発達 障害大学生支援 におけるナラテ ィブ ・アセスメ ン ト

全文

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富山大学保健管理 セ ンター 西 村優紀美

Narrative assessment for students with developmental disorders Yukimi Nishimura (Center for Health Care and Human Sciences)

1 。  は じめ に

近年、発達障害大学生への教育的支援の必要性 が注 目され、多 くの大学では、発達障害の基本的 な理解のための研修が行われている。 しか しなが ら、具体的な臨床像がうかみに くい中で、 日々訪 れて くる発達障害大学生の問題 に対応 し、本人の 修学上の困難 さに対す る支援が行われているのが 現状である。発達障害 に関す る研修会では、 いわ ゆるLD、 ADHD、 高機能 自閉症 スペク トラム 障害の典型的な事例 の紹介 と個別的な支援方法 に 終始 してお り、 このよ うな研修では、障害特性 に 対す る対応 とい う点 の理解 は得 られて も、実際に は一人 ひとり異 なる状態像を持つ個別の学生 に対 して、典型例 に示 されたような対応策が うま く適 合 しない場合がある。学生相談担当者か ら見 た場 合、誰 もがす ぐにわか るよ うな典型的な発達障害 事例 はそれ ほど多 いわけではない。特 に、発達障 害の中で も、社会性 ・コ ミュニケーションの困難 さを持つ といわれている高機能 自閉症 スペク トラ ム障害 (HFASD)の 学生 は、知的 レベル も高 く、

これまでの生活の中で うま く対処する方法を会得 し、 とりあえず学校教育の中では変わ った子扱 い はされなが らも、切 り抜 けて きた力のある人であ る場合がほとん どである。彼 らは困難 さにはま じ めさで しのぎ、特性 は誰 にも語れない秘密 として 内側 に封 じ込 め、 ひたす ら周囲か ら自分の個性を 隠 して社会生活を送 って きた とい うエ ピソー ドを 持 っている。 しか しなが ら、本人の願いとは別 に、

本人が予想 もしない ことで周囲の注 目を浴 びて し まった り、周囲か ら浮いた言動を して しまい、本

人 の意 に反 して トラブル に巻 き込 まれ る場合 もあ る。

また、知 的 な遅 れのない発達 障害者 の特性 は健 常者 との間 に連続性 が あ り、 こだわ りや社会性 ・

コ ミュニケー シ ョン等 の特性 が障害 による ものな のか、性格 の偏 りなのか、生育歴上 の問題 による もの なのか、見極 め る ことはプト常 に難 しい。 さ ら に、小 ・中学校 か ら高校 まで、学校生活 に不適応 を起 こさず、学 習面 での問題 が なか った場合、 コ

ミュニケー シ ョンの問題 が あ った と して も支援 の 対象 にな らず、本人 の努力 と辛抱 で大学 に進学 し て くることにな る。

学生相談担 当者 が このよ うな学生 に出会 うの は、

彼 らが大 学 生 活 を送 る中で何 らか の、 「困難 さ」

に出会 らた と きで あ る (山崖 2008)。筆者 が現職 につ いて、初 めて出会 ったの は摂食 障害 の女子学 生 だ った。当時 は摂食障害 の学生 と して面接 を行 っ て いたが、今 か ら思 うと、 ASDを 思 わせ るエ ピ ソー ドをた くさん語 らて いたょ ぅに思 う。 た とえ ば、彼女 は、次 の よ うな ことを常 に話 し、 それが で きない とい って苦 しみ、拒食 と過食 を繰 り返 し て い た。 「高校 まで は勉 強以 外 した ことが なか っ た。友人 もいな いので、学校 が終 わ った らす ぐに 帰 宅 し、勉 強 を して いま した。 テス トは百点 で な い と嫌 で した。 テ L/ビや フ ァッシ ョン雑誌 を見 る

こともなかったです。大学に入学 して、一人暮 ら

しは大変で した。食事はすべて自炊で、ひじきの

煮物や魚料理など、身体によいものばか り食べて

いました。食事の時は、30回噛むと身体によいと

書いてあったので、いつ も数を数えて租借 してい

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ま した。成績 は優でないと嫌 なので頑張 りま した。

大学生 なんだか ら、勉強 も頑張 って、 サ ークルに も入 り、 アルバイ トもして、男の子 とも付 き合 っ てtた まには女の子同士食事 に行 くとい う大学生 らしい生活を しなければな らないと思 っています。 」 と強い信念で語 っていた。

1995年 ごろの ことである。筆者 はそれまで、知 的障害養護学校 に勤務 し、主 に重度 の知的障害の ある自閉症 の教育 に携わ っていた。知的障害のな い高機能 自閉症 という概念す らなか った頃である。

彼女 の強迫的な思考 に、 ASDの 特性 との連続性 があるとい う発想 はまった くで きなか った。 もち ろん、彼女 はASDで はなか ったのか もしれない。

しか し、昨今、発達障害が注 目されている状況か ら眺めると、 これまで出会 った学生 の何人かは、

ASDの 特性 を持 っていたのではないか と思えて な らない。

筆者が、発達障害だろ うと思 う学生 と出会 うよ うにな ったのは、2002年頃か らである。 ある男子 学生が、対人関係 の トラブルを相談 に来 た。 「 一 人暮 らしを始 めて、 アルイ ヾイ トを しま した。総菜 屋 さんです。 どうもそ この店長 にボクだけが嫌わ れているよ うな気がす るんです。 ボクは 一生懸命 に接客 しているのですが、突然、叱 られた り、 レ ジを していると背中を突然叩かれて、『もういい !』

と追 いや られます。他 の人 には優 しいのに、 ボク にだけいつ も厳 しいのはい じめ じゃないか と思 う んです。」 とい う訴 えだ った。筆者 との 一対一の 面接場面での違和感 はな く、疎通性 もあ り、単 に 慣れない仕事 を始 めたか らではないか と思 ってい たが、 ある日、「 突然、店長か ら、『明 日か ら来 な くていい』 と言われま した。 これ って、不当解雇 です よね。」 と不満 げな顔で現れた。 アルバ イ ト 先 はそ こにこだわ らな くて もいいのではないか と いうような助言を して気持ちを収めたように思 う。

数 ヶ月経 って、再 び この学生が訪れ、次のよ うな 話 を始 めた。 「 清掃会社 のアルバ イ トを始 めたの ですが、 そ この人 たちはとて も優 しくて親切 に教 えて くれます。で も、優 しく教えて くれ るのに、

ボクが うま く仕事をこなせないのです。廊下 にワッ

クスをか けるのですが、 ワックスをかけた ところ を踏んではいけない ことを知 らず、 その事 を注意 されま したが、結局 うま くす ることがで きず、今 度 はワックスを塗 った ところを誰 も通 らないよ う

に見張 っていなさいと言われたのに、それす らで きなか ったのです。誰 もボクを きつ く叱 らないの ですが、 こんな簡単な こともで きないのでは、社 会 に出 られないと思 い、苦 しくな って きま した。」

とい う。 その後、鬱的な気分が強 くな り、精神科 医が治療 を行 うことにな り筆者 とは離れ ることに な った。彼 は、 「勉強 はいいんです。頑張 っただ けの ことが返 って くる。で も、 日常的で誰で もで きるよ うな ことが苦手 なんです。」 と語 っていた。

また、 同 じ頃 に、 「後期 にな ると家か ら出 られ ないので、単位を落 として しまう。去年 もそうだっ た。 イ ンターネ ッ トで調べた ら、同 じような症状 が書 いてあ った。私 は冬季鬱病で はないか。」 と 相談 に訪れた女子学生がいた。彼女 も 一対一の面 接では言葉 はす ぐに出て こないが、会話 は成立 し、

困 っていること以外 の話 をす ると饒舌 に もなる。

しか し、気 にな らたのは、毎日、面接 の時間に遅 れ ることだ った。20分か ら30分は確実 に遅れ、遅 れて きて もそれに対す る弁明はな く、 まった く気 にす ることな く椅子 に座 り、話 を始 めるのだ。 ま た、予約 は手帳を見 なが ら決めているのだが、 そ れに もかかわ らず、他 の用事 とバ ッテ ィングさせ て しまい、大 あわてで電話連絡を して くることが ある。無断キ ャンセル もたびたびあ り、 これは面 接 に対す る抵抗感が強いのではないか と、面接 の 枠 について考え直す必要性 を感 じるほどだ った。

ところが、遅刻 は授業やサークル活動で もあ り、

レポー ト提出や課題 に関 して もことごとく遅れて しま うことがわか って きた。 また、授業 とサーク ルの係が重 なるとうま くこなせなか った り、 クラ スメー トの冗談を本気 に受 けとめ被害感を持 った り、 自分の知 らないところですべてが決 ま ってい るのは自分が仲間 はずれにされているので はない か とい う被害念慮 を持 って しま うこともあった。

アパ ー トは掃除を しないので汚 く、 ものは捨て ら

れず、実家か ら母親が lヶ 月に 1回 来て、大掃除

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を して くれ るとい うことだ った。 この女子学生 は 3年 間、定期面接 を続 け、筆者 も少 しずつ彼女の

「 傾 向」 がわか り、発達障害支援 の視点 を必要 と す る学生であるとい う見方 を採用す るに至 った。

この学生 との出会 いによって、大学生 にも発達障 害 に起因す る社会性 の問題や修学上 の問題がある のではないか とい う見方、学生へのまなざ しの幅 を拡 げてい く必要性を感 じたのである。

このよ うな傾向の学生 に共通す るのは、彼 らは 大学 に入学す るまでは、む しろま じめに勉学 に励 み、失敗す ることは多 くて も、 そのきま じめさの 部分 によい評価 を受 けて これまでや って きたとい う点である。高校 まではクラスがあ り、担任がい てクラスメー トがモデルとしてそばにいた。また、

時間割があ り宿題や提出物を仕上 げるよう催促 し て くれる教師がいて、その中で言われたことをま じめに取 り組んでいれば成績 も良か ったのだ。 し か し、そ うはいって もで きないことも多 いので、

みんなと同 じようにで きない自分 にコンプ レック スを抱え、 自尊感情が育 ちに くい状況があ った こ とは想像 に難 くない。大学 は自由度が高 く、 自己 決定す る必要が急 に出て きて、 自分の意思 を求め られ る機会が多 いので、発達障害大学生 は、 あま りに もこれまで と異 なる環境 の中で、 自分 自身の 無力 さを突 きつ け られ るよ うな気分 にな って しま

うのではないだろうか。

大学 における発達障害大学生の支援 においてく 支援者 は学生 に対 して、前 もってそのような特性 のある学生 と認識 して向 き合 うわけではない。対 話を重ね、彼 らが語 る言葉を受 けとめてい く中で、

何 とな く感 じる引 っかか りがカウンセ ラーの中に 生 まれたときに、その見立てが可能性 として挙が っ て くるものである。 山崖 (2008)は 、 「語 られて いる内容 とクライエ ン トの全体的様子がカウンセ ラーの胸 に ピタッと収 ま らず、なにか 『不思議 な ち ぐは ぐさ』が気 になるときが、発達障害 と見立 てるポイ ン トである。」 と述べている。

青年期の発達障害 に関す る支援 は、学齢期の発 達障害児支援 のよ うな心理 アセスメ ン トと生育歴 の聞 き取 りが直ちにできる状況ではない場合が多

い。 その多 くは、「何 とな く引 っかか る特性」、あ るいは、 「不思議 なち ぐは ぐさ」 を とりあえずの 見立 ての出発点 として、支援を開始 してい く。そ して、支援 を行 いなが ら、見立てる材料が増えて いき、支援の方向性がより明確 に発達障害に対す る支援へ方向づ けられてい く。

富山大学では、 トータル コ ミュニケー ション支 援室 において、発達障害大学生の支援 を行 ってい る。本稿では、発達障害大学生 に対す る見立て と 支援 の在 り方、支援 の評価等、支援全体を学生の ニーズにあった ものに してい くためのプロセスを

「ナ ラテ ィブ ・アセスメ ン ト」 と名付 け、 その有 効性 を検証 していきたい。

2。 アセスメン トに関する諸問題

アセスメ ン トとは、「個人 の状態像 を理解 し、

必要 な支援 を考えた り、将来 を予測 した り、支援 の成果 を調べた りす ることである。」 と定義づ け られている (上野2007)。また、「支援のためのア セスメ ン トは、 どのような支援が必要か、子 ども の特性 に応 じた支援の方法 はどのような ものか、

支援 に利用で きる、子 ども自身が持つ資源、子 ど もの周囲にある資源 は何か、 についての情報 を得 るために行 う。」 (佐藤克敏2007)と いうアセスメ ン トの一般的な概念が明記 されている。

このよ うに、 アセスメ ン トとは、単 に診断をす ることとは異なった概念である。一般 に診断 とは、

病気や障害 の分類体系のカテゴ リーに、 その当事 者 (大学 における支援 においては学生)の 状態が 合致す るか どうかを判断す る過程 と定義で きる。

発達障害の診断 とは、 その学生 の状態像が、 そ も そ も発達障害 というカテゴ リーに合致す るか どう か、そ して合致す るとすればどのサブカテゴ リー (ASDや AD/HDな ど)に 合致 す るかを判 断す ることで あ る。 通常発達 障害 の医学的診断 は、

DSMや ICDな どの病態分類 に従 い、医学専門家

(多 くの場合、児童精神科 医や小児科医)に よ っ

て判断 され る。大学生のみな らずヽ現在の発達障

害支援 における最大 の問題点 の一つ は、適切 に発

達障害の診断を行える専門家の数が不足 してお り、

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簡単 に はア クセスで きない とい う点 にあ る と も言 わ れ て い る (福田2007)。 したが って、 発 達 障害 の医学 的 な診 断 を アセスメ ン トの中心 にお けば、

多 くの場合 それ には時間がかか る ことにな る。 も ちろん この ことは、医学 的診断 に意味が ない とか、

それを無視 して よい とい うことで はな く、診 断が な されて い る場合 はその情報 を アセスメ ン ト過程 の重要 な情報 の一 つ と して利用 して い けば よいわ けで あ る。 だか らとい って、 医学 的診 断 が な けれ ば アセ スメ ン トの過程 が全 く進 まない とい うわ け で はないる

上述 したよ うに、 アセス メ ン トとは、診 断 のみ な らず、 当事者 の状態 を把握 し、支援 の方法 を選 択 し、 どの よ うな配慮 を行 うか を決定 し、 支援 そ の ものが うま くい って い るか ど うか を評価 し、予 後 を予測す るとい った一連 の作業をさす。 しか し、

アセス メ ン トとは本来 的 に 「判 断 ・評価 す る」 と い う行為 で あ るか ら、 そ こには単 に当事者 を受 け 入 れ支援 す る とい う実践 に とどま らない、何 らか の特定 の作業 が必要 とな る。小、 中学校 にお ける 発達 障害児童 の アセス メ ン トにお いて は、 その中 心 的作業 は知能検査 や心理検査 を含 む、心理 アセ ス メ ン トで あ る とされて い る。 しか し大学生 の支 援現場 にお け る経験 か ら、筆者 らは現在 まで に小 中学校 にお いて行 われて きた アセス メ ン トをその まま大学生 に適用 す る ことには、以下 の よ うない

くつか の問題点 が指摘 で きると考 えて い る。

1.小 ・中学生 の場合、学校生活 の中で学習上 の問題 や社会性 の問題 が あ る場合、保護者 か ら生 育歴 や家族 の状 況 を聞 き取 り、心理 アセ ス メ ン ト の必要性 の了解 を得 た上 で、心理 アセスメ ン トを 実施 す る。 しか しなが ら、大学生 の場合 はその よ うな経緯 を とる ことがで きるケニス は非常 に少 な く、 かえ って繋 が った支援 の糸 が切 れて しま う可 育ヒ性 もあ る。

2。 支援 が必要 な学生 は、今 まさに困 って い る 状況 で あ り、 す ぐにで も問題 を解決 した い と願 っ て い る。支援 の前提 と して心理 アセス メ ン トに時 間 を費 や して い る と、実質 的 な支援 の タイ ミング

を逃 して しま う恐れがある。 また学生 に発達障害 か どうかのアセスメ ン トや診断のための専門機関 受診 を勧 めて も、少 な くとも初期の段階では、学 生 にとっては自分 の困 っている状況の解決 に繋が

るとは思えないであろ う。

(1)3。 支援者が一方的に学生 をアセスメ ン トす ると、支援 される側のニーズとのずれが生 じ、

支援方針 についての本人の了解 を得 ることが 難 しくな って しまった り、支援の継続が難 し

くな って しま う場合がある。支援 は、学生が 納得す るような方向性 を見つ けるための対話 と説明を行いつつ実施 されることが望 ましい。

そ うす ることによって、学生 自身の困難 さに 対処す る意識が生 まれ、支援が うま くい く可 能性が高 くなる。本人が困 っていることと、

我 々が支援 したいところがずれていると、学 生 にとって、「 支援室 は役 に立 たない ところ」

とい うことにな って しまう可倉ヒ性がある。

3。 ナラテ ィブ 0ア セスメン ト

前項で述べたよ うに、発達障害支援 における現 行のアセスメ ン トの問題点 は多 く、 そのまま大学 生の支援 にあてはめることは適切でないと我 々は 考えている。 それな らば、大学生の支援 に応、さわ しいアセスメ ン ト方法、 また、発達障害大学生支 援 に有効 なアセスメ ン ト方法を模索 し、大学生 の 発達障害支援 の実践を重ね るなかか ら、我 々が見 出 しつつある方法論 の一つ として 「ナ ラティブ 0 アセスメ ン ト」を以下 に紹介 したい。

「ナ ラテ ィブ」 とは、  日 本語 で は 「物語」

「 語 り」「 物語 り」 などと訳 されているが、一般 的に定義すれば 「ある出来事 についての言語記 述 (ことば)を 何 らかの意味のある連関によっ てつなぎ合わせた もの、 あるいはことばをつな ぎ合わせ ることによって経験を意味づける行為」

であ る (斎藤 &岸 本2003)。ケアの実践 にお け

るナ ラテ ィブ ・アプ ローチとは、 ナ ラテ ィブと

い う視点か ら実践を理解 し、 ナラティブとい う

スタンス (構え)に 基づいて実践を行 い、 さ ら

に実践の中でナラティブをツール (道具)と し

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て最大限に有効 に用 いるよ うなアプローチを指 す。大学生 における発達障害支援を、 ナ ラティ ブ ・アプローチの視点か ら記述す ると以下のよ うになる。 ナラティブ ・アプローチは発達障害 を、学生の人生 と生活世界の中で体験 される一 つの物語 として理解 し、学生を物語の語 り手 と して尊重す るとともに、学生が 自身の特性をど のように定義 し、 それにどう対応 してい くかに ついての学生 自身の役割を最大限に尊重する。

支援者 の拠 って立つ理論や方法論 も、 あ くまで も支援者の■つの物語 と考え、唯一の正 しい物 語 は存在 しないことを認める。発達障害の支援 とは、学生、支援者、教職員、家族等が語 る複 数 の物語 を、今 ここでの対話 において摺 り合わ せ る中か ら、新 しい物語が浮上す るプロセスで あると考える (斎藤 2010)。

上記のよ うなナ ラティブ ・アプローチの考え方 を、大学 における発達障害支援のアセスメ ン トに 生かすために、 まず以下 のような理論構築が重要 である。従来の考え方では、発達障害の学生を特 徴づ ける 「 特性」 とは、一般的にはその学生個人 に属 している (実体的な)性 質であると見な して お り、 それは基本的には生涯変わ らないものであ るとみなされている。 しか し、 ナラティブ ・アプ ローチはそのような見方を採用 しない。発達障害 学生 の 「特性」 とは、主 として社会的な交流の中 か ら生成 される、一種の物語 (ナラティブ)で あ ると考える。特性が 「物語」であるということは 何 を意味す るか とい うと、 それは学生が 日々の経 験 にっいて語 った り、 自分 自身 について語 った り、

周囲の者 との交流 の中で相互 に交換 された りす る 語 りの中か ら浮かび上が る、「ある程度 の一貫性 を もった言語記述 =物 語」であると考えるのであ る。

物語 の特性 と して以下 の 3点 が重要 で あ る。 そ の第 1の 特徴 は、物語 は多様 な意 味 を もつ とい う ことであ る。物語 は経験 を意 味づ ける働 きをす る が、 その意 味づ け方 は一通 りで はない。例 えば、

「それ まで話 の輪 に入 って いなか った私 が一言発 言 した ら、周 囲 の人 がみ な黙 って しま らた」 とぃ

う経験か ら、 ある人 は 「私の意見が正当なので、

みな反論できなか った」 という物語を紡 ぎだすが、

またある人 は 「私が空気が読 めない発言 を したの で、みんな しらけて しまった」 とい う物語を紡 ぎ だすだろ う。

第 2は 、物語 の もつ 「 経験 を意味づ ける」働 き は、時 として当人の柔軟性を奪 い、拘束 して しま う傾向を持つ とい うことである。 ひとたび 「私 は 空気が読めないので場を白けさせるような人間だ」

とい う自己物語が形成 されて しまうと、その学生 は毎 日経験 され るち ょっとしたで きごとを、全て その線 にそって理解 して しまうことにな りかねな い。当人 の言動 とは必ず しも関係がな くて も、誰 かがち ょっと顔を しかめた り、会話 に空白ができ た りす ると 「自分の行動 のせいだ」 という物語が 紡がれて しま う。 その結果彼 は社会活動 において 必要以上 の苦 しさを抱えて しまうことになるか も しれない。 このよ うな働 きをす る物語を、斎藤は

「基盤 と して の ナ ラテ ィブ」 とよん だ (斎藤 2003)。

物語の持つ第 3の 特徴 は、物語 は変化 してい く、

とい うことである。 これは第 2の 特徴 とは相反す るよ うにみえ るが、強迫的に固定化 された 「基盤 と してのナ ラテ ィブ」 であ って も、 その ことを 語 る機会が与え られ、十分 に聴 きとられ、安心で きる場 における対話が促進 されることによって、

徐 々にではあ って もナラテ ィブは変化 してい く。

物語 は書 き変え うるものである し、時には混沌の 中か ら全 く新 しい物語が浮かびあがることもある。

上記 のよ うな物語の特性 を踏 まえて、私達 は発達 障害大学生の支援 の基本的な姿勢 を、以下のよう に整理 している。

A.「 学生 の特性」 と 「特性 に対す る学生 自身 の対処行動」 を、学生の人生 と生活世界の中で展 開す る 「 物語」 と見 なす。学生を物語 の語 り手 と して、 また、物語 における主体 として尊重す る。

B.自 分 自身 の特性 をどのよ うに定義 し、 それ にどう対応 してい くかについての学生 自身の役割 を最大限に尊重す る。

C。 すべての事象 を、一つの原因 に基づ くもの

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とは考えず、む しろ、複数の行動や文脈の複雑 な 相互交流か ら浮かび上が って くるもの と見 なす。

上記 のよ うな理論的考察 を踏 まえて、私達 はナ ラティブ ・アセスメ ン トを 「 発達障害大学生支援 のプロセスにおける連続的な判断プロセス (診断、

支援方法 の選択t合 理的配慮の決定、支援効果の 評価、予後予測 など)を 、物語的対話 を通 じて行 うための方法論」 と定義 している。 以 下 に発達 障害大学生 に対す るナ ラテ ィブ ・アセスメ ン トの 実際 について説明 していきたい。 ナ ラテ ィブ 0ア セスメ ン トのプロセスは、以下の 3段 階に整理で きる。

(1)対 話 の成立

支援者が学生 の語 りを物語 として尊重 しなが ら 聴 くことで、学生の主観的体験の全体 を知 ること がで きる。 また、支援者が学生 との対話 を促進す るような聴 き方、質問の仕方を工夫することによっ て、支援者 一学生間のや りとりが促進 され、二人 の共同作業 による 『新 たな物語の構築』が行われ る。 この場合、支援者の専門性 は意識の中心 に置 かず、少 し脇 に置 き、無知の姿勢で主体 としての 学生 の語 りに耳 を傾 けることによって、対話が促 進 されてい く。 たとえば、学生が支援室を訪れた とき、 なぜ 自分が困 っているのか理 由がわか らず に来 る場合がある。発達障害の専門家 はどうして も、「コ ミュニケー ションの障害」 とか、「感覚過 敏 による体調不良」 とい うように診断基準 に照 ら し合わせて話 を聞いて しまいがちである。発達障 害 に関す る専門的知識 は、常 に携 えてお く必要 は あるが、 それをす ぐに当てはめるのではな く、 ま ず学生 の語 りをそのままの言葉で受 け止 めるとい う姿勢が重要 にな って くる。 このよ うな態度 は学 生の言葉 を引 き出 し、話す ことで学生 自身、 自分 に起 こった出来事を振 り返 り、体験 を再 びなぞる 機会 を得 る。つま り、 アセスメ ン トに必要 な学生 本人の内的体験 を引 き出すための対話 の成立が重 要 なポイ ン トなのである。

(2)セ ル フ ・アセス メ ン ト

学生 が支援者 と対話 す る ことによ って、 自分 自 身 に起 きた問題 を物語 的 に対象化 す る ことが で き

る。学生 は自分 に何が起 こったのかわか らず、そ のまっただ中にいて、 もが き苦 しんでいる状態 に いる。語 りは本人 と一体化 した苦 しみに距離を与 えて くれ る。学生が支援者 に話 をす ることによっ て、語 っている自分 を意識 し、「こうい うことが 自分 の中で起 きたんだ」 と、 自らの語 りを自らの 耳で聴 く体験 をす る。 自分 と距離 を置いた対象 と して出来事を眺めることがで きてい くのである。

このよ うな体験の言語化が二者間で行われ、 自 分 自身 に起 きた問題 を物語的に対象化で きると、

その中にいる自分 自身を も一人の登場人物 として 対象化す ることがで き、客観的な視点 を持 って 自 分 自身のあ りがちな傾向や 自分 の特性 に目を向け ることがで きるよ うにな ってい く。つ まり、 自分 自身 の特性 について、 「 物語」 を通 して知 る機会 を得 ることになる。支援者が一方的 に、 「あなた はこうい う特性i がある」 と言 って も、学生 は納得 で きないか もしれないが、 「あなたの話 を聞 いて いると、 こんな物語が描 けそ うですね。」 と説明 す ると納得す る場合が多 い。 このような対話や距 離感 のある物語化が支援 を進めてい く際には重要

なポイ ン トだ と考え る。

この時学生には、何が起 こっているのだろうか。

学生 は、物語的に対象化 された出来事 を振 り返 る ことによって、自分 自身の 『基盤 としてのナラティ ブ』 に気付 き自己理解が深 まってい く。 「基盤 と してのナ ラテ ィブ」 とは、一般的に我 々が このよ うに考えがちだ とか、す ぐそ うい う考えに陥 って しま うとい うような、思考 の癖、考え方 の根幹 を なす ものである。 そのよ うに考え るとすれば、発 達障害大学生が 自分 自身 のあ りがちな思考パ タ ー ンに関 して、障害特性 とい うまで もな く、「私 は こうな りがちなんだ」、「またこういうふ うになっ て しまった」 とい うよ うな ことがわか り、 自分 の 傾向に気づ くとい うことがで きれば、 それは自分 の特性 に気づ くことにつながる6自 分で自分のあ りがちな行動パ ター ンを知 ること、 それに気づ く プロセスがセルフ ̀ア セスメ ン トと言 われ るもの である。

(3)ア セ不メ ン トか ら支援へ

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『 基盤 としてのナ ラテ ィブ』を意識化す ること   を とりいれ る形式 との間で、 どのような違 いがあ によ り、過去の体験が再構成 され、知識 とな って   る か とい う点 に焦点をあてて、例示 してみたい。

蓄え られ、未来 に向けての予測が可能 になってい く。常 に大変 だ った過去 の体験が、 「私 はこうい

う体験 を した」 とい う言葉で整理 され ると、わけ   例 示 1:

のわか らない苦 しい体験が、何が起 きたのかがわ    (1)ADD(不 注意優勢型)、 ASD傾 向のあ か る体験 に再構成 されてい く。その理解のプロセ      る 女子学生

スは未来を予測す る知恵 に繋が ってい く。       ①  事 例 C:文 系学部2年女子学生 このよ うなナラティブ ・アプローチのプロセス   ②  主 訴 :冬期鬱病ではないか

全体 を通 して、学生 は対話の相手である支援者を   ③  観 察や聞 き取 りによるアセスメ ン ト

意識 し、二者間の コ ミュニケ早 ションに積極的な    大 学 2年 生率子。 自分の思いを言語化するこ     │ 関心 を もって対話 に積極的に参加す るようにな っ    と が苦手で、質問 されて も反応が少 な く、表情 てい く。 このような学生 と支援者の間で行われ る    が 乏 しい傾向がある。小学校中学年 までは多動     │ 対話そのものが援助的であり、心理教育的アプロー    傾 向があ り、周囲の雰囲気 に合わないことを し     │ チの一環 として位置付 け られ る6こ のようなアセ    て 注意 され ることがあ った。同性の友人 と話題 スメ ン トと支援、あるいは支援 に対す るアセスメ    が 合わずな じめなか ったので友人 はいなか った。      │

ン トとい うサイクルが、何度 も繰 り返 し行われる    中 学校 では課題が増え、優先順位 を決 め られな ことによ って、本格的な支援が 自然 に始 まってい    い ので、課題が遅れがちになることが多か った。

     │ くと考え る。       部 活 は運動部 に入 ったが協調性運動障害がある

2。 ナ ラ テ ィ ブ ・ ア セ ス メ ン ト に よ る 事 例 の 紹 介   [::勉 集 t遣 儒 ifL重 喜 省 麓 璽 T逸 塁 軍 と      │

ナ ラテ ィブ ・アセスメ ン トは、支援 における対    な いことが多か った。学習 は聴覚的な情報が入 話の方法論であると同時 に、 デセスメ ン トの内容    り に くいため、授業だけでは習得で きなか った     │ を物語的に記述す ることによって、支援者間の情    が 、塾 に通 い個別の指導 を受 けることによ って

VT管 :予 言 薯 動 [檸 71哲 :看 胤 [;ヒ llt    習 段 [堰 撃 濃 量 進 腎 褥 [緊 浄 量 「 タ ザ 要 ,生 l     l 事 燿 貰 i;│:鷹 鼻 fiど '1;Elヒ tこ 電 ム 」 暮    i↑ F」 [][〔 「 ご ξ :婁 1131liflllる 」 ,テ l[     │ の 典 型 的 な 形 式(事 例 紹 介 )を 提 示 し て み た い 。     授 業 中 に 集 中 し 続 け る こ と が で き ず 、 フ ァ ン タ

ツール としてのナラティブ ・アセスメ ン トとは、    ジ ーに浸 ることが多 く、 また、パニックになり      │ 支援者の一人が語 り手、 あるいは書 き手 として聴    教 室を抜 け出 して しま うことがあ った。

T法 「曇凛堪雷扇峯季i:「 縦理唇│百 万T:1   生 倉言賃全1策 当 層省不fli尊 ヽ )鯰

ゝ朧 ヽ     │ 目的の記述 を、数値 と概念 によ って構成 された従    食 事 の用意 など身の回 りの ことはまった くで き 来の報告形式で行 うよ りも、物語型形式で行 うほ    な か っ■。時間管理、スケジュール管理ができ     │

うが、情報 ・理解の共有がはるかにうま くい くこ    ず 、授業 には必ず とい っていいほど遅刻 し、 レ

とを経験 している。 もちろん、物語 とは本来多様    ポ ー トや課題 は期限に間に合 うように提出でき     ‐

な語 り方が許容 されるものなので、一つの理想的    な いことが多か った。 これは実行機能の障害で     │

な形式があるとい うわけではない。 ここでは、従    あ り、 たとえば、 レポー トを書かなければいけ

来の記述 に近 い形式 と、で きる限 り 「 生 の語 り」   な いことはわか っているのだが、パ ソコンの前

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に3時間 ほどただ座 っているだけの こともあ り、

結果的に提出が遅れて しま う。同時に二つの こ とに取 り組む ことがで きないので、授業 とサー クルの発表が重 なる後期 は、追 い詰 め られて し まい、気分が沈む。

以上のよ うな ことを総合的に判断す ると、不 注意優勢型のADDと 、社会性 の問題 のあるA

SDの 傾向があると考え られ る。

例示 2:

(2)冬 になると気分が沈み、弓│きこもって しま う。 自分 は冬期鬱病ではないか、 とい う悩み を持 っている女子学生

① 事 例 C:文 系学部 2年 女子学生

② 主 訴 :冬期鬱病ではないか

③ ナ ラテ ィブ ・アセスメ ン ト

Cさ ん は大学 2年 生です。 自分の思 っている ことを相手 にどう説明 した らよいか、 とて も悩 みます。ぴ ったりした表現を探 しているうちに、

「ぼ一っとしているね」 とか、「 何で返事 を しな いの !」 と叱 られて しまうことがあ ります。月ヽ 学生 の頃 は、 クラスの中心 にいて元気 な子 ども で した。好 きなことを言 って、好 きな ことを し ていま したが、誰 にも叱 られませんで した し、

一緒 に遊んで くれる男子 もいま した。女子 と二 緒 に遊ぶ ことはあ りませんで した。男子 と遊ぶ ことが多か ったか らだ と思 います。中学の時の 部活で、顧間の先生か らひど く叱 られた ことが 今で も強 く印象 に残 っています。授業が終わ っ て急 いでネ ッ トを張 りにい ったのに、すでに誰 かが して しまっていたのです。 さぼ っていたわ けではあ りません。

高校時代 は、勉強ばか りしていま した。休 み 時間 もあっという間に時間が経 って しまいます。

誰か と話す時間なんてあ りません。進学校だ っ たので、授業の進み方 も早 く、私 は聞 くだけで は頭 に入 っていかない し、板書 を写 しなが ら先 生の言葉を聞 くなんてできません。その うちに、

何 も考えた くな くな って、遮、と昨 日の ことを思 い出したり、ぼ一っとしてしまったりすること

があ ります。それで もさらに苦 しくなると、保 健室 に駆 け込む ことがあ りま した。 しば らく静 かに していると、楽 にな っていきま した6

大学 に入学 した ら、家か ら通 うのが大変なの で下宿をす ることに決めま した。 自由でいいな あと思 いま したが、すべて自分で しなければい けないので大変 で した。朝 は6時 に起 きるので すが、 それか らお風 呂に入 り、 遮、と気づ くと2 時間経 っていることもあ ります。 そのあと髪 を 洗 ってお化粧 をす ると、8時40分にな って しま いま した。  1限 目の授業 に間に合 いません。慌 てて走 って教室 に行 くと、みんなが振 り返 って 私を見 ます。先生 はため息をついて私を見 ます。

毎回、遅刻す るので、 「また君 か ・・」 と言 わ れ ることもあ ります:

レポー トの課題 はす ぐに取 り組 もうと思 いま す。で も、パ ソコンを前 に して、考えているう ちに気づ くと3時間 も経 っていることがあ りま す。次 の 日も、次 の 日も同 じよ うに時間が過 ぎ ていきます。結局、提出 日を過 ぎて しまってか ら、徹夜で仕上 げて持 ってい くことになります。

怠 けているわけではないのに、 どうして も期限 を守れないのです。

11月か ら12月にかけては、忙 しい時期です。

サークルの定期演奏会があり、その練習が毎 日 のよ うにあ ります。授業 とサークルを こなすの は、 とて も大変です。で も、他の人 たちは、 こ れにアルバイ トもあるのに、すべて こな してい ます。 アルバイ トを していないか らと言われ、

会計 の仕事 も回 って きま した。手 を抜 いている わ けで はないのに、 「まだで きていないの !」

とか、「早 くや って くれないと進 まないで しょ」

と先輩か ら注意 され ることもあ ります。去年 も

この時期 は、や ることがいっぱい重 な って、苦

しくな って しまいま した。や らなければいけな

い ことが、頭の中にバ ラバ ラに散 らば ってひ し

めきあ っています。 そんな状況の中、ついに身

体が動かな くな って しまいま した。外 に出 られ

な くな って しまったのです。 Cさ んは、 しなけ

ればいけないことが重 なると、 どれか ら手 をつ

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けてよいのか、判断す ることがで きず、頭の中 が飽和状態 になって しまいます。そ うな って し ま うと、身体 も動かな くな って しまい、それを 自分ではどうす ることもで きません。 いつ も一 生懸命 なのに、 いつ も他 の人 よ りも遅れて しま います。努力 して も足 りないのは昔か らですが、

大学になってか らは、いっそうそれがひどくなっ てきま した。みんなと同 じようにしているのに、

みんなだけが知 っていて、 Cさ んが知 らないこ ともあるといいます。 ひ ょっとして、 自分のい ないところで、みんなは打 ち合わせを している のか もしれないと疑心暗鬼 になって しまいま し た。特 に、11月か ら12月の寒 い時期 は、体調 も 気分 も優れません。 イ ンターネ ,卜 で検索 した ら、 「冬期鬱病」 とい う病名 を発見 しま した。

症状 は今の Cさ んの症状 にぴ った りで した。 こ れは、私の努力不足ではな くて、病気のせいか もしれません。病気 な らば、治ればみんなと一 緒 な ことがで きるよ うになるで しょう。

この二つの記述 は、同 じ学生の同 じ状況を描写 した ものである。前者 は発達障害の視点を持 ちな が らのアセスメ ン トであ り、後者 はあ くまで本人 の語 りをつないでい くナ ラティブ ・アセスメ ン ト の中で見えて くるCさ んの主観的な内的世界であ る。T般 的に、前者のアセスメントが主流であり、

そ うなると、 その見立ての根拠 となる心理 テス ト や発達検査が必要 になって くる。 しか しなが ら、

先 に も述べたよ うに、支援 はす ぐに開始 され、学 生本人 の困 っている状況 に対処 していかなければ な らない。 まずは、 ナラティブ ・アセスメ ン トに よ り、彼女の物語 に沿 って対話を続 け、対処法 を 一緒に考えていき、 うま くい く方法を確認 しなが ら、 Cさ んな りの対処法を見つけ出 してい くこと が大切なのではないだろうか。 もちろん、前者の アセスメ ン トが必要 ないといっているわけではな い。筆者の場合、 この二つのス トー リーが前後 し て浮かび、両者をつなげつつ、 ナラテ ィブ ・アセ スメ ン トを行 っているというのが実感である。

3 。  おわ りに

支援 に大切 な ことは、学生が困 っている状況を 本人 の視点で描 き出 し、彼 らも自分 自身 に起 きて いることを理解することを手助 けすることである。

ナ ラティブ 0ア セスメ ン トはそのための有効 なア プローチ法であると考え る。

発達障害大学生 の支援 における 「ナ ラティブ ・ アセスメ ン ト」 とは、「発達障害大学生支援 のプ ロセスにおける連続的な判断プロセス (診断、支 援方法の選択、合理的配慮の決定、支援効果 の評 価、予後予測 など)を 、物語的対話 を通 じて行 う ための方法論である」 と定義す ることがで きる。

このプロセスを支援者 と当事者が共有す ることに よって、学生 自身の自己理解 と成長が促進 される と思われ る。

<参 考文献 >

1)山 崖俊子 :学生相談 における軽度発達障害の 見立 てに関す る考察 ‑20年 後 にアスペルガー 障害 と診断 された事例の調査面接を通 じて一。

学生相談研究,29‑1,1‑12.2008.

2)上 野一彦、牟田悦子、宮本信也、熊谷恵子編 : (S.EoNoS)養 成 セ ミナ ー 特 別支援教 育 の 理論 と実践  I概 論 ・アセスメ ン ト。金剛出 版,2007.

3)佐 藤克敏 :ア セスメ ン ト・障害のある子 ども の教育 につ いて学ぶ 丁知 的障害教育。 独立行 政法人国立特別支援教育総合研究所教育 コン

テ ンツ.

4)斎 藤清二 :高機能発達不均等大学生への支援一

ナラティブ ・アプローチの観点か ら一.学 園

の臨床研究 (掲載予定),2010.

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参照

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