『マ ハー バ ス ツ』「傘蓋記」試訳 (一)
福
井
設
了
傘 蓋 記 が 始 ま る。 ヒ マ ラ ヤ の 彼 方 に ク ン ダ ラ ー と い う名 の 女 夜 叉 神 が 住 ん で い た。 彼 女 は こ の 二 年 の 間 に 五 百 人 づ っ の 子 を 生 ん だ。 千 人 の 子 供 を 生 ん だ と き 彼 女 は 亡 く な っ た。(そ して)こ れ ら の 息 子 た ち が、 バ イ シ ャ ー リの 町 へ (町の) 精 気 を 殺 ぐ た め に 派 遣 され た。 彼 等 は 町 へ 行 っ て、 人 び と の 精 気 を 奪 っ た。 魔 神 力 に よ っ て 造 り 出 さ れ た 疫 病(神)マ ン ダ ラ カ と ア デ ィ バ ー サ が 居 た。 疫 疫 (神) マ ン ダ ラ カ は、 あ る 家 族 に 襲 い か か り、 誰 ひ と り残 さ ず、 皆 (の命 を) 奪 っ て し ま っ た。 ア デ ィ バ ー サ と 云 う疫 病 (神) は、 あ る 地 方 (の人 の命) を 奪 っ た。 そ の 時、 バ イ シ ャ ー リ の 人 び と は 疫 病 (神) ア デ ィ バ ー サ に 襲 わ れ、 多 くの 人 び と が 死 ん だ。 人 び と は、 あ れ こ れ の 神 々 に 祈 っ た。 人 び と は こ の よ う に 考 え た。 ま さ に、 誰 か が や っ て 来 て、 バ イ シ ャ ー リの 人 び と の 苦 悩 を 終 らせ、 も と に 回 復 せ し め て 欲 しい と願 っ た。 そ し て 人 び と は、 カ ー シ ャ パ ・プ ー ラ ナ を 呼 び に や っ た。 「ど うぞ お い で 下 さ い! バ イ シ ャ ー リの 町 の 人 び と に、 人 の で は な い (魔 神 力 に よ る) 疫 病 が 起 り ま し た。 あ な た が お い で 下 さ れ ば 鎮 ま りま し ょ う」 と。 カ ー シ ャ パ ・プ ー ラ ナ は、 バ イ シ ャ ー リへ や っ て 来 た。 し か し、 そ の 疫 病 は 鎮 ま ら な か っ た。 彼 等 は 考 え た。 「カ ー シ ャ パ は や っ て 来 た。 し か し、 バ イ シ ャ ー リ の 人 び と の た め に、 魔 神 力 に よ る 疫 病 を 鎮 め られ な か っ た 」 と。(そ こで) 人 び と は、 か の マ ス カ リ ・ゴ ー シ ャ ー プ トラ を 呼 び に や っ た。 彼 も ま た や っ て 来 た け れ ど、 バ イ シ ャー リの 人 び との た め に、 魔 神 力 に よ る 疫 病 を 鎮 め る こ と は で き な か っ た。(そ こで)人 び と は、 あ の カ ク ダ ・カ ー チ ャ ー ヤ ナ を 呼 び に や っ た。 彼 も ま た や っ て 来 た け れ ど、 バ イ シ ャ ー リ の 人 び と の た め に、 魔 神 力 に よ る 疫 病 を 鎮 め る こ と は で き な か っ た。(そ こで) 人 び と は、 ア ジ タ ・ ケ ー シ ャ カ ン バ ラ を 呼 び に や っ た。 彼 も ま た や っ て き た け れ ど、 バ イ シ ャ ー リ の 人 び と の た め に 魔 神 力 に よ る 疫 病 を 鎮 め る こ と は で き な か っ た。(そ こで) 人 び と は、 か ﹃ マハーバスツ﹄﹁傘蓋記﹂試訳 (一)密 教 文 化 の サ ン ジ ャ イ ン ・ベ ー ラ ッ テ ィ プ ト ラ を 呼 び に や っ た。 彼 も ま た や っ て 来 た け れ ど、 バ イ シ ャ ー リの 人 び との た め に、 人 間 の で は な い 疫 病 を 鎮 め る こ と は で き な か っ た。(そ こ で) 人 び とは、 ニ ル グ ラ ン タ ・ジ ュ ニ ャ ー テ ィ プ トラ を 呼 び に や っ た。 彼 も ま た や っ て き た け れ ど、 バ イ シ ャ ー リ の 人 び と の た め に、 魔 神 力 に よ る 疫 病 を 鎮 め る こ と は で き な か っ た。 バ イ シ ャ ー リ の こ れ ら亡 くな っ た 人 び と の 春 属 た ち の あ る 者 は 天 上 に 再 生 し た。(そ して)そ の う ち の あ る 神 力 の あ る も の は、 バ イ シ ャ ー リの 人 び と に 話 し か け た。 〔254〕 「お 前 た ち が 呼 び よ せ た 人 た ち は、 大 師 で は な い。(自 分を) 大 師 と借 称 して い る も の た ちだ。 こ れ らの 人 た ちは、 バ イ シ ャー リの 人 び との た め に魔 神 力 に よ る疫 病 を 鎮 め られ は しな い。(そ れが できる方は)無 数劫 の年 月 を経 て (は じめて) 世 に 出 られ た 仏 陀、 世 尊 で あ り、一 切 を 包 括 す る智 慧 に も とつ く見 解 を もち、 大 神 通 力、 大 威 徳 を も ち、 総 て を 知 り、総 て を み そ な わ す 正 等 覚 者 ・阿羅 漢 で あ られ る。 村 境 の野 に (そのお方 は) い っ も在 わす の だ よ。 そ の 村 で は 疾病、 争 い 事、 騒 動、 災 い、 苦 悩 は鎮 ま っ た。 あ の方 を お連 れ しな さい。 あの 方 が お い で にな れ ば、 バ イ シ ャー リの人 び との魔 神 力 に よ る疾 病 は鎮 ま るで あ ろ う」 と。 1 王 舎 城 の宮 殿 に素 晴 しい蓮 華 胎 か ら生 れ た 優 美 な方 が お住 い で あ る。 す べ て の 争 い ご とは 鎮 め られ た 煩 悩 に 打 ち克 った あの 方 に よ って。 2 黄 金 に も似 た あ の方 は 町 で も城 市 で も、行 かれ る所 で 災 厄 を鎮 め られ た 土 砂 降 りの 雨 が 花 粉 (を流す ように) 3 素 晴 しい 相 貌 の、 黄 金 に も似 た 日中 の太 陽 の よ うな端 厳 な お顔 の 最 妙 の 香 り高 い戒 と香 を お持 ち の方 を請 じな さい そ うすれ ば 疫 病 は 鎮 ま ろ う。
バ イ シ ャー リに リッチ ャ ビー 族 の トー マ ラ と云 う名 の 廷 臣 が い た。 彼 は多 く の 部 下 と 大 春 属 を擁 し、学 問 が あ った。 彼 は人 び とに請 われ て (使者 として) 派 遣 され た。 「王 舎 城 へ お 出 で 下 さい。そ こに は仏 世 尊 が お わ しま す。 シ ュ レー ニ ヤ ・ビ ン ビサ ー ラ王 に請 われ て滞 在 して お い で に な ります。 仏 世 尊 の も とに 行 っ て、 バ イ シ ャー リの リッ チ ャ ビ ー族 に代 わ って、 仏 世 尊 と僧 団 に恭 しい 挨 拶 を 申上 げ て 下 さい。 無 病 息 災、 快 適 に お 過 ご しか 安 否 を 尋 ね て 下 さい。 それ か ら申上 げ て 下 さい。 『世 尊! バ イ シ ャ ー リの リッ チ ャ ビー (族) に 魔 神 力 に よ る疫 病 が 起 こ りま した。 そ して幾 千 人 もの人 び とが、 不 幸 な 災 厄 に 陥 りま し た。 他 人 の た め に有 用 な らん こ とを 希 われ 他 人 の幸 福 を お求 め に な られ ま す 聖 人 ・世 尊 が、 憐慾 の 心 を も って バ イ シ ャ ー リにお い で 下 され ば と存 じます 』と」 〔255〕か くて トー マ ラ は、 レ ッチ ャ ビー の人 び との (言葉) を 聞 き入 れ て、 し か るべ き従 者 を っれ て、 美 わ しい乗 物 に乗 って バ イ シ ャー リの城 市 を 去 り、王 舎 城 に 向 っ て 出発 した。 さて、 レ ッチ ャ ビー の トー マ ラは、 王 舎 城 に 行 き、 市 内 に入 り、世 尊 を 拝 し、親 近 し、表 敬 す る た め に、 竹林 の カ ラ ン ダ ニバ ーパ 精 舎 へ 進 ん で 行 った。 さ て そ の とき は丁 度、 布 薩 の 日でつ ま り第 十 五 日 目、 満 月 の 日に 当 り、 世 尊 は 五 百 人 の 僧 と他 に数 千 人 の聴 衆 に説 法 され て い た。 法 は 初 め よ く、 中 よ く、終 りよ く、妙 義 深 遠 で、 言 葉 巧 み で、 純 粋 で、 清 らか で、 咬 潔 な梵 行 を説 法 して お られ た。 そ の 時 は、 レ ッチ ャ ビー 族 の トー マ ラは、 乗 物 で 行 け る限 り遠 くま で乗 物 で行 って、 そ こか ら乗 物 を 降 りて歩 い て、 世 尊 の在 わ す と こ ろま で 進 ん で きた。(し か し) 彼 は、 こ の群 が る 大 聴 衆 の中 を(つ き切 って)世 尊 に 親近 す る こ とは 当 然、 不 可 能 で あ っ た。 右 肩 の着 物 を 肩 ぬ ぎ して 世 尊 に 合 掌 敬 礼 して、 世 尊 に偶 を も っ て 申 上 げ た。 4 第十 五 日の 清 浄 な 布 薩 の 日 に 多 くの聖 仙 が た が共 に 集 って お い で にな ります。 帝 釈 天、 三 十 三 天 (と共に、 この方がたに) 尊 敬 され て い る (世尊) は 打 ち克 ち難 い こ とに勝 っ た お方。 5 (御身 は) あ か あ か と光 り輝 き(2)、最 上 の 章 句 を 説 か れ た 法 に よ って この 大 衆 を 喜 ばせ ﹃ マハーバスッ﹄﹁傘蓋記﹂試訳 (一)
密 教 文 化 (それは) 大 き な雲 が 雨水 で大 地 を (潤すよ うに) 人 び とは 世 尊 の言 葉 を蜜 の よ うに 聞 い て (い ます)。 6 大 聖 よ! (聴衆は)清 らか に御 身 の 言 葉 を 受 持 し ます。 (御身) を讃 嘆 しな が ら、合 掌 恭 敬 し 〔256〕 私 等 は (世尊に) 帰 依 致 します と。打 ち克 ち難 い こ とに勝 った お 方 よ。 聴 衆 は大 利 益 を得 て (世尊の御許 に) 行 きつ き ます。 7 世 尊! 私 は トー マ ラ一 族 と同 じ考 えで す 彼等 は 帰 依 して い ます。 世 尊 の み教 え に不 放 逸 で 生 死 (の問題) を終 らせ る で し ょ う。 トーマ ラの偶 が 終 る と大 衆 は道 を あ けて や った。こ の時、レ ッチ ャ ビ ー 族 の ト ー マ ラは世 尊 の も とに 近 よ り、世 尊 の双 足 を頂 礼 し、世 尊 に この よ うに 申 しあ げ た。 「世 尊! バ イ シ ャ ー リの レッチ ャ ビー 族 は、老 い も若 き も、 バ イ シ ャー リ城 内或 い は城 外 に住 む者 も、世 尊 と僧 団 に頂 足 礼 致 しま す。 快 く安 らか に お 過 しで お られ ま す や お 尋 ね 申上 げ よ との こ とで ご ざい ます。 又、 こ の よ うに (世尊に)申 上 げ る よ うに と云 われ ま した。 『世 尊 バ イ シ ャ ー リで、魔 神 力 に よ る 病 気 が起 り、幾 千 とい う人 び とが 不幸 な災 厄 に 陥 りま した。 世 尊 は 人 ・天 界 と も ど もに対 して憐 み深 く、大 慈悲 の お方 で お わ します。 世 尊! ど うか バ イ シ ャー リに赴 き下 さい ま して、 バ イ シ ャー リの人 び との た め に憐 慰 を 乖 れ た ま え と』」 と。世 尊 は 答 え られ た。 「トー マ ラ よ! 如 来 は シ ュ レー ニヤ ・ビン ビサ ー ラ王 に請 われ て滞 在 して い る の で あ る。 行 っ て許 可 を も らっ て来 な さい 」と。 この時 レ ッチ ャ ビ, 一族 の トー マ ラは、 世 尊 の双 足 に頂 礼 し世 尊 と僧 団 を 右続 三 匝 して か ら、王 舎 城 へ 向 っ て 出発 した。 か くして レッチ ャ ビー 族 の ト ー マ ラ は、 シ ュ レー ニヤ ・ビ ン ビサ ー ラ王 の 許 へ 行 った。 彼 は 王 に 快 適 かっ 慶 快 に過 ご され て い る か ど うか の 挨 拶 を 丁 重 に した後 で、 この よ うに 話 し た。 「大 王 よ ! バ イ シ ャー リに 魔 神 力 に よ る疫 病 が 起 りま した。 幾 千 人 の 人 び とが、 不 幸 な災 厄 に 陥 りま した。 私 た ち の総 意 に よ って六 人 の 師 を 召請 致 し ま した。 っ ま
り、 カー シ ャ パ ・フー ラ ナ、 マ ス カ リ ・ゴ ー サ ー リ、 ア ジ タ ・ケ ー シ ャ カ ン バ ラ、 カ ク ダ ・カ ー チ ャ ー ヤ ナ、 〔257〕 サ ン ジ ャ イ ン ・ベ ー ラ ッ テ ィ プ トラ、 ニ ル グ ラ ン タ ・ジ ュ ニ ャ ー テ ィ プ ト ラ (の 諸 師) で した。(し か し) こ の 諸 師 の 来 訪 に よ っ て も、 バ イ シ ャー リ の 人 び と の 魔 神 力 に よ る 疫 病 を 鎮 め る こ と は で き ま せ ん で し た。 大 王 よ! こ こ で 天 神 た ち は レ ッ チ ャ ビ ー 族 に お 告 げ に な り ま し た。 『こ れ ぞ、無 数(の 年 月)を 経 て、 法 の 威 徳 に よ っ て、 人 天 の 世 界 に (は じ め て) い で ま す 仏 陀 ・世 尊 が お わ す。 そ の お 方 こ そ (私 た ち の) 避 難 所、 保 護 者、 最 後 の 頼 り と な る お 方、 神 よ り勝 れ た 方 で あ り、 人 と 天、 竜、 阿 修羅 神、 薬 叉 神、 羅 刹 神、 ヒ シ ャ ー チ ャ神、 ク ン ブ ハ ン ダ 神 の 教 師 で あ られ る 方 で、 そ の 方 が 村 境 い の 野 に お い で に な れ ば、 そ こ で は 仏 の 威 神 力 に よ っ て、 法 の 威 神 力 に よ っ て、 僧 団 の 威 神 力 に よ っ て、 疾 病、 争 い ご と、 災 い は 皆、 鎮 ま っ た。 あ の お 方 を 請 ぜ よ。 あ の お 方 が お い で に な れ ば、 バ イ シ ャ ー リの 人 び と の 間 の 魔 神 力 に よ る 病 気 は 鎮 ま る で あ ろ う』 と。 大 王 よ! ど うか 憐 慾 を 垂 れ 給 わ っ て、 世 尊 が バ イ シ ャ ー リ に お い で に な る こ とを お 許 し下 さ い 」 こ の よ う に 云 わ れ て シ ュ レ ー ニ ヤ ・ビ ン ビ サ ー ラ 王 は、 レ ッ チ ャ ビ ー 族 の トー マ ラ に こ う云 っ た。 「バ シ ス トハ の 子 よ! も し、世 尊 が 王 舎 城 か らバ イ シ ャ ー リへ 行 か れ る と き、 私 が 自 国 の 国 境 ま で 随 従 す る よ うに、 バ イ シ ャ ー リ の レ ッ チ ャ ビ ー 族 も 自 分 の 国 境 ま で、 同 じ よ うに お 出 迎 え す る な ら、 世 尊 が 王 舎 城 か らバ イ シ ャ ー リ へ お い で に な る こ と を 私 は 承 認 す る 」 と。 こ の 時、 レ ッ チ ャ ビ ー 族 の トー マ ラ は、 シ ュ レー ニ ヤ ・ビ ン ビ サ ー ラ王 の こ と ば に 聞 き 入 っ て 居 た が、 バ イ シ ャ ー リの 大 衆 集 会 に 使 い を 出 し た。 「バ シ ス トハ の 子 た ち よ! シ ュ レ ー ニ ヤ ・ビ ン ビ サ ー ラ 王 は こ の よ う に 云 わ れ た 」。 こ の 時、 これ ら の 使 者 た ち は、 レ ッ チ ャ ビ ー 族 の トー マ ラ の 云 う こ とを 聞 い て か ら、 バ イ シ ャ ー リへ 行 っ て レ ッ チ ャ ビ ー 族 の 大 衆 集 会 に 報 告 し た。 「バ シ ス トハ の 子 た ち よ! シ ュ レーニ ヤ ・ビ ン ビ サ ー ラ 王 は、 レ ッ チ ャ ビ ー 族 の トー マ ラ に こ う 話 さ れ た。 『世 尊 が 王 舎 城 か らバ イ シ ャー リま で 行 か れ る と き、 私 が 自 国 の 国 境 ま で 随 従 す る よ うに、 バ イ シ ャ ー リ の レ ッ チ ャ ビ ー 族 も 自 分 の 国 境 ま で、 同 じ よ う に お 出 迎 えす る な ら、 世 尊 が 王 舎 城 か ら バ イ シ ャ ー リへ お い で に な る こ と を 私 は 承 認 す る 』」と。 こ の よ う に 云 わ れ て、 バ イ シ ャ ー リの レ ッ チ ャ ビ ー 族 は、 彼 等 使 い の 者 に (原 文欠 落) バ シ ス トハ の 子 ら よ! シ ュ レ ー ニ ヤ ・ビ ン ビ サ ー ラ 王 に レ ッ チ ャ ビー 族 ﹃ マ ハーバスツ﹄﹁傘蓋記﹂試訳 (一)
密 教 文 化 の 大 衆 集 会 に 代 わ って、 『大 王 よ! バ イ シ ャー リの レ ッチ ャ ビー 族 一 同 は 〔258〕世 尊 を レッチ ャ ビー 族 の 国 境 い ま で お 迎 え致 します 』とお 伝 え下 さい 」 と。 この時、 か の使 者 た ち は レ ッチ ャ ビー族 の大 衆 集 会 の (言葉を) 聞 い て、 王 舎城 へ行 き、 トー ラマ に報 告 した。 この時、 レ ッチ ャ ビー 族 の トー ラ マ は、 使 者 た ち の言 葉 を 聞 いて シ ュ レー ニ ヤ ・ビン ビサ ー ラ王 の 許 へ行 って、 王 に こ の『 よ うに 申上 げ た。 「大 王 よ! バ イ シ ャー リの レ ッチ ャ ビー族 一 同 は 世 尊 を お 迎 え致 します。 ど うか 憐 懲 を もっ て世 尊 がバ イ シ ャー リへ お い で に な る こ とを お 許 し下 さい」 と。 シ ュ レー ニ ヤ ・ビン ビサ ー ラ王 は、 世 尊 が バ イ シ ャー リへ 行 かれ る こ とを承 諾 した。 大 臣 た ち は、 王 舎 城 か らガ ン ジ ス川 の 岸 に 到 る まで の道 を、 サ イ コ ロを 振 る板 の よ うに平 らで 凹 凸 な く掌 の よ うに し、 日除 けを 張 り、 明色 の美 しい 布 を 敷 き つ め (きれいな薄布 の) 多 くの 繕 練 を は りめ ぐ ら し、 香 を薫 じ、水 を 撤 き、 散 花 を散 らす よ うに命 じられ た。 「世 尊 とそ の 弟子 た ち 僧 団 がバ イ シ ャ ー リへ 行 かれ る に あた って、 ガ ン ジ ス川 を渡 る 船橋 を 組 み た て よ! 半 ヨー ジ ャナ 毎 に 亭 をつ く り、飯 食 物 を 用 意 し、 ベ ッ ドを 準備 し、世 尊 とそ の弟 子 た ち僧 団 演 安 楽 にな る よ うあ らゆ る設 備 を用 意 せ よ。 そ うす れ ば、 世 尊 とそ の 弟 子 た ち僧 団 が、 王 舎 城 か らバ イ シ ャー リへ 安 楽 に おい で に なれ よ う」 と。 8 諸 天 の (願いは) 心 に よ っ て (満た され) 王 の (願いは) 命 令 に よ って (満たされ た) 富者 の (願いは) 直 ち に (満た され) 貧者 の (願いは) 辛 苦 に よ って (満たされ る) と。 王 は命 令 し、大 臣 た ち は命 令 され た とお り一 切 の 準 備 を した。 世 尊 は 僧 団 とと もに 出 発 され た。 シ ュ レー ニ ヤ ・ビ ン ビサ ー ラ王 は (二輪) 戦 車 と軍 隊、 王 妃、 王 子、 大 臣、 従 者 を 従 え、 多 くの繕 練、 憧 幡 をっ け た、 王 にふ さわ しい 五 百 の 傘 蓋 を もた せ、 王 の 偉 大 な威 徳、 王 の偉 大 な富 徳、 壮 大 な 荘 厳 も って、 バ イ シ ャー リへ 行 か れ る世 尊 に 随従 した。 半 ヨー ジ ャナ 毎 に止 ま りなが ら、(遂 に) 自分 の 領土 内 の ガ ンジ ス川 の岸 まで (着いた)。 バ イ シ ャー リ の レッチ ャ ビー 族 は 〔259〕シ ュ レー ニ ヤ ・ビ ン ビサ ー ラ王 が世 尊 に 随 従 して、
王 舎城 か らバ イ シ ャー リに進 んで 来 てい るそ の さ まを 聞 い た。 聞 い て (彼等 も) ま た、 バ イ シ ャー リ (の町) か ら、 ガ ン ジ ス川 の 岸 辺 まで のバ イ シ ャー リの レ ッチ ャ ビー 族 の 国 境 い に到 た る まで の道 を、 サ イ コ ロを 振 る板 の よ うに平 らで 凸 凹 な く掌 の よ うに し、水 を撤 き、 散 花 を散 ら し、 日除 け を張 り、 明 色 の 美 し い 布 を 敷 きつ め、(き れいな薄 布の) 繕 練 を は りめ ぐら し、香 を薫 じて準 備 した。 あ ち ら こ ち ら に は、 パ ン トマ イ ム の役 者、 踊 り子、 棒 使 い、 力士 た ち が 手 拍 子 を 打 って 歌 い なが ら立 っ て い た。 世 尊 とそ の弟 子 僧 団 の た め に、 半 ヨー ジ ョナ 毎 に 亭 を っ く り、(ベ ッドを用意 し) 飲 み物 を しつ らえ、 食 べ物 を 準 備 した。 バ イ シ ャ ー リの城 市 の中 か ら八 万 四千 の戦 車 を整 列 させ、(さ らに) 十六 万 八 千 の 戦 車 が 列 べ られ た。 それ らは旗 を立 て、 楽 しげ な音 を立 て、 花 環 で 飾 られ、 傘 蓋 や 施 旗、 憧 幡 を 立 て た。(人 びとは) 香 りよい 花 環 を も っ て、 それ ぞれ の 戦 車 に 昇 って い た。 王 の偉 大 な威 徳、 王 の偉 大 な富 徳 で あ っ て、 大 衆 の 大 きな 喚 呼 の 声、 太 鼓、 小 鼓、 腰 鼓、 螺 貝 の音 の どよ め き の な か を バ イ シ ャー リの 城 市 か ら、 ガ ン ジ ス川 の岸 辺 ま で世 尊 を 出迎 え、 世 尊 に表 敬 の た め に 出 て い った。 こ れ が 彼 等 の 準 備 の しか た で あ っ た。 こ こ で レ ッチ ャ ビ ー 族 た ちは、 紺 青 の毛 並 み の 馬、 紺 青 の戦 車、 紺 青 の手 網、 鞭、 紺 青 の旗 竿、 紺 青 の着 物、 紺 青 の飾 り、紺 青 の タ ーバ ン、 紺 青 の傘 蓋、 紺 青 の勲 章、 宝 石、 靴、 払 子 な どの 標 章 を も って い た。 こ こで そ の こ とを こ う云 われ る。 9 紺 青 の馬、 紺 青 の戦 車 紺 青 の手 網、 鞭、 タ ーバ ン 紺 青 の 五 種 の 標 章 紺 青 の 着 物 と飾 り (であ る) こ こで レッチ ャ ビー 族 た ち は、 黄 色 の馬、 黄 色 の戦 車、 黄 色 の 旗 竿、 黄 色 の 着 物、 黄 色 の 飾 り、黄 色 の タ ーバ ン、 黄 色 の傘 蓋、 黄 色 の勲 章、 宝 石、 靴 (な どの標章を も っていた)。 こ こで そ の こ とを こ う云 われ る。 10 黄 色 の 馬、 黄 色 の 戦 車 黄 色 の 手 網 と鞭、 ター・バ ン ﹃ マ ハーバスツ﹄﹁傘蓋記﹂試訳 (一)
密 教 文 化 黄 色 の五 っ の標 章 黄 色 の 着 物 と飾 り。 こ こで レッチ ャ ビー 族 は鮮 紅 色 の 馬、 鮮紅 色 の戦 車、 鮮 紅 色 の鞭 と旗 竿、 鮮 紅 色 の着 物、 鮮 紅 色 の 飾 り、鮮 紅 色 の ター バ ン、 鮮 紅 色 の傘 蓋、 鮮 紅 色 の宝 石、 靴、 払 子 な どの 標 章 を 持 って い た。 こ こで そ の こ とを こ う云 わ れ る。 11 鮮 紅 色 の 馬、 戦 車 鮮紅 色 の 手 網、 鞭、 旗竿 鮮紅 色 の 五 つ の 標 章 鮮 紅 色 の着 物 と飾 り。 ここ で レ ッチ ャ ビー 族 は 赤 い 馬、 赤 い戦 車、 赤 い 鞭 と旗 竿、 赤 い着 物、 赤 い 飾 り、赤 い タ ー バ ン、 赤 い 傘蓋、 赤 い勲 章、 宝 石、 靴、 払 子 な どの標 章 を も っ て い た。 こ こで そ の こ とを こ う云 われ る。 12 赤 い馬 と戦 車、 赤 い 手 網、 鞭、 と旗 竿 赤 い 五 つ の標 章 赤 い 着 物 と飾 り。 こ こで レッチ ャ ビ ー族 は、 白い 馬、 白い 戦 車、 白 い鞭、 旗 竿、 白い 着 物、 白 い 飾 り、 白い タ ーバ ン、 白い 傘 蓋、 白い 勲 章、 白い宝 石、 靴、 払 子 な どの標 幟 を も って い た。 こ こで そ の こ とを こ う云 われ る。 13 白 い 馬、 白い 戦 車 白 い 手 網、 鞭、 旗 竿 白 い 五 つ の 標 章 白 い着 物、 飾 り。
こ こで レ ッチ ャ ビー 族 は、 黄褐 色 の 馬、 黄褐 色 の 戦 車、 黄褐 色 の 手 網、 鞭、 旗 竿、 黄褐 色 の着 物、 黄褐 色 の 飾 り、黄褐 色 の ター バ ン、 黄褐 色 の 傘 蓋、 黄 褐 色 の勲 章、 黄褐 色 の 宝 石、 靴、 払 子 な どの 標 幟 を も って い た。 こ こで そ の こ と を こ う云 われ る。 14 黄 褐 色 の馬、 黄 褐 色 の戦 車 黄 褐 色 の手 網、 鞭、 旗 竿 黄 褐 色 の五 っ の標 章 黄 褐 色 の着 物 と飾 り。 こ こ で レ ッチ ャ ビー族 は 色 と り ど りの 馬、 色 と り ど りの戦 車、 色 と り ど りの 手 網、 鞭、 旗 竿、 色 と り ど りの着 物、 色 と り ど りの飾 り、 色 と り ど りの ター バ ン、 色 と り ど りの 傘 蓋、 色 と り ど りの 勲 章、 色 と りど りの 宝石、 靴、 払 子 な ど の 標 幟 を も って い た。 こ こで そ の こ とを こ う云 われ る。 15 色 と り ど りの 馬、 戦 車 色 と り ど りの手 網、 鞭、 旗 竿 色 と り ど りの標 章 色 と り ど りの着 物、 飾 り。 こ こで レ ッチ ャ ビー族 は 金 色 の傘 蓋 を もち、 さま ざま に 飾 りた て た 象 に (乗 っていた)。 こ こで レッ チ ャ ビ ー族 は あ らゆ る 宝 石 で飾 っ た 金 の 輿 に 乗 って い た。 こ こで レ ッチ ャ ビー族 は旗 を た なび か せ た金 の戦 車 が、 楽 しげ な 音 を た て、 投 げ刃 物 や 斧 を持 ち、 傘 蓋 や 憧 幡 を掲 げ て い た。 この よ うな 情 景 の 威 徳、 この よ うな 情 景 の次 第、 この よ うな情 景 の集 会、 この よ うな情 景 の 王 の 富 徳、 こ の よ うな情 景 の繁 栄、 この よ うな 情 景 の 壮 大 な こ と、 この よ うな情 景 の (素 晴 しい)荘 厳 の な か を、 バ イ シ ャ ー リの レ ッチ ャ ビー族 は、 十 六 万 八 千 台 の車 で、 ゴ ー シ ュ リン ギ ーや ア ー ム ラパ ー リカー、 そ して大 衆 も世 尊 を ガ ン ジ ス川 の 岸 辺 まで 出迎 え た。 ガ ンジ ス川 の 向 う岸 で、 世 尊 は シ ュ レー ニ ヤ ・ビ ン ビサ ー ラ王、 マ ガ ダ国 のバ ラモ ン僧 た ち に法 を 説 い て 諭 され、 激 励 され、喜 ば され、 ﹃ マ ハーバスツ﹄﹁傘蓋記﹂試訳 (一)
密 教 文 化 マ ガ ダ国 の バ ラモ ン僧 八 万 四 千 人 に法 を して 法 に っ い て、 明 確 な 理 解 に立 た し め られ た。 〔262〕バ イ シ ャー リの レッチ ャ ビー族 の方 を 見 られ て、そ して 比 丘 た ち に話 しか け られ た。 「比 丘 た ち よ! 君 た ち は 以前、 三 十 三 天 (神) が ス ダ ル シ ャナ城 か ら園苑 に 出 た の を 見 た こ とが な い。 さて、 今、 バ イ シ ャー リの レ ッ チ ャ ビ一族 を 見 な さい」 「なぜ で す か?」 「比 丘 た ちよ! (彼等 には) 三 十 三 天 (神) が ス ダル シ ャ ナ城 か ら園 苑 に 出か けて 行 っ た あ の よ うな 威 徳 が あ る 」 16 繁 栄 と (正 しい) 政 事 を (互いに) 和 み乍 ら統 治 して い る こ とよ! 同族 た ちは! こ の よ うに レ ッチ ャ ビー族 の中 にお い で の 時 大 師 は 彼 等 を 諸 神 に な ぞ らえ られ た。 17 比 丘 ら は未 だ三 十 三 天 を 見 た こ とが な い。 (三十三天 は) 園 苑 へ行 っ た ので あ るが (それ は) こ の よ うな集 ま りで レッチ ャ ビー 族 の この 勢 い 盛 ん な よ うな もの で あ っ た。 18 金 色 の 傘 蓋 を あ る もの は 象 に 他 の もの は 金 色 の輿 に 他 の もの は 金 色 の 戦 車 に つ け て レッチ ャ ビー 族 は 近 づ い て来 た。 19 全 て の春 属 は相 い 会 した。 若 き も、 中 年 も、 老 人 も 真 紅 の着 物 を 着 飾 っ て ま ば ゆい ば か りに 飾 り立 て て (世尊) を 出迎 え た。 この 時 に は ガ ン ジ ス川 に、 シ ュ レー ニヤ ・ビ ン ビサー ラ王 に よ って、 バ イ シ ャー リ (国) の 内、 外 (に亘 って) また ガ ン ジ ス川 の カ ンバ ラ とア シ ュバ タ ラ と い う竜 族 に よ って、 船橋 が 構 築 され た。 「世 尊 は 私 た ちの この (船橋) で お 渡 り
に な る だ ろ う」 と。 お うむ の ゴー シ ュ リ ンギ ー の こ とば で、 世 尊 とそ の 弟子 僧 団 は 明 日の食 事 に招 請 され た。 世 尊 は黙 然 と して諾 われ た。 か の お うむ は、 仏 陀 の 威 神 力 に よ って、 世 尊 の沈 黙 に よ って (世尊が招請 を) 承 諾 され た こ とを知 った。 彼 は 世 尊 に頂 足 礼 を して、 世 尊 と弟 子 僧 団 を右 続 して 帰 って行 っ た。 そ して、 尊 敬 す べ き ゴー シ ュ リ ンギ ー女 に近 づ い て云 った。 「あ な た に代 っ て、 世 尊、 如 来、 阿羅 漢、 正 等 覚 者 とそ の 弟 子 僧 団 を 明 日の 食 事 に招 請 申上 げ、 か の世 尊 の 沈 黙 に よ って 承 諾 され ま した 」 略 号 表 と 註
BHSD Buddhist Hybrid Sanskrit Grammar and Dictionary, vol. i. Grammar, vol. ii. Dictionary; F. Edgerton, New Haven, 1953.
Edg. see above
Mvy. Mahavyutpatti & Index: R. Sakaki, Kyoto, T. 5. (1916) Lank. The Lankavatara Sutra: B. Nanjio, Kyoto, 1923.
Prajn-vy. Abhisamayalamkaraloka Prajnaparamita-vyakhya: U. Wogihara, Tokyo, 1932, Repr. Tokyo, 1973.
pw. Sanskrit-Worterbuch in Kbrzerer Fassung: o. Bohtlingk, 1886, Repr. Tokyo, 1976.
Will. A Sanskrit-English Dictionary: Monier Monier-Williams, Oxford, 3rd ed.
(1) i. 254. 1.
Senatet 原 訂 ye ete tubhyehi anita asastaro asastara-vadino na ete sakta
写 本BC ubhyamhi stara sa. ssata
写 本B hi aniti asa
写 本C hi aniti asa staro vadino naite sa
Edg. は 此 の 一 行 を 取 上 げ、 こ と に asastara-vadino に つ い てBHSDの vadin の 項 で、 次 の よ う に 述 べ て い る。'who are noteachers but call themselves teachers
(so mss., Senart em. wrongly)' 写 本BCは Edg. の 意 見 を 支 持 し、 写 本BとCは 原 訂 を 支 持 し て い る。
Mvy. 9084, 9093, 9094 に vibhajya-vadinab, lokottara-vadinah, nah が あ る。 こ の 合 成 語 の-vadin の 用 語 例 は、"∼一を 説 く 者、 ∼一な り と 云 う 者" の 意。
Lank, Prajn-vy. の 用 法 を 参 照 し、Edg. の 意 見 を 支 持 し sastara-vadino と 読 む。
(2) i. 255. 17.
virocamano bhasasi uttamam padam
B mano bha
C sami utta
﹃
マ
密
教
文
化
Jones は こ の pada を 'Shining forth thou fillest tivith thy radiance the farthest ways.' と 訳 し て い る。 問 題 は bhasasi の 根 で あ る。 私 は bhas と 理 解 し て い る。