡 出 子 に す る こ と 、 ② 未 認 知 の 父 親 と 親 子 関 係 の 断 絶 を す る こ と に よ り 生 理 上 の 父 と の 法 的 関 係 を 終 局 的 に 断 絶 さ せ て 身 分 関 係 の 安 定 を はかること、 というこ点を理由として、 みぎに述べた﹁その他特別の事 情がある﹂と判断した。 ( 7 家月四三巻一

O

号 三 五 百 一 。 8 前 掲 注 ( 7 ) 三 七 頁 。 ( 9 ) 普 通 養 子 縁 組 か ら 特 別 養 子 縁 組 へ の 転 換 に つ い て も 、 重 要 な 問題であるが、今回は紙面の都合上割愛する。 従 来 の 審 判 例 の 検 討 1 民法八一七条の三第二項は ﹁夫婦の一方は、他の一方が養親と ならないときは、養親となることができない。 ただし、夫婦の夫婦の一 方 が 他 の 一 方 の 嫡 出 で あ る 子 ( 特 別 養 子 縁 組 以 外 の 縁 組 に よ る 養 子 を 除 く の養親となる場合は ﹂の限りでない﹂と規定し、連れ子を特別 養子にすることを認めている。 その実態はどうなっているのであ で は 、

(5)

107 ろうか。統計、公表された審判例等を参考に、以下に検討しよう。 ま ず 、 従 来 の ﹁ 連 れ 子 ﹂ の 特 別 養 子 縁 組 に 関 す る 統 計 を 紹 介 し ょ は、昭和六三年四月から保育園の年長組に入り、健康で、 X 男によ く な つ い て い る 。 実 母 B 女 ・ 実 父 C 男 は 、 X 男と A 女 と の 特 別 養 子 2 う 縁組に同意している。 いわゆる﹁連れ子﹂を特別養子にする審判例は、 九 一 年 ま で に 処 理 さ れ た 件 数 が 、 七 二 八 件 ( 一 九 八 九 年 l 三九

O

件 、 [ 審 判 一九八九年から一九 却 下 ﹁ 以 上 の 事 実 に よ れ ば 、 ① A 女は X 男 の 妻 B 女の 嫡山山子たる実子(連れ子)であること、② X 男はすでに A 女 と 普 通 養 子 縁 組 を し て い る こ と 、 ③ A 女の母は、 X 男の妻として、 X 男 一 家の家事育児等に従事していること:::が認められる。従って、 X 男 の 妻 で あ る A 女 の 母 は 特 別 養 子 縁 組 の の ち 引 続 き 特 別 養 子 と な る 子 を 監 護 す べ き こ と に な る か ら 、 民 法 八 一 七 条 の 七 に 定 め る ﹃ 父 母 九九

O

年│一二二件、 一九九一年 l 一二六件) であったが、認容件数は わずか五七件(全体の七・八パーセント・一九八九年│二二件、

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年 l 二 四 件 、 一九九一年 l 一件)にすぎない。却下件数は二一二件 いわゆる「連れ子」と特別養子縁組 ご 四 ・ 八 パ ー セ ン ト ・ 一 九 八 九 年 l 四 五 件 、 であり、認容件数の約二倍にあたる。 もっとも多か に よ る 養 子 と な る 者 の 監 護 が 著 し く 困 難 又 は 不 適 当 で あ る ﹄ 場 合 に 一九九

O

年│三五件、 九九一年i二八件) ったのは取下げ等で五六三件(七七回四パーセント・一九八九年!三一一 一九九

O

年 l 一五三件、一九九一年 l 八 七 件 ) を 占 め る 。 取 下 げ あたるとはいえない。 事情を考慮すると、 そ し て 上 記 事 実 に 本 件 記 録 に 現 わ れ た 一 切 の 民 法 八 一 七 条 の 七 に 定 め る 特 別 の 事 情 が あ る と 件 等 が 多 い の は 、 家 庭 裁 判 所 等 の 説 明 に よ っ て ﹁ 連 れ 子 ﹂ を 特 別 養 子 に す る こ と が 認 め ら れ に く い こ と を 知 っ て 取 り 下 げ ら れ る こ と が 多 い の で あ は認め難い。﹂ - 4一 ︹ 事 例 二 ︺ 大阪高裁昭和六三年一一月一

O

日 決 定 ( 家 月 四 一 巻 ろう。このように、連れ子の特別養子縁組は、 認 容 例 が 少 な い の が 実 情 三号一七二頁) で あ る 。 事 案 A 女 ( 養 子 と な る 者 ・ 昭 和 五 六 年 生 ) の 父 B 男 と 母 C 女は昭和五四年一

O

月 二 三 日 に 婚 姻 し た が 、 同 年 一 二 月 頃 に は 別 居 し 、 そ の 後 は 昭 和 五 五 年 二 一 月 に 一 度 再 会 し た の み で ま っ た く 接 触 3 従 来 、 い わ ゆ る ﹁ 連 れ 子 ﹂ を 特 別 養 子 に す る こ と を 申 し 立 て た 審 全 部 で 六 件 公 表 さ れ て い る が 、 す べ て 否 定 例 で あ る こ と に 注 目 すべきであろう。 和 日 は 、 がなかった。母 C 女 は 、 昭和五六年一

O

月一五日に A 女を出産した ︹ 事 例 一 ︺ 名 古 屋 家 裁 昭 和 六 三 年 四 月 一 五 日 審 判 ( 家 月 四

O

巻 も の の 、 A 女 を 乳 児 院 に 預 け 昭 和 五 八 年 四 月 か ら は C 女 の 両 親 に 養 八号九七頁) 育 し て も ら っ て お り 、 昭 和 五 九 年 七 月 二 四 日 に は C 女 か ら 協 議 離 婚 届出がなされた。この間、昭和五九年三月には、 C 女は X 男 ( 養 親 と な る 者 ) と 同 棲 を 開 始 し て お り 、 昭 和 六

O

年 二 月 七 日 に は X 男 ・ 事 案 A 女 ( 養 子 と な る 者 ・ 昭 和 五 七 年 生 ) の 実 母 B 女 は 、 A 女をもうけたが、不仲となり、昭和五九年、 実父 C 男と婚姻し、 A 女 の 親 権 者 を B 女と定めて協議離婚をした。 X男(養親となる者) C 女の婚姻届と X 男 @A 女の普通養子縁組届がなされた。 X 男 は 、 は 、 B 女と知り合い、同棲をはじめ、 A女も X 男と生活を共にする さらに A 女 と 特 別 養 子 縁 組 を し た い と し て 審 判 を 申 し 立 て た 。 父 B ようになった。 昭和六

O

年 六 月 、 X 男は B 女と婚姻をするとともに、 男は、離婚の経緯および再会等の事情から、 A 女 が 自 分 の 子 で あ る A 女 の 親 権 者

B

女の承諾を得て、 A 女と普通養子縁組をした。 A女 ことに疑問を持っているので、 A 女 に 対 す る 関 心 は 少 な く 、 本 件 特

(6)

愛知工業大学研究報告.第27号l¥,平成4年.Vol.27-A,ト'lar.1992 106 別養子を承諾している。 原審(大阪家裁昭和六三年九月一九日審判)は、 が認められるためには、養子となる者について、民法八一七条の七 に定める要保護状況があり、かつ実父母(本件の場合は実父)との 非嫡出子として出生し、実父 B 男に認知された。れ女は昭和六二年 八月三二日昭男と結婚し、同日ロ男は A 男と普通養子縁組をしたが、 今回さらに A 男との特別養子縁組をなすべく審判を申し立てた。実 父 B 男は、将来何かの借財を作るなどして A 男に迷惑が及ぶととな どを避けるため、本件特別養子縁組に同意している。 原審(大阪家裁昭和六三年九月二九日審判)は、﹁特別養子制度 は、要保護性の高い児童を実方の父母やその血族との親族関係を断 ﹁特別養子縁組 身分関係を絶つことが養子となる者の利益であることを要するので あるが、本件の場合は、前記認定事実によれば A 女は C 女及び X 男 の元にあって十分な養育監護を受けており、本件特別養子縁組が成 その保護状況が飛躍的に好転するものではない し、他方 A 女と B 男との身分関係の存続が、 A 女の養育監護に重大 な障害となるものでない﹂として、本件申立てを却下した。そこで、 絶させ養親のもとで適切な保護環境に委ねようとするものであり ﹃父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であるこ とその他特別の事情がある場合において子の利益のために特に必要 立することにより、 X 男から抗告した。 [ 決 定 ] があると認めるとき﹄(民法八一七条の七)に成立させることがで きるものであるととろ、 A 男にとって養父である昭男及び実母であ る別女の共同親権に服し、その監護の下にある現在の監護養育状態 が適切であることが明かである。また、実父である B 男が前記状態 を乱すような事情も認められず、同人との親子関係の終了を特に必 要とする特別の事情があるということはできない﹂として、本件申 立てを却下した。そこで、川女 -m M 男から抗告した。 [決定]棄却﹁特別養子縁組は﹃父母による養子となる者の監 護が著しく困難又は不適当であることその他の事情がある場合にお 棄却﹁特別養子縁組が認められるためには、養子とな る者について、民法八一七条の七に定める要保護状況があり、かつ 実父母(本件の場合には実父)との身分関係を絶つことが養子とな る者の利益であることを要するのであるが、本件の場合は i i A 女 は実母 C 女および養親

X

男のもとにあって十分な養育監護を受けて おり、本件特別養子縁組が成立することにより、 その保護状況が飛 躍的に好転するものではないし、他方 A 女と父 B 男との身分関係の 存 続 が 、 A 女の養育監護に重大な障害となるものでないことは明か で あ る 。 X 男は、:::特別養子縁組を成立させるととによる子の福 祉を詳細に主張する。しかしながら、本件においては:::八一七条 の七の﹃父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当で あることその他特別の事情がある場合﹄に該らないのであるから、 いて、この利益のため特に必要があるとき﹄に成立させることがで きるところ(民法八一七条の七)、

:

:

:

A

男は昭男と別女によって 健全に養育され適切に監護されていることが認められ、右法条に示 されたような事情は何ら発見できないし、また、 A 男と B 男との親 子関係を断絶し、戸籍上の特別措置をとらなげればならない事情も 認められない。昭男

-M

女 は 、 A 男を実子として今後一生涯共に生 活していくために特別養子縁組を成立させたいと主張するが、 m M 男 X男の右主張は採用に由ないところである。﹂ ︻ 事 例 三 ︺ 大阪高裁昭和六三年一一月一八日決定(家月四一巻 三号一七回頁) { 事 案 ︺ A 男(養子となる者・昭和六

O

年生)は、実母川女の は既に A 男を養子とし、慈んで養育し共に生活しているのであって、

(7)

105 いわゆる「連れ子」と特別養子縁組 本件の場合、 棄 却 ﹁ 民 法 八 一 七 条 の 三 第 二 項 但 書 に よ れ ば 、 本 件 の よ う に 夫 婦 の 一 方 が そ の 配 偶 者 の 嫡 出 子 で あ る 実 子 を 特 別 養 子 と す る こ と も 可 能 で あ る が 、 特 別 養 子 制 度 は も っ ぱ ら 子 の 利 益 を 図 る た め の も の で あ り 、 従 っ て こ の 利 益 の た め 特 に 必 要 で あ る と 認 め ら れ A 男 の 健 全 な 育 成 を 図 り 、 確 固 た る 親 子 関 係 を 形 成 す る に つ い て 普 通 養 子 で は 不 十 分 で あ る と の 事 情 は 認 め ら れ な い 。 ﹂ 名 古 屋 高 裁 昭 和 六 三 年 二 一 月 九 日 決 定 ( 家 月 四 一 巻 決 定 { 事 例 四 ︺ 一号一一二頁) 事 案 い わ ゆ る 要 保 護 性 の 存 す る と き に 問 縁 組 を 成 立 さ せ る べ き である。しかし、本件においては、 : : : A 男が B 女 及 、 ひ X 男 と 同 居 し て 養 育 さ れ 親 子 と も ど も 平 穏 な 生 活 を 送 っ て い る と 認 め ら れ 、 A A 男 ( 養 子 と な る 者 。 昭 和 六

0

年 四 月 生 ) の 母 B 女は 昭 和 五 九 年 五 月 C 男 と 婚 姻 し 、 そ の 聞 に 長 男 の A 男が出生したが、 昭 和 六

O

年 一

O

月 C 男 が 急 死 す る に 及 ん で そ れ ま で 同 居 し て い た C る と き 、 男の両親と別居し、 男 の 監 護 養 育 が 特 に 困 難 も し く は 不 適 当 な 状 況 に あ る と 認 め 難 い と A 男 を 連 れ て 叔 母 の 下 に 、 身 を を 寄 せ て い た が 、 昭和六二年六月、 ころである o ﹂ X 男 ( 養 親 と な る 者 ) と 婚 姻 を し 、 同 時 に A 男と 普通養子縁組をした。 門 事 例 五 ︺ 名 古 屋 家 裁 平 成 元 年 八 月 二 三 日 審 判 ( 家 月 四 二 巻 五 目 下 、 X 男 、 月 収 役 三

O

万円を得、 B 女 は 家 事 に 従 事 し て A 男 の 養 育 に 専 念 し て お り 、 夫 婦 中 も 円 満 で 平 穏 な 生 活をしている。なお、 B 女 は 現 在 妊 娠 中 で 、 昭 和 六 三 年 一 一 月 に 出 産が予定されている。そして、 A 男も健康に成長しており、 X 男に 号九二頁) [ 事 案 ] A 女 ( 養 子 と な る 者 ) は B 男 C 女 の 長 女 と し て 出 生 し B 男 C 女 の 聞 に は A 女のほか、 長 男 ( 昭 和 五

O

年 八 月 一 三 日 二男(昭和五二年二月二八日生)がある。 B 男 C 女 は 昭 和 五 九年一一月二四日調停離婚し、 C 女 が 親 権 者 と し て A 女 を 含 む 三 子 の B 男 は そ の 後 再 婚 し 、 そ の 聞 に 長 た が 、 - 6 なついている。 生 X 男 は 、 A 男 と 養 子 縁 組 の 届 出 を し た 際 、 市 役 所 で 昭和六三年から特別養子制度ができることを知り、 B 女 が 近 く 出 産 A 男 が 将 来 養育監護にあたることとなった。 予定のこともあって、 こ の 際 、 A 田力を自己の長男とし、 養 子 で あ る と と で 悩 む こ と の な い よ う に し た い こ と か ら 、 本 件 特 別 な お 、 同 人 は 前 科 を 有 し 、 現 在 恐 喝 未 遂 罪 で 服 B 男 は 、 本 件 制 度 の 趣 旨 を 弁 え 、 特 別 養 子 縁 組 C 女は、昭和六二年一 男をもうけている。 養子の申立てに及んだ。 役中である。 ま た 、 B 女もまた、 X 男と A 男 が 実 親 子 の 間 柄 に することを強く望んでいる。 に同意している。 一月二四日 X 男 ( 養 親 と な し か し 、 A 男 の 亡 C 男 の 両 親 で あ る 祖 父 母 は 、 本 件 特 別 養 子 縁 組 に 不 問 意 の 意 向 を 示 し て い る 。 原 審 ( 名 古 屋 家 裁 昭 和 六 三 年 九 月 一 日 審 判 ) は ‘ ﹁ 特 別 養 子 縁 組 は 、 父 母 に よ る 養 子 と な る 者 の 監 護 が 著 し く 困 難 又 は 不 適 当 で あ る そ の 他 こ れ に 準 じ る 特 別 の 事 情 が あ る 場 合 で 、 実 方 の 父 母 と る者)と婚姻し、 その翌日 X 男と A 女 を 含 む 三 子 と の 聞 に 養 子 縁 組 が な さ れ た 。 以 後 A 女 ら は X 男 お よ び C 女 に 監 護 養 育 さ れ て 現 在 に いたっている。 X 男 は 海 技 大 学 校 を 卒 業 後 船 員 ( 航 海 士 ) と し て 外 こ と 、 国 公 路 に 就 航 す る タ ン カ ー 等 に 乗 務 し て お り 、 そ の 収 入 は 一 家 の 生 の 親 子 関 係 の 終 了 を 特 に 必 要 と す る と き に 成 立 さ せ る も の で あ る か ら、上記認定事実のみからは、 X 男の心情は理解できるにしても、 か か る 特 別 の 事 情 の 存 在 を 認 め る こ と は 困 難 で あ る ﹂ と し て 、 申 立 活を支えるのに十分である。 C 女 は 専 業 主 婦 と し て A 女 ら の 養 育 に 専念している。居住環境にも問題はない。 X 男と

C

女 と の 関 係 は 円 ともに A 女 ら の 養 育 に 関 し て 十 分 な 愛 情 と 能 力 を 有 す る 満であり、 て を 却 下 し た の で ものと認められる。 A 女 同 X 男 を 実 父 と 思 い よ く な っ き

x

男は抗告をした。 また

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愛知工業大学研究報告.第27号,s.,_.平成主年.Vol.27-A.トlar.Hl92 104 順調に生育している。 するうちに、 A 男が X 男を﹁お父さん﹂と呼ぶようになった。そし て、三か月くらいして X 男と B 女 、 A 男とは同居して家庭生活が始 ( 審 判 却下﹁ A 女 は 、 その兄達とともに現に X 男と C 女の暖 い庇護の下で、平穏な生活を過ごしているものということができる。 まり、平成一元年六月二二日婚姻届出を済ませた。 X 男は子供好きで A 男をよくかわいがるが、他方然るべきときは叱りもしている。な A 女の監護養育が特に困難であるとか、不適当な状況にあるという ことはできず、要保護性は認められない。 ぉ 、 B 女 は 現 在 X 男の子を懐胎中で、平成元年二一月中に出産の予 定である。 X 男と B 女は、本件申立てが認められないときには、 X 男と A 男との聞において普通養子縁組をする心算であるが、 X 男 は 、 たしかに B 男の性行等を 考慮すると、 A 女は女児でもあり B 男との関係を絶っておきたいと の申立人の心情がわからないでもない。しかしながら、 B 男が A 女 に働きかけるとの危慎については具体的な根拠はなく、前示のとお この点を深く考 A 男の父である C 男が借金まみれの人間であるから、将来 C 男の債 権者が A 男に対し C 男に対する債権の取立てにくる可能性があり、 り A 女に要保護性が認められない本件にあっては、 慮することは相当ではない﹂。 また今度出生する子とA男との間に養子、実子の差を付けたくない ︹ 事 例 六 ︺ と考え、本件申立てをした。 徳島家裁平成元年一 一月一七日審判(家月四二巻五 B 女も A 男は C 男を実の父であると思 っているし、学校への届出や健康保険の関係で自分が養子である旨 を A 男に知られでも困るとして、 A 男を X 男らの特別養子にするこ 号九四頁) 事 案 A 男(養子となる者・昭和六一年生 の母 B 女は C 男と婚娼し、 とを希望している。 昭和六一年一

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月二一日 A 男が生まれた。 C 男 は 、 B 女と知り合った昭和六

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年ころ県立高等専門学校の事務局長をして いたが、放浪癖があり、給料を受げ取ると無断欠勤を重ね、結局退 また賭け麻雀が好きで、女遊びもした。こ ︹審判]却下﹁本件は、 B 女の連れ子である A 男を B 女と X 男 とが特別養子にしたいというものであるところ、 B 女についてみれ のような生活態度は B 女との婚姻および A 男の出産によっても改ま らず、次第に家の物をもちだし、 ば、従前と同様今後も引き続き A 男を養育する訳であり、 は 、 A 男出生後その養育に無関心であってこれを B 女に押しつけ現 在は行方不明の状態にあり、 A 男の養育に対し悪らつな干渉や妨害 職せざるをえなかった。 また C 男 ついには A 男のものまで持ち出す B 女との聞で紛争が激化した。昭和六二年五月ころ、 B 女の留守中のアパートから C 男の親が荷物を運び出すことによっ て 、 B 女と C 男は別居するにいたり、昭和六三年二一月一九日、 A をすることもないのであるから、結局民法八一七条の七に定めると ころの﹃父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当で ようになり、 あることその他特別の事情がある場合﹄という特別養子縁組許可の 条件には当たらないというべきである。なるほど、 男の親権者を

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女と定めて協議離婚の届出をして離婚した。 C 男は X 男と B 女は C A 男出産後ほとんど家におらず、 A 国力の世話をすることもなく無関 心で、別居以来電話を一度も賭けてきたことがなく、現在は行方不 の借金のことで A 男が迷惑を被ることのないように、 またやがて生 明の状態である。 B 女と X 男(養親となる者)は、 昭和六三年夏こ れてくる実子との関係において A 男が迷惑を被ることのないように 考えて本件申立てをしたものであって、 A 男の幸福を願う X 男らの ろ知り合い、 X 男が B 女を食事に誘ったり遊園地につれていったり 心情は家事審判官にもよくわかるけれども、上記の特別養子縁組許

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103 可の要件を充たさない以上、本件申立てはこれを認めることができ な い 。 ﹂ みぎに述べた審判例は、すべて﹁父母による養子となる者の監護が著 しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、 子 の 利 益 の た め 特 に 必 要 が あ る ﹂ と い う 要 保 護 要 件 を具備していないとして、特別養子縁組を否定した。すなわち、特別養 子縁組が成立するためには、⑦実親が養子となる者の養育監護をするこ (民八一七条の七) いわゆる「連れ子」と特別養子縁組 とが著しく困難であるか不適当であること、④笑親との関係を終了させ ることがもっぱら子の健全な育成を図るうえで利益となること、という ( 叩 ) 要件を必要とすると抽象的に定義づけし、審判例を具体的に検討した結 果、①養子となる者は、実母と養殺となる者のもとで十分な養育監護を 受けていること、②普通養子縁組後に改めて特別養子縁組を申し立てて いることから、実母と養父が養育しているのであるから実親の養育監護 が困難または不適当ではないと判断し、③養子となる者の﹁監護利益に 重大な障害となる﹂などのような実父と断絶しなければならない特段の 事由がないこと(︹事例二︺・︹事例三︺@︹事例五]︹事例六︺)、 ④養子となる者が実母の嫡出子であること ( ︹ 事 例 一 ︺ ︹ 事 例 二 ︺ ︹事例五︺︹事例六︺)、または認知された非嫡出子で あること(門事例三︺)から、子の健全な育成を図るうえで利益となる 事 例 四 ︺ ものでもないとして、特別養子縁組を否定しているのである。このよう に審判例は、要保護要件を厳格に解しているといえよう。 しかしながら、 ﹂のような厳格な要件を要求することは かえって特 別養子縁組を差別することになるのではなかろうか。 つまり、特別養子 となった子は、養育監護をすることが著しく困難であるか不適当な実親 から生れた子であるということを明らかにするごとになるのではなかろ う か 。 4 連れ子を特別養子とすることを望む理由は、 いったいどこにある みぎに述べた審判例からその理由を探ってみよう。当然一番最初 に考えられる理由は、継父と連れ子との聞に親子関係を生じさせようと の か 。 を遠せられる。 けれども、親子関係の形成は普通養子縁組で十分目的 それにもかかわらず、特別養子縁組を申し立てる理由が するものである。 何であるのかを、明らかにしなければならない。 特別養子縁組を申し立てる理由の一つは、実父との血縁関係を断絶す ることであろう。断絶を望む理由を審判例から引用すると、 ﹁ 実 父 は 、 将来何かの借財を作るなどして養子となる者に迷惑が及ぶことなどを避 け る ﹂ ( ︹ 事 例 三 ︺ ) 、 ﹁養子となる者が将来養子であることでなやむ ( ︹ 事 例 四 ︺ ) 、 ﹂とのないようにしたい﹂ ﹁実父の性行などを考慮す る と 、 養子となる者は女児でもあり実父との関係を絶っておきたい﹂ ﹁実父が借金まみれの人間であるから、将来実父の債 ( ︹ 事 例 五 ︺ ) 、 権者が養子となる者に対し実父に対する債権を取立てにくる可能性があ り、また今度出生する子と養子となる者との聞に養子、実子の差を付け (︹事例六︺)等があげられる。もちろん、 8 たくない﹂ ﹂れらの希望が すべてかなえられるものではないであろう。 とくに、養子であることを 隠すというような目的は、今回の改正趣旨とは相容れないものと考えら しかしながら、特別養子縁組は、親が二人存在する、という不安 れ る 。 定な心理状態に陥ることなく健全に育成されるととに特別養子の意味が ( 日 ﹀ ある。いいかえれば、自分自身の実の子であると同じ条件のもとで養育 をすることごそ要請されるべきである。そうだとすれば、厳格な要保護 要件に該当しないからとして、特別養子をすべて否定することが妥当で すべて実父の同意があ あろうか。ことに、 これらの審判例においては、 るのであるから、 ここまで厳格に解する必要があろうか。

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民法八一七条の七にいう要保護要件を明確に定義したのは、 奈良家裁宇陀支部昭和六三年三月二五日審判(家月四

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巻七号

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一八八頁)である。それによると、﹁父母による適切な監護養 育を期待することが不可能ないしは殆ど不可能のゆえに、父母 との関連を終了させてでも第三者による監護養育を必要とせざ るをえない低学年未成年者の健全な育成をはかる目的で、特別 愛知工業大学研究報告.第27号A.平成4年.

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養子制度が制定された趣旨からして、上記の、 な場合とは、父母に監護意思があっても、貧困や正常家庭の欠 如のため、子の監護能力に欠け、そのため、子の適切な監護を 殆ど期待できない場合をいい、﹃著しく不適当﹄な場合とは、 父母に監護能力があっても、子への愛情に欠け、子を虐待する 等、監護方法の適切さを著しく欠く場合をいい、﹃特別な事情﹄ ﹃ 著 し く 困 難 ﹄

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上記に準ずるような事情、すなわち、父母との関係を終 了させることが、専ら子の健全な育成を図るうえで利益となる ような事情をいう、と解するのが相当である﹂と判示する。 湯浅道男・小島二郎﹁特別養子制度の問題点 l l 審判例を手 がかりにして﹂愛学三三巻一 H 二号二一頁

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二 二 頁 ご 九 九

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と は 、 年 ) 。 四 むすびにかえて 今回とりあげた審判例は、従来の審判例と異なり、特別養子縁組を認 容 し た 。 その理由として、本審判は、①未認知の非嫡出子を嫡出子にす ること、②未認知の父親と親子関係の断絶をすることにより生理上の父 との法的関係を終局的に断絶させて身分関係の安定をはかること、とい うこ点あげて、 ﹁その他特別の事情がある﹂ときと判断した。 本審判例は、要保護要件を従来の審判例とくらべて、緩やかに解して 102 いると判断してよいと思われる。もっとも、事案を詳細に検討すると、 従来の審判例は、連れ子がほとんど嫡出子であり、非嫡出子の場合にも 認知がされていた。これに対し、本件は、未認知の非嫡出子であるごと が従来の審判例と異なるといえよう。しかしながら、従来の審判例の基 準にしたがえば、本件も否定されたと思われる。その意味において、本 件は従来の流れとは異なった位置づけをすべきであろう。 前節に述べたように、事案によっては要保護要件を緩和すべきである との立場からすれば、本審判に賛同すべきであろう。

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