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国立歴史民俗博物館研究報告 第217集 2019年9月
本稿では,栄山江流域における前方後円墳の築造技術の実態について検討を行った。まず,発掘 調査が行われている前方後円墳について,立地と基礎工程(整地)・墳丘の築造企画・墳丘の築造技術・
墳丘盛土と埋葬施設構築の相関性・外表施設(葺石・周堤・円筒形土器)という視点から,その築 造過程や用いられた技術について基礎的な整理を行った。
次に,その内容について相互に比較を行うことで,前方後円墳の築造技術の特質について検討し た。その結果,整地の方法は様ざまである一方で,墳丘企画については,墳丘長と後円部径の比7:
4を示す事例が大半である点が注目できる。また,前方部や周溝の形態によって,大きく A,B 型 式に大別できた。
墳丘盛土と石室の相関性については,平面的に,墳丘の中心部に石室(玄室)を築造する設計意 図が,全ての事例において確認できる。その一方で,立面的には,石室優先型と折衷型という2つ の類型の設定が可能である。 また,墳丘築造において墳丘外縁に沿って土堤を構築する点(土堤 盛土方式)も共通的である。ただし,土堤の断面形態や高さは多様である。
実は,このような墳丘築造技術の中には,在地の伝統的な古墳においても認められるものも含ま れている。むしろ,前方後円墳の築造の際には,前方後円という墳形(とその企画)のみが新たに 導入されただけで,実際の墳丘築造技術は,地域の伝統的な方式を固守していた可能性が高い。そ のような意味あいにおいて,前方後円墳を築いた集団は,その周辺において伝統的な古墳を築造し ていた集団と,同様な歴史的脈絡の中で活動していたと推定できる。
【キーワード】栄山江流域,前方後円墳,墳丘築造技術,設計,土堤盛土
【論文要旨】
はじめに
❶前方後円墳の検討
❷前方後円墳の築造工程についての検討
❸前方後円墳の性格と出現背景についての予察
おわりに栄山江流域における 前方後円墳の築造技術
林 智 娜
IM Jina