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スフインゴシン

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 薬 学 ) 幸 野 貴 之

学 位 論 文 題 名

スフインゴシン 1 −リン酸受容体の 機能における糖鎖の役割

学位論文内容の要旨

    Endothelial differentiation gene product(Edg) は, 生 理活 性脂 質で ある ス フ ィ ン ゴ シ ン1− リ ン 酸 を り ガン ドと する ,7回膜 貫通 型 のG夕 ン バク 質共 役型 受容 体

(GPC恥 であ る。 最近 の研 究 から ,ス フイ ンゴシン1−ルン酸は, 細胞表面に発現してい るEdgファ ミリ ー受 容 体を 介し てMAPキ ナー ゼ活 性 化や 細胞 内カ ル シウ ムイ オン 濃度 の 増加など,さまざまな細胞 応答を引き起こすことが明ら かになった。スフインゴシン1一リ ン酸 はま た, 細胞 内 でセ カン ドメ ッ セン ジャーとして機能するこ とも示唆されている。

    ス フ イ ン ゴ シ ン1― リ ン 酸 受 容 体 を 含 む 多 く のG夕 ン パ ク 質 共 役 型 の7回 膜 貫 通型受容体は,翻訳後,細 胞表面ヘ移行する過程で,糖鎖付加,バルミチン化,リン酸化,

ユピキチン化,硫酸化など ,さまざまな修飾を受けるこ とが知られているが,これらの翻 訳後修飾の役割は完全には 明らかではないものが多い。

    そ こ で , 本 研 究 で は , (1) ス フ ィ ン ゴ シ ン1― リ ン 酸受 容 体Edg→1に付 加さ れ たアスパラギン結合型糖鎖 の受容体機能における役割を 検討した。また,(2)Edg−1のN 末端領域が,細胞表面への 発現の過程で切断されることを見い出し, その役割について検 討した。さらに,(3)免疫 系細胞に特異的に発現して いるにもかかわらず,ほとんど機能 が 明 ら か で は な い ス フ イ ン ゴ シ ン1― リ ン 酸 受 容 体Edg−6の 機 能 解 析 を 行 っ た 。     こ れ ら の 研 究 を 通 し て , 細 胞 表 面 に 発 現 す る タ ン パ ク質 に 結合 した 糖鎖 の新 た な役割が明らかになった。 これらの知見は,スフインゴ シン卜リン酸とその受容体の生理 的な役割を明らかにするた めに重要であると思われる。

1.リ ガンド依存的なEdg―1の細胞 内移行における糖鎮の役割

    7回 膜 貫 通 型 受 容 体(GPCR)を 含 む 多 く の 細 胞 表 面 に 発 現 す る タ ン パ ク 質 は 糖 鎖修飾 されていることが知られて いる。しかし,これらのタン パク質に付加した糖鎖の役 割は完 全には明らかではない。そ こで,本研究では,スフインゴシン1‑ルン酸受容体Edgー1 が糖鎖 修飾されているかを検討し ,Edgー1に結合した糖鎖の役割を検討した。まず,Edg−1 の アス パ ラギ ン残 基を 他の ア ミノ 酸に 置換 し た変異体を用いてEdg−1の塘 鎖結合部位を 検 討し ,Edg―1が ,30番目 の アス パラ ギン 残 基において糖鎖修飾されてい ることを明ら かにし た。次に,Edgー1に付加し た糖鎖の役割を検討するため ,糖鎖修飾を受けない変異 型(N30D) Edg−1を 安 定 に 発 現 す るCHO細 胞 を 作 成 し た 。 こ の 細胞 を用 いてEdg−1に おける 糖鎖の役割を検討した。そ の結果,N30DーE〔塘ー1では,野生型Edg−1と比較して,

ルガン ド親和性には有意な差がな いにもかかわらず,低濃度の りガンド刺激に応答して細 胞内へ 移行する受容体数が減少す ることを見い出した。細胞表 面に発現する受容体の多く は,細 胞表面に均一に分布してい るのではなく,さまざまな情 報伝達分子が集積している 細胞膜 マイクロドメイン上に不均 一に局在することが知られて いる。また,細胞表面に局 在する タンパク質に結合した糖鎖 や糖脂質の糖鎖は,糖鎖一糖鎖の相互作用によって情報を 制 御す る こと が示 唆さ れて い る。 そこ で,Edg―1に結合した糖鎖の有無が ,Edg−1の細     一85―

(2)

胞膜マ イクロドメインヘの集積に関 与するかを検討した。その 結果,N30D―Edg―1では,

野 生型Edg―1と比 較し て, マ イク ロド メインに集積 する割合が減少することを見 い出し た 。こ の こと は, リガ ンド 刺 激依 存的 なN30DーEdg−1の細胞内移行が減少したこ とと強 い相関 がある。以上のことから,Edgー1の細胞膜マイクロドメインヘの局在制御に,Edg一1 の 糖 鎖 が 重 要 な 役 割 を 持 つ こと を明 ら かに した 。こ の研 究 では ,7回膜 貫通 型受 容体 (GPCR)の マ イク ロド メイ ンへ の 集積 が糖 鎖の 有 無に 依存 して いる こ とを 初め て明 らか に し , 受 容 体 の 細 胞 内 移 行 に 糖 鎖 の 有 無 が 影 奮 す る こ と を 初 め て 示 唆 し た 。 2.Edg−1のN末靖細胞外領 域は,その籍鎮儘飾過程に影fする

    本 研 究 で は , 培 養 細 胞 に 発 現 さ せ た ス フ イ ン ゴ シ ン1− リ ン 酸 受 容 体Edg‑lと Edg−3のN末 端領 域が 切断 さ れる こと を見 い出 し た。 そこ で,Edgー1のN末 端 領域 の役 割を 検討 する ため ,Edg−1のN末 端切 断領 域を 欠 失し た変 異体を作製し,切断 部位を同 定し た。 培養 細胞 へ 一過 性に 発現 させたEdgー1は ,小胞体で糖鎖修飾を受けた 後,ゴル ジ体でさらに複合型糖鎖に よる修飾を受けてから細胞表 面へと移行する。しかし,Edg−1 のN末 端 切断領域を欠失 した変異体では,小胞体で は糖鎖付加されるが,ゴルジ 体での糖 鎖修 飾が 行わ れず , 大部 分は 細胞 表 面へ は発 現し なか っ た。また,Edg―1のN末端切断 部位に塩墓性アミノ酸を導 入した変異体では,ゴルジ体 で修飾される糖鎖の分子量が増加 した 。こ れら の結 果 は,Edg−1のN末 端領 域の ア ミノ 酸配 列が,Edg−1の細胞 表面への 発現 と適 切な 糖鎖 修 飾過 程に 影fする こと を示 し てい る。 血管内皮細胞に発現 している Edg―1とEdg―3は,ス フインゴシン1―ルン酸依存 的な血管の環状構造形成に重 要な役割 を担っている。糖夕ンパク 質に結合した糖鎖の種類の変 化は,癌の悪性度と密接な関係が あることが示唆されており ,また,膜夕ンパク質におけ る細胞外領域の切断異常は多くの 疾患 に関 与しているこ とから,これらの受容体のN末端切断に生理的意義の存在 が示唆さ れた。

3. 細 胞 表 面 に 発 現 し たEdg−6は ル ガ ン ド 刺 激 依 存 的 に 細 胞 運 動 を 亢 進 さ せ る     ス フ イ ン ゴ シ ン1― リ ン 酸 受 容 体Edg−1,Edg−3,Edg−5のmRNAの 発 現 は , 多 くの 組織 で普 遍的 に 観察 され るの に 対し ,Edg−6のmRNAの発 現は 免疫 系・ 血 球系 の 細胞に局在している。.しか し,培養細胞に過剰に発現 させたEdg−6は細胞表面へは発現 しにくいため,Edgー6の機能 解析はほとんど進んでいな い。このように,培養細胞への発 現が 困難 な7回膜 貫通 型受 容 体は 比較 的多く存 在する。本研究では,N末端 にェピトープ タグ を付 加し たEdg―6や ,Edg―6とGFPと の融 合 夕ン パク 質は ,小胞体に 留まり,細胞 表面 へは 発現 しな いことを明らかにした。一方 ,C末端にタグを付加したEdg−6は細胞表 面へ 局在 しす るこ と を見 い出 した 。そ こ で,Edg−6を 安 定に 細胞表面に 発現するCHO細 胞を作製し,スフインゴシン1ーリン酸受容体としてのE(塘一6の機能を検討した。まず,

細胞 表面 に発 現し たEdg―6は ,ア スパ ラギン 結合型糖鎖による修飾を受け ていることを 明ら かに した 。次 に ,E血r6安定 発現 細胞は, スフインゴシン1―リン酸に 対する細胞遊 走能を,百日咳毒素感受性に 亢進させることを見い出し た。さらに,この細胞運動能の亢 進は,ドミナントネガテイプC(lc42の共発現によって抑 制されることを明らかにした。こ れら の結 果か ら, スフインゴシン1−ルン酸依 存的なEdg―6を介する情報伝 達経路の一部 が,細胞運動能の調節に関与 している可能性が示唆され た。スフィンゴシン1―ルン酸は,

いくっかの免疫疾患に関与す ることが示唆されているが,その分子機構は明らかではない。

本研究で得られた知見は,免 疫系細胞におけるスフィン ゴシン卜リン酸の役割を明らかに するうえで重要である。

86―

(3)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

五十嵐 横沢 川原 井/口

学 位 論 文 題 名

靖之 英良 裕之 仁一

ス フ イ ン ゴシ ン 1 −リ ン 酸 受容 体の      機 能 に お け る 糖 鎖 の 役 割

   申請 者 は、 新し い 生理活性脂 質として近年 注目されている スフ ィ ン ゴシ ン 1 ーリ ン 酸(以後 SIP と略 )受容体のう ち SIPl (EDG‑1) お よ び免 疫細 胞 など に特異的 に発現する SIP4 (EDG‑6) の生理機 能 の 解 明を 試み 、 N 末 結合 糖鎖 の ルガ ン ド刺 激 依存 的 な受 容体の細 胞 膜 マイ ク口 ド メイ ンヘの集 積や細胞内移 行の制御、免 疫細胞な ど に 特異 的に 発 現す る SIP4 (EDG‑6) の細胞運動の 亢進などに関 し て新知見を得、本学位論文として申請した。

   血 小 板 か ら 放 出 さ れ る 新 規 生 理 活 性 脂 質 SIP の 7 回 膜 貫 通 型

GPCR 受 容 体 と し て は 現 在 5 つ の フ ァ ミ リ ー が 知 ら れ て い る 。 す

なわちSIPl (EDG −1 ),SIP2 (EDG‑5) ,SIP3 (EDG‑3) ,SIP4 (EDG‑6) 、

SIP5 (EDG‑8) が 知 ら れ て い る。 こ のな か で SIP1 は その ノ ック ア

ウ ト マウ スが 胎 生致 死である こともあり、 その発現調節 や機能調

節 の 研 究 が 求 め ら れ て い た 。 申 請 者 は SIP1 受 容 体 の N 末 端 30

番 目 にア スバ ラ ギン 酸 N 型糖 鎖 が結 合 して い るこ と を初 めて見い

だ し 、糖 鎖非 結 合型 変異体を 作製しこれを 細胞に導入し 、生化学

的 、 細胞 分子 生 物学 的 手法 を 駆使 する こ とに よ って 、 受容体 N 末

端 糖 鎖の 役割 が りガ ンド刺激 依存的な受容 体の細胞膜マ イク口ド

メ イ ンヘ の集 積 や受 容体の細 胞内移行の制 御にあること を見いだ

し た 。こ の結 果 は世 界のトッ プジャーナル のーつである FASEBJ ・

に掲載され注目を集めた。

(4)

   申請 者は更に、SIP1 がER 、ゴルジ体を通して細胞膜に輸送さ れる過程で、N 末端切断というプロセッシングを受けることを初 めて明らかにし、この現象に糖鎖がかかわっていることを示唆す る結果を得た。こうした結果は血管にあって、血管新生など血管 内皮細胞の運動増殖制御などの重要な働きを持っと考えられてい る SIP1 受容 体の制御を目指す創薬を試みる上でも貴重な知見が 得 ら れ た と い え 、 今 後 の 発 展 が 多 い に 期 待 さ れ る 。    免疫細胞などに特異的に発現するSIP4 (EDG‑6) は、SIP を介し た免疫細胞の運動の制御の可能性や、新規の免疫抑制剤として欧 米 や日本の製薬企業で開発の試みられている FTY720 との関わり が 注目されている。SIP4 は他の受容体ファミリーと違ってその 細胞膜表面への発現が難しいため研究が遅れていた.申請者はこ の課題に取り組み.、様々な試行錯誤の末、細胞膜表面にSIP4 を 発現できる実験系を構築し、これを用いて細胞表面に発現した受 容 体 が SIP 刺 激 で そ の 細 胞 運 動 が 亢 進 さ れ る こ と を Boyden Chamber を使用した実験系で初めて明らかにした.更にその受容 体の下流のシグナル分子としての低分子G 夕ンバク質のーつであ る CDC42 の関与を、pull down assay 法や不活性 型 CDC42 などを 導入することによって明らかにした。この結果は Genes Cells. に 発表された。

   以上が申請者の研究の主な成果であるが、このほかにも申請者 は SIP 受容体の機 能に関して英文論文 3 報、邦文 論文、総説2 報 を発表するなど、この世界で進められているこの分野の研究の進 展に大いに寄与したということができる。

     以上、本論文審査委員会は、本論文をスフィンゴシン1 ―リ

ン 酸受容体SIP1 の糖鎖機能に関する新知見および免疫細胞特異

的 に発現する SIP4 の細胞運動制御に関する新知見といった申請

者の研究内容を水準の高い内容であると判断し、幸野貴之氏を博

士 ( 薬 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分 値 す る と 認 め た 。

参照

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