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育児休業取得に対する次世代法の政策効果

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Academic year: 2021

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派遣社員のキャリア形成と汎用的スキルの役割

正社員として の就業可能性 と時間給向上

東 京 大 学 佐 藤 博 樹 ニ ッ セ イ 基 礎 研 究 所 松 浦 民 恵 人 材 サ ー ビ ス 産 業 協 議 会 川 渕 香 代 子 1. は じ め に 派 遣 社 員 に 対 す る 派 遣 会 社 に よ る キ ャ リ ア 形 成 支 援 の 取 組 の 重 要 性 が 高 ま っ て い る 。 そ の 理 由 を 説 明 す る 前 に 、 キ ャ リ ア 形 成 支 援 の 内 容 を 説 明 し て お こ う 。 キ ャ リ ア 形 成 支 援 の 内 容 は 多 岐 に わ た る が 、 派 遣 社 員 に 対 し て 就 業 ニ ー ズ に あ っ た 就 業 機 会 を 提 供 す る だ け で な く 、 ス キ ル 向 上 な ど キ ャ リ ア ア ッ プ を 支 援 す る こ と や 正 社 員 就 業 を 希 望 す る 者 に は そ の 機 会 を 提 供 す る こ と 、 さ ら に は 賃 金 な ど 労 働 条 件 の 向 上 へ の 取 組 な ど が 含 ま れ る 。 こ う し た 取 組 の た め に は 、 キ ャ リ ア 相 談 や 教 育 訓 練 機 会 の 提 供 な ど も 必 要 と な る 。 派 遣 会 社 に よ る マ ッ チ ン グ 機 能 は 、 通 常 、 派 遣 就 業 を 希 望 す る 労 働 者 に 対 し て 、 希 望 に 合 致 し た 派 遣 先 を 探 し 、 労 働 者 が 当 該 派 遣 先 で の 就 業 を 選 択 す る 場 合 に は 、 労 働 者 を 雇 用 し 派 遣 先 に 派 遣 す る こ と に あ る 。 こ う し た 短 期 的 な マ ッ チ ン グ 機 能 に 対 し て 、 キ ャ リ ア 形 成 支 援 は 、 中 長 期 的 な 視 点 か ら の マ ッ チ ン グ 機 能 と も 言 え る 。 派 遣 社 員 に 対 す る こ う し た キ ャ リ ア 形 成 支 援 が 派 遣 会 社 に 求 め ら れ て い る 理 由 と し て 、 下 記 を あ げ る こ と が で き よ う 。 第 1 に 、改 正 が 検 討 さ れ て い る 労 働 者 派 遣 法 で は 、派 遣 社 員 に 対 す る キ ャ リ ア 形 成 支 援 の 取 組 を 派 遣 会 社 に 義 務 づ け る こ と に よ っ て 、 派 遣 社 員 の キ ャ リ ア ア ッ プ を 支 援 す る こ と が 考 え ら れ て い る 。 キ ャ リ ア 形 成 支 援 と し て 、 段 階 的 か つ 体 系 的 に 派 遣 就 業 に 必 要 な 技 能 及 び 知 識 を 習 得 で き る よ う に 計 画 的 教 育 訓 練 を 実 施 す る こ と や 派 遣 社 員 に 対 し て 職 業 生 活 の 設 計 に 関 す る 相 談 機 会 の 提 供 な ど キ ャ リ ア コ ン サ ル テ ィ ン グ の 実 施 な ど が 想 定 さ れ て い る 。 さ ら に 、 こ の 取 組 を 実 効 性 あ る も と の す る た め に 、 労 働 者 派 遣 事 業 の 許 可 ・ 更 新 の 要 件 に キ ャ リ ア 形 成 支 援 制 度 を 有 す る こ と を 含 め る と し て い る 。 ま た 、 派 遣 会 社 と し て 、 派 遣 社 員 の キ ャ リ ア 形 成 支 援 を 円 滑 に 行 う た め に は 、 派 遣 先 に お け る 派 遣 社 員 の 働 き ぶ り な ど に 関 す る 情 報 が 必 要 と な る が 、 派 遣 就 業 の 仕 組 み か ら 派 遣 会 社 と し て そ れ を 直 接 入 手 す る こ と は 難 し い 。 そ の た め 改 正 法 は 、 派 遣 先 に 対 し て 、 派 遣 会 社 の 求 め に 応 じ て 派 遣 社 員 の 職 務 遂 行 能 力 等 に 関 す る 情 報 を 派 遣 会 社 に 提 供 す る こ と を 求 め て い る 。 第 2 に 、 同 じ く 改 正 が 検 討 さ れ て い る 労 働 者 派 遣 法 で は 、 い わ ゆ る 専 門 26 業 務 に 関 し て も 派 遣 期 間 の 上 限 が 3 年 と さ れ る た め 、 派 遣 会 社 に 対 し て 、 派 遣 期 間 の 上 限 に 達 す る 派 遣 社 員 の 新 た な 派 遣 先 な ど 就 業 機 会 の 確 保 が 求 め ら れ る こ と に な っ た 。 ま た 、2012 年 10 月 に 施 行 さ れ た 労 働 者 派 遣 法 に よ っ て 、 派 遣 社 員 の 希 望 に 応 じ て 無 期 雇 用 へ の 転 換 ( 正 社 員 就 業 な ど ) を 促 進 す る こ と が 派 遣 会 社 に 義 務 付 け ら れ て い る 。 つ ま り 、 キ ャ リ ア 形 成 支 援 と し て 、 派 遣 就 業 を 希 望 す る 者 に 継 続 的 に 派 遣 先 を 紹 介 す る こ と だ け で な く 、 正 社 員 と し て の 就 業 を 希 望 す る 者 に は 、 派 遣 先 や 自 社 あ る い は 他 企 業 へ 正 社 員 と し て 就 業 で き る よ う に 支 援 す る こ と が 求 め ら れ る こ と に な る 。 第 3 に 、派 遣 社 員 自 身 も 派 遣 会 社 に 対 し て キ ャ リ ア 形 成 支 援 を 求 め て お り 、 そ う し た ニ ー ズ に 応 え る こ と が 派 遣 会 社 に と っ て は 人 材 確 保 力 を 高 め る こ と に 繫 が る こ と が あ る 。 派 遣 先 を 確 保 す る た め に 複 数 の 派 遣 会 社 に 登 録 し て い る 派 遣 社 員 が 多 い こ と か ら ( 日 本 人 材

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派 遣 協 会 、2014)、 他 社 と の 差 別 化 の た め に も 、 派 遣 会 社 に と っ て は キ ャ リ ア 形 成 支 援 へ の 取 組 が き わ め て 重 要 と な る 。派 遣 社 員 が 、派 遣 会 社 に 求 め る キ ャ リ ア 形 成 支 援 の 内 容 は 、 労 働 条 件 の 向 上 に 向 け た 派 遣 先 と の 交 渉 、ス キ ル を 向 上 さ せ る た め の 教 育 訓 練 機 会 の 提 供 、 キ ャ リ ア 形 成 に つ な が る 派 遣 先 や 派 遣 の 仕 事 の 紹 介 、 キ ャ リ ア に つ い て の 相 談 機 会 の 設 置 や 充 実 な ど で あ る ( 日 本 人 材 派 遣 協 会 、2014)。 本 稿 で は 、 キ ャ リ ア 形 成 支 援 の 中 か ら 、 派 遣 社 員 の 正 社 員 と し て の 就 業 を 支 援 す る こ と と 、労 働 条 件 と し て 時 間 給 向 上 の 2 つ を と り あ げ る 。こ の 2 つ を と り あ げ る の は 、第 1 に 、 当 面 は 派 遣 就 業 を 希 望 し て い て も 、 将 来 的 に は 正 社 員 と し て の 就 業 を 希 望 す る 派 遣 社 員 が 多 い こ と 、 第 2 に 、 派 遣 社 員 の 時 給 水 準 は 、 業 務 ご と 異 な る が 、 派 遣 就 業 を 継 続 し て も 時 給 は 上 昇 し に く い こ と に よ る( 労 働 政 策 研 究・研 修 機 構 編 、2011;日 本 人 材 派 遣 協 会 、2014 な ど)。 正 社 員 と し て の 就 業 支 援 を 取 り 上 げ る と 、 派 遣 社 員 と し て 高 い 業 務 ス キ ル を 保 有 し て い る だ け で は 、 正 社 員 と し て の 就 業 機 会 を 得 る こ と が 難 し い こ と が 知 ら れ て い る 。 言 い 換 え れ ば 、 派 遣 社 員 と し て 有 能 で あ っ て も 、 正 社 員 と し て 就 業 で き る わ け で は な い 。 正 社 員 と し て の 就 業 機 会 を 得 る た め に は 、 業 務 ス キ ル に 加 え て 、 特 定 の 業 務 に 依 存 し な い 汎 用 的 ス キ ル が 必 要 と な る こ と が あ る1。そ の 理 由 と し て 、通 常 、正 社 員 と し て 企 業 が 雇 用 す る 場 合 、 特 定 の 業 務 で の 活 用 に 限 定 せ ず に 雇 用 す る こ と が 一 般 的 で あ る こ と や 、 正 社 員 は 他 の 職 場 成 員 と の 連 携 を 必 要 と す る 業 務 に 従 事 す る こ と が 多 い こ と 、 さ ら に は 他 の 職 場 成 員 を ま と め た り 指 導 し た り す る 仕 事 に 従 事 す る こ と が 期 待 さ れ て い る こ と 、 な ど を あ げ る こ と が で き る 。 上 記 を 踏 ま え て 本 研 究 で は 、 派 遣 社 員 の 正 社 員 と し て の 就 業 希 望 の 実 現 に 焦 点 を 当 て 、 汎 用 的 ス キ ル が 高 い こ と が 、 派 遣 先 に お け る 正 社 員 転 換 の 可 能 性 を 高 め る こ と に 貢 献 す る か ど う か を 検 討 す る 。 同 時 に 、 汎 用 的 ス キ ル が 高 い こ と が 、 派 遣 就 業 中 に お け る 派 遣 社 員 の 時 給 水 準 の 上 昇 に 繫 が る か ど う か も 合 わ せ て 分 析 す る 。 汎 用 的 ス キ ル に 関 し て は 幾 つ か の 類 型 化 の 試 み が あ る が2、た と え ば リ ク ル ー ト ワ ー ク ス 研 究 所 ( 辰 巳 、2006) は 、 対 人 基 礎 力 ( 親 和 力 、 協 働 力 、 統 率 力 )、 対 自 己 基 礎 力 ( 感 情 制 御 力 、自 信 創 出 力 、行 動 持 続 力 )、対 課 題 基 礎 力( 課 題 発 見 力 、計 画 立 案 力 、実 践 力 )の 3 つ に 整 理 し て い る 。 本 稿 に お け る 汎 用 的 ス キ ル の 測 定 で は 、 上 記 の 対 人 基 礎 力 と 対 自 己 基 礎 力 の 構 成 要 素 を 実 務 家 や 有 識 者 の 議 論 を 踏 ま え て 再 編 成 し 、 傾 聴 共 感 ( 人 の 話 に 耳 を 傾 け 、相 手 の 考 え や 言 い た い こ と を 理 解 す る )、役 割 遂 行( 自 分 の 役 割 を 意 識 し て 、割 り 当 て ら れ た こ と に 責 任 を も ち 、遂 行 す る )、情 報 発 信( 報 告・ 連 絡・ 相 談 を し 、有 用 な 情 報 は 周 囲 に 伝 え る )、感 情 管 理( 仕 事 上 で の 自 分 の 感 情 の 上 下 を 意 識 し 、冷 静 に な る こ と が で き る ) の 4 つ の 基 礎 力 を 利 用 し た 。 な お 以 下 で は こ の 基 礎 力 を 「 4 つ の 力 」 と 呼 称 す る 。 さ ら に 、 派 遣 社 員 自 身 に よ っ て 「 4 つ の 力 」 を 高 め る こ と が で き る 能 力 開 発 啓 発 ツ ー ル を 開 発 し 、 そ の ツ ー ル の 有 効 性 を 測 定 す る 実 証 実 験 の 結 果 を 紹 介 し 、 こ の ツ ー ル が 派 遣 会 社 に よ る 派 遣 社 員 に 対 す る キ ャ リ ア 形 成 支 援 策 と し て 活 用 で き る こ と も 示 す 。 1 た と え ば 、 事 務 系 の 派 遣 社 員 を 直 接 雇 用( 正 社 員 と 非 正 社 員 )す る 際 に 評 価 対 象 と す る 就 業 実 態 を 見 る と 、「 派 遣 ス タ ッ フ と し て の 勤 務 実 績 ・ 勤 務 成 績 」が 1 位 だ が 、「 一 定 以 上 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 」 が 第 2 位 と な っ て い る ( 三 菱 UFJ リ サ ー チ & コ ン サ ル テ ィ ン グ 株 式 会 社 、 2010) 。 2 た と え ば 、 厚 生 労 働 省 の 「 若 年 者 就 職 基 礎 力 」( コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 、 職 業 人 意 識 、 基 礎 学 力 、 資 格 取 得 、 ビ ジ ネ ス マ ナ ー ) 、 経 産 省 の 「 社 会 人 基 礎 力 」( 前 に 踏 み 出 す 力 、 考 え 抜 く 力 、 チ ー ム で 働 く 力 )、 」OECD の キ ー コ ン ピ テ ン シ ー( 道 具 を 相 互 作 用 的 に 用 い る 能 力 、 異 質 な 人 々 か ら な る 集 団 で 相 互 に 関 わ り 合 う 能 力 、 自 律 的 に 行 動 す る 能 力 ) な ど が あ る 。

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2.「 4 つ の 力 」 は キ ャ リ ア 形 成 に 有 効 か 2.1 使 用 す る 調 査 と 分 析 の 枠 組 み こ こ で は 、 日 本 人 材 派 遣 協 会 が 2013 年 10 月 ~ 2014 年 1 月 に か け て 実 施 し た 「 派 遣 社 員 W E B ア ン ケ ー ト 調 査 」 に よ っ て 、 正 社 員 転 換 お よ び 時 間 給 向 上 に 対 す る 「 4 つ の 力 」 の 有 効 性 を 検 証 す る こ と と し た い 。 本 調 査 は 、 同 協 会 ホ ー ム ペ ー ジ 、 会 員 ( 派 遣 会 社 ) か ら 派 遣 社 員 へ の 依 頼 、 会 員 や 協 力 団 体 ・ 企 業 の ホ ー ム ペ ー ジ へ の バ ナ ー リ ン ク 及 び メ ー ル マ ガ ジ ン に よ っ て 、 派 遣 社 員 に W E B 調 査 画 面 を 告 知 し 、 W E B 送 信 に よ り 回 答 を 得 て い る 。 調 査 対 象 は 、 現 在 派 遣 で 働 い て い る 者 及 び 過 去 半 年 間 に 派 遣 で 働 い て い た こ と が あ る 者 で 、 有 効 回 答 数 は 5,880 人 ( 調 査 対 象 外 の 者 等 を 除 外 。 有 効 回 答 率 91.3% ) で あ る 。 以 下 で は 、 派 遣 社 員 の な か で 大 き な 割 合 を 占 め る 事 務 系 職 種 ( 調 査 画 面 上 は 「 オ フ ィ ス 系 業 務 」)を 分 析 対 象 と す る 。ま た 、正 社 員 転 換 に 対 す る 有 効 性 を 分 析 す る こ と 、派 遣 会 社 と の 契 約 期 間 ( 有 期 か 無 期 か ) に よ っ て キ ャ リ ア 形 成 支 援 の あ り 方 も 異 な っ て く る と 考 え ら れ る こ と か ら 、 派 遣 会 社 と の 契 約 が 無 期 労 働 契 約 で あ る 者 は 分 析 の 対 象 か ら 除 外 す る 。 結 果 と し て 、 分 析 対 象 は 3,319 人 と な る 。 分 析 対 象 の 95.6% は 女 性 で 、 既 婚 が 42.2% 、 子 ど も が い る 割 合 は 24.6% で あ る 。年 齢 は 30 代 が 42.8% 、次 に 40 代( 36.5% )、20 代 以 下 (13.6% ) が 続 い て い る 。 最 終 学 歴 は 、 大 学 ・ 大 学 院 が 36.8% 、 短 大 ・ 高 専 が 25.9% 、 中 学 ・ 高 校 が 23.2% 、 専 門 学 校 が 14.1% と い う 構 成 に な っ て い る 。 表 1 は 、「 4 つ の 力 」に 関 す る 回 答 結 果 を 示 し た も の で あ る 。傾 聴 共 感 、役 割 遂 行 、情 報 発 信 、 感 情 管 理 の そ れ ぞ れ に つ い て 、 9 段 階 で 回 答 を 求 め て い る 。 得 点 は 最 下 段 の カ テ ゴ リ ー を 1 点 、 最 上 段 の カ テ ゴ リ ー を 9 点 と し て 点 数 化 し た も の で あ る 。 平 均 得 点 は 傾 聴 共 感 が 7.02 点 、役 割 遂 行 が 6.68 点 、情 報 発 信 が 6.59 点 、感 情 管 理 が 6.39 点 で 、「 4 つ の 力 」 合 計 の 平 均 得 点 は 26.68 点 と な っ て い る 。 以 下 、 こ の 合 計 得 点(「 4 つ の 力 」 の ク ロ ー ン バ ッ ク の α 係 数 は 0.70)と 、正 社 員 転 換 や 時 間 給 と の 関 係 を 分 析 す る 。正 社 員 転 換 に つ い て は「 現 在 ま た は 過 去 の 派 遣 先 か ら 、 派 遣 期 間 中 に 直 接 雇 用 の 打 診 を 受 け た こ と が あ り ま す か 」 と い う 設 問 に 対 し て 「 正 社 員 と し て 直 接 雇 用 を 打 診 さ れ た 」 と 回 答 し て い る か ど う か を み て い く 。 次 に 、 時 間 給 に つ い て は 「 過 去 3 年 間 の 派 遣 就 業 期 間 中 に 給 与 が 上 が っ た こ と が あ り ま す か 」 と い う 設 問 と 、 現 在 の 時 給 水 準 を 分 析 に 使 用 す る 。 表 1:「 4 つ の 力 」 に 関 す る 回 答 結 果 (%) 理解し共感を示すだけでなく、自分の考えを伝えている 26.8 周囲への影響を考え期待以上のことを協力し行っている 15.2 1と3の間 21.0 1と3の間 13.7 相手の感情や発言の背景にも理解や共感を示している 17.7 役割を意識し最良の結果が出るよう工夫し行動している 39.1 3と5の間 12.7 3と5の間 11.6 相手の考えや言いたいことを理解している 12.0 任されたことは自分の責任で判断しながら進めている 5.5 5と7の間 5.0 5と7の間 7.9 人の話を聞いて、話の内容を理解している 4.2 任されたことは途中途中で人から判断してもらい進める 5.6 7と9の間 0.6 7と9の間 0.9 他人に興味がなく、人の話は聞かない 0.1 自ら行動するより、人からの指示を待って行動している 0.5 平均得点(点) 7.02 平均得点(点) 6.68 得点の標準偏差(点) 1.79 得点の標準偏差(点) 1.73 情報の提供だけでなく、周囲から有用な情報を得ている 22.4 感情変化の原因を取り除けるように行動している 12.3 1と3の間 11.9 1と3の間 9.1 報告等するだけでなく有用な情報を周囲に伝えている 18.0 感情を常にコントロールし、状況に応じて行動している 33.8 3と5の間 14.3 3と5の間 16.6 自ら進んで報告・連絡・相談をしている 21.0 感情的になる前に自分の感情を把握し冷静になっている 13.1 5と7の間 8.7 5と7の間 8.7 求められれば、報告・連絡・相談をしている 3.2 感情的になることもあるが、後で冷静になる 5.5 7と9の間 0.2 7と9の間 0.6 報告・連絡・相談をすることは少ない 0.3 感情的な言動が多い 0.2 平均得点(点) 6.59 平均得点(点) 6.39 得点の標準偏差(点) 1.81 得点の標準偏差(点) 1.66 N:3,319、「4つの力」の合計得点の平均:26.68点、合計得点の標準偏差:5.06点。 傾聴共感(人の話の聴き方) 役割遂行(仕事を任されたときの行動) 情報発信(報告・連絡・相談の仕方) 感情管理(仕事をするときの感情コントロール)

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2.2 分 析 結 果 「 4 つ の 力 」 合 計 得 点 を 「 高 」「 中 」「 低 」 に 分 類 し 、 正 社 員 打 診 経 験 が あ る 割 合 、 給 与 上 昇 経 験 が あ る 割 合 、時 給 の 水 準 を み る と 、い ず れ も「 高 」「 中 」「 低 」の 順 に 低 下 し 、「 高 」 と の 間 に 有 意 な 差 が み て と れ る 。 た だ し 、 事 務 系 職 種 を さ ら に 細 か く 分 類 し た 結 果 を み る と 、「 高 」 と の 差 が 明 確 で な い 職 種 も あ り 、 職 種 に よ っ て 「 4 つ の 力 」 と 正 社 員 打 診 経 験 、 給 与 上 昇 経 験 お よ び 時 給 と の 関 係 に バ ラ ツ キ が み ら れ て い る 。 表 2:「 4 つ の 力 」 合 計 得 点 別 正 社 員 打 診 経 験 割 合 、 給 与 上 昇 経 験 割 合 、 時 給 N 有効N 標準偏差 高 628 25.8 36.6 611 1398.9 304.3 中 1,849 19.4 *** 31.0 *** 1818 1374.4 * 263.8 低 842 15.0 *** 26.5 *** 828 1334.7 *** 248.0 高 416 24.5 34.1 403 1354.9 274.3 中 1,376 17.7 *** 30.2 1355 1344.9 256.6 低 633 13.6 *** 25.9 *** 620 1311.9 ** 249.0 高 37 18.9 29.7 36 1415.3 190.1 中 96 26.0 26.0 96 1392.5 221.9 低 51 15.7 27.5 51 1338.0 * 206.6 高 43 27.9 48.8 43 1379.2 230.4 中 123 30.1 39.8 119 1400.2 262.7 低 81 19.8 23.5 *** 81 1400.2 211.6 高 36 27.8 22.2 36 1363.6 265.3 中 76 18.4 28.9 75 1397.7 253.5 低 23 17.4 26.1 23 1347.8 205.9 高 29 31.0 55.2 28 1532.5 229.4 中 81 25.9 24.7 *** 81 1505.4 177.1 低 27 22.2 40.7 27 1426.7 * 182.8 高 67 32.8 47.8 65 1637.1 464.7 中 97 18.6 ** 43.3 92 1620.7 313.5 低 27 22.2 33.3 26 1560.0 331.2 経理事務 金融事務・業務 貿易・国際業務 専門的事務 時給の平均値 (円) 現在または過 去の派遣先か らの正社員打 診経験あり(%) 過去3年間に給 与上昇経験あり (%) 合計 一般事務 営業事務 注1:設問の制約上、日給、月給を正確に時給に換算するのが難しいため、時給水準に関する分析においては、日 給制、月給制の対象者を除く(年俸制は回答者ゼロ)。 注2:「高」は 32 点以上、「中」は 24 点以上 31 点以下、「低」は 23 点以下で分類。 注3:「高」との有意差について、割合はχ2 乗検定、平均値はt検定を行った。***は 1%水準、**は 5%水準、* は10%水準で有意。 注4:一般事務には「OA事務」「PCオペレーター」「データ入力」「ファイリング」「受付・案内」「庶務事務」 「その他オフィス業務」を、金融事務・業務には「金融事務(融資・為替等の後方事務)」「資産運用提案 業務」「その他金融業務(窓口・接客等の業務)」を、専門的事務には「英文事務」「通訳」「翻訳」「速記」 「秘書」を含む。 そ こ で 、職 種 を 含 め た 他 の 変 数 を コ ン ト ロ ー ル し て も 、「 4 つ の 力 」を 向 上 さ せ る こ と が 、 正 社 員 転 換 、 時 間 給 向 上 に プ ラ ス の 影 響 を 与 え る か ど う か に つ い て 検 討 し た い 。 具 体 的 に は 、正 社 員 打 診 経 験 お よ び 給 与 上 昇 経 験 に つ い て は「 あ り 」を 1 、「 な し 」を 0 と す る カ テ ゴ リ ー 変 数 を 被 説 明 変 数 と す る ロ ジ ス テ ィ ッ ク 回 帰 分 析 を 、 時 給 に つ い て は 時 給 を 被 説 明 変 数 と す る 重 回 帰 分 析 を 行 う 。 使 用 す る 変 数 を 表 3 に 、 分 析 結 果 を 表 4 に 示 す 。 表 4 の と お り 、い ず れ の 分 析 結 果 に お い て も「 4 つ の 力 」合 計 得 点 は プ ラ ス に 有 意 と な っ て い る 。 具 体 的 に は 、 合 計 得 点 が 1 点 上 が れ ば 、 正 社 員 打 診 を 経 験 す る 確 率 、 給 与 上 昇 を 経 験 す る 確 率 が 各 1.05 倍 、 1.03 倍 に な る と 推 計 さ れ て い る 。 ま た 、 合 計 得 点 が 1 点 上 が れ ば 、 時 給 は 2.46 円 高 く な っ て い る 。

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表 3: 回 帰 分 析 に 使 用 す る 変 数 の 記 述 統 計 量 度数 最小値 最大値 平均値 標準偏差 正社員打診経験ダミー 3,319 0.0 1.0 0.2 0.4 給与上昇経験ダミー 3,319 0.0 1.0 0.3 0.5 ※時給【ベース:時給制】 3,257 664.0 4000.0 1368.9 268.9 「4つの力」合計得点(点) 3,319 6.0 36.0 26.7 5.1 新人が仕事をこなせる期間(日) 3,319 0.0 1095.0 123.7 191.6 主業務通算経験期間(月) 3,319 1.0 480.0 86.8 75.1 派遣先での通算派遣就業期間(月) 3,319 1.0 279.0 31.4 39.8 正社員経験ダミー 3,319 0.0 1.0 0.8 0.4 派遣での通算就業期間(月) 3,319 1.0 360.0 89.2 69.8 派遣で就業した職場数(箇所) 3,319 1.0 120.0 4.4 5.5 登録派遣会社数(社) 3,319 1.0 35.0 3.4 3.0 一般事務ダミー 3,319 0.0 1.0 0.7 0.4 営業事務ダミー 3,319 0.0 1.0 0.1 0.2 経理事務ダミー 3,319 0.0 1.0 0.1 0.3 金融事務・業務ダミー 3,319 0.0 1.0 0.0 0.2 貿易・国際業務ダミー 3,319 0.0 1.0 0.0 0.2 キャリア形成のための取組数(項目) 3,319 0.0 8.0 1.2 1.1 *当面の正社員志向(派遣会社の正社員を除く) 3,319 0.0 1.0 0.2 0.4 *当面の派遣志向(派遣会社の正社員を含む) 3,319 0.0 1.0 0.7 0.5 女性ダミー 3,319 0.0 1.0 1.0 0.2 年齢(歳) 3,319 19.0 67.0 38.3 7.5 被説明 変数 説明 変数 注 1: 新 人 が 仕 事 を こ な せ る 期 間 は 、「 業 務 経 験 が 全 く な い 新 人 に 、現 在 も し く は 直 近 の 派 遣 先 で の あ な た の 仕 事 を 担 当 さ せ た 場 合 、 ひ と と お り 仕 事 を こ な せ る よ う に な る た め に 、 ど の く ら い の 期 間 が か か る と 思 い ま す か 」 と い う 設 問 に 関 し て 、「 必 要 な い 」 を 0 日 、「 2~ 3 日 程 度 」 を 2.5 日 、「 1 週 間 未 満 」 を 5 日 、「 1 週 間 程 度 」 を 7 日 、「 2~ 3 週 間 程 度 」 を 17.5 日 、「 1 カ 月 程 度 」 を 30 日 、 「2 カ 月 程 度 」 を 60 日 、「 3 カ 月 程 度 」 を 90 日 、「 半 年 程 度 」 を 180 日 、「 1 年 程 度 」 を 365 日 、 「2 年 程 度 」 を 730 日 、「 3 年 程 度 」 を 1,095 日 、「 3 年 以 上 」 を 1,095 日 と し て 数 値 化 。 注 2:「 キ ャ リ ア 形 成 の た め の 取 組 数 」 は 、「 あ な た 自 身 の 能 力 を 高 め た り 、 数 年 後 に 就 き た い 働 き 方 を 実 現 す る た め に 、 今 取 り 組 ん で い る こ と は あ り ま す か 」 と い う 設 問 に 回 答 し た 取 組 の 項 目 数 。 注 3: ※ の 時 給 は 、 正 社 員 打 診 経 験 ダ ミ ー 、 給 与 上 昇 経 験 ダ ミ ー を 被 説 明 変 数 と す る 分 析 で は 、 説 明 変 数 に 投 入 。 注 4: * は 、 当 面 希 望 す る 働 き 方 。 正 社 員 打 診 経 験 ダ ミ ー を 被 説 明 変 数 と す る 分 析 の み に 使 用 。 表 4: 回 帰 分 析 の 結 果 被説明変数→ 分析方法→ オッズ比 オッズ比 係数 「4つの力」合計得点(点) 0.04 *** 1.05 0.03 *** 1.03 2.46 2.72 *** 新人が仕事をこなせる期間(日) 0.00 1.00 0.00 ** 1.00 0.16 6.63 *** 主業務通算経験期間(月) 0.00 1.00 0.00 1.00 0.48 6.89 *** 派遣先での通算派遣就業期間(月) -0.01 *** 1.00 0.00 *** 1.00 0.52 3.83 *** 正社員経験ダミー 0.44 *** 1.55 -0.03 0.97 45.57 3.65 *** 派遣での通算就業期間(月) 0.00 *** 1.00 0.00 *** 1.00 0.41 4.84 *** 派遣で就業した職場数(箇所) 0.03 *** 1.03 -0.01 0.99 -0.19 -0.20 登録派遣会社数(社) -0.02 0.98 -0.01 0.99 3.08 1.92 * ※時給(円) 0.00 *** 1.00 0.00 *** 1.00 - - 一般事務ダミー -0.08 0.92 -0.32 * 0.73 -247.19 -12.64 *** 営業事務ダミー 0.05 1.05 -0.54 ** 0.58 -221.69 -8.43 *** 経理事務ダミー 0.37 1.45 -0.04 0.96 -205.42 -8.33 *** 金融事務・業務ダミー 0.04 1.04 -0.61 ** 0.55 -239.14 -8.39 *** 貿易・国際業務ダミー 0.29 1.34 -0.27 0.76 -117.32 -4.14 *** キャリア形成のための取組数(項目) 0.09 ** 1.09 0.01 1.01 18.61 4.63 *** *当面の正社員志向(派遣会社の正社員を除く) -0.05 0.95 - - - - *当面の派遣志向(派遣会社の正社員を含む) -0.28 ** 0.75 - - - - 女性ダミー 0.13 1.14 0.20 1.22 37.81 1.74 * 年齢(歳) -0.02 *** 0.98 -0.01 ** 0.99 -4.54 -6.25 *** 定数 -3.38 *** 0.03 -2.03 *** 0.13 1479.53 32.47 *** 正社員打診経験ダミー ロジスティック回帰 給与上昇経験ダミー ロジスティック回帰 時給 重回帰 係数 係数 t値 F値:34.8 *** 調整済R2乗:0.142 N:3,257 -2対数尤度:3,083.471 χ 2乗:138.651 *** N:3,257 -2対数尤度:3,886.872 χ 2乗:127.079 *** N:3,257 注 : ***は 1% 水 準 、 **は 5% 水 準 、 *は 10% 水 準 で 有 意 。

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3.「 4 つ の 力 」 を 高 め る た め の 方 策 3.1「 4 つ の 力 」 を 用 い た 自 律 的 な 能 力 向 上 の 実 証 実 験 こ こ で は 人 材 サ ー ビ ス 産 業 協 議 会( 以 下「 J H R 」と い う )が 実 施 し た 、「 4 つ の 力 」の 評 価 と そ れ を 基 に し た 汎 用 的 ス キ ル を 向 上 す る た め の 能 力 開 発 支 援 ツ ー ル( 以 下「 ツ ー ル 」 と い う ) の 有 効 性 に 関 す る 実 証 実 験 の 結 果 に つ い て 紹 介 す る 。 ツ ー ル は 、 ま ず 派 遣 社 員 が 「 4 つ の 力 」 を 9 段 階 で 自 己 評 価 し 、 そ の 結 果 を 踏 ま え て 自 分 と し て 伸 ば し た い 能 力 を 選 び 、 そ の 能 力 の 向 上 に 繫 が る 行 動 の 例 を 参 考 に そ れ を 実 行 し て も ら う も の で あ る 。 そ の た め に 、 ツ ー ル に は 、1 週 間 ご と に 自 分 の 行 動 の 変 化 や 感 じ た こ と 等 を ふ り か え り 記 録 で き る 欄 が 設 け ら れ て い る3 実 証 実 験 は 、 派 遣 会 社 11 社 と 製 造 請 負 会 社 2 社 の 合 計 13 社 に 協 力 を 依 頼 、 2013 年 11 月~2014 年 12 月 に か け て 以 下 の 手 順 に 沿 っ て 実 施 し た 。 図 1 「 4 つ の 力 」 ト ラ イ ア ル 手 順 ま ず 、 J H R か ら 、 ツ ー ル と 派 遣 先 上 長 が 派 遣 社 員 の 「4 つ の 力 」 を 評 価 す る た め の 診 断 表 、 ツ ー ル の 使 用 方 法 の 説 明 や 想 定 質 問 と 回 答 例 等 を ま と め た 派 遣 会 社 担 当 者 向 け の マ ニ ュ ア ル を 協 力 13 社 の 窓 口 担 当 者 に 配 布 し た( 図 1 の ① )。窓 口 担 当 者 の 所 属 は 企 画 管 理 系 や 派 遣 社 員 の 教 育 研 修 ・ キ ャ リ ア 支 援 等 の 部 門 で あ っ た た め 、 直 接 派 遣 社 員 や 派 遣 先 と 接 点 を 持 つ 社 内 の 関 係 部 署 に 説 明・依 頼 を し( 同 ② )、そ こ を 経 由 し て 派 遣 社 員 に 依 頼 を し た( 同 ③ )。な お 、依 頼 対 象 の 派 遣 社 員 は 3 か 月 以 上 の 派 遣 就 業 経 験 が あ る こ と を 条 件 と し た 。 協 力 派 遣 社 員 が 見 つ か り 次 第 、 派 遣 社 員 に 対 し て ツ ー ル の 趣 旨 や 使 い 方 を 説 明 し 、 自 己 診 断 の 実 施 と 、1 か 月 間 の 力 を 伸 ば す 行 動 に 派 遣 社 員 に 自 主 的 に 取 り 組 ん で も ら っ た (同 3 ツ ー ル 作 成 は 、2010 年 に ア ル バ イ ト の 就 業 力 向 上 に つ い て 一 定 の 成 果 を 得 て い た 学 習 プ ロ グ ラ ム 「 ソ ー シ ャ ル カ レ ッ ジ 」(http://data.recruitcareer.co.jp/mirai/2013/03/9e -learning-19e7.html) の 中 心 的 な 開 発 者 で あ る 株 式 会 社 ハ ン ゾ ー の 太 田 芳 徳 氏 に 原 案 を 依 頼 、 実 務 者 と 有 識 者 の 意 見 を 踏 ま え て 作 成 し た 。 ①各 社にツール配 布 ②社 内関 係 部 署 に説 明 ③派 遣社 員 に依 頼 ④「4つのチカラ」自 己 診 断 ⑪派 遣社 員 ・派 遣 先 に アンケート配 布 ⑥派 遣 先 に協 力 依 頼 ⑩伸 ばしたい力 を決 定、力 を 伸 ばす行 動 の実 践 とふりか えりの取 組 開 始 ⑤派 遣 先 診 断 を依 頼 (希 望 者 のみ) ⑦依 頼 があった派 遣社 員 の「4つの力 」診 断 ⑧派 遣 会 社 に診 断結 果 を通 知 ⑨派 遣 先 の診 断結 果を フィードバック

1か月

⑫「4つのチカラ」再 診 断 とア ンケート回 答 ⑬アンケート回 答 ⑭アンケートと診 断 表 回 収 J H R ・ 派 遣 会 社 派 遣 社 員 派 遣 先

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④ ・ ⑩)。 派 遣 先 の 診 断 に つ い て は 派 遣 社 員 か ら 希 望 が あ っ た 場 合 に 実 施 し ( 同 ⑤ ~ ⑨ )、 そ の 結 果 も 参 考 に し て 、 伸 ば す 行 動 を 決 め る よ う に し た ( 同 ⑩ )。 取 組 開 始 か ら 1 か 月 後 に 、派 遣 社 員 に は 取 組 に つ い て の 感 想 や 成 長 実 感 、今 後 の 参 加 意 向 等 を 問 う た め の ア ン ケ ー ト と 2 回 目 の 「 4 つ の 力 」診 断 表 を 、 派 遣 先 に は 派 遣 社 員 の 変 化 の 様 子 や 協 力 意 向 等 を 問 う ア ン ケ ー ト を 配 布 し( 同 ⑪ )、1 回 目 の 診 断 表 と と も に 回 収 し た( 同 ⑫・ ⑬・⑭ )。な お 、ア ン ケ ー ト に は 、派 遣 社 員 と そ の 派 遣 先 と が 同 じ 番 号 に な る よ う を 対 応 さ せ た シ リ ア ル 番 号 を 付 し た 。 以 上 の 要 領 で 、最 終 的 に 11 社 84 名 の 派 遣 社 員 が 参 加 し 、う ち 54 名 に つ い て は 最 初 の 診 断 表 も 回 収 で き た 。 ま た 、 84 名 中 23 名 が 派 遣 先 に も 診 断 を 依 頼 し た が 、 派 遣 先 診 断 表 を 回 収 で き た の は う ち 17 名 ( 17 社 ) の み で あ っ た 。 3.2 ア ン ケ ー ト 結 果 か ら ア ン ケ ー ト 結 果 に よ る と 、84 名 の う ち 、自 分 の 気 持 ち や 仕 事 に 対 す る 姿 勢 に 変 化 が あ っ た と す る 者 が 72.6% 、「 4 つ の 力 」 が 伸 び た と 感 じ て い る 者 が 59.6% と 過 半 数 が 自 身 の 変 化 や 成 長 を 感 じ て お り 、 60.7% の 者 が ま た 参 加 し た い と 回 答 す る な ど 、 参 加 し た 多 く の 派 遣 社 員 に と っ て 有 意 義 な 機 会 で あ っ た こ と が う か が え る 。 自 由 記 述 の 内 容 か ら も 、 気 づ き や き っ か け に な っ た と い う コ メ ン ト や 、 実 際 に 行 動 に 取 り 組 む こ と で 職 場 の 人 間 関 係 が 円 滑 に な り 、 仕 事 が や り や す く な っ た 、 モ チ ベ ー シ ョ ン が 向 上 し た と い う 意 見 や 感 想 が 多 か っ た 。 実 際 に 、最 初 の 自 己 診 断 結 果 と 1 ヶ 月 後 の 自 己 診 断 結 果 を 比 較 す る と 、「 4 つ の 力 」す べ て で 平 均 ス コ ア が 上 昇 し て い る ほ か( 図 2)、合 計 得 点 の 全 体 分 布 も 1 か 月 後 は 高 得 点 の 方 向 に 移 動 し て お り ( 図 3)、 合 計 得 点 の 平 均 が 23.3 点 か 26.9 点 に 上 昇 し た 。 派 遣 先 17 社 か ら も 1 か 月 の 間 に 派 遣 社 員 の 姿 勢 や 態 度 に 変 化 が 見 ら れ た と す る 好 意 的 な 回 答 が 多 く 、 「 4 つ の 力 」 向 上 の た め の 行 動 に 取 組 む こ と で 派 遣 先 か ら の 評 価 向 上 に 一 定 の 効 果 が 期 待 で き る 結 果 と な っ た 。 以 上 の よ う に 、「 4 つ の 力 」を 用 い た 能 力 評 価 と 能 力 向 上 の 取 組 み が 、派 遣 先 か ら の 評 価 向 上 に 繫 が る こ と を 示 唆 す る 結 果 が 得 ら れ た も の の 、 自 由 回 答 欄 で は 、 今 回 の 内 容 が 初 歩 的 す ぎ る た め 対 象 を 限 定 す べ き と い う 意 見 が あ る 一 方 で 、 定 期 的 に 自 分 の 立 ち 位 置 を 測 る た め に す べ て の 派 遣 社 員 に 広 く 実 施 し た ほ う が よ い と い う 意 見 も あ っ た 。 今 後 も 、 対 象 と す る 派 遣 社 員 の 属 性 や 、 キ ャ リ ア 形 成 や 能 力 開 発 ・ 成 長 意 欲 な ど の 志 向 性 も 考 慮 し て 継 続 し て 検 証 を 重 ね 、 よ り 効 果 的 な 活 用 方 法 に つ い て 模 索 す る 必 要 が あ る 。 図 2 1 ヶ 月 経 過 後 の 「 4 つ の 力 」 平 均 ス コ ア の 変 化

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図 3 1 ヶ 月 経 過 後 の「 4 つ の 力 」合 計 点 の 分 布( ト ラ イ ア ル 参 加 者 84 名 の う ち 、前 後 の 診 断 表 を 回 収 で き た 54 名 分 ) 4.小 括 本 稿 で は 、 派 遣 社 員 に 対 す る キ ャ リ ア 形 成 支 援 と し て 、 正 社 員 と し て の 就 業 支 援 と 時 間 給 の 改 善 を 取 り 上 げ 、 両 者 の 貢 献 す る 要 因 と し て 、 業 務 ス キ ル で な く 、 汎 用 的 ス キ ル に 着 目 し て 分 析 を 行 っ た 。 さ ら に 分 析 の み で な く 、 派 遣 社 員 の 汎 用 的 ス キ ル を 向 上 す る た め の 能 力 開 発 ツ ー ル を 作 成 し 、 そ の 効 果 を 実 証 す る た め の 実 験 を 行 っ た こ と に 特 徴 が あ る 。 派 遣 社 員 に 対 す る 個 人 調 査 に よ っ て 派 遣 社 員 の 汎 用 的 ス キ ル を 「 4 つ の 力 」 で 測 定 し て 分 析 し た 結 果 に よ る と 、 汎 用 的 ス キ ル が 高 い こ と は 、 正 社 員 打 診 経 験 お よ び 給 与 上 昇 経 験 の 確 率 を 高 め 、 時 給 の 上 昇 に も 寄 与 す る こ と が 確 認 で き た 。 ま た 、 派 遣 ス タ ッ フ の 汎 用 的 ス キ ル を 高 め る た め に 作 成 し た 能 力 開 発 ツ ー ル は 、 実 証 実 験 に よ る と 汎 用 的 ス キ ル の 向 上 に つ い て 一 定 の 効 果 を 確 認 で き た 。 そ の た め 、 派 遣 会 社 が 派 遣 社 員 の キ ャ リ ア 形 成 を 支 援 策 の 仕 組 み と し て 、 今 回 の 能 力 開 発 ツ ー ル を 活 用 で き よ う 。 【 引 用 ・ 参 考 文 献 】 小野晶子(2011)「短期派遣労働者の就業選択と雇用不安」『日本労働研究雑誌』No.610,pp.48-64. 小野晶子(2012)「派遣スタッフのキャリア-能力開発・賃金・正社員転換の実態」労働政策研究・研修機構編『非正規 就業の実態とその政策課題-非正規雇用とキャリア形成、均衡・均等処遇を中心に』(JITPT 第 2 期プロジェクト研 究シリーズ③)、pp.124-160. 木村琢磨(2008)「派遣スタッフのキャリア形成要因―派遣スタッフアンケート調査から―」社団法人日本人材派遣協会 『派遣スタッフに係る能力開発・キャリア形成プロジェクト報告書』(厚生労働省委託研究)pp.45-56. 佐藤博樹・大木栄一編(2014)『人材サービス産業の新しい役割-就業機会とキャリアの質向上のために』(有斐閣). (注:2014 年7月に刊行予定) 清水直美(2007)「派遣スタッフのキャリアと基幹化」『日本労働研究雑誌』No.568,pp.93-105. 清水直美(2010)「派遣元・派遣労働者関係と派遣労働者のキャリア形成」『キャリアデザイン研究』No.6,pp.137-155. 島貫智行(2010)「事務系派遣スタッフのキャリア類型と仕事・スキル・賃金の関係」佐藤博樹・佐野嘉秀・堀田聰子編 『実証研究 日本の人材ビジネス』(日本経済新聞出版社)、pp.506-533. 辰巳哲子「すべての働く人に必要な能力に関する考察―学校と企業とが共用する「基礎力」の提唱―」『Works Review』 2006 Vol.1,pp.124-133. 日本人材派遣協会(2014)『派遣社員WEBアンケート調査』. 松浦民恵(2009)「派遣スタッフのキャリア形成に向けて―ヒアリング調査による考察」『日本労働研究雑誌』No.582, pp.29-39. 三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社(2010)『派遣労働者等に係る能力開発・キャリア形成の仕組みの整備 事業 報告書』(厚生労働省職業能力開発局委託事業). 労働政策研究・研修機構編(2011)『派遣社員のキャリアと働き方に関する調査(派遣労働者調査)』(調査シリーズ、No. 80)労働政策研究・研修機構.

表 3: 回 帰 分 析 に 使 用 す る 変 数 の 記 述 統 計 量   度数 最小値 最大値 平均値 標準偏差 正社員打診経験ダミー 3,319 0.0 1.0 0.2 0.4 給与上昇経験ダミー 3,319 0.0 1.0 0.3 0.5 ※時給【ベース:時給制】 3,257 664.0 4000.0 1368.9 268.9 「4つの力」合計得点(点) 3,319 6.0 36.0 26.7 5.1 新人が仕事をこなせる期間(日) 3,319 0.0 1095.0 123.7 191.6 主業
図  3  1 ヶ 月 経 過 後 の「 4 つ の 力 」合 計 点 の 分 布( ト ラ イ ア ル 参 加 者 84 名 の う ち 、前 後 の 診 断 表 を 回 収 で き た 54 名 分 )   4.小 括     本 稿 で は 、 派 遣 社 員 に 対 す る キ ャ リ ア 形 成 支 援 と し て 、 正 社 員 と し て の 就 業 支 援 と 時 間 給 の 改 善 を 取 り 上 げ 、 両 者 の 貢 献 す る 要 因 と し て 、 業 務 ス キ ル で な く

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