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JAXA/NASA 1 2

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(1)

JAXAホームページ 2016.09 研究開発部門ホームページ http://www.jaxa.jp http://www.ard.jaxa.jp

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

研究開発部門

〒305-8505 茨城県つくば市千現2-1-1 TEL:029-868-5000(代表)

研究開発部門

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

(2)

1

2

 2015年4月、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 (JAXA)の研究開発部門長(筑波宇宙センター所長 兼務) に就任いたしました。時を同じくして、JAXAは国立研究開 発法人として新たな一歩を踏み出しました。宇宙航空プロ ジェクトの確実な達成に向けた研究開発に加え、JAXAの 総合力を結集して、社会課題の解決、国際競争力の強化に 技術で貢献するための科学技術・イノベーション創出につな がる研究を推進し、研究開発成果の最大化を目指して行き たいと思います。  このため、これまで各事業本部に分散していた研究機能 を研究開発部門に集約させるとともに、細分化されていた 専門技術組織を大くくり化して5つのユニットと2つのグルー プにまとめました。分野間の壁を無くすことで、より広い視 野で課題解決のアプローチを探り、既存の枠を超えた新た な技術を生み出す研究開発が強化されます。研究目標につ いても、まず、解決を目指す課題を明確化し、それに必要な 技術目標を設定して研究に取り組むこととしました。  イノベーションを創出するためには、宇宙航空以外の分野 や機関との交流も重要です。国や社会が抱える課題に対し て 、優れた技 術を保 有 する研 究 機 関や 大 学 の 研 究者と JAXAが積極的に連携して解決を目指すことで、国としての 成果の最大化を図り、併せて宇宙航空分野の研究の活性化 にもつなげていきたいと考えます。また、20年、30年先を展 望し、世界を先導するような新たな宇宙利用の構想や技術 を一つでも多く発信し、その実現に向けた研究開発を進め ていきたいと考えています。  どうか、新たに生まれ変わったJAXA研究開発部門の挑 戦に、皆様方の変わらぬご支援、ご協力を賜りたく、よろし くお願いいたします。

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構

研究開発部門長

今井 良一

研究開発部門における研究理念

1,革新的なアイデアと技術による貢献

 安心・安全な社会、競争力のある産業基盤、最先端の学術の推進・構築に革新的なアイ

デアと技術をもって研究開発で貢献する。

 また、国としてのアウトカムの最大化を目指し、日本の優れた技術と連携して、社会や

学術上の課題に対して宇宙航空分野から解決策を提案する。

2,高い付加価値と国際競争力

 研究においては、常に世界トップレベルを意識して自らの研究の質の向上に努め、開発

においては、産業的な波及性や市場性を広く先読みし、産業界と実用化のシナリオを共

有することで、高い付加価値と国際競争力のある技術を生み出す。

3,着実な開発とミッション達成

 宇宙基本計画に記載されたプロジェクトの立案、推進においては、技術でシステムの価

値を最大化することに貢献し、着実な開発とミッション達成(開発・実証における技術課

題の解決)を専門技術で支える。

部門長

挨拶

ⓒJAXA/NASA

1

2

 2015年4月、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 (JAXA)の研究開発部門長(筑波宇宙センター所長 兼務) に就任いたしました。時を同じくして、JAXAは国立研究開 発法人として新たな一歩を踏み出しました。宇宙航空プロ ジェクトの確実な達成に向けた研究開発に加え、JAXAの 総合力を結集して、社会課題の解決、国際競争力の強化に 技術で貢献するための科学技術・イノベーション創出につな がる研究を推進し、研究開発成果の最大化を目指して行き たいと思います。  このため、これまで各事業本部に分散していた研究機能 を研究開発部門に集約させるとともに、細分化されていた 専門技術組織を大くくり化して5つのユニットと2つのグルー プにまとめました。分野間の壁を無くすことで、より広い視 野で課題解決のアプローチを探り、既存の枠を超えた新た な技術を生み出す研究開発が強化されます。研究目標につ いても、まず、解決を目指す課題を明確化し、それに必要な 技術目標を設定して研究に取り組むこととしました。  イノベーションを創出するためには、宇宙航空以外の分野 や機関との交流も重要です。国や社会が抱える課題に対し て 、優れた技 術を保 有 する研 究 機 関や 大 学 の 研 究者と JAXAが積極的に連携して解決を目指すことで、国としての 成果の最大化を図り、併せて宇宙航空分野の研究の活性化 にもつなげていきたいと考えます。また、20年、30年先を展 望し、世界を先導するような新たな宇宙利用の構想や技術 を一つでも多く発信し、その実現に向けた研究開発を進め ていきたいと考えています。  どうか、新たに生まれ変わったJAXA研究開発部門の挑 戦に、皆様方の変わらぬご支援、ご協力を賜りたく、よろし くお願いいたします。

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構

研究開発部門長

今井 良一

研究開発部門における研究理念

1,革新的なアイデアと技術による貢献

 安心・安全な社会、競争力のある産業基盤、最先端の学術の推進・構築に革新的なアイ

デアと技術をもって研究開発で貢献する。

 また、国としてのアウトカムの最大化を目指し、日本の優れた技術と連携して、社会や

学術上の課題に対して宇宙航空分野から解決策を提案する。

2,高い付加価値と国際競争力

 研究においては、常に世界トップレベルを意識して自らの研究の質の向上に努め、開発

においては、産業的な波及性や市場性を広く先読みし、産業界と実用化のシナリオを共

有することで、高い付加価値と国際競争力のある技術を生み出す。

3,着実な開発とミッション達成

 宇宙基本計画に記載されたプロジェクトの立案、推進においては、技術でシステムの価

値を最大化することに貢献し、着実な開発とミッション達成(開発・実証における技術課

題の解決)を専門技術で支える。

部門長

挨拶

ⓒJAXA/NASA

(3)

3

4

筑波宇宙センターを中心に、 調布地区、相模原地区、角田地区に展開。

所在地

研究戦略部

センサ研究グループ

研究推進部

角田管理課

S&MA

第一研究ユニット

第二研究ユニット

部門長

第三研究ユニット

第四研究ユニット

システム技術ユニット

革新的衛星技術実証グループ

相模原キャンパス 角田宇宙センター 筑波宇宙センター 調布航空宇宙センター 軌道、航法・誘導・制御、通信、電源、電子部品領域等の主に 電気系技術を専門とするユニット 輸送系に関係する技術を専門とするユニット プログラム、数値シミュレーション、 情報工学領域等の主にソフト系技術を専門とするユニット 熱、構造・機構、流体・空力、衛星推進、 有人宇宙環境制御領域等の主に機械系技術を専門とするユニット

研究開発部門の組織図

研究開発部門の研究

研究開発部門の研究は、大きく次のような方針に基づき構成されます。

将来を展望し、柱とする技術にJAXAが戦略的、組織横断的に取り組む研究を

「先導する研究」と位置付け、研究開発部門が中核となってその研究を推進します。

1

JAXAが進めるプロジェクトの課題解決を担い、我が国の宇宙航空産業の競争力に

不可欠な共通・基盤的な技術の強化に貢献する研究を「支える研究」として推進します。

2

広く日本の優れた知恵や技術と連携することで宇宙利用の促進を図るための

宇宙実証機会を広く提供する研究開発活動を進めます。

3

これらを互いに密接に関連付けることで、シナジー効果による

付加価値の高い成果を効率的に生み出します。

3

4

筑波宇宙センターを中心に、 調布地区、相模原地区、角田地区に展開。

所在地

研究戦略部

センサ研究グループ

研究推進部

角田管理課

S&MA

第一研究ユニット

第二研究ユニット

部門長

第三研究ユニット

第四研究ユニット

システム技術ユニット

革新的衛星技術実証グループ

相模原キャンパス 角田宇宙センター 筑波宇宙センター 調布航空宇宙センター 軌道、航法・誘導・制御、通信、電源、電子部品領域等の主に 電気系技術を専門とするユニット 輸送系に関係する技術を専門とするユニット プログラム、数値シミュレーション、 情報工学領域等の主にソフト系技術を専門とするユニット 熱、構造・機構、流体・空力、衛星推進、 有人宇宙環境制御領域等の主に機械系技術を専門とするユニット

研究開発部門の組織図

研究開発部門の研究

研究開発部門の研究は、大きく次のような方針に基づき構成されます。

将来を展望し、柱とする技術にJAXAが戦略的、組織横断的に取り組む研究を

「先導する研究」と位置付け、研究開発部門が中核となってその研究を推進します。

1

JAXAが進めるプロジェクトの課題解決を担い、我が国の宇宙航空産業の競争力に

不可欠な共通・基盤的な技術の強化に貢献する研究を「支える研究」として推進します。

2

広く日本の優れた知恵や技術と連携することで宇宙利用の促進を図るための

宇宙実証機会を広く提供する研究開発活動を進めます。

3

これらを互いに密接に関連付けることで、シナジー効果による

付加価値の高い成果を効率的に生み出します。

(4)

先導する研究 先導する研究

5

6

宇宙輸送システムの

競争力強化

 宇宙輸送システムについて、性能・信頼性・安全性の向上、低コスト化など各種の研 究を進めることで、我が国の自立的な打ち上げ能力の拡大、および打ち上げサービスの 国際競争力の強化に資することを目的としています。  現行の基幹ロケットであるH-IIA/Bやイプシロン、および開発を進めているH3やイ プシロン後継機に使用される共通基盤技術、ならびに我が国が強みを有するLNG (Liquefied Natural Gas 液化天然ガス)推進系や次世代に向けた再使用型宇宙輸

送システムなどの研究を継続して行います。  研究リーダ

沖田 耕一

研究の概要

LE-9用噴射器試験 複合材ラティス構造の研究

オール電化衛星時代の

通信衛星の競争力強化

通信衛星の競争力強化においては、コストへの影響が大きい衛星質量の減とトラン スポンダ(電波中継機器)搭載数の増、の2つが鍵となります。  従来の化学推進衛星は、ペイロード比率(ペイロード質量/打上質量)が20%程度に 対し、オール電化衛星は推進系を全てホールスラスタのみで実現し、さらに電源の軽量 化、排熱技術の高度化することで、衛星質量増加を抑え、ペイロード比率40%程度の実 現を目指します。  加えて衛星運用の自動化も行うことで、コストを低減し、競争力強化を図ります。

研究の概要

ホールスラスタ(BBM) c JAXA/IHI/IA c JAXA/IHI/IA c JAXA/IHI/IA

鳩岡 恭志

研究リーダ 薄膜太陽電池アレイシート

研究の

ねらい

研究の

ねらい

1.研究の意義価値 宇宙開発利用を支える根幹となる宇宙輸送システムは、確実かつ低コストでの運用が重要です。 宇宙輸送システムを保有する各国は絶え間ない改良を進めており、さらに昨今では民間企業も独自に事業として参入し てきており、より競争が激しくなっています。  これらの状況に鑑み、宇宙基本計画に示される我が国の宇宙活動の自立性の確保、宇宙産業基盤の維持・強化につな がる共通基盤技術等にかかる各種の研究を進めることにより、将来の宇宙利用の拡大に資する宇宙輸送システムの革新 を図ります。 2.研究の目標 競争力強化をキーワードに、大きく次のサブテーマで研究を進めています。 ①システム  ②推進・エンジン  ③アビオニクス(電子機器)  ④構造  ⑤LNG推進系  等 現行の基幹ロケットの課題解決・改良等に直接適用を目指しているもの、開発中のH3やイプシロンへの革新的な技術 の適用を目指しているもの、さらに将来の抜本的な輸送系革新を目指しているものなど、テーマにより目標は異なります が、プロジェクトとの有機的な連携を取りながら研究を進めています。  中でも、H3の次の世代に向け、さらなる低コスト化を図り競争力を確保する方策として、今まで使い捨てだったロケッ トの第1段の再使用化を目指したシステムを重点研究として取り組んでいます。 1.研究の意義価値 オール電化衛星は、従来の化学推進衛星で打上質量の半分程度を占める推薬量を大幅に低減でき、通信衛星の衛星の 収益性に関係するトランスポンダ搭載数の増加、つまりペイロード比率の向上が可能です。 欧米でも開発は進められているものの、トランスポンダ搭載数増に伴う電源系の大容量化に対して、軽量化は十分に行 われておらず、ペイロード比率は20%∼30%程度に留まっているものと推定されます。  本研究により、電気推進であるホールスラスタに加え、推進系に次いで質量が大きい電源(太陽電池パドル、バッテリ、 電力制御器)の軽量化等により、ペイロード比率40%程度を達成し、通信衛星のトランスポンダ搭載性において欧米を上 回り、我が国の衛星の競争力を向上させることを目指します。 2.研究の目標 (1)ホールスラスタのみを用いた電気推進の実現。商用通信衛星の軌道上運用期間15年に対応する寿命の達成。 (2)デジタル制御技術により発熱集中を無くし、小型軽量化を図った電力制御器等による電源の質量効率50kg/kWの 達成。 (3)排熱能力の高い展開ラジエータ(75W /kg@40℃)と平板型ヒートパイプの高い実効熱伝導率(5000W/mK以上) による、トランスポンダ搭載数増に伴う高発熱処理および高密度実装を実現。 (4)静止軌道/トランスファー軌道に対応できるGPS受信機(従来は、低軌道衛星のみ)により、高高度軌道での高精度な オンボードリアルタイム軌道決定を実現し、軌道保持および軌道変換運用を全自動化。通信事業者の測距局の不要 化と運用効率化につなげ、コストダウンに貢献。 (5)バッテリのエネルギー高密度化(180Wh/kg以上,将来的には200Wh/kg以上)と薄膜太陽電池を用いた太陽電池 パ ド ル の 軽 量 化 (従来の約1/3)に よる電源の大幅な 軽量化の実現。 先導する研究 先導する研究

5

6

佐藤 寿晃

宇宙輸送システムの

競争力強化

 宇宙輸送システムについて、性能・信頼性・安全性の向上、低コスト化など各種の研 究を進めることで、我が国の自立的な打ち上げ能力の拡大、および打ち上げサービスの 国際競争力の強化に資することを目的としています。 現行の基幹ロケットであるH-IIA/Bやイプシロン、および開発を進めているH3やイ プシロン後継機に使用される共通基盤技術、ならびに我が国が強みを有するLNG (Liquefied Natural Gas 液化天然ガス)推進系や次世代に向けた再使用型宇宙輸

送システムなどの研究を継続して行います。 研究リーダ

研究の概要

LE-9用噴射器試験 複合材ラティス構造の研究

オール電化衛星時代の

通信衛星の競争力強化

 通信衛星の競争力強化においては、コストへの影響が大きい衛星質量の減とトラン スポンダ(電波中継機器)搭載数の増、の2つが鍵となります。  従来の化学推進衛星は、ペイロード比率(ペイロード質量/打上質量)が20%程度に 対し、オール電化衛星は推進系を全てホールスラスタのみで実現し、さらに電源の軽量 化、排熱技術の高度化することで、衛星質量増加を抑え、ペイロード比率40%程度の実 現を目指します。  加えて衛星運用の自動化も行うことで、コストを低減し、競争力強化を図ります。

研究の概要

ホールスラスタ(BBM) c JAXA/IHI/IA c JAXA/IHI/IA c JAXA/IHI/IA 研究リーダ

艸分 宏昌

薄膜太陽電池アレイシート

研究の

ねらい

研究の

ねらい

1.研究の意義価値  宇宙開発利用を支える根幹となる宇宙輸送システムは、確実かつ低コストでの運用が重要です。  宇宙輸送システムを保有する各国は絶え間ない改良を進めており、さらに昨今では民間企業も独自に事業として参入し てきており、より競争が激しくなっています。 これらの状況に鑑み、宇宙基本計画に示される我が国の宇宙活動の自立性の確保、宇宙産業基盤の維持・強化につな がる共通基盤技術等にかかる各種の研究を進めることにより、将来の宇宙利用の拡大に資する宇宙輸送システムの革新 を図ります。 2.研究の目標  競争力強化をキーワードに、大きく次のサブテーマで研究を進めています。 ①システム  ②推進・エンジン  ③アビオニクス(電子機器)  ④構造  ⑤LNG推進系  等 現行の基幹ロケットの課題解決・改良等に直接適用を目指しているもの、開発中のH3やイプシロンへの革新的な技術 の適用を目指しているもの、さらに将来の抜本的な輸送系革新を目指しているものなど、テーマにより目標は異なります が、プロジェクトとの有機的な連携を取りながら研究を進めています。 中でも、H3の次の世代に向け、さらなる低コスト化を図り競争力を確保する方策として、今まで使い捨てだったロケッ トの第1段の再使用化を目指したシステムを重点研究として取り組んでいます。 1.研究の意義価値 オール電化衛星は、従来の化学推進衛星で打上質量の半分程度を占める推薬量を大幅に低減でき、通信衛星の衛星の 収益性に関係するトランスポンダ搭載数の増加、つまりペイロード比率の向上が可能です。  欧米でも開発は進められているものの、トランスポンダ搭載数増に伴う電源系の大容量化に対して、軽量化は十分に行 われておらず、ペイロード比率は20%∼30%程度に留まっているものと推定されます。  本研究により、電気推進であるホールスラスタに加え、推進系に次いで質量が大きい電源(太陽電池パドル、バッテリ、 電力制御器)の軽量化等により、ペイロード比率40%程度を達成し、通信衛星のトランスポンダ搭載性において欧米を上 回り、我が国の衛星の競争力を向上させることを目指します。 2.研究の目標 (1)ホールスラスタのみを用いた電気推進の実現。商用通信衛星の軌道上運用期間15年に対応する寿命の達成。 (2)デジタル制御技術により発熱集中を無くし、小型軽量化を図った電力制御器等による電源の質量効率50kg/kWの 達成。 (3)排熱能力の高い展開ラジエータ(75W /kg@40℃)と平板型ヒートパイプの高い実効熱伝導率(5000W/mK以上) による、トランスポンダ搭載数増に伴う高発熱処理および高密度実装を実現。 (4)静止軌道/トランスファー軌道に対応できるGPS受信機(従来は、低軌道衛星のみ)により、高高度軌道での高精度な オンボードリアルタイム軌道決定を実現し、軌道保持および軌道変換運用を全自動化。通信事業者の測距局の不要 化と運用効率化につなげ、コストダウンに貢献。 (5)バッテリのエネルギー高密度化(180Wh/kg以上,将来的には200Wh/kg以上)と薄膜太陽電池を用いた太陽電池 パ ド ル の 軽 量 化 (従来の約1/3)に よる電源の大幅な 軽量化の実現。

(5)

先導する研究 先導する研究

7

8

大西 充

宇宙活動の安全確保

 軌道上の宇宙ゴミ(スペースデブリ、またはデブリ)は、年々増加の一途をたどってお り、将来的には人類の宇宙活動の妨げになると予想されます。  JAXAは、「脅威となるデブリの除去」、「デブリを生まないクリーンな衛星、ロケット の実現」 などを目指す、クリーン・スペースプログラムを、我が国の国際貢献策として提 唱すべく、政府、内外の関係機関との連携検討を進めるとともに、その実現に向けた技 術の研究開発に取り組んでいます。 研究リーダ

研究の概要

宇宙探査技術の研究

 日本が宇宙探査において持続的に世界の最先端であり、また将来の月・火星への有 人探査などの国際協働探査ミッションにおいて主導的な地位を確保するためには、そ の成功を支える探査技術の基盤強化が必要不可欠です。  本研究では、日本の強みを伸ばし、近い将来の宇宙探査ミッションを先導するための 研究開発を行っています。

研究の概要

デブリ除去衛星による大型デブリの捕獲(左)と導電性テザーによる除去(右)(イメージ) デブリ観測専用施設 衝突リスク評価ソフト 防御材の高速衝突試験

佐藤 直樹

研究リーダ

研究の

ねらい

研究の

ねらい

1.研究の意義価値 (1)我が国の安全保障、社会生活を支えるインフラとして定着した宇宙資産を保護するとともに、人類の宇宙開発活動の 長期持続的発展に貢献します。 (2)国際的課題である本問題に対する外交面での発言力を高めるとともに、産業面においては将来の規制ルールを先取 りすることで国際競争力の強化に資することを目指します。 2.研究の目標 (1)国際標準・ルール化の検討「国際標準化の戦略的推進」 ルール化が得意な欧州等とも協力し、日本の保有技術や世界の動向を考慮しつつ2020年を目途に戦略的に国際 ルールの提案・策定 (2)衛星・ロケットの非デブリ化技術の研究「デブリを生まないJAXA宇宙機」 軌道寿命短縮、制御落下技術、 ロケット上段機体の複合材化、 推薬タンクの複合材化を実現し、 傷害性のある再突入質量の最 小化 (3)デブリ除去技術の研究「脅威と なるデブリの低コスト除去」 自動ランデブ等、日本の技術蓄積 を活用し、2020年代を目途に低コ ストデブリ除去システムの実現 (4)デブリ状況把握・防御技術の研 究「JAXA宇宙機の被害防止」 衝突回避 運 用における軌道予 測精度向上、防護策の効率化、 デブリモデルの精度向上等 1.研究の意義価値  現在、各国の宇宙機関による国際協働で月や火星を探査する計画検討が進められており、日本もその中心メンバーと なって計画検討に参加しています。また、日本独自の月探査計画や火星探査計画の検討も進められています。  計画実現のためのキーとなる最先端の技術を獲得することは、科学技術立国として我が国が人類の活動領域拡大に貢 献するだけでなく、国際宇宙探査における我が国の地位や月・火星における資源利用の機会を獲得することにつながりま す。また、未知の世界に挑戦し、世界初のトップサイエンス成果を持続的に発信することで、優れた研究者の育成にも貢献 できます。  他国の状況や国際宇宙探査の動向を踏まえて、国内の他の研究機関や民間企業とも連携しながら、戦略的に研究計画 を設定し、実行することで、限りあるリソースを有効に使った効率的な研究が可能となります。 2.研究の目標  2015年7月に、文部科学省のISS・国際宇宙探査小委員会が、「宇宙探査新時代の幕開けと我が国の挑戦」と題した第 2次とりまとめ文書を公表しました。その中で、重力天体着陸技術の獲得と月南極の探査活動を次の重要なステップとす るとともに、①重力天体着陸・離陸技術、②重力天体探査技術(エネルギー、走行・作業)、③宇宙滞在技術、④深宇宙補給 技術の4分野が今後重点的に取り組む技術課題として識別されました。  一方、JAXA国際宇宙探査推進チームで整理した「日本の宇宙探査全体シナリオ」では、我が国が進めるべき宇宙探査 のシナリオを提案するとともに、上記の4分野を中心に技術ロードマップをまとめました。 本研究では、その技術ロードマップをベースに、我が国の強みや特徴を生かしつつ、革新性や将来性なども踏まえて優先 度をつけ、重点的に取り組むテーマとして以下の研究を進めています。 (1)重力天体着陸技術 月の南極にも着陸可能な画像航法、障害物回避などの航法誘導 技術の開発 (2)重力天体探査技術(エネルギー、走行・作業) 月の南極探査に不可欠な広温度範囲対応の高密度リチウムイオ ン電池や、斜面走行に適したクローラ型走行機構の研究など。 (3)有人滞在技術(生命維持・環境制御技術、放射線防護技術) 水補給が不要な空気・水再生技術の開発や深宇宙での過酷な放 射線環境から宇宙飛行士を防護する技術。 (4)深宇宙ランデブ技術 日本の得意な光センサ技術を応用した高感度3次元ライダーなど からなる深宇宙航法センサパッケージの開発や安全でロバスト 性の高い相対航法システムの開発。 月南極探査ミッションの概念図 月着陸船 水探査ローバ 先導する研究 先導する研究

7

8

大西 充

宇宙活動の安全確保

 軌道上の宇宙ゴミ(スペースデブリ、またはデブリ)は、年々増加の一途をたどってお り、将来的には人類の宇宙活動の妨げになると予想されます。  JAXAは、「脅威となるデブリの除去」、「デブリを生まないクリーンな衛星、ロケット の実現」 などを目指す、クリーン・スペースプログラムを、我が国の国際貢献策として提 唱すべく、政府、内外の関係機関との連携検討を進めるとともに、その実現に向けた技 術の研究開発に取り組んでいます。 研究リーダ

研究の概要

宇宙探査技術の研究

 日本が宇宙探査において持続的に世界の最先端であり、また将来の月・火星への有 人探査などの国際協働探査ミッションにおいて主導的な地位を確保するためには、そ の成功を支える探査技術の基盤強化が必要不可欠です。  本研究では、日本の強みを伸ばし、近い将来の宇宙探査ミッションを先導するための 研究開発を行っています。

研究の概要

デブリ除去衛星による大型デブリの捕獲(左)と導電性テザーによる除去(右)(イメージ) デブリ観測専用施設 衝突リスク評価ソフト 防御材の高速衝突試験

佐藤 直樹

研究リーダ

研究の

ねらい

研究の

ねらい

1.研究の意義価値 (1)我が国の安全保障、社会生活を支えるインフラとして定着した宇宙資産を保護するとともに、人類の宇宙開発活動の 長期持続的発展に貢献します。 (2)国際的課題である本問題に対する外交面での発言力を高めるとともに、産業面においては将来の規制ルールを先取 りすることで国際競争力の強化に資することを目指します。 2.研究の目標 (1)国際標準・ルール化の検討「国際標準化の戦略的推進」 ルール化が得意な欧州等とも協力し、日本の保有技術や世界の動向を考慮しつつ2020年を目途に戦略的に国際 ルールの提案・策定 (2)衛星・ロケットの非デブリ化技術の研究「デブリを生まないJAXA宇宙機」 軌道寿命短縮、制御落下技術、 ロケット上段機体の複合材化、 推薬タンクの複合材化を実現し、 傷害性のある再突入質量の最 小化 (3)デブリ除去技術の研究「脅威と なるデブリの低コスト除去」 自動ランデブ等、日本の技術蓄積 を活用し、2020年代を目途に低コ ストデブリ除去システムの実現 (4)デブリ状況把握・防御技術の研 究「JAXA宇宙機の被害防止」 衝突回避 運 用における軌道予 測精度向上、防護策の効率化、 デブリモデルの精度向上等 1.研究の意義価値  現在、各国の宇宙機関による国際協働で月や火星を探査する計画検討が進められており、日本もその中心メンバーと なって計画検討に参加しています。また、日本独自の月探査計画や火星探査計画の検討も進められています。  計画実現のためのキーとなる最先端の技術を獲得することは、科学技術立国として我が国が人類の活動領域拡大に貢 献するだけでなく、国際宇宙探査における我が国の地位や月・火星における資源利用の機会を獲得することにつながりま す。また、未知の世界に挑戦し、世界初のトップサイエンス成果を持続的に発信することで、優れた研究者の育成にも貢献 できます。  他国の状況や国際宇宙探査の動向を踏まえて、国内の他の研究機関や民間企業とも連携しながら、戦略的に研究計画 を設定し、実行することで、限りあるリソースを有効に使った効率的な研究が可能となります。 2.研究の目標  2015年7月に、文部科学省のISS・国際宇宙探査小委員会が、「宇宙探査新時代の幕開けと我が国の挑戦」と題した第 2次とりまとめ文書を公表しました。その中で、重力天体着陸技術の獲得と月南極の探査活動を次の重要なステップとす るとともに、①重力天体着陸・離陸技術、②重力天体探査技術(エネルギー、走行・作業)、③宇宙滞在技術、④深宇宙補給 技術の4分野が今後重点的に取り組む技術課題として識別されました。  一方、JAXA国際宇宙探査推進チームで整理した「日本の宇宙探査全体シナリオ」では、我が国が進めるべき宇宙探査 のシナリオを提案するとともに、上記の4分野を中心に技術ロードマップをまとめました。 本研究では、その技術ロードマップをベースに、我が国の強みや特徴を生かしつつ、革新性や将来性なども踏まえて優先 度をつけ、重点的に取り組むテーマとして以下の研究を進めています。 (1)重力天体着陸技術 月の南極にも着陸可能な画像航法、障害物回避などの航法誘導 技術の開発 (2)重力天体探査技術(エネルギー、走行・作業) 月の南極探査に不可欠な広温度範囲対応の高密度リチウムイオ ン電池や、斜面走行に適したクローラ型走行機構の研究など。 (3)有人滞在技術(生命維持・環境制御技術、放射線防護技術) 水補給が不要な空気・水再生技術の開発や深宇宙での過酷な放 射線環境から宇宙飛行士を防護する技術。 (4)深宇宙ランデブ技術 日本の得意な光センサ技術を応用した高感度3次元ライダーなど からなる深宇宙航法センサパッケージの開発や安全でロバスト 性の高い相対航法システムの開発。 月南極探査ミッションの概念図 月着陸船 水探査ローバ

(6)

先導する研究 先導する研究

9

10

宇宙用部品の研究

 宇宙で人工衛星が長期間安定的に動作するためには、宇宙環境に耐える部品(宇宙 用部品)が必要です。人工衛星開発に不可欠な宇宙用部品の研究開発を進め、自在な 宇宙活動を継続できる能力を維持するとともに、将来の人工衛星の競争力強化をねら います。  宇宙用部品の研究開発にあたっては長期的視点にたち、有望な国内技術を研究機関、 民間企業との協力の下に発掘し、将来の衛星システムを効果的に刷新すると考えられる 部品を優先的に研究開発し、研究成果の還元を早期に実現することを目指します。

研究の概要

衛星技術刷新

 人工衛星の国際競争力を高めることを目指し、技術刷新につながる革新的なテーマの研究を 行っています。  ワイヤレス化の研究は、衛星内の搭載装置間のデータ通信および電力伝送の配線をワイヤレス 化し、新しい衛星設計・試験プロセスを具体化するものです。これらを実現する要素技術の確立を 経て、衛星システム設計の最適化、汎用性を追求します。

 合成開口レーダの研究は、ふよう1号(JERS-1)、 だいち(ALOS)、 だいち2号(ALOS-2)と着実 に進歩してきた合成開口レーダの性能を継続し、肥大化する観測データを衛星上で利用目的に応 じて集約・処理する技術を確立し、革新的な衛星システムを提案します。

研究の

ねらい

研究の概要

鈴木 浩一

研究リーダ

稲場 典康

研究リーダ ※1 SOI(Silicon On Insulator):絶縁膜上に形成したシリコンを基板とした半導体素子。

※2 ASIC(Application Specific Integrated Circuit):特定の用途向けに設計・製造される集積回路の総称。

宇宙用MPU ※:ミッション定義審査の観測性能 合成開口レーダ衛星の観測性能とデータレート 宇宙用パワーデバイス

研究の

ねらい

研究の

ねらい

衛星 分解能・観測幅 データレート(Mbps) ふよう1号(JERS-1) 18m・75km 60 だいち(ALOS) 10m・70km 240 だいち2号(ALOS-2) 3m・50km 800 先進レーダ衛星※ 3m・200km 6800 1.研究の意義価値  大型の人工衛星では1機あたり約10万点の宇宙用部品が必要と言われています。宇宙用電子機器を組み立てるために は多くの種類の宇宙用部品が必要で、これらの部品を不足なく揃えなければ人工衛星は完成しません。     システム性能は構成する部品の性能を上回るものは実現できません。このため、部品の性能はシステム性能の限界でも あり、宇宙用部品の性能向上は、人工衛星の機能性能の向上には不可欠です。  戦略的に選ばれた部品を開発することにより、本研究のねらいである自在な宇宙活動を継続できる能力を維持し、将 来の人工衛星の競争力強化が実現可能となります。 2.研究の目標  人工衛星の機能性能を左右する部品に注力して研究開発 を進めています。本研究では、戦略的に必要となる宇宙用部 品を3つのカテゴリにわけて目標を設定しています。 (1)宇宙用のユーザプログラミングデバイス 多様・高度で柔軟なミッション要求への対応として、国産 のSOI※1ASIC※2をベースにJAXAの回路設計技術を組み

込むことで、5年程度を目途に次期宇宙用マイクロプロ セッサの実用化を図ります。 (2)民生半導体チップの耐放射線性(放射線防護)パッケー ジ技術 民生部品の宇宙応用を促進、実用化を図ります。 (3)80%以上の省電力宇宙用部品の実用化 電源系周りのコンバータや制御用パワーデバイスを対象 に、高速、低損失スイッチングに有効な化合物半導体の 適用により、数年程度を目途に実用化を図ります。 さらに、10年先を展望して、超省電力型宇宙用機器を実 現するためのノーマリオフコンピューティングを実現す るため半導体技術の研究を進めます。 1.研究の意義価値(ワイヤレス化)  人工衛星内部をワイヤレス化すれば、衛星ごとに一品ものとして設計していた多数の配線ケーブルやコネクタを全て省 略でき、また何週間もかかる衛星試験の準備も数日で可能となるなど、衛星の開発コスト低減や短期開発に大きな寄与 が期待できます。 2.研究の目標(ワイヤレス化) (1)ワイヤレスセンサチップの研究 微小電力で動作する通信チップとマイクロ波電力伝送チップを組み合わせたワイヤレスセンサを開発し、衛星試験シ ステムを構築。 (2)衛星搭載装置間の信号ネットワークのワイヤレス化の研究 衛星バス機器をワイヤレスでつなぐI/Fモジュールによりオンボードネットワークを構築。 (3)搭載装置への電力供給をワイヤレス化する研究 1kW以上、効率90%以上のワイヤレス電力電送。 1.研究の意義価値(合成開口レーダ)  本研究は、衛星の自律化、中でも、取得した情報を衛星上で集約・解釈し、物体(自然、人工物)や状況を把握する研究で す。例えば、昼夜を問わず観測可能な合成開口レーダは、海洋上の船舶や墜落した飛行機などの人工物の識別・捜索に用 いることが期待されています。現状は観測データを地上に伝送し、必要な情報を抽出したものをプロダクトとして配信す るまでに半日以上の時間を要していますが、本研究の意義は、観測データを衛星上のデジタル回路で迅速に処理し、ユー ザが必要とする情報・特徴点だけを抽出し、データ量を抑えつつ迅速にプロダクト提供を可能にすることにあリます。 2.研究の目標(合成開口レーダ)  合成開口レーダの観測データから、ユーザが 必要とするデータを準リアルタイムで識別する 技術に必要となる衛星上データ処理アルゴリ ズム、並列計算能力に優れるデジタル回路を活 用して衛星搭載を想定した計算機の開発を目 指します。 先導する研究 先導する研究

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宇宙用部品の研究

 宇宙で人工衛星が長期間安定的に動作するためには、宇宙環境に耐える部品(宇宙 用部品)が必要です。人工衛星開発に不可欠な宇宙用部品の研究開発を進め、自在な 宇宙活動を継続できる能力を維持するとともに、将来の人工衛星の競争力強化をねら います。  宇宙用部品の研究開発にあたっては長期的視点にたち、有望な国内技術を研究機関、 民間企業との協力の下に発掘し、将来の衛星システムを効果的に刷新すると考えられる 部品を優先的に研究開発し、研究成果の還元を早期に実現することを目指します。

研究の概要

衛星技術刷新

 人工衛星の国際競争力を高めることを目指し、技術刷新につながる革新的なテーマの研究を 行っています。  ワイヤレス化の研究は、衛星内の搭載装置間のデータ通信および電力伝送の配線をワイヤレス 化し、新しい衛星設計・試験プロセスを具体化するものです。これらを実現する要素技術の確立を 経て、衛星システム設計の最適化、汎用性を追求します。

 合成開口レーダの研究は、ふよう1号(JERS-1)、 だいち(ALOS)、 だいち2号(ALOS-2)と着実 に進歩してきた合成開口レーダの性能を継続し、肥大化する観測データを衛星上で利用目的に応 じて集約・処理する技術を確立し、革新的な衛星システムを提案します。

研究の

ねらい

研究の概要

鈴木 浩一

研究リーダ

稲場 典康

研究リーダ ※1 SOI(Silicon On Insulator):絶縁膜上に形成したシリコンを基板とした半導体素子。

※2 ASIC(Application Specific Integrated Circuit):特定の用途向けに設計・製造される集積回路の総称。

宇宙用MPU ※:ミッション定義審査の観測性能 合成開口レーダ衛星の観測性能とデータレート 宇宙用パワーデバイス

研究の

ねらい

研究の

ねらい

衛星 分解能・観測幅 データレート(Mbps) ふよう1号(JERS-1) 18m・75km 60 だいち(ALOS) 10m・70km 240 だいち2号(ALOS-2) 3m・50km 800 先進レーダ衛星※ 3m・200km 6800 1.研究の意義価値  大型の人工衛星では1機あたり約10万点の宇宙用部品が必要と言われています。宇宙用電子機器を組み立てるために は多くの種類の宇宙用部品が必要で、これらの部品を不足なく揃えなければ人工衛星は完成しません。     システム性能は構成する部品の性能を上回るものは実現できません。このため、部品の性能はシステム性能の限界でも あり、宇宙用部品の性能向上は、人工衛星の機能性能の向上には不可欠です。  戦略的に選ばれた部品を開発することにより、本研究のねらいである自在な宇宙活動を継続できる能力を維持し、将 来の人工衛星の競争力強化が実現可能となります。 2.研究の目標  人工衛星の機能性能を左右する部品に注力して研究開発 を進めています。本研究では、戦略的に必要となる宇宙用部 品を3つのカテゴリにわけて目標を設定しています。 (1)宇宙用のユーザプログラミングデバイス 多様・高度で柔軟なミッション要求への対応として、国産 のSOI※1ASIC※2をベースにJAXAの回路設計技術を組み

込むことで、5年程度を目途に次期宇宙用マイクロプロ セッサの実用化を図ります。 (2)民生半導体チップの耐放射線性(放射線防護)パッケー ジ技術 民生部品の宇宙応用を促進、実用化を図ります。 (3)80%以上の省電力宇宙用部品の実用化 電源系周りのコンバータや制御用パワーデバイスを対象 に、高速、低損失スイッチングに有効な化合物半導体の 適用により、数年程度を目途に実用化を図ります。 さらに、10年先を展望して、超省電力型宇宙用機器を実 現するためのノーマリオフコンピューティングを実現す るため半導体技術の研究を進めます。 1.研究の意義価値(ワイヤレス化)  人工衛星内部をワイヤレス化すれば、衛星ごとに一品ものとして設計していた多数の配線ケーブルやコネクタを全て省 略でき、また何週間もかかる衛星試験の準備も数日で可能となるなど、衛星の開発コスト低減や短期開発に大きな寄与 が期待できます。 2.研究の目標(ワイヤレス化) (1)ワイヤレスセンサチップの研究 微小電力で動作する通信チップとマイクロ波電力伝送チップを組み合わせたワイヤレスセンサを開発し、衛星試験シ ステムを構築。 (2)衛星搭載装置間の信号ネットワークのワイヤレス化の研究 衛星バス機器をワイヤレスでつなぐI/Fモジュールによりオンボードネットワークを構築。 (3)搭載装置への電力供給をワイヤレス化する研究 1kW以上、効率90%以上のワイヤレス電力電送。 1.研究の意義価値(合成開口レーダ)  本研究は、衛星の自律化、中でも、取得した情報を衛星上で集約・解釈し、物体(自然、人工物)や状況を把握する研究で す。例えば、昼夜を問わず観測可能な合成開口レーダは、海洋上の船舶や墜落した飛行機などの人工物の識別・捜索に用 いることが期待されています。現状は観測データを地上に伝送し、必要な情報を抽出したものをプロダクトとして配信す るまでに半日以上の時間を要していますが、本研究の意義は、観測データを衛星上のデジタル回路で迅速に処理し、ユー ザが必要とする情報・特徴点だけを抽出し、データ量を抑えつつ迅速にプロダクト提供を可能にすることにあリます。 2.研究の目標(合成開口レーダ)  合成開口レーダの観測データから、ユーザが 必要とするデータを準リアルタイムで識別する 技術に必要となる衛星上データ処理アルゴリ ズム、並列計算能力に優れるデジタル回路を活 用して衛星搭載を想定した計算機の開発を目 指します。

(7)

支える研究 支える研究

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稲場 典康

宇宙システムの概念検討

およびシステム技術の研究

 ロケットや人工衛星は、たくさんの部品の組み立てだけでなく、地上設備なども含め 様々な要素を複雑に組み合わせることで、宇宙システムとして求められる機能を発揮し ます。本研究では、このような要素の適切な構成を検討し、全体としてより優れた仕組 みとなる宇宙システムを作り出すことを目指しています。  また、内外の各組織と連携し、システムレベルの概念検討を行うことにより、我が国 の知恵・技術を統合して国際競争力のある技術開発、社会課題解決、また、将来の産業 育成につながるプロジェクト提案を行ってゆきます。 研究リーダ

研究の概要

■概念検討の実績 ■光衛星通信の将来図

光衛星通信技術の研究

 地球観測衛星からの取得データ伝送速度の向上、データ量の増大を目的として、光データ中 継システム(JDRS※)の開発が始まっています。  本研究は、多様なユーザが光データ中継サービスを利用可能とし、観測衛星等の低軌道衛星 の意義価値向上を実現するため、光通信機器の小型・軽量化を目指すものです。  ユーザ伝送レートをJDRSの1.8Gbpsの2∼4倍に高速化する高効率・高出力光増幅器、さら に将来的には、宇宙探査においてデータ伝送量の向上(月探査データの伝送時には700Mbps 以上)の実現を目指しています。

研究の概要

荒木 智宏

研究リーダ 高感度受信部(デジタルコヒーレント方式) 評価実験系

研究の

ねらい

1.研究の意義価値  宇宙開発を取り巻く環境が急速に変化する中で、性能やコスト、利便性など、様々な観点で総合的に評価される宇宙シ ステムの価値は見極めが難しくなっています。このため、適切なシステム検討がされないと、優れた要素技術を持っていて も十分に活用できなかったり、要求を満たせなかったりします。  本研究では、宇宙システムの概念検討とそれを支えるシステムズエンジニアリング技術、宇宙システム技術の研究開発 を通じて、インパクトの大きいアウトカムを生み出す将来の宇宙開発ミッション、宇宙利用につながる新規の方式、実現手 段を提案することで、魅力的で競争力のある宇宙システムの構築を行います。 2.研究の目標 (1)JAXAが事業として提案するシステムの概念検討 JAXAが構想する将来の宇宙計画について、アイデアを具現化し、実現可能かつ国際競争力のあるシステム構成と計 画を立案します。現在、内閣府の宇宙基本計画上の次のシステムの概念検討を進めています。 ・ 次期技術試験衛星 ・ 先進レーダ衛星(だいち2号後継機) ・ 革新的衛星技術実証プログラム (2)システムエンジニアリング技術の研究開発 概念検討をより着実に、かつ効率よく進め ると同時に、魅力的なシステムを提案する ためのシステム開発手法、設計解析ツール、 デザイン環境の研究開発を行います。 (3)宇宙システム技術の研究開発 宇宙機・地上系の構成、ならびにインテグ レーション・試験など、専門技術領域を超 える宇宙システムのアーキテクチャの刷新 に関わる構想検討や複数の専門技術を連 携させた研究開発を行います。 1.研究の意義価値  宇宙インフラとしての高速データ伝送技術を獲得することで、観測衛星等の低軌道衛星の意義価値を向上させるとともに、光衛星通信に かかる産業競争力を強化します。また、はやぶさ(小惑星)やかぐや(月)のような探査衛星においては、より多くの画像・動画を得ることで、 これまで知らなかった宇宙の姿を知ることにつながります。 2.研究の目標  本研究では、次の目標を設定し、研究を進めています。 (1)将来型の光データ中継システム(JDRS)において、衛星の負担軽減の実現。 (2)ユーザ伝送レートを2∼4倍に高速化するための、高効率・高出力光増幅器や高感度受信技術の実現。 (3)国際標準化活動において我が国の技術を国際技術標準とすることで、産業競争力の強化。

※JDRS(Japanese Data Relay System):光データ中継システム

研究の

ねらい

研究の

ねらい

局発光LD光源 1.87GHZ-LPF コヒーレント FE 「ADC/DSP」 デジタルオシロスコープ 支える研究 支える研究

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稲場 典康

宇宙システムの概念検討

およびシステム技術の研究

 ロケットや人工衛星は、たくさんの部品の組み立てだけでなく、地上設備なども含め 様々な要素を複雑に組み合わせることで、宇宙システムとして求められる機能を発揮し ます。本研究では、このような要素の適切な構成を検討し、全体としてより優れた仕組 みとなる宇宙システムを作り出すことを目指しています。  また、内外の各組織と連携し、システムレベルの概念検討を行うことにより、我が国 の知恵・技術を統合して国際競争力のある技術開発、社会課題解決、また、将来の産業 育成につながるプロジェクト提案を行ってゆきます。 研究リーダ

研究の概要

■概念検討の実績 ■光衛星通信の将来図

光衛星通信技術の研究

 地球観測衛星からの取得データ伝送速度の向上、データ量の増大を目的として、光データ中 継システム(JDRS※)の開発が始まっています。  本研究は、多様なユーザが光データ中継サービスを利用可能とし、観測衛星等の低軌道衛星 の意義価値向上を実現するため、光通信機器の小型・軽量化を目指すものです。  ユーザ伝送レートをJDRSの1.8Gbpsの2∼4倍に高速化する高効率・高出力光増幅器、さら に将来的には、宇宙探査においてデータ伝送量の向上(月探査データの伝送時には700Mbps 以上)の実現を目指しています。

研究の概要

荒木 智宏

研究リーダ 高感度受信部(デジタルコヒーレント方式) 評価実験系

研究の

ねらい

1.研究の意義価値  宇宙開発を取り巻く環境が急速に変化する中で、性能やコスト、利便性など、様々な観点で総合的に評価される宇宙シ ステムの価値は見極めが難しくなっています。このため、適切なシステム検討がされないと、優れた要素技術を持っていて も十分に活用できなかったり、要求を満たせなかったりします。  本研究では、宇宙システムの概念検討とそれを支えるシステムズエンジニアリング技術、宇宙システム技術の研究開発 を通じて、インパクトの大きいアウトカムを生み出す将来の宇宙開発ミッション、宇宙利用につながる新規の方式、実現手 段を提案することで、魅力的で競争力のある宇宙システムの構築を行います。 2.研究の目標 (1)JAXAが事業として提案するシステムの概念検討 JAXAが構想する将来の宇宙計画について、アイデアを具現化し、実現可能かつ国際競争力のあるシステム構成と計 画を立案します。現在、内閣府の宇宙基本計画上の次のシステムの概念検討を進めています。 ・ 次期技術試験衛星 ・ 先進レーダ衛星(だいち2号後継機) ・ 革新的衛星技術実証プログラム (2)システムエンジニアリング技術の研究開発 概念検討をより着実に、かつ効率よく進め ると同時に、魅力的なシステムを提案する ためのシステム開発手法、設計解析ツール、 デザイン環境の研究開発を行います。 (3)宇宙システム技術の研究開発 宇宙機・地上系の構成、ならびにインテグ レーション・試験など、専門技術領域を超 える宇宙システムのアーキテクチャの刷新 に関わる構想検討や複数の専門技術を連 携させた研究開発を行います。 1.研究の意義価値  宇宙インフラとしての高速データ伝送技術を獲得することで、観測衛星等の低軌道衛星の意義価値を向上させるとともに、光衛星通信に かかる産業競争力を強化します。また、はやぶさ(小惑星)やかぐや(月)のような探査衛星においては、より多くの画像・動画を得ることで、 これまで知らなかった宇宙の姿を知ることにつながります。 2.研究の目標  本研究では、次の目標を設定し、研究を進めています。 (1)将来型の光データ中継システム(JDRS)において、衛星の負担軽減の実現。 (2)ユーザ伝送レートを2∼4倍に高速化するための、高効率・高出力光増幅器や高感度受信技術の実現。 (3)国際標準化活動において我が国の技術を国際技術標準とすることで、産業競争力の強化。

※JDRS(Japanese Data Relay System):光データ中継システム

研究の

ねらい

研究の

ねらい

局発光LD光源 1.87GHZ-LPF コヒーレント FE 「ADC/DSP」 デジタルオシロスコープ

(8)

支える研究 支える研究

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宇宙機電気系技術研究

 宇宙機(人工衛星等)の基幹技術のうち、電気系が主要な要素となる基盤技術の研 究を行い、将来のミッション実現に必要な新規課題の研究開発を行うとともに、現在進 行中のプロジェクトの一層確実な遂行を目指しています。  宇宙機システムの高性能化のため、人工衛星の姿勢制御技術、データ伝送、太陽電池 の高性能化などの研究、また、宇宙機を開発する上で必要となる宇宙環境の基礎的な データを取得するために宇宙環境計測実験を実施し、環境データや宇宙用材料の劣化 などの研究を行っています。 

研究の概要

山中 浩二

研究リーダ

研究の

ねらい

研究の

ねらい

■誘導/制御 ・姿勢決定機器(スタートラッカ) ・姿勢制御機器(リアクションホイール) ・相対誘導機器(ランデブセンサ) ■通信/データ処理 ・衛星-地上間高速通信系の研究 ・データ処理装置 ・高効率電力増幅器 ■電源 ・宇宙機用電源、バッテリ ・太陽電池、パドル ■電子部品/デバイス/材料 ・民生用電子部品の宇宙適用 ・宇宙用電子部品 ・宇宙用材料 ■宇宙環境 ・宇宙環境計測技術の研究 ・宇宙環境モデルの構築 ■軌道/航法 ・軌道設計技術 ・軌道推定技術

宇宙機機械系技術研究

 宇宙機(人工衛星等)の基幹技術のうち、機械系が主要な要素となる基盤技術の研究を 行い、将来のミッション実現に必要な新規課題の研究開発を行うとともに、現在進行中の プロジェクトの一層確実な遂行を目指しています。  宇宙機システムの軽量、長寿命化、高性能化や衛星ミッションに優しい環境を実現するた め、二液式スラスタや電気推進の高度化の研究、微小変形抑制や擾乱抑制等の研究、機械 環境緩和技術、極限環境対応潤滑技術、冷却技術などの研究を行っています。  また、有人探査における生命維持技術としてCO2分離などの研究、無人探査に必要とな るローバーの研究を行い、将来的なミッション実現を目指しています。 

研究の概要

杉田 寛之

研究リーダ

研究の

ねらい

研究の

ねらい

■熱 ・多層断熱材(MLI) ・冷却機器(機械式冷凍機) ■推進系 ・化学推進機器(スラスタ) ・電気推進機器(イオンエンジン) ■ナノ技術応用 ・カーボンナノ材料 ・ナノ触媒などの応用 ■有人宇宙活動技術 ・空気再生 ■機構潤滑 ・低衝撃保持解放機構 ・機械環境緩和技術 ・極限環境対応潤滑技術 ■ロボティクス ・宇宙用ロボットの開発 ■構造 ・微小変形抑制 ・擾乱抑制 支える研究 支える研究

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宇宙機電気系技術研究

 宇宙機(人工衛星等)の基幹技術のうち、電気系が主要な要素となる基盤技術の研 究を行い、将来のミッション実現に必要な新規課題の研究開発を行うとともに、現在進 行中のプロジェクトの一層確実な遂行を目指しています。  宇宙機システムの高性能化のため、人工衛星の姿勢制御技術、データ伝送、太陽電池 の高性能化などの研究、また、宇宙機を開発する上で必要となる宇宙環境の基礎的な データを取得するために宇宙環境計測実験を実施し、環境データや宇宙用材料の劣化 などの研究を行っています。 

研究の概要

山中 浩二

研究リーダ

研究の

ねらい

研究の

ねらい

■誘導/制御 ・姿勢決定機器(スタートラッカ) ・姿勢制御機器(リアクションホイール) ・相対誘導機器(ランデブセンサ) ■通信/データ処理 ・衛星-地上間高速通信系の研究 ・データ処理装置 ・高効率電力増幅器 ■電源 ・宇宙機用電源、バッテリ ・太陽電池、パドル ■電子部品/デバイス/材料 ・民生用電子部品の宇宙適用 ・宇宙用電子部品 ・宇宙用材料 ■宇宙環境 ・宇宙環境計測技術の研究 ・宇宙環境モデルの構築 ■軌道/航法 ・軌道設計技術 ・軌道推定技術

宇宙機機械系技術研究

 宇宙機(人工衛星等)の基幹技術のうち、機械系が主要な要素となる基盤技術の研究を 行い、将来のミッション実現に必要な新規課題の研究開発を行うとともに、現在進行中の プロジェクトの一層確実な遂行を目指しています。  宇宙機システムの軽量、長寿命化、高性能化や衛星ミッションに優しい環境を実現するた め、二液式スラスタや電気推進の高度化の研究、微小変形抑制や擾乱抑制等の研究、機械 環境緩和技術、極限環境対応潤滑技術、冷却技術などの研究を行っています。  また、有人探査における生命維持技術としてCO2分離などの研究、無人探査に必要とな るローバーの研究を行い、将来的なミッション実現を目指しています。 

研究の概要

杉田 寛之

研究リーダ

研究の

ねらい

研究の

ねらい

■熱 ・多層断熱材(MLI) ・冷却機器(機械式冷凍機) ■推進系 ・化学推進機器(スラスタ) ・電気推進機器(イオンエンジン) ■ナノ技術応用 ・カーボンナノ材料 ・ナノ触媒などの応用 ■有人宇宙活動技術 ・空気再生 ■機構潤滑 ・低衝撃保持解放機構 ・機械環境緩和技術 ・極限環境対応潤滑技術 ■ロボティクス ・宇宙用ロボットの開発 ■構造 ・微小変形抑制 ・擾乱抑制

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支える研究 支える研究

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長寿命化技術の研究

 宇宙機を長寿命化、言い換えれば、長期間運用できるようにするためには、宇宙用コ ンポーネントや部品が劣化しないこと、壊れないこと(信頼性を高め、耐久性を持たせる こと)が必要になります。  本研究では、低軌道衛星の寿命を現状の7年から12年へ長寿命化するために、電源 系バッテリの耐久性向上、姿勢制御系機器の高信頼性化、機構部品の長寿命化などに 関する技術の確立を目指しています。  

研究の概要

研究の概要

小原 新吾

研究リーダ 宇宙用転がり軸受

JAXA Super Computer System generation 2 (JSS2)“SORA” ロケットの数値シミュレーション結果例 ソフトウェア構造化設計の例 高速回転ホイール タイプS リチウムイオン電池

嶋 英志

ソフトウェア・

解析検証技術の研究

 本研究は、世界最高レベルの情報・計算工学技術の研究・開発・利用により 、ミッション 成功と開発・コスト低減を両立させるエンジニアリングを確立することを目標としています。  このエンジニアリングの確立により、現状では実現不可能な開発期間・コスト規模となる ミッションを適切な規模で実現可能とします。  最初のステップとして、新型ロケットH3の確実かつ効率的な実現に関わる作業を優先し、 これと並行して、将来衛星や再使用輸送系等に向けた研究や、保有技術によるプロジェクト 支援を行います。   研究リーダ

研究の

ねらい

研究の

ねらい

保持器 玉 外輪 内輪 1.研究の意義価値  宇宙機は、開発費用が高く、また、打ち上げまでの開発期間が長期間にわたりま す。この宇宙機の信頼性を高め、長期間運用できれば費用対効果を向上させること ができ、さらに、国際競争力も獲得することができます。  2.研究の目標  本研究では、低軌道衛星の寿命を長寿命化することを目標に、キーとなるコン ポーネントや部品の長寿命化技術を構築するとともに、開発期間を短縮するための 加速試験法の確立に取り組んでいます。 (1)宇宙用二次電池の耐久性向上、長寿命化 ・バッテリ充放電試験による寿命データの蓄積(典型的な運用条件と正極材料、 放電深度、温度をパラメータとする条件) ・宇宙用二次電池の機械環境耐性を実現できる電池状態の把握 ・電力制御器の回路簡略化のための次世代デバイスの適用性評価 ・軌道上データと地上試験との比較検証 (2)姿勢制御機器の信頼性向上 ・リアクションホイール、慣性基準装置(TDG-IRU)などの姿勢制御機器の長 期連続運用試験による信頼性・寿命データの蓄積 ・姿勢制御機器の信頼性・寿命評価方法の確立 (3)軸受の長寿命、高性能化 ・転がり軸受の長寿命化、観測精度向上のための低擾乱化技術の構築 ・転がり軸受の寿命メカニズムの解明、寿命理論の構築 ・超長寿命(30年)を実現する転がり軸受代替技術の構築  (4)加速試験法・簡便法・寿命予測法の確立 ・リファレンスとなるデータを蓄積するための、環境・実時間・破壊試験の実施 ・加速試験法・簡便法・寿命予測法の構築 1.研究の意義価値  宇宙システムのエンジニアリングの変革のため、解析・検証技術を高度 化し、設計・運用マージンの適切化、開発・運用計画の効率化を実現します。 これにより、宇宙システムの効率的、迅速、低コストな開発・運用を実現し、 新しく価値あるミッションの創出を可能にします。 2.研究の目標  高度化/複雑化するミッションの成功と、開発・運用コストの低減、とい う2つの相反する要求に同時に応えていくため、特定のコンポーネントや サブシステムによらない、共通的な「開発・運用の方法論(=Engineer-ing)」に着目し、プロジェクトを支えながら、この変革に取り組みます。 (1)定量予測/推定技術 音響、燃焼、混相流、希薄流体等の複雑な現象を、“SORA”を使用して 高フィデリティ(正確に適合する)数値シミュレーションを実施してい ます。 (2)検証技術 宇宙システムの大規模化/複雑化が進む状況において、信頼性確保と 短納期を実現しつつ、システムやソフトウェアの仕様/設計を可視化し、 論理的/効率的に検証する技術の高度化を目指します。 (3)エンジニアリング手法 リスクを識別/評価し、合理的なリスク低減策を見出すエンジニアリン グ手法の構築を目指します。 支える研究 支える研究

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長寿命化技術の研究

 宇宙機を長寿命化、言い換えれば、長期間運用できるようにするためには、宇宙用コ ンポーネントや部品が劣化しないこと、壊れないこと(信頼性を高め、耐久性を持たせる こと)が必要になります。  本研究では、低軌道衛星の寿命を現状の7年から12年へ長寿命化するために、電源 系バッテリの耐久性向上、姿勢制御系機器の高信頼性化、機構部品の長寿命化などに 関する技術の確立を目指しています。  

研究の概要

研究の概要

小原 新吾

研究リーダ 宇宙用転がり軸受

JAXA Super Computer System generation 2 (JSS2)“SORA” ロケットの数値シミュレーション結果例 ソフトウェア構造化設計の例 高速回転ホイール タイプS リチウムイオン電池

嶋 英志

ソフトウェア・

解析検証技術の研究

 本研究は、世界最高レベルの情報・計算工学技術の研究・開発・利用により 、ミッション 成功と開発・コスト低減を両立させるエンジニアリングを確立することを目標としています。  このエンジニアリングの確立により、現状では実現不可能な開発期間・コスト規模となる ミッションを適切な規模で実現可能とします。  最初のステップとして、新型ロケットH3の確実かつ効率的な実現に関わる作業を優先し、 これと並行して、将来衛星や再使用輸送系等に向けた研究や、保有技術によるプロジェクト 支援を行います。   研究リーダ

研究の

ねらい

研究の

ねらい

保持器 玉 外輪 内輪 1.研究の意義価値  宇宙機は、開発費用が高く、また、打ち上げまでの開発期間が長期間にわたりま す。この宇宙機の信頼性を高め、長期間運用できれば費用対効果を向上させること ができ、さらに、国際競争力も獲得することができます。  2.研究の目標  本研究では、低軌道衛星の寿命を長寿命化することを目標に、キーとなるコン ポーネントや部品の長寿命化技術を構築するとともに、開発期間を短縮するための 加速試験法の確立に取り組んでいます。 (1)宇宙用二次電池の耐久性向上、長寿命化 ・バッテリ充放電試験による寿命データの蓄積(典型的な運用条件と正極材料、 放電深度、温度をパラメータとする条件) ・宇宙用二次電池の機械環境耐性を実現できる電池状態の把握 ・電力制御器の回路簡略化のための次世代デバイスの適用性評価 ・軌道上データと地上試験との比較検証 (2)姿勢制御機器の信頼性向上 ・リアクションホイール、慣性基準装置(TDG-IRU)などの姿勢制御機器の長 期連続運用試験による信頼性・寿命データの蓄積 ・姿勢制御機器の信頼性・寿命評価方法の確立 (3)軸受の長寿命、高性能化 ・転がり軸受の長寿命化、観測精度向上のための低擾乱化技術の構築 ・転がり軸受の寿命メカニズムの解明、寿命理論の構築 ・超長寿命(30年)を実現する転がり軸受代替技術の構築  (4)加速試験法・簡便法・寿命予測法の確立 ・リファレンスとなるデータを蓄積するための、環境・実時間・破壊試験の実施 ・加速試験法・簡便法・寿命予測法の構築 1.研究の意義価値  宇宙システムのエンジニアリングの変革のため、解析・検証技術を高度 化し、設計・運用マージンの適切化、開発・運用計画の効率化を実現します。 これにより、宇宙システムの効率的、迅速、低コストな開発・運用を実現し、 新しく価値あるミッションの創出を可能にします。 2.研究の目標  高度化/複雑化するミッションの成功と、開発・運用コストの低減、とい う2つの相反する要求に同時に応えていくため、特定のコンポーネントや サブシステムによらない、共通的な「開発・運用の方法論(=Engineer-ing)」に着目し、プロジェクトを支えながら、この変革に取り組みます。 (1)定量予測/推定技術 音響、燃焼、混相流、希薄流体等の複雑な現象を、“SORA”を使用して 高フィデリティ(正確に適合する)数値シミュレーションを実施してい ます。 (2)検証技術 宇宙システムの大規模化/複雑化が進む状況において、信頼性確保と 短納期を実現しつつ、システムやソフトウェアの仕様/設計を可視化し、 論理的/効率的に検証する技術の高度化を目指します。 (3)エンジニアリング手法 リスクを識別/評価し、合理的なリスク低減策を見出すエンジニアリン グ手法の構築を目指します。

参照

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