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連 載 講 座 ―消防統計からのアプローチ―

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Academic year: 2021

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- 37 - はじめに

今回は,火災時に自力避難できない在館 者がいると考えられる施設(病院,老人福祉 施設,保育所等)についてその火災の実態に 迫ってみよう。

今回使用するデータは,消防庁「火災報告」

の業態分類(細分類)において以下の業態に 分類される施設(以下,「災害弱者施設」とい う。)からの建物火災データ(昭和 55 年~平 成 3 年の 12 年間)である。

・老人福祉事業,精神薄弱者福祉事業,身 体障害者福祉事業(以下,総称して,「老 人等福祉施設」という。)

・一般病院

・保育所

使用するデータの内訳を表 1,表 2 に示す。

1.木造建物及び耐火建物からの火災が多い 建物構造別にみた場合,老人等福祉施設 火災及び保育所火災は木造建物及び耐火建 物からのものが多く,一般病院火災は耐火 建物からのものが多くなっている(図 1)。

2.通報時間は一般病院火災で,かけつけ放 水時間は老人等福祉施設火災で大きい

一般病院火災では通報時間に 15 分~17 分程度を要しており,平均的な値(算定条件 は若干異なるが,連載第 3 回(1987 年冬号) では昭和 60 年中の建物火災で,昼間 7.4 分, 夜間 8.9 分としている)の倍程度になってい る(表 3)。このような傾向を示す理由の一っ としては,後述するように,一般病院火災で は発見の遅れがちな放火火災の比率が高い ことが指摘できる。

老人等福祉施設火災でも一般病院火災ほ

クローズアップ‟火災“(20)

財団法人 消防科学総合センター

日 野 宗 門

主任研究員

連 載 講 座

―消防統計からのアプローチ―

災害弱者施設(福祉施設,病院等)火災

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- 38 - どではないが,通報に時間を要する傾向が みられる。また,かけっけ放水時間は他の火 災の場合よりも 1~2 分程度多く要している (表 3)が,これは老人等福祉施設関係施設が, 郊外に立地する場合が多いこともその理由 の一つと思われる。

3.老人等福祉施設の夜間の火災は問題が大 きい

昼夜聞別死者・負傷者発生率(表 4),昼夜

間別被害状況(表 5)のいずれの指標でチェ ックした場合も,一般病院火災,保育所火災 では,昼間と夜間との間には大きな違いは 認められない。しかしながら,夜間の老人等 福祉施設火災は極めて被害が大きくなりや すい傾向のあることが読み取れる。

4.出火は,居室(老人等福祉施設火災),病室 (一般病院火災),教室(保育所火災)から が多い

(3)

- 39 - 老人等福祉施設火災は,昼夜間とも居室か らの出火が最も多く,次いで作業場となっ ている(図 2-a,b)。

一般病院火災では,昼夜間とも病室から の出火が最も多く,次いで一般倉庫,廊下, トイレ等の放火に関係すると思われる箇所 からの火災が多くなっている(図 3-a,b)。

なお 6 で述べるように病院の建物規模が 大きくなると,廊下,トイレといった共用部 分からの放火火災が増大する傾向がみられ る。保育所火災では,昼夜間とも教室からの 出火が最も多く,次いで昼間では調理室,外 周部,夜間では一般事務室,外周部となって いる(図 4-a,b)。

5.火源はライター,タバコ,マッチ,また着 火物は布団・寝具等,袋・紙製品,紙屑が多 い

火災の火源は,老人等福祉施設火災,一般 病院火災では,ライター,タバコ,マッチが 主なものである(図 5-a,b,図 6-a,b)。保育 所では,調理器具や暖房器具も上位を占め ている(図 7-a,b)。

また,老人等福祉施設火災,一般病院火災 では,布団・寝具等,袋・紙製品,紙屑を着火 物とする火災が多い(図 8-a,b,図 9-a,b)。

袋・紙製品,紙屑を着火物とする火災の多く は放火によるものと推測される。なお,保育 所では布団・寝具等を着火物とする火災は

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- 40 - 少なく,代わり

に動植物油が上位 を占める(図 10 -a,b)が,これは調 理に伴う火災と推 測される。

6.放火は一般病 院において特に 多い

一般病院火災に おける放火火災 は,その件数,比 率とも他の災害弱 者施設火災と比較 して大きいものと なっている(図 11, 図 12,図 13)。

火災原因に占め る放火火災の比率 の推移をみた場合 も,一般病院火災 については,ここ 10 年近くはその比 率が 3 割を下回る ことはない(図 14)。

また,病院建物 の規模が大きくな るほど,放火火災 の比率は高くなる 傾向がみられる (図 15)。これは, 病院規模が大きい 程,放火性向のあ

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- 41 - る人の出入りが容

易かつ多くなるこ と,また部屋数が 増えることから死 角空間が生じやす くなることなどが 理由と考えられる。

なお,病院規模 が小さいときは, もともとの死角空 間である一般倉庫 からの出火が多い が,建物規模が大 きくなるにつれ, 病室,廊下,トイレ といった居室や共 用部分からの出火 が増大する傾向に ある(表 6)。

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参照

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