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Vol.49 , No.2(2001)022伊藤 茂樹「隆寛の定善行許容について」

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Academic year: 2021

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印 度 學 佛 教 學 研 究 第 四 十 九 巻 第 二 号  平 成 十 三 年 三 月 一 二 八

法 然 門 下 の 上 足 で あ る 隆 寛 は ﹃ 観 無 量 寿 経 ﹄ に お け る 定 善 行 に つ い て あ た か も 定 善 行 を 往 生 行 と し て の 範 疇 で 捉 え て い る 解 釈 が み ら れ る 。 ﹃ 極 楽 浄 土 宗 義 ﹄ に お い て 、 問 見 観 想 法 偏 以 辺 地 往 生 儀 如 何 答 定 善 機 者 観 念 成 時 皆 可 生 報 土 (﹃ 隆 寛 律 師 の 浄 土 教 ﹄ 遺 文 集 二 七 頁 ) と さ れ る よ う に 法 然 が 否 定 し た ﹃ 観 経 ﹄ 十 三 定 善 行 を 往 生 行 と し て 捉 え て い る よ う に 考 え ら れ る 解 釈 が あ る 。 旧 来 隆 寛 研 究 で は こ の こ と を 法 然 教 学 よ り の 逆 流 を 意 味 す る と 捉 え ら れ て い る が 、 本 稿 で は こ の 隆 寛 の 定 善 行 の 解 釈 が ど の よ う に 捉 え ら れ て い る か 解 明 し た い 。 一 定 善 行 の 行 的 立 場 隆 寛 は 教 学 的 な 解 釈 は 信 因 正 因 と い う 行 者 の 安 心 、 す な わ ち 信 の 立 場 か ら 往 生 行 の 解 釈 を 理 解 し よ う と す る 。 こ の 点 隆 寛 は 往 生 行 と い う 立 場 を 信 を 中 心 と し て 捉 え 、 信 行 具 足 の 行 に た い し て は 、 い か な る 諸 行 も 信 決 定 後 に お い て は 往 生 行 に 肯 定 さ れ る と し て い る 。 ﹃ 極 楽 浄 土 宗 義 ﹄ に は 、 就 十 九 願 有 種 義 者 帰 他 力 捨 余 行 方 以 此 人 同 十 八 願 機 二 者 発 三 心 後 猶 論 余 善 既 発 三 心 故 錐 論 余 行 異 辺 地 機 (遺 文 集 二 一二 頁 ) と し て 十 九 願 の 諸 行 往 生 願 生 者 に お い て は 、 三 心 具 足 の 後 に お い て も 余 行 を 修 す る 変 則 的 な 諸 行 往 生 を 肯 定 し て お り 、 ま た ﹃ 具 三 心 義 ﹄ に は 、 廻 向 他 力 之 時 行 皆 帰 本 願 無 不 往 生 (遺 文 集 二 〇 頁 ) と し て す べ て の 行 も 他 力 に 廻 向 し た 時 、 つ ま り 信 決 定 後 に お い て は 往 生 行 と さ れ る の で あ る 。 こ の こ と は 当 時 無 住 も ﹃ 沙 石 集 ﹄ で 、 又 、 余 行 ノ 往 生 許 サ ヌ 流 ノ ナ カ ニ モ 、 義 門 匠 ナ リ 。 或 人 師 ノ 義 ﹁余 行 ノ 往 生 セ ヌ ト イ ウ ハ 、 三 心 ヲ 具 ザ ル 時 ノ 事 也 。 三 心 ヲ 具 ス レ バ 余 行 モ 皆 念 仏 ト ナ リ テ 往 生 ス ベ シ 。 名 号 ヲ 唱 フ ト モ 三 心 ナ ク ハ 往

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-634-生 ス ベ カ ラ ズ ﹂ ト 云 リ 。 此 義 ナ ラ バ 、 余 行 ノ 往 生 疑 ナ シ 。 本 ヨ リ 三 心 ナ ク ハ 、 念 仏 ト テ モ 往 生 セ ズ 。 余 行 ト 念 佛 ト 、 全 替 ル 事 ナ シ 。 先 達 バ カ 様 ニ ヘ ダ テ ナ ク 申 テ 、 機 ヲ 勧 、 宗 ヲ 弘 ム 。 (古 典 文 学 大 系 本 八 六 頁 ) と 指 摘 し て い る よ う に 三 心 決 定 後 、 諸 行 も 往 生 行 と し て 捉 え て い る 流 派 の い る こ と が 指 摘 さ れ て い る 。 隆 寛 の 定 善 行 の 解 釈 も こ の 延 長 線 上 で 捉 え ら れ て お り 、 ﹃極 楽 浄 土 宗 義 ﹄ に は 、 問 三 心 者 出 上 品 上 生 文 定 善 文 中 所 不 説 也 如 何 答 定 善 者 思 惟 観 察 極 楽 依 正 二 報 其 一 々 二 報 荘 厳 即 是 弥 陀 願 力 所 成 也 名 号 功 徳 所 成 也 帰 彼 荘 厳 凝 此 思 惟 豊 非 至 誠 心 乎 観 彼 荘 厳 不 生 疑 心 豊 非 深 心 乎 憶 彼 荘 厳 欣 慕 匪 癬 豊 非 廻 向 發 願 心 乎 三 心 摂 定 善 之 義 其 理 是 明應 知 (遺 文 集 二 〇 頁 ) と あ る よ う に 定 善 行 と い う 往 生 行 を 三 心 か ら 捉 え 、 ﹁三 心 摂 定 善 ﹂ と い う ﹃ 観 経 ﹄ の 釈 義 か ら 捉 え よ う と す る 。 つ ま り 定 善 行 と し て の 価 値 を 行 と し て 単 独 に 捉 え る の で は な く 、 三 心 通 摂 の 解 釈 で も っ て 捉 え な お し て い る 。 こ の 点 明 ら か に 観 想 行 の 復 活 と し た 態 度 と は 異 な り 、 あ く ま で 往 生 行 の 業 因 は 信 因 正 因 と い う 立 場 で 捉 え ら れ て い る 。 ま た 至 誠 心 釈 の 意 業 観 察 ま た は 五 種 正 行 の 観 察 正 行 に つ い て も 、 意 業 観 察 阿 弥 陀 如 来 昔発 利 他 願 既 成 就 此 意 業 即 以 其 功 徳 施 與 衆 生 真 実 不 虚 故 衆 生 思 惟 観 察 必 蒙 其 益 依 利 他 願 力 得 成 自 利 故 曰 自 利 真 実 也應 知 (遺 文 集 一 〇 頁 ) 観 察 正 行 観 察 ト 者 観 名 願 所 成 極 楽 依 正 二 報 也 礼 拝 者 ∼ 中 略 ∼ 一 々 行 皆 以 帰 名 願 為 本 (遺 文 集 一 四 頁 ) と あ る よ う に 阿 弥 陀 仏 の 本 願 力 に よ る 他 力 往 生 を 阿 弥 陀 仏 の 側 か ら の 廻 向 、 ま た は 信 心 の 獲 得 に よ っ て 、 往 生 行 の 業 因 は き ま る の で あ り 、 定 善 行 も こ の 解 釈 に そ っ て 捉 え ら れ て い る こ と が わ か る 。 二 証 得 往 生 し か し 、 何 故 隆 寛 は こ の よ う な 定 善 行 の 立 場 を 積 極 的 に 肯 定 す る 箇 所 が み え た の で あ ろ う 。 問 称 名 往 生 十 三 定 善 機 可 有 勝 劣 乎 答 若 約 本 願 者 以 称 名 為 勝 若 約 行 人 者 以 観 想 為 勝 (遺 文 集 二 七 頁 ) と あ る よ う に 、 本 願 を も っ て み れ ば 称 名 が す ぐ れ 、 行 人 に と っ て み れ ば 観 想 が す ぐ れ て い る と す る 。 そ し て 本 願 行 は 直 往 の 行 で あ る か ら す ぐ れ 、 定 善 行 は 助 行 と い う 二 次 的 な 価 値 を 持 つ 行 で あ り 、 こ の 行 の 中 に 廻 向 と い う 概 念 が 加 え ら れ る 以 上 本 願 行 が 優 れ て い る と す る 。 問 定 善 廻 而 得 生 念 佛 直 往 業 也 如 何 隆 寛 の 定 善 行 許 容 に つ い て (伊 藤 ) 一 二 九

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-635-隆 寛 の 定 善 行 許 容 に つ い て (伊 藤 ) 一 三 〇 答 称 名 為 本 願 行 故 名 直 因 定 善 観 本 願 故 曰 廻 已 然 而 於 此 発 三 昧 以 之 為 勝 耳 (遺 文 集 二 七 頁 ) し か し 、 隆 寛 は 定 善 行 は 此 土 に お い て 三 昧 を 発 す た め に 行 人 の 立 場 か ら は 定 善 行 が す ぐ れ て い る と す る 。 つ ま り 現 世 で 三 昧 発 得 の 行 で あ る か ら す ぐ れ て い る の で あ る と す る 。 こ こ に 定 善 行 の 解 釈 が あ る の で あ る 。 で は こ の 三 昧 発 得 と は ど の よ う な 意 味 が あ る の で あ ろ う か 。 ﹃ 定 善 義 問 答 私 見 ﹄ に は 、 定 善 機 地 體 現 身 往 生 定 事 如 何 経 文 釈 家 定 散 倶 期 臨 終 往 生 也 然 而 定 善 其 機 勝 故 現 身 取 証 事 在 之 法 相 定 善 現 身 往 生 云 事 可 思 之 也 (遺 文 集 一 四 二 頁 ) と し て 定 善 の 機 根 を 持 つ 人 間 は 現 世 で 往 生 し た 証 を 得 た 人 師 で あ る と し て い る 。 つ ま り 、 現 世 に お い て そ の 機 根 が す ぐ れ て い る か ら こ の 世 で 往 生 の 証 を 得 た と す る の で あ る 。 こ の 点 が 隆 寛 教 学 に お け る 定 善 行 の 解 釈 で あ っ て 、 一 つ の 特 徴 と い え る 。 そ し て こ の 部 分 を 補 強 す る の は ﹃ 観 無 量 寿 経 ﹄ に お け る 華 座 観 の 章 提 希 夫 人 の 得 益 の 文 で あ っ て 、 こ の と こ ろ が 隆 寛 の 華 座 観 の 重 視 す る 根 拠 と な る も の で あ る 。 小 結 法 然 が 否 定 し た ﹃観 無 量 寿 経 ﹄ に お け る 定 善 行 は 、 ﹃ 三 昧 発 得 記 ﹄ の よ う な 書 物 の 存 在 も あ わ せ て 複 雑 な 意 味 を も つ 。 門 弟 た ち は そ の 立 場 を 当 時 の 解 釈 か ら あ わ せ て 、 い か に 位 置 づ け る か が 問 題 で あ っ た 。 こ の 点 隆 寛 教 学 に お い て は 現 世 で の 証 と 位 置 づ け た 。 法 然 滅 後 最 古 の 伝 記 ﹃ 知 恩 講 私 記 ﹄ に お い て は 、 道 綽 来 現 或 云 善 導 再 誕 皆 是 夢 中 得 告 眼 前 見 証 ∼ 中 略 ∼ 善 導 和 尚 証 定 疏 正 是 浄 土 宗 監 触 と い う 記 事 が 見 え 、 後 世 の 隆 寛 の 門 流 に お い て 定 善 行 そ の も の を 証 と 位 置 づ け て い た こ と が み え る 。 顕 密 仏 教 に と っ て 浄 土 教 は 観 察 門 が 中 心 で あ っ た 。 こ の こ と は 中 世 仏 教 に お い て 現 世 で の 浄 土 の 建 立 が 非 常 に お お き な 意 味 を 持 っ た 。 も ち ろ ん 法 然 の 専 修 念 仏 教 団 に お い て は こ の 観 想 行 が ﹁諸 行 往 生 の 否 定 ﹂ と い う 往 生 行 と し て の 本 質 の な か で 否 定 さ れ た 。 隆 寛 に と っ て 三 昧 発 得 の 観 想 は 決 定 往 生 と い う 現 世 で の 証 と し て 再 解 釈 さ れ る こ と に な る の で あ る 。 (詳 細 な 検 討 は 仏 教 大 学 院 紀 要 第 二 九 号 に 掲 載 予 定 。 ) 1 櫛 田 良 洪 稿 ﹁新 発 見 の 法 然 伝 記 -知 恩 講 私 記 ﹂ (﹃ 日 本 歴 史 ﹄ 二 〇 〇 号 ) 2 家 永 三 郎 著 ﹃日 本 思 想 史 の 否 定 の 論 理 の 発 達 ﹄ 四 四 ∼ 五 六 頁 ︿キ ー ワ ー ド ﹀ 諸 行 、 隆 寛 、 観 想 行 、 往 生 の 証 (仏 教 大 学 大 学 院 )

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