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デジタル技術を用いて製作した閉塞性睡眠時無呼吸用口腔内装置の適合性および維持力に関する検討

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Academic year: 2021

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(1)睡 眠 口 腔 医 学. . Journal of Oral and Sleep Medicine. January 2021. 〈原著〉受付日:2020 年 9 月 28 日,採択日:2020 年 11 月 11 日. デジタル技術を用いて製作した閉塞性睡眠時無呼吸用口腔内装置の 適合性および維持力に関する検討 相澤なみき 1,2),小 川  徹 1),原 田 貴 之 1,2),佐々木啓一 1). Fitness to dental arch and the retention force of oral appliances for  obstructive sleep apnea manufactured using digital technology AIZAWANamiki1,2),OGAWAToru1),HARATATakayuki1,2),SASAKIKeiichi1) . Objectives :Thisstudyaimedtoassesstheefficacyofadigitalmanufacturingprocessincludingopticaldigitizing. and 3-dimensional(3D)additive manufacturing for fabricating oral appliances(OAs)for obstructive sleep apnea. FitnesstodentalarchandtheretentionforceofOAswerecomparedbetweenOAsmanufacturedusing3Dprinting with photopolymerizable resin and OAs manufactured using the conventional method with heat-polymerized acrylic resin.. Methods :DigitallymanufacturedOAsweremadeofphotopolymerizableresinusinga3Dprinter(DWSDS3000,. DWS, Italy)based on the digital morphological data of the experimental dental cast(Nissin, Tokyo), which were optically obtained by TRIOS(3Shape, Denmark). As a control, OAs were manufactured using a heat-polymerized acrylicresin(Acron,GC,Tokyo) onaplasterdentalcastmadefromtheimpressionoftheexperimentaldentalcast (Nissin, Tokyo). OAs of the upper and lower arches in both groups(digital and conventional)were manufactured separately, and their inner surface fitness and retention force to the experimental dental cast were evaluated. The fitnessoftheOAwasevaluatedbyassessingcoincidenceoftheopticallyscannedimagesoftheinnersurfaceofthe OA and the dental cast. Retention force was measured using a tensile test, in which the OA was worn on the experimental dental cast. To evaluate the influence of combining the upper and lower arches, the upper and lower arches of OAs separately manufactured were attached with acrylic resin on the articulator in both groups. Additionally,one-pieceOAsweremanufacturedby3Dprintingtomergetheupperandlowerpartsonthesoftware. ThefitnessoftheOAstothedentalarchesonthecastwascomparedamongthethreegroups. . Results : The fitness of digitally manufactured OAs was significantly lower than that of the conventionally. manufactured OAs. The retention force of the digitally manufactured OAs was significantly higher than that of the conventionally manufactured OAs. The fitness of one-piece OAs tended to be lower than that of OAs manufactured separately. . Conclusion : The results show that OAs manufactured using digital technology did not fit as accurately as. conventionally made OAs. This could be the result of the polymerization shrinkage of photopolymerizable resin. FurtherdevelopmentofthemanufacturingprocessesandmaterialsfordigitalfabricationofOAsisrequired. Key words : oralappliances (OAs) ,obstructivesleepapnea (OSA) ,photopolymerizableresin,3Dprinter,digitaltechnology . (口腔内装置,閉塞性睡眠時無呼吸,光硬化樹脂,3 次元光造形装置,デジタル技術). . . 1) 東北大学大学院歯学研究科口腔システム補綴学分野(主任:佐々木啓一教授) (DivisionofAdvancedProstheticsDentistry,TohokuUniversityGraduateSchoolofDentistry (Chief :Prof.SASAKIKeiichi) ) 2) 東北大学病院診療技術部歯科技術部門(主任:菊池雅彦教授)  (DentalLaboratoryTohokuUniversityHospital(Chief  :Prof.KIKUCHIMasahiko) ). 78.

(2) 睡 眠 口 腔 医 学 Journal of Oral and Sleep Medicine. デジタル技術を利用した OSA 用口腔内装置の適合・維持の検討 . Vol. 7 No. 2. 肥満,顎形態,咽喉頭の異常,鼻疾患,睡眠体位などの形. 抄 録. 態的異常と上気道筋群の活動低下,うっ血,換気調節機構. 目的:本研究では,デジタル技術を応用した閉塞性睡眠. の異常などの機能的異常とが挙げられている4).. 時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)用の口腔内装. 本疾患の治療には,顎形態や軟口蓋等の形態異常に対す. 置(oral appliance;OA)の製作法を検討し,その適用性. る外科的治療法と保存的治療法があり,主な保存的治療法. を評価することを目的とした.光学印象のデータから 3 次. として,持続的陽圧(CPAP)と歯科で対応を行う口腔内. 元光造形装置を用いて光硬化樹脂製の OA を製作し,適合. 装置(oralappliance;OA)を用いた方法がある.OA の代. 性および維持力を,従来法にて製作した OA と比較した.. 表的なものとしては,下顎前方整位型(Mandibular reposi-. 方法:デジタル技術による OA は,実験用模型を口腔内. tioningappliance:MRA)と舌前方保持型(tongueretaining. スキャナーにて光学印象し,ソフトウェア上で設計した後,. device:TRD)などが挙げられる4).MRA は,下顎を前方. 3 次元光造形装置および光硬化樹脂を用いて造形した.従. 位に固定することで舌・舌骨が下顎骨とともに前方へ移動. 来法による OA は,実験用模型をアルジネート印象して製. し,形態的に気道を拡張させるだけでなく,機能的にも舌. 作された石膏模型上で,加熱重合アクリルレジンを用いて. 筋群・舌骨上筋群の緊張を高め 5︲7),舌根部の沈下を防ぐ機. 製作した.それぞれの方法により,上下顎別個で製作した. 能を有するものであり,上下顎一体型や上下分離型などの. OA の適合と維持力を比較した.適合の評価は OA 内面を. さまざまな装置が開発されている4,8).TRD は,舌を口腔外. スキャニングし,画像計測ソフトウェアにて,実験用模型. に作った中空のバルブ内に押し付けることで,舌が陰圧下. と重ね合わせることで行った.維持の評価は,実験用模型. で吸引保定されるものであり,就寝時に舌を前方固定し,. に装着した OA を用いて引張試験を行った.次に,上下顎. 後方沈下を防止,気道の確保を行う 9,10).どちらの装置も. 一体型での適合精度を評価するため,上述により上下顎別個. OSA 症状の改善効果は報告されているが,日本では MRA. で製作した OA を常温重合レジンにて一体化したものと,ソ. が保険適用であるため広く用いられている.さらに患者の. フトウェア上で一体化し造形した OA を製作し,比較した.. コンプライアンスも高いとされている11).. 結果:適合精度に関しては,デジタル技術を用いて製作. OA に 用 い ら れ る 材 料 な ら び に 製 作 法 は 多 岐 に 亘 る. した OA は,従来法で製作した OA と比較し上下顎とも有. が 4,8,12,13),現在の一般的な OA(口腔内装置 1:保険名称). 意に低かった.一方,維持力に関しては,デジタル技術で. は,上下顎歯列の印象採得を行い,加熱重合レジンを用い. 製作した OA は従来法で製作した OA と比較し,上下顎と. て上下顎歯列別個に歯列を被覆するアプライアンスを製作. も有意に高かった.ソフトウェア上で一体化して造形した. し,その後,口腔内にて下顎前方位で上下顎のアプライア. 上下顎一体型 OA の適合精度は,上下顎別個に製作したの. ンスを常温重合レジンにて固定するものである.しかしな. ち常温重合レジンにて一体化したものと比べ低くなる傾向. がら,製作時のフラスク埋没やレジン填入は煩雑で作業時. を示した.. 間を要し,製作されたアプライアンスの適合精度も重合歪. 考察・結論:デジタル技術で製作した OA は従来法の適. みによる影響を受ける14).また装置の効果には,上下顎固. 合精度には及ばなかった.これは光硬化樹脂の重合収縮が. 定時の下顎位が非常に重要となるが,適切な位置に口腔内,. 原因と考えられ,そのために維持力が大きくなったものと. もしくは口腔外で正確に固定することは実際には難しい.. 推察された.今後,精度の向上など課題はあるものの,製. また上下顎アプライアンスの固定には通常,常温重合レジ. 作過程の見直しや材料選定,削り出しによる製作法の検討. ンを使用するが,硬化時間が長いことや,強度不足や変色,. などより,デジタル技術の OSA 用 OA 製作への応用の可. 吸水による劣化が問題として挙げられる13,15,16).また他の. 能性が示唆された.. 方法として,熱可塑性樹脂を用いて製作する場合(口腔内 装置 2:保険名称)や既製の boil & bite タイプの装置も市. 緒 言. 販されているが,熱可塑性樹脂による装置は,長期使用に. 睡眠時無呼吸(Sleepapnea)は,高血圧や虚血性心疾患,. よる材料の変形,変色など耐久性に問題があり,熱可塑性. 肺高血圧症などの循環器系疾患の基礎疾患として,また日. 樹脂と常温重合レジンの接着不良による剥離や破折も危惧. 中の強い傾眠による交通・運輸事故や産業労働事故の原因. される8,12,17,18).また boil&bite タイプの装置はカスタムメ. として,社会的関心が高まっている. .睡眠時無呼吸は,. 1︲3). イド型の OA と比べ,コンプライアンスは低いことが報告. 閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)と. されている19).. 中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea;CSA)とに大. 一方,近年 CAD/CAM システムをはじめとしたデジタ. 別され,OSA が 9 割程度を占めている.OSA は,睡眠時. ル技術の発展は目覚ましく,多数のシステムが臨床で活用. に舌根部が咽頭後壁に向かって沈下し,気道が閉塞されて. されている.まず CAM については,先行技術の切削加工. 呼吸停止や低呼吸を生ずる病態である.その原因としては,. では不可能な形状も製作できる積層造形技術による加工も . 79.

(3) 睡 眠 口 腔 医 学. デジタル技術を利用した OSA 用口腔内装置の適合・維持の検討 . Journal of Oral and Sleep Medicine. January 2021. 取り入れられ,現在では当該技術はインプラントシュミ. ( 図 1b,c).STL デ ー タ は, モ デ リ ン グ ソ フ ト ウ ェ ア. レーション用モデルや手術用サージカルガイドの製作にも. (SensAble Modeling Dental Lab Tools,スリーディー社,. 応用されている .次に CAD に関しては,CAD ソフトの. 神奈川)で粒子サイズ 0.1 mm のボクセルデータに変換し,. 向上により,従来のワックスアップ法と遜色ない形態の付. 編集を行った.OA の着脱方向は STL データを SensAble. 与が可能で,速やかに,かつ細やかな設計を行うことが可. Modeling Dental Lab Tools にインポートする際に設定し. 能であるため,鋳造用パターンやテンポラリークラウンの. た.上顎は切歯点および両側第一大臼歯近心舌側咬頭を結. .さらに,口腔内スキャ. ぶ面と垂直になる方向へ,下顎は切歯点と両側第二大臼歯. 20). 製作にも応用が始まっている. 21, 22). ナーを用いた光学印象の技術の向上も目覚ましく,正確で. 遠心頬側咬頭を結ぶ面と垂直になる方向へ設定した.. 詳細な歯列データが,極めて簡単に立体形状データとして. ブロックアウトは Fill Style「Fill To Plane」の機能を用. STL データに出力されるようになり,これにより用途拡大. いて , 着脱方向に沿って投影法で行った(図 2a).上下顎の. が進んでいる.従来の印象採得から補綴装置製作までの一. OA のデザインは従来の製作法に順じ,外形線はサベイラ. 連の作業をデジタルで完結させる方法も可能であり,それ. インを基準とし,上顎では口蓋側のみ歯頚部から 2~5 mm. に伴い光硬化樹脂などの材料性能も向上してきている23).. 程度伸ばした形態とした.厚みはパラフィンワックス 1 枚. そこで本研究では,前述した従来法で製作した OA およ. 分の厚みである 1.4 mm に設定した(図 2b).デザインした. びデジタルにより製作した OA の適合性と維持力について. 上下顎 OA のボクセルデータは,3 次元光造形に用いるた. 検討することを目的とし,実験用模型を用いて製作した. めに STL データへ変換し,保存した.保存時のポリゴン数. OA について,2 つの検討を行った.検討 1 として,口腔内. は,上顎 OA がおおよそ 26 万,下顎 OA が 20 万であった.. スキャナーで実験用模型を光学印象し,得られた STL デー. 上 下 顎 OA の STL デ ー タ を 用 い て, 専 用 ソ フ ト ウ ェ ア. タを用いてモデリングソフトウェアで上下別々に OA を設. (NAUTA+,DWS 社,イタリア)にて,造形方向の決定. 計した.設計データから,3 次元光造形装置を用いて光硬 化樹脂製の上下顎 OA を製作し,完成 OA の適合精度およ び維持力を,従来の加熱重合法で製作した同形態の上下顎 OA とそれぞれ比較した.検討 2 では,デジタル技術を用 いて上下顎 OA をデジタル方式で採得した下顎位にて一体 化する方法,および従来法により上下顎 OA を常温重合レ ジンにて一体化する方法で製作した上下顎一体型 OA の適 合精度を比較した.. 研究方法 1.検討 1.上下顎の OA 製作と適合精度および維持力の 検討 1)デジタル技術を用いた OA の製作 口腔内を想定した実験用模型には,レジン製顎模型(D15AU/AL,ニッシン,東京)を用いた(図 1a). 実験用模型を口腔内スキャナー(TRIOS3,3Shape,デ ンマーク)にてスキャニングし,STL データを作成した. 図 1 実験用模型のスキャニング a:実験用模型 b:TRIOS3 c:スキャン画像. 図2 a,b:DentalLabTools によるブロックアウト,OA のデザイン c:NAUTA+ によるサポートの設定. 80.

(4) 睡 眠 口 腔 医 学 Journal of Oral and Sleep Medicine. デジタル技術を利用した OSA 用口腔内装置の適合・維持の検討 . Vol. 7 No. 2. と,サポート・ベースプレートの設定を行った(図 2c).. 同一の着脱方向とした.上下顎 OA のデザインはデジタル. サポートとベースプレートは,ソフトウェア上のオート設. 法と同様にし,パラフィンワックス(GC 社,東京)1 枚を. 定に従った.NAUTA+ で作成したデータは,専用ソフト. 圧接した(図 4b) .ワックスアップした上下顎 OA は通法. ウェア(FICTOR,DWS 社,イタリア)にて標準パラメー. により埋没(図 4c),加熱重合アクリルレジン(ACRON. ターでの出力を行い,3 次元光造形装置(DIGITALWAX. MC,GC 社,東京)を填入,加熱重合し,完成させた(従. 020D,DWS 社,イタリア)で造形した(図 3a,b).材料. 来法)(図 4d).. は光硬化樹脂(DS3000,DWS 社,イタリア)を用いた.. 3)上下顎 OA の適合精度および維持力の評価. 造形した上・下顎 OA はアルコールで洗浄し,紫外線硬化. 実験用模型歯列とスキャンパウダーを塗布した OA 内面. 装置(UVCURINGUNIT-S,DWS 社,イタリア)で 10 分. を TRIOS3 にてスキャニングした.取得した上下顎 OA 内. 間,2 次硬化処理を行い,完成させた(図 3c).この方法に. 面 の STL デ ー タ は 反 転 さ せ て, 画 像 計 測 ソ フ ト ウ ェ ア. よる製作をデジタル法と呼ぶこととする.. (GOM Inspect,GOM 社,ドイツ)で,実験用模型歯列の. 今回使用した 3 次元光造形装置は吊り上げ式で,そのシ. STL データと重ね合わせを行った.上顎 OA のマッチング. ステムは光硬化樹脂を入れた透明なアクリル容器の下から. は切歯点と両側第一大臼歯遠心頬側咬頭を基準とし,下顎. レーザー光を照射し,プラットフォームを徐々に上昇させ. OA のマッチングは切歯点と両側第二大臼歯遠心頬側咬頭. ながら光重合反応を積層させて製作する方法である.使用. を基準とした.適合の評価は,重ね合わせたデータの表面. した光硬化樹脂の主成分はメタクリレート系モノマーで,. 差異を算出することにより行った.カラーバー表示を設定. 医薬品医療機器等法(薬機法)でのクラスⅠ認証を取得し. することでの視覚的な定性評価とともに,表面差異を 0.2 mm. ている材料である.. 以上,0~0.2 mm,-0.2~0 mm,-0.2 mm 未満の 4 区分お. 2)従来法による OA の製作. よ び 0.1 mm 以 上,0~0.1 mm,-0.1~0 mm,-0.1 mm 未. 実験用模型をアルジネート印象材(アローマファインプ. 満の 4 区分に設定し,表面積の分布割合を算出することで定. ラス,GC 社,東京)で印象採得し,硬質石膏(ニュープラ. 量評価した.. ストーンⅡ,GC 社,東京)で,作業用模型を製作した.製. 維持力の評価に際しては,計測に先立ち硬質塩化ビニー. 作した作業用模型を用いて着脱方向を決定し,普通石膏. ル板を歯列に合わせてトリミングし,中央にフックを付与し. (ノリタケデンタルプラスター,ノリタケ,東京)で,ブ. たものを製作し, OA の咬合面に常温重合レジン(UNIFAST. ロックアウトを行った(図 4a).上下顎 OA の着脱方向は. Ⅲ,GC 社,東京)にて固定した(図 5a) .評価は,模型を. サベイヤーを用いて決定した.上顎は切歯点および両側第. 固定後,テンションゲージ(TK3000cN-G,中村製作所,東. 一大臼歯近心舌側咬頭を結ぶ面と垂直になる方向へ,下顎. 京)を用いて着脱方向に沿って引張試験を行った(図 5b) .. は切歯点と両側第二大臼歯遠心頬側咬頭を結ぶ面と垂直に. 引張試験は,各 OA につき 5 回行い,その平均値を算出し. なる方向へ設定することで,デジタル法で製作した OA と. て比較した.. 図3 a:3 次元光造形装置 DIGITALWAX020D b,c:造形した上下顎 OA. 図 4 従来法による OA の製作 a:作業用模型製作とブロックアウト b:上下顎 OA のワックスアップ c:埋没 d:完成した上下顎 OA. . 81.

(5) 睡 眠 口 腔 医 学 Journal of Oral and Sleep Medicine. デジタル技術を利用した OSA 用口腔内装置の適合・維持の検討 . January 2021. 2.検討 2.上下顎一体型 OA 製作と適合精度の検討. 下顎一体型 OA を製作した.ソフトウェアで上下一体に設. 1)上下顎一体型 OA の製作. 計し,一塊で造形したもの:すべてデジタル技術を用いた. 実験用模型を,口腔内での治療を想定し,目標とする下. 方法と,検討 1︲1)のデジタル法で製作した上下顎 OA を. 顎前方位で咬合器装着した.下顎位の設定は,2 mm のバ. 実験用模型に戻し,常温重合レジンで固定したもの:部分. イトフォークを装着したジョージ・ゲージ(Georgegauge,. 的にデジタル技術を用いた方法,検討 1︲2)の従来法で製. JM Ortho,東京)を用い,咬合平面に平行に約 5 mm 前方. 作した上下顎 OA を実験用模型に戻し,常温重合レジンで. 位とした.前方位にて咬合器装着した状態の実験用模型を. 固定したもの:従来法の 3 種類を製作した.すべてデジタ. TRIOS3 にてスキャニングし,顎間関係を記録した後,上. ル技術を用いた上下顎一体型 OA の製作法は,顎間関係を 記録した実験用模型を Dental Lab Tools に読み込み,検討 1︲1)で記す設計で上下顎 OA をデザインし,上下顎 OA 間 を連結することで一体型とした(図 6a).その後,サポー ト・ベースプレートをオートで設定し(図 6b),標準パラ メーターで造形した(図 6c).造形後,上下顎一体型 OA は ア ル コ ー ル で 洗 浄 し, 紫 外 線 硬 化 装 置(UV CURING UNIT-S,DWS 社,イタリア)で 10 分間 2 次硬化処理を行 い,完成させた(図 6d). 2)3 種類の上下顎一体型 OA の適合精度の評価 スキャンパウダーを塗布した上下顎一体型 OA 内面を TRIOS3 にてスキャニングし,STL データを作成した.作 成した STL データを反転させて顎間関係を記録した実験用 模型の STL データと重ね合わせを行った.マッチングは上. 図 5 維持力測定 a:フックを付与した上下顎 OA b:引張試験. 顎の切歯点と両側第一大臼歯遠心頬側咬頭を基準にした. 適合の評価は,上下顎一体型 OA 内面と上下実験用模型の 表面差異を算出することにより行った.また,カラーマッ. 図 6 すべてデジタル技術を用いて製作した上下顎一体型 OA a:DentalLabTools で上下顎一体型にデザイン b:NAUTA+ でサポートの設定 c:DIGITALWAX020D で造形 d:完成した上下顎一体型 OA. 82.

(6) 睡 眠 口 腔 医 学 Journal of Oral and Sleep Medicine. デジタル技術を利用した OSA 用口腔内装置の適合・維持の検討 . Vol. 7 No. 2. プにより定性的に評価した.. であった.従来法の上顎 OA は表面差異 0.2 mm 範囲内に. 3.統計処理. 91.3%,0.1 mm 範 囲 内 に 65.4%, 下 顎 OA は そ れ ぞ れ. 検討 1 については,上下顎それぞれのデータについて,2. 92.5%,67.6%であった.従来法はデジタル法と比較し,上. 群間(従来法とデジタル法)の比較には t 検定を用い,検. 下顎 OA ともに表面差異 0.2 および 0.1 mm 範囲内の割合が. 討 2 で は 3 群 間 の 比 較 を 一 元 配 置 分 散 分 析(one-way. 有意に高い値を示した(t 検定,p<0.05)(図 7a).カラー. ANOVA)および Tukey-HSD 検定にて多重比較を行った.. マップからデジタル法において表面差異の大きかった領域の. なお,危険率 5%を有意とし,統計解析ソフト(SPSS21.0,. 分布を観察してみると,上下顎 OA ともに臼歯部の頬側が模. IBM)を用いて行った.. 型に対してプラス方向,すなわち歯列に入り込むように収縮 する方へ,臼歯部の舌側が模型に対してマイナス方向,すな. 結 果. わち歯列から離れる方向への変化傾向を示した(図 7b) .. 1.上下顎 OA の適合精度と維持力. 2)維持力. 1)上下顎 OA の適合精度(OA 内面と実験用模型の表面. デジタル法の上顎 OA は 2621.7 g,下顎 OA は 1516 g で. 差異). あった.従来法はそれぞれ 489.9 g,598.6 g であり,デジタ. デジタル法の上顎 OA は表面差異 0.2 mm 範囲内に 80.2%,. ル法は従来法と比較し有意に高い値を示した(上顎:p<. 0.1 mm 範囲内に 43.8%,下顎 OA はそれぞれ 79%,49.2%. 0.01,下顎:p<0.05)(図 8).. 図 7 上下顎 OA の適合精度 a:上下顎 OA 内面と実験用模型の表面差異 b:カラーマップによる評価. . 83.

(7) 睡 眠 口 腔 医 学 Journal of Oral and Sleep Medicine. デジタル技術を利用した OSA 用口腔内装置の適合・維持の検討 . January 2021. 2.上下顎一体型 OA の適合精度(OA 内面と実験用模型. 従来法で製作した OA が 75.8%で高い値を示す傾向を認め,. の表面差異). 次 い で 部 分 的 に デ ジ タ ル 技 術 を 用 い て 製 作 し た OA が. 表面差異 0.2 mm および 0.1 mm 範囲内の結果を,図 9a. 74.4%,すべてデジタル技術を用いて製作した OA が 68.7%. に示す.統計学的に 3 群間に有意な差は認めないものの,. であった.0.1 mm 範囲内においても同様の傾向が認められ, それぞれ 48.8%,48%,40%であった(図 9a).また,カ ラーマップから,部分的にデジタル技術を用いた方法と従 来法では,歯列と装置内面の差異が上顎と比べ下顎におい て大きく確認された(図 9b).. 考 察 本研究は,これまでの OSA 用 OA の製作に関わる種々 の課題を解決すべく,近年様々な領域で進歩を遂げている デジタル技術を応用した OA の製作法について検討した. 具体的には,口腔内歯列を想定した実験用模型を用いて, 従来の方法とデジタル技術を用いて製作した各々の装置の 維持力や適合精度の評価・比較などの基礎的検討を行った. 1.研究結果 まず検討 1 として,上下顎 OA それぞれの適合精度と維 持力について検討したが,これは OSA 用 OA に限らず, デジタル技術のアプライアンス型装置製作への応用につい ての検討とも言える.まず適合精度に関しては,上下顎 図 8 引張試験の結果. OA ともにデジタル法は従来法の適合精度には及ばず,さ. 図 9 上下顎一体型 OA の適合精度 a:上下顎一体型 OA 内面と実験用模型の表面差異 b:カラーマップによる評価. 84.

(8) 睡 眠 口 腔 医 学 Journal of Oral and Sleep Medicine. デジタル技術を利用した OSA 用口腔内装置の適合・維持の検討 . Vol. 7 No. 2. らに維持力は従来法と比べ高かった.表面差異の大きかっ. に戻っていない位置で両者を固定するため,誤差がより生. た領域の分布をみると,上下顎 OA ともに臼歯部の頬側が. じることとなる.さらに,上下顎 OA の固定には常温重合. 模型に対してプラス方向に,臼歯部の舌側が模型に対して. レジンを使用しているため,その重合収縮による影響も加. マイナス方向に認められた.これは上下顎 OA のアーチが. わる.図 9b の上下顎一体型 OA 内面と実験用模型を重ね. 歯列内方方向へ収縮していることを示し,光硬化樹脂の重. 合わせたカラーマップの下顎歯列を観察すると,歯列の咬. 合収縮が主たる原因であると考えられる.光造形は一層ご. 合面がほとんどマイナスになっていることから装置の浮き. とに硬化させるため,その断面積が異なると硬化時の重合. 上がりが確認できる.一方,一体造形した OA は全てデジ. .また装置の大きさ. タルで完結させるため,上述による製作ステップで生じる. や厚みが大きくなるほどに誤差が大きくなる傾向があると. 誤差や常温重合レジンによる重合収縮の影響がない.この. されるため ,OA のような比較的大きな装置ではそれが. ことが,上下別々の評価では有意差を認めたにもかかわら. 著明になると考えられる.従来法では,OA 部のレジンは. ず,上下顎一体型とすると 3 群間に有意差を認めなかった. 模型上にて加熱重合するため,模型の存在により重合収縮. 要因として考えられる.. による変形はある程度抑えられるが,デジタル法では模型. 適合精度における他の要因として,口腔内スキャナーの. が存在せず OA 単体で光重合するため,従来法に比較して. 精度が挙げられる.本研究では TRIOS3 を用いた(表 1).. 重合収縮による寸法変化が大きくなったと推測される.. 動作原理として共焦点光学系を採用していることで高精度,. デジタル法による OA の重合収縮を抑える方法として,. 高解像度,高コントラストの画像を得ることが出来る.し. 臼歯部方向から造形する方法が考えられる.本研究では,. かしながら,スキャニングは術者や撮影手技によって精度. 前歯部方向から造形したが,臼歯部方向から造形すること. に影響を受けることや,口腔内スキャナー自体の撮影時の. で,始めに臼歯部の位置関係が固定され,全体的な内側へ. 誤差もあるといわれている28,29).口腔内スキャナーはカメ. の重合収縮はある程度,軽減できる可能性がある.また,. ラのサイズが小さく,一度に測定できる範囲が限定され,. 積層タイプの光造形は,造形物の配置(角度)やサポート. 随時測定したデータをつなぎ合わせ,数珠状に合成して. によっても精度に差が生じると考えられる .造形物の角. データ全体を構成し,STL データを作成するため,歪みが. 度によっては,積層ピッチによる凹凸(積層段差)が大き. 生じやすいとされ,口腔内スキャナーを用いた歯列全体の. く表れる部位が生じ,再現性が低下する.また角度を変え. 再現性に関する研究では,歯列弓の歪みが発生する結果も. ることで,サポートの位置や数が変わってくる.サポート. 報告されている30).今後,臨床応用に向け,誤差を小さく. の位置・数は造形中にモデルが落下しないこと,造形不良が. するための撮影方法の検討に加え,正確な操作方法の習得. 起きないことを考慮して決めるが,サポート痕が残ったり,. も必要である.. 収縮に差が生じて精度が低下する. 24, 25). 26). 26). サポート除去時に形状が損なわれたりする可能性があるた. さらに適合精度に関わる要因としては,3 次元光造形装. め,適合などに影響する部位を避けるなどの配慮も必要であ. 置 の 精 度 が 挙 げ ら れ る. 今 回 使 用 し た DIGITALWAX. る .これらの造形時の OA の配置やサポートの設定の検討. 020D はガルバノスキャナー方式と呼ばれる精度の高い造形. により,適合精度の改善が期待できると考えられる.. 方式を採用している(表 1).この方式は内臓モーターでガ. 検討 2 として行った上下顎一体型 OA の適合精度は,す. ルバノミラーと呼ばれる反射ミラーを動かすことにより. べてデジタル技術を用いて製作した OA,部分的にデジタ. レーザー光を走査させ,線状に硬化させていく.これによ. ル技術を用いて製作した OA,従来法で製作した OA の順. り,外周部をなぞるように重合するため,造形物表面に滑. に高くなる傾向を示した.すべてデジタル技術を用いて製. らかさを付与することが出来る.また,幅 50 μm のレー. 作した OA は,一体型製作で装置自体が大きいため,それ. ザー光を使用することで造形物を細部まで再現出来るとさ. に伴い重合収縮量も大きくなることから適合精度が低く. れている31).また DIGITALWAX 020D の精度をより発揮. 27). なったと考えられる. .. 24︲26). させるために専用ソフトウェアの NAUTA+ と FICTOR. 一方で,上下別々の OA ではデジタル法と従来法で有意. を適切な条件での正確な使用が必要である.NAUTA+ は. 差が出ていたにも関わらず,一体型にした場合,有意差が. 造形物のサポートの付与や,配置の決定を行い,FICTOR. 認められなかった.この理由としては,上下顎 OA の固定. は NAUTA+で製作したデータを加工に向けて出力するた. 方法の影響が考えられる.すべてデジタル技術を用いて製. めのソフトである.FICTOR は使用する材料に応じた標準. 作した OA を除く 2 群では,上下顎 OA を実験用模型に戻. パラメーターが設定されているが,必要に応じて設定を変. し,常温重合レジンにて固定するものである.結果 1︲1). 更することも可能である.3 次元光造形装置とソフトウェ. から分かるように,デジタル法と従来法で製作した上下顎. アをよく理解し,使いこなすことは,完成造形物の精度向. OA には変形があるため,各 OA は実験用模型へは厳密に. 上につながると考えられる.本研究結果から上下顎一体型. いうと完全には戻っていない.上下顎 OA それぞれが完全. OA は 3 群間で有意差が認められなかったが,精度向上な . 85.

(9) 睡 眠 口 腔 医 学. デジタル技術を利用した OSA 用口腔内装置の適合・維持の検討 . Journal of Oral and Sleep Medicine. January 2021. 表1 TRIOS3(口腔内スキャナー). DWS-020D(3 次元光造形装置). メーカー. 3M. メーカー. DWS. 光源. LED. 光源. SolidStateBluEdgeBE-1500c. 測定方法. 共焦点法. 積層方式. 画像タイプ. 画像重ね合わせ. 積層ピッチ. 10︲100. 出力データ. STL. 造形スピード. 0︲4300 mm/sec.. センサピクセル. 1280×870. 解像度. レーザースポット径:50 μm. 3D フレームレート. 20 fps. ファイル形式. STL など. ソフトウェア. NAUTA+ FICTOR. レーザースキャニング方式 (ガルバノスキャン). どの課題は明らかであるため,前述した課題を検討し,改. OA を装着させた後,患者に自力で前方保持をさせる,も. 善していくことで従来法と同程度またはそれ以上の精度の. しくはパラフィンワックスやバイトブロックにて上下を暫. 向上も不可能ではないと考える.. 間的に固定し,上下の OA 間に常温重合レジンを盛り固定. 2.デジタル技術の応用について. を行っているが,適切な位置に正確に固定することは非常. 本研究では,3 次元光造形装置と光硬化樹脂を使用した. に困難である.そのため,デジタル技術を利用して,適切. 製作法について従来法との比較を行ったが,切削加工機と. な前方位での正確な咬合採得ができ,その位置に一体型と. PMMA ディスクを用いた製作法も今後検討予定である.切. して OA を製作できれば臨床的に非常に有用な方法となり. 削加工は,均質安定したディスクを使用するため,重合収. 得るものであり,今後,咬合採得方法,つまり咬合位のス. 縮やサポートの付与などによる変形がない.さらには,紫. キャニング方法についてもさらなる検討が必要である.. 外線による変色の影響も比較的小さいため,医療用材料と して最近認可されたアプライアンス材料等を応用すること. 結 論. で,前述の理由などからより精度の高い OA 製作が可能と. デジタル技術を用いて製作した OA は従来法の適合精度. なると期待される.現在,さまざまな CADCAM,3 次元. には及ばず,これにより維持力が高くなったと考えられる.. 光造形装置,材料が開発されていることから,それぞれの. また,上下顎一体型 OA では,ソフトウェアにて上下顎. 原理や構造,特性を把握し,目的に合わせて選択出来るこ. OA を一体化し造形することは比較的容易に可能であった. とも重要であると考える.. が,適合精度は低くなる傾向を示した.これは光硬化樹脂. デジタル技術を応用した OA 製作は,精度の問題だけで. の重合収縮や製作法の影響によるものと思われ,今後,製. なく,口腔内で長期使用できる OA 材料が現在はほとんど. 作過程の見直しや材料選定,削り出しによる製作法,さら. ないため,実際の臨床では従来法による OA 製作が未だ主. には咬合採得法の検討により,デジタル技術の OSA 用 OA. 流となっている.補綴領域など歯科の他領域では,材料に. 製作への応用の可能性が示唆された.. 関して様々な開発が進んでいることから,OA 材料に関し ても,今後は質の向上や選択肢が増えると予想される.デ. 謝 辞. ジタルを応用した造形物の精度や物性が改善されることに. 本研究の遂行にあたり,ご教示,ご指導頂きました本学. より,治療工程・作業の簡略化だけでなく質の良い OA 製. 大学院歯学研究科口腔システム補綴学分野,横山政宣氏に. 作が可能となり OSA 患者の健康増進,QOL 向上につなが. 厚 く 感 謝 申 し 上 げ ま す. 本 研 究 の 一 部 は JSPS 科 研 費. るものと考えられる.. JP18K09652 による助成を受けた.. デジタル技術を応用した OA 製作のもう一つの課題は, 上下顎の位置固定方法である.本実験では予め決めた顎位 で実験用模型を咬合器に装着し OA 製作を行ったが,本来 は口腔内でバイトを決定し,その位置にてスキャニングす る必要がある.下顎位の設定は OA の治療効果や顎関節症 状等の副作用の惹起に直結するものであり,非常に重要な 治療工程である.現状では,口腔内にて上下別で製作した 86. 利益相反 著者全員利益相反なし.. 引用文献 1)Findley LJ, Unverzagt ME and Suratt PM. Automobile accidents involving patients with obstructive.

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参照

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