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English and Japanese metaphors: an analysis ofrecognizing death"
教科・領域教育専攻 言語系コース(英語) 松 本 健
第
1章 序 論 1.1.研究の背景生きてゆくうえで避けて通れない現象として,
「死」とし、うものがある。しかし,必ず訪れる ことが分かっている現象にもかかわらず,
r
死」 というものは十分に理解されていない。辞書と はことばの意味が記されているものであり,そ のことばの概念を理解するために利用されるも のである。しかし,r
死」に関する記述があるに も か か わ ら ず 死jの瑚平は十分にされていな し、。抽象的な概念を理解する言語的手段として,
メタファーがある。メタファーとは抽象的な概 念を具体的にたとえることを通して瑚草しよう
とするものであり,
r
愛jや「人生」といった抽 象的なものを理解するために様々な言語におい て用いられている。「死」という抽象的な概念を 瑚卒するためにもメタファーが用いられること が予測されるが,r
死」のメタファーに関する研 究はあまりされていない。1.2.研究の目的
本研究では,辞書等では瑚手が十分にできな い「死
J
としづ概念にっし、て,認知言語判句ア ブローチにより,英語において産出された「死」に関するメタファー(比時表現)の分析を通して
「死
J
をどのようにとらえ,理解しようとして いるかを解明する。また,文化背景の異なる英 語, 日本語のメタファーの比較をし,相違点を 明らかにする。指導教員 員 野 美 穂
第
2章先行研究 2.1.メタファーに関して比時表現は頻繁に利用されている。比喰表現 とは,あるものを別の何かでたとえるという表 現手法である。比輸とは通常の表現を修飾する ために故意に別の表現を用いるものであり,本 来の語義とは異なる意味で用いられること(転 識が比喰であることの条件となる。そのうちメ
タファーの定義は「類似性に基づく比喰」であ る。二つのものの聞の共通項を見つけることに より,あるものを通して別のものを理解するこ とが可能となる。そして意味瑚平において,メ タファーは何らかの概念領域を別の概念領域の 観点から理解することを可能にしてくれる。
我々人間の概念形成になくてはならないもので あり,ときに抽象的な概念を理解する際の手助 けをするとしづ側面をもち愛」や「人生」と いった抽象的な概念を瑚草する際にも大きく貢
献する。
2.2.
r
死」のメタファーに関する研究石 丸 包
007)は英日の詩の分析により「死」の 輔手,とらえ方を分析。 Bultnick(1998)は辞典 を 用 い て 死jに関する比輸表現をレイコフ (198ωのものをもとに「移動J
,r
眠りJ
,r
喪失」などの基本概念メタファーを提示し,それらに 分類。 Bultnik(1998)の分類カテゴリーはメタ ファーの傾向分析に有効で、あり Cong包014) やSolheim包014)は辞書や新聞記事の中のメ
タファーをそれらのカテゴ、リーを用いて分析し
− 208 − た。
2.3.課題点
メタファーに関する研究として,
r
愛」や「人 生」についてのものはあるが「死」についての ものは少なし L そして,英語と日本語を一角姐句 なデータベースを用いて比較を行ったものはな く,さらに,英語のメタファーの基本概念メタ ファーに分類をされてはいるが, 日本語の基本 概念メタファーについて言及されているものは ない。第
3章 調 査3.1.英語の「死」のメタファー
英語コーパス
( c o c
A)で「死」に関するメタ ファーを検索し, 210の文をメタファーとして 検出した。3.2.日本語の「死jのメタファー
日本語コーパス(BCCWJ)で、「死」に関するメ タファーを検索し,60の文をメタファーとして 検出した。
3.3.
r
死」のメタファーの分類検出されたそれぞれのメタファーを Bultnik (1
9 9 8 )
により提示された8
つのカテゴリーに分 類した。当てはまるものの中では英語では「死」を移動ととらえる傾向が,日本語では「死」を 死者の気もちを考えながら作るという傾向があ
ることを示した。
また,既存のカテゴリーに当てはまらない分 も多くあり,検出されたメタファーの
5%
を上 回る数の文をもっ集合体があればそれを新たな カテゴリーとして提示することとした。結果として,英語では「死は人間である
J
,r
死は通過 点であるJ
,r
死は最終地4
主であるJ
,r
死ぬこと は生きることであるjとしづ四つの新たなカテ ゴリーを, 日本語では「死ぬことは生きること であるJ
,r
死は通過点であるJ
,r
死は無で、ある」という三つの新たなカテゴ、リーを提示し丸 3.4.考察
英語と日本語の「死」に関するメタファーで は共通点もあるが傾向が異なるということがわ かった。その背景として,メタファーの形成に 影響を及ぼす文化が深くかかわっていることが 分析の結果と日欧対照イメージ辞典により証明 された。異なる文化を背景に持つ二つの言語の
「死」に関するメタファーを分析することによ り,その傾向の考察と多角的な「死」の概念理 解へのアプローチを示した。
第
4章 結論 4.1.結論本研究では持吾と日本語の「死」に関するメ タファーを幅広い出展を含むコーノ〈スより検出 し
, B叫tnik(1998)により提示された8つのカテ ゴリーに分類した。その結果それぞれのメタフ ァーの傾向を提示することが出来た。また,英 語と日本語のメタファーのより精度の高い分類 のために新たなカテゴリーを提示した。抽象化,
カテゴリー化を進めることにより「死jの概念 をより多くの人がより簡単に理解できるように なることに貢献した。
4.2.今後の課題
今回の研究では英語と日本語のメタファーの 分析を行ったが,より正確に「死