文章題の解決に特別な支援を必要とする児童の事例研究
障害児教育専攻
鳥 野 泰 史
第1
章 序 論
2007年度より特別支援教育が開始され,軽度 発達障害に代表される通常学級に在籍する児 童・生徒に対しても,一人ひとりの教育的ニー ズを把握し,適切な指導を行う(文部科学省,
2003)ことが必要とされるようになったO
本研究では, 日常生活における重要なスキル の一つで、あり,特に手厚い支援を要する学習課 題の一つで、ある算数についての研究で、あるo 算 数障害には,言語性の障害と視覚空間能力の障 害の2つのタイプ(秋元, 2000)があり,さら に計算や文章題などの領域ごとにさまざまな困 難が生じ得る。そこで,一人ひとりの教育的ニ ーズを把握し,個に応じた教育を行うために,
学習者の適性の弱さに配慮した教授方法を潤尺 して,補償を行うとともに,強い適性を見出し て,それに適合する耕受方法を考案して,特恵、
的な効果を導き出す必要があると考えられる。
そこで本研究では,算数文章題の解決に困難 を示す2名の児童について,各々の認知特性に 応じた指導を適用した場合にどのような効果が 生じるのかについて,事例研究を通して検討を 行うことにする。特に認知能力の強さを活かす ことを意図した「長所活用型指導jを用いるこ ととした。
第
2
章 事 伊 蹄 究A
( 1) 事例の概要指 導 教 員 島 田 恭 仁
行動観察開始時小学校
1
学年の男児(以下A
児)0K‑ABC
とWISC‑
皿の結果より,A
児 の知的発達は境界域の発達水準で、あることが確 かめられた。また,K‑ABC
では同時処理が継 次処理よりもやや優り,視覚的な処理が全般的 に強かったのに対し,言語瑚手・言語概念形成 の弱さが認められた点を考慮し,本研究では同 時処理型指導方略を用いた。算数文章題におい ては,立式ヰ替えを導く手がかりが,多くの場 合文字や言葉でのみ伝えられることが多いため,視覚的な処理の強さを発揮できる場面が,得ら れなかったと推察されるためである。
(2)指導方法
指導開始前から第I期にかけて (2005年 11
月'"'‑'2006年3月),各種心理検査・行動観察・
担任からの聞き取りなどを行い,対象児の実態 把握を行ったo その後,週
1
回を原則として個 別指導を実施した。指導期間は,第I期が2006年1月'"'‑'3月 (1学情愛期),第H期が2006年
5月'"'‑'8月 (2学年前期),第盟期が2006年10
月'"'‑'2007年3月 (2学情愛期)とした。
指導内容は,メインとなる「算数事項に関す る領域
J
に加え,基樹頁域となる「視覚認知に 関する領域J
及び「文章理論事顎に関する領域jの3つの領域から構成し,これらをもとにA児 の実態に沿った個別の指導計画を作成した。
第E期から第E期にかけての指導効果を査定 するために,第I期の指導期間中にプリテスト っ
QU つ 山
を,第E期の最後にポストテストを実施した。
(3) 手縛の結果
指導筋畠及びポストテストの結果から,文章 題の解決能力が向上したことが示唆された。特 に,やや長く襖佐な文章題の解決能力は大幅に 向上したといえる。
第3章 事 伊j研究B
(1) 事例の概要
行動観察開始時小学校
1
学年の男児(以下B
児)0K‑ABCとWISC‑illの結果より, B児の知的発達は境界域の発達水準であることが確 かめられた。また,同時処理が継次処理よりも やや優り,視覚的な処理能力に強さが認められ たことから,同時処理型指導方略を用いた。扱 う数が増えたり,文章が長くなったりする問題 では,生来の視覚的な処理の強さを活かせない 場面が多かったと推察されたためである。
(2) 指導方法
指導開始前から第I期 (2005年11月""2006
年3月)にかけて,行動観察・担任からの聞き 取り・各種心理検査などを行い,対象児の実態 把握を行ったo その後,週
1
回を原則として個 別指導を実施した。指導期間は,第I期が2006年1月""3月(1学年後期),第H期が2006年
5月""8月 (2学年前期),第E期が2006年10
月""2007年3月 (2学年後期)とした。
指導内容は,メインとなる「算数事項に関す る領域
J
に加え,基礎領域として「視覚認知に 関する領域J及び「文章理論卒事項に関する領域jの3つの領域を構成し,これらをもとにB児の 実態に沿った個別の指導計画を作成した。
第E期から第
E
期にかけての指導効果を査定 するために,第I期指導期間中にプリテストを,第
E
期の最後にポストテストを実施した。(3) 指導の結果
指導経過及びポストテストの結果から,文章 題の解決能力が幾分向上したことが示唆された が,指導期間全体を通じて細かし、計算ミスはし、
くつかの場面で見られた。
第4章 総 合 考 察
本研究において,事例A.Bともに,各々の 認知特性に応じた指導を行うことにより,有効 な指導効果が得られたといえる。両児童とも,
メインの算数事項に関する領域に加えて,それ を補うための視覚認知に関する領域及び文章理 角苧彰実に関する領域での指導を同時並行で指導 した。その結果,両児童とも理解の向上が図ら れ,指導効果が得られたことが示唆される。
今後も,児童・生徒の教育的ニーズを托渥し,
各々の興味,関心,有している困難性を考慮し,
認知特性に応じた長所活用型の指導を適用し,
効果的に行っていく方法を検討することが,教 育現場における重要な課題だといえる。
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