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Nature  Geoscience

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Academic year: 2021

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最近の研究成果トピックス

2.

 地球の70%を占める深海底には、どのような生 命がどのように棲息しているのでしょうか? こ の問い掛けは、地球のフロンティアへ挑む科学者 だけではなく、人類共通のものと捉えられます。

1977年に提案された第3の生物界「アーキア(古 細菌)」は、高温、高塩、動物の腸内などに適応 する特殊な微生物と考えられてきました。しかし 近年、海洋や海底堆積物中におけるその分布や量 が、従来考えられていたよりも桁違いに大きいこ とが明らかになり、一躍注目を浴びています。と ころが、海洋性のアーキアは、実験室での培養が 難しく、深海底でどのような活動を行っているの か、どれくらいの活性をもっているのか(どれく らいの速度で代謝しているのか)といった基本的 な性状でさえも未知な部分が残されていました。

 そこで我々は、実際に深海でアーキアを培養す る研究手法に着手しました。深海底(相模湾中央 部、深さ1,453m)で13C-炭素安定同位体トレーサー 基 質 を 用 い て、 そ の 代 謝 を 調 べ ま す。(

in-situ

 

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C-tracer

法)(図A)。最大405日間の現場実験を 行い、精密なバイオマーカー解析により、アーキ ア由来の膜脂質の分子内同位体比を調べたとこ ろ、新しい代謝経路を発見しました(図B)。こ れはアーキア由来の細胞膜成分を自らリサイクル

するというプロセスで、わずかなエネルギー源を 有効に活用するために発達させたと考えられま す。微生物細胞の複製には、維持生存の1万倍以 上のエネルギーが必要とされます。このためアー キアの先祖や仲間が遺した「使用済み」の膜成分 をリサイクルすることで脂質合成に必要なエネル ギー量を最小にセーブできます。この成果は、

2010年12月号の

Nature  Geoscience

誌に掲載され ました。

 本研究の実験手法により、海底下に生きている 微生物のあらゆる代謝過程を追跡することが可能 になりました。今回の発見の「鍵」である高精度 に有機分子の安定同位体比を追跡・解読する分析 技術は、単に地球生命科学の分野に限らず、多方 面で波及効果があります。生物の食性解析や食品 の産地偽装などの環境・認証分析、アンチドーピ ングなどの薬理検定にも一部実用化が始まってお り、様々な社会システムの技術革新に貢献できる と期待されています。

平成22−24年度 若手研究  「海底下を支配す る性状未知アーキアの特異的代謝の解明とその生 物地球化学的意義」

【研究の背景】

【研究の成果】

【今後の展望】

【関連する科研費】

独立行政法人海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 研究員

高野 淑識

深海底のアーキア︵古細菌︶は︑ 究極の﹁エコ生活﹂をしている

理 工 系

図B    底生性アーキア膜脂質の分子内同 位体比と特異的代謝を示す13C-ト レーサーの不均質的濃集

図A   現場実験 用 潜水艇 深海底 1,453m 作業 様子

(記事制作協力:科学コミュニケーター 五十嵐海央)

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プロセスシアン

プロセスシアンプロセスマゼンタプロセスマゼンタプロセスイエロープロセスイエロープロセスブラックプロセスブラック

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