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OYO11.2.JIRE-6.ec6

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(1)

はじめに

 ワンドとは河川内環境構造の一つで,河川敷の孤立し た水域や,一部が流路と接続した入り江状の止水的環境 を指す.これらのワンド環境は,出水時に土砂の移動や 河岸の侵食が起こり,河川が流路を変更した際に,旧流 路の跡地に形成されることが多い(傳田ほか 2002).ワ ンド環境は一般的に植物が良く繁茂し流速が小さく,同 時に水位変動が激しいことなどから,河川に生息する魚 類稚魚の成育場や増水時の避難場所として重要な役割を 果たすことが知られている(Halyk & Balon 1983;傳田 ほか 2002;河合 2003).  近年の河川改修事業によって日本国内のワンド環境は 急速に失われつつあり,結果としてワンドを利用する多 くの生物の生存が困難な状況になっている(紀平 1989; 河合 1989,2003).その一方で,生物多様性回復を目的 として人工的なワンドを新たに造成する試みが各地でな されはじめた(君塚 1998;傳田ほか 2002;武田・松尾 2005).しかし,国内において人工ワンドにおける生物群 集を調査した事例は少なく,とりわけ,河川感潮域や汽 2007年5月4日受付,2008年7月31日受理 * e-mail: [email protected]

宮崎県北川の河川感潮域に造成した人工ワンドにおける魚類,カニ類,甲虫類の定着状況

中島 淳

・江口 勝久・乾 隆帝・西田 高志・中谷 祐也・鬼倉 徳雄・及川 信

九州大学水産実験所 〒811|3304 福岡県福津市津屋崎2506

Jun NAKAJIMA * , Katsuhisa EGUCHI, Ryutei INUI, Takashi NISHIDA, Masaya NAKATANI, Norio ONIKURA, and Shin OIKAWA: Inhabitation of an artificial backwater zone (wando-pool) in the estuarine basin of the Kitagawa River, southern Kyushu, by fish, crabs, and insects. Ecol. Civil Eng. 11(2), 183-193, 2008.

Fishery Research Laboratory, Kyushu University, Tsuyazaki 2506, Fukutsu, Fukuoka, 811-3304 Japan

Abstract: We surveyed fish fauna from 2001 to 2006, and crab and insect fauna in 2006 in

an artificial wando-pool in the Kitagawa River, Gokasegawa River System, Miyazaki Prefec-ture, Japan. The artificial pool is located 4 km upstream of the river mouth, and it is 50 m in width, 400 m in length, and average of 1.5 m in depth. This pool was constructed in 2001 to replace the natural wando-pool lost that was due to river improvement. In this sur-vey, we recorded 72 fishes, 12 crabs, and 7 insects. The number of fish species captured in the artificial pool was almost identical to that in the earlier natural pool. In addition, various species of fishes, crabs, and insects were captured in the tidal flat and the Zostera

japonica vegetation zone present along the waterfront of the pool. These results indicate

that the species diversity in the artificial pool is identical to that in the natural pool, and this species diversity was maintained despite the diversified environments at the waterfront. In addition, this artificial pool also varied in other aspects and exhibited roughness of the bottom, substantial differences in water depth and salinity, and formation of a halocline. We assume that the diversified environment of not only the waterfront but also other places contributed to maintenance of the species diversity in this artificial pool.

Key words: spontaneous regeneration, river ecosystem, blackish water, biodiversity,

endan-gered species

CASE STUDY

(2)

水域に造成された人工ワンドにおける生物群集の調査事 例はこれまでにない.  宮崎県北部を流れる五ヶ瀬川水系北川は,これまでに 165種の魚類の採集記録があり,九州本土でも魚類の種 多 様 性 が き わ め て 高 い 河 川 の 一 つ で あ る(江 口 ほ か 2008).本河川では,2001年に汽水域の自然ワンドを掘 削により取り除き,代替措置として人工ワンドが造成さ れている.著者らは以後6年間にわたり,その人工ワン ドにおいて魚類相のモニタリング調査を行っている.本 報では魚類相のモニタリング結果と,2006年に行ったカ ニ類,甲虫類の調査結果をもとに,感潮域に造成された 人工ワンドにおける生物の定着状況についての事例を紹 介する.

材料と方法

調査地の概要  五ヶ瀬川水系北川は大分県南部を水源とし,延岡市で 五 ヶ 瀬 川 と 合 流 す る 流 域 面 積590.2km2,流 路 延 長 50.9km の一級河川である.調査を行った宮崎県延岡市 川島地区の人工ワンドは,五ヶ瀬川の河口から約4km の場所に位置する(Fig.1A).2001年より以前は,川島 橋の下流に自然のワンド(以下旧ワンドとする)が存在 していたが,流量確保を目的とした河床掘削により撤去 された.調査を行った人工ワンドはこの旧ワンドの代替 環境として,川島橋上流の河川敷を掘削することにより 2001年春季に造成された.人工ワンドは当初,間口約 50m,奥行き約600m,左岸側に1:5,右岸側に1: 2の傾斜,全体の深さは TP|150cm で掘削された.2004 年より人工ワンド右岸側の一部が除去され,現在では奥 行きは約400m となっている(Fig.1B).周辺の植生は河

Fig. 1. Location of the survey site (A) and detailed sur-vey points (B)in the Kitagawa River, southern Kyushu, Japan

調査を行った宮崎県北川の人工ワンドの位置(A) と調査地点の詳細(B)

(3)

川敷のものをそのまま残し,主にヨシ・ヤナギ群落で形 成されている(Fig.2A).なお,人工ワンドはその下流に 河口堰などの人工構造物がないため,潮の干満の影響を 強く受け,大潮の最満潮時と最干潮時で1m 程度の水深 変化が生じる. ワンドの環境構造の計測  2003年3月18日と2005年3月22日の最満潮時と最 干潮時の2回,人工ワンド内の3定点 a,b,c において (Fig.1B),水深の計測を行った.定点 a,b,c は人工ワ ンドの湾口部からそれぞれ100,200,300m に位置する. 2回の計測結果から平均水深をもとめ,人工ワンド造成 後からの各定点における水深の経年変化を確認した.な お,潮位には一般に年変動が生じるが,気象庁が公開し ている潮位観測情報データでは,宮崎県日南市油津にお ける2003年3月18日と2005年3月22日の平均潮位は それぞれ TP|5cm,TP+5cm であり,両日で大きな差 が生じていなかったため,今回は水深の測定結果に対し て特に補正を行わなかった.  水温と塩分については,人工ワンド内の定点 c と本流 の定点 d において(Fig.1B),2005年5月22日の最干潮 時,同23日の最満潮時,9月1日の最干潮時,同2日の 最満潮時,2006年1月29日の最満潮時,同31日の最干 潮時に,それぞれ表層から50cm ごとに計測した.定点 dは本流の川島橋下で最大水深となる場所である.測定 はハンディ SCT メーター(Model30M, YSI/Nanotech Inc.) を用いて行い,5月,9月,1月における人工ワンドと 本流における塩分と水温の季節変化と水深の変化に伴う 動態を比較した. 魚類の採集と解析  魚類の調査は,2001年(7,8月),2002年(9月), 2004年(9 月),2005年(3,5,7,9,11月),お よび2006年(1,3,5,7,9月)に行った.採集は 小型地引網(目合い2mm)を用いて,岸に沿って毎回 約80m2 の面積を曳網した.同時に,投網(18節1200 目),サデ網(目合い1mm),および潜水採集を約60分 間補足的に行った.採集は大潮の満潮時と干潮時に2回 行った.採集した魚類は,体長の計測と個体数の計数を 行った.現場での同定が困難な一部の種類については, 10%中性ホルマリン溶液で固定し,研究室に持ち帰った. これらの種の同定は主に中坊(2000)に従った.  魚類相の経年変化の比較については,調査回数や季節 による出現種の相違による影響を無くすため,夏季の1 回分の調査結果を用いて行った.2001年は8月,2002年 から2006年は9月の採集データを用いた.また,1998 年から2000年にかけて掘削により消滅した旧ワンドお よびその周辺において8月に実施された魚類調査のデー タ(河川学術研究会北川研究グループ未発表データ)と の比較を行い,魚類の代替生息環境としての人工ワンド の評価を試みた.なお,1998年から2000年に行われた 旧ワンドとその周辺水域の魚類調査は,地引網,投網, サデ網に加えて刺網も使用して行われている. カニ類・甲虫類の採集  カニ類,甲虫類の調査は2006年7月に行った.干潮時 に人工ワンドの水際域を1周し,タモ網(長径30cm, 短径25cm,目合い1mm)を用いて約60分の任意採集 を行った.採集した個体は70%アルコールで固定し,研 究室に持ち帰った.  カニ類の同定は鹿児島の自然を記録する会(2002),鈴 木・佐藤(1994)に,甲虫類の同定は主に上野ほか(1985) に従った.

Fig. 2. Photograph of the artificial wando-pool (A) and tidal falt formed in the closed-off section of bay (B) 人工ワンドの全体像(A)と人工ワンド奥に出現した干潟(B)

(4)

結 果

環境構造  ワンドの平均水深の経年変化を Fig.3に示す.人工ワ ンドは,平坦に掘削されたが,年を追うごとに変化がみ られ,湾口部に近い定点 a および b は浅くなり,湾奥部 の定点 c 付近では深くなる傾向が認められた.  人工ワンド内の微環境構造にも経年変化が生じ,2002 年ごろから人工ワンド奥部に泥干潟が形成されるととも に(Fig.2B),その近隣にコアマモ(Zostera japonica)の 小規模な群落が生じはじめ,小規模ながら現在まで藻場 を形成している.さらに2005年ごろより湾口部に砂礫干 潟が形成された.  人工ワンドと本流の満潮,干潮時における水深の変化 に伴う塩分,水温の動態を Fig.4と5に示す.ワンド, 本流ともに塩分については満潮,干潮問わず水面下1m より深い水深で塩分躍層が生じていた(Fig.4).水温は, 夏季(9月)に本川よりも人工ワンドの方が高い傾向を 示した(Fig.5).また,冬季(1月)の底層の水温は, 人工ワンドよりも本川の方が若干高い傾向を示した (Fig.5). 採集された魚類と年変化  2001年から2006年にわたる調査により,72種の魚類 が採集された(Table1).採集された総種数は,2001年 が28種,2002年が28種,2004年が26種,2005年が56 種,2006年が39種であった.環境省版レッドリスト(環 境省 200

3)に掲載されている種として,クボハゼ(Gym-nogobius scrobiculatus)(絶滅危惧 IB 類),アカメ(Lates

japonicus)(準絶滅危惧),シロウオ(Leucopsarion petersii) (準絶滅危惧)の3種の生息が確認された.クボハゼは 人工ワンド口部の礫干潟を中心とした場所で,アカメは 人工ワンド奥部のコアマモ域を中心とした場所でそれぞ れ採集された.シロウオは産卵遡上の途中と思われる個 体が岸際で採集された.  つぎに,夏期に採集された魚種数の年変化を調べた (Fig.6).人工ワンドで得られた種数は2001年の造成直 後から2006年にかけてほぼ一定であり大きな変化はな かった.また,2001年から2006年にかけて人工ワンド で採集された魚種数の平均±標準偏差は26.3±4.0種で あり,1998年から2000年の3年間に旧ワンドおよびそ の周辺水域で採集された魚類種数の平均27.3±5.7種と 比較して違いが認められなかった. 採集されたカニ類  カニ類は12種が確認された(Table2).環境省版レッ ドリスト(環境省2006a)に掲載されている種として, シオマネキ(Uca arcuata)(絶滅危惧Ⅱ類),カワスナガ ニ(Deiratonotus japonicus)(準絶滅危惧)の2種の生息 が確認された.それぞれ個体数は多くないが,シオマネ キは人工ワンド奥部の干潟域に,カワスナガニは人工ワ ンド口部の砂礫の水中にそれぞれ生息していた.特に多 くみられたものとして,クロベンケイガニ(Chiromantes

dehaani,ベンケイガニ(Sesarmops intermedium),アシ ハ ラ ガ ニ(Helice tridens tridens),チ ゴ ガ ニ(Ilyoplax

pusilla)の4種が挙げられ,前3種はワンド周辺のヨシ 群落内から水際域に,またチゴガニは人工ワンド奥部の 干潟上に多く生息していた.また,個体数はそれほど多 くなかったが,モクズガニ(Eriocheir japonicus)幼体, タイワンヒライソモドキ(Ptychognathus ishii),ケフサイ ソガニ(Hemigrapsus penicillatus)が水中の礫間で採集さ れた. 採集された甲虫類  甲虫類は7種が確認された(Table3).環境省版レッド リスト(環境省 2006b)に掲載されている種として,ヨ ドシロヘリハンミョウ(Callytron inspeculare)(絶滅危惧 Ⅱ類)の生息が確認された.個体数は比較的多く,人工 ワンド奥部の干潟域を中心とした地域に生息していた. このほか,レッドリストなどに掲載されていないものの, これまで国内の生息地がわずか4地点とされる(Yoshi-tomi & Nakajima 2005)ク ロ シ オ ガ ム シ(Horelophopsis

hanseni),全国的に生息数が減少している(Nomura 1998; 新井ほか 2005)アシベアリヅカムシ(Prosthecarthron

sauteri),九州での生息確認地点が少ない(中島 2005)

Fig. 3. Annual changes of water depth at each measured

points (see Fig. 1B) in the artificial wando-pool 人工ワンドの各計測地点(Fig. 1B 参照)における 水深の変化

(5)

Fig. 4. Seasonal changes of salinity in artificial wando-pool and main stream

of the Kitagawa River in May, 2005 (◆), September, 2005 (●), and January, 2006 (▲)

人工ワンドと本流の塩分濃度の季節変化.2005年5月(◆),2005年9 月(●),2006年1月(▲)

Fig. 5. Seasonal changes of water temperature in artificial wando-pool and main

stream of the Kitagawa River in May, 2005 (◆), September, 2005 (●), and January, 2006 (▲)

人工ワンドと本流の水温の季節変化.2005年5月(◆),2005年9月(●), 2006年1月(▲)

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Table 1. A list of the fish collected in the artificial wando-pool inthe Kitagawa River. Year Japanese Name Scientific Name 2006 2005 2004 2002 2001 No. Elopidae + − + − − Karaiwashi 1 Elops hawaiensis Megalopidae − + − − − Isegoi 2 Megalops cyprinoides Anguillidae + − − − + Unagi 3 Anguilla japonica Clupeidae + + + + + Konoshiro 4 Konosirus punctatus Engraulidae − + − − − Katakuchi-iwashi 5 Engraulis japonicus Cyprinidae − − + − − Hasu

6 Opsariichthys uncirostris uncirostris

− − + − − Kawamutsu 7 Zacco temmincki − + + − − Oikawa 8 Z. ptatypus + + + + + Ugui 9 Tribolodon hakonensis Plotosidae + − − − − Gonzui 10 Plotosus lineatus Osmeridae − − + − − Wakasagi 11 Hypomesus nipponensis Plecoglossidae + + − − − Ayu

12 Plecoglossus altivelis altivelis Syngnathidae + − − − − Okuyouji 13 Urocampus nanus − − − + − Ganten-ishiyouji 14 Hippichthys penicillus Mugilidae + + + + + Bora

15 Mugil cephalus cephalus

− + + + + Sesujibora 16 Chelon affinis − + + − − Menada 17 C. haematocheilus + + − − + Kobora 18 C. macrolepis − + − + − Nanyoubora 19 Moolgarba perusii Hemiramphidae − + − + − Sayori 20 Hyporhamphus sajori Platycephalidae − + − − − Magochi 21 Platycephalus sp.2 Cottidae − + − − − Kamakiri 22 Cottus kazika Latidae − + + − − Akame 23 Lates japonicus Moronidae + + − − + Hirasuzuki 24 Lateolabrax latus − + − − + Suzuki 25 Lateolabrax japonicus Carangidae − − − + − Ikekatsuo 26 Scomberoides commersonianus + + + − − Minami-ikekatsuo 27 S. tol − − − − + Kasumiaji 28 Caranx melampygus + + + + + Gingameaji 29 C. sexfasciatus + + − − − Onihiraaji 30 C. papuensis − + + + + Ronin-aji 31 C. ignobilis Leiognathidae + + + + + Hiiragi 32 Leiognathus nuchalis

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Year Japanese Name Scientific Name 2006 2005 2004 2002 2001 No. Lutjanidae − + − − − Gomafuedai 33 Lutjanus argentimaculatus + − − − − Kurohoshifuedai 34 L. russelii Gerreidae + + + + + Kurosagi 35 Gerres equulus − + − + − Daimyousagi 36 G. japonicus + + + + − Yamatoitohikisagi 37 G. microphthalmus Sparidae + + − + + Hedai 38 Sparus sarba + + + + + Kurodai 39 Acanthopagrus schlegelii + + + − + Kichinu 40 A. latus + − − − − Minamikurodai 41 A. sivicolus Teraponidae + + + + + Kotohiki 42 Terapon jarbua + + + + + Shimaisaki 43 Rhyncopelates oxyrhynchus Kuhliidae + − − − − Yugoi 44 Kuhlia marginata Eleotridae − + − + − Chichibumodoki 45 Eleotris acanthopoma − + − + + Okamehaze 46 E. melanosoma Gobiidae + + − + − Tobihaze 47 Periophthalmus modestus − − − − + Chiwarasubo 48 Taenioides cirratus − + − − − Bouzuhaze 49 Sicyopterus japonicus − + − − − Nanyoubouzuhaze 50 Stiphodon percnopterygionus + + − − − Shirouo 51 Leucopsarion petersii − + − − − Mimizuhaze 52 Luciogobius guttatus + + − − + Tanehaze 53 Callogobious tanegasimae + + − − − Sumiukigori 54 Gymnogobius petschiliensis − + − − − Nikuhaze 55 G. heptacanthus − + − − − Kubohaze 56 G. scrobiculatus + + + + + Biringo 57 G. breunigii + + + + + Urohaze 58 Glossogobius olivaceus + + + + + Mahaze 59 Acanthogobius flavimanus + + − + + Ashishirohaze 60 A. lactipes + + − − − Himehaze 61 Favonigobius gymnauchen − − − − + Noborihaze 62 Oligolepis acutipennis + + + + + Hinahaze 63 Redigobius bikolanus + + − − − Abehaze 64 Mugilogobius abei + − − − − Sujihaze A 65 Acentrogobius sp. A + + − + − Gokurakuhaze 66 Rhinogobius giurinus + + − − − Yoshinobori 67 Rhinogobius spp. + + − − − Chichibu 68 Tridentiger obscurus Scatophagidae − + − − − Kurohoshimanjyudai 69 Scatophagus argus Sphyraenidae − + − − − Onikamasu 70 Sphyraena barracuda Paralichthyidae − + − − − Hirame 71 Paralichthys olivaceus Tetradontidae − + + + + Kusafugu 72 Takifugu niphobles

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キバネキバナガミズギワゴミムシ(Armatocillenus aestu-arii)の3種の希少種の生息が確認された.これらの種は いずれも,人工ワンド左岸側の満潮時には水没する砂礫 の斜面にみられた.また,同様の環境にはキバナガミズ ギワゴミムシ(Armatocillenus yokohamae)やナギサハネ カクシ属の一種(Bryothinusa sp.)がきわめて多く生息し ていた.

考 察

 本調査により,河川敷を掘削して作られた人工的なワ ンド環境において,造成後6年間で,魚類72種,カニ類 12種,甲虫類7種の合計91種もの生物が生息環境とし て利用している状況が明らかとなった.その中には,6 種の絶滅危惧種も含まれており,希少種にとっても新た に造成されたワンド環境が生息場所として機能すること が確認された.旧ワンドとその周辺で1998年から2000 年の夏季に採集された魚類種数と,人工ワンドで2001年 から2006年に採集された魚類種数に差はなく,失われた 旧ワンドの代替環境として,人工ワンドは十分に機能し ていると考えられる. 人工ワンド内の微環境構造とそこに生息する生物  今回の結果から,人工ワンドには多種多様な生物が定 着していることが明らかとなったが,これらの生物は人 工ワンドの中に一様に生息しているわけではない.ここ では現地の採集状況などを踏まえて,具体的にどのよう な環境にどのような生物種が生息していたのかについて, また生物多様性維持に効果的と思われる人工ワンドの環

Fig. 6. Annual change of number fish species in the old

wando-pool (1998-2000) and artificial wando-pool (2001-2006) in summer

旧ワンド(1998∼2000年)と人工ワンド(2001∼2006 年)の夏季に採集された魚類種数の経年変化

Table 2. A list of the crabs in the artificial wando-pool of the Kitagawa River

Japanese Name Scientific Name Grapsidae Taiwanhiraisomodoki 1 Ptychognathus ishii Mokuzugani 2 Eriocheir japonicus Kefusaisogani 3 Hemigrapsus penicillatus Akategani 4 Chiromantes haematocheir Kurobenkeigani 5 C. dehaani Futabakakugani 6 Perisesarma bidens Benkeigani 7 Sesarmops intermedium Hamagani 8 Chasmagnathus convexus Ashiharagani 9 Helice tridens tridens

Ocypodidae Shiomaneki 10 Uca arcuta Chigogani 11 Ilyoplax pusilla Kawasunagani 12 Deiratonotus japonicus

Table 3. A list of the insects collected in the artificial wando-pool of the Kitagawa River

Japanese Name Scientific Name Cicincelidae Erizahanmyou 1 Cylindera elisae Yodoshiroherihanmyou 2 Callytron inspeculare Carabidae Kibanekibanagamizugiwagomimushi 3 Armatocillenus aestuarii Kibanagamizugiwagomimushi 4 A. yokohamae Staphylinidae Ashibearizukamushi 5 Prosthecarthron sauteri Nagisahanekakushi-zoku 6 Bryothinusa sp. Hydrophilidae Kuroshiogamushi 7 Horelophopsis hanseni

(9)

境構造について述べたい.  まず,人工ワンドを取り囲むヨシ原域では,甲虫類で はヨドシロヘリハンミョウ,カニ類ではクロベンケイガ ニ,ベンケイガニ,アシハラガニ,魚類ではトビハゼ (Periophthalmus modestus)などの生息が確認された.今 回の人工ワンドではもともと河川敷にあったヨシ植生域 を保存する形で掘削を行っているが,これはカニ類や甲 虫類の生息場所をいち早く創出するという点できわめて 有効であったものと思われる.  水際域の緩傾斜の岸際では,甲虫類ではキバナガミズ ギワゴミムシ,キバネキバナガミズギワゴミムシ,アシ ベアリヅカムシ,クロシオガムシ,ナギサハネカクシ属 の一種,魚類ではビリンゴ(Gymnogobius breunigii)やマ ハゼ(Acanthogobius flavimanus)の幼魚,アシシロハゼ (Acanthogobius lactipes)な ど の 小 型 ハ ゼ 科 魚 類 (Gobiidae),ギンガメアジ属(Caranx spp.)の幼魚,ボ ラ科魚類(Mugilidae)が採集された.人工ワンドの右岸 部は当初から1:5の傾斜をつけて造成されており,こ れらの斜面にキバナガミズギワゴミムシ類やクロシオガ ムシが生息していたことから,ある程度の傾斜角をつけ て掘削したことはこれらの生物の生息場所を創出する点 で重要であったものと考えられる.この傾斜部では潮の 干満によって水面が上下し,それに合わせて水際域を移 動し摂餌を行う小型のハゼ類や遊泳性魚類稚魚が多くみ られたことから,これらの魚類にとっても緩い傾斜が岸 部に存在することが生息場所として重要であると思われ る.海域での事例ではあるが,柳(1997)は人工的に造 成した緩傾斜護岸(Gentle slope embankment)が,藻類 の種多様性増大に貢献し生物生産力を高めたことを報告 している.これまでの研究事例は多くないが,自然再生 において,緩傾斜護岸と生物生産の関係は今後注目すべ き課題である.  人工ワンド奥部の干潟域では,干潮時には甲虫類でヨ ドシロヘリハンミョウ,エリザハンミョウ(Cylindera elisae),カニ類でチゴガニ,シオマネキ,魚類でトビハ ゼの生息が確認された.また,満潮時にはヒイラギ

(Leiog-nathus nuchalis)やコトヒキ(Terapon jarbua),クロサギ 属魚類(Gerres spp.)の稚魚の群れがそれぞれ多く確認 された.これらのことから,感潮域ワンドにおいて干潟 域が出現するような環境構造は特に魚類稚魚にとって重 要であるものと考えられる.  潮の干満によって干出と水没を繰り返す干潟環境に特 異的に生息する種は多く,干潟環境の高い生物生産能力 や水質浄化能力は周辺環境に大きな影響を与えることが 知られている(菊池 1993,2000;加納 2000).小規模 ではあるものの,この干潟が餌生物の供給や水質浄化と いう観点から,人工ワンド内の生物多様性維持に与えて いる影響は大きいものと考えられる.本人工ワンドでは, 奥部で泥や砂が良く堆積し,多様な底質環境を有した干 潟が自然に出現した.潮の干満の影響が大きい感潮域の 入り江状の構造では,その奥部に自然に泥が堆積し干潟 が出現する.したがって,泥の堆積が容易になるように, 奥部には比較的緩やかな傾斜を造成することが必要であ ると考えられる.  また,干潟に引き続く浅い場所で,干潮時に干出しな い場所ではコアマモの群落が自然に出現し,その場所で はアカメやヨウジウオ科魚類(Syngnathidae)が採集さ れた.藻場が生物生産に与える重要性についてはこれま で数多くの報告があり(相生 1996,2000など),干潟と 同様にこのコアマモ群落が人工ワンド内の生物多様性維 持に与える影響は大きいものと考えられる.  水深1m より深く塩分濃度の高い場所では,クロダイ 属(Acanthopagrus spp.),ギンガメアジ属,ボラ科魚類 の大形個体,マハゼやウロハゼ(Glossogobius olivaceus) の成魚などが多数目視確認された.人工ワンドの底層は 当初平坦に掘削されたが,年月の経過と共に複雑なもの となり,深く掘れた場所では満潮時に水深2m を超える 場所も出現した.塩分濃度の測定結果から,塩分濃度は 水面下1m より底層で高いことがわかった.水深の浅い 場所は,前述したように多くのカニ類,甲虫類,魚類幼 稚魚の生息場所としては重要であるが,塩分濃度の変化 は激しく,本調査では干潮時に水深1m より浅くなる場 所では塩分躍層が生じていなかった.汽水域に生息する 魚類でも種類によっては,低すぎる塩分濃度では生存が 困難になることがあることから,干潮時でもある程度の 塩分濃度を維持できるような,水深の深い場所を造成す ることで,より多様な成長段階・種類の魚類の生息場所 として機能することが期待される.  以上より,多くの生物が人工ワンドに生息しているこ とは明らかであるものの,それらはワンド内に一様に分 布しているわけではなく,それぞれ利用する環境が異な っている.したがって,本人工ワンドにおいて多様な生 物種の生息が可能である要因の一つとして,多様な環境 構造を有していることが大きいと考えられる.今後,各 種の好適生息環境をより定量的に,微環境構造に注目し て調査する必要はあるが,人工的なワンドを掘削する上 で,周辺植生を可能な限り残すこと,および岸部の傾斜 を緩やかにすることは,多様な生物の生息場所を提供す

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るという点で非常に重要なことと考えられる.さらに, 感潮域ではある程度の水深を維持することで,塩分躍層 を常に維持することができ,同時にそこが比較的大型の 魚類の生息場所になることから,ワンド全体を浅くする のではなく,水深の深い場所も合わせて造成することが 重要であると考えられる. 今後の人工ワンドの維持  旧ワンドと異なり,人工ワンドを掘削した場所は,本 川が左カーブする対岸にあたることから,増水時にはし ばしばワンドに激しい水流がぶつかる.人工ワンドの増 水による構造変化のモデルを Fig.7に記す.人工ワンド では,増水時に湾奥部の右岸側を乗り越えて本川から強 い水流が通過する.実際に2005年秋には,台風の影響に よる増水でこの部分が決壊した.現在,この決壊部分は 石組みにより修復されているが,造成直後から増水時に はしばしばこの部分を乗り越えて本川からの水が通過し たために,その対面がかなり深くえぐられている.しか しながら,この水の通過により,結果的に人工ワンド湾 奥部と湾口部に土砂が堆積し干潟が生じ,同時に水流が ぶつかる部分では水深の深い場所ができたと考えられる ため,生物の生息環境の創出という観点からはこれらが 悪い影響であるとはいえない.また,このような増水に よるフラッシュアウトがワンド環境を健全に維持するこ とも知られている(君塚 1998).本来であれば,このよ うな河川敷のワンド環境は洪水のたびにその位置や形状 を変化させ,そのつど生物の生息場所を提供するものと 考えられるが,人間活動との共存を考えた場合,自然に 任せるということは実際に不可能である.生物の生息場 所としてのワンド構造を維持するためには,補強工事や 改修工事を効果的に継続的に行っていくことも必要であ ると考えられる.  今後は,同様のモニタリング調査を引き続き継続して いくとともに,生物各種の生息場所を微環境構造に注目 してより細かい視点でも解明していきたいと考えている.

謝 辞

 本研究をとりまとめるにあたり,有益なご助言を頂い た,九州大学工学研究院の島谷幸宏教授,同河口洋一助 教,甲虫類についてご教示いただいた,国立科学博物館 の野村周平博士,(株)環境指標生物の吉冨博之博士,九 州大学総合博物館の丸山宗利博士,および魚類調査につ いてご指導いただいた元九州大学農学研究院教授の松井 誠一博士に厚くお礼申し上げる.本研究は河川生態学術 研究会北川研究グループによる河川環境総合調査の一環 として実施されたものである.

摘 要

 宮崎県延岡市の五ヶ瀬川水系北川の河川感潮域に人工 的に造成されたワンドにおいて,2001年から2006年に かけて,生物の定着状況について調査を行った.  人工ワンドは,従来あった天然の既存ワンドが河川改 修により失われるため,その代替環境として,その上流 の河川敷を,間口50m,奥行き400m にわたって新たに 掘削して造成されたものである. 1.調査の結果,72種の魚類,12種のカニ類,7種の甲 虫類が採集され,合計91種の生物の生息場所として機 能していることが明らかとなった. 2.ワンドの底層は年を追う毎に起伏が生じ,平坦に造 成された底層は5年後には浅い場所と深い場所で約

Fig. 7. Conformational change of artificial wando-pool

by river flow.

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100cm もの差が生じていた.塩分躍層は,満潮時,干 潮時ともに水面下1m より深い水深で生じていた. 3.ワンドの奥部には泥干潟やコアマモ域が自然に生じ, それらの環境を好む魚類,カニ類,甲虫類が定着した. 4.従来あった天然の旧ワンドと人工ワンドにおいて, 夏季に出現した魚類種数に大きな違いはなく,人工ワ ンドが旧ワンドの代替環境として十分に機能している ものと考えられた. 5.感潮域において生物多様性保全を目的とした人工ワ ンドを今後造成する際には,安定した塩分躍層が出来 るように,干潮時でも1m 以上の水深を確保する構造 にすること,水際域や干潟が自然に出来るように,造 成時に緩傾斜区間を多く配置すること,また,ヨシ植 生域をなるべく残すこと,など多様な環境構造を創出 することを意識して設計することが特に重要と考えら れた. 引用文献 相生啓子(1996)藻場生態系―アマモ場を中心に―.遺伝 50 (7): 24-29. 相生哲子(2000)アマモ場研究の夜明け.海洋と生物 131: 516-523. 新井志保・野村周平・亀澤洋(2005)アシベアリヅカムシの 日本国内及び琉球列島での記録.甲虫ニュース 151: 19. 傳田正利・山下慎吾・尾澤卓思・島谷幸宏(2002)ワンドと 魚類群集∼ワンドの魚類群集を決定づける現象の考察∼. 日本生態学会誌 52: 287-294. 江口勝久・中島淳・西田高志・乾隆帝・中谷祐也・鬼倉徳雄・ 及川信(2008)宮崎県北川の魚類相.九州大学大学院農学 研究院学芸雑誌 63: 15-25.

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Fig.  1. Location of the survey site  (A)  and detailed sur- sur-vey points  (B) in the Kitagawa River, southern  Kyushu, Japan
Fig.  2. Photograph of the artificial wando-pool  (A)  and tidal falt formed in the closed-off section of bay  (B) 人工ワンドの全体像(A)と人工ワンド奥に出現した干潟(B)
Fig.  3. Annual changes of water depth at each measured  points  (see Fig.  1B)  in the artificial wando-pool 人工ワンドの各計測地点(Fig.  1B  参照)における 水深の変化
Fig.  4. Seasonal changes of salinity in artificial wando-pool and main stream  of the Kitagawa River in May, 2005  (◆) , September, 2005  (●) , and  January, 2006  (▲)
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参照

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