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地球科学が液状化防災に貢献するために

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I.は じ め に 地学雑誌 126 巻 6 号および本号の 2 回にわたっ て掲載された「地球科学からみた利根川下流域 の液状化」は,2011 年東北地方太平洋域地震に よって利根川下流域で発生した液状化現象に関す る地形・地質学および地球物理学的調査結果をと りまとめたものである。 この地震は周知のように,東北地方から関東地 方に至る広大な範囲にさまざまな地学現象を生じ させた。とくに関東地方の低地では,本震の震央 から 300 km 以上離れているにもかかわらず激し い液状化現象が生じ,構造物に甚大な被害がもた らされた。 この災害を受けて工学・理学のさまざまな分野 から多くの研究者が東北地方太平洋沖地震によ る液状化の実態解明に取り組んできた(例えば, 地盤工学会, 2014; 若松・先名, 2015; 若松ほか, 地学雑誌  Journal of Geography(Chigaku Zasshi)  127(3)423⊖438 2018   doi:10.5026/jgeography.127.423

地球科学が液状化防災に貢献するために

宇  根   寛

* 

  小 松 原  琢

**

宮 地 良 典

**

  中 埜 貴 元

* 

Applying Earth Science to Mitigate Liquefaction Damage Hiroshi UNE*, Taku KOMATSUBARA**,

Yoshinori MIYACHI** and Takayuki NAKANO* [Received 15 July, 2017; Accepted 10 January, 2018]

Abstract

The distribution of liquefied areas in the lower basin of the Tone River caused by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake does not correspond to the results of liquefaction assess-ments applying conventional geotechnical approaches. Papers in two special issues titled “Liq-uefaction Phenomena in the Downstream Basin of the Tone River, Eastern Kanto Region from the Viewpoint of Earth Science” clarify that the earth scientific approach focusing into micro- landforms, extremely shallow geology, and land development processes can provide much import-ant information for liquefaction assessments. The results of the survey on the present situation of liquefaction hazard maps published by municipalities reveal many problems in terms of con-tents and expressions. It is proposed to create an appropriate manual for assessing liquefaction risk and producing liquefaction hazard maps of municipalities.

Key words: liquefaction assessment, earth scientific approach, micro-landform, shallow geology, liquefaction hazard map, manual

キーワード:液状化判定,地球科学的手法,微地形,浅層地質,液状化ハザードマップ,マニュアル

 * 国土地理院 ** 産業技術総合研究所

 * Geospatial Information Authority of Japan, Tsukuba, 305-0811, Japan

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2017)。 この地震による液状化現象の発生地点は,いず れも従来の地盤工学的手法による液状化判定で十 分予測可能な地盤工学的性質を有していたもの の,液状化の発生 ⁄ 非発生状況が,必ずしも事前 の液状化判定結果どおりとはならなかった地点が 多く確認されたことから,地震動の継続時間,細 粒分の影響,堆積年代の影響などの評価や判定手 法の適用方法について再検討する必要が指摘され た(佐々木ほか, 2016 など) 2 つの小特集の担当研究者である産業技術総合 研究所,新潟大学,千葉県環境研究センター,国 土地理院等の機関に所属する地球科学関係者は, それぞれ個別に関東地方各地の液状化発生地点の 微地形,表層地質と土地履歴等に関する調査を 行ってきた。その成果は,個別に報告されている ものの,アクセスしにくい報告書も少なくない。 また,調査を通じて明らかになった点や既往判定 手法の問題に関するとりまとめも十分になされて いるとは言い難い。 2 つの小特集では,上記各機関が個別に行って きた東北地方太平洋沖地震に伴う液状化災害の調 査の結果が網羅的にとりあげられ,その成果がま とめられている。 本総説は,2 つの小特集に収載された報告を俯 瞰し,東北地方太平洋沖地震に伴う液状化が地球 科学的観点からみるとどのような特徴をもったも のであったかを概観するとともに,必ずしも適切 な評価が行われていなかった既存の液状化ハザー ドマップの現状と地球科学的観点からみたその改 善の方向性を示したものである。 II.東北地方太平洋沖地震に伴う液状化は どこまでわかったのか       本章では,2 つの小特集に収められた報告を中 心に,地球科学的調査研究によって東北地方太平 洋沖地震に伴う液状化現象がどこまで解明された かをまとめてみた。 1)東北地方太平洋沖地震について 東北地方太平洋沖地震は 2011 年 3 月 11 日 14 時 46 分に発生した三陸沖を震源とするモーメン トマグニチュード(MW) = 9.0 の巨大地震であ る。この地震に伴う断層面の破壊は少なくとも 4 回のサブイベントに分けられ,破壊の継続時間は 少なくとも 72 秒を越えていた(八木, 2012)。 この地震で破壊された断層面の長さは約 500 km であり,その南端は利根川河口沖に達する (図 1 )。本震の 29 分後( 3 月 11 日 15 時 15 分) には本震の破壊域南西端付近の茨城県沖でマグニ チュード(Mj) = 7.6 の最大余震が生じた。調査 地域における本震の地震波形(気象庁, 2011b) を図 2 に示す。この図に示されるように,調査地 域周辺において本震では周期 0.5 ~ 1 秒の地震波 が卓越しており,計測震度 5 弱以上の揺れは約 2 分継続した。 2)既往の液状化判定の手法とその結果 利根川下流域周辺では,2011 年以前に液状化 判定図が整備されていた。その 1 例として千葉県 によって作成された香取市の液状化しやすさマッ プ(千葉県, 2007)を図 3A に示す。この図のよ うに,250 m 方眼の区域ごとに震度に対応して 液状化の危険度区分が示されている。 この例を含めて,既往の液状化危険度の判定 は,多くの場合,「道路橋示方書」(日本道路協会, 2002)に示された,ボーリングデータ等を用い て地層全体の液状化指数(PL)を求めて評価を 行う地盤工学的手法が用いられている。その評価 手順は,おおむね以下のとおりである。 (1)地形分類や液状化履歴など文献資料から 液状化の恐れのある地域を抽出する。自治体作成 の液状化しやすさマップのような広域的な液状化 予測図の作成にあたっては,沖積層および人工地 盤の分布地域が解析の対象とされている。 (2)対象地域をメッシュに分割して,メッシュ ごとの地盤調査結果から地盤の動的せん断強度比 R を算定する。この際,広域的な液状化予測にあ たっては,多くの場合方形のメッシュごとにモデ ル地盤がつくられる。R の算定にあたっては,特 定の構造物の基礎設計を目的とする場合を除き, 深度 20 m以浅の地層構成・地下水位・標準貫入 試験による N 値・粒度・塑性指数・単位体積密度・ 繰り返し非排水三軸圧縮試験値等のデータが用い

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られるが,広域的な液状化予測にあたっては,土 質と N 値に基づいてメッシュごと・深度ごとの R が求められる。 (3)地表における震度から地震時せん断応力 比 L を求め,上述の地盤の動的せん断強度比 R を L で除して安全率 FL値をメッシュごと・深度 ごとに求める。すなわち, F(z) = R /L L (1) F(z)L :深度 z における安全率,R:地盤の動的せ ん断強度比,L:地震時せん断応力比である。 (4)危険率(1 - FL)と影響関数の積の 10 倍 値を地表から深度 20 m まで積分し,液状化指標 値(PL値)として算出する。影響関数は地表から 対象深度に向かって 1 次関数的に影響が減少す るという仮定に基づいて決定される。すなわち, PL=

0 (1−F zL )(10 0 5− z dz) 20 ( ) . (2) z:深度(m),F(z)L :深度 z における FL値,な 図 1   2011 年東北地方太平洋沖地震の震源断層と震央および液状化地点.震源断層と震央は気象庁(2011a),液状化 地点は若松ほか(2017)による.

Fig. 1  Source fault, epicenter, and liquefied sites of the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake. Source fault and epicenters are after Japan Meteorological Agency (2011a), liquefied sites are after Wakamatsu et al. (2017).

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お,FL(z) > 1.0 の場合は 1 - FL(z) = 0 である。 (5)以上より得られたメッシュ(多くの場合 方形のメッシュ)ごとの液状化指標をまとめ,液 状化しやすさを広域的に示す。同時に地震の震源 や規模に関するシナリオごとに予測される液状化 危険度を図示する。 この液状化予測手法の考え方は合理的で説得力 をもつ。しかし,広域的な液状化予測を目的とす る調査において実際に FL値の算定に用いられる R(地盤のせん断強度比)や L(地震時せん断応 力比)は,土質ボーリング柱状図に示された土質 と 1 m 間隔の N 値に基づいて推定されることが 多く,土質試験や原位置試験から得られた実測値 が用いられることはまれである。このことは,既 存のボーリング柱状図の情報量には限界があり, 地層の連続性をどのように推定するかによって液 状化の推定精度が大きく異なってくること(阿南 ほか, 2016)から,問題があるといえる。また, 評価単位の分割は,数値解析を容易にするため通 常はメッシュが用いられ,結果的にスクリーニン グ段階(上記の 1 の段階)で考慮されていた微 地形や表層地質の区分とは関連を欠いた解析結果 が示される。さらに深度 20 m 以浅の区間につい て,液状化危険率(1 - FL(z))が深度とともに 1 次関数的に減少することを仮定して,この間の 液状化危険率の積分値から液状化指標(PL値) を求めるとすることの妥当性は十分に検証されて いない。とくに最後の観点については,深いほど 堆積後の経過時間が長く,圧密効果が大きくなる ことを前提としているが,人工地層については, 図 2   茨城県によって観測された茨城県稲敷市結佐における 2011 年東北地方太平洋沖地震本震の地震波形(気象庁, 2011b).

Fig. 2  Seismic wave form data at Kessa, Inashiki City, Ibaraki Prefecture, collected during the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake (observed by Ibaraki Prefecture, after Japan Meteorological Agency, 2011b).

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短い時間で一気に堆積が行われることから,深度 に関わりなく液状化危険率が大きい(すなわち年 代効果の影響が大きいと考えられる;谷本ほか, 2016)ことが反映されず,再検討の余地がある のではないだろうか。 このようにして得られる液状化判定結果は,広 範囲にわたって同等の値(危険度)を示すことが 多かった(図 3A)。このため,液状化の危険性の とくに高い地区を特定することができず,結果的 に液状化被害軽減のための事前対策に結びついて こなかった(言い換えれば費用対効果が期待され ない結果をもたらしていた)疑いがある。 また,地盤工学的手法と微地形・表層地質や土 地履歴を用いた手法を併用するための適切なマ ニュアルが提供されていないという問題も指摘で きる。 宇根ほか(2015)は,東北地方太平洋沖地震 で著しい液状化が発生した千葉県我孫子市布佐地 区の液状化発生状況と事前に作成されていた「液 状化危険度マップ」の関係について調査し,危険 度マップで「対象外(危険度がほとんどない)」 とされていた地域においても液状化が発生してい たことを明らかにし,危険度マップの作成過程を 検証した結果,地盤工学的評価を補うために行わ れた微地形に基づく評価が結果的には重視された 判定が行われているものの,評価に関するマニュ アルが十分でなかったために次のような問題点が あったことを指摘している。 (1) 既存の 5 万分の 1 地形分類図のみを用いて 微地形区分データを作成したこと。 (2) 盛土改変地が本来は切土地が想定されている 人工改変地として読み替えられ,対象外(危 図 3   千葉県香取市北部における,地盤工学的手法に よる液状化判定と 2011 年東北地方太平洋沖地震 による液状化.A:千葉県(2007)による震度 5 強の地震時の液状化判定.B:東日本大震災千葉 県調査検討専門委員会(2012)によって改訂さ れた震度 5 強(巨大地震)時の液状化判定.C: 2011 年東北地方太平洋沖地震による液状化(小 松原ほか, 2017).

Fig. 3  Liquefaction hazard map prepared using the geotechnical method and liquefied sites caused by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earth-quake. A: Liquefaction hazard map for seismic intensity 5+ (Chiba Prefecture, 2007). B: Liq-uefaction hazard map for seismic intensity 5+ Mega-earthquake (Specialist Committee for East Japan Great Earthquake Research, Chiba Pre-fecture, 2012). C: Liquefied sites caused by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake (Komatsubara et al., 2017).

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険度がほとんどない)と評価されたこと。 (3) 旧版地形図や過去の空中写真等で比較的容易 に知ることのできる土地履歴の情報が十分に 参照されなかったこと。 この結果から,危険度評価にあたって,これま で行われている定量的評価に加えて,微地形区分 を通じて土地の履歴についての十分な検討を行う 必要があり,その際には,液状化が土の物理的・ 力学的性質を強く反映した現象であること,土の 物理的・力学的性質の違いはおもに土地の履歴の 違いを反映していることを十分に考慮して,空間 的な広がりも踏まえつつ,豊かな想像力をもって 土地の成り立ちを思い描くことが適切な評価につ ながるとしている。 このように,東北地方太平洋沖地震による液状 化の実態(図 3C)は,事前の液状化判定結果と は必ずしも整合するといえなかった。その原因の ひとつは,東北地方太平洋沖地震に伴う地震動が きわめて長い継続時間をもっていたことや,本震 の 45 分後の茨城県沖の最大余震の発生など,事 前の液状化評価で想定していたものとは大きく異 なる地震動であったことはもちろんであるが,地 盤工学的評価手法と微地形・表層地質や土地履歴 を用いた評価手法が適切に併用されていなかった ことが背景として指摘できる。また,従来の液状 化判定に用いられてきたメッシュは,液状化発生 の要因となる土地履歴の違いを反映するには大き すぎ,危険性がとくに高い地区を特定するには不 十分であった。そのような観点から微地形・表層 地質と土地履歴に基づく地域区分を重視した液状 化判定の意義が主張されている(例えば, 関東地 質調査業協会液状化研究会, 2012)。また,実際 に国土交通省北陸地方整備局・地盤工学会北陸支 部(2012)のようにメッシュではなく微地形や 土地履歴に対応した区分を行っている例が現れて いる。 一方,液状化判定手法の改定を試みた自治体な どの検討委員会の多くは,従来の地盤工学的手法 に基づく液状化判定を妥当と評価して,微地形・ 表層地質や土地履歴に関する情報は概略予測段階 あるいは一次判定段階で用いるべき情報と位置づ けてきた(例えば, 宅地の液状化対策の推進にす る研究会, 2013; 米倉ほか, 2013)。多くの自治体 の検討委員会は,FL値の決め方や地盤情報の密 度,メッシュの大きさなどを再検討したが,多く の場合従来と同様深度 20 m 以浅の地盤データか ら得られる PL値を用いて液状化判定をおこなう ことを推奨している。このため,おおむね従来 と類似した結果が導き出されている(例えば, 東 日本大震災千葉県調査検討専門委員会, 2012;図 3B)。 地球科学は,地球表層の状態を,広がりをもつ 「面」,深さ方向の情報を含む「 3 次元情報」お よび時間軸をもつ「歴史」として捉えることを真 骨頂とする。そのため,微地形・表層地質および 土地履歴を重視して,液状化の主たる要因を深度 数 m 以浅の極浅層の地盤の挙動に求める傾向に ある。一方で,地盤工学的手法は,調査地点にお ける地盤の物理的・力学的性質に関する情報を重 視し,液状化の要因を地下 20 m 以浅の地層の物 性に求める。これらは相互補完的関係にあり,両 者を組み合わせることでより精度の高い液状化の 判定が行いうると筆者らは考える。地球科学的観 点による液状化現象の知見を紹介することを通じ て,液状化判定を巡る方法論に関する議論のきっ かけをつくりたい。 3)2 つの小特集で示された知見 2 つの小特集では,あわせて 8 編の報告が掲載 されている。 小松原ほか(2017),中埜ほか(2017),小荒 井ほか(2018)の 3 編は,液状化発生場の地質 構造,堆積環境や地形発達に着目している。 小松原ほか(2017)は,茨城県潮来市,稲敷 市,千葉県香取市,神崎町の地形分類と液状化の 被害分布を明らかにし,また,既存ボーリング データから埋没谷の地質モデルを作成して,地形 分類および沖積層の内部構造と被害分布の関係に ついて検討した。この結果,地形分類については 明瞭な関係が認められたが,必ずしも地形分類か ら判断される液状化危険度と実際の液状化被害分 布とが一致しない箇所があり,その部分について 沖積層の基底深度や泥層,砂層の分布と比較検討

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したところ,一部で一致がみられたものの,直接 的な関係は認められなかった。地形分類やボーリ ングデータでは把握しきれない埋没地形やごく浅 層の地質などの条件が複合的に関与している可能 性があるとしている。 中埜ほか(2017)は,千葉県神崎町の利根川 旧河道(神崎地区)と茨城県下妻市の鬼怒川旧河 道(鬼怒地区)において,比抵抗電気探査と地中 レーダ探査を実施し,旧河床地形等の地下浅部構 造や水理構造を明らかにし,旧河道内のミクロ スケールでの液状化発生の偏在との関係を考察 した。その結果,神崎地区では,旧河床深度を 2 次元的に捉えることができず,局所的な液状化発 生との対応関係は確認できなかったが,鬼怒地区 では,地中レーダ探査により旧河道の攻撃斜面側 が滑走斜面側に比べて旧河床深度が大きくなって いることが確認できた。この地域では液状化によ る家屋の傾動や沈下が攻撃斜面側で顕著であり, 旧河道の形状による旧河床深度の違いが液状化被 害の増大に影響していることが示唆されたとして いる。 小荒井ほか(2018)は,東北地方太平洋沖地 震に伴う関東地方の液状化被害のうち,地形や土 地の履歴との関連性の強い例をとりあげ,その概 要を紹介している。また,地形分類をもとに液状 化リスクを評価する方法についての現状と課題を とりまとめている。旧河道や旧湖沼などの水部の 埋立地等で液状化被害が集中して発生しており, 被害状況も深刻であったことから,液状化リスク を評価する上では土地の成り立ち等の情報を参照 することが重要であるが,同じ地形分類であって も浅層地盤の違いによって被害発生に差が認めら れることから,浅い地盤情報を反映した微地形分 類が必要とし,そのため DEM を併用したより細 かい微地形分類の適用やボーリングデータの併 用,砂利採取場などの時間間隔の短い人工改変を 把握するための高頻度な土地の履歴の参照が重要 としている。 卜部・山本(2017)と小松原ほか(2018)は, 埋め立てにより人工的に形成された地層の詳細な 特質に焦点をあてている。 卜部・山本(2017)は,茨城県潮来市日の出 地区の住宅被害の分布を考慮した複数地点におい てオールコアボーリングを実施し,液状化を引き 起こした砂層の層相と堆積過程,粒度特性を考察 して,住宅被害との関係を検討した。その結果, 被害程度の差異は,浚渫により盛土した砂層の層 厚と粒度組成の相違によるもので,層厚が厚く上 下層準で粒度組成が類似した部分が多い地点での 被害が大きいことが明らかとなったとしている。 小松原ほか(2018)は,噴砂が現れた千葉県 香取市および神崎町においてオールコアボーリン グとトレンチを組み合わせた調査を行い,液状化 した地層の特徴や液状化の過程と機構について検 討した。その結果,両地区ともサンドパイプを用 いた昭和期の埋め立てによって堆積した細~中粒 砂主体の地層が激しく液状化したこと,相対的に 粒度が細かく透水性の小さい地層に覆われた相対 的に租粒な砂層が液状化しやすいこと,N 値が 高く S 波速度が遅く,剛性率の低い地層が液状 化し,N 値が低く S 波速度が速く,剛性率の高 い地層では液状化履歴が認められない事例が得ら れたこと,噴砂の噴き出し位置や地表の割れ目は ごく浅部の地質構造に強く影響されていることな どを明らかにした。このことから,液状化判定に あたって,人工地盤などごく浅部の新しい時代の 地層の S 波速度・剛性率等の詳細な物性・地質 構造を明らかにすることが重要としている。 青山・小山(2017)は,砂利採取という特殊 な人工的土地改変に着目し,液状化発生との関連 を考察している。茨城県神栖市,鹿嶋市における 液状化発生域の分布を現地踏査と衛星画像判読に より明らかにし,また,空中写真,地形図等の地 理空間情報と既存の文献資料,ボーリング資料等 を用いて砂利採取場の時系列変化を詳細に把握し て,液状化発生域と砂利採取場跡地の関係を検討 した。その結果,この地域で砂利採取がかつて盛 んに行われていたこと,砂利採取場跡地の多くで 液状化が発生していることが明らかとなった。液 状化危険度を評価する際には砂利採取場跡地の分 布を考慮する必要があるが,砂利採取場の造成や 埋め戻しの年代は多様であるため,多時期の地理

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空間情報を活用して,砂利採取場跡地の詳細な分 布を明らかにしていく必要があるとしている。 このような地球科学的調査を行うための手法と して,中島(2017)は,液状化リスク評価を行 うためのボーリング調査の際に,コアの破壊分析 前に X 線 CT を行い,コア中の砂脈の抽出を行 うことを提案し,そのための画像セグメンテーショ ンのアルゴリズムとして GrowCut 法を紹介して いる。 また,齋藤ほか(2018)は,過去のトレンチ調 査例をもとに,地下水位が高い沖積低地での液状 化層のトレンチ調査に適した手法を提案し,その 手順をとりまとめている。 このように,2 つの小特集に掲載された報告の 多くが,地球科学的観点から得られた東北地方太 平洋沖地震による液状化現象に関する知見を記載 し,とくに地盤工学的手法による液状化判定では 等閑視されがちであった微地形・表層地質および 土地履歴と液状化現象発生の関係について論じて いる。 なかでも,地表下数 m 以浅の極浅層の地質が 液状化現象の発生と深く関係しているという知見 は,液状化現象の予測と防災にとってとくに重要 な示唆を与えると考える。 次章では,東北地方太平洋沖地震以降蓄積され た多くの地球科学的知見を,液状化ハザードマッ プという形で,行政や住民が液状化の危険性を理 解し,被害を最小限にとどめるための対策に活か すための方策について議論する。 III.液状化ハザードマップの現状と問題点 液状化の危険度を評価し,住民に周知するた め,多くの市町村において液状化ハザードマップ が作成され,公開されている。しかし,前章で述 べたように,既存の液状化ハザードマップが液状 化発生危険度を必ずしも適切に評価できていない 例が知られている。 本章では,既存の液状化ハザードマップの整備 状況を整理し,作成手法や表示内容についての全 国的な傾向を把握する。さらに,評価が適切でな いと考えられる事例を抽出し,その問題点を考察 する。最後に,それらを改善するための提言を行 うことを試みる。 1)液状化ハザードマップの整備状況 近年,さまざまなハザードマップの整備が進み, 多くの市町村がハザードマップを印刷物として住 民に配布したり,インターネット上で公開したり している。洪水,土砂災害,津波等のハザードマッ プは,それぞれ水防法,土砂災害防止法(土砂災 害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に 関する法律),津波防災まちづくり法等の個別法 により,市町村長に作成,公表が義務づけられて おり,作成のための詳細なマニュアルが国から提 供され,全国的に整備率も高い(内閣府, 2016 な ど)。しかし,液状化等の地震災害に関するハザー ドマップについては,「地震防災対策特別措置法」 に努力義務の規定はあるものの,具体的な内容に ついては定められておらず,作成,公表の判断は 各市町村に任されている。 国土交通省ハザードマップポータルサイト(国 土交通省, 2017)によると,2014 年 4 月に実施し た「地震防災マップ実態調査」により,「地盤災害 (液状化)マップ」を公表していると回答のあっ た市町村数(東京 23 区を含む)は全国 1,741 市 町村のうち 317 市町村(約 19%)となっている。 公表状況を都道府県別にとりまとめたものを図 4 に示す。都道府県によって整備状況に大きな差が あり,例えば埼玉県では約 8 割の市町村が整備・ 公表を行っているが,その隣県であるにもかかわ らず群馬県や栃木県ではほとんど整備が行われて いないなど,地理的条件よりも都道府県による指 導や支援の状況により整備状況に大きな差が生じ ていることがうかがえる。 2)液状化ハザードマップの内容 液状化ハザードマップを整備・公表を行ってい る市町村のうち,インターネットを通じて閲覧・ 入手が可能なものは 271 市町村であった。これ らを収集し,表示項目,液状化リスクの表示方法, 評価に用いた情報源などを読みとって分類し整理 した。 2-1)液状化リスクの表示 ほとんどのマップが「液状化危険度」「液状化

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の可能性」「液状化しやすさ」といった表現で液 状化リスクを 3 ~ 5 段階で評価し表示していた。 そのうち 17%は評価の基準とした PL値を表示し ており,なかには PL値を 8 段階で表示している ものもあった。PLの数値と危険度の対応につい ては,例えば「極めて危険度が高い」とする PL 値は 15 以上としているものが多いが,30 以上, 35 以上としているものもあり、PL値 10 ずつの 色分けを 55 まで行っているものもあった。PL値 15 以上を 10 ずつ区分することはあまり意味がな く,十分危険性の高い地域に対する誤解を与える 表現であり,適切とはいえない。リスク評価の 単位は,12%がポリゴン,87%がメッシュで, メッシュのうち 41%は 250 m メッシュ,37%が 50 m メッシュであった。 2-2)その他の表示項目 液状化リスク以外の表示項目に関しては,緊急 輸送道路,市町村役場,消防署,警察等の防災関 係機関,病院,避難所などが多い。北海道と中部 以西では液状化リスク評価のみの表示が多いのに 対し,北陸,関東,東北では表示項目が多く,発 災後の利用をより強く意識している。 2-3)液状化リスク評価の情報源 評価のおもな情報源としては,34%が地形分 類データ,27%がボーリングデータ,40%が双 方併用で,中部以東の東日本では地形分類を用い ている割合が高い。また,評価にあたって液状化 災害履歴を考慮したことを明示しているものは全 国で 7 団体( 3 %)であった。 2-4)マニュアル類 液状化リスク評価にあたって利用したマニュア ル類についての記載があったもののうち,「液状 化地域ゾーニングマニュアル」(国土庁防災局震 災対策課, 1999)が 14 団体,「道路橋示方書・同 解説 V 耐震設計編」(日本道路協会, 2002)が 20 団体,その他では各都道府県の地震被害想定調査 報告書などがあげられている。「液状化地域ゾー ニングマニュアル」はおもに東北,関東,「道路 図 4   都道府県別液状化ハザードマップ公表市区町村数.国土交通省ハザードマップポータルサイト(国土交通省, 2017)より作成.2014 年 4 月調査.

Fig. 4  Numbers of municipalities that have published their liquefaction hazard maps by prefecture. Source: Hazard Map Portal Site (Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism, 2017).

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橋示方書」はおもに近畿で多く使われている。さ らに北陸では北陸地方整備局が作成した液状化ハ ザードマップを利用している団体もあった。 3) 液状化ハザードマップの評価∼土地条件と の関係から 収集した液状化ハザードマップを当該地域の土 地条件図等と照合し,地形発達等の観点から評価 に問題がある可能性のあるマップを抽出した。そ の結果,次のような事例があることがわかった。 3-1) 評価が土地条件や土地の履歴と全く対応 しないもの ボーリングデータをおもな評価の情報源として いるマップは当然ながら土地条件や土地の履歴と の対応が悪い。対象地域を面的に評価するために 十分な数のボーリングデータが得られている場合 には,それ以外の情報を参照するまでもなくボー リングデータから詳細な液状化評価を行い,それ をマップにすればよい。そのようなものであれば, 地形分類だけでは把握できない盛土の厚さ,地下 水位,地層のしまり具合,粒度構成などの面的違 いを反映した評価になっていると考えられるが, 面的な評価が可能となるボーリングデータの数や 配置が得られることはまれであり,結果的に少数 の評価箇所の間を機械的に内挿しているマップが 散見される。土地条件や土地の履歴の情報を併用 すれば,これらを参照しつつデータの少ない地域 の面的評価を補完することが可能となるが,多く の市町村はこれを行っていない。多くの市町村に より参照されている「道路橋示方書」にはボーリ ング地点の液状化評価を行うための手法が示され ているのみで,面的評価を行う手順は示されてい ない。図 5 はその一例である。並行する自然堤 防や後背低地など,土地条件を比較的理解しやす い地域であるが,地形とほぼ無関係にパッチ状に 液状化の可能性が高い地域(オレンジ色)が示さ れている。 3-2) 同様の土地条件をもつと思われる一連の 地域の一部に同心円状に危険度評価が異 なる地域が点在するもの 一連の地形発達により形成されたと考えられる 地域の一部に,いかにも違和感のある幾何学的な 同心円状に危険度が異なる地域が点在する例がみ られる(図 6 )。地形分類による面的な評価を行っ た地域のなかに少数のボーリングデータによる評 図 5   液状化ハザードマップの評価が土地条件と対応しない事例.左:液状化ハザードマップ.液状化危険度を 1 ~ 4 の 4 段階で表示し,オレンジは 4,黄色は 3 を表す.右:国土地理院の土地条件図.黄は自然堤防,水色 は氾濫平野,ピンクは盛土地.

Fig. 5  Example of liquefaction hazard map that does not correspond to land conditions. Left: Liquefaction hazard map. Liquefaction risk ranks are represented by colors. orange: rank 4, yellow: rank 3. Right: Land condition map by GSI. yellow: natural levee, light blue: fluvial plain, pinkish: landfill.

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価が存在し,両者による評価が異なったことで無 理にボーリングデータの周囲だけの評価を変更し た苦肉の結果と思われる。 3-3)不自然な不連続線で評価が変わるもの 一連の地形発達により形成された地域が不自然 な直線状の不連続線で分断されて評価が変わる例 がみられた(図 7 )。評価のもとにした既存の地 形分類図の図幅の境界で両者の地形分類の解釈が 異なるものをそのまま評価した結果と思われる。 3-4) 人工改変地の解釈に問題があると思われ るもの 地形分類に基づく評価を行う過程で,もとにし た地形分類図の分類項目をマニュアル等に示され た分類項目に読み替える際に,マニュアル等の評 価の意図が十分理解されないままに用語だけで読 み替えてしまったと思われる事例がある。例えば, 「地震防災マップ作成資料(内閣府(防災担当), 2005)」では,中央防災会議による 15 区分への読 み替え方法を示しているが,この区分に 「盛土」 と「切土」という項目がなく「人工改変地」とい う項目があるため,盛土も切土も人工改変地に分 類されて同じ評価が行われている例があった(宇 根ほか, 2015)。盛土と切土の液状化リスクがまっ たく異なることは当然であり,また,中央防災会 議の「人工改変地」が切土地を想定していること は評価全体をみれば自ずからわかることである。 図 6   同心円状に危険度評価が異なる地域が点在する例.左:液状化ハザードマップ.濃いオレンジはきわめて高い, オレンジは高い,白は低いを表す.右:国土地理院の土地条件図.黄は自然堤防,薄緑は氾濫平野,オレンジは 段丘.赤点線は左図の「きわめて高い」の範囲.

Fig. 6  Example of liquefaction hazard map that includes circular areas with different rank of risk. Left: Liquefaction hazard map. Liquefaction risk ranks are represented by colors. dark orange: very high, orange: high, white: low. Right: Land condition map by GSI. yellow: natural levee, light green: fluvial plain, orange: terrace. Red dotted lines indicate the range “very high” on the left figure.

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3-5)メッシュによる評価の問題 多くのマップが評価結果を 250 m メッシュで 示している。偏在するボーリングデータによる評 価を面的に平滑化するためにメッシュ化は有効で あり,また地盤環境が必ずしも地表の微地形ほど 急激に変化しない地点ではメッシュによる評価が 適切な場合もあるが,一方で,湖沼の埋立地や旧 河道など,明らかに液状化リスクが数 m ~数 10 図 7   不自然な不連続線で評価が変わる例.上:液状化ハザードマップ.紫:可能性がきわめて高い,濃青:可能性が 高い,水色:きわめて低い.下:国土地理院の土地条件図.黄:砂丘,赤点:凹地,水色:氾濫平野,緑:山地. 黒点線は不自然な不連続線.

Fig. 7  Example of liquefaction hazard map that includes an unnatural strait boundary. Upper: Liquefaction hazard map. Liquefaction risk ranks are represented by colors. purple: very high, dark blue: high, light blue : very low. Lower: Land condition map by GSI. yellow: sand dune, red dot: depression, light blue: fluvial plain, green: mountain. Black dotted line shows unnatural strait boundary.

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m単位で大きく変化する場合もある。このような 土地履歴や微地形はメッシュとは別に評価すべき であるが,多くの場合メッシュ内はすべて一律の 液状化リスクをもつものとして評価されており, せっかく微地形や詳細な土地履歴が把握されても 情報が評価に反映されずに失われてしまっている。 4) 液状化ハザードマップ作成マニュアルの現 液状化ハザードマップの整備率が高くないこ と,液状化リスク評価や表示内容にばらつきが大 きいこと,土地条件の観点から疑問のある評価が みられることの原因のひとつは,整備を担当する 市町村に対する適切なマニュアルが提供されてい ないことであると考える。ここでは,1999 年に 当時の国土庁防災局が公表した「液状化地域ゾー ニングマニュアル」(国土庁防災局震災対策課, 1999)が示す液状化評価手法の概要を示す。 同マニュアルでは,グレード 1 からグレード 3 の 3 段階でマップを作成することとしている。 グレード 1 は既存の概略地形分類図を用いて, 山地・台地等の明らかに液状化しない地域を除外 し液状化検討対象地域を抽出すること,グレード 2 は微地形分類図を入手または作成し,地形分類 から地盤表層の液状化の可能性の程度を分類して 領域表示すること,グレード 3 は既存ボーリン グ資料を収集し,250 m から 500 m のメッシュ 単位で PL値による液状化判定を行うこととして いる。グレード 2 とグレード 3 の合成方法につ いては,評価の差を考慮してグレード 2 を基本 として合成を行うこととしているが,グレード 2 の評価領域がグレード 3 のメッシュより大きい場 合はグレード 2 の領域内にグレード 3 のメッシュ 評価結果を反映させるとしている。すなわち,一 連の地形のなかに評価の異なるメッシュが表れる ことになる。また,地形分類の読み替えの解釈, 項目ごとの評価の考え方等の説明も十分とはいえ ない。 5)液状化ハザードマップ改善の必要性 2 つの小特集に掲載された知見は,II 章に述べ たように,液状化判定にあたって,地盤工学的手 法と微地形・表層(極浅層)地質および土地履歴 に関する情報が相互補完的な関係にあり,両者を 併用することでより現実的な液状化評価が行いう ることを示している。また,関東地質調査業協会 液状化研究会(2012)や中埜ほか(2015)など, 最近の液状化発生事例を踏まえた微地形や土地履 歴に基づく液状化リスクの新たな評価手法が提案 されている。上述のように,既存の液状化ハザー ドマップの多くはこのような知見が反映されてい ない。また,GIS(地理情報システム)などを用 いれば微地形や表層地質,土地履歴に関する情報 をメッシュ化することなく評価できる(国土交通 省北陸地方整備局・地盤工学会北陸支部(2012) など)。ウェブ地図などにより他の情報と重ね合 わせてよりわかりやすく評価結果を住民に伝える こともできる。このように,最近の研究の進展と 技術動向の観点からも,液状化リスクを評価し マッピングする新たなマニュアルの整備・提供を 行う必要があると考える。 新たなマニュアルでは,評価の過程の第一段階 として,地形分類図をいきなり機械的にメッシュ データにするのではなく,微地形情報を DEM な どの他の情報と重ね合わせ,地理院地図などの ウェブ地図を利用して,大局的に地域の土地履歴 を俯瞰することからはじめることを提案したい。 その際には,旧版地図や過去の空中写真,市町村 史などを利用して,土地利用の変化や人工改変で みえなくなったかつての地形,とくに,旧河道や かつての水域,浅い谷などの存在を把握すること が重要である。また,評価にあたっては,調査地 点を構成する物質や地下水などの物理的・力学的 性質から評価を行う地盤工学的評価とそれらがど のような環境で形成されたかを考察する微地形や 浅層地質,土地履歴による評価のそれぞれの特徴 を理解し,両者の評価が異なる場合には単に機械 的に接合するのではなく,その違いをもたらした 土地の発達史を踏まえた統合を行うべきであり, マニュアルではそのための解説を充実させるべ きである。さらに,GIS を用いたポリゴンによ る処理や,少なくとも 50 m メッシュ以下の細か いメッシュ単位の評価を併用すべきである。そ の際,石井ほか(2011)や中埜(2016)が 50 m

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メッシュの効率的生成手法を提案している。 加えて,このような評価の過程と,評価の根拠 とした土地に関する情報を住民に公開し,住民が 自らの住む土地の成り立ちを理解することが重要 である。 本特集に示された成果が,より適切な液状化ハ ザードマップの整備と,住民の液状化リスクの理 解に貢献することを願いたい。 謝 辞 III 章に記述した地方公共団体の液状化ハザードマッ プの収集,情報の抽出,分析は,2016 年度国土地理院 職場体験実習の一環として,田中海晴氏(東北大学), 安藤竜介氏(大阪大学大学院),米川直志氏(千葉科学 大学)が実施したものである。各氏ならびに派遣に便 宜を図っていただいた各大学等の関係者の方々に深く 感謝申し上げます。 文  献 阿南修司・佐々木靖人・日外勝仁(2016):液状化判定 の高精度化に関する研究②.平成 27 年度プロジェク ト研究土木研究所成果報告書.[Anan, S., Sasaki, Y. and Agui, K. (2016): Research on a high-precision assessment method of soil liquefaction No.2. Resea­

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Fig. 1  Source fault, epicenter, and liquefied sites of the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake
Fig. 2  Seismic wave form data at Kessa, Inashiki City, Ibaraki Prefecture, collected during the 2011 off the Pacific coast  of Tohoku Earthquake (observed by Ibaraki Prefecture, after Japan Meteorological Agency, 2011b).
Fig. 3  Liquefaction hazard map prepared using the  geotechnical method and liquefied sites caused  by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku  Earth-quake
Fig. 4  Numbers of municipalities that have published their liquefaction hazard maps by prefecture
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