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核燃料再処理装置用材料の耐食性に関する研究

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 工 学 ) 武 田 誠 一 郎 学 位 論 文 題 名

核燃料再処理装置用材料の耐食性に関する研究

学位論文内容の要旨

  本 研究 は、 使用 済核 燃料 再処 理プ ラン ト機 器の 寿命延長を目的として、特に装置材料の 腐食現象を支配する環境側因子に注意を払い、材料の腐食挙動を明らかにしたものである。

まず 、濃 硝酸 溶液 中で の各 種材 料の 溶解 特性 を把 握し、ついで、いくっかの金属元素をカ チオ ンと して 添加 し、 それ らの 影響 を調 べた 。次 に実際の再処理プラントで取り扱う溶液 を用 いた ホッ ト試 験を 実施 し、 個々 のイ オン の影 響を明らかにした。さらに、再処理プラ ント 特有 のァ 線の 影響 につ いて 放射 線化 学的 見地 から検討し、工業的観点から再処理溶液 で注 目す べき 元素 と材 料の 使用 可能 性に つい て提 言した。以下に各章のおもな成果を要約 する。

  第1章 では 、原 子カ エネルギーの平和利用におけるPu利用体系とその再処理技術の重要性 を取り上げた。再処理技術のなかで、材料の腐食挙動を知ることがプラント稼働率の維持・

向上 を図 るう えで 重要 であ るこ とを 説明 した 。さ らに再処理プラントの特徴を腐食の観点 から評価すると共に、本研究の目的と基本方針を述べた。

  第2章 は、 核燃 料再 処理プラントでの使用を念頭に、硝酸溶液中でのステンレス鋼の基本 的な 腐食 挙動 につ いて 整理 ・検 討し たも ので ある 。ステンレス鋼の腐食速度と腐食電位と の相 関に 関し て、500〜800mV (vs.SCE) の領 域で は腐食電位が上昇しても腐食速度はほと んど変わらないが、それ以上では腐食電位の上昇と共に腐食速度が大きく増加した。また、

腐食電位は硝酸濃度の増加、溶液温度の上昇と共に貴側に移行した。硝酸溶液中のFe (III)、

Cr (III)、Ni(H)イオンはほとんど影響を与えないが、Cr (VI)、Ce (1V)およびTl (m)イオン はス テン レス 鋼の 腐食 を大 きく 加速 した 。こ れは 材料表面でのカソード反応の促進により 腐食 電位 が不 働態 域か ら過 不働 態域 へ移 行し たた めと結論した。ステンレス鋼表面におい て還 元反 応速 度が 硝酸 より も大 きい 酸化 還元 系は 、ステンレス鋼の過不働態溶解を誘起す ることを明らかにした。

  第3章は、Ti、Ti ‑ 5TaおよびZrの硝酸溶液中での基本的な腐食挙動について検討したもの であ る。Ti、Ti ‑5TaおよびZrのアノード分極曲線は、ステンレス鋼のそれに比ベ、より高

(2)

い 電 位域 ま で不働 態を示す 。これらの 表面に形 成される 被膜の化 学組成を 同定し、 いずれ もス テンレス 鋼に比べ 、被膜が 厚いこと を明らかにした。Tiおよびマi‑ 5Taは、それ自身の 溶解 により表 面被膜の 組成が変 化し、結 果的に腐食速度が次第に大きくなることを認めた。

また、硝酸溶液中Fe (III)、Cr (m)、Cr(VI)イオンを共存させることにより、腐食が抑制さ れることを明らかにした。

  第4章 では、再 処理溶液 中に含ま れる個々 の金属イ オンが材料 の腐食に どの様に影響する か を 検討 し た。再 処理溶液 に含まれる イオンの なかで核 物質であ るPuイオン と核分裂 生成 物 で あるRuイオンは 硝酸溶液 中に共存す ることに よルステ ンレス鋼 の腐食を 加速する 。し か し それ 以 外のイ オンの共 存は硝酸溶 液中の腐 食速度を 大きく変 化させる ことなく 工学的 に 許 容で き る範囲 にある。 硝酸溶液中Puイオン共 存による ステンレ ス鋼の腐 食促進効 果に 対 し 、共 存 イオン と硝酸イ オンとの溶 液内酸化 還元反応 を考慮し て妥当な 解釈を試 みた。

一 方 、Ruイ オンによ るステン レス鋼の腐 食加速現 象は、腐 食電位の 過不働態 域への移 行を と も なう 。 腐食電 位が貴側 に移行する のは、Ruイ オンが共 存するこ とによル ステンレ ス鋼 表面での還元反応が促進するためと考えられる。

  第5章 は、実際 の再処理 溶液中で の各種金 属材料の 腐食挙動を 知るため 、再処理装置材料 の 候 補と な る5種類 の装置材 料にっき、 腐食挙動 を検討し た。310Nbおよ び304ULCステン レ ス鋼 の腐食反 応は純硝 酸溶液中 に比ベ、FBR使用済燃 料溶解液中 で加速さ れるが、Ti、Ti ‑ 5Taおよ びZrではそ れは認め られない ことが判 明した。 この腐食促 進の原因について、以下 の よ うな 解 釈が可 能になっ た。すなわ ち、腐食 が加速さ れるのは 、それら の材料の 腐食電 位 が 純硝 酸 溶液中 に比べ貴 側にシフト するため であって 、Puイオン の存在に よる電極 表面 で の カソ ー ド反応 の促進に 起因するも のと考え られる。 この傾向 は軽水炉 使用済燃 料溶解 液に 比ベ、Puイ オン濃度 の高いFBR使 用済燃料 溶解液で 、より顕著 に現れる。また、溶解液 中 の 溶質 イ オン濃 度によっ て腐食電位 が変化す るのは、 主に溶解 液中のPuイ オン濃度 の差 異に基づくものと結論した。

  第6章 では、60Coの 密封線源 を用いた 照射試験 を行い、 硝酸溶液中 に浸漬した304ULCステ ン レ ス鋼 の 腐食に 与えるァ 線照射の影 響を検討 した。濃 硝酸溶液 中に浸漬 したステ ンレス 鋼 に ァ線 を 照射す ると、わ ずかに腐食 速度が大 きくなる 傾向を示 した。ア 線を照射 するこ と に より 硝 酸が分 解され、 溶液がより 還元雰囲 気となり 、腐食環 境が緩和 されるこ とが予 想 さ れる 。 しかし 、わずか に腐食速度 が大きく なるのは 、ア線の 照射が材 料表面の 不働態 皮膜に影響し、不働態保持電流を増大させることを明らかにした。

  第7章 は、再処 理プラン トの工程 を念頭に 置き、各 種金属材料 の使用可 能性について検討 し た もの で ある。 再処理プ ラントの一 般的な装 置材料と して、オ ーステナ イト系ス テンレ ス 鋼 は良 好 な耐食 性を示す 。しかし高 温で、Pu成 分を含有 する高濃 度の硝酸 溶液の取 り扱

(3)

いに際して、ステンレス鋼は過不働態溶解の可能性があるので、その使用は避けるべきで

あって、より良好な耐食性を示すTi 、Ti ‑5Ta 、Zr など非鉄系バルブ金属材料を使用するこ

と が 再 処 理 プ ラ ン ト 材 料 の 高 耐 食 性 の 確 保 に 必 須 で あ る こ と を 提 言 し た 。

  

第8 章は、本研究の経過と結果を総括したものである。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

核燃料再処理装置用材料の耐食性に関する研究

  核 分裂 反応 を電 カエ ネル ギー 源と し て利 用す る場合、Puが関与する核燃料サイクルの確 立は 必須 の課 題で あっ て、 使用 済核 燃 料の 再処 理技術にお ける装置材料の腐食事故の回避 は、その信頼性確保に極めて重要である。再処 理装置用材料の腐食に関する従来の研究は、

材料 側因 子か らの アプ ロー チが 大部 分 を占 めて いた。これ に対し、本論文は材料の使用環 境因 子に 着目 して 、ス テン レス 鋼な ら びに バル ブ金属材料 の腐食挙動を実験的に検討した もの であ る。 特に 実際 の再 処理 プラ ン ト溶 液に よるホット 試験を実施し、再処理溶液中の 要 注 意 元 素 と 各 種 金 属 材 料 の 耐 食 性 に つ い て 重 要 を 提 言 を し て い る 。   以下に学位論文として評価できる主な研究成 果を要約する。

(1)各 種 濃度 の硝 酸水 溶液における304ULCステンレス鋼の 自然腐食挙動を電気化学的手法 により検討し、不働態にある電位域と過不働態 に移行する電位域とを明確にするとともに、

溶存Cr6十、Ce4+およびマ1針イオンの腐食促進作用を見出した。同様の溶液条件下でTi、Ti‑

5Ta、Zr等 バル ブ金 属材 料の腐食特性を検討し、不働態被膜 厚さおよび化学組成を確定する と と も に 、 溶 存 Fe3+、Cr3+お よ びCr6+イ オ ン の 腐 食 抑 制 作 用 を 見 出 し た 。 (2)各種 イ オン を含 む軽 水炉 およ び増 殖炉 での 使用 済燃料処理溶液において、5種類の装置 候補 材料 の腐 食挙 動を 実験 的に 検討 し た結 果、 特に核物質Pu成分ならびに核分裂生成物Ru 成分 の存 在が ステ ンレ ス鋼 の腐 食を 促 進す るこ とを明らか にした。なお、Puの腐食促進効 果を 硝酸 イオ ンに よる 高原 子価 カチ オ ンの 溶液 内再生反応 によって、Ruのそれを鋼表面で の還 元反 応特 性に よっ て、 妥当 に解 釈 でき るこ とを示した 。さらに、各種バルブ金属材料 の腐食は、Pu濃度の大なる増殖炉燃料再処理溶 液中でも促進されないことを明らかにした。

(3)60Co密 封線 源を 用い 、濃 硝酸 溶液 中で のス テン レス鋼の腐食挙動に対するy線照射の影 響を 検討 し、 腐食 は若 干増 加の 傾向 を 示す けれ ども、大幅 な促進作用を有しないことを見 出している。

106− ・

雄 士

浩 夫

川 橋

尾 田

石 大

瀬 成

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

  以上要するに、著者は核燃料再処理プラントの各種装置材料の腐食特性を明確にすると ともに、それぞれの耐食性確保に必須な環境側因子を提言しており、腐食防食工学ならび に材料工学の進展に寄与するところ大である。

  よって著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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