高岡 キ ャンパスでの栄養教育 の試 み

全文

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富 山大学保 健管 理 セ ンター高 岡支所   宮 元芽久美

L〔egunli RIiyamoto: The Practice of Nutrition Education at Takaoka Campus

< 索 引用語 :食 育 ,栄 養教育 ,大 学生 >

<Keywords:shokuiku, nutrition education, college student>

は じめ に」

社 会情勢 の変 化 を背景 と して、脂質摂 取 の増 加 や不規則 な食事形 態 とい った食生活 の乱 れが指摘 され るよ うにな って きた。 これ とと もに、肥満 ・ 糖尿病 とい った生活 習慣 病 が若 い世代 に も増加 し て きてお り、改 めて、食 に対 す る関心 が高 ま って きて い る。 こうい った情勢 の中で、最近 「食育」

とい う言葉 が改 めて クローズア ップ され るよ うに な って きた。

平成 12年 3月 に、食生活指針 が当時 の文部省 ・ 厚生 省 ・農林水産 省 で策定 され、平成 17年 6月

に は食育基本法 が設定 され た。農林水産省 の発表 した食育推進 の しくみを図 1に しめす。食育 とは 表 1に 示 す よ うに、 国民 が、生涯 を通 じた健 全 な 食生 活 の実現、 食文化 の継 承、 健康 の保持 等 が は かれ るよ う、 自 らの食 につ いて考 え る習慣 や食 に 関 す る様 々な知識 と食 を選択 す る判 断力 を楽 し く 身 に付 けるための学習等 の取 り組 みを さ して い る。

表 2に は教育 関係者 の責務 と して、積極 的 に食育 を推進す るよ う努 め る事 が明記 されている。最近、

小 ・中学 校 や地 域社会 で は食 育 に関す る試 みが な されて い るが、大学 と して は、栄養関係 や医学系 の学部等 限 られ た場合 をのぞ いて は、 キ ャ ンパ ス 全体 と して食育 を推進 す るよ うな試 み はまだな さ れて いない よ うで あ る。

保健管理 セ ンターは、 キ ャンパ ス全体 と しての共 通機関であること、健康教育が重要な職務の一つ であることか ら、今後食育 に関 して も積極的に関 わ ってい く必要があると考え られる。食育の柱 と して、健全な食生活の知識 と実践 ・食文化の継承 ・ 食 の安全があげ られ るが、 セ ンターとしての教育 では、実際 は健全な食生活の知識 と実践 に限定 さ れて くるのはやむを得 ないであろう。最近では、

セ ンターのスタッフに栄養士をむかえ積極的に栄 養教育を行 っている大学 も見 られる。

高岡キ ャンパ スでは、食 を通 して将来的な生活 習慣病の予防につ いての理解 を深 めることを 目的 として、平成 13年 より管理栄養士を健康 ア ドバ イザーとして迎え、栄養 セ ミナーを開催す ること とな った。本文では、今 までの活動 の報告 と今後 の抱負 について述べたい。

セ ミナー内容 について」

本 セ ミナーで は、調理実習だけに終 らず、食を 通 して将来的な生活習慣病の予防についての理解 を深 めることを目的 としている。 まず手始め とし て、身近 な疾患である、貧血 ・便秘 ・高脂血症 ・ 骨粗霧症 などをテーマと して選んでいる。一般 に 食生活 と関係の深い疾患 として、糖尿病 ・高血圧 ・ 心疾患等が挙 げ られるが、 これ らの疾患 は大学生

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図 1 食 育推進の仕組み

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表 1 食 育基本法 第一章  総 則

(目的)

第一条   こ の法律 は、近年 における国民 の食生活 をめ ぐる環境 の変化 に伴 い、国民生涯 にわ た って健全 な心身を培 い、豊かな人間性 をは ぐくむための食育 を推進す ることが、緊 要 な課題 とな っていることにかんがみ、食育 に関 し、基本理念 を定 め、及 び国 ・地方 公共団体等 の責務 を明 らか にす るとともに、食育 に関す る施策 の基本 となる事項 を定 め ることによ り、食育 に関す る施策 を総合的かつ計画的に推進 し、 もって現在及 び将 来 にわたる健康で文化的な国民 の生活 と豊 かで活力 のある社会 の実現 に寄与す る事 を

目的 とす る。

(国民の心身の健康の推進 と豊かな人間形成)

第二条  食 育 は、食 に関す る適切 な判断力を養 い、生涯 にわた って健全 な食生活 を実現す る ことによ り、国民の心身 の健康 の推進 と豊かな人間形成 に資す ることを旨と して、行 われなければな らない。

表 2 食 育基本法

(教育関係者等及 び農林漁業者等の責務)

第十一条  教 育並 びに保育、介護 その他 の社会福祉、医療及び保健 (以下 「教育等」 とい う。) に関す る職務 に従事す る者並 びに教育等 に関す る関連機関及 び関連団体 (以下 「教育 関係者等」 とい う。)は 、食 に関す る関心及 び理解 の増進 に果 たすべ き重要 な役割 にか んがみ、基本理念 にの っとり、 あ らゆる機会 とあ らゆる場所 を利用 して、積極的に食 育 を推進す るよ う努 め るとともに、他 の者 の行 う食育の推進 に関す る活動 に協力す る

よ う努めるもの とす る。

(国民の責務)

第十三条  国 民 は、家庭、学校、保育所、地域 その他 の社会 のあ らゆる分野 において、基本 理念 にの っとり、生涯 にわた り、健全 な食生活 の実現 に自ら努 めるとともに、食育 の 推進 に寄与す るよう努 めるものとす る。

に はな じみが薄 いよ うで あ る。 このためよ り身近 な疾患 を選択 した。表 3に 今 までの実施報告 を示 す。

① 貧 血

一過性の脳虚血や低血圧による症状を貧血 と誤認 している学生 はかな り多い。医学的な 貧血の正 しい意味の理解 と、学生 に多 い貧血 の種類 と症状 についての説明を主 としているも

毎年 4月 の定期健康診断における採血検査

に お い て 、 男 子 Hb 14.Og/dl,女 子 Hb 12.Og/dl未満 を貧血 と して い るが、 例年貧 血者 は、 7〜 10%で 、男子 Hb 12.Og/dl, 女子 Hb 10.Og/dl未満 の高度 の貧血 を呈す

るものは、約 2%で ある。 ほとん どが鉄欠乏 のパ ター ンを示 しているため、栄養学的な指 導 と して、鉄分 の多 い食品や吸収 のよい摂取 方法 などの説明を行 っている。

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表 3  栄 養セ ミナー実施表

講師  本 学健康 ア ドバ イザー ( 管理栄養士) 本学健康管理医

森本鈴子氏 宮元芽久美

年 度 テ ー マ 疾患 テーマ

13年度 第 1 回 手軽でおい しい、貧血 によい食事 貧 血

第 2 回 野菜た っぷ り、お手軽 メニュー 健 やかな腸のために 便 秘 第 3 回 コツコツといまの うちか ら骨太 メニ ュー 骨粗藤症 14年度 第 1 回 コレステロールを減 らして体の中か らサラサラきれいに しよう 高脂血症

第 2 回 体 脂肪減量大作戦 体脂肪

15年度 第 1 回 コ レステ ロールを減 らして体 の中か らサ ラサ ラに しよ う 高脂血症

第 2 回 便秘解消 !体 内ス ッキ リ、お肌つ るつ る 便 秘

16年度 第 1 回 今度 こそ !ダ イエ ッ ト〜体脂肪バイバイメニュー〜 体脂肪

第 2 回 ネ ラルたっぷ り !〜 こころも、体 も絶好調〜 ミネ ラル と

健康 障害 17年度 第 1 回 コ レス テ ロール、 体脂肪 が気 にな る人 へ〜食事 でお い しく改善 す るポ

イ ン ト

高脂血症

第 2 回 知 って安心 !胃 の病気 胃 炎

② 便 秘

便秘で以前か ら悩んでいると保健管理セ ン ターに相談 にや って くる学生が多いことか ら 本 テーマを選択 した。

平成 13年 11月 に本 キ ャ ンパ ス 1年 生 185名 、 2年 生 20名 、計 205名 に便秘 と生活習慣 についてのア ンケー ト調査をお こ な った。便秘であると答えた学生 は 33%を

しめた。生活習慣のア ンケー トについては、

表 4に 示す。

便秘学生 と便通正常学生 にわけて、生活習 慣 につ いての集計 を行 った。 (図 2参 照)統 計学的な処理 は行 っていないが、便秘学生 は、

水分摂取 ・乳製品 ・野菜の摂取が少 な く運動 習慣 も少 ない。 また トイ レを我慢す る傾向に あるよ うである。 この結果を もとに、排便を 促す生活習慣 についての指導 と食品について の講義をお こな った。

③ 骨 粗髯症

骨密度 は 20歳 か ら30歳 ごろに最大 とな り、 その後老化 とともに減少す る。 しか し、

最近では、過度のダイエ ッ ト・運動不足等 に より骨密度が年齢の平均値 よ り低下 している 学生 も見 られ る。 本 キ ャンパ スで は、 平成 13年 に希望者 86名 に超音波法 による骨塩 定量 を行 った (腫骨で測定)。 80%未 満 の 異常者 は認 め られ なか ったが、 80%以 90%未 満が 3.5%認 め られた。学生 に聞 いてみると骨粗霧症 は聞いたことがあるが、

どういった疾患か という矢日識 はあまりないよ うである。

そ こで、疾患 についての説明 とともに、骨 粗霧症 を防 ぐための生活習慣 ・栄養摂取 につ

いてセ ミナーを開催 した。

④ 高 脂血症

本 キ ャンパ スで は、平成 13年 より 1年 生

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① 水 分をよくとりますか ?

② 乳 製品 (牛乳 ・ヨーグル ト等)を よく食べますか?

③ 野 菜を毎食たべますか?

④ イ ンスタント食品をよく食べますか?

⑤ 一 日3食 たべますか?

⑥ 食 事の時間はだいたい決まっていますか ?

⑦ バ ランスよく食品をたべていますか

③ 運 動 (簡単な体操等を含む)を していますか?

⑨ ス トレスがたまっていますか?

⑩ よ くトイレを我慢 しますか?

⑪ 家 族に便秘の方はいますか?

表 4 便 秘 と生活習慣 ア ンケー ト

図 2   便 秘 と生活習慣 ア ンケー トよ り

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と専 攻 科 生 に定 期 健 康 診 断 の際 に血 清 脂 質 (総 コ レステ ロール ・HDL― コ レス テ ロール 0 中性脂肪)を 測定 しているが、総 コ レステロー ル値 220 mg/dl以 上 の異 常 者 は5.0〜8.8%

認 め られ る (表 5)。 特 に専攻科 1年 生 の総

■便 秘

│□正 常

コレステロール値の異常者は非常 に多 く、間 診す ると、食習慣 ・生活習慣 の乱れが認 め ら れる。特 に食習慣 において、 イ ンスタン ト食 品摂取 の増加 (カップ麺)・ 夜食 の摂取が総 コレステロール値上昇の大 きな要因 となって

ぴ ♂

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表 5 年 度別総 コ レステロール値異常者の割合

総 コレステロール (mg/dl)

220以上 200以 上 〜220未 満

200未 満 平 成 14年度 22A 8.6% 43A 16.7% 192A

74.79る 平成 15年 度 12ノヽ 5。0% 26ノヽ 10.896 202ノ`

84.29イ 平成 16年 度 22A 8.8% 22A 8.8% 207A

いる。 また運動不足 も大 きく影響 しているよ うである。本 キ ャンパ スでは、専攻科生 は造 形 ・デザイ ンの学生が 78〜 80%を 占めて いて (9割 以上 は本学 出身者)、専攻科 に入 学す る前の本科 2年 生 の後期 は課題 ・卒業制 作 に忙殺 され、食事 はカ ップ麺や菓子類だ っ た り、夕食が 21時 以降の夜間であ った りと 食生活 にまで気が回 らないといった実態があ る。 また、 1年 生 は前年度冬季の入試 シーズ ンにはやはり食生活が乱れ、運動不足 となっ ていることが、背景因子 として存在す る。

セ ミナーでは、高脂血症 による影響 につい ての医学的な説明を中心 とし、放置による危 機感を持たせるとともに、生活習慣を見直 し、

自己管理の必要性 を納得 させ ることを目的 と している。栄養学的にはコレステロール含有 量の多い食品の理解 と実際の調理法 ・メニュー

を具体的に説明す るよ うに している。

⑤ 体 脂肪

最近 の学生 (特に女子学生)は ダイエ ッ ト に非常 に関心がる。本 テ=マ は学生か らの希 望 もあ ったため行 った。本 キ ャンパ スでは、

毎年 5〜 6月 頃 に体育 の授業の体力測定の際 に体脂肪を測定 しているが、 その際に体脂肪 を減 らすにはどうした らよいか といった質問 が非常 に多い。食事抜 きやかたよ った食品摂 取 による間違 ったダイエ ッ トをす るのではな く、健康的にやせ ることを認識 させ ることを 目的 としている。

⑥  ミ ネ ラルと健康障害

某飲料 メーカーの コマー シャルで ミネラル バ ランス・とい った言葉が よ く流 れ、 また 健康 ブームにの ってニガ リが注 目され、 ミネ

ラルに対す る関心が高 まって きた。

ミネラルって何 ?と いった疑問 もよ く耳 に するよ うにな り本テーマを行 うこととなった。

ミネラルの中か ら代表的なカル シウム ・鉄 ・ マグネシウム ・亜鉛をとりあげ、不足による 健康障害 とそれ らの含有量の多い食品につい ての解説を行 っている。

⑦ 胃 炎

課題 ・試験 その他 さまざまなス トレスにさ らされているためか、胃痛 を訴えて受診す る 学生 は多 い。投薬後安心す るためか、東J激物 を摂取 した り、消化の悪い ものをたべていた りと食生活 には注意を払 っていないケース も よ くある。そ こで本 テーマを行 うこととなっ た。最近話題 の ピロ リ菌の話 も含めて、症状 のあるときの一般的な食事内容を中心 にセ ミ ナーを開催 した。

参加状況」

10数人〜 30名 程度の参加者である。毎年課題 提出などの学業 との兼ね合 いもあ り、第 1回 に比 べ第 2回 は参加者が少なくなる傾向にある。また、

第 2回 の参加者 は 1回 目も参加 した リピーターが 多 く、幅広 い参加者をつのることも今後 の課題の 一つである。

参加者 の感想 は良好である。健康教育的な観点

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だけでな く、学科 を超えた学生同士の交流 という 点で も成果があるようである。

今後の展望」

食育基本法の成立 によ り、幼稚園か ら小 ・中学 での栄養教育が行われるようにな って きている。

こういった教育を受 けて きていない現在の大学生 に対 し、食 についての情報を正 しく理解 し、 自ら 判断で きるよ う、基礎的な知識を提供す ることは 非常 に重要 である。 マスメデ ィアで食 についての 情報があ=、れている現在、 この情報 を正 しく活用 す るためにも食 と健康 についての教育 は不可欠で あろ う。

大学 とい う大 きな学生集団の中で、保健管理 セ ンター主催の自由参加型 の健康教育を行 うのは非 常 に困難 な状況である。 まず学生全体 に知 らせ る 事が困難である。 ポスター掲示や学内の放送 を流 して も、 なかなか注意を引 くことはで きない。 ま たそれぞれの専門の学部等の講義 と違 って、単位 には関係 しないこと、学業以外のサークルやアル バイ トに時間をとられることなども参加者が少な い大 きな理 由のひとつである。 こういった現状の 中で、 いかに学生達 の興味を引 き、参加意欲 を持 たせ るかは将来 に渡 っての大 きな課題である。

[文献]

1)食 育基本法 (平成十七年法律第六十三号) 2)内 閣府 :食育基本法パ ンフレッ ト 「食育の推

進 に向けて」

3)農 林水産省 :わ が国の食生活の現状 と食育の 推進 について

4)厚 生労働省 :平成 15年 国民健康 ・栄養調査 結果

5)堀 部 敦 子 ,食育 、 そ の展 開 ,保健 の科 学 , Vo146, Nol, 4‑8, 2004

6 ) 河 野美穂,古畑公,国民健康づ くり運動 の推進 と 「食育」 ,保健の科学,Vo146,Nol,9‑13, 2004

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参照

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