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Foreign Language Activities
for Cultivating Students' Communicative Ability in the Individual and Group
教科・領域教育専攻 言語系コース(英語) 岡 山 惰
I 研究の背景と目的
平成 23年度からの外国語活動の必修化に 伴い,学校現場では,外国語活動に関するさ まざまな実践研究が行われ,それについての 情報も多数出回るようになった。それによる と,外国語活動が友人関係形成のきっかけと なったり3 積極的にコミュニケーションを行 うことができるよい雰囲気の学級環境がつく られる要因になるといったよい報告が多数あ る。しかし一方で,児童個人に関しては,不 安や自信のなさから,コミュニケーションを 行うことに対して否定的であるとしづ報告も みられることがわかった。つまり,児童個人 のコミュニケーションへの意識と,学級集団 としてのコミュニケーション力との聞に「ネ ジレ現象」が生じていると言えるのではない だろうか。そして,こうした「ネジレ現象」
の問題を解消することが,児童のコミュニケ ーション能力の育成を図るための外国語活動 の方向性をみつける糸口になるのではないだ ろうかと考えた。
そこで,本研究では,外国語活動における,
児童のコミュニケーション能力の育成に関わ る問題の構造を明らかにし,その問題を解消 するための,外国語活動の方向性を追求して いきたい。
指 導 教 員 山 森 直 人
E 論文の構成
本論文は, 4つの章から構成されている。
第1章では,研究の目的とその背景,および、
論文構成について示した。第2章では,学習 指導要領や,外国語活動に関する先行研究を 概観した。また,外国語活動の実践報告で見 られた「ネジレ現象」の要因について検討し,
それを解消するための仮説を立てた。第3章 では,先行研究及び実践報告の概観をもとに,
実践報告 (10事例)を,児童個人と学級集団 の2つの視点から9 上記仮説を検証考察し,
ネジレ現象解消のための工夫や教師のめざす べき支援の方向性について提案した。そして 第4章では,調査の結果と考察を踏まえた教 育的示唆と本研究の今後の課題について示し た。
E 論文の概要
第1章では,研究背景から,外国語活動は 友人関係の形成へのきっかけをつくり,学級 集団の雰囲気をよくし コミュニケーション が積極的に行える環境になっているが, しか し一方で,児童個々人はコミュニケーション に関して否定的にとらえ,不安や自信のなさ から,積極的になれないという現実を読み取 ることができる。このような状況から,学級
- 232 - 集団コミュニケーションと児童個人コミュニ ケーションとの聞に「ネジレ現象Jが生じて いるのではなし、かと考えた。
第2章では,子どものコミュニケーション 能力の問題を踏まえ,小学校学習指導要領外 国語活動や外国語活動に関する先行研究を考 察し,外国語活動が児童にとって,コミュニ ケーション能力を身に付けさせる,適切な学 習機会であることを明らかにした。また,外 国語活動の実践報告に見られる成果と課題を 概観し,児童の戸惑いや不安,自信のなさか らくる,児童の否定的な部分が,学級のコミ ュニケーションに大きく影響していることを 明らかにした。さらに,外国語活動の実践報 告に見られる成果と課題の問題点を概観し,
2つの視点(児童個人の視点・学級集団の視点) があることを明らかにし,その児童個人と学 級集団の聞には,ネジレ現象が生じているの ではないかと考えた。そこで,児童個人と学 級集団の聞には,どうしてネジレ現象が起こ るのか先行研究を概観し,考察した。そして,
学級内の人間関係を通じて,自分を受容し,
他者を受け入れる力を養うことで,児童個人 もまた,相手を大切にし,自分の思いを率直 に表現するようになる(仮説①)。また,児童 個人が,自分の思いを率直に表現しながら,
相手と関わることで,そこからまた,学級の 雰囲気がよくなる(仮説②)。その結果,ネジ レ現象が解消されるのではないだろうかと提 案した。
第3章では,これまでに概観してきた先行 研究,実践報告をもとに, 実践報告(10事例) から,ネジレ現象を解消する方向性が見られ るか9 次に,どのような工夫がなされている か,さらに,その結果, どのように児童に変 化が起こっているか, r児童個人」と「学級集
団jの観点から考察した。さらに,実践報告 における教師の工夫を考察し,調査の結果と 教育的示唆を論じた。
そして第4章では,教師は児童に自己表現 する技能を養うための支援を中心に行ってい るが,一方で,他者を受容する姿勢や雰囲気 を養う工夫に関しては,十分な支援を行って いないと考察した。また,ベア・グノレーブロ活 動を通じて自己表現の支援に重きを置いてし まうことで,ペア@グループ9における安心で きる雰囲気の中では,児童は自分の思いを表 現することができるが,児童が 1人で発話す ることになると抵抗があり自己表現できない など「ネジレ現象jを解消することが難しく なっているのではなし、かと考えた。そこで,
第2章で述べた岡田(1996)や内田(2005)をも とに立てた仮説①,②(図 6)を 踏 ま え 児 童 個人Jr学級集団J共に受容する姿勢や雰囲気 を十分に養う工夫が必要ではなし、かと考え,
受容する姿勢や雰囲気を養う具体的な活動の 提案を実践報告から論じた。
N 今後の課題
(l)本研究では3実践報告(10事例)をもとに調 査を行ったが,十分な数の実践報告を調査す ることができなかったため,実践報告の数を 増やす必要がある。
(2)今回の調査において扱った実践報告(10事 例)は児童個人」と「学級集団Jに着目し て実施されたものではなかった。そのため本 調査における「児童個人jと「学級集団」の 判断が妥当だ、ったかどうかをもう一度検討す
る必要がある。