永久磁石可変界磁モータの研究
全文
(2) 永久磁石可変界磁モータ の研究. 2018 年 3 月. 野中. 剛.
(3) 目次 第1章. ・・・ 1. 緒論. 1.1. まえがき. ・・・ 1. 1.2. 背景. ・・・ 2. 1.3. 目的. ・ ・ ・ 10. 1 .4. 本論の概要. ・・・12. 第2章. 永久磁石可変界磁モータのしくみ. ・ ・ ・ 15. 2.1. 可変機構付可変界磁モータ. ・ ・ ・ 15. 2.2. 簡易可変界磁モータ. ・ ・ ・ 16. 2.3. 永久磁石可変界磁モータ構造の研究経緯. ・ ・ ・ 18. 2.4. まとめ. ・ ・ ・ 22. 第3章. 付随する小形高出力広範囲高効率駆動化技術. ・ ・ ・ 23. 3.1. 小形高出力広範囲高効率駆動化の要望. ・ ・ ・ 23. 3.2. 磁 束 集 中 IPM ロ ー タ. ・ ・ ・ 25. 3.3. 加圧成形コイル. ・ ・ ・ 32. 3.4. 高強度鋼板ロータコア. ・ ・ ・ 40. 3.5. まとめ. ・ ・ ・ 47. 第4章. 可 変 界 磁 モ ー タ 要 素 試 作 : 10kW. ・ ・ ・ 48. 4.1. 目的. ・ ・ ・ 48. 4.2. 最大出力制御と最大効率制御 に関する検討. ・ ・ ・ 49. 4.3. 検討結果の試作モータによる検証. ・ ・ ・ 56. 4.4. まとめ. ・ ・ ・ 59. 第5章. 可 変 機 構 付 可 変 界 磁 モ ー タ : 52kW. ・ ・ ・ 60. 5 .1. 目的. ・・・60. 5 .2. 提案する永久磁石可変界磁モータの構成と諸元. ・・・61. 5.3. 特性評価結果. ・ ・ ・ 64. 5.4. 提案する永久磁石可変界磁モータの制御方法. ・ ・ ・ 67. 5.5. 駆動システムの評価方法. ・ ・ ・ 69. 5.6. 制御評価結果. ・ ・ ・ 71. 5.7. まとめ. ・ ・ ・ 73. 第6章 6.1. 簡 易 可 変 界 磁 モ ー タ 要 素 試 作 : 24kW. ・ ・ ・ 74 ・ ・ ・ 74. 目的 i.
(4) 6.2. 試作モータの概要. ・ ・ ・ 75. 6.3. 試作モータの評価. ・ ・ ・ 77. 6.4. まとめ. ・ ・ ・ 83. 第 7 章. ・ ・ ・ 84. 結論. 謝辞. ・ ・ ・ 86. 文献. ・ ・ ・ 87. ii.
(5) 第1章 1.1. 緒論. まえがき. 筆 者 は ,人 類 の 歴 史 は ア ク チ ュ エ ー タ の 歴 史 で あ る と 思 う 。ア ク チ ュ エ ー タ 容 量の拡大と共に,我々の生活圏は拡大した。今,その主役にあるのがモータ であ ると思う。 モ ー タ の 小 形 高 出 力 化 ,広 範 囲 高 効 率 駆 動 化 は 永 遠 の 課 題 で あ る 。そ の 課 題 克 服の最先端が永久磁石同期モータである。同期モータはかつて巻線界磁式の可変 界 磁 モ ー タ が 主 流 で ,未 だ に 多 く の 者 が「 V 曲 線 」を 学 ん で い る 。し か し な が ら , 希土類永久磁石の威力の大きさに,界磁調整機能を捨てても小形高出力化が優先 されている現状である。つまり,永久磁石同期モータは,広範囲高効率駆動より 小形高出力化を優先した進歩を遂げてきた。 な ら ば ,希 土 類 永 久 磁 石 を 用 い て 可 変 界 磁 機 能 を も た せ る こ と が で き れ ば ,上 記課題に対し最高のモータができるであろう。本論文では,次 世代を担う小形高 出力広範囲高効率駆動化技術として,永久磁石可変界磁モータについて論じる。 加えて,永久磁石可変界磁モータの研究に付随して開発した小形高出力広範囲高 効率駆動化に貢献する個々の技術についても報告する。. 1.
(6) 1.2. 背景. 1.2.1. 小形高出力化と広範囲高効率駆動の要求. 今日,永久磁石同期モータ は,あらゆる産業機器に小形高出力高効率モータと して受け入れられている。その大きな要因として強力な永久磁石の採用がある。 1980 年 頃 の 希 土 類 永 久 磁 石 の 発 達 に よ る こ と が 知 ら れ る と こ ろ で あ る 。 図 1.1 は 産 業 用 モ ー タ の ア プ リ ケ ー シ ョ ン 例 で あ る 。 例 え ば , 産 業 用 ロ ボ ッ ト の各関節部にはサーボモータが配置され,駆動源として機能している。これらの サーボモータの特性向上は,ロボットの性能向上と密接に関係している。サーボ モータの性能を表す指標として,パワーレート密度(モータの加減速性能を 表す 指標)がある。質量(モータ質量)が小さく,パワーレート密度の大きいサーボ モータは,高いサーボ性能を有し,ロボットの動作時間の短縮などに大きく貢献 する。 図 1.2 (a)は ,製 品 化 さ れ た 時 期 が 異 な る 4 台 の 同 一 出 力 の サ ー ボ モ ー タ で あ る 。 ➀ は 1959 年 の 製 品 で , ア ル ミ ニ ウ ム - コ バ ル ト 系 永 久 磁 石 が 使 用 さ れ て い る 。 ➁ は 1984 年 の も の で , サ マ リ ウ ム - コ バ ル ト 系 永 久 磁 石 が 使 わ れ て い る 。 ➂ と ➃ は そ れ ぞ れ 1992 年 と 2002 年 の 製 品 で , ネ オ ジ ム - 鉄 - ボ ロ ン 系 永 久 磁 石 が 使われている。 図 1.2 (b)は ,こ れ ら 3 種 類 の 永 久 磁 石 材 料 の 最 大 エ ネ ル ギ ー 積 が 向 上 し て き た 経 緯( 日 立 金 属 の 資 料 を 基 に 作 成 )で あ る 。図 1.2 (a)に 示 し た 製 品 の 登 場 時 期 と 照らし合わせると,サーボモータの小形高出力化,すなわち,高パワーレート密. 小 形 高 トルク 化 の 要 求 図 1.1. 産業用モータのアプリケーション 例. 2.
(7) Maximum energy product [kJ/m 3 ]. 3. 512kJ/m (Theoretical limit). Nd-Fe-B S m -C o Ferritic A l - Ni -C o. Year (a) 図 1.2. (b) 磁石の最大エネルギー積とモータの外形状の推移. 度化と軽量化は,より大きな最大エネルギー積を持つ永久磁石材料の登場に歩調 を合わせて進展してきたことがわかる。これは,最大エネルギー積が大きい永久 磁石を用いると,モータ内部の磁束密度が高くなり,モータの主要な損失である 銅 損 の 低 減 が 可 能 と な る た め で あ る ( 1) 。 以 上 よ り , サ ー ボ モ ー タ の さ ら な る 小 形 高出力化のためには,より強力な永久磁石材料や界磁構造の登場が望まれる。 現代社会のためにモータは不可欠なものである。現在,日本の電力使用料の半 分 以 上 が モ ー タ で 消 費 さ れ て お り ( 2). ( 3) , 省 エ ネ , CO 2. 削減技術として今も盛んに. モ ー タ の 高 効 率 化 の た め の 研 究 開 発 が 行 わ れ て い る ( 2) 。 近 年 , ハ イ ブ リ ッ ド カ ー (HEV),電 気 自 動 車( EV)等 こ れ ま で 内 燃 エ ン ジ ン が 用 い ら れ て き た 自 動 車 の 駆動用途にまで応用が広がっており,そこでは小形高出力化に加えて広範囲な駆 動 領 域 と 高 効 率 化 が 要 求 さ れ て い る ( 4) 。 また,低炭素社会を実現するための日本が誇る省エネ法の制度として,トップ ランナー制度がある。トップランナー制度とは,法令で指定する特定機器におい て,最も優れている機器を標準性能と位置づけし,その機器以上の性能に更新し て い く こ と を 義 務 付 け た 制 度 で あ る ( 5) 。2011 年 8 月 ,欧 州 委 員 会 は 自 動 車 業 界 に 対 し て ,CO 2 排 出 量 削 減 を 評 価 す る 法 案 を 採 択 し た ( 5) 。2017 年 8 月 ,中 国 当 局 は EV や HEV の 普 及 拡 大 の 一 環 と し て ,自 動 車 メ ー カ に 対 し て ゼ ロ エ ミ ッ シ ョ ン 車 ま た は 低 排 出 ガ ス 車 の 売 上 げ の ノ ル マ を 設 定 す る 計 画 を 発 表 し た ( 6) 。 こ れ ら の 法 案は内燃エンジンからモータへのシフトを加速し,モータの小形高出力広範囲高 効率駆動化を推進すべき背景を示す一例である。 1.2.2. モータ開発の歴史と近況. 本研究の背景を理解するため,小形高出力化と広範囲高効率駆動化の観点から モータ開発の歴史を振り返ってみよう。モータの最初は,電磁石により鉄片が強 力に引き付けられる現象,いわゆる磁気吸引力を利用してロータ鉄片を一定角度 のステップずつ回転させるという単純な考え方からスタートしている。 この励磁 3.
(8) コ イ ル の 切 替 え を 順 次 に 行 う こ と か ら 自 動 的 に 行 う 発 明 が な さ れ ( 整 流 子 装 置 ), 現在のブラシ付き直流モータの原型となった。また,整流子装置を半導体スイッ チ に 置 き 換 え て イ ン バ ー タ 駆 動 装 置 が 誕 生 し た ( 7) 。 現 在 の 永 久 磁 石 同 期 モ ー タ に 至 る 歴 史 に つ い て は ,文 献 (8)が 詳 し く ,そ の 一 部 を引用する。 巻 線 界 磁 同 期 機 は 1870 年 頃 に 出 現 す る 。外 側 か ら ス リ ッ プ リ ン グ を 介 し て 直流給電される電磁石からなるロータが ,三相交流が給電されるステータの 三相巻線に発生する回転磁界に同期して回転する構造が確立された。ロータ の 電 磁 石 を 永 久 磁 石 に 替 え る 試 み は ,1930 年 代 の ア ル ニ コ 磁 石 の 発 明 に 遡 る 。 その後,フェライト磁石,希土類磁石などの開発と共に,電磁石に替えてロ ータに永久磁石を用いる永久磁石同期モータが広く普及するようになった。 以下,小形高出力モータ,特に小形高出力同期モータの広範囲高効率駆動化に 関する技術について復習する。同期モータの回転速度制御は,極数変換法と周波 数 制 御 法 の 2 種 類 に 限 ら れ る ( 2) 。 極 数 変 換 法 は ス テ ー タ コ イ ル の 接 続 を 替 え る こ とで極数を変化させる。モータ自体や切替機 構にコストがかかる上,段階的な回 転速度制御しかできないため,大形機以外ではほとんど採用されない。周波数制 御法はインバータなどの可変周波数電源によって行われる。 同期モータの電源周 波数を調整することで回転磁界の速度を変化させる。現在ではこの方法が一般的 である。 巻線界磁式同期モータにおいて,横軸を界磁電流,縦軸を電機子電流にして一 定 の 負 荷 ト ル ク で グ ラ フ を 描 く と V 曲 線 と な る ( 1 . 2 . 3 節 で 詳 述 )。 電 圧 と 駆動周波数を一定とした場合,界磁電流を調整することで遅れ力率運転から進み 力率運転まで自由に調整でき,力率1で運転することもできる。負荷トルクが変 化しても最適な界磁電流にすれば,力率1で運転することも効率最大状態で運転 することも容易である。 永久磁石同期モータは界磁起磁力が一定のため,回転数の上昇と共に増大する 電 源 電 圧 が 必 要 と な る ( V / f 制 御 )。 そ れ を 実 現 す る 方 法 と し て チ ョ ッ パ 制 御 が 実用化された。降圧チョッパ制御に昇圧チョッパ制御が加わり ,より広範囲の電 源電圧を得ることが可能となった。半導体スイッチング素子の発達とともにパル ス 幅 変 調( PWM)制 御 が 発 達 し ,サ イ リ ス タ 位 相 角 制 御 等 に よ る 連 続 的 な 電 源 電 圧 制 御 や ,パ ル ス 振 幅 変 調( PAM)制 御 も 発 達 し た 。よ り 大 電 力 高 電 圧 ま で の 要 求に対しては,多数のタップを備えた変圧器の先に整流回路を設けたタップ制御 を基に,半導体スイッチング素子を用いた静止レオナード方式によって,直流可 変 電 圧 電 源 が 達 成 さ れ た 。 個 々 の 技 術 の 詳 細 内 容 に つ い て は , 文 献 (9)が 詳 し い 。 交流モータの駆動にはインバータの利用が一般的である。インバータは周波数 制御機能を備えており,その登場以降回転数の上昇に応じて電圧を増加させる可 変 電 圧 可 変 周 波 数( VVVF)が 一 般 的 と な っ た 。擬 似 正 弦 波 出 力 イ ン バ ー タ で は , 一 般 に PWM 制 御 で デ ュ ー テ ィ 比 を 連 続 的 に 変 化 さ せ る こ と で 擬 似 的 に 正 弦 波 を つくり出す。スイッチング周波数を高くするほど滑らかな正弦波に近づけること 4.
(9) が で き る ( 2) 。 周 波 数 を 変 え る こ と で モ ー タ の 可 変 速 運 転 を 達 成 し , デ ュ ー テ ィ 比 を変化させ出力電圧を変化させることで,高効率となる位相角に近づけることが できる。 モータの回転速度が上昇していくと,やがて擬似正弦波駆動の出力電圧 が準備 された電源電圧の最大値に達する。その回転速度を基底回転速度と呼び ,永久磁 石トルクが最大となる電流位相角による駆動(q 軸駆動)では,これ以上の回転 速度では最大出力を発揮できなくなる。永久磁石同期モータが理想的なベクトル 制御の下に駆動されると仮定した場合 ,リラクタンストルクも考慮した最大トル ク 制 御 で 駆 動 で き る 最 大 回 転 速 度 が 基 底 回 転 速 度 と な る 。 過 変 調 PWM 駆 動 や 矩 形波駆動は,擬似正弦波電圧を矩形波に近づけることで基本波電圧を1,2割増 大させ,基底回転速度を高める技術である。これらは,広範囲駆動化を図る技術 と し て , EV モ ー タ に 用 い ら れ て い る ( 10) 。 最大回転速度の広範囲駆動化を図る技術として,より一般的には,基底回転速 度 以 上 の 回 転 速 度 に は 弱 め 磁 束 制 御 が 用 い ら れ る ( 11) 。 ベ ク ト ル 制 御 は 1968 年 頃 Hasse 氏 お よ び Blaschke 氏 に よ っ て 提 案 さ れ た ( 12) ( 13) が ,パ ワ ー ト ラ ン ジ ス タ な どによる理想的な半導体電力変換装置が出現し,マイクロエレクトロニクスの進 歩 で , 安 価 に 大 量 の 高 速 演 算 処 理 が で き る よ う に な っ た 1980 年 代 に 入 っ て , 初 めて本格的な実用期を迎えた。その技術がインバータに用いられ 現在に至ってい る ( 12) 。 同 期 モ ー タ の ベ ク ト ル 制 御 に 関 す る 歴 史 に つ い て は , 文 献 (13)が 詳 し く , そ の 概要を引用する。 1979 年 元 吉 氏 ら に よ っ て , 界 磁 電 流 と 電 機 子 電 流 か ら 主 磁 束 を 演 算 す る ベ ク ト ル 制 御 法 の 適 用 例 が 報 告 さ れ て い る 。1983 年 赤 木 氏 ら は ,ダ ン パ 巻 線 を 持たない同期モータに対し,フィードフォワード制御により,過渡時にも常 に ベ ク ト ル 制 御 を 成 立 さ せ る 方 式 を 提 案 し て い る 。 ま た 1987 年 大 沢 氏 ら は , ベ ク ト ル 制 御 の 2500kW 大 容 量 同 期 モ ー タ へ の 適 用 お よ び 無 整 流 子 モ ー タ へ の 応 用 法 に つ い て 報 告 し て い る 。さ ら に 1990 年 ,杉 本 氏 ら は 励 磁 成 分 電 流 と ト ル ク 成 分 電 流 に 対 し ,非 干 渉 制 御 法 を 適 用 し そ の 制 御 性 を 向 上 さ せ て い る 。 弱め磁束制御に限らず永久磁石同期モータのベクトル制御では,ロータの永久 磁 石 の N 極 の 向 き に d 軸 を 定 め ,こ れ よ り π /2 進 ん だ 方 向 に q 軸 を と る 。こ の d 軸方向を基準に電流位相角を操作することがベクトル制御の肝要である。前述の 過 変 調 PWM 駆 動 や 矩 形 波 駆 動 が , 最 大 出 力 発 生 可 能 回 転 速 度 を 2 割 程 度 増 大 さ せる効果があるのに対し,弱め磁束制御は最大出力発生可能回転速度を基底回転 速度の数倍にも増大できる。そのためにロータの位置(d 軸位置)を把握するた めのセンサ機能が必要となり,その達成手段として,センサ付きベクトル制御と センサレスベクトル制御の2つの方式がある。ロータの位置を把握する精度に関 してはセンサ付きベクトル制御が優れ ており,基底回転速度以上の最大出力可変 速範囲をより広くするためには,センサ付きベクトル制御の適用が望ましい。 永久磁石同期モータでは基底回転速度以上の回転速度でのモータ誘起電圧を打 5.
(10) ち消すために,弱め磁束電流を流す弱め磁束制御が一般的に用いられている。し かし,この方法は,駆動トルクに寄与しない電流を流すために,モータの効率が 低下する問題がある。 現 在 の HEV や EV は ,モ ー タ の 弱 め 磁 束 領 域 を 少 な く す る こ と を 目 的 と し て , 車載バッテリモジュールを多数直列接続することや昇圧回路を設けることによっ て , モ ー タ 電 圧 を 高 め る こ と が 一 般 に 行 わ れ て い る ( 14) 。 一 方 ,2010 年 頃 現 在 ま で か ら ,従 来 永 久 磁 石 モ ー タ の 損 失 が 大 き か っ た 電 気 的 弱め磁束制御の代わりに,広範囲高効率駆動の観点から,有効磁束を可変するこ と が で き る 可 変 界 磁 技 術 が 注 目 さ れ て い る ( 15) 。文 献 (3),(15)に 定 数 可 変 モ ー タ や 可 変 界 磁 モ ー タ と し て 詳 し く 説 明 さ れ て い る が ,文 献 (3)に よ れ ば ,そ れ ら は 以 下 の よ う に 分 類 さ れ て い る 。 図 1.3 は そ れ ら 報 告 例 を 列 挙 し た も の で あ る 。 1)電機子巻線の巻線数を可変するもの 「 巻 線 切 替 モ ー タ 」 ( 16 ) 2)ロータに装着した永久磁石の磁化を可変するもの 「 可 変 磁 力 メ モ リ モ ー タ 」 ( 17) 3)分割永久磁石ロータの相対位置をずらして総合磁束を可変するもの 「 可 変 磁 束 モ ー タ 」 ( 18 ) ,「 可 変 界 磁 モ ー タ 」 ( 1 9). ( 20). 4)漏れ磁束を受動的に変化させてステータ鎖交磁束を可変するもの 「 漏 れ 磁 束 制 御 型 可 変 特 性 モ ー タ 」 ( 21) 5)永久磁石界磁と巻線界磁のハイブリッド励磁 「 巻 線 界 磁 式 ク ロ ー ポ ー ル モ ー タ 」( 22) , 「 半 波 整 流 ブ ラ シ な し 同 期 モ ー タ 」( 23) , 「 ハ イ ブ リ ッ ド 界 磁 モ ー タ 」 ( 24) 著 者 ら が 提 案 す る 永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ー タ は ,上 記 分 類 の 3 )に 相 当 す る 。研 究の目的とする小形高出力化に,前節で説明したような強力な永久磁石材料の使 用は欠かせない。そのため,著者らは,界磁電流を利用するものや永久磁石自体 の磁力を弱めるものを除外して,永久磁石可変界磁モータの新構造について検討 を始めた。希土類永久磁石を用いた永久磁石可変界磁モータの歴史は浅い。試作 検 討 を 開 始 し た 2004 年 当 時 , 実 用 化 さ れ た 製 品 は も ち ろ ん 皆 無 で , 試 作 評 価 を 報 告 し た 永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ー タ の 先 駆 と し て も 文 献 (18)等 を 見 る の み で あ っ た 。 それ等にしても研究のための頑丈で重い形態であり,実用的な小形高出力なもの ではなかった。 現 在 こ の 方 面 の 開 発 に は 多 く の 機 関 が 携 わ っ て い る 。し か し な が ら ,小 形 高 出 力 広 範 囲 高 効 率 駆 動 の 観 点 の 優 位 性 か ら ,2011 年 よ り 一 貫 し て 提 案 し て き た 本 研 究 の 構 造 ( 37) に つ い て , 未 だ 参 考 に で き る も の は 少 な い と 考 え て い る 。. 6.
(11) 7. (31). (26). (9). 図 1.3. (32). ). (27). (17). (33). (28). 可変界磁モータの事例. ). (24). (34). (29). (25). (3 5 ,36 ). (30). ). (22).
(12) 1.2.3. 同期モータの V 曲線. 今日,永久磁石同期モータは,あらゆる産業機器に小形高出力高効率モータと して受け入れられている。 本項では,それ以前の同期モータ の状況について説明 する。 図 1.4 は 巻 線 界 磁 式 同 期 モ ー タ( 株 式 会 社 精 工 社 製 作 所 製 2.2kW)の 例 で あ る 。 回転界磁形のためロータの外側に電機子巻線が配置され,ロータはスリップリン グ を 介 し て 界 磁 電 流 が 通 電 さ れ る 電 磁 石 と な っ て い る 。 可 変 抵 抗 器 ( Rf) を 調 整 することで,電磁石の磁力を自由に調整できる「可変界磁モータ」である。 巻 線 界 磁 式 同 期 モ ー タ で よ く 知 ら れ て い る 特 性 と し て 図 1.5 に 示 す V 曲 線 が あ る。一定の出力状態において,効率が最大となる最適な界磁の強さがあり,効率 は 力 率 に 大 き く 影 響 を 受 け る ( 38) 。つ ま り ,力 率 1 に 調 整 す る こ と は 効 率 を 最 大 に することと同等に考えられていた。 図 1.6 に 界 磁 の 強 さ に 対 す る ベ ク ト ル 図 を 示 す 。 一 定 回 転 速 度 で 回 転 す る モ ー ・ タ に と っ て ,界 磁 電 流 を 調 整 す る こ と は 誘 起 電 圧 E 0 を 調 整 す る こ と で あ る 。同 図 ・ ( a) に 示 す よ う に , 巻 線 界 磁 式 同 期 モ ー タ は 印 加 さ れ た 電 源 電 圧 V に 対 し , 界 ・ 磁 電 流 を 調 整 す る こ と で 誘 起 電 圧 E0 を 調 整 し , 電 源 電 圧 の 大 小 に 係 わ ら ず V 曲 線の最大効率状態を実現できる利点があった。つまり,世界各国や使用者の電源 事 情 に 対 し 融 通 性 に 優 れ て い た 。 ま た , 同 図 ( b) や ( c) に 示 す よ う に , 誘 起 電 圧が電源電圧に不足したり過剰な状態では,遅れ電流や進み電流が自動的に生じ て界磁を増減することで,モータ端子電圧を電源電圧に一致させる機能を有 して いた。. N Rotor (Electromagnet) Slip ring. S Rf If -. 図 1.4. 巻線界磁式同期モータ. 8. +.
(13) 図 1.5. 同 期 モ ー タ の V 曲 線( 野 中 作 太 郎 著 ,「 電 気 機 器 Ⅰ 」,p.286, 森 北 出 版 社 ). 図 1.6. 同 期 モ ー タ の 無 負 荷 の 場 合 の ベ ク ト ル 図 ( 同 p.286). 9.
(14) 1.3. 目的. 1.3.1. 現状の問題点. 図 1.7 は , 図 1.4 で 紹 介 し た 巻 線 界 磁 式 同 期 モ ー タ と ネ オ ジ ム - 鉄 - ボ ロ ン 系 永久磁石が使われている最新の永久磁石サーボモータのサイズ比較の例である。 モータのトルクの大きさは概略モータの体格に拠るものであるが, 永久磁石サー ボ モ ー タ の 定 格 ト ル ク が 約 1.5 倍 大 き い に も 係 わ ら ず , 体 格 ( 容 積 ) は 1/6 程 度 に小形化されている。 小 形 で 高 出 力 な 永 久 磁 石 同 期 モ ー タ を 高 速 回 転 で 駆 動 す る 場 合 ,前 述 の よ う に , 基底回転速度以上の回転速度のモータ誘起電圧を打ち消すために,弱め磁束電流 を流す弱め磁束制御が一般的に用いられる。しかし,この方法は,駆動トルクに 寄与しない電流を流すために,モータの効率が低下する問題がある。また,弱め 磁束領域を少なくすることを目的として,車載バッテリモジュールを多数直列接 続することや昇圧回路でモータ電圧を高めることは,モータの耐圧を見直すこと も含めコスト増大を避けられない。しかも,モータ電圧を高め得る範囲は限定的 である。 1.3.2. 研究の目的と課題. EV モ ー タ を 想 定 し , 強 力 な 永 久 磁 石 同 期 モ ー タ で あ っ て , 効 率 が 最 大 と な る 最適な界磁の強さに調整可能な可変界磁機能をもつ永久磁石可変界磁モータを提 案し,モータの小形高出力広範囲高効率駆動を実現することを本研究の目的とし た。そのための課題としては,以下を設定した。 (1)可変界磁モータは界磁の大きさを可変できるモータであるため,界磁を従 来の鉄損量の制限なく装荷することが可能となる。より大きな磁気装荷によりモ ータはより高出力化が可能となる。可変界磁化は小形高出力化に反するものでは ない。両立でもなく,促進できることを永久磁石可変界磁モータの試作と評価を もって実証することを目指した。. 図 1.7. 巻線界磁同期モータと永久磁石同期モータのサイズ比較 10.
(15) (2)インバータの容量制限の下で最適なモータを選ぶという話を聞く機会があ るが,本筋ではないと考える。モータのポテンシャルに合ったインバータを準備 することが本筋である。よって,モータのポテンシャルをフルに発揮できるイン バータを準備した上で,モータが発生できる最大出力と最大回転速度の確認,そ して理論と実測の一致を目指した。 ( 3 )可 変 界 磁 モ ー タ に 関 す る 従 来 の 文 献 の 中 に は , 「低速大トルク駆動時に高磁 力 化 し ,高 速 駆 動 時 に は 低 磁 力 化 す る 」等 の 記 述 が 見 ら れ る ( 39) ( 40) ( 41) が ,誤 解 を 招き易いため,訂正されるべき文言である。 つまり,電圧飽和を避けるために回 転速度の上昇と共に界磁を弱めるのではない。弱めれば最大出力は低下する。電 圧飽和をした回転速度以上の範囲で最大出力を得るためには ,最大界磁のまま電 流 位 相 角 を 進 め ,弱 め 磁 束 制 御 に よ っ て 鎖 交 磁 束 を 減 じ る 必 要 が あ る ( 42) 。基 底 回 転速度以上の回転速度でかつ最大出力以下の中間出力状態において,低出力であ るほど界磁を弱めることで ,より高効率の駆動状態が得られるのである。また, 表 面 磁 石 同 期 モ ー タ( SPM モ ー タ )が 基 底 回 転 速 度 以 上 の 高 速 回 転 駆 動 に 不 適 で あ る と の 説 が あ る ( 11) ( 8) が ,正 確 な ベ ク ト ル 制 御 特 に 弱 め 磁 束 制 御 を な し 得 る イ ン バ ー タ を 用 い る 前 提 を 考 慮 す れ ば ,訂 正 さ れ る べ き 文 言 で あ る 。同 条 件 に お い て , モータの最大回転速度を制限するものは電磁的にはなく,ロータの耐遠心力破壊 強度で決定される。これらの理論と検証を目指した。 (4)インバータ開発は絶大な成果を上げてきたが,モータ開発において,電磁 機械の設計はないがしろにされた感がある。永久磁石という 強力な磁気装荷部品 を用いて,可変界磁機能を達成するためには ,新しい機構を生み出す機械設計的 試みが要求される。その実現を目指した。 (5)界磁の強さを正確に調整するアクチュエータは,広範囲高効率駆動を実現 する永久磁石可変界磁モータには必要なものであったが,アクチュエータにかか る費用と搭載スペースが増大する欠点もあった。このためモータの駆動状態に応 じて,界磁の強さがおのずから変化するような永久磁石可変界磁モータが望まれ ている。その実現を目指した。. 11.
(16) 1.4. 本論の概要. 本 論 文 は ,次 世 代 を 担 う 小 形 高 出 力 広 範 囲 高 効 率 駆 動 化 技 術 と し て ,永 久 磁 石 可変界磁モータについて論じる。加えて,永久磁石可変界磁モータの研究に付随 し開発した小形高出力広範囲高効率駆動化に貢献する個々の技術についても説明 す る 。 図 1.8 に , 本 論 各 章 の 構 成 を 示 す 。 第 1 章 で は ,研 究 の 目 的 を 述 べ ,本 論 文 の 概 要 の 説 明 と と も に 本 研 究 の 位 置 付 けについて言及した。永久磁石可変界磁モータに至るモータ開発の背景と現在の 問題点を示し,本論文の目的と各章の概要を示した。 第 2 章 で は ,小 形 で 効 率 が 良 い 埋 込 磁 石 同 期 モ ー タ( IPM モ ー タ )を ベ ー ス に , 様々な構造の永久磁石可変界磁モータを検討した。特に,界磁を弱めた状態にお いて鉄損がより減少する構造を模索し,方向性としては,界磁を弱めた状態にお いてロータから出てゆく磁束自体が減少するような構造を検討した。その結果よ り,提案する2種類の新構造永久磁石可変界磁モータのしくみを考案し,本構造 に至る研究の経緯を説明した。 第 3 章 で は ,永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ー タ の 研 究 に 付 随 し て 生 ま れ ,次 章 で 説 明 す る具体的な設計や試作に用いられた新技術として, 「 磁 束 集 中 IPM モ ー タ 」,「 加 圧成形コイル」と「高強度鋼板ロータコア」について論じた。永久磁石可変界磁 モータは界磁を自由に調整することが可能であることから,従来よりも大きな界 磁を設定することが可能となる。永久磁石可変界磁モータを広範囲高効率化のみ な ら ず よ り 小 形 高 出 力 化 す る 技 術 と し て「 磁 束 集 中 IPM モ ー タ 」を 開 発 し た 。従 来の永久磁石同期モータをより高出力化することは,各回転速度においてより高 トルク化するということである。従来と同じ電磁部サイズで高トルク化するには 磁 気 回 路 の 磁 路 強 化 が 必 要 と な り ,ス テ ー タ コ イ ル の 占 有 ス ペ ー ス が 圧 迫 さ れ る 。 コイルの占有スペースを縮小したにも係わらず,コイルの導体断面積を拡大する 技術として「加圧成形コイル」を開発した。さらに,従来の電磁鋼鈑を用いたロ ー タ の 耐 遠 心 力 を 強 化 し , 約 2 倍 の 高 速 回 転 化 を な し 得 る 技 術 と し て ,「 高 強 度 鋼板ロータコア」を開発した。 第 4 章 で は ,永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ー タ の 広 範 囲 高 効 率 駆 動 に つ い て 検 討 し た 結 果を述べた。広い可変速範囲のそれぞれの回転速度において,界磁の強さや電流 位相角をどのような値にすれば最大出力制御が達成できるのか,また,それぞれ の出力状態において,界磁の強さや電流位相角をどのような値にすれば最大効率 制御が達成できるのかを明らかにした。さらに,検討結果を確認するため,試験 用永久磁石可変界磁モータを試作し,広範囲駆動に対する効率評価を行った。効 率 評 価 は , 最 大 回 転 速 度 22000 min - 1 , 最 大 出 力 10kW の 範 囲 内 で 行 わ れ , 固 定 界 磁 に 対 し て 最 大 20% 以 上 の 効 率 向 上 を 確 認 し , 検 討 結 果 を 実 証 で き た 。 第 5 章 で は , EV 用 52kW 永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ー タ と し て , 可 変 機 構 付 永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ー タ の 設 計 と 試 作 を 行 い ,そ の 基 本 特 性 に つ い て 評 価 し た 。さ ら に , ベクトル制御における電流位相角をより広範囲に制御し,同時に界磁を調整する 方法としてマップ制御を行い,その動作結果を検証した。永久磁石可変界磁モー 12.
(17) タは界磁が変化すると誘起電圧定数やトルク定数などのモータ定数が変化するた め,固定界磁モータを駆動するための従来インバータではベ クトル制御の位相角 を広範囲に制御できず,モータを駆動することができない。また,インバータに は界磁を調整する機能がない。そのため,モータの駆動状態に合わせて界磁とイ ンバータの指令が適切に制御される永久磁石可変界磁モータ駆動システムを開発 した。 第 6 章 で は ,界 磁 の 強 さ が お の ず か ら 変 化 す る よ う な 永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ー タ について論じた。界磁の強さを正確に調整する可変機構は,広範囲高効率駆動を 実現する永久磁石可変界磁モータには必要なものであったが,可変機構にかかる 費用と搭載スペースが増大する欠点もあった。モータの駆動状 態に応じて,界磁 の強さがおのずから変化するような永久磁石可変界磁モータ として,筆者等は可 変機構を有しない小形で低コストな簡易可変界磁モータを考案した。 このモータ では,負荷トルクに応じて界磁の強さ が,おのずから変化する。この簡易可変界 磁モータは,外部からの機械的な可変機構を有しないだけでなく,電気的な操作 も必要としないため,従来の永久磁石モータ用インバータのみで駆動できる。従 来モータと同サイズで製作した試作機の構造と効率評価について説明 した。 第7章では,以上得られた知見より結論を総括した。. 13.
(18) 第 1章. 緒論. 研究の目的と課題の提示. 第 2章. 第2章. 研究の. 永久磁石可変界磁. 第3章. モータのしくみ. 範囲高効率駆動化要素技術. 2種類の新構造永久磁石可変界磁 モータのしくみ 本構造に至る研究の経緯を説明. 第4章. 付随する小形高出力広. 磁 束 集 中 IPM モ ー タ ( 小 形 化 ) 加圧成形コイル(高効率化) 高 強 度 鋼 板 ロ ー タ コ ア( 高 速 回 転 化 ). 可変界磁モータ要素試. 作 : 10kW 永久磁石可変界磁モータの広範囲高 効率駆動について検討 試作モータで検討結果を実証. 第6章 第5章. 素 試 作 : 24kW. 可変機構付可変界磁モ. 可変機構を有しない永久磁石可変界 磁モータの試作 従来インバータで駆動. ー タ : 52kW EV 用 52kW 永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ー タ 試作 永久磁石可変界磁モータの駆動シス テムを開発. 提案モータ(2) モータ(1). 提案モータ(1) モータ(1) 第7章. 結論. 知見より結論を総括. 図 1.8. 簡易可変界磁モータ要. 本論各章の構成. 14.
(19) 第2章. 永久磁石可変界磁モータのしくみ. 小 形 で 効 率 が 良 い IPM モ ー タ を ベ ー ス に , 様 々 な 構 造 の 永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ータを検討した。特に,界磁を弱めた状態において鉄損がより減少する構造を模 索し,方向性としては,界磁を弱めた状態においてロータから出てゆく磁束自体 が減少するような構造を検討した。その結果より,提案する2種類の新構造永久 磁石可変界磁モータを考案した。本章では,その2種類の永久磁石可変界磁モー タのしくみを説明し,その構造に至る研究の経緯を説明する。 2.1. 可変機構付可変界磁モータ. 永 久 磁 石 を V 字 に 配 置 し た ロ ー タ の 磁 極 を 軸 方 向 に 3 分 割 し ,両 側 の 磁 極 は シ ャフトに固定し,中央の磁極が両側の磁極に対しシャフト上を回転する構造を考 案 し た ( 37) ( 43) 。 中央の磁極と両側の磁極の回転方向に対する相対的な電気角を相対角と呼ぶ こ と に す れ ば ,相 対 角 が 0°の と き 中 央 の 磁 極 と 両 側 の 磁 極 の N 極 や S 極 が 軸 方 向に一直線上に並び,界磁の強さが最大となる。 図 2.1(a)は ,相 対 角 0°状 態 に お け る 磁 束 の 説 明 図 で あ る 。ま た 同 図 (b)は ,相 対 角 180°状 態 に お け る 磁 束 の 説 明 図 で あ る 。 (a)に 示 す よ う に ,ロ ー タ か ら 出 入 りするN極とS極の磁束の多くは,ステータコアを通過しステータコイルに鎖交 す る 。(a)の 最 大 界 磁 状 態 よ り 相 対 角 が 大 き く な る に 従 い ,ス テ ー タ コ イ ル に 鎖 交 す る N 極 と S 極 の 磁 束 が 相 殺 し 合 っ て 誘 起 電 圧 は 減 少 す る 。 (b) に 示 す 相 対 角 180°状 態 に お い て は , N 極 と S 極 の 磁 束 が 相 殺 し 合 っ て 誘 起 電 圧 は 0 と な る 。. (a) Rotor at 0°relative rotation angle 図 2.1. (b) Rotor at 180° relative rotation angle 軸方向分割構造. 15.
(20) 永 久 磁 石 を V 字 に 配 置 し た IPM モ ー タ で は , ロ ー タ 内 に お い て 異 な る 磁 極 が 軸方向に揃うことで,永久磁石から発した磁束がロータ内で軸方向に短絡 し,そ の分ロータから出てゆく磁束自体が減少する。ステータコアを通過する磁束が減 少するため,ステータコアに発生する鉄損を低減することができる。 界 磁 を 可 変 す る た め に 高 速 で 回 転 し て い る ロ ー タ は ,中 央 の 磁 極 を 相 対 的 に 回 転させる必要がある。そのため,それを実現する可変界磁機構とアクチュエータ が必要となる。その詳細は 5 章で説明する。 2.2. 簡易可変界磁モータ. 界 磁 の 強 さ を 正 確 に 調 整 す る ア ク チ ュ エ ー タ は ,広 範 囲 高 効 率 駆 動 を 実 現 す る 可変界磁モータには必要なものであったが,アクチュエータにかかる費用と搭載 スペースが増大する欠点もあった。そのため,筆者等はアクチュエータを有しな い 小 形 で 低 コ ス ト な 簡 易 可 変 界 磁 モ ー タ を 考 案 し た ( 44) 。モ ー タ に か か る 負 荷 ト ル クに応じて界磁の強さは, おのずから変化する。 簡 易 可 変 界 磁 モ ー タ は ,負 荷 ト ル ク を 利 用 し て 界 磁 が 変 化 す る た め ,負 荷 ト ル クが界磁可変構造の移動部に作用しやすい構造を検討した。その上で, 界磁を弱 めた状態において鉄損がより減少する構造を模索し,界磁を弱めた状態において ロータから出ていく磁束自体が減少するような構造を検討した。 そ の 結 果 と し て ,図 2.2 に 示 す よ う に ,ロ ー タ を 径 方 向 に 2 分 割 し そ れ ぞ れ に 永久磁石を配置して,外側の磁極部が内側のシャフトに対し相対的に回転する構 造 と し た 。 シ ャ フ ト の 外 側 に は 磁 極 と 同 じ 10 極 の 永 久 磁 石 が 磁 極 を 径 方 向 に 向 けてリング状に装着されている。外側の磁極部には磁極と同じ数の 永久磁石が磁 極を周方向に向けて放射状に装着されている。 外側の磁極部が内側のシャフトに対し相対的に回転する 電気角を相対角と呼 ぶ こ と に す れ ば , 図 に 示 し た 負 荷 ト ル ク が な い 状 態 で は , 相 対 角 が 0°と な り 最 小界磁状態となる。永久磁石同士が吸引した位置となり永久磁石から発した磁束 がロータ内で径方向に短絡 し,その分ロータから出てゆく磁束自体が減少する。 この状態ではステータコアを通過する磁束が減少し,ステータコアに発生する鉄 損を低減することができる。 負 荷 ト ル ク が 増 大 す る と ,図 2.3 に 示 す よ う に 永 久 磁 石 同 士 の 吸 引 に よ る 戻 し ト ル ク と 負 荷 ト ル ク が 釣 り 合 う ま で 相 対 角 は 増 大 し , つ い に は 図 2.4 に 示 す よ う に , 相 対 角 が 180°と な り 最 大 界 磁 状 態 と な る 。 相 対 角 は 負 荷 ト ル ク に 応 じ て ,増 大 す る よ う に 設 計 す る 。負 荷 ト ル ク に 最 低 限 必要な界磁の強さに調整すれば,鉄損は最小限に留められて効率を向上できる。 実際の製作では,相対角が無制限に増大しないように,相対的に回転は機械的に 制限される必要がある。理想的には,電磁的な永久磁石の戻しトルクの調整に加 え,戻しばね等の機械的な戻しトルクの調整を加えて検討すれば,負荷トルクに 応じた最適な界磁の強さが実現でき,効率の良い簡易可変界磁モータが実現でき ると考える。 16.
(21) モ ー タ に か か る 負 荷 ト ル ク に 応 じ て ,お の ず か ら 界 磁 の 強 さ を 変 化 す る 永 久 磁 石簡易可変界磁モータの詳細は 6 章で説明する。. N. N. S. S S. N. 図 2.2. Fig.荷 2. 状 Rotor condition load 無負 態の ロ ーatタno( 相 対 角 0°). 図 2.3. Fig. at partial 負3.荷Rotor が 増condition 大する 状 態load のロータ. N. N. S. S N S. 図 2.4. at タ full( load相 対 角 180°) 最 大Fig. 負4.荷 Rotor 状 態condition のロー. 17.
(22) 2.3. 永久磁石可変界磁モータ構造の研究経緯. 2.3.1. 目的. 同 期 モ ー タ は か つ て 巻 線 界 磁 式 の 可 変 界 磁 モ ー タ が 主 流 で ,そ の 後 ,小 形 高 出 力化のために永久磁石式に代替されてきた。次世代を担う小形高出力広範囲高効 率駆動化技術として,界磁の強さを変化できる永久磁石可変界磁モータを開発し てきた。 特に,界磁を弱めた状態においてロータから出てゆく磁束自体が減少するよう な構造を検討した。多くのモータは基底回転速度以上の回転速度にも最大出力を 発生可能であることを要求される。最大出力は界磁の大きさで決定されるため , 基底回転速度以上の回転速度においても界磁を最大に保つ必要がある。特に基底 回転速度以上の回転速度において,界磁は出力の低下に応じて減じられるべきで あり,回転速度の増大に応じて減じられる方式は検討から除外した。 本 節 で は ,2 .1 節 で 説 明 し た 軸 方 向 分 割 構 造 の 可 変 界 磁 モ ー タ 構 造 に 至 っ た 検討の経緯と評価結果について説明する。 2.3.2. 永久磁石可変界磁モータの構造検討. 界磁を弱めた状態においてロータから出てゆく磁束自体が減少するような 様 々 な 構 造 の 可 変 界 磁 モ ー タ の ア イ デ ア を 検 討 し , 図 2.5 か ら 図 2.7 に 示 す 3 つ の 構 造 に 絞 り 込 ん だ 。 図 2.5 の 構 造 1 は ギ ャ ッ プ 長 を 変 化 さ せ る こ と で , ス テ ー タ コ ア を 通 る 磁 束 を 変 化 さ せ る 。 図 中 の 制 御 シ ャ フ ト を 回 す こ と で 12 個 に 分 割 されたステータコアが半径方向に同時に移動する仕組みを示している。 この構造 は , 可 変 機 構 を 固 定 側 に 設 け 得 る 利 点 が あ る ( 45) 。 図 2.6 の 構 造 2 は IPM モ ー タ の 磁 極 を 軸 方 向 に 3 分 割 し ,中 央 の 磁 極 を 両 側 に 対 し 相 対 的 に 回 転 さ せ て 界 磁 を 変 化 さ せ る 。図 は 界 磁 の 最 大 状 態 と 最 小 状 態 を 示 し て い る 。図 2.7 の 構 造 3 は SPM モ ー タ の 磁 石 を 半 径 方 向 に 2 層 に 分 割 し ,シ ャ フ ト に 固 定 す る 外 側 の 磁 石 に 対 し , 内側の磁石を相対的に回転させて界磁を変化させる。図は内側と外側のリング磁 石 を 並 べ て 示 し て い る 。 構 造 2 と 構 造 3 は 界 磁 の 強 さ を 0% 近 く ま で 小 さ く で き る 利 点 が あ る が ,回 転 す る 磁 極 を 相 対 的 に 変 化 さ せ な け れ ば な ら な い 課 題 が あ る 。 構造 2 と構造 3 の違いは磁極を半径方向に分割するか軸方向に分割するかであ る。両者の優劣を判断するため, ロータのサイズ,極数,誘起電圧を合わせ,2 組の磁極を相対的に回転させるために必要なトルクを磁界解析により調べた。 図 2.8 は そ の 結 果 で あ り , 2 組 の 磁 極 の 相 対 的 な 電 気 的 回 転 角 に お い て 発 生 す る ト ル ク を 比 較 し て い る 。0°は 最 大 界 磁 と な る 同 じ 磁 極 が 揃 っ た 状 態 を , 180° は最小界磁となる異なる磁極が揃った状態を電気角で示している。磁極をずらそ う と す る ト ル ク を 正 ト ル ク と す れ ば ,構 造 2 は 磁 極 を ず ら そ う と す る ト ル ク が 発 生し,構造 3 は磁極を揃えようとするトルクが発生することがわかる。そして, 構 造 2 が よ り 小 さ な ト ル ク で 界 磁 を 変 化 で き る こ と が 確 認 で き た た め ,構 造 2 を 選択し,構造 1 とともに試作評価を行った。 18.
(23) Control shaft. Stator cores. 図 2.5. 構造 1. S. S S. N. N. S. N N. N. S. S N. S. S. S. N. S. S. 図 2.6. 構造 2. S. S. N. S. S. 図 2.7. N. 構造 3. 19.
(24) 2.3.3. 試作モータと損失評価結果. 試 作 モ ー タ の 損 失 評 価 は 図 2.9 に 示 す 構 造 1 の 試 作 ス テ ー タ と , 図 2.10 に 示 す 構 造 2 の 試 作 ロ ー タ を 組 み 合 わ せ て 行 っ た 。試 作 ス テ ー タ は 制 御 シ ャ フ ト を 回 す こ と に よ り ,ギ ャ ッ プ 長 を 0.8 か ら 7.2mm ま で 変 化 で き る 。ギ ャ ッ プ を 大 き く す れ ば 損 失 は 低 減 す る と 予 想 し た 。 試 作 ロ ー タ は 中 央 の 磁 極 を 0 か ら 180°ま で 回転できる。角度を大きくすれば損失は低減すると予想した。 評 価 は 外 部 か ら の 駆 動 に よ る 損 失 比 較 に よ り 行 っ た 。 図 2.11 は 評 価 シ ス テ ム を 示 し て い る 。ト ル ク メ ー タ を 介 し て ,試 作 モ ー タ を 直 流 サ ー ボ モ ー タ で 駆 動 し , 駆動に要する回転速度毎のトルクをトルクメータで測定した。 直流サーボモータ の回転速度は,電圧を調整することで正確に調整し得る。このトルクメータは, 回転速度を表示する機能を有するため,測定したトルクと回転速度から損失を計 算した。損失は鉄損と機械損の合計であるが機械損は変化しないので,界磁の強 さを変化させた場合の損失の違いは,鉄損の違いを示す結果となる。 図 2.12 は ロ ー タ を 最 大 界 磁 状 態 に 保 っ た ま ま ギ ャ ッ プ 長 を 0.8 か ら 7.2mm ま で 変 化 さ せ た 場 合 ( 0.8~ 7.2mm,0°) と , ギ ャ ッ プ 長 を 0.8mm に 保 っ た ま ま ロ ー タ の 中 央 の 磁 極 を 0 か ら 120°ま で 回 転 さ せ た 場 合( 0.8mm,0~ 120°)の 損 失. Axial division( Structure 2). Radial division( Structure 3). 図 2.8. 図 2.9. 回転させるために必要なトルク(解析値). 構造 1 の試作ステータ. 図 2.10 20. 構造 2 の試作ロータ.
(25) の 測 定 結 果 で あ る 。ギ ャ ッ プ 長 が 0.8mm で ロ ー タ の 相 対 的 な 回 転 角 を 0°と し た 最大界磁状態に対し,ロータを変化させて界磁を弱めた場合には予想したように 損失は減少した。しかし,ステータを変化させて界磁を弱めた場合には予想に反 し て 損 失 は 増 大 し た 。こ の 結 果 よ り ,構 造 2 の 可 変 界 磁 モ ー タ が 最 も 優 れ た 構 造 であると判断した。. DC servo motor. Torque meter TM308 (MAGTROL, Inc ). Base. 図 2.11. 評価システム. 7.2mm, 0° 5.0mm, 0° 2.9mm, 0° 0.8mm, 0° 0.8mm, 60° 0.8mm, 120°. 図 2.12. 損失の測定結果. 21. Prototype motor.
(26) 2.4. まとめ. 小 形 で 効 率 が 良 い IPM モ ー タ を ベ ー ス に , 様 々 な 構 造 の 永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ータを検討した。特に,界磁を弱めた状態において鉄損がより減少する構造を模 索し,方向性としては,界磁を弱めた状態においてロータから出てゆく磁束自体 が減少するような構造を検討した。 その結果より,提案する2種類の新構 造永久 磁石可変界磁モ ータを考案 した。 2.1節では,可変機構付可変界磁モータのしくみを説明した。2.2節では, 簡易可変界磁モータのしくみを説明した。2.3節では,永久磁石可変界磁モー タ 構 造 の 研 究 経 緯 を 説 明 し ,IPM ロ ー タ の 磁 極 を 3 分 割 し ,中 央 の 磁 極 を 両 側 に 対し相対的に回転させて界磁を変化させる構造が,界磁を弱めた状態において鉄 損をより減少できる最も優れた構造であることを明らかにした。 そ の た め ,こ の ロ ー タ 構 造 を 適 用 す る E V 用 永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ー タ の 開 発 に とりかった。その内容は 4 章で説明する。. 22.
(27) 第3章. 付随する小形高出力広範囲高効率駆動化技術. 永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ー タ の 研 究 に 付 随 し て 生 ま れ ,次 章 で 説 明 す る 具 体 的 な 設 計や試作に用いられた新技術として, 「 磁 束 集 中 IPM モ ー タ 」,「 加 圧 成 形 コ イ ル 」 と「高強度鋼板ロータコア」について論じる。永久磁石可変界磁モータを広範囲 高 効 率 化 の み な ら ず よ り 小 形 高 出 力 化 す る 技 術 と し て「 磁 束 集 中 IPM モ ー タ 」を 開発した。コイルの占有スペースを縮小したにも係わらず,コイルの導体断面積 を拡大する技術として「加圧成形コイル」を開発した。従来の電磁鋼鈑を用いた ロ ー タ の 耐 遠 心 力 を 強 化 し , 約 2 倍 の 高 速 回 転 化 を な し 得 る 技 術 と し て ,「 高 強 度鋼板ロータコア」を開発した。以下,これらの技術について説明する。 3.1. 小形高出力広範囲高効率駆動化の要望. EV モ ー タ を 変 速 機 な し で 用 い た い と い う 要 望 が あ る 。 図 3.1 に , 平 均 的 な 2 リ ッ タ ー ク ラ ス 乗 用 車 用 5 速 変 速 機 付 エ ン ジ ン の ,車 軸 上 に お け る ト ル ク - 回 転 速 度( T-N)特 性 を 示 す 。 1 速 と 5 速 の 変 速 比 は 5: 1 で あ る 。こ の 変 速 機 付 エ ン ジンの特性をモータ単体で置き換えた場合,モータの特性は図示のようになり, 1速における大トルクと5速による高回転速度を両立しなけれ ばならない。この よ う に , EV モ ー タ が 変 速 機 付 エ ン ジ ン 車 同 等 の 特 性 を 得 る に は , 定 出 力 範 囲 の 広い特性が要求され,結果として高速回転化が求められる。具体的には,クラン ク 軸 上 に お い て 最 大 ト ル ク 200N・m( at 4000min - 1 ) , 最 大 回 転 速 度 8000min - 1 の エ ン ジ ン 特 性 に 対 し , 例 え ば , 約 2000min - 1 で エ ン ジ ン の 2 倍 の 最 大 ト ル ク 400N・m を 発 生 し ,2.5 倍 の 最 大 回 転 速 度 20000min - 1 の モ ー タ 特 性 が 必 要 と な る 。. 1st.. Motor. 2nd. 3rd. 4th.. 図 3.1. 5th.. 車 軸 上 で の T-N 特 性 23.
(28) EV モ ー タ に は ,埋 込 磁 石 形 モ ー タ( IPM モ ー タ )が 多 用 さ れ て い る 。IPM モ ータを前記のような広い可変速範囲全域で高効率運転することは困難である。高 速回転で駆動する場合,鉄損が増大し,また,モータの誘起電圧を打ち消すため の大きな弱め磁束電流が必要となり,銅損が増大するためである。 鉄 損 や 銅 損 の 増 大 を 防 ぎ ,広 範 囲 高 効 率 駆 動 を 実 現 す る 方 法 の 1 つ が ,可 変 界 磁モータである。可変界磁モータは,界磁の強さを変化させ,誘起電圧を調整す ることができるモータである。低出力状態で界磁を弱めた状態においては鉄損を 減少でき,高速回転状態においては弱 め磁束電流を減少できるため銅損を減少で きる。低出力状態や高速回転状態で効率が向上することが可変界磁モータの利点 である。自動車は低出力状態での走行頻度が高いため,可変界磁モータの適用に より電力消費が軽減されることが期待される。 永 久 磁 石 可 変 界 磁 モ ー タ 化 に よ り 広 範 囲 高 効 率 駆 動 を 実 現 し た も の の ,モ ー タ サイズが増大したり最大出力が低下したりすることを良としない。一面を改良し 一 面 を 低 下 さ せ た と 報 告 す る こ と は ,そ の 技 術 の 欠 点 を 晒 し 出 し た 結 果 と 考 え る 。 例えば,既存のモータにそのまま可変界磁機構を適用する場合などがそうなり易 い。可変界磁モータは界磁を自由に調整することが可能であることから ,従来よ りも大きな界磁を設定することが可能となる。可変界磁モータは広範囲高効率化 のみならず小形高出力化にも貢献する技術である。本章では,永久磁石可変界磁 モータの研究に付随して生まれ,次章で説明する具体的な設計や試作に用いられ た新技術について論じる。 こ れ ら の 新 技 術 に は ,小 形 高 出 力 化 の た め の 磁 気 装 荷 あ る い は 電 気 装 荷 の 増 大 , さらに広範囲駆動のためのモータの機械的強度,特にロータの耐遠心力強化が含 まれている。まず,磁気装荷の増大方法としては,既に述べたレアアース永久磁 石 の 採 用 が あ る が ,そ の 先 の 技 術 と し て 開 発 し た「 磁 束 集 中 IPM モ ー タ 」( 46) を , 3.2節で論じる。次に,電気装荷の増大方法としては,より大きな通電を可能 と す る た め コ イ ル の 占 積 率 を 90% 以 上 と し て 開 発 し た「 加 圧 成 形 コ イ ル 」( 47) を , 3.3節で論じる。この2つの技術は 小形高出力化に貢献するばかりでなく,モ ータの高効率化にも貢献する。さらに,ロータの耐遠心力強化については,従来 の 電 磁 鋼 板 の 3 倍 以 上 の 降 伏 点 を 有 す る 高 強 度 鋼 板 を 適 用 し て 開 発 し た「 高 強 度 鋼 板 ロ ー タ コ ア 」 ( 48) を , 3 . 4 節 で 論 じ る 。. 24.
(29) 3.2. 磁 束 集 中 IPM ロ ー タ. 3.2.1. 磁 束 集 中 IPM ロ ー タ の 目 的. 従 来 の 永 久 磁 石 同 期 モ ー タ を よ り 高 出 力 化 す る こ と は ,各 回 転 速 度 に お い て よ り 高 ト ル ク 化 す る と い う こ と で あ る 。 例 え ば , IPM モ ー タ の 高 ト ル ク 化 の 1 つ の方策としてリラクタンストルクの併用があるものの,本技術開発では 永久磁石 トルクを増大する方策に注目する。 永 久 磁 石 ト ル ク を 増 大 す る 方 策 と し て は 磁 束 集 中 IPM モ ー タ が 多 数 報 告 さ れ て き た ( 1) ( 49) ( 5 0) 。例 え ば ,文 献 (1)で は ,3 つ の 永 久 磁 石 か ら 発 生 す る 磁 束 を ギ ャ ッ プ に 集 中 す る こ と に よ り , 従 来 機 の 約 1.4 倍 の 定 格 ト ル ク お よ び 出 力 を 確 認 し た 例 が 報 告 さ れ て い る 。 ま た , 文 献 (49)で は , 永 久 磁 石 を 放 射 状 に 配 置 し た ロ ー タ 構 造 に よ り , 出 力 密 度 を 向 上 し た 例 が 報 告 さ れ て い る 。 ま た , 文 献 (50)で は , 立 体的に配置された4つの永久磁石から発生する磁束をギャップに集中する例が報 告されている。これらの報告は,各々永久磁石トルクの増大を達成しているが, 永久磁石の使用量や耐遠心力等の総合的な観点から,提案構造の優位性が述べら れていない。そのため,様々なモータに対する様々な提案構造の適用性 を述べる ことが望ましい。 本 節 は , 磁 束 集 中 IPM モ ー タ の 技 術 開 発 に お い て 得 ら れ た 3 種 類 の 磁 束 集 中 IPM モ ー タ の ロ ー タ 構 造 に 関 す る 適 用 性 を 論 じ る 。サ ー ボ モ ー タ 用 に 試 作 し た 磁 束 集 中 IPM モ ー タ の , 高 ト ル ク 化 に 対 す る 課 題 と 方 策 を 述 べ る 。 3.2.2. 永久磁石トルク増大の利点. 永 久 磁 石 ト ル ク を 増 大 す る 理 由 を 明 確 に す る た め に ,リ ラ ク タ ン ス ト ル ク を 併 用する利点を確認し,次いで,永久磁石トルクを増大する利点を明確にしたい。 文 献 (51)で は , ロ ー タ 断 面 に V 字 に 配 置 さ れ た 永 久 磁 石 の 狭 角 と ト ル ク 特 性 の 関 係 に つ い て 報 告 さ れ て い る 。 文 献 (52)で は , 様 々 な 永 久 磁 石 配 置 と ト ル ク 特 性 の 関係について報告されている。これらは限られた永久磁石使用量のもとで,リラ クタンストルクを併用し,高トルク化が達成できることが利点として述べられて い る 。 ま た , 文 献 (12)に は , IPM モ ー タ の 特 性 が ベ ク ト ル 制 御 を 交 え よ く 説 明 さ れている。文献には,リラクタンストルクを併用する利点として,高トルク化の 他に,永久磁石コストの低減や広範囲駆動化に有利なことが述べられている。 し か し な が ら 筆 者 は ,こ れ ら の 利 点 に つ い て や や 異 な る 意 見 を 持 っ て い る 。モ ータの高トルク化には,リラクタンストルクではなく永久磁石トルクを増大させ る 方 が 良 い と 考 え る 。永 久 磁 石 の 量 を 2 倍 に し て も 2 倍 の 出 力 を 達 成 す れ ば ,コ ストの増大にはならないと考える。永久磁石トルクを増大する利点を,具体的に 説明する。 図 3.2 は SPM モ ー タ( A)と リ ラ ク タ ン ス ト ル ク を 併 用 し た IPM モ ー タ( B) の ト ル ク 特 性 を 比 較 し た 図 で あ る 。同 じ 体 格 の SPM モ ー タ と IPM モ ー タ を 比 較 す る と 永 久 磁 石 ト ル ク ( B’) に リ ラ ク タ ン ス ト ル ク を 併 用 し た IPM モ ー タ の 最 25.
(30) 大トルクが勝ることを示している。永久磁石使用量を制限された比較ではこのよ うな結果になり易い。永久磁石使用量を制限しない比較では,例えば永久磁石使 用 量 を 2 倍 に し て 永 久 磁 石 ト ル ク を 増 大 す れ ば ,IPM モ ー タ を 上 回 る こ と が で き ると考える。達成できれば,リラクタンストルクを併用しなくても,高トルク化 はなし得ることになる。モータの容量やトルクを2倍にするには 鉄心の積厚を 2 倍にすることが一般的であるため,モータの単位出力当たりのコストは,そのま まのサイズで 2 倍のトルクが得られれば,2 倍の永久磁石を使用してもコストの 増大はなく,小形化が達成されたことになる。 図 3.3 は SPM モ ー タ( A)と リ ラ ク タ ン ス ト ル ク を 併 用 し た IPM モ ー タ( B) の ,横 軸 を 回 転 速 度 と し た 最 大 出 力 特 性 を 比 較 し た 説 明 図 で あ る 。IPM モ ー タ の 永 久 磁 石 磁 束 量 は SPM モ ー タ に 対 し 7 割 程 度 で あ る が , 永 久 磁 石 ト ル ク と 同 等 の リ ラ ク タ ン ス ト ル ク を 併 用 し て 約 1.4 倍 の ト ル ク 定 数 を 有 す る 特 性 で あ る こ と を 想 定 し て い る 。 EV モ ー タ の よ う に 電 圧 飽 和 領 域 に 及 ぶ 広 範 囲 駆 動 で は , 電 圧 飽 和 と な る 基 底 回 転 速 度( N b )以 下 の 領 域 で は ト ル ク 定 数 の 大 き な IPM モ ー タ の 特 性 が 勝 る 。 逆 に , 高 速 に な れ ば 最 大 出 力 は 永 久 磁 石 磁 束 量 の 大 き な SPM モ ー タが勝るようになる。高速での最大出力は永久磁石磁束量の大きさで決まること は 文 献 (42)で 報 告 し た 。ま た ,SPM モ ー タ に 限 ら ず ,永 久 磁 石 ト ル ク を 増 大 し た 磁 束 集 中 IPM モ ー タ で も ,高 速 で の 最 大 出 力 は 永 久 磁 石 磁 束 量 の 大 き さ で 決 ま り ( A)の よ う な 特 性 に な る 。基 底 回 転 速 度 で あ る 2000min -1 か ら 22000min - 1 の 広 い 可 変 速 範 囲 に お け る 最 大 出 力 10kW の 達 成 と ,界 磁 の 増 大 に 伴 い 出 力 が 増 大 す る こ と は 文 献 (37)で 報 告 し た 。 つ ま り , 基 底 回 転 速 度 以 上 の 回 転 速 度 で は 定 出 力 特 性 に 対 し リ ラ ク タ ン ス ト ル ク は 無 効 と な り ,永 久 磁 石 ト ル ク の み が 有 効 と な る 。 結 局 ,永 久 磁 石 使 用 量 を 増 大 し 永 久 磁 石 ト ル ク を 増 大 す る こ と は ,高 ト ル ク 化 だけでなく「コスト/出力」の増加なしに小形化ができ,弱め磁束制御を駆使す ることにより広い可変速範囲も狭まることはない。 3.2.3. ロータ構造の選定. 磁 束 集 中 IPM モ ー タ の ロ ー タ 構 造 と 永 久 磁 石 配 置 に つ い て 検 討 す る 。 高 ト ル ク化に直結する指標として,ギャップ磁束密度を比較する。 永久磁石使用量を増. Nb. 図 3.2. 図 3.3. トルク特性比較 26. 最大出力特性比較.
(31) 大 し て ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 を 増 大 す る ロ ー タ 構 造 の 比 較 と し て ,残 留 磁 束 密 度 1.4T の 永 久 磁 石 を 用 い 以 下 に 示 す 3 つ の 構 造 を 比 較 す る 。外 周 は ス ロ ッ ト の な い 均 一 な鉄心とする。 図 3.4 は SPM 形 ロ ー タ 構 造 と ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 の 解 析 例 を 示 し て い る 。図 3.4 (a)は ロ ー タ の 表 面 に 永 久 磁 石 が 配 置 さ れ た 状 態 を 示 し ,矢 印 は 永 久 磁 石 の 磁 化 方 向を示している。磁極と磁極の間の磁束密度を漸次変化させるため,磁極の両端 に は 中 央 に 対 し 80,60,40%の 磁 化 力 の 永 久 磁 石 を 漸 次 配 置 し た こ と を 矢 印 の 長 さ で 示 し て い る 。図 3.4 (b)は ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度( B g )の 分 布 状 態 を 示 し ,図 3.4 (c) は永久磁石内径を変化させて径方向の 永久磁石厚みを増減させた場合の磁束密度 の 変 化 を 示 し て い る 。 図 3.4 (c)よ り 図 3.4 (a)に 示 し た 厚 み (p.u.=1)に お け る ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 の 最 大 値 が 約 1.03T で あ る の に 対 し ,永 久 磁 石 厚 み を 倍 増 し て も 約 1.1T に し か 増 大 し な い こ と が わ か る 。そ れ 以 上 に 厚 み を 増 す と ,ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度はかえって減少することもわかる。これは 永久磁石内側の磁束密度が残留磁束 密 度 の 1.4T を 超 え て し ま い , ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 増 大 に 抵 抗 す る た め で あ る 。 図 3.5 は ハ ル バ ッ ハ 形 ロ ー タ 構 造 と ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 の 解 析 例 を 示 し て い る 。 文 献 (53)に 見 る よ う に , 着 磁 さ れ た 永 久 磁 石 の 配 列 を 工 夫 す る こ と で , 永 久 磁 石 内 で 磁 束 を 集 中 し 磁 束 密 度 を 向 上 さ せ る 。(b)に 示 す よ う に ,ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 の 最 大 値 は 約 1.7T に 増 大 し た 。. 2.0 1.5. T] Bg B g[ [T]. 1.0. 0.5 0.0 -0.5. 30. 50. 70. 90. 110. -1.0 -1.5 -2.0. (a ). Position [ ° ]. Constru cti on. (b). Flu x d en sity. 1.4 1.2. Bg Bg [[TT] ]. 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0. 0.5. 1. 1.5. 2. 2.5. 3. 3.5. Magnet depth [ p.u. ]. (c). Flu x den sity -cha ra cteri stic s with magn et d epth. 図 3.4. SPM ロ ー タ 形 構 造 と ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 の 解 析 例. 27. 130. 150.
(32) y. 図 3.6 は 磁 束 集 中 IPM 形 ロ ー タ の 一 例 と し て , 永 久 磁 石 を 放 射 状 に 配 置 し た ロ ー タ 構 造 と ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 の 解 析 例 を 示 し て い る 。(b)に 示 す よ う に ,ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 の 最 大 値 は , さ ら に 約 1.8T に 増 大 し た 。 磁 束 集 中 IPM 形 ロ ー タ が ハ ルバッハ形ロータより高磁束密度であった結果より,ギャップの磁束密度を最大 限 に 増 大 す る に は ,ロ ー タ 外 周 に は 1.4T 以 上 で は 磁 気 抵 抗 と な る 永 久 磁 石 よ り , 飽和磁束密度の高い電磁鋼板を配置する方が適することがわかった。 ま た , 図 3.7 に 示 す よ う に , 磁 束 集 中 IPM 形 ロ ー タ の ポ ー ル シ ュ ー 形 状 を 変 えて,磁束密度分布を自由に調整できることを確認し,コギングトルクや駆動時 のトルクリップル対策に対応できることがわかった。. 2.0 1.5. Bg [[T] T] B g. 1.0 0.5. 0.0 30. 50. 70. 90. 110. 130. 150. -0.5 -1.0. -1.5 -2.0. (a). Position [ ° ]. Co nstr uc tio n. 図 3.5. (b). Flux de nsity. ハルバッハ形ロータ構造とギャップ磁束密度の解析例. 2.0 1.5. [T] BBg g [T]. 1.0 0.5 0.0 30. 50. 70. 90. 110. 130. -0.5 -1.0 -1.5 -2.0 Position [ ° ]. (a). 図 3.6. (b). Co nstr uc tio n. Flux de nsity. 磁 束 集 中 IPM 形 ロ ー タ 構 造 と ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 の 解 析 例. 28. 150.
(33) 2.0 1.5. B Bgg[ [T] T]. 1.0 0.5 0.0 30. 50. 70. 90. 110. 130. 150. -0.5 -1.0. -1.5 -2.0 Position [ ° ]. (a). 図 3.7 3.2.4. Co nstr uc tio n. (b). Flux de nsity. 別 の 磁 束 集 中 IPM 形 ロ ー タ 構 造 と ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 の 解 析 例 永久磁石配置形状の比較. 図 3.4(b)~ 図 3.7(b)の ギ ャ ッ プ 磁 束 密 度 の 解 析 結 果 を 用 い て , よ り 大 き な ギ ャ ップ磁束密度が得られる永久磁石の配置について,様々な配置形状を検討した結 果 , シ ャ フ ト 径 に 制 約 が な い 場 合 に は , 図 3.6 に 示 し た 永 久 磁 石 を 放 射 状 に 配 置 したロータ構造が,ギャップの磁束密度を最大限に増大できると考えられる。永 久磁石から発生する磁束をギャップに集中するのであれば, 永久磁石の表面積を 大きくする配置形状が最も有効であるからである。 し か し ,一 般 的 に は 必 要 な シ ャ フ ト 径 の 制 約 が あ り ,放 射 状 に 配 置 し た 永 久 磁 石 の 内 側 が 離 れ て し ま う こ と が 多 い 。 そ の 場 合 に は 図 3.8(a)に 示 す よ う に , 放 射 状に配置された永久磁石の間に別の永久磁石を配置した3面集中形 ( 3face-shape) が ギ ャ ッ プ の 磁 束 密 度 を 最 大 限 に 増 大 で き る 構 造 と な る 。 ト ル ク や 遠 心 力 に 対 す る 強 度 や 製 造 上 の 検 討 も 加 え ,実 用 的 な 配 置 形 状 と し て , 以下の 3 つの配置形状に集約した。 (1). 3 面集中形. 最大の磁束集中が可能。シャフト径の大きさに対し融通. が 利 く 。 図 3.8(a)に 示 す よ う に , 6 極 以 下 の ロ ー タ で は , 他 の 2 つ の 配 置 形 状 に 比べ優位差が顕著になる。放射状に配置された永久磁石の間の永久磁石を円弧形 にしてもよい。 ( 2 ) V 字 形( V-shape). 図 3.8(b)に 示 す よ う に 2 枚 の 永 久 磁 石 を V 字 形 に. 配置して1極を構成する。 3 面集中形に近い磁束密度がより少量の永久磁石で得 ら れ る 。EV 用 等 高 速 回 転 を 要 求 さ れ る モ ー タ で は ,耐 遠 心 力 構 造 と す る た め に , 図に示すように,1 枚のロータコアに永久磁石装着孔を設け,永久磁石を装着す る構造が有効である。その場合,永久磁石の周りに磁束の漏れ磁路となるブリッ ジが1極に対し 3 ヶ所できるが,3 面集中形の 4 ヶ所に比べ少ないため,漏れ磁 束を軽減できる。よって,最大トルクは,3 面集中形よりも V 字形の方が勝る場 合も多い。実用的には第 1 に選択すべき配置形状と考えている。 (3). ブ ロ ッ ク 形( Block-shape). 図 3.8(c)に 示 す よ う に ,永 久 磁 石 の 個 数. が他の配置形状の半分となり,永久磁石使用量が小さく,配置が容易である。 29.
(34) (a). (c ). 3face -shape. (b). V-shape. Blo ck -shape. 図 3.8. 永久磁石配置形状比較. 具 体 的 に 配 置 形 状 を 考 え て み る 。 例 え ば ,φ 40mm 以 下 の 10 極 ロ ー タ を V 字 形 で 構 成 す る 場 合 ,ロ ー タ に 1mm 程 度 の 厚 み の 永 久 磁 石 を 20 枚 装 着 す る よ う な 設計となり,より単純な構造が望ましくなる。そのため,この配置形状は,小形 のモータや多極のモータに有効である。永久磁石の内側が離れる場合には,図に 示 す よ う に フ ラ ッ ク ス バ リ ア を 設 け 内 側 へ の 漏 れ 磁 束 を 防 ぐ 。 図 3.6 に 示 し た よ うに,内側の空隙がなくなるまで永久磁石を厚くすれば,大きな磁束集中が得ら れる。 こ れ ら の 磁 束 集 中 IPM モ ー タ の ロ ー タ 構 造 を 用 い れ ば ,図 3.4(a)に 示 し た SPM モータに比べ,ギャップ磁束密度を向上し,高トルク定数化が可能となる。しか し 一 方 で は ,SPM モ ー タ は ト ル ク 直 線 性 に 優 れ ,永 久 磁 石 量 を 少 量 に 制 限 さ れ た 場 合 に は ,発 生 し 得 る 最 大 ト ル ク も 磁 束 集 中 IPM モ ー タ に 優 れ る と い う 良 い 面 も あ る 。 そ の た め 磁 束 集 中 IPM ロ ー タ の 設 計 指 針 と し て は , SPM モ ー タ に 対 し , より多くの永久磁石を用いて,それに見合うトルクや出力を得ることとする。 3.2.5. 課題と方策. 磁 束 集 中 IPM モ ー タ の ロ ー タ 構 造 と し て , 何 れ の 永 久 磁 石 配 置 形 状 を 選 ん で も,ギャップの高磁束密度化によりステータコアでの鉄損増大対策が課題となる ことが予想される。可変界磁モータ化により低出力時の鉄損を低減することは可 30.
(35) 能であるが,それに頼らず鉄損を低減する努力は必要である。ステータコアの磁 束密度を下げ鉄損を下げる方策として,ティース幅を増大できる案を検討した。 スロットに収められた巻線の導体断面積を減らすことなしに,ティース 幅を増大 し た い 。そ の た め ,次 節 で 論 じ る 占 積 率 92%に 達 す る 加 圧 成 形 コ イ ル を 用 い る こ とで,巻線抵抗低減とティース幅増大の両立を図った。. 31.
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