2.プロジェクションマッピングの有用性
図 1 プロジェクションマッピング 作品例
既存の電子メディア機器の欠点を補う方法とし て、情報を実世界に重畳することが有効であると 考察した。これは過去 AR(拡張現実)として多く の人によって提案されたが、本論文ではディスプ レイを通さず、プロジェクタを用いて情報を直接 実空間に投影する点で他の情報提示とは異なる。
これは、図 1 で示した、プロジェクションマッピ ングの技術を室内で用いることで実現を可能とし ている。この表現では、映像を自由に変形可能と する機能を用いることで、無理なく凹凸に映像を 合わせている。
1.はじめに
電子メディア機器の普及に伴って、インターネッ トの利用方法は多岐に渡るようになった。P2M(People to Machine)や P2P(People to People)など多くの使 用用途が存在し、今後ますます拡大している。一方で、
それらの情報の提示方法は小さなディスプレイ内での み行われる。これにより、インターネットを使用する際 には、電子メディア機器のディスプレイを常に見続ける 必要があり、人々の生活はデバイスにより制限を受け る。これは情報を提示することに特化した端末という点 から見ると、大きな欠点となることが言える。そこで、
本論文では現在の電子メディア機器の欠点を補う新た な情報提示方法を導き出し、それによる人々の生活の変 化を予測することを目的とした。
Donald A Norman や Yacob Nielsen など多くの研究者 の考察を参考にすることで、プロダクトデザインにおけ る注意点に目を向けながら新たな電子メディア機器の 提案を行った。
投影型情報提示における可変性投影技術を用いた情報提示の研究
~Spatial Augmented Media の提案~
Research for the Data Presenting by using Changeable Information Technology in the Field of Directly Projected Information
~Proposal of Spatial Augmented Media~
1W100039-8 石村 信太郎 指導教員 長 幾朗 教授
ISHIMURA Shintaro Prof. CHO Ikuro
概要: インターネットに接続可能な電子メディア機器の普及により、生活の中でデバイスと向き合う時間は 増加傾向にある。これらは多機能性を持つよう、シンプルな設計が施されている。しかし、機能の多くがディ スプレイに依存していることから、その情報の提示方法は最適であるとは限らない。本論文では、情報提示に おける既存の電子メディア機器の欠点を補う方法として、AR(拡張現実)に着目した。Ramesh Raskar が提唱 した Spatial Augmented Reality や、Carolina Cruz-Neira による The CAVE などの概念をより発展させ、室内 の空間に無理な変化を与えることなく情報を提示する方法を模索した。そこで、プロジェクションマッピング の技術を応用し、直接情報を実空間に投影することで、既存のデバイスでは表現が難しい情報空間を作り上げ ることが可能であることを示した。これらについて、実際にプロトタイプの作成を行い、ユーザビリティ調査 を行うことで、新たな電子メディア機器の提案を行い、そのデバイスが有用性を持つことを示した。
キーワード:電子メディア機器、AR、インターネット、プロジェクションマッピング Keywords: Electronic Media, Augmented Reality, Internet, Projection Mapping
2 この自由変形を情報提示の際にも用いることで、
室内の空間に自由に情報が提示かとなる。
このようなプロジェクタの利用は、新たな空間を 作り上げる上で、注目されつつある。Microsoft Research の IllumiRoom や Panasonic の
SpacePlayer などがそれにあたり、多くの企業がプ ロジェクタの新たな使用方法を模索している。
4.プロトタイプの作成とユーザ調査
図 2 プロトタイプ表示例
本研究では既に記した情報の直接提示につい て、有用性を確かめるためにプロトタイプの作成 を行った。本プロトタイプの主な機能は以下の通 りである。
・最新スケジュールの日程、時間の表示
・メモの表示
・時計の表示
・Twitter の表示
・画像の表示
・天気の表示
これらの情報は図 2 のように、空間内の凹凸に関 係なく自由に表示できる。また情報の更新は全て、
他の電子メディア機器から行うことが可能となっ ている。これを用いて被験者には、情報を読み取 る立場と更新を行う立場の両方を経験してもらっ た。その上で、アンケート調査を行い、改善点を 見出した。メモ機能など可変的な情報の提示にお いては、更新を知らせる機能がなかったため、空 間内の変化に気づきにくい点が指摘された。
また、字数に応じてフォントの大きさに変化の必 要性があることもわかった。
このような改善点の多くは、機能に応じて異なる 改善点を持つ。したがって、情報の最適な提示方法 は、機能に応じて異なることがわかった。また本調 査におけるプロトタイプは利用者に情報を実空間 に映し出すことのメリットがあると感じさせるこ とが出来た。
5.Spatial Augmented Media の提案
図 3 Spatial Augmented Media 概要図 以上の結果をもとに、「Spatial Augmented Media」
の提案を行った。本機器は図 3 のような構造を持 ち、照明と一体化している。情報を実空間内に提示 し、機能は自由に追加できる。これにより、特定の 機能に限定されることなく、利用用途はユーザーが 自由に選択可能となる。音声認識やカメラの画像処 理は高性能化し、それらを用いて情報提示の有無を 直接操作可能とする。これにより、情報の取得はデ ィスプレイを介する必要がなくなり、より効率的に 行うことが可能となる。
6.まとめ
本論文では情報を実空間に映し出すことで、情報 提示における新たな概念を示し、その有用性を確認 した。今後、現存する技術的課題の多くが改善され、
快適で効率的な情報提示を可能とするための一助 となることを期待している。
参考文献
[1]D.A.ノーマン、“誰のためのデザイン”、新曜 社、pp1-359、1990
[2]Mark Weiser、”The Computer for the 21st Century”、pp3-11、1999
[3]佐野 彰:“AR 入門”、工学社、pp22-89、
2013