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戦後復興期の金融構造(5) : 新しい証券市場の幕開け

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(1)

戦 後 復 興期 の金 融構.造(5)

一新 しい証券市場 の幕開 け一

一・

The

Opening

of New

Securities

Market

in Post-war

Japan

Koichi

SUZUKI

Abstract

Directly after the end of World War II, Japan's Stock Exchange was closing. Bonds and stocks

were traded on the unorganized and decentralized market known as the over-the-counter market.

The Japanese Government wanted to reopen the stock exchange as soon as possible. However,

GHQ directed the Government not to reopen the .exchange till after implementation the new

Se-curities and Exchange Law.

Thereupon, Japanese Government implemented

the Securities and Exchange Law in 1947. Next

year, however, this Law was I revised by a large margin under the supervision of the GHQ. The

GHQ wanted new law to mirror closely the US system. By the revision, financial intermediaries

such as banks were prohibited, in principle , from engaged in securities business.

Through the implementation of Securities and Exchange Law of 1948 was expected that

Japa-nese business financing would transfered from indirect financing to direct financing. However,

such a expectation has been disappointed. The fundamental reason may be found the

underdevel-opment of institutional investors such as trust funds and pension funds in the Japanese economy

of that time.

は じ め に 戦 後 の証 券 市 場 は、 戦 前 とは 様変 わ りな 変化 を とげ た。 そ の変 化 に は多 くの 内 容 が含 ま れて い るが 、 と くに重 要 な の は昭 和23年(1948年)の 「証 券 取 引法 」 の制 定 で.あろ う。 当時 は、 戦 後 の金 融 改 革 の 方 向 が な お 具 体 化 され て いな か った 頃 で あ るか ら、 この段 階 で、 戦 後 の証 券 市 場 の方 向が 明 確 に示 さ れ た こ とは、 極 め て 注 目す べ き こ と とい って よ い。 た だ、 当 時 は な お戦 後 の混 乱 期 で あ り、 激 しい イ ン フ レー シ ョンが 進 行 して いた 時期 で もあ った か ら、 証 券 市 場 が企 業 金 融 に大 き な役 割 を果 た したわ けで は な か った が、 国 民大 衆 が 証券 取 引 に参 加 す る契 機 を作 り、 や が て 日本 の証 券 市 場 を大 き く発 展 させ る土 台 を 形成 した とい う意.味は大 き い。 も っ と も、 戦 後 半 世 紀 以 上 を 経過 した今 日に お い て も、 日本 の証 券 市 場 が 企 業 金 融 の 中核 と して の 地 位 を 占め た か とい え ば、 な お 未 だ し とい うべ きで あ る。 日本 の企 業 金 融 は、 戦 前 か ら、 銀 行 を 中心

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とす る間 接 金 融 優 位 の構 造 を持 っ て いた 。 昭 和20年 代 前 半 は、 戦 争 の 終 結 に よ って 経 済 シ ス テ ム が大 き く動 揺 し変 化 しつ つ あ った時 期 であ った だ け に、 そ う した企 業 金 融 の 構 造 に も変 化 が 期 待 され 、 ま た そ う した変 化 を促 す た め の制 度 改 正 が 行 わ れ た 。 それ に もか か わ らず 、 今 日 まで そ う した期 待 が 実 現 した と い い難 い の は なぜ か 。 これ は極 め て 大 き い 問題 で あ る。 本 稿 は、 この 問 題 を 正 面 か ら取 り上 げ る と い うわ け で は な いが 、 戦 後 にお け る証 券 市 場 の新 しい 出発 の 状 況 を 概 観 しな が ら、 そ こ に こ の テ ー マの 答 え が既 に 内在 して いた こ とを 示 そ う と した もので あ る。

1.終

戦 直後 の証券市場

1)流 通 市 場 イ.店 頭 取 引 か ら集 団 取 引 へ 終 戦 時 に お け る 日本 の 証 券 市 場 は 、 ほ とん ど壊 滅 状 態 で あ った。 す な わ ち 、 終 戦 直 前 の 昭和20年 (1945年)8月10日 、 日本 証 券 取 引 所(昭 和18年 の 「日本 証 券 取 引所 法 」 に よ り設 立 され た 全 国 単 一 の 証 券 取 引 所)の 市 場 立 会 は停 止 され た ま ま終 戦 を 迎 え る こ と にな った。 終戦 後、 政府 は10月1日 を 期 して 取 引所 を 再 開 しよ う と して い た が 、 連 合 軍 総 司 令 部(GHQ)は 、9月25日 の 覚 書 で、 最 高 司 令 官 の 承 認 な しに市 場 の 再 開 は認 め られ な い 旨 を通 告 して き た。GHQの 意 向 は、 新 しい 「証 券 取 引 法 」 の 制 定 が 、 市 場 再 開 の 前 提 と い う こ とで あ ったD。 こ う して 取 引所 の再 開 は不 可能 に な った が 、 しか し取 引所 での 立会 が停 止 され て いた か ら とい って、 証 券取 引 が 行 わ れ て い な か った わ けで は な い 。 終 戦 直 後 の 混 乱 の な か で、 債 券 や株 式 の換 金 売 りが続 出 し、 終 戦 後 間 もな い9月 には、 そ う した債 券 や 株 式 が 証 券 会社 の店 頭 で売 買 され て い た 。 しか し店 頭 で の仕 切 り売 買 で は 店 に よ って 価格 が異 な り、 公 正 な 価 格 形成 とい う点 で 問題 が あ った し、 円 滑 な 流 通 も期 し難 か った 。 そ の た め12月 に は東 京 ・大 阪 で 、 あ る特定 の場 所 に業 者 が集 ま って 行 う集 団取 引 が始 ま り、 そ う した取 引 は その後 次 第 に他 の地 域 に広 が った。 これ は、 い わ ば非 公 式 な取 引所 とい っ て もよ い が 、 大 蔵 省 もGHQも これ を店 頭 取 引 の 延 長 と して 黙 認 した。 そ して 取 引 所 が再 開 さ れ る直 前 の 昭 和24年(1949年)3月 末 の 時 点 で 、 こ う した集 団 取 引 が行 わ れ て て た の は以 下 の 場 所 で あ っ た2)。 そ して取 引所 再 開 が認 め られ る よ うに な る と、 これ らの場 所 に証 券 取 引所 が 開設 さ れ た。 東 大 名 京 神 広 福 新 古 京 阪 屋 都 戸 島 岡 潟 主 催 機 関 東 京 証 券 業 協 会 大 阪 証 券 業 協 会 名古屋証券業協会 京 都 証 券 業 協 会 神 戸 証 券 業 協 会 広 島 共 同 証 券 西 部 証 券 新 潟 証 券 業 協 会 場 東 京 都 中 央 区 大 阪 市 東 区 名 古 屋 市 中 区 京 都 市 中 区 神 戸 市 生 田 区 広 島 市 銀 山 町 福 岡 市 天 神 町 新潟市上大川前通 所 日 証 館 内 絵 野 証 券 内 日 証 ビ ル 内 京 都 証 券 内 日 本 ビ ル 内 旧 日 証 市 場 西 部 証 券 内 旧 日 証 市 場 ロ.株 式 取 引 以 上 の よ うな全 国 の株 式 取 引 の実 績 は、 集 団取 引 ・店 頭 取 引 の双 方 を合 わせ て 、 取 引所 再 開 まで の 期 間 につ い て み る と、 まず 昭和21年(1946年)で156百 万 株(う ち、 集 団 取 引 は55百 万 株)で あ った。 これ は戦 前(昭 和9-11年 、 清 算 取 引 ・実 物 取 引 の合 計 の年 平 均)の 約6割 に 当 た り、 当時 の状 況 か らみ て そ れ ほ ど小 さい数 字 で はな い。 翌22年 に は、 これ が845百 万株 に膨 脹 し、 そ の 後 の取 引 も株 数 ・

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金 額 と も に急 拡 大 した(表1)。 この うち 集 団 取 引 を地 域 別 に み る と、 東 京 が過 半 を 占め、 これ に大 阪 ・名 古 屋 を加 え る と、 全 体 の約9割 を 占 め た3)。 (表1)証 券 取 引 所 再 開 ま で の株 式 取 引 状 況 (単位 株数、百万株,金 額、百万 円) 昭 和 集団取引 店頭 取引 合 計 株 数 金 額 株 数 金 額 株 数 金 額 21年 55 ● ●● 101 ● ● ● 156 ●oo 22年 190 ● ●o 655 o●● 845 ●99 23年 260 37,949 1,495 207,258 1,755 245,206 (うち1∼6月) (88) (10β65) (472) (57β70) (559) (68,235) (〃7∼12月) (172) (27,084) (1,023) (149,888) (1,196) (176,972) 24年1∼4月 215 44,647 1,206 243,758 1,421 282,405 (参考) 9∼11年 平 均 清算取引 実物 取引 合 計

25212z573

1屡380

262i2Z953

(資 料)日 本 銀 行 統 計 局 「本 邦 経 済統 計 』(1949) この 間、 昭和21年2月 の金 融 緊 急 措 置 実 施 は 、証 券 取 引 に も深 刻 な影 響 を及 ぼ した。 す な わ ち、 こ の措 置 に よ って株 式 ま た は 出資 の払 込 み資 金 に つ い て は封 鎖 支 払(封 鎖 預 金 の振 替 に よ って 支 払 決 済 を行 う制 度 で 、 したが って 現 金 の引 出 しを伴 わ な い)が 認 め られ た もの の4)、証券 売 買 につ い て はす べ て新 円 に よ る決 済 に 限定 され た か らで あ る。 そ の結 果 、 証 券 売 買 は事 実 上 、 停 止 せ ざ るを え な い状 況 に追 い込 ま れ た 。 と ころ が、 証 券 市 場 関係 者 か らの要 望 に よ って、 金 融 緊 急 措 置 実 施 後6日 目 に し て この制 度 は 改 め られ 、証 券 買 入 代 金 の封 鎖 支 払 が特 例 と して認 め られ る よ うに な った 。 こ う して 証 券 売 買 は新 円 取 引 と封 鎖支 払取 引 の二 本 建 て で 行 わ れ る よ うに な った が、 今 度 は封 鎖 預 金 で株 式 を買 い、 そ れ を売 却 して 新 円 を入 手 す る とい う事 例 が 目立 った た め、 同年6月 、 大 蔵 省 は封 鎖 支 払 い に よ る証 券 買 入 れ につ い で の 規 制 を強 化 し た結 果 、 そ の後 の証 券 取 引 は お お む ね新 円取 引 に一 本 化 され た`)。 この よ うな 状 況 か ら も推 測 され る よ うに、 金 融 緊 急 措 置 が証 券 取 引 の 決 済 を どの よ う に扱 うか とい う点 で 、 当 時 い さ さか 混乱 が あ った よ うで あ る。 そ う した 当 時 の状 況 や雰 囲気 につ いて 、 次 の よ うな 証言 が 残 され て い る6)。 (以 上 の よ う に、 証 券 売 買 に封 鎖 支 払 が認 め られ る と 筆 者)封 鎖 預 金 に よ る株 式 買 い は急 速 に ふ え て い った 。 ほ とん どの 人 は 、 欲 しい もの は 株 で な く、 新 円 な の で あ る。 証 券 会 社 が 発 行 す る 「買 付 け証 明 書 」 を銀 行 に持 って 行 き、 封 鎖 預 金(旧 円)を 下 ろす 。 これ を新 円 と交 換 す る。 もち ろん そ の 際 の レー トは10対8な い し10対6、 つ ま り旧 円1,000円 を 新 円 の800円 か600円 ぐら い と交 換 す るの で あ る。 新 円 を 多 額 に持 つ ヤ ミ屋 とか 第 三 国 人 とか に証 券 会社 が橋 渡 しす る場 合 もあ った ろ うが、 か な り の 部 分 は証 券 会 社 の運 転 資 金 の 中 か ら支 払 わ れ 、 証 券 業 が 高 い 利 潤 を 得 た 時代 が あ った の だ。 株 式 売 買 を通 じて の"封 鎖 破 り"は 、 角 度 を変 え る と金 融 措 置 令 の 違 反 で あ り、 カ ラ売 買 を実 売 買 にみ せ か け る詐 欺 罪 と も解 釈 で き る。 東 京 地 検 が 証 券 業 者 の 何 人 か を 拘 引 した一 幕 もあ った が、 結 果 は 「法 の不 備 」 とい うこ とで 決 着 が つ い た。 当時 は こ の よ うに混 乱 した状 況 で は あ ったが 、 株 式 取 引 の 規 模 は着 実 に増 加 し、株 価 もま た上 昇 し て い った。 と くに 昭和22年 末 か ら翌23年2月 に か け て は、 株 式 ブー ム の様 相 を呈 した(図1)。 な か で も23年1月13日 の東 京 市 場 に お け る売 買 高 は639千 株 と終 戦 以 来 の最 高 記 録 で 、 そ の 後 そ の年 の半

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ば はや や 沈 滞 気 味 で あ った も の の、 秋 以 降 、 再 び 活 況 を呈 した 。 こ う した 株 式市 場 の 活 況 は、 後 述 の 「証券 民 主 化 」 運動 が軌 道 に乗 って きた こ と、 当 時 な お イ ン フ レー シ ョ ンが 進 行 し て い た 状 況 で イ ン フ レ ・ヘ ッ ジの視 点 か ら株 式 投 資 が見 直 され た こ と、 証 券 金 融 が拡 充 され た こ との ほ か、 米 ソ対 立 を背 景 に して ア メ リ カ の対 日政 策 の転 換 が 始 ま ろ う と して い た、 と い っ た事 情 が そ の背 後 に あ っ た とみ る こ と が で き る7)。 しか し当 時 の 市 場 取 引 は、 前 述 の よ う に 自 然 発 生 的 に始 ま った もの だ け に、 不 健 全 な 投 機 取 引 や不 正 な 取 引 もあ って 市場 が混 乱 す る とい う事 態 もあ り、 大 蔵 省 1,000 500 指 数 (昭和21年8月=100) 100 月9111 (図1)終 戦後の東京株式市場 3579111357911

一___一L∼__一

昭和21年22年23年 銘柄数140175216 (資 料)野 村 証 券 調 査 部 『証 券 統 計 要 覧 』(昭 和30年 版) 13   24年 230 が警 告 壷発 した り、 取 締 ま りを強 化 す る と い う こ とが しば しば起 こ った8)。 ハ .債 券取引 債 券 の取 引 につ い て も、 株 式 の 集 団 取 引 に付 随 す る形 で、 まず 戦 時 中 に発 行 され た 小 額 債 券(勧 業 債 券 ・貯 蓄 債 券 ・報 国 債 券 等)の 換 金 化 を 中 心 に 、 証 券 会 社 の店 頭 で 開 始 され た 。 しか し、 この よ う な取 引 で は価 格 が 不 統 一 にな る こ と は避 け られ な か った 。 そ こで 、 売 買 の 公 正 と円 滑 化 を 図 る趣 旨か ら、 昭和21年5月 、 有価 証 券 業 協 会員 に よ って証 友 会 が結 成 され(そ れ ま での 株和 会 ど証 和 会 が合 併) 主 と して 小 額 債 券 類 の 気 配 交 換 会(週2回)を 行 うよ う にな り、 相 場 は概 ね一 本 化 され た。こ の よ う な 店 頭 取 引 の 実 績 を東 京 市場 で み る と、 昭和22年 の7億 円 か ら始 ま り、 そ の後 次 第 に増 加 した とは い え 、翌23年 で35億 円、 さ らに24年 で232億 円 にす ぎな い9)。 そ の 後 一 時 的 に債 券 売 買 が活 発 化 した 時期 もあ った が 、 戦 後 の債 券 流 通 市 場 は長 く不 振 を極 め た そ の基 本 的 な原 因 は、 債 券 の応 募 者 利 回 りが政 策 的 に低 く抑 え られ て い た た め で あ る。 したが って当 時 の債 券 売 却 は か な りの キ ャ ピタ ル ・ロ ス を覚 悟 しな け れ ば な らな か った。 そ こ に債 券 売 買 の制 約 が あ った し、 債 券 流 通 市 場 と して は不 自然 さ が あ った 。 こ う した 状 況 の 中 で 、実 は、 昭 和24年2月 GHQが 日本 銀 行 に対 し、 国債 ・復 興 金 融 債(復 金 債)10)の証 券 取 引所 上 場 につ いて の 意 見 を求 め た これ に対 し 日本 銀 行 は、 取 引 所 上 場 は適 当 で はな い と回 答 した。 そ の理 由 と して 、 日銀 は、国債 ・復 金 債 の 売 買 価 格 が 発 行 価格 を か な り下 回 って い る状 況 で 証 券 取 引所 に上 場 す れ ば、 国債 ・復 金 債 を大 量 に保 有 して い る金 融機 関 の経 営 に対 す る影 響 が大 き く、 結 局 、 新 発 債 の 応募 者 利 回 りを 大 幅 に引上 げ ざ る を え な くな る と した11)。当 時 は金 融 機 関資 金 融 通 準 則12)に 基 づ い て 半 ば 強 制 的 に 国 債 や復 金 債 を金 融 機 関 に引受 け させ、 結 果 的 に そ れ らの低 利 発 行 を 維 持 して いた か ら、 こ う した シス テ ム を前 提 とす れ ば、 日銀 の見 解 は や む を え な か った もの といえ よ う。

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2)発 行 市 場 イ.株 式 公 募 戦 後 最 初 の 株 式 公 募 は、 昭 和21年4月 の 「新 日本 興 行 」100千 株 で あ った が、 この公 募 は 当 日直 ち に 申込 み 超 過 締 切 り とな った。 以 後 、22年2月 まで に、26社 、873百 万 円 の公 募 売 出 しが 行 わ れ た。 これ を東 京 市 場 に つ い て み る と、 株 式 公 募 の規 模 はか な り早 い テ ンポ で拡 大 した。 ま た業 種 別 に は、 造 船 ・造 機 、 繊 維 工 業 、 化 学 工 業 な どの 金 額 が大 きか った(表2)。23年8-10月 に は銀 行 ・信 託 会 社 等 金 融 機 関 の 再 建 整 備 計 画 に基 づ く増 資 が 行 わ れ た13)。ま た24年 には ド ッジ ・ライ ン に よ る金 融 引 締 め の影 響 で企 業 の資 金 調 達 が株 式 発 行 へ の依 存 を高 め た た あ、 株 式 公 募 が急 拡 大 した14)。 (表2)株 式 公募 状 況(東 京 市 場) (単 位 株数 、 串 株,金 額 、 百 万 円) 昭 和 公募 株 数 ・金 額 業 種 別 銀 行 ・保 険 造 船 ・造 機 繊 維 工 業 化 学 工 業 21年 7∼12月 株 数 2,257 400 70 } 一 金 額 96 20 4 一 一 22年 株 数 7β78 550 590 717 240 金 額 398 28 32 25 20 23年 株 数 32,520 8,900 12,079 4,567 950 金 額 2,364 445 863 626 86 24年 株 数 92,558 780 12,996 7,774 14,125 金 額 9,538 43 1,066 918 1,516 合 計 株 数 134,713 10,630 25,735 13,058 15,315 金 額 12,396 536 1,965 1,569 1,622 (資料)東 京証券業協会 『東京証券業協会十年史』 囗1債 券 発 行 戦 後 暫 くの 間 は、 債 券 発 行 の 大 部 分 は国 債 と復 興金 融 債(復 金 債)に よ って 占め られ て お り、 そ の 多 くが 日本 銀 行 と大 蔵 省 預 金 部 に よ って 引 受 け られ て い た15)。民 間企 業 の社 債 発 行 は、 昭 和20年12月 の 倉 敷 絹 織(株)の 借 換 債6百 万 円 が戦 後 最 初 のケ ー スで あ る が16)、昭和23年 まで は、 民 間社 債 の発 行 は極 め て 低 調 で 、 電 力 債 ・鉄 道 債 等 の 発 行 が 僅 か に 行 わ れ た にす ぎな い。 昭粕24年 に な る と、 国債 の 発 行 は依 然 と して 多 いが 、 復 金 債 の 発 行 は減 少 し(24年4月 以 降 は発 行 停 止)、 地 方 債 、 民 間 の金 ・融 債 ・事 業 債 の発 行 が 増 加 した(表3)。 昭 和24年 に地 方 債 の発 行 が 急 増 した が 、 こ う した地 方 債 は 大 都 市 に属 す る地方 公 共 団 体 が発 行 す る 分 を 除 け ば非 公 募債 が 中心 で、 これ らは証 券業 者 の斡 旋 に よ って地 元 の地 方 銀行 や農 業協 同組 合 によ っ て 引 受 け られ た17)。な お地 方 債 の起 債 に つ い て は、 昭和22年 制 定 の地 方 自治 法 お よ び同 施 行 令 に よ っ て 原 則 と して 自由 と され た もの の 、 実 際 に は 「当分 の 間 」 所 轄 行 政 庁 の許 可 を 要 す る こ と と さ れ た (地方 自治 法 第250条)18)。 事 業 債 の発 行 も昭 和24年 に な って 急 増 した 。 こ の背 景 に は、 後 述 の よ うな 日本 銀 行 の 起 債 市 場 育 成 策 が あ った が 、 いず れ にせ よ 、 戦 後 にお け る事 実 上 の起 債 市 場 再 開 は 昭和24 年 と考 え て よか ろ う。 3)証 券 保 有 の 分 散 終 戦 後 、 証 券 取 引 に大 きな 影 響 を及 ぼ した もの と して 、GHQの 覚 書 に基 づ く財 閥 の 解 体 作 業 と 閉 鎖 機 関 の 整 理 作 業 が あ った。 まず 財 閥解 体 につ い て い え ば、 昭 和20年11月 のGHQ覚 書 に よ り、 政 府

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(表3)公 社債発行状況 昭和 国 債 ・ 地方債 金融債 うち 復 金 債 事業 債 合計

21年 21,254 148 1,821 一 726 23,94822年 55,203 745 42,776 40,900 340 99,064 (

23年 37,875 929 88,262 87,100 515 127,581 巴 24年 90,692 3,166 56,957 40,000 16,555 167β70 構 21年 88.7 0.6 7.6 一 3,0 100.0 成 比 22年 55.7 0.8 43.2 41.3 0.3 100.0 ( 23年 29.7 0.7 69.2 68.3 0.4 100.0 % ) 24年 54.2 1.9 34.0 23.9 9.9 100.0 *政 府短期証券は含まない。 (資料)日 本 興業銀行 『全 国公社債 明細表』 は翌21年8月 、 持 株 会 社 整理 委 員 会 を 発 足 させ た 。 そ の 委 員 会 の任 務 は、 持 株 会 社 が 所 有 す る有 価 証 券 を譲 受 け、 そ の処 分 を通 じて 持株 会 社 を解 散 させ る こ とで あ った。 また そ の 後、 同年11月 にな って、 財 閥家 族 の 保 有 証 券 等 も同委 員 会 の管 理 下 で 処 分 され る こ と にな つ た 。 そ の ほ か 同委 員 会 は、 「制 限 会 社 令 」19)に基 づ く指定 会 社 お よ び そ の子 会 社 ・孫 会 社 の保 有 有 価 証 券 で整 理 処 分 の対 象 にな った も の につ い て、 その 処 分 の 議 決 権 を 委 任 され た 。 他 方 、 閉 鎖 機i関の整 理 につ い て は、総 数1091機 関 が 閉 鎖 機 関 と して指 定 され 、 す べ て 特 殊 整 理 ・特 殊 清算 に付 され る こ と にな った 。 そ の清 算 に当 た る機 構 と して 、 朝 鮮 銀 行 ほか4銀 行 につ いて は 日本 銀行 が 清 算 人 と して 指 定 され 、 そ の 他 に つ い て は21年2 月 、 閉 鎖 機 関 保 管 人 委 員 会 が 設 置 され た(そ の 後、 この 委 員 会 は閉 鎖 機 関 整 理 委 員会 に 改 組 され た)。 こ う して 閉 鎖 機 関 の 資 産 は 、 日本 銀行 お よ び 閉鎖 機 関 整 理 委 員 会 の 手 に よ って 、 清算 の た め に処 分 さ れ る こ と にな った20)。 この よ うに 巨額 の 証 券 を 一 般 に売 り出す の は容 易 な こ とで はな い。 そ こで政 府 はGHQの 示 唆 もあ り、22年6月 、 そ う した証 券 を 円滑 に売 り出 す こ とを 目的 と して 活動 す る証 券 処 理 調 整 協 議会 を設 置 した 。 と こ ろで 当 時、 証 券 処 理 調 整 協 議 会 が処 分 しな け れ ば な らな か った証 券 の正 確 な額 は 明 らか で はな い21)。持 株 会 社 整 理 委 員 会 が そ の業 務 を終 了 した 時点 で纏 め た 『日本 財 閥 とそ の解 体 』 に よれ ば 、 同 協 議 会 発 足 当 時、 処 分 を要 す る と予 想 した株 式 の 総 額 は184億 円 で あ った と述 べ て い る22)。こ の計 数 は株 式 だ け の もの で あ るが、 昭 和54年 公 刊 の 『昭 和 財 政 史 終 戦 か ら講 和 まで(14)』 は、 日本 銀 行 が 昭 和22年9月 時 点 で推 計 した 資 料 と して 、 株 式144億 円、 公 社 債131億 円 、 合 計 で ほ ぼ275億 円 と い う計数 を掲 げ て い る。 証 券 処 理 調 整 協 議 会 は こ の うち111億 円の 処 分 を 見 込 ん で い た(表4)。 い ず れ に して も証 券 処 理 調 整 協 議 会 が 処 理 す べ き証 券 額 は、 株 式 で全 体 の約3割 、 社 債 で 同 じ く約 2割 とい う膨大 な もの で あ った か ら23)、同協 議 会 が 以 上 の よ うな 証 券 を どの よ うな 方 針 で 処 理 して い くか は大 き な 問題 で あ った。 と ころ で実 は 、 この 協 議 会 は ほ ぼ完 全 にGHQの 管 理 の 下 に あ っ た。 当 時 の 日本 の状 況 と して は、 それ は必 ず しも異 常 と もい え な い が、 た だ こ の こ と が 「証 券 処 理 調 整 協 議 会 規 則 」 の 中 に、 極 めて 具 体 的 に規 定 さ れ て い た の で あ る。 す な わ ち、 同 規 則 に は① 会 議 にはGHQ 側 か らオ ブ ザ ーバ ーが 出席 す る こ と にな って い る(第9条)だ け で な く、 ② 会 議 に お いて 意 見 の 一 致 が 困難 な場 合 、 また は議 案 がGHQの 方 針 か らみて 疑 義 が あ る場 合 には、 議 長 は文 書 に よ って オ ブザ ー バ ー の意 見 を求 め、 オ ブザ ーバ ー が 意 見 を 述 べ た と き は、 協 議 員 は それ に従 わ な けれ ば な らな い(第 10条)と な って い た。 こ れ は、 当 時GHQが こ の 問題 を い か に重視 して い た か を 示 す もの とみ て よか

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(表4)証 券処理調整協議会 の処分すべ き指定証券額推計* (単位 百万円) 区 分 指 定 証 券 証券処理調整 協議会 による 見 込 額(株 式 ・社債) 発行者が制限 会社、特経会 社、金融機関 以外の もの 備 考 株 式 払込 額 計 公 社債 額 面 うち国債 持 株 会 社 整理委員会 6β00 500 一 6,800 6,560 120 財閥 および指定会社等か ら 譲受 けたもの 閉 鎖 機 関 整理委員会 1,320 3,890 2,770 5,210 2,440 一 整理委員会傘下閉鎖機関所 有証券 日 本 銀 行 50 7,480 7,120 7,530 45 一 日本銀行を特殊精算人 とす る鮮銀、台銀等の所有証券 大 蔵 省 t700 1,210 880 2,910 2,030 100** 財産税 ・戦時補償特別税の 物納分 商 工 省 5,000** 不 明 不 明 5,000** 不 明 不 明 特経会社が決定、整備計画 に従 い処分すべ きもの 計 14β70 13,080 10,770 27,450 11,075*** 220 *現 物 が 内地 に在 る もの の み 、 昭 和22年9月10日 調 べ **推 算 ***実 際上 処 分 困難 な 証券 を 差 引 く (資料)大 蔵 省 財 政 史 室 「昭和 財 政史 終 戦 か ら講 和 まで 』(14)P.379 ろ う。 証券 処 分 につ いて のGHQの 基 本 的 な考 え 方 は、 証 券 保 有 を広 く国 民 大 衆 の 間 に分 散 させ る こ と、 つ ま り 「証 券 民 主 化 」 を 実現 す る こ とで あ った。 他 方 証 券 業 界 も、 処 分 株 式 を受 け入 れ る体 制 を 作 るた あ公 開株 式 取 扱 委 員 会 を 発 足 さ せ た24)。 証券 処 理 調 整 協 議 会 の 証券 処 分 は、 昭和22年7月 一26年6月 の4年 間 に わた って行 われ た。 そ の 際、 まず発 行 会 社 の 従 業 員(役 員 を 含 む)に 、 次 い で発 行 会 社 の事 務 所 ・工 場 の所 在 地 居 住 者 に優 先 的 に 売 却 され た。 こ う した売 却 方 針 は、 前 述 のGHQの 考 え 方 に則 した もの で あ っ た。 この 間 にお け る証 券 処理 調 整 協 議 会 の 処 分 実 績 は、 株式 が141億 円、 公 社 債 が2億 円、 計143億 円 で あ っ た。 この よ う に 処 分 証券 の大 部 分 は 株 式 で あ った が、 株 式 売 却 も当初 は必 ず し も順 調 に は い か な か っ た。 しか し昭 和 23年 頃 か ら、 前 述 の よ う に株 式 ブー ム の様 相 を 呈 した た め、 処分 は急 速 に進 ん だ。 しか し株 式 ブー ム は24年5月 を ピー ク に下 降 に転 じ、 さ らに ドッ ジ ・ライ ンに よ る金 融 逼 迫 とい った事 情 も加 わ って 株 式 売 却 は著 し く困 難 にな った 。 結 局 、 証券 処 理 調 整 協議 会 は 処理 す べ き証 券(指 定 証 券)の 約 半 分 を 処 理 し、 昭 和26年(1951年)10月 に解 散 し、 残 余 財 産 は 委託 機 関(国 庫 、 持 株 会 社i整理 委 員 会 、 閉 鎖 機 関 整 理 委 員 会)に 帰 属 す る こ とに な った25)。 以 上 の よ うな 経 緯 で 、 証 券 処 理 調 整 協 議 会 に よ って 大 量 の 株 式 が処 分 さ れ た結 果 、 株 式 の保 有 構 造 は どの よ う に変 化 したか 。 その 変 化 を 昭 和20年 度 と、 証 券 処 理 調i整協議 会 の処 理 が一 段 落 した24年 度 の 比 較 で み て み よ う(表5)。 こ の比 較 か ら明 らか な よ う に、 まず 株 主 数 に つ い て み る と、 証 券 業 者 と個 人 の 比 重 が 高 ま った。 昭 和24年 度 の 証 券業 者 数 には 、 株 式 を 購 入 した個 人 で株 式 名 義 書 換 え を行 わ な い ま ま の もの が か な り含 まれ て い た よ うで あ るか ら26)、実 際 の個 人 株 主 数 は もっ と多 か っ た の で あ らう。 次 に、 所 有 株 数 か ら これ をみ る と、 個 人 株 主 の 比 重 の 高 ま りが 注 目 され る。 さ らに所 有 規 模 別 で は、 零 細 株 主 数 の比 重 が低 下 し、 中間 株 主 層 が 増 加 した 。 と くに、1万 株 以上 を保 有 す る大 株 主 につ いて 昭 和20年 度 と24年 度 を比 較 す る と、 株 主 数 構 成 比 は増 加 した もの の 、 保有 株 数 構i成比 は大 幅 に低 下 して お り、 財 閥解 体 等 に よ って 株 式 保 有 の分 散 が 進 ん だ こ とを 示 して い る。

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4)証 券 業 者 戦 時 期 に入 る と、証 券 業 者 に対 す る統 制 も次第 に強化 され る と と もに、 そ の 整 理 統 合 が進 め られ、 証 券 業 者 数 は400前 後 に減 少 した が 、 戦 後 は 再 び 中小 業 者 が増 加 し、層集 団取 引 に 参 加 した。 株式 ブ ー ム の 昭和24年 度 末 の 証 券 業 者 は1,127と な った が 、 これ が ピー クで あ った27)。 こ う した多 数 の証 券 業 者 のな か か ら次 第 に有 力 な証 券 業 者 が 台 頭 し、 や が て 四大 証 券 が 形 成 され た。 そ の 契 機 に な った の は、 戦 時 期 の 昭和13 年(1938年)「 有 価 証 券 引受 業 法 」 の制 定 で あ る。 この 法律 に よ って、 証 券 業 者 の う ち国債 ・地 方 債 ・社 債 等 の 引 受 業 務 を行 え る もの を指 定 す る こ と に な り、 資 金 自 治 調 整 証 券 団28)の 山一 、 日興 、 藤 本 、 小 池 、 野 村 の5社 、 そ れ ま で公 社 債 引受 け に実 績 の あ った共 同、川 島屋 の2社 、 そ れ に勧 業 債 券 を販 売 して いた 日本 勧 業 、 計8社 が指 定 を 受 けた 。 この (表5)株 式 分 布 の 変 化 (単 位 千 人 、 百 万 株 、%) 昭 和20年 度 昭 和24年 度 株主数 株 数 株主数 株 数 株 主 構 成 別 政 府 ・公 共 団 体 2 37 7 56 (0.1) (8.3) (0.2) (2.8) 金 融 機 関 7 50 14 198 (0.4) (1t1) (0.3) (9.9) 証 券 業 者 9 12 49 251 (0.5) (2.8) (1.1) (12.6) その他 法人 21 109 28 111 (1.2) (24.7) (0.7) (5.6) 個 人 1,657 231 4,183 1,370 (96.7) (52.4) (97.6) (68.5) η 5 7 13 そ の 他 (1.0) (1.D (0.2) (0.7) 所 有 規 模 別 100株 未 満 1,150 40 1,429 52 (67.2) (8.9) (33.3) (2.6) 100∼999株 538 105 2,531 657 (30.2) (23.7) (59.0) (32.8) 1,000∼9.999株 40 83 312 594 (2.4) (18.6) (7.3) (29.7) 10,000株 以 上 4 2瀝6 η 696 (0.2) (48.7) (0,4) (34.8) 合計 1,刀3 444 4,289 2,000 ()内 は 構 成 比 (資料)(表2)に 同 じ うち野 村 が 昭和16年 に、翌17年 に 山一一、 藤本 、 小 池 、 共 同、 川 島屋 が 日本 で初 めて 投 資信 託 を 開始 し、 証 券 大 衆 化 へ の 端 緒 を作 った 。 さ ら に昭和18年(1943年)に は証券 業 者 の整 理 統 合 が行 わ れ、上記8 社 の う ち、 日本 勧 業 を 除 く7社 が野 村 、 山一(山 一・・小 池)、 日興(日 興 ・共 同 ・川 島 屋) 、大和(藤 本)の4社 とな り、 四大 証 券 を形 成 した の で あ る。 これ ら4社 は、 戦 前 か ら流 通 市 場 に お い て現 物 売 買 に大 き な力 を持 って い た か ら、 前 述 の証 券 処 理 調 整 協 議 会 の株 式 処 理 に 際 して、 そ の優 れ た販 売 力 に よ って放 出株 の大 部 分 を取 り扱 い、 そ の後 の 発 展 の基 礎 を作 った。 ま た終 戦 後 の株 式 売 買(店 頭 攻 引 ・集 団取 引)に お いて も、4社 の シ ェ ア は 当時 す で に3割 程 度 で、 そ の他 の証 券 会 社 との 間 に格 段 の 差 を持 って い た(表6)。

■.証 券民主化運動

民主 化 」 は、 ア メ リカ の 占領 政 策 に と って最 も重 要 な 柱 で あ った。 これ を証 券 に適 用 す れ ば、 そ れ は証 券 保 有 の大 衆 化 と い って よ い29)。そ して この こ とは 、 前 述 の よ うな 財 閥 解 体 や 閉 鎖 機 関 処 理 等 に伴 う証 券 処 理 を 円滑 に進 め るた め に も、 不 可 欠 な もの で あ った。 このよ うな状況 の下 で、昭和22年 (1947年)10月 、 全 国 証 券 業 協 会 連 合 会 は 「証 券 民 主 化 運 動 」 を 全 国 的 に 展 開 す る こ と を 決 定 し た30)。この 運 動 はGHQか ら も支 持 され 、 そ の斡 旋 に よ って 証 券 民 主 化 委 員 会 が設 置 され た。 そ して この委 員 会 に は、 大 蔵 省 ・証 券 取 引 委 員 会 ・商 工 省 ・逓 信 省 ・文 部 省 ・運 輸 省 ・農 林 省 ・通 貨 安 定 本

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(表6)店 頭 ・集 団 取 引 にお ける 業 者 別 シ ェ ア (東京 市 場) (単位%) 昭 和21年 (9∼12月) 昭和22年 昭 和23年 昭 和24年* 日 興 8.0 山 一 9.7 野 村 10.6 山 一 9.3 野 村 6.7 野 村 7.3 山 一 ・ 9.5 野 村 9.1 山 一 6.6 日 興 6.2 日 興 7.1 大 和 6.8 二 宮 3.9 大 和 3.8 大 和 6.1 日 興 6.5 大 和 3.6 角 丸 3.6 角 丸 2.7 小 柳 2.6 六 鹿 -3 .4 成 瀬 3.1 玉 塚 2.6 玉 塚 2.6 角 丸 3.0 玉 塚 3.0 小 柳 2.6 角 丸 2.0 玉 塚 3.0 大 車 2.9 大 東 1.8 山 叶 t7 成 瀬 2.9 大 福 2.7 日 東 1.7 成 瀬 1.7 大 車 2.6 金 万 2.4 成 瀬 t7 日 東 1.7 四大 証券** 24.9 四大証 券** 26.9 四大 証券** 33.2 四大 証券** 31.7 *6月 以 降 は店 頭 取 引 の み **四 大 証 券 …野 村 ・山一 ・日興 ・大 和 の4社 (資 料)産 業 経 済 研 究 所 『証 券 白書 』(昭 和31年 版)よ り作 成 部 ・証券 処 理 調 整 協 議 会 ・東京 証 券 業 協 会 等 が 参 加 した31)。 この運 動 は昭 和22年12月1日 開催 の証券 民 主 化 促 進 全 国大 会 によ って 開始 され た。 さ らに同 日午 後、 全 国証 券 業 協 会 連 合 会 は 臨 時総 会 を 開 き、 証 券 民 主 化 を実 現 す るた め、 ① 証 券 金 融 の拡 充 、 ② 臨 時 証 券 金 庫(仮 称)の 設 置、 ③ 配 当制 限 の撤 廃 、 ④ 証 券 関係 諸 税 の改 廃 、 ⑤ 証 券 取 引所 の再 開 、 等 の 要 望 を 決議 し、 これ を国 会 ・政 府 等 に提 出 した32)。そ の 後 この運 動 は、 ① 各 地 にお け る講 演会 の 開 催 、 新 聞 ・雑 誌 ・ポ ス タ ー ・パ ン フ レ ッ ト ・ラ ジオ 等 に よ る宣 伝 、 ③ 臨 時 投 資 相 談 所 の開 設 、 ④ 株 式 投 資 展 覧 会 の 開催 、 ⑤ 映 画 会 や 演 芸 会 の開 催 、 と い った形 で展 開 され た33)。以 上 の よ うな 具体 的 活動 か ら明 らか な よ うに、 この運 動 の狙 い は、 証 券 投 資 につ い て の、 政 府 筋 に対 す る環 境 整 備 の 要 望 と国 民 大 衆 に対 す る啓 蒙 宣 伝 に あ った とい うこ とが で き る が、 と くに後 者 に大 き な比 重 が 置 か れ て い た。 さ らに この よ うな証 券 民 主 化 運 動 は、 昭 和23年 秋 、 国 会 に も広 が って 「日本 経 済 の民 主 的 再 建 に 際 し、大 衆 資 本 を動 員 す るた め証 券 に対 す る国民 の理 解 を深 め積 極 的協 力 を得 る こ とを 目的」 と して、 同年12月 、 衆 議 院 内 に証 券 民 主 化 議 員 連盟 が誕 生 し、 つ いで 翌24年4月 には衆 参 両 議 院 連 合 の 連 盟 に発 展 した34)。 しか し当時 の状 況 で は、 単 な る啓 蒙 宣 伝 活 動 だ け で国 民 大 衆 の 証 券 投 資 を 大 き く増 や す こ とは期 待 で き なか っ た。 そ こで証 券 投 資 に必 要 とす る資 金 調 達 の た めの 金 融 措 置 が 望 まれ る よ うに な った。 政 府 に と って も・ 前 述 の よ うに・ 財 閥 や 閉 鎖 機 関 が 保 有 して い た証 券 を 大 衆 に分 散 保 有 させ る こ とが至 上 命 題 に な って い た か ら、 後述 の よ うな証 券 取 引 円 滑化 の た め の金 融措 置 が実 施 され る こ とに な っ た。 証 券 投 資 につ い て の啓 蒙 宣 伝 活 動 を 中 心 と した 証 券 民 主 化 運 動 は 、 そ う した 金 融措 置 の拡 充 に も支 え られ て か な りの成 果 を あ げ、 前 述 の よ うな 放 出 を 要 す る株 式 を 比 較 的 円 滑 に民 間 に分 散 させ る こ とが で きた 。 しか し、 これ に よ って 日本 の 証 券 民 主 化 が 軌 道 に乗 り、 そ の 後 の証 券 市 場 発 展 の基 礎 を作 る こ と が で きた か とい え ば、 その 点 で は か な りの 疑 問 符 を つ け ざ るを え な い。 そ れ は、 そ の後 の株 価 の暴 落 に よ って 、 大 衆 の 株 式 に対 す る不 信 感 を 招 き、 や が て 国 民 大 衆 が保 有 した株 式 の相 当部 分 が 、 再 び法 人 保 有 へ 逆 流 した か らで あ る。 そ もそ も真 に 証券 民 主 化 を 実 現 す るた め に は、 証 券 価 格 が公 正 に形 成 さ れ、 不 正 な 証 券 取 引 の 発 生 の 防止 措 置 が講 じられ る と と もに 、広 範 な大 衆 投 資 家 の市 場 参 加 が 必 要 で

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あ る35)。証 券 取 引 に投 機 性 が あ るの は当 然 で あ るが 、 同 時 に、 証 券 取 引 に付 随 しが ち な 不 正 や事 故 か ら投 資 家 を守 る広 範 な 制度 的措 置 が必 要 で あ り、 こ の こ とは大 衆 投 資 家 が取 引 に参 加 して い る場 合 に は 、 と くに強 調 され な け れ ば な らな い。 次 節 で 取 り上 げ る証 券 取 引法 が そ の 目的 規 定 に 「投 資 家 の保 護 」 を 掃 げ たの はそ の た め で あ る。 しか し、 当時 は証 券 取 引法 発 効 前 で あ り、 証 券 取 引 所 も再 開 さ れ て い な か っ た。 こ う した こ と か ら も明 らか な よ う に、 当 時 は な お健 全 な証 券 市場 成 立 の 条 件 を欠 い て い た 。 そ う した 状 況 の 中 で、 国民 大 衆 を リス ク の高 い証 券 取 引 に動 員 す る と い うの は 、 い さ さ か 問題 が 多 か った と いわ ざる を え な い。 もち ろん 、 政 府 に と っ て、 株 式 の大 衆 へ の 分散 化 は 緊 急 か つ 必 要 不 可 欠 な 措 置 で あ った。 とは い え 国民 大 衆 が そ う した政 策 の犠 牲 に な らない よ う に、 そ して そ の後 の証 券 市 場 が 健 全 な 発展 を維 持 しう る よ う に、 細 心 の措 置 が 必 要 で あ っ た。 当時 の政 府 にそ の 点 で 充 分 な 意 識 が あ った の か い さ さ か疑 問 で あ る し、 証 券 界 も証 券 民 主 化 を業 容 拡 大 の 手段 と して 捉 え て い た の で は な い か とい う疑 念 が残 る。 こ う した 受 け止 め方 が 過 ち で な い とす れ ば、 そ れ は戦 後 の 証 券 市 場 に ζ って 、 さ ら には 日本 経 済 の発 展 に と って 、 ま こ と に不 幸 な こ と で あ っ た。 皿.証 券 政 策 1)金 融面 か らの対 策 こ れ ま で述 べ て き た と こ ろか ら明 らか な よ う に、戦 後 の証 券 市 場 は極 め て異 常 な形 で始 ま った 。 証 券 市 場 改 革 に関 す るGHQの 方 針 は明 らか で あ っ たが 、 そ れ を実 現 す るに は準 備 作 業 の た め の 時 間 が 必 要 で あ った。 とこ ろが そ の 間 に、 財 閥解 体 や 閉 鎖機 関 処 理 の た め にそ の保 有 有 価 証 券 を売 却 す る と い う作 業 が加 わ り、政 府 ・日本 銀行 は その 作業 を 円滑 に進 め る た めの施 策 を講 じな けれ ば な らな くな っ た。 しか し昭和22年 の金 融機 関 資金 融通 準則 の 別 表 で は 、 証 券 業 者 へ の設 備 資 金 融 資 は丙 に、運転 資 金 融 資 は 乙 に ラ ンク され て い た か ら、 証 券 業 者 が金 融 機 関 か ら融 資 を 受 け る こ とは極 め て 困難 で あ つ た6 こ う した情 勢 か ら、 政 府 は まず 昭和22年8月 、 証 券 処 理 調整 協 議 会 が処 分 す る有 価 証 券 を取 得 す る 場 合 の金 融 緊 急 措 置 令 の 扱 い と して、 封 鎖 支 払 い を認 め る こ と と した が、 次 い で翌9月 、 閣議 了解 と い う形 で 、 証 券 受 渡 決 済 に必 要 な資 金 お よ び証 券 処 理 調 整 協 議 会 売 出 .し証券 の入札買入 れに必要 な資 金 と して 、 証 券 業 者 に対 し総 額75百 万 円 の銀 行 融 資(証 券 担保 金 融)を 認 め る こ とに した。 こ う した 措 置 は そ の後 もい ろい ろ実 施 され た が、 そ れ らを子 細 に述 べ る こ とは あ ま りに も煩 わ しい の で省 略す る。 た だ政 府 が 翌23年6月 に発 表 した、 証 券 業 者 お よ び一 般 投 資 家 に対 す る有 価 証 券 取 引 につ い て の 金 融 措 置 は、 金 融 機 関 融 資 を全 般 的 に か な り拡 張 し うる よ うに した もの で あ った36)。 昭 和24年 にな る と、 日本 銀 行 が新 しい施 策 を講 じた。 一・つ は、 同年6-8月 に実 施 した復 興 金 融 債 (復金 債)買 入 れ措 置 で あ る。 これ は、 起 債 市場 育 成 の一環 と して、興 業債 券(日 本 興業 銀 行発 行)・ 優 良事 業 債 の 市 中 消化 を促 進 す る た め、 取 引 金 融 機 関 が そ れ ら債 券 を買 入 れ た金 額 の 範 囲 内で 保 有 復 金 債 を買 入 れ た もの で、 そ の額 は62億 円余 に達 した。 ま た これ と併 行 して、 割 引 興 業 債 券 ・優 良 事 業 債 を 担 保 とす る貸 付 利 子 歩 合 を 国 債 担 保 貸 付 と同様 に優 遇(年 利5.84%以 上 →5.475%以 上)す る と と もに、 優 良事 業 債 の担 保 掛 目の 引上 げ(85%以 内→95%以 内)も 行 った。 日本 銀 行 は こ の よ うな優 良 事 業 債 を そ の都 度;選定 して い た。 この 制 度 は 「日銀 適 格 担 保 社 債 事 前 審 査 制 度 」 と呼 ばれ 、 重 要 産 業 の社 債 発 行 を側 面 か ら支 援 す る政 策 的 役 割 を 果 た した37)。 2)起 債 統 制 既 に述 べ た よ うに、 終 戦 後 暫 くの 間 、 債 券 の 発 行 と い え ば それ は ほ とん ど国 債 と復 金 債 で 、 しか も

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当初 それ らは 日本 銀 行 と大 蔵 省 預 金 部 に よ って 引 き受 け られ て い た。 終 戦 直 後 の起 債 条 件 を み る と、 応 募 者 利 回 りで お お む ね 年4%前 後 で あ った(表7)。 しか し終 戦 と と もに 戦 後 イ ン フ レー シ ョ ンが 始 ま り、 そ う した状 況 の な か で 市 中 金 利 も また 上 昇 した か ら、 起 債条 件 の 改 訂 が 問題 とな った の は 当 然 で あ る。 ちな み に この 点 につ い て 、普 通 銀行 の 保 有有 価 証 券 の平 均利 回 りを預 金 コス ト ・貸 出平 均 利 率 と比 較 す る と、 昭 和21年 下期 か ら預金 コス トとの 関係 で逆 鞘 にな り、 ま た貸 出平 均 利 率 と の格 差 も急 速 に拡 大 を示 して い る(図2)。 また 昭 和22年 の財 政 法 の 制 定 は、 長 期 国債 の市 中 消 化 体 制 を 作 る こ とを 急 務 と した認)。た だ 当時 は起 債 条 件 の 決 定 ・改 訂 の た め の ル ー ル が な く、 い わ ば一 種 の 混 乱 状 態 と も い う状 況 で 、 そ れ が起 債 を 困難 に す る要 因 に もな って い た。 そ こで 日本 銀 行 は、 政 府 ・市 中 金 融機 関 と協 議 の 結 果、 起債 調 整 協議 会 を設 置 し、 起 債 計 画 の策 定 、 発 行 条 件 の調 整 、 起 債 に関 す る 個 別 審査 等 を 行 う こ と にな った39)。 起 債 調 整 協 議 会 は昭 和22年6月 、 大 蔵 省 ・経 済 安 定 本 部 ・日本銀 行 ・復 興 金 融 金庫 ・農 林 中 央 金 庫 ・日本 興業 銀 行 ・日 本勧 業 銀 行 ・帝 国 銀 行 ・三 和 銀 行 お よ び 地 方銀 行 代 表 を 構 成 メ ンバ ー と して発 足 した40)。こ の協 議 会 の 最 初 の仕 事 は起 債 条 件 の改 訂 で、 まず 事 業債 金 利 の 引上 げ が 決 定 さ れ 、 次 い で 利 付 金 融 債 ・地 方 債 ・国債 な ど公 社 債 全般 の金 利 引上 げ が 行 わ れ た(表7)。 こ の 時 の 公 社 債 金 利 の 引上 げ は 比較 的 大 幅 な もの で、 これ に よ って あ る程 度 は起 債 環境 が改 善 され た もの の、 実 質 的 に起 債 市場 が動 き 出 す に は 昭和24年 を待 た な けれ ば な らか か った こ とは、 既 に述 べ た とお りで あ る。 そ の 後24年6月 、 起 債 調 整 協議 会 は そ の機 能 が分 化 され て、 起 債 懇 談 会 と起 債 打 合 会 に分 か れ た。 前 者 は、 構 成 メ ンバ ー に大 蔵 省 ・日本 銀 行 の ほか 市 中金 融 機 関 を網 羅 し、 起 債 の発 行 条 件 や 引 受手 数 料 な ど につ い て協 議 した 。 後 者 は、受 託 銀 行 と 証 券4社(山 一 ・日興 ・野 村 ・大和)お (表7)主 要公社債発行条件の推移 (単位%) 実施年月 発 行 価 格 (円) 表面利率 応募者利回 り 戻 しな し 戻 しを含む 国 債 昭和11年 98.00 3.5 3.689 } 22年9月 98.00 4.0 4.489 4.552 23年7月 98.00 5.0 5.510 5.575 地 方 債 昭和13年 100.00 4.2 4.200 一 21年12月 99.25 4.3 4.382 4.404 22年9月 99.00 6.5 6.902 6.942 23年5月 97.00 7.5 8.762 一 〃10月 97.50 9.5 10.598 一 利 付 金 融 債 昭和13年 100.00 4.2 4.200 一 21年3月 100.00 4.2 4.200 一 22年5月 100.00 4.8 4.800 5.012 〃8月 100.00 6.0 6.000 6.196 23年3月 100.00 6.5 6.500 一 担保 付 事業 債 昭和21年1月 99.50 4.3 4.371 4.393 〃2月 100.00 4.3 4.300 4.314 〃5月 99.75 4.3 4.335 4.350 〃7月 99.50 4.4 4.472 4.486 〃8月 100.00 4.4 4.400 4.443 22年7月 97.50 6.5 7.032 7.116 23年9月 97.00 9.5 10.824 一 (資 料)『 山一 証 券 史 』P.375 よび 日本 銀 行 ・日本 興 業 銀 行 を 構成 メ ンバ ー と して、 翌 月 の発 行 銘 柄 や発 行 銘 柄 や そ の 発行 条 件 ・発 行 額 な どを 決 定 した41)。 この よ うに して 戦後 に お け る起 債 統制 が始 ま った。 こ う した起債 統 制 を主導 した の は 日本銀 行 で あ っ た。 当 時 、 日銀 が 起 債 市 場 につ いて これ だ け大 きな影 響 力 を持 った の は、 起 債 市 場 の 育 成 もま た 日銀 信 用 に依 存 せ ざ る を え なか った とい う事 実 の反 映 で もあ る。 同 時 に当 時 の 日本 銀 行 が 起 債統 制 の 方 法 と して、 で き る だ け官 僚 統 制 を 避 け業 界 に よ る 自主 統制 の形 を採 りた い、 と考 え た結 果 で あ った と思 わ れ る。 こ の よ うな 日銀 の考 え 方 は 既 に 戦 時 金 融 統 制 の 際 に もみ られ た こ とで あ った か ら42)、起 債 統 制 につ い て の 日銀 の考 え方 はそ の 流 れ を 引 き継 いだ もの とい う こ とが で き る。 ま た、 そ こで 決 定 され

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た金 利 は、・一 方 で市 中金 融 機 関 の 資 金 コ ス トを勘 案 し な が ら も、 他 方 で公 社 債 金 利 を で き るだ け低 く抑 え る とい う性 格 の もの で あ っ た。 そ こ に は公 社 債 流 通 利 回 りは直 接 的 に は反 映 され な い。 そ の 意 味 で これ は、 戦 後 に お け る人 為 的 低 金 利 政 策 の 始 ま りで も あ った43)。 た だ 当 時 の 日本 経 済 は ま だ混 乱 期 を 脱 す る こ とが で き ず、 厳 しい経 済 統 制 の下 に置 か れ て いた し、 さ ら に翌 23年 に は 臨 時金 利 調 整 法 に よ る広 範 な 市 中金 利規 制 が 始 ま った。 こ の よ うな情 勢 の 下 で 、起 債 市 場 の み が正 常 な形 で機 能 す る こ とを 期 待 す る こ とは 、 ほ とん ど不 可 能 と い っ て よ い で あ ろ う。 な お増 資 につ い て も、 昭和24年12月 、 日本 銀行 ・市 中銀 行 ・証 券 引受 業 者 ・持株 会 社 整 理 委 員 会 等 を構 成 メ ンバ ー と した増 資 等 調整 懇 談 会 が設 置 され た。 (図2)普 通 銀行の預金 コス トと資 金運用利回 り (%)! 9.0 8.0 7.0 6,0 5.0 4.0 IV.証 券 取 引 法 の 制 定 と そ の 概 要 1)制 定 の 経 過 昭 和22年(1947年)3月 、 「証 券 取 引法 」 が 制 定 さ れ た。 この 法 律 は、 日本 の証 券 市 場 に と って、 新 しい 時代 の幕 開 け と も い うべ き画 期 的 な 内容 を含 む もの で あ った が 、 そ れ はGHQの 強 い 指 示 に よ っ て制 定 さ れ 3.0 2.0 昭 和20/上20/下21/上21/下22/上22π23/上23/下24/上 (資 料)日 本 銀 行 統 計 局 「本 邦 経 済 統 計 』(1949) た もの で あ っ た。GHQは 、 占領 当 初 か ら、 証 券 市 場 の 改 革 に強 い意 欲 を持 ち、 証 券 取 引 所 の 再 開 は 証 券 取 引 法 の制 定 が条 件 で あ る と して いた 。 この よ うな背 景 を 持 った証 券取 引法 は、従 来 の 取 引所 法 ・ 有 価 証 券 取 締 法 ・有 価 証 券 引 受 業 法 ・有 価 証 券 割 賦 販 売 業 法 な ど、 す べ て の 証 券 関 係 法 規 を 包 括 す る 性 格 を持 ち、 同 時 に そ の 内容 は ア メ リカ の証 券 制 度 を 大 幅 に採 り入 れ た もの で あ つ た 。 た だ、 証 券 取 引法 の制 定 に はか な り複 雑 な経 過 が あ っ た。 まず 昭 和20年12月 に設 置 され た 金 融 制 度 調 査 会(第 一 次)は 、 第5部 会 にお いて 証 券 制 度 改 革 の 検 討 を 開 始 した 。 しか しこの 調 査 会 は、 委 員 の 中か ら多 数 の公 職 追 放 該 当 者 を 出 した た あ、 翌 年2月 、 そ の 活 動 を 停 止 せ ざ るを え な くな った 。 一 方 、証 券 業界 に お い て も、21年5月 、 自発 的 に取 引所 法 改 正 の た めの 検 討 を 開始 した。 さ ら に この 間、 大 蔵 省 は取 引 所 法 改 正 案 の ア ウ トラ イ ン を纏 め、 そ れ を6月 にGHQに 提 出 した。 これ に対 しGHQ の 意 向 が7月 末 にな って 示 され た が、 そ の 内 容 には 、政 府 か ら独 立 した 証 券 取 引委 員 会 の設 置 と、総 合 的単 行 法 と して の 「証 券 取 引法 」 の 制定 を 証 券 制度 改 革 の 基本 とす べ き こ とを含 ん で い た。 この こ とは 、GHQが ア メ リカの 証 券 制 度 を 日本 に導 入 す る こ と を 明確 に示 した こ とを意 味 す る もの で あ っ た44)。 そ こで 大 蔵 省 は、GHQの 示 唆 に基 づ い て ま ず 証券 取 引 委 員 会 を設 置 し、 そ の委 員 会 の 手 で証 券 取 引法 案 を 作 成 す る方 針 を と り、 同年9月 、 「証 券 取 引委 員 会 令 要 綱 案 」45)を纏 め た 。 と こ ろが 当 時 、 GHQの 内部 に この件 に つ い て必 ず しも意 見 の一 致 が で き て い な か っ た よ うで あ る。 そ の た め結 局 、 大 蔵 省 も証 券 取 引委 員 会 に よ る証 券 取 引法 案 作 成 の方 針 を変 更 し、 大 蔵 省 内部 で こ の作 業 を行 う こ と に した46)。そ して、 そ の 法 案 は翌10月 に 作 成 され た 。 そ う こ う して い る と こ ろへ 、 前 述 の よ うに 、

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GHQか ら、 財 閥解 体 等 に伴 う証券 の処 理 機 関 と して、 証 券 処 理 調 整 協議 会 を設 置 す るよ う指 示 が あ っ た た め、証 券 取 引法 案 の 内容 も改 め られ、 さ らにGHQと の意 見 調 整 を経 て、 昭和22年3月 、 同法 案 は議 会 を通 過 した。 こ う して 制 定 さ'れた 証券 取 引 法 は、 ① 有 価 証 券 発 行 に関 す る届 出制 度 の採 用 、 ② 証 券 業 者 に対 す る資 格 基 準 の 強 化 、 ③ 会員 組 織 に よ る証券 取 引 所 の 設 置 、④ 証 券 取 引委 員 会 の設 置 、 等 の 内容 を含 む もの で あ った 。 そ して 、全 体 と して投 資家 保 護 を 強 く打 ち出 し、 ま た そ の 目的 を確 保 す る手 段 と して 政 府 の 直 接 規 制 に よ る こ とな く、 自主 的現 制 の 方 向 を 強 め た もの で あ った。 さ らに、 民 主 的 か つ 健 全 な 証券 市 場育 成 の 狙 い を持 って い た と こ ろ に、 そ の特 色 が あ った47)。 しか し この 法 律 は、7月 にな って証 券 取 引委 員 会 の条 項 の み が施 行 され た だ け で、 そ の他 の条 項 の 施 行 は先 送 りにな っ た6こ の よ う に証 券 取 引 法 の施 行 が遅 れ た の は、 この 間 に お い てGHQの 証 券 担 当 官 の交 代 が あ り、 新 任 の担 当官 と大 蔵 省 との 間 で、 同法 施 行 の細 部 に つ い て意 見 の 不 一 致 が あ っ た こ と、 ま たGHQ内 部 に も意 見 の対 立 が あ っ た た め とい わ れ て い る48)。結 局 、22年10月 、GHQ側 か ら証 券 取 引法 を全 面 的 に改 訂 す べ き で あ る との強 い意 向 が示 され た。 そ こに は、 証 券 取 引 委 員 会 の 権 限 を 強化 す る こ とや証 券 業 お よ び証 券 取 引所 の免 許 制 を要 件 充 足 主 義 に よ る登 録 制 に変 え る、 と い っ た重 要 な 内容 が含 ま れ て い た。 こ う した事 情 か ら大 蔵 省 は新 しい証 券 取 引法 の策 定 作 業 に入 っ たが 、 そ の過 程 でGHQか ら再 び重 要 な改 正 提 案 が行 わ れ た。 そ れ は 、 銀 行 ・信 託 会 社 に よ る証 券業 務 兼 営 禁 止 で あ った。 そ して この提 案 は、 後 述 の よ うに、 新 しい 「証 券 取 引法 」 に採 り入 れ られ る こ と にな る が、 これ が そ の後 長 く銀 行 界 と証 券 界 との 対 立 ・論 争 の 種 に なつ た、 有 名 な 証 券 取 引 法 第65条 で あ る。 こ う して新 しい証 券 取 引法 は、 昭 和23年3月 、 国 会 に上 程 され 、 一 部 修 正 の うえ 翌4月6日 に成 立 、 同年5年7日 か ら施 行 され た49)。この よ うな 経 過 か ら分 か る よ うに、 昭和22年 「証 券 取 引法 」 は 実 質 的 に は施 行 さ れ る こ と な く、 昭 和23年 「証 券 取 引 法 ⊥が これ に と って 代 わ った。 2)昭 和23年 「証 券 取 引 法 」 の 内 容 以 上 の よ うに して 成 立 した昭 和23年 「証 券 取 引 法 」 は、、22年の 旧 証 券 取 引 法 で は政 令 で規 定 す る こ と に な って い た も の の大 部 分 を法 律 中 に 取 り入 れ た た め、 条 文 数 は本 文 の み で210条 と い う膨 大 な も の にな った。 そ の 内容 は、投 資 家 の保 護 、 証券 取 引 の公正 、 証 券 流 通 の 円滑 化 を 眼 目 と して(第1条) ア メ リカの 証 券 制 度 を 大 幅 に採 り入 れ た もの で あ った。 そ して この 法 律 は、 そ れ ま で の 日本 の証 券 市 場 を 大 き く変 貌 させ る こ と にな った 。 そ の 意 味 で この証 券 取 引 法 は 、 ま さに 「新 しい証 券 市 場 の幕 開 け」 を 告 げ る もの で あ った とい う こ とが で き る。 同 時 に この 証券 制度 は、 日本 の金 融 の あ り方 に及 ぼ した 影 響 も大 きか った 。 以 下、 新 しい証 券 取 引法 の主 要 な概 要 とそ れ に 関連 す る若 干 の事 項 につ いて 、説 明 を して お きた い。 イ.証 券 業 の 内 容 同 法 は まず 証 券 会 社 の定 義 と して 、 「銀 行 、 信 託 会 社 そ の他 政 令 で 定 あ る金 融 機 関 以 外 の者 が 左 に掲 げ る行 為 の一 を な す営 業 を い う」 と して お り、 「左 に掲 げ る行 為 」 と して 次 の六 つ を あ げ て い る(第 2条 第8項)。 ① 有価 証 券 の 売 買 ② 有価 証 券 の 売買 の媒 介、 取 次 ま た は代 理 ③ 有 価 証 券 市 場 に お け る売 買 取 引 の委 託 の媒 介 、 取 次 ま た は代 理 ④ 有 価 証 券 の 引受 ⑤ 有 価 証 券 の 売 出 ⑥ 有 価 証 券 の 募集 ま た は売 出 の取 扱

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ロ.証 券 会社 と金 融機 関 の業 務 分 野 の 調 整 金 融 機 関 に よ る証 券 業 務 は原 則 的 に禁 止 され た(第65条)。 これ は、 ア メ リカの 制 度 を採 用 した も の で、 戦 後 に お け る金 融 と証 券 の関 係 に決 定 的 な影 響 を及 ぼ した問 題 な ので 、 次 の 節 で 改 めて 取 り上 げ る こ とに しよ う。 な お これ に関 連 して 、 証 券 会 社 が 社 債 募 集 の受 託 会 社 に な る こ とは 禁 止 され(第 45条)、 そ の た め社 債 募 集 の委 託 を受 け る こ とが で き る の は、 銀 行 と信 託 会 社 に限 られ る こ と にな っ た(昭 和13年 商法 中改 正 法 律 施 行 法 第5条)。 ハ.証 券業 の 開業 ・廃 業 証券 業 者 に つ い て の免 許 制 度 は廃 止 され 、 新 し く証 券 取 引委 員 会(後 述)に 登 録 す る制 度 が 採 用 さ れ た。 登 録 に つ い て は要 件 充 足 主 義 と した 。 す な わ ち、 証 券 業 者 と して の登 録 申請 に当 た って は① 登 録 申請 書 の 内 容 に虚 偽 や不 適 確 の事 項 が な い こ と、 ② 証 券 取 引 委 員 会 が 定 め る資 産 負 債 比 率(負 債 が 営業 用 純 資本 額 現 金 ・預 け金 等 流 動 資 産 よ り借 入 金 ・借 入 有 価 証 券 等 流 動 負 債 を 控 除 の20倍 を 限度 と して、 証 券 取 引委 員 会 が定 め る率)を 超 え な い こと、 が 確 認 さ れれ ば、登 録 申請 は受 理 され る こ と にな っ て い た(第28-29条 、 第31条 、 第34-35条)。 ま た会 社 が 消 滅 した場 合 や個 人 が死 亡 し た場 合 、証 券 業 を廃止 した場 合 は、単 に証 券 取 引委 員 会 へ の 届 出 に よ って登 録 が 抹消 され る こ とに な っ た(第62-63条)。 二.証 券取 引委員会 証 券 業 に つ い て の監 督 機 関 と して、 新 た に証 券 取 引委 員 会 が 置 か れ た。 こ の委 員 会 は 内 閣 総 理 大 臣 任 命 の3人 の委 員 に よ って構 成 され る行 政 委 員 会 で、 投 資 家 の保 護 や取 引 の公 正 を 確保 す るた め の 広 範 な権 限 を 有 して い た(第165-166条)。 と こ ろで 前 述 した よ うに 、22年 制 定 の証 券 取 引法 にお いて も証 券 取 引委 員 会 が設 置 さ れ て い た。 しか しこ の委 員 会 は行 政 委 員 会 で は な く、 証 券行 政 を 担 当 す る 部 署 は別 途 大 蔵 省 の外 局 と して証 券 局 が 設 置 さ れ る構 想 で あ っ た。 た だ、 こ の委 員 会 は 単 な る大 臣 の 諮 問機 関 で は な く、 い うな れ ば 性 格 の 曖 昧 な 存 在 で あ った50)。この点 に つ い て新 しい23年 の 証券 取 引 法 は、 証 券 取 引委 員 会 を公 正 取 引 委 員 会 と 同様 に、 行 政 委 員 会 と して 明 確 に位 置 づ けた。 この よ うな証 券 取 引委 員会 の性 格 の変 化 は 、 い う まで もな くGHQの 強 力 な意 向 の反 映 した もの で あ った。GHQの 構 想 は、 ア メ リカ の証 券 取 引 委 員 会(SecuritiesandExchangeCommision,SEC) を モ デ ル に した もの で あ った。 た だ 日本 側 に は 当初 か ら、 行 政 委 員 会 制 度 につ いて 、 ア メ リカ 式行 政 機 構 の直 輸 入 で あ る とか 、 内 閣 の 国会 に対 す る責 任 が不 明確 に な る とい った 批判 的見 解 が 強 く51)、そ う した事 情 を反 映 して、 講 和 条 約 発 効 後 の 昭 和27年(1952年)8月 、 こ の委 員 会 は廃止 され 、大 蔵 省 理 財 局 の一 部 と して 吸収 さ れ た52)。 ホ.証 券 取 引 所 証 券 取 引所 は、 証 券 業 者 に よ る会 員 組 織 の法 人 と され た(第80-81条)。 ま た設 立 の条 件 につ い て、 22年 の 証 券 取 引法 に お い て は免許 制 を採 っ て い た の に対 し、23年 の新 法 で は、証 券 業 者 の 場 合 と同様 、 要 件 充 足 主 義 に よ る登 録 制 を採 用 した(第82-83条)。 こ れ もア メ リカ の 制 度 を採 用 した もの で あ っ た。 政 府 は この 証 券 取 引法 が 施 行 さ れ た 昭 和23年5月 、GHQに 対 し証 券 取 引所 の再 開 を認 め る よ う 要 請 した が 、GHQは 当 時 の 日本 経 済 の 不 安 定 性 や証 券 市 場 の 状 況 か らな お時 期 尚早 と判 断 した よ う で あ る53)。結 局 、 取 引 所 の 再 開 は翌24年 に ず れ 込 ん だ。 す な わ ち、24年4月 に まず東 京 ・大 阪 ・名 古 屋 の3証 券 取 引 所 が 開設 さ れ(5月16日 開 業)、 次 いで7月 に は神 戸 ・京 都 ・新 潟 ・福 岡 ・広 島 の 取 引所 も業 務 を 開始 した。 へ.取 引 仕 法 証 券 売 買 取 引仕 法 につ いて 、 戦 前 は法 令 に詳 細 な規 定 が あ っ た。 これ に対 し22年 証券 取 引法 で は、

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証 券 取 引所 が それ を定 め政 府 の 認 可 を受 け る こ と に な っ て い た が、23年 の 改 正 法 で は それ を証 券 取 引 委 員 会 に届 出 るだ けで よ い こ とに な った(第108条)。 戦 前 の 取 引 仕 法 は実 物 ・清 算(短 期 ・長 期)54) の2種 で、 こ の う ち短 期 清 算 取 引 の比 重 が大 き く実 物 取 引 は少 なか った か ら、 そ の投 機 性 が 問 題 と さ れ る こ と も あ った。 新 しい 証 券 取 引 法 下 で の 取 引仕 法 で は、 戦 前 の 清 算 取 引 が な くな り、 普 通 取 引 (4日 目決 済 の取 引 で レギ ュ ラー ・ウエ イ ーregularway一 と 呼 ば れ た)を 中心 と した 実 物 取 引一 本 と な っ た。 これ は、 日本 の 証 券 取 引 に と って極 め て 大 きな 変 化 で あ った。 V.証 券 と金 融 1)証 券 業 務 と銀 行 業 務 の 分離 一 証 券 取 引 法 第65条 を め ぐ って 既 に述 べ た よ う に、23年 「証券 取 引法 」 の大 き な特 徴 の一 つ は、 証 券 会 社 の業 務 と金 融 機 関 の業 務 を 明 確 に分離 した こ とで あ った。 す な わ ち 同法 第65条 は、 銀 行 ・信 託 会 社 そ の他 政 令 で定 め る金 融 機 関 が 証券 業 務 を行 う こ とを 原則 と して禁 止 した の で あ る。 た だ し以 下 の業 務 につ い て は、 金 融 機 関 が 行 う こ とを認 め て い る(同 条)。 ① 国債 ・地 方 債 ・政 府 保 証 債 に 関 す る証 券 業 務 に つ い て は、 銀 行 等 の金 融 機 関 が これ を行 う こ とが で き る。 ② 銀 行 等 の金 融 機 関 が顧 客 か ら書 面 に よ って 注 文 を受 け て、 顧 客 の計 算 で 有 価 証 券 の 売 買 を 行 う こ とは例 外 と して認 め られ る。 ③ 銀 行 等 の金 融 機 関 が銀 行 法 、 信 託 業 法 そ の 他 の法 律 の定 め る とこ ろ に よ り、 投 資 の 目的 で 有 価 証 券 の売 買 をす る こ とは、 例 外 と して認 め られ る。 ④ 信 託 会 社 が信 託 業 法 の定 あ る と ころ に よ り、 信 託 契 約 に基 づ いて 信 託 を す る者 の 計 算 で 有 価 証 券 の売 買 を行 う こ とは例 外 と して認 め られ る。 証 券 会 社 と金 融 機 関 の業 務 分 野 を定 め た証 券 取 引 法 第65条 の 内容 は以 上 の よ うな もの で あ った が、 そ の後 も しば しば問題 に な った の は有 価 証券 引受 につ い て であ った。 実 は戦 前 の 日本 で引 受業 務 を行 っ て き た の は主 と して銀 行 と信 託 会 社 で あ り、 と くに戦 時期 の金 融 統 制 の 下 で は引 受 業 務 は 銀行 の 独 占 とな って い た55)。 した が っ て新 しい 証 券 取 引 法 の 規 定 は、 証 券 会 社 と金 融 機 関 の関 係 を 大 き く変 え る こ とを意 味 す る もの で、 事 実 、 そ の後 の金 融 機 関 の 証 券 関連 業 務 は極 め て 限定 さ れ た もの に な った。 この よ うな証 券 業 務 に 関す る銀 行 ・証 券 の 分 業 制 度 は、 前 述 の よ う に、 ア メ リカ の 制 度 を導 入 した もの で あ った。 す な わ ち ア メ リカ にお いて も、1933年 の銀 行 法(BankingAct)が 制 定 され るま で は、 多 くの商 業 銀 行 が金 融 ・証 券 双 方 の広 範 な 業 務 を営 ん で い た が、1930年 代 初 期 の 大恐 慌 の 際 に、 証券 業 務 に深 入 り して い た多 くの銀 行 が破 綻 に陥 っ た とい う反 省 か ら、1933年 銀 行 法(一 般 に 、 グ ラス ・ ス テ ィー ガ ル法 一Glass-SteagallAct一 と呼 ば れ る)に よ って 、 銀 行 の証 券 業 務 は厳 し く制 限 され る こ とに な った。 この よ うな事 情 か ら分 か る よ う に、 グ ラ ス ・ス テ ィー ガル 法 は銀 行 の 預 金者 保 護 を確 実 にす る趣 旨 の もの で あ った。 しか し既 に述 べ た よ うに、 そ れ ま で 日本 の 銀 行 ・信 託 会 社 は証 券 引 受 業 務 で 中 心 的 役 割 を果 して い た か ら、23年 の証 券 取 引法 に よ って株 式 ・社 債 の引 受 業 務 を禁 止 され た こ と に強 い不 満 を 持 った の は 当然 で あ る。 同時 に、 当 時 の 証 券 業 者 数821社 、 そ の資 本 金 合 計 が 僅 か10億 円 にす ぎ な い証 券 界 に、 果 曳 て証 券 引受 業 務 を任 され る か と い っ た危 瞑 の念 もあ った56)(ち な み に、 昭和23年 末 の全 国銀 行75 行 の資 本 金 総 額 は147億 円で あ る)。23年 の証 券 取 引 法 公 布 を前 に して 昭 和23年4月 、 全 国 銀行 協 会 連 合 会(全 銀 協)が 大 蔵 大 臣 に 「証 券 取 引 法 改 正 案 に対 す る意 見 書 」57)を提 出 し、 第65条 の 施 行 延 期

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を要 望 した の は、 そ う した 声 を 代弁 した形 にな って い る。 す な わ ち この意 見 書 は、 銀 行 業 務 と証 券 業 務 とを分 離 す る と い う立 法 趣 旨 に は賛 成 で あ る と しな が らも、 い ま直 ち に銀 行 が証 券 業 務 か ら手 を 引 け ば、 証 券 市 場 、 な か で も社債 市場 の発 展 に大 きな打 撃 を与 え 、 ひい て は企 業 の資 金 調 達 難 か ら 日本 経 済 の再 建 に重 大 な影 響 を 及 ぼ す、 と して い る。 証 券 取 引法 は 「成 立 の 日か ら三 十 日を経 過 した 日」 か ら施 行 す るが、 第65条 につ いて は 「施 行 の 日か ら六 箇 月 を経 過 した 日か ら、 これ を施 行 す る」(附 則 第1条)と な って い た 。 全銀 協 の意 見 書 は以 上 の観 点 か ら、 この施 行 日を延 期 す る こ とを 求 め た も ので あ っ た。 全 銀 協 は 同年9月 、 持株 整 理 委 員 会 の 巨額 の株 式 放 出 、 金 融機 関再 建 整 備 法 ・過 度 経 済 力 集 中排 除 法 に基 づ く発 行 株 式 の 消化 、 ま た は新 規 社 債 の発 行 に つ いて 、 当面 は銀 行 ・信 託 会 社 の 活動 が不 可 欠 で あ る と して、 再 び大 蔵 大 臣 に第65条 の施 行 を1年 間 延 期 す る よ う求 めた58)。しか しこ の よ うな銀 行 側 の 要 求 は結 局 実 現 せ ず、 証 券 取 引法 第65条 は 昭和23年11月7日 か ら施 行 さ れ た。 こ う'して証 券 業 務 と銀 行 業 務 の 分 離 は、 戦 後 に お け る 日本 の金 融 シス テ ム の 中 に定 着 して い った。 とは い え、 これ で こ の 問 題 が す っ き りと解 決 した わ け で は な く、 そ の後 も長 く尾 を ひ くこ とに な る。 2)直 接 金 融 と間接 金 融 企 業 金 融 を め ぐる証 券 と銀 行 の 関係 は、 マ ク ロ的視 点 か らす れ ば、 直 接 金 融 と間接 金 融 の 問題 で あ る。最 も早 く資本 主 義 経 済 を発 展 させ た イ ギ リス で は、 企業 の外 部 資 金 調 達 の うち、 長 期 資 金 ・設 備 資金 につ い て は証 券 市 場(資 本 市 場)で 賄 われ 、 短 期 の 運転 資 金 につ い て の み銀 行 に依 存 す る、 とい うの が伝 統 的 な考 え方 で あ った。 つ ま り、 設 備 資 金 金 融 は直 接 金 融 方 式 に よ っ て、 ま た短 期 金 融 、 と くに商 業 金 融 は 間接 金 融 方 式 に よつ て 行 わ れて き た。 した が って イ ギ リス の銀 行 は典 型 的 な商 業 銀 行 (cornmercialbanks)で 、 この こ とは1950年 代 まで の ロ ン ドン手 形 交 換 所 加 盟 銀 行(Londonclear-ingbanks)が 事 実 上 、 定 期 性 預 金 を受 入 れ な か つ た こ とに表 れ て い る59)。ア メ リカ の銀 行 は これ ほ ど徹 底 して は い な い が、 直 接 金 融 ・間 接 金 融 の 関 係 は イ ギ リス と類 似 して い る。 この よ うに、 英 米 流 の考 え 方 に よれ ば、 厂銀 行 」(banks)と い うの は、 預 金 と して 受 入 れ た 資 金 を 短 期 に運 用 す る金 融 機 関 で あ る。 長 期 貸 出 は リス クが 大 き い か ら、 預 金 を 原 資 とす る銀 行 が 長 期 貸 出 を行 うの は、 健 全 な銀 行 の あ り方 で はな く、 預 金 者 保 護 に反 す る行 動 で あ る、 とい う こ と にな る。 し か し長 期 資 金 ・設 備 資 金 の 調 達 が 直 接 金 融 方 式 に よ るべ き だ と して も、 そ の 前 提 と して 証 券 市 場 が 必 要 で あ る。 さ らに また 証 券 市 場 が 成 立 す るた め の 条 件 と して、 流 動 性 を 犠 牲 に して も高 利 を 求 め る資 金 や リス ク負 担 を 覚 悟 しな が ら高 利 を 求 め る資 金 の 蓄 積 が な けれ ばな らな い 。 そ う した 資 金 の 供 給 源 は、 富 裕 層 で あ った り、 年 金 ρ保 険 とい った 機 関 投 資 家 で あ る。 と こ ろが 日本 や ドイ ツ の よ うに 、 資 夲 蓄 積 が 乏 しい段 階 に あ った後 進 資 本 主 義 国 で は、 そ う した資 金 の供 給 を求 め る こ とが で きな か った。 つ ま り、 証 券 市 場 が 成 立 す る条 件 を 欠 い て い た の で あ る。 結 局 、 ドイ ツで は証 券 会 社 が誕 生 す る こ と な く、銀 行 が 証 券 業 務 を兼 営 す る金 融 シス テ ム、つ ま りユ ニ バ ー サ ル ・バ ンキ ング(universalbank-ing)を 生 ん だ。 これ に 対 し日本 で は、 徳 川 時代 か ら米 手 形 の流 通 市 場 が 成 立 して お り、 これ が基 礎 に な って、 明治 初 年 に株 式 取 引所 と証 券 業 者 が誕 生 した60)。しか しそ の後 の 日本 経 済 の 発 展 を金 融 面 か ら支 え たの は、 銀 行 を 中心 とす る 間接 金 融 方 式 に よ る資 金 供 給 で あ った 。 こ う した背 景 を持 つ 日本 の銀 行 は、 イ ギ リ ス の よ うな 商業 銀 行 に徹 す る こ とは で きず 、 長 期 金 融 に も従 事 す る ミッ クス ド ・バ ンキ ン グ(mixed banking)の 形 を と る こ とに なつ た。 しか し、 銀 行 の健 全 性 維 持(soundbanking)の 観 点 か らす れ ば、 こ れ は必 ず し も望 ま しい こ とで は な い か ら、 普 通 銀 行 の長 期 金 融 の負 担 を軽 減 す る た め に、 日本 興 業 銀 行 の よ うな長 期 金 融 専 門 の金 融 機 関 が 必 要 で あ る とさ れ た。 こ う して、 英 米 の よ う な先 進 国 と

参照

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