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反応制御焼結によるビスマス層状構造強誘電体の作製

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 執 行 達 弘

学 位 論 文 題 名

反応制御焼結によるビスマス層状構造強誘電体の作製 学位論文内容の要旨

  ビスマス層状構造強誘電体(BLSF)はビスマス層と擬ベロプスカイト層から顔り、結晶構造を構 成する元素と積層構造の多様さ、および高いキュリー温度を有することから、現在主流の鉛系高温 圧電体の代替材料として注目され広範教研究が行われている。しかし、BLSFの多くが3成分ある いはそれ以上の成分から教る多成分化合物であることから、現在広く用いられている固相反応法に よる単相粉末の合成およびその焼結では、高温における長時間の熱処理が必要と教っている。した がって、従来用いられている固相法で作製した場合には、ピスマス成分の揮発による格子欠陥の生 成や組成の変動、それに伴う電気的性質の劣化教ど実用化に向けて改善すべき課題が残されてお り、新た次′ヾルク材料作製法の開発が望まれている。

  高温で長時間の熱処理プロセスを回避する材料作製法として反応焼結が知られているが、反応と 緻密化の両方を完結させることは難しく、反応焼結を適用できる材料は限られている。しかし3成 分以上の多成分化合物に対しては、特定の反応を優先的に行う反応制御プロセスと高密度化を目的 とする緻密化プロセスを最適化して組み合わせることにより、より低温で目的とする化合物相から 教る緻密を焼結体を得ることが期待できる。本論文では、それぞれ異教る誘電特性や用途を持つ3 種類のBLSFに着目し、それらの緻密顔バルク体をできるだけ低温で作製することを目的として、

まずそれぞれのBLSFにおいて、できるだけ低温で目的の化合物単相を得る反応プロセスを明らか にし、さらに反応プロセスを制御し教がら低温での緻密化を促進する反応制御焼結法を適用して焼 結体を作製し、反応制御焼結における反応率と緻密化挙動との相関やそれらに対するプロセス因子 の影響をどについて検討した。

  第1章は序論であり、一連のBLSFの結晶構造、電気的特性、応用、および高温、長時間での加 熱による作製の問題点について概説した上で、反応焼結を適用する利点、反応と緻密化挙動に影響 を与えるプロセス因子を解明、制御する重要性を述べた。また、本論文の目的と構成を述べた。

  第2章では、比較的キュリー温度が低くまたりラクサー挙動を示すBaBi2Nb20g (BBN)に着目 した。まず従来の固相反応法では、生成する中間相Ba5Nb4015が高温まで安定に存在するため に、BBN単相の合成・焼結には高温が必要であることを明示した。この中間相を生成せずに低温 でBBN単相を合成する目的で行った反応プロセスの検討結果に基づき、第1焼成プロセスで調製 したBaNb206前駆体とBi203からなる成形体を加熱する反応制御焼結を行った。この反応制御 焼結においては、600゜Cで仮焼したBaNb206前駆体を用いることで、従来の固相反応法に比べて 1500C低温である9500Cの加熱により緻密顔BBNセラミックスを作製できることを示した。ま た、加熱に伴うBBNの生成率と微細構造変化および緻密化挙動を解析するてとにより、この化合 物の場合には、反応焼結初期における粒子の凝集状態が緻密化に大き趣影響を与えること、さらに 焼 結 初 期 に 反 応 が ほ ば 完 結 し た 後 に 緻 密 化 が 進 む こ と を 明 ら か に し た 。     ―37−

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  第3章で は 、共 振器 用材 料 として適 用可能教SrBi2Nb209 (SBN)に対して、従来の固相反応法 、 反応 制御 プロ セス お よび 反応 制御焼 結の適用について検討した。 その結果、SBNにおいても、 あ らか じめSrNb206の前 駆体 粉 末を 調製 後にBi203を 混合 した粉末 成形体から、反応制御焼結を 用 いる こと によ り、 従 来の 固相 反応法 より200°C低温の950゜Cにお いて緻密顔SBNセラミックス を 作製 でき るこ とを 明 らか にし た。SBNの場 合に は 、BBNと異教り 、緻密化が先行した後に反応 が 完結 する こと、さらに緻密化は第3成 分として加えたBi203が液相 を生成し、その液相により低 温 で促 進さ れる こと を 示し た。 以上の ように、SBNに対しても反応 制御焼結により低温焼結は可 能 と教ったが、さらに焼結体に おける粒子の異方形状化を 抑制して優れた絶縁性を付与できるプロセ スの改良が今後の課題である ことも明示した。

  第4章では、非鉛系の圧電 体材料として期待されているBi4Ti3 012よりも電流のりーク特性に優 れたBaBi4Ti4015 (BBTO)につ いて 、ま ず ゾル ゲル 法を 用いるこ とで700゜Cという低温で単相 粉 末を合成できること、しかし 、その単相粉末を用いても1000゜C以下では緻密化し叔いことを示し た。っぎに、共沈法で調製し た前駆体粉末を5000Cで仮焼 することによりBi4Ti3 012単相粉末が容 易に 得ら れる こと に 着目 し、500°Cで仮焼後のBi4Ti3012粉末に 粒度の異をるBaTi03粉末を加 え て加 熱す る反 応制 御 焼結 を適 用し た。 そ の結 果、950℃の 加熱 によ り 微細 粒子 からをるBBT0セ ラミ ック スを 作製 で きる こと を明 らか に した 。反 応率 .緻密化 挙動に関しては、BBNやSBNと は 異教 り、 反応と緻密化が同時に進行す ること、さらに、市販の粒 径0.1pmのBaTi03粉末よりも 、 ゾル ゲル 法で調製したBaTi03粉末を用 いることで反応と緻密化が 共により低温で進行すること を 示した。

  第5章では、近年、配向焼 結体の作製方法として注目さ れている高磁場下での粉体成形への適用 を目 指し 、SBNお よびBBT0に 希土 類磁 性イ オン で あるNd3゛を置 換した粉末調製とその反応制 御 焼結について検討した。とく にBBT0については、所定量のNd3゛イオンを含む(Bi4―エNdx)Ti3012 前駆 体粉 末を共沈法で調製し、その仮 焼粉とBaTi03粉末を用いて 反応制御焼結を行うことで、 磁 気的 誼性 質を有する緻密教焼結体が得 られることを明らかにした 。Nd3゛で置換したBi4Ti3012前 駆体 粉末 に対しては、仮焼後の磁気特 性測定において明確教磁化 の発現が認められていること か ら、Ba.Ti03との混合粉末を 用いることで、より低磁場 で粒子配向した成形体が得られ、その後の 反 応 制 御 焼 結 に よ り 優 れ た 圧 電 性 を 有 す るBBT0セ ラ ミ ッ ク ス が得 られ る可 能 性を 示し た。

  第6章は 本 論文 の総 括で あ り、 構成 元素 や積 層 数の 異をる3種 類のBLSFに対し、できるだけ 低 温合成が可能没反応プロセス を解明し、そのプロセスを経由する反応帯0御焼結法を適用することに より 、従 来の固相法と比べて低温かつ 簡便放熱処理により緻密教BLSFセラミックスが得られる こ とを 明ら かにした。さらに、それぞれ のBLSFに対して、反応制御 焼結プロセスにおける反応率 と 緻密化速度との量的款関係を 求めると共に、各化合物間 で認められた両者の異をる相関関係の原因 についても考察を加えており 、工学的に新規顔材料製造 プロセスとして反応制御焼結法が適してい ることを示した。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

反応制御焼結によるビスマス層状構造強誘電体の作製

  ビスマス層 状構造強誘電体(BLSF)はピス マス層と擬ベロプスカイト 層からなり、この結晶構造 を構成する元 素と積層構造の多様さに基づく数多くの化合物が存在している。とくに高いキュリー 温度を有する 化合物は、現在主流の鉛系高温圧電体の代替材料として注目され広範を研究が行われ て いる。しかし、BLSFの多くが3成分あるいはそれ 以上の成分から成る多成分 化合物であること から、現在広 く用いられている固相反応法 による単相粉末の合成およびその焼結では、1000°C以 上の高温にお ける長時間の熱処理が必要とをっている。したがって、従来用いられている固相法で 作製した場合 には、ビスマス成分の揮発による格子欠陥の生成や組成の変動、それに伴う電気的性 質の劣化など 実用化に向けて改善すべき課題が残されており、新た教バルク材料作製法の開発が望 まれている。

  熱処理プロ セスにおける煩雑さの低減を 目的とする材料作製法とし て反応焼結が知られている が、限られた 熱処理では反応と緻密化の両方を完結させることは難しく、反応焼結の適用が可能教 材料は限られ ている。しかし3成分以上の 多成分化合物に対しては、特定の反応を優先的に行う反 応制御プロセ スと高密度化を目的とする緻密化プロセスを最適化して組み合わせることにより、よ り低温で目的 とする化合物相から成る緻密 顔焼結体を得ることが期待 できる。本論文では、BLSF に対する新た をバルク材料作製法の確立を 目的として、それぞれ異をる誘電特性や用途を持つ3種 類のBLSFにつ いて、反応制御焼結法による それらの緻密をバルク体の 作製を試みた。まず、それ ぞれのBLSFに おいて、できるだけ低温で目 的の化合物単相を得る反応 プロセスを明らかにし、さ らにその反応 プロセスを経由する反応焼結 を適用してBLSF焼結体を作 製し、反応制御焼結におけ る 反 応 率 と 緻 密 化 挙 動 と の 相 関 やそ れ らに 対す るプ ロセ ス 因子 の影 響に つい て 検討 した 。   第1章は序論 であり、一連のビスマス層 状構造強誘電体の結晶構造、電気的特性、応用を述べた うえで、広く 用いられている固相反応によ るBLSF単相の合成法や焼結 体作製法における問題点を 示すとともに 、多成分系の材料作製法として反応焼結を適用する利点や反応と緻密化速度に影響を 与えるプロセ ス因子を解明し制御する重要 性を明記した。また、本論 文の目的と構成を述べた。

  第2章 で は、 比較 的キ ュリ ー 温度 が低 くま た りラ クサ ー挙 動を 示 すBaBi2Nb209(BBN)に着目 し た。 まず 従来 の 固相 反応 法で は、 生 成す る中 間相Ba5Nb4015が高温まで安 定に存在するため に 、BBN単相の合成と 焼結には高温が必要であるこ とを明示した。この中間相 を生成せずに低温 でBBN単 相 を合 成す る目 的で 行った反応プロセス の検討結果に基づき、第1焼 成プロセスで調製

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一 郎

順 志

橋 田

高 嶋

授 授

教 教

査 査

主 副

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したBaNb206前駆 体とBi203か ら成 る 成形 体を 加熱 する 反 応制 御焼 結を 行 った 。こ の反 応制 御 焼結 にお いて は 、6000Cで 仮 焼し たBaNb206前駆体を用いることで 、従来の固相反応法に比べ て 1500C低 温で ある950°Cの 加 熱に より 緻密 をBBNセ ラミ ッ クス を作 製で き るこ とを 示し た。 ま た、 加熱 に伴 うBBNの生成率と微細構 造変化および緻密化挙動を解 析することにより、この化 合 物の場合には、反応焼結初 期における粒子の凝集状態が緻密化に大き橡影響を与えること、さらに 焼 結 初 期 に 反 応 が ほ ば 完 結 し た 後 に 緻 密 化 が 進 む こ と を 明 ら か に し た 。   第3章 では 、共 振器 用材 料 とし て適 用可 能をSrBi2Nb20g(SBN)に 対して、従来の固相反応法 、 反応 制御 プロ セ スおよび反応制御焼結 の適用について検討した。 その結果、SBNにおいても、 あ らか じめSrNb206の前 駆体 粉 末を 調製 後にBi203を混合した粉末成 形体から、反応制御焼結を 用 いる こと によ り 、従来の固相反応法よ り200゜C低温の950°Cにお いて緻密顔SBNセラミックス を 作製 でき るこ と を示 した 。し かしBBNと異 なり、SBNの場合には反 応が80ワ。まで進行した後 に 第3成 分 とし て加 えたBi203成 分由 来 の液 相により急速に緻密化が 進んで高密度焼結体は得ら れ るが 、反 応は そ れ以上進行しないため 単相化することは困難であ ることが明らかとをり、SBNの 反 応 制 御 焼 結 に お い て は 、 さ ら を る プ ロ セ ス の 改 善 が 必 要 で あ る と 結 論 づ け た 。   第4章 では 、非 鉛系の圧電体材料と して期待されているBi4Ti3 012よりも電気絶縁性に優れ た BaBi4Ti4015(BBTO)につ いて、まずゾルゲル法を用い ることで700°Cという低温で単相粉末を合 成できること、しかし、そ の単相粉を用いても1000℃ 以下では緻密化しをいことを 示した。っぎ に、 共沈 法で 調 製した前駆体粉末を500゜Cで仮焼することによりBi4Ti3012単相粉が容易に得 ら れる こと に着 目 し、500℃ で 仮焼 後のBi4Ti3012粉末に粒度の異を るBaTi03粉末を加えて加熱 す る反 応制 御焼 結 を適 用す るこ とに よ り、950℃の 加熱 でBBTOセ ラ ミックスを作製できること を 明ら かに した 。 反応 一緻 密化 挙動 に 関し ては、BBNやSBNとは異を り、反応と緻密化が同時に 進 行すること、とくに微細を 原料を用いることで、反応 率が60%の混合相成形体から 緻密化が進行 し始めることを明示した。 また、近年、配向焼結体の 作製方法として注目されてい る高磁場下で の粉 体成 形へ の 適用 を目 指し 、BBTOに希 土類磁性イオンであるNd3゛やSm3゛を置換した粉末 を 調製し、その置換粉末を用 いた反応制御焼結について 検討した。まず所定量の磁性 イオンを含む

(Bi4−xREx)Ti3012前駆 体粉末を共沈法で調製し、そ の仮焼粉とBaTi03粉末を用いて反応制御焼 結を 行う こと で 、磁 気的 を性 質を 有 する 緻密をBBTO強誘電体が得 られることを明らかにした 。 希土類イオンで置換したBi4Ti3012仮焼粉末においても 明確を磁化の発現が認められていることか ら、BaTi03との混合粉末を 用いることで、より低磁場 で粒子配向した成形体が得ら れ、その後の 反 応 制 御 焼 結 に よ り 優 れ た 圧 電 性 を 有 す るBBTOセ ラミ ック ス が得 られ る可 能性 を 示し た。

  第5章は本論文の総括で ある。

  こ れを 要す る に、著者は、構成元素 や積層数の異をる3種類のピ スマス層状構造強誘電体に 対 し、低温合成が可能を反応 プロセスを解明し、そのプ ロセスを経由する反応制御焼 結法を適用す るこ とに より 、 従来 の固 相法 と比 べ て低 温かつ回数の少をい熱処 理により緻密をBLSFセラミ ッ クスが得られることを示し 、工学的に新規を材料製造 プロセスを提案した。さらに 、それぞれの BLSFに対 して 、 反応 焼結 プロ セス に おけ る反応率と緻密化速度と の量的を関係を求めるとと も に、BLSFにおける反応制御 焼結法の特徴や制御すべき プロセス因子について考察を 加えており、

無機材料工学の発展に貢献 するところ大である。よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を 授与される資格あるものと 認める。

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参照

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