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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 邑 上 豊 隆

     学位論文題名

1 ―アミノシクロプロパン‑1 −カルボキシレートデアミナーゼ の部 位特異的変異法を用いた反応機溝解析

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  1‐アミノシ ク口プ口パン‑1‑カルボキシレート(ACC)は植物ホルモン・エチ レン生合成の鍵となる特異的な前駆体で、三員環を持っアミノ酸という特徴を 持っている。植物ではこの三員環の分解によってエチレンを発生する。土壌中 の 徴 生物 にはACCを唯一 の窒素源と して生育し 得るものが ある。これ らの微 生 物 はACCを ア ンモ ニ ア と伐 ‐ ケト 酪 酸に 分解する 酵素ACCデ アミナーゼ を 持つ。この酵素の遺伝子を植物の中で発現させるとエチレンの発生を抑えるこ と が でき ると いう考えか らACCデア ミナーゼ遺 伝子を持っ トマトが作 られ、

貯蔵性の良いトマトの生産に成功し、安全性等の試験結果も発表されている。

ま た 油糧 植物 カノーラの 根の成長を 促進する微 生物の作用 とACCデア ミナー ゼ と の関 係に っいての実 験結果も報 告されてい る。ACCデ アミナーゼ の酵素 と し ての 特徴 はピタミンB6、ピリドキ サルリン酸(PLP)を持つ ことと三員 環 を開環することにある。反応機構の仮説は述べられているが証明されていない。

反応機構の解析は一般に、酵素の三次元構造の解析と反応の速度論的解析の両 面から進められる。どちらにとっても酵素を解析に適する良好な状態で得られ ることが非常に重要である。本論文は、以上の観点に立って、酵素の高発現系 の構築、部位特異的変異法の確立、得られた酵素による反応の速度論的解析に っいて述べたものである。

1.ACCデアミナーゼの大腸菌による高発現系の構築

  ACCデアミナー ゼの高発現はPseu〔わm弸assp.ACPから得られた遺伝子を挿 入するプラスミドとf′.cプ口モーターを持つpTrc99Aの組み合わせから得られ た プ ラス ミ ドpACCD‐2を 大 腸菌EcびJM109に発 現 させ て 達 成さ れ た。 発 現 には誘導剤イソプ口ピルチオ_p.ガラクトシドを必要とし、活性の上昇にピリ ドキ シンを培地 に添加する ことが有効 であった。A釦由m弸as細菌の培養に比 較 し て培 養 液1mlの 活 性 は9倍 とな り 、抽 出 液の タ ンパ ク 質lmgの活 性 は17 倍で あった。抽 出液を用いて硫安塩析と3本のカラムによる簡素化した精製法 を確立した。精製酵素は設計によって元の酵素のN末端に3残基余分に持っが、

基 質 ACCに 対 す る Kー 等 の 性 質 に 変 化 は 認 め ら れ な か っ た 。 2.変異酵素の構築と精製

  ACCデ アミ ナ ーゼ の 変異 部 位を 計 画す る時 、次の2点を考慮 した。1)PLP が シ ッフ 塩基 を形成して いるりジン 残基はPLPを結合する ことの他に 重要な 役割を持っていることがアスパラギン酸アミノ基転移酵素で解明されている。

2)ACCデ アミナーゼ の構造はトリプトファン合成酵素p‐サブユニットの構造

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に 類似 する 証拠が ある 。1)からACCデアミナーゼのPLPとのシッフ塩基形成 部 位の りジ ン残基(Lys51)が、2) からPLP結合 部位 の3残基 後のりジン残基 (Lys54)が選ばれた。トリプトファン合成酵素p.サブユニットではPLP結合部 位 リジ ンか ら後はd.ヘリ ックスを形成し、3残基後の側鎖はPLP結合部位の 側 鎖と 近い 方向に ある 。変 異はKunkel法とPCR法を用い、リジン巛)をアラ ニ ン(A)、 スレ オニ ン(T)、 アスパ ラギ ン(N)、 グル タミ ン(Q)、アルギニン (R)に 変 異 し た 酵 素K51A、K51T、K51Q、K51R、 お よ びK54A、K54N、 K54Q、K54Rを 作 成 し た 。PLPシ ッ フ 塩 基 形 成 部 位を 変異 した 酵素はPLPの 保 持率(20〜30%) が低く 、この残基が補酵素の酵素への取り込みに重要な 役 割を 持っ ている こと が示 された。変異酵素に保持されたPLPはシッフ塩基 を形成していないことがスペクトルから観察された。また、これらの変異酵素 は変性によって不溶化し易く、30%グリセ口ールの添加を必要とし実験に制 限が加えられた。

3.反応機構にっいて

  ACCデア ミナ ーゼ1ま1)ACC分解 反応 、2)D‑セリ ン分 解反応、3)D‑アラ ニ ンaプロ トン 脱離 反応を 触媒する。1)は産物叫ケト酪酸の測定、2)は産 物ピルピン酸の測定、3)は光吸収スペクトル上の510nm附近の吸収ピークの 観察によって解析された。

  リ ジ ン 残 基51を 変 異し た 酵 素 は 全 てACC分 解 活 性を 失 っ た 。 精 製 し た K51A変 異 酵 素 にACCを加 え る と 、 保 持 さ れ て い るPLPとACCと の 間 に シ ッ フ塩基を形成することがスペクトルから観察された。この基質の結合は可逆的 で ある こと が透析 によ って 示され た。 一方 、K51A変異 酵素 はD‑セリン分解 活性を示し、蝕プ口トン脱離反応が起きていることを示唆したがD‑アラニン では観察されなかった。シッフ塩基の形成からアミノ酸との見かけの解離定数 を 測 定 す る とACC、L‐セ リン、L‐アラ ニン で低 く、D‑セリ ンとD‑ア ラニ ン で高 かっ た。こ の傾 向は 健全な酵素のK…およぴ颱の傾向と同一であり、

アミノ酸との親和性の傾向は変異しても維持していることが示された。このよ う に 、 リ ジ ン 残 基51の変 異はPLPの保持 を完 全に は阻 止せず 、保 持さ れた PLPは 基質ACCとシ ッフ 塩基 を形成 し、 酵素 は基 質と正 常に 結合することが 示された。しかし反応1)の活性が失われているので三員環の開環にりジン残 基51が重要な役割を持っていることが考えられる。一方、変異酵素は反応2) の 活性 を保 持する ので 、D‑セリン の叫 プロ トン 脱離に とっ てりジン残基51 は重要ではないと考えられる。

  リ ジ ン 残 基54を変 異し た酵素 も全 て、ACC分解 活性 を失っ た。 精製 した K54A変異酵素はD‑セリン分解活性を持ち、D‑アラニンの説‐プ口トン脱離反 応 も ス ペ ク ト ル 上で 示さ れた。 吸収 スペ クトル はK54A変 異酵 素がACCを結 合してシッフ塩基を形成すること、このシッフ塩基の形成は可逆的であること を示した。

  以上 のよ うに、2つのり ジン 残基 がACCの 三員 環開環 の反 応に重要な役割 を 持っ てい ること 、D‑セリ ンやD‑アラニンのa‐プ口トンの脱離に関与する 基 はACC三 員 環 の 開 環 に 関 与 す る 基 と は 異 な る 可 能 性 が 示 さ れ た 。   以上 の結 果は、1)ACCデ アミナーゼの大腸菌による高発現系を作り、酵素 の精製を容易にして、反応機構解析の基礎的条件を設定し、2)部位特異的変 異を導入する系を作り、モデル酵素を使って変異酵素を精製し、3)精製酵素 を 用 い て 、 リ ジ ン残 基51と54がACC三員 環開 環反 応に 重要な 役割 を持 って い るこ と、 三員環 開環 反応 とD‑セ リン 分解 反応 との違 いを 明らかにした。

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学 位 論 文 審 査 の 要旨 主 査    教 授    本 間    守 副 査    教 授    千 葉 誠 哉 副査    助 教授    松 井博和

     学位論文題名

トアミノシクロプロパン―1 ―カルボキシレートデアミナーゼ の部位特異 的変異法を用いた反応機構解析

  本論文は、序論と総合考察を含めて5章で構成され、図38、表12、引用文 献94を含む96頁の和文論文である。別に参考論文2編が添えられている。

  1.アミノシクロプ口パン‑1‑カルボキシレート(ACC)は植物ホルモン・エチ レン生合成の鍵となる特異的な前駆体で、三員環を持つアミノ酸という特徴を 持っている。植物ではこの三員環の分解によってエチレンを発生する。土壌中 の微生物にはACCを唯一の窒素源として生育し得るものがある。これらの微 生物はACCをアンモニアとぱ‐ケト酪酸に分解する酵素ACCデアミナーゼを 持つ。この酵素の遺伝子を持っトマトが米国の企業で作られ、貯蔵性の良いト マトの生産に成功し、安全性等の試験結果も発表されている。また油糧植物カ ノーラの根の成長を促進する微生物の作用とACCデアミナーゼとの関係につ いての実験結果も報告されている。ACCデアミナーゼの酵素としての特徴は ピタミンB6、ピリドキサルリン酸(PLP)を持つことと三員環を開環すること にある。反応機構の仮説は述べられているが証明されていない。反応機構の解 析は一般に、酵素の三次元構造の解析と反応の速度論的解析の両面から進めら れる。どちらにとっても酵素を解析に適する良好な状態で得られることが非常 に重要である。本論文は、以上の観点に立って、酵素の高発現系の構築、部位 特異的変異法の確立、得られた酵素による反応の速度論的解析にっいて述べた ものである。

  1.ACCデアミナーゼの高発現はPseu〔たM弸assp.ACPから得られた遺伝子 と 鴕 プロ モ ータ ーを持つpTrc99Aの組 み合わせから 得られたプラ スミド pACCD−2を大腸菌EcびJM109に発現させて達成された。発現には誘導剤イソ プロピルチオ‐8.ガラクトシドを必要とし、活性の上昇にピリドキシンを培 地に添加することが有効であった。A釧あm弸as細菌の培養に比較して培養液 1mlの 活性は9倍となり、抽出液のタンパク質1mgの活性は17倍であった。

抽出液を用いて簡素化した精製法を確立した。

  2.ACCデアミナーゼの変異部位を計画する時、次の2点を考慮した。1) PLPがシッフ塩基を形成しているりジン残基はPLPを結合することの他に重要

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な役割を持っている。2) ACCデアミナーゼの構造はトリプトファン合成酵素 ロ‐サブユニットの構造に類似する証拠がある。1)からACCデアミナーゼの PLP結合部位リジン残基(Lys51)が、2)からPLP結合部位の3残基後のりジン 残基(Lys54)が選ばれた。変異はKunkel法とPCR法を用い、リジンほ)をアラ ニン(A)、スレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン (R)に 変 異 し た 酵 素K51A、K51T、K51Q、K51R、 お よ びK54A、K54N、 K54Q、K54Rを作成 した 。PLP結合部 位を 変異し た酵 素はPLPの保 持率(20

〜 30%)が低く、この残基が補酵素の酵素への取り込みに重要な役割を持っ ていることが示された。

  3.ACCデア ミナ ーゼは1)ACC分解 反応 、2)D‑セリ ン分 解反応 、3)D‑

アラニンばプ口トン脱離反応を触媒する。1)は産物ば‐ケト酪酸の測定、2) は産物ピルビン酸の測定、3)は光吸収スペクトル上の510nm附近の吸収ピー クの観察によって解析された。

  PLP結合部位リジゾ残基51を変異した酵素は全てACC分解活性を失った。

精 製 し たK51A変異 酵素 にACCを加え ると 、保持 され ているPLPとACCと の 間にシッフ塩基を形成することがスペクトルから観察された。この基質の結合 は可逆的であることが透析によって示された。K51A変異酵素はD‑セリン分 解活性を示し、ロ‐プ口トン脱離反応が起きていることを示唆したがD‑アラ ニンでは観察されなかった。

  PLP結合 部位の3残基後のりジン残基54を変異した酵素も全て、ACC分解 活性を失った。精製したK54A変異酵素はD‑セリン分解活性を持ち、D‑アラ ニンのば‐プロトン脱離反応もスペクトル上で示された。吸収スペクトルは K54A変異酵素がACCを結合してシッフ塩基を形成すること、このシッフ塩基 の形成は可逆的であることを示した。

  以上の結果から、2つのりジン残基がACCの三員環開環の反応に重要な役 割を持っていること、D‑セリンやD‑アラニンのば‐プロトンの脱離は、三員 環 の 開 環 に 関 与 す る 基 と は 異 な る 基 に よ る 可 能 性 が 示 さ れ た 。   以上の成果は、植物ホルモン・エチレン生合成前駆体のACCを分解する酵 素ACCデアミナーゼにっいて、高発現を使った簡素化した精製法と変異酵素 の調製法を確立し、重要な2つのアミノ酸側鎖の役割を解析したものである。

このことは学術的に高く評価され、反応の機構の解析に役立っものと考えられ る。よって、審査員一同は邑上豊隆が博士(農学)の学位を受けるに十分な 資格があるものと認めた。

参照

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