博 士 ( 工 学 ) 小 野 雄 策
学 位 論 文 題 名
産業廃棄物埋立地における
土壌の浄化能カを利用した中間覆土材に関する研究 学位論文内容の要旨
近 年 , 産 業 廃 棄 物 の 処理 処分 は, 不法 投棄 や不 適正 処理 など 大き な社 会 問題 とな って お り , 安 心 ・ 安 全 が 問 われ ,最 終処 分場 用地 の確 保が 困難 とな って いる 。 日本 にお ける 最 終 処 分 場 の 概 念 は ,
1971
年 に 準 好 気 性 概 念 が 構 築 さ れ , さ ら に1977
年 に は 遮水 シー ト が 導 入 さ れ , 進 展 は 図ら れて きた が, 埋立 地に 投入 され る廃 棄物 の質 の 管理 や場 内浄 化 の 概 念 が あ ま り 発 展 せず にき た。 その ため ,埋 立終 了後 にお ける 跡地 管 理や 浸出 水処 理 施 設 の 稼 働 期 間 等 の 埋立 地を 巡る 環境 への 安全 性の 担保 が保 障で きず に きて いる 。本 研 究 は , 産 業 廃 棄 物 の 質の 管理 とし て有 機性 廃棄 物や 無機 性廃 棄物 の化 学 物質 の流 出特 性 を 明 ら か に し , 有 機 性廃 棄物 と無 機性 廃棄 物の 相互 作用 やこ れら が層 内 で起 こす 数々 の現 象を抽出して,その処理方法を検討し た。さらに,検討にあったては,PRB (PermeableReactive Barrier)
の 概 念を 導入 し, 鉄分 の多 い関 東地 方に 豊富 に存 在す る火 山 灰土壌を 中 間 覆 土 層(PRB
層 ) と し て 用 い , 浸 出 水 中 の 化 学 物質 等を このPRB
層で 浄 化す るシ ステ ムを 構築 した 。第
1
章 は 序 論 で あ り , 研 究 の 背 景 と な っ た 産 業 廃棄 物の 質管 理の 方向 性 と最 終処 分場 内 で の 廃 棄 物 の 場 内 浄 化方 法を 述べ た。 さら に, この 場内 浄化 方法 とし て ,中 間覆 土層 に 火 山 灰 土 壌 を 用 い た 場 合 のPRB
層 と し て の 新 し い概 念の 可能 性を 整理 し ,本 研究 の目 的と 構成 につ いて 記載 した 。第
2
章 で は , 性 質 が 大 き く 異 な る 無 機 性 及 び 有 機性 産業 廃棄 物の カラ ム 流出 試験 を行 い , 流 出 水 中 の 有 機 成 分や 無機 性成 分の 特性 を明 らか にし た。 無機 成分 の 洗い 出し は無 機 成 分 単 独 で 流 出 す る わけ では なく ,無 機性 産業 廃棄 物と いえ ども 微量 に 存在 する 有機 成 分 と 共 に 無 機 成 分 ( 特に ,塩 類) が流 出し ,有 機性 産業 廃棄 物で は有 機 成分 の微 生物 分 解 に 伴 っ て 無 機 成 分 も流 出す るこ とを 詳述 した 。さ らに ,有 機性 産業 廃 棄物 に無 機性 産 業 廃 棄 物 を 混 合 す る と, 廃棄 物に よっ て微 生物 分解 作用 が阻 害さ れた り ,還 元領 域で の 溶 解 性 成 分 で あ るFe
やMn
な ど の 流 出 量 が 増 加 す る な ど の 相 互 作 用 に っ い て も明 らか にし た。第
3
章 で は , 有 機 性 産 業 廃 棄 物 や 無 機 性 産 業 廃 棄物 に土 壌を 混合 処理 し たり ,二 層処 理 を 施 し て カ ラ ム 流 出 実験 を行 った 。ま た, 有機 性及 び無 機性 産業 廃棄 物 を混 合処 理し た も の に っ い て も 土 壌 処理 を施 しカ ラム 流出 実験 を行 った 。そ の結 果, 火 山灰 土壌 をニ 層 処 理 す る こ と に よ っ て , 有 機 汚 濁 成 分 で あ るCOD
成 分が 特異 的に 土壌 層 に捕 捉さ れた り , 有 害 金 属 類 が 捕 捉 され るこ とを 明ら かに した 。ま た, 下水 汚泥 焼却 灰 のよ うな 高ア ル カ リ 性 廃 棄 物 の 流 出 水が 火山 灰土 壌の 二層 処理 によ り中 性化 する 現象 も 見い だし ,さ―116−
らに,GPC分析により強アルカリ成分含有の下水汚泥焼却灰と有機性廃棄物の混合によ り , 一 定 の 分 子 量 を も っ ア ル カ リ 成 分 が 流 出 す る こ と が 判 明 し た 。 第4章では,高速液体クばマ卜グラフイー(HPLC)を用いた土壌カラムシステムを開発
´して,土壌層での吸着,脱着,分散,イオン交換などの物理化学的反応量を測定できる 装置を開発した。この装置は完全飽和浸透流を定速度流で行える実験装置で,化学物質 の土壌分配係数や透水係数も測定できる。この装置の溶離液に浸出水を用い,土壌カラ ムに通水して,土壌カラムでの化学物質の吸着量などを正確に測定することが可能とな った。
第5章では,有機性産業廃棄物の培養液を第4章で開発したHPLCの土壌カラムシステ ムに通水し,土壌カラム層での有機成分の捕捉量を測定し,土壌層での有機成分の捕捉 可能性について検討した。さらに,各種の土壌を培養液に添加し,土壌微生物による分 解能カの違いにいても明らかにした。その結果,火山灰土壌が有機汚濁成分の捕捉量が 多く,分解能カが高いことが判明した。
第6章では,下水汚泥焼却灰のような高アルカリ性産業廃棄物[Ca (OH):由来のアルカ リ性廃棄物]から溶出するCaイオンの土壌二層処理による吸着反応を検討し,さらに,
高アルカリ化した浸出水が火山灰土壌の土壌層(PRB層)を通過すると中性化することを Caイオンの吸着反応と共に明らかにした。火山灰土壌では,OH―とCl−の比に応じてCa イオンの吸着量が変ることを証明し,さらに火山灰土壌の中性化能カはpHが高いほど能 カが増加することも検証した。
第7章では,安定型最終処分場で問題となっている硫化水素ガス問題の解決のために,
火山灰土壌処理がどのように役立っかを論じた。硫化水素発生廃棄物の選別のためには,
溶出試験液のTOC濃度が30mg/L以下であると硫化水素ガスが発生しにくいことを言及し,
さらに,埋立工法として鉄分の多い火山灰土壌を中間覆土層(PRB層)とすると硫化水素 が捕捉できることを明らかにするとともに,鉄鋼業等から排出される鉄粉廃棄物を硫化 水 素 発 生 廃 棄 物 に 混合 す る と 硫 化 水 素 ガ ス が 発 生 し な い こ と も 明 ら か に し た。
以上のように,本研究は,無機性産業廃棄物と有機性産業廃棄物のCharacterization を明らかにし,これらから流出する有機成分や無機成分を埋立層内で浄化もしくは捕捉 するシステムを構築することが目的である。廃棄物層から流出する成分を場内浄化する には,中間覆土層として鉄分の多い火山灰土壌を用いることを提案した。この火山灰土 壌層によりCOD成分や重金属類が捕捉され,さらにCa (OH)2由来の高アルカリ水はCaイ オンを吸着でき,かっ中性化できるなどの機能を有することを証明した。さらに,火山 灰土壌がもつ鉄分により硫化物イオンや硫化水素ガスの流出を抑制できることが明らか となった。このように,関東地方で産出する火山灰土壌を埋立地の中間覆土層として用 いる利点は,安価で施工しやすく地域にあった合理的なマルチ資材であり,このシステ ム によ り場 内浄化 がで きる ため 埋立 終了 後の 跡地管理の簡素化が可能な点である。
今後,中間覆土層をPRB層として構築するためには,関東の火山灰土壌以外の地域土 壌をPRB層に作り替える必要がある。そのためには鉄鋼業等から排出される鉄粉廃棄物 が,PRB材として大きな改良材となり得ることを付記しておく。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
産業廃棄物埋立地における
土壌の浄化能カを利用した中間覆土材に関する研究
近年,産業廃棄 物の処理処分は,不法投棄や不適正処理など大きな社会問題となっており,
安心・安全が問わ れ,最終処分場用地の確保が困難となっている。日本における最終処分場の 概 念は ,1971年 に準 好気性概念が構築され ,さらに1977年には遮水シートが導入され,進展 は図られてきたが ,埋立地に投入される廃棄物の質の管理や場内浄化の概念があまり発展せず にきた。そのため ,埋立終了後における跡地管理や浸出水処理施設の稼働期間等の埋立地を巡 る環境への安全性 の担保が保障できずにきている。本研究は,産業廃棄物の質の管理として有 機性廃棄物や無機 性廃棄物の化学物質の流出特性を明らかにし,有機性廃棄物と無機性廃棄物 の相互作用やこれらが層内で起こす数々の現象を抽出して,その処理方法を検討した。さらに,
検討にあたっては,PRB (Permeable Reactive Barrier)の概念を導入し,鉄分の多い関東地方に 豊富に存在する火 山灰土壌を中間覆土層(PRB層)として用い,浸出水中の化学物質等をこのPRB 層で浄化するシス テムを構築した。
第1章は序論であり,研究の背景となった産 業廃棄物の質管理の方向性と最終処分場内での 廃棄物の場内浄化 方法を述べた。さらに,この場内浄化方法として,中間覆土層に火山灰土壌 を用いた場合のPRB層としての新しい概念の可 能性を整理し,本研究の目的と構成について記 載した。
第2章では,性質が大きく異なる無機性及び 有機性産業廃棄物のカラム流出試験を行い,流 出水中の有機成分 や無機性成分の特性を明らかにした。無機成分の洗い出しは無機成分単独で 流出するわけではなく,無機性産業廃棄物といえども微量に存在する有機成分と共に無機成分、
特に塩類が流出し ,有機性産業廃棄物では有機成分の微生物分解に伴って無機成分も流出する ことを詳述した。 さらに,有機性産業廃棄物に無機性産業廃棄物を混合すると,廃棄物によっ て 微生 物分 解作 用が 阻害されたり,還元領 域での溶解性成分であるFeやMnなどの流出量が増 加するなどの相互 作用についても明らかにした。
第3章では,有機性産業廃棄物や無機性産業廃棄物に土壌を混合処理したり,二層処理を施′
してカラム流出実 験を行った。また,有機性及び無機性産業廃棄物を混合処理したものについ ても土壌処理を施 しカラム流出実験を行った。その結果,火山灰土壌をニ層処理することによ って,有機汚濁成 分であるCOD成分が特異的に 土壌層に捕捉されたり,有害金属類が捕捉され
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彦 美
徹
敏 昌
藤 川
市
松 恒
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授 授
授
教
助 教
教
査 査
査
主 副
副
ることを明らかにした。また,下水汚泥焼却灰のような高アルカリ性廃棄物の流出水が火山灰 土壌の二層処理により中性化する現象も見いだし,さらに,GPC分析により強アルカリ成分含 有の下水汚泥焼却灰と有機性廃棄物の混合により,一定の分子量をもっアルカリ成分が流出す
.ることが判明した。
第4章では,高速液体クロマトグラフイー(HPLC)を用いた土壌カラムシステムを開発して,
土壌層での吸着,脱着,分散,イオン交換などの物理化学的反応量を測定できる装置を開発 した。この装置は完全飽和浸透流を定速度流で行える実験装置で,化学物質の土壌分配係数 や透水係数も測定できる。この装置の溶離液に浸出水を用い,土壌カラムに通水して,土壌 カ ラ ム で の 化 学 物 質 の 吸 着 量 な ど を 正 確 に 測 定 す る こ と が 可 能 と な っ た 。 第5章 では,有機性産業廃棄物の培養液を第4章で開発したHPLCの土壌カラムシステム に通水し,土壌カラム層での有機成分の捕捉量を測定し,土壌層での有機成分の捕捉可能性 について検討した。さらに,各種の土壌を培養液に添加し,土壌微生物による分解能カの違 いについても明らかにした。その結果,火山灰土壌が有機汚濁成分の捕捉量が多く,分解能 カが高いことが判明した。
第6章では,下水汚泥焼却灰のような高アルカリ性産業廃棄物[Ca (OH)2由来のアルカリ性 廃棄物]から溶出するCaイオンの土壌二層処理による吸着反応を検討し,さらに,高アルカ リ化した浸出水が火山灰土壌の土壌層(PRB層)を通過すると中性化することをCaイオンの吸 着反応と共に明らかにした。火山灰土壌では,OH―とCl一の比に応じてCaイオンの吸着量が変 ることを証明し,さらに火山灰土壌の中性化能カはpHが高いほど能カが増加することも検証 した。
第7章では,安定型最終処分場で問題となっている硫化水素ガス問題の解決のために,火 山灰土壌処理がどのように役立っかを論じた。硫化水素発生廃棄物の選別のためには,溶出 試験液のTOC濃度が30mg/L以下であると硫化水素ガスが発生しにくいことに言及し,さらに,
埋立工法として鉄分の多い火山灰土壌を中間覆土層(PRB層)とすると硫化水素が捕捉できる ことを明らかにするとともに,鉄鋼業等から排出される鉄粉廃棄物を硫化水素発生廃棄物に 混合すると硫化水素ガスが発生しないことも明らかにした。
以上のように,本研究の目的は,無機性産業廃棄物と有機性産業廃棄物の埋立特性を明ら かにし,これらから流出する有機成分や無機成分を埋立層内で浄化もしくは捕捉するシステ ムを構築することである。廃棄物層から流出する成分を場内浄化するには,中間覆土層とし て鉄分の多い火山灰土壌を用いることを提案した。この火山灰土壌層によりCOD成分や重金 属類が捕捉され,さらにCa (OH)2由来の高アルカリ水はCaイオンを吸着でき,かつ中性化で きるなどの機能を有することを証明した。さらに,火山灰土壌がもつ鉄分により硫化物イオ ンや硫化水素ガスの流出を抑制できることが明らかとなった。このように,関東地方で産出 する火山灰土壌を埋立地の中間覆土層として用いる利点は,安価で施工しやすく地域にあっ た合理的なマルチ資材であり,このシステムにより場内浄化ができるため埋立終了後の跡地 管理の簡素化が可能な点である。
今後,中間覆土層をPRB層として構築するためには,関東の火山灰土壌以外の地域土壌を PRB層に作り替える必要がある。そのためには鉄鋼業等から排出される鉄粉廃棄物が,PRB 材として大きな改良材となり得ることを付記しておく。
これを要するに、著者は、産業廃棄物埋立地で問題となる有機成分、無機成分の流出特性 を明らかにし、火山灰土壌を中間覆土として利用することによる捕捉効果、高アルカりの中
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和、硫化水素ガス制御を実験的に検証しており、安全・安心な廃棄物最終処分技術の発展に 寄与するところ大なるものがある。よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与さ れる資格あるものと認める。
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