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Vol.47 , No.2(1999)083林寺 正俊「縁起解釈の一考察-行支について-」

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Academic year: 2021

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(128) 印度學 佛敎 學研 究第47巻 第2号 平 成11年3月

縁起解釈 の一考察

―行支 に つ い て ―

林 寺

正 俊

1.は じ め に 部 派 仏 教 に お い て は,南 方 上 座 部 で も説 一 切 有 部 で も一 般 的 に 十 二 縁 起 を三 世 両 重 の 因 果 と して 解 釈 す るが,後 者 は特 に それ を各 支 が 五 穂 の位 相(avastha)で あ る分 位 縁 起 と解 釈 した.こ の 解 釈 の成 立 に 名 色 の 果 た した 役 割 は大 き い1).名 色 に つ い て は,初 期 論 書 の 段 階 か ら,前 者 が 名 を,後 者 が 色 を強 調 す る とい う解 釈 の 相 違 が 見 られ る2).そ こで,他 に も支 分 の解 釈 に特 色 が 見 られ な い か ど うか,有 部 初 期 論 書 の 『法慈 足 論 』 を 中 心 に,特 に行 支 に 焦 点 を 当 て て,南 方 上 座 部 と比 較 しな が ら以 下 に考 察 した い. 2.行 支 の 解 釈 三 世 両 重 の 因果 に お い て 行 支 を 業 と解 釈 す る の は 両 部 派 で 全 く同様 で あ るが, その 詳 細 な解 釈 に つ い て は 相 違 して い る.ま ず,『 分 別 論 』の 経 分 別 は福 行 を欲 界 繁 ・色 界 繁 の善 思,非 福 行 を欲 界 繁 の不 善 思,不 動 行 を無 色 界 繁 の 善 思 と解 釈 し3), これ を受 けて 『清 浄 道 論 』 は八 十 九 心 の体 系 を も と に,福 行 を 欲 界 繁 の八 善 思 ・ 色 界 繁 の五 善 思,非 福 行 を欲 界 繁 の十 二 不 善 思,不 動 行 を無 色 界 繁 の四 善 思 と説 く4).身 行 ・語 行 ・心 行 の場 合 も同様 に思 とな し`),南 方 上 座 部 は行 支 を い ず れ も 思 と解 釈 す る. それ に対 して,『 法 纏 足 論 』 は 「無 明 → 行 」 の 関係 を論 じて い る段 で 行 支 を, 云何福行.謂 有漏善身業語業.心 心所 法.不 相応行. 云何非福 行.謂 不善身業語業.心 心所 法.不 相応行. 云何不動行.謂 四無色定.諸 有漏善. と説 明 す る6).福 行 と非 福 行 の定 義 は 五 位 法 の 体 系 を予 想 させ る7)が,結 局 の とこ ろ これ ら二 っ は五 緬 と解 釈 され て い る こ とに な る.な ぜ な ら,有 部 の教 義体 系 で は身 業 ・語 業 の本 質 は そ れ ぞれ 形 色 と音 声 とい う色,心 は五 緬 の うち の識 緬,心 897

(2)

縁 起 解釈 の一 考察(林 寺) (129) 所 法 は 受 薙 ・想 緬 ・行 緬 の 一 部,不 相 応 行 も また 行 緬 の 一 部 で あ るか らで あ る. 『発 智 論 』 が 心 心 所 法,身 業 ・語 業,不 相 応 行 法 の それ ぞ れ が 異 熟 因 とな る と解 釈 し8),『婆 沙 論 』 が そ れ につ い て 異 熟 因 と異 熟 果 は ど ち ら も五 緬 に通 ず る と解 釈 す る9)の も これ と同趣 旨 で あ ろ う. この 行 支 の解 釈 は,名 色 を業 と解 釈 す る こ と とも密 接 に関 連 して い る.『 法薔 足 論 』 で は 「識 → 名 色 ・名 色 → 識 ・名 色 → 六 処 ・名 色 → 触1と い う四 っ の 関 係 に お い て 名 色 が 説 か れ るが,い ず れ の 場 合 に も色 を身 業 ・語 業 の二 業,名 を意 業 あ る い は 非 色 四 魎 と し10),名 色 全 体 を業 とみ な す 解 釈ll)が 挙 げ られ る.有 部 で は 名 色 が 業 や 五 緬 に通 ず る とさ れ るた め,行 支 と同 一・視 さ れ るの で あ る.ち な み に,南 方 上座 部 で は 身業 ・口業 が 色 とみ な され な い た め名 色 全 体 が 業 と解 され ず,名 の 一・部(二 善思 ・不 善思)だ け が業 と され るか ら,名 色 と行 支 は 同一 視 され な い. 『法 緬 足 論 』 に は そ れ 以 外 に も興 味深 い 解 釈 が挙 げ られ る.「 眼 と色 に縁 っ て 眼 識 が 起 こ る」 とい う六 処 を起 点 とす る縁 起 説 が 次 の よ う に 「行 → 識 」 の 関 係 に お い て説 明 され る の で あ る12). 眼及色為縁生眼識.此 中眼是内有為行.色 為 外縁生眼識 是名行縁 識.乃 至 意及法為縁生意識.此 中意是内有為行.法 為 外縁生意識 是名行縁 識. こ れ は 眼 処 か ら身 処 に 至 る ま で の 五 処(=色 法)と 意 処(=識 体)を 有 為(sa・nskrta) で あ る と して,そ れ を行 支 の 内 容 とす る解 釈 で あ る.こ の よ うに行 支 を有 為 の 名 の も とに よ り広 く解 す るの は,無 明 ・行 とい う二 支 を 中心 と した 四 句 分 別13)を 挙 げ る 『発 智 論 』 の記 述 に も連 な るで あ ろ う14). 3.ま と め 以 上 に は行 支 に 関 す る特 徴 的 な 解 釈 を若 干 見 た が,南 方 上 座 部 が 如 何 な る場 合 で も それ を―・心 所 法 と して の 思 と解 釈 す るの に対 して,説 一 切 有 部 は業 と され る 行 支 を五 緬 に通 ず る と して名 色 と同 一 視 した り,ま た 六 処 を起 点 とす る縁 起 説 の よ う に五 処(=色)や 意 処(=識)を 有 為 と して行 支 に含 め た り,行 支 を よ り広 く 解 す る傾 向 を有 して い る こ とが 明 らか に な っ た.『 法 薙 足 論 』 に見 られ る この よ う な傾 向 も ま た説 一 切 有 部 に特 有 な 分 位 縁 起 の 成 立 に与 って い た 可 能 性 が あ る と思 わ れ るが,そ の 問題 につ い て は 種 々 の観 点 か ら詳 細 に検 討 す る必 要 が あ る た め 別 稿 を 期 した い. 1)分 位 縁 起 は 名 色 を五 纏 と した場 合 に 起 こ る受 緬 ・行 艦 ・識 纏 と行 支 ・識 支 ・受 支 との 896

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(130) 縁起 解釈 の一 考察(林 寺) 重 複 の 問題 を解 決 した と考 え られ て い る.梶 山雄 一 「輪 廻 と超 越 ― 『城 邑経 』 の縁 起 説 とそ の解 釈 一 」 『哲 学 研 究 』550,昭 和59年,350頁 参 照. 2)田 中教 照 「南北 両 ア ビダ ル マ の 縁 起 説 」 『平 川彰 博 士 古 希 記 念 論 集 仏 教 思 想 の諸 問 題 』,昭 和60年,102-107頁 参 照. 3) Vibhanga, PTS, p. 135.

4) Visuddhimagga, HOS. No. 41, p. 451. 5) Vibhanga, p. 135, Visuddhimagga, p. 452. 6)大 正 蔵26,506頁 上,S.Dietz:Dharmaskandha,AAWG,Nr.142,pp.26-27. 7)和 辻 哲 郎 は この 箇 所 に っ い て 意 業 が 心 心 所 法 ・不 相 応 行 に展 開 され て い る と言 う. 『和 辻 哲郎 全 集 』 第5巻,342頁. 8)大 正 蔵26,920頁 下. 9)大 正 蔵27,96頁 中. 10)識 → 名 色(大 正 蔵26,507頁 中,Dhsk,pp.32-33).名 色 → 識(同,508頁 上,Skt 欠).名 色 → 六 処(同,508頁 下,ibid,p.39).名 色 → 触(同,509頁 上,ibid.,p.41). この 点 に つ い て は,田 中,前 掲 論 文,105-106頁 参 照. 11)名 色 と業 を 同一 視 す る解 釈 は,『 法 蘊 足 論 』 の み な らず 『婆 沙 論 』 中 に も見 出 す こ と が で き る.「 名 色 集 故 有 識 集 者 説 業 集.此 経 中 説 業 名 色 故 」(大 正 蔵27,561頁 中). 12)大 正 蔵26,507頁 上,Dhsk,p.31. 13)「 頗 有 行 縁 無 明不 縁 明 耶 」 な ど とい う よ う に,行 支 が 無 明 と明 との 関係 に お い て 四 句 分 別 され て い るが,『 発 智 論 』 に は この よ うな 四 句 分 別 が 二 つ ほ ど挙 げ られ て い る(大 正 蔵26,921頁 中一 下).な お,松 田 和 信 氏 が 有 部 系 の もの と推 定 して い る縁 起 関 係 の 新 資 料 中,行 の解 釈 部 分 に 『発 智 論 』 で 挙 げ る よ うな 四句 分 別 が 見 え る.松 田 「Prasasti IndonesiaIIに 含 まれ る仏 教 文 献 につ い て1『印 度 学 仏 教 学 研 究 』46-2,平 成10年,904頁. 14)『 婆 沙 論 』 は,当 該 箇 所 に見 られ る行 につ い て 五 取 蘊 な ど種 々 の説 を挙 げ るが,お お む ね―一切 有 為 法 として い る(大 正 蔵27,127頁 上 ― 中). <キ ー ワ ー ド>縁 起,行,『 法 蘊 足 論 』 (北海道 大学大学院) 895

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