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サテライトシンポジウム報告「フジツボ類(蔓脚亜綱)の生物学」

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シンポジウム報告

サテライトシンポジウム報告「フジツボ類(蔓脚亜綱)の生物学」

Report on the satellite symposium “Biology of barnacles (subclass Cirripedia)”

山口 幸

1

・吉田隆太

2

・遊佐陽一

3

Sachi Yamaguchi, Ryuta Yoshida, and Yoichi Yusa

企画趣旨 フジツボ類は,ダーウィン以来の進化生物学にお けるモデル生物群のひとつであり,20世紀中頃の 海洋における群集生態学や幼生生態学などの発展に おいて重要な役割を果たしてきた.また,近年は汚 損種や外来種として重要視されている.しかしその 一方で,応用分野を除き,国内のフジツボ研究者は 絶滅が危惧されるほど少なく,それぞれの分野で孤 立して研究を進めている(と企画者には思われた). このシンポジウムでは,この状況を変化させる契 機を皆で作るべく,進化生態学や幼生生態学,個体 群生態学,分類学,系統地理学,分子生物学など多 岐にわたる分野について,国内外のフジツボ研究者 に講演をお願いした.昼休みにはポスターセッショ ンを行った.いずれにおいても,参加者の間で活発 な議論がなされた. プログラム 日本甲殻類学会第53回大会 サテライトシンポジウム「フジツボ類(蔓脚亜綱) の生物学」 日時:2015年10月12日(月)9:30–17:15 会場:東京海洋大学品川キャンパス 落水会館 開会挨拶:山口 幸(神奈川大学) 午前の部 1)フジツボの矮雄から探る性システムの進化 澤田紘太(総合研究大学院大学) 2)カメフジツボの矮雄と移動能力の進化 林 亮太(東京大学) 3) ライデン自然史博物館(ナチュラリス)から辿 るフクロムシの分類と現状 吉田隆太(琉球大学) 4) 寄生性フジツボ(ウンモンフクロムシ)のトラ ンスクリプトーム解析 小林桃子(秋田県立大学) 昼休み・ポスターセッション 午後の部

5) Molecular biogeography and host specificity of coral associated barnacles (Cirripedia: Pyrgomatidae) in the Indo-Pacific waters

Benny K. K. Chan (Academia Sinica)

6)フジツボ群居を成立させる着生誘起シグナル 松村清隆(北里大学・東京バイオテクノロジー 専門学校)

1 神奈川大学工学部情報システム創成学科

〒221–8686 神奈川県横浜市神奈川区六角橋3–27–1 Department of Information Systems Creation, Kanagawa

University, 3–27–1 Rokkakubashi, Kanagawa Ward, Yokohama, Kanagawa 221–8686, Japan

E-mail: sachi.dwarfmale@gmail.com

2 琉球大学熱帯生物圏研究センター西表研究施設

〒907–1541 沖縄県八重山郡竹富町字上原870番地 Iriomote Station, Tropical Biosphere Research Center,

University of the Ryukyus, 870 Uehara, Taketomi-cho, Okinawa 907–1541, Japan

3 奈良女子大学理学部

〒630–8506 奈良県奈良市北魚屋西町

Faculty of Science, Nara Women’s University, Kitauoya-nishi, Nara, Nara 630–8506, Japan

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7) クロフジツボの生態―20年間の長期追跡調査の 結果を基にして―

森 敬介(国立水俣病総合研究センター) 8)汚損生物としてのフジツボ

野方靖行(電力中央研究所)

9) Larval development and settlement pattern of coral associated barnacles, Berndtia spp. (Acrothoracica) and Darwiniella angularis (Thoracica)

Chien Wen Liu, Benny K. K. Chan (Academia Sinica) 総合討論・閉会挨拶:遊佐陽一(奈良女子大学)

ポスターセッション

1) A simplified, economical, and robust light trap for capturing benthic and pelagic invertebrate and fish larvae

Yen-Wei Chang, Kwang-Tsao Shao, Yi-Ta Shao, Benny K. K. Chan

2) Worldwide genetic differentiation in the common fouling barnacles, Amphibalanus Amphitrite

Hsi-Nien Chen, Ling Ming Tsang, Ving Ching Chong, Benny K. K. Chan

3) Variation in the geographical distribution of two tetraclitid barnacles, Tetraclita kuroshioensis and

Tetraclita japonica formosana in Northwest Pacific

—a larval biology perspective Pei-che, Tsai, Benny K. K. Chan

4) Pre- and Post-molting behaviors in the barnacle,

Balanus rostratus

Masami Tamechika, Satoshi Wada, Chiaki I. Yasuda 5) Plastic sexual expression in the androdioecious

bar-nacle Octolasmis warwickii*

Hendry Wijayanti, Yoichi Yusa (*日本甲殻類学会 大会でも発表)

6) Evolution of diverse sexual systems and sex determi-nation in barnacles (Cirripedia: Thoracica/Rhizo-cephala): a theoretical approach

Sachi Yamaguchi

7) Host relation, size and reproduction in the burrowing barnacle Trypetesa lampas (Hancock) (Crustacea Cirripedia Acrothoracica)

Sofie K. Larsen, Jens T. Høeg, Yoichi Yusa

口頭発表の内容紹介 以下に,各講演者の発表について簡単に紹介する (所属は発表時). 1) 澤田紘太(総合研究大学院大学):フジツボの矮 雄から探る性システムの進化 完胸目(Thoracica)のフジツボは,同時的雌雄同 体,雌雄異体(雌と矮雄),雄性異体(雌雄同体と 矮雄)という3つの性システムを示すため,性シス テムの進化を研究するのに適した生物である.特に 雄性異体という性システムは雌雄同体と雌雄異体を つなぐ進化的中間状態とみなすことができるため, 矮雄の進化は多様な性システムの進化を明らかにす る上で重要な役割を担っている.理論的には,矮雄 は繁殖集団サイズが小さいときに進化できると予測 されている.カニに共生するメナガオサガニハサミ エボシ(Octolasmis unguisiformis)について調べる と,矮雄は繁殖集団が小さい種で出現するという理 論的予測を支持した(Sawada et al., 2015)が,種内 では矮雄の出現頻度は繁殖集団サイズに相関してい なかった.同様に,ヨーロッパ産のミョウガガイの 一種Scalpellum scalpellumでも,矮雄の出現頻度は 大型個体が単独であったか集団でいたかということ とは関係がなかった.これらの結果から,矮雄出現 頻度の種内変異は,繁殖集団サイズとは別の要因の 影響を受けているのかもしれないと考えられた.性 システムの進化の理解には,雄性異体種における量 的な解析をさらに行う必要があるだろう. 2) 林 亮太(東京大学):カメフジツボの矮雄と移 動能力の進化 ウ ミ ガ メ に 着 生 す る カ メ フ ジ ツ ボ(Chelonibia testudinaria)は矮雄を持つ.理論的には繁殖集団が 小さいほど矮雄が出現しやすいとされているが,カ メに1個体しかカメフジツボがついていないにも関 わらず,矮雄の出現が観察されなかった例も少なか らずある.一方,フジツボは一度固着するとその場 所からほとんど動けないとされているが,カメフジ ツボは着生後にも移動することが近年発見された. アメリカでの調査によると,採餌効率を上昇させる ためにカメフジツボは亀の尾部から頭部のほうに移

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動しているとされているが,日本では頭部から尾部 に向かって動いている例があり,2年で10 cm程度 も動くという.また,古くは高木春山の本草画にも アカウミガメにつくカメフジツボの移動の跡が描か れている.カメフジツボの移動能力に関する研究 は,その進化的背景を含めてまだ進んでいないが, 技術的な応用として着脱可能な水中接着剤の開発の 手がかりになる可能性も秘めている. 3) 吉田隆太(琉球大学):ライデン自然史博物館(ナ チュラリス)から辿るフクロムシの分類と現状 フクロムシは他の甲殻類に寄生するフジツボであ る.260種ほど報告されているが,そのうち140種 はBoschmaと彼の共同研究者らによって記載された (Vervoort, 1977).フクロムシは甲殻類への寄生後, 外 部 形 態externaを発達させる.Boschmaはexterna の組織切片を作成してフクロムシを分類したが,彼 が晩年に描いた図は簡略化されていて,分類学的特 徴をつかむことが難しい.今回,ライデン自然史博 物館を訪れ,そこに保存されているタイプ標本の分 類同定をおこなった.その結果,Boschamaが記載 したフクロムシのうち,6種のタイプ標本が新たに 見つかった(吉田,未発表).またフクロムシの組 織切片の標本はライデン自然史博物館に,宿主の標 本は他の博物館に,というように別の場所に保存さ れているものもあったが,宿主の再同定を行い,フ クロムシがどういった宿主を利用しているのかを明 らかにできる可能性もでてきた.今回見つかった6 種以外の134種についても,標本ラベルと標本自体 との対応関係を見つける手順が明確になった. 4) 小林桃子(秋田県立大学):寄生性フジツボ(ウ ンモンフクロムシ)のトランスクリプトーム解析 フクロムシ類(Rhizocephala)は通常のフジツボ 類(Thoracica)に近縁であるが,甲殻類の宿主に寄 生するためにその形態は大きく変化しており,宿主 体内に根のように張り巡らされるinternaと宿主の 体表外に出る袋状のexternaからなる.また,一部 のフクロムシ類では,卵や幼生の段階ですでに性的 二型が知られている.これらの特徴に関与する遺伝 子群の探索のため,トランスクリプトーム解析をウ ンモンフクロムシ(Sacculina confragosa)で行った. その結果,まずinternaではexternaに比べ,輸送体 や脂肪酸合成に関わる遺伝子群の発現量が高いこと が明らかになり,internaが宿主からの栄養摂取を 担っていることの分子生物学的証拠が得られた.ま た,ノープリウス幼生とキプリス幼生を比較する と,ノープリウス幼生では細胞分裂などに関連する 遺伝子群が,キプリス幼生では脂質や糖代謝に関す る遺伝子群が,それぞれ高い発現を示していた.こ れらの結果は,前者では成長しつつ脱皮を繰り返 し,後者では遊泳や探索などにエネルギーを費やす ことと一致する.0日令キプリスの雌雄を比較する といくつかの遺伝子発現に大きな差はあるものの, 機能的遺伝子群グループで特徴的な差はみられな かった.したがって,遺伝子発現からみると,雌雄 の差は,キプリス幼生に変態する前または,付着変 態時に現れると考えられる.

5) Benny K. K. Chan (Academia Sinica): Molecular biogeography and host specificity of coral associated barnacles (Cirripedia: Pyrgomatidae) in the Indo- Pacific waters サ ン ゴ フ ジ ツ ボ(Thoracica: Pyrgomatidae)は生 きた造礁サンゴに着生するフジツボである.Chan 博士の研究グループはインド―太平洋域におけるサ ンゴフジツボの生物地理と宿主利用について調べる ため,日本(高知県),台湾,香港,マレーシア, パプアニューギニアと広範囲にわたって標本の採集 を行った.これらの調査で採集されたサンゴフジツ ボは32種3833個体にのぼり,すべての個体のDNA バーコーディングおよび宿主サンゴの同定がなされ た.サンゴフジツボの多くの種が調査したすべての 地点で採集され,広範囲に分布していた.なかでも

Cantellius euspinulosumとC. arcuatusでは,調査地ご

とに異なる宿主サンゴを利用しているところが観察 された.例として,日本のC. euspinulosumの90% 以上はコモンサンゴ属,台湾のC. euspinulosumの 90%以上はハマサンゴ属,パプアニューギニアのC. euspinulosumはコモンサンゴ属,ハマサンゴ属,コ カメノコキクメイシ属,アミメサンゴ属のサンゴか らみつかった.Chan博士はC. euspinulosumが日本, 台湾,パプアニューギニアと場所ごとに利用してい る宿主の傾向が異なることから,この現象がサンゴ

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フジツボにおける宿主利用の緯度変動ではないかと 考えている.一方で,広域分布しない種や宿主特異 性の高い種も見つかっている. 6) 松村清隆(北里大学・東京バイオテクノロジー 専門学校):フジツボの群居を成立させる着生誘 起シグナル フジツボ類をはじめとする海洋付着生物にとっ て,同種他個体の近くに付着することは,生存率や 繁殖効率を高める上で非常に重要である.群居性を 示すタテジマフジツボAmphibalanus amphitriteのキ プリス幼生の着生(付着・変態)には,同種成体由 来の2種類の着生フェロモンの関与が知られてい る.ひとつは基板吸着性の着生誘起タンパク複合体 (settlement-inducing protein complex; SIPC) で あ り (Matsumura et al., 1998; Dreanno et al., 2006),もう

ひとつは拡散性の32 kDaのタンパク質である (Endo et al., 2009).しかし,これらのフェロモンは比較的 近距離でのみ効力を発揮すると考えられるため,長 距離における定位に別の要因の関与が示唆される. 松村博士たちの近年の研究により,キプリス幼生が 視覚によって成体を定位していることが,判明し た.幼生は視覚によって同種成体を識別できるこ と,また赤色の基板上に好んで着生することが示さ れた (Matsumura & Qian, 2014).さらに,実際に成 体が自家蛍光により赤色光を発していることが,明 らかになった (Matsumura & Qian, 2014).これら視 覚や嗅覚の複合的要因を利用して,フジツボ類は他 個体の近くに付着し,群居を可能にしていると考え られる. 7) 森 敬介(国立水俣病総合研究センター):クロ フジツボの生態―20年間の長期追跡調査の結果 を基にして― 岩礁潮間帯に分布するクロフジツボの個体群動態 を1980年から2000年まで追跡した結果が示された. 20年にわたる長期的なモニタリング研究は海洋生 物でこれまでにほとんどなかった.クロフジツボの 加入(定着)や成長,生存を調査するために,永久 コドラートを多数設置し,写真による追跡調査を 10,000個体以上に対しておこなった.その結果,最 長寿命が20年に達すること,加入の年変動が極め て大きいことなどが明らかになった.死亡要因につ いては,低潮帯ではイボニシによる捕食圧が,高潮 帯では高温や乾燥が,それぞれ重要であった.さら に,個体群動態だけでなく,ケガキとの空間競争や 小型動物による空き殻の利用など,さまざまな生物 との種間関係も明らかになった(森,2006).クロ フジツボは長命であるため,これらの結果は長期モ ニタリングにより初めて明らかになったものであ る. 8) 野方靖行(電力中央研究所):汚損生物としての フジツボ 汚損生物としての側面を持つフジツボは,船に付 着すると,その速度を4割から6割も低下させ,燃 費を最大45%悪化させる.漁業においては,ブイ などの漁具のほか,サザエやイワガキの表面にもフ ジツボが付着して商品価値を落とす.フジツボが特 に厄介になるのは,発電所における熱交換である. 冷却水として海水を使うので,海水冷却水系統にフ ジツボが付着してしまい,フジツボを取り除くのに 多大な労力と費用がかかる.そこで,防汚塗料とし て,かつては有機錫を含む塗料が使われていたが, このような防汚剤はフジツボよりもシオダマリミジ ンコなどの他の動物により効いてしまうため使用が 禁止されている.生物に対して毒性の低い防汚塗料 としてシリコンコーティングがあるが,費用が高 く,効果持続性が課題という.近年,キタアメリカ フジツボなどを代表とする外来種が日本にやってき て広まりを見せつつある.これら外来種および汚損 生物としてのフジツボ類の管理は非常に難しい問題 である.

9) Chien Wen Liu, Benny K. K. Chan (Academia Sini-ca): Larval development and settlement pattern of coral associated barnacles, Berndtia spp. (Acrotho-racica) and Darwiniella angularis (Tho(Acrotho-racica) 非常に多種多様な無脊椎動物が造礁サンゴを住処 として利用しており,フジツボ類にもサンゴフジツ ボ類(完胸上目)やツボムシ類(尖胸上目)といっ たグループが生きた造礁サンゴを利用することが知 られている.ところがサンゴに着生するフジツボ類 が浮遊幼生からどのように着底変態するかわかって

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いなかった. Liu氏らはサンゴフジツボ類Darwin-iella angularisとツボムシ類Berndtia spp. を用いて, ノープリウス幼生から何回脱皮を経てキプリス幼生 に変態し,どのように生きたサンゴに着底し変態す る の か 調 べ た.Berndtia spp.のキプリス幼生には carapaceが細い型と平たい型の二型あることがわか り,これらは性差ではないかとしている. Darwin-iella angularisのキプリス幼生は先の尖った特殊な antennuleを持っている.定着時にサンゴの軟組織 にantennuleを突きさし,サンゴ軟組織に入り込む ためcarapaceを引きつける.その結果,サンゴに着 生するフジツボ類のキプリス幼生の形態から様々な 新知見が得られた(Liu et al., 2016).発表の際,キ プリス幼生の着底の瞬間をとらえた動画が紹介され た.キプリス幼生がサンゴの触手を掻い潜りサンゴ の組織に侵入する様子は,フジツボシンポジウムの トリを飾るに素晴らしい映像であった. シンポジウム総括 フジツボ研究のメリットは,多様性,研究対象と しての調べやすさ,および応用的価値の3点に集約 されるのではないだろうか.今回の発表では,分類 群としては蔓脚類(完胸類,根頭類,尖胸類)に限 られたが,そのなかだけでも,対象種やテーマに驚 くべき多様性がみられた.ポスター発表を含めてト ピックを順不同でいくつか挙げてみても,性システ ム,移動,分類,生物地理,宿主特異性,定着,個 体群動態,種間関係,生物汚損,発生,トラップ, 地理的分布,行動,性決定など実にさまざまであっ た.生息場所も,ほとんど淡水に近い汽水や潮間帯 最上部から遠洋や深海まで,あるいは極域から熱帯 まで多くの種が存在し,フジツボ類のいない海域を 探すことは困難である.さらに蔓脚類の外群には, 知見の非常に少ない嚢胸類や,成体の実態すら知ら れていない謎の彫甲類がある. 林博士のカメフジツボなど少数の事例を除いて, フジツボ類の成体は移動しない.このため,森博士 の研究のように数十年単位で個体を追跡することも (やろうと思えば)可能である.一部の種では数千 という個体数を野外で得るのには数時間もあれば十 分で,室内で累代飼育法も確立している種もある. さらに,ダーウィンの化石フジツボ類のモノグラフ (Darwin, 1851, 1854)が示す通り,化石記録も豊富 である. 応用としては,今回発表のあった汚損や外来種問 題だけでなく,接着メカニズムの解明,食用,アク 図1. シンポジウムの様子.発表者および聴衆合 わせて総勢50名が集まった.(安岡法子氏撮 影,以下同じ). 図2. 昼休みに行われたポスター発表の様子.為 近昌美氏の「ミネフジツボにおける脱皮前 後 の 行 動」 の 発 表 に, た く さ ん の 人 が 集 まった. 図3. Benny K. K. Chan博士(台湾)の発表の様子. フジツボの行動のビデオが,美しい音楽と ともに紹介された.

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セサリーとしての利用など,これまた多岐にわたる 可能性を秘めている. ダーウィン以来の長くかつ優れた研究史もあるの に,なぜ(特に国内の)フジツボ研究者が少ないの か,不思議といえば実に不思議である.倉谷うらら 氏の小冊子(倉谷,2009)のおかげで,フジツボ類 は以前より多くの人に知られるようになったが, 我々の意見ではまだまだ不十分である.ダーウィン がフジツボ研究に没頭していたときに彼の息子が友 人に向かって言ったセリフ,「きみのお父さんはい つフジツボをやっているの?」をもじって言えば, 「皆さんはいつフジツボをやるの?」と広く訴えか けたい.その意味からも,毎年は無理でも,今後も このようなシンポジウムを開き,新規定着も促した い. 謝 辞 今回のサテライトシンポジウム開催の機会を与え てくださった朝倉 彰会長,浜崎活幸大会実行委員 長,および事務局の皆様に深く感謝を申し上げる. 講演者ならびに参加者の皆様,および準備段階や当 日お手伝いいただいた澤田紘太博士と安岡法子氏に も厚く御礼申し上げる. 文 献

Darwin, C., 1851. A monograph on the fossil Lepadidae, or, pedunculated cirripedes of Great Britain.

Palaeonto-graphical Society, 88 pp.+5 figure-tables.

Darwin, C., 1854. A monograph on the fossil Balanidae and Verrucidae of Great Britain. Palaeontographical Society, 44 pp.+2 figure-tables.

Dreanno, C., Matsumura, K., Dohmae, N., Takio, K., Hirota, H., Kirby, R. R., & Clare, A. S., 2006. An α2

-macro-globulin-like protein is the cue to gregarious settlement of the barnacle Balanus amphitrite. Proceeding of the National Academy of Sciences USA, 103: 14396– 14401.

Endo, N., Nogata, Y., Yoshimura, E., & Matsumura, K., 2009. Purification and partial amino acid sequence analysis of the larval settlement-inducing pheromone from adult extracts of the barnacle, Balanus amphitrite (=Amphibalanus amphitrite). Biofouling, 25: 429–434. 倉谷うらら,2009.フジツボ 魅惑の足まねき.岩波

書店,東京,121 pp.

Liu, J. C. W., Høeg, J. T., & Chan, B. K. K., How do coral associated invertebrates start their life in their hosts? An example from coral barnacles. Biology Letters, (12: 20160124).

Matsumura, K., Nagano, M., & Fusetani, N., 1998. Purifica-tion of a larval settlement-inducing protein complex (SIPC) of the barnacle, Balanus amphitrite. Journal of Experimental Zoology, 281: 12–20.

Matsumura, K., & Qian, P.-Y., 2014. Larval vision contrib-utes to gregarious settlement in barnacles: adult red flu-orescence as a possible visual signal. Journal of Experi-mental Biology, 217: 742–750.

森 敬介,2006.クロフジツボ個体群の長期変動.浅 海性ベントスの生態学―天草の渚から(菊池泰二 編).東海大学出版会,神奈川,pp. 128–143. Sawada, K., Yoshida, R., Yasuda, K., Yamaguchi, S., &

Yusa, Y., 2015. Dwarf males in an epizoic barnacle

Oc-tolasmis unguisiformis and their implication for sexual

system evolution. Invertebrate Biology, 134: 162–167. Vervoot, W., 1977. Prof. Dr. Hilbrand Boschma 22 April

1893–22 July 1976. Obituary and bibliography. Zoolo-gische Bijdragen, 22: 2–28.

参照

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