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Title
ヴァレット―ディシック「教師の行動の評価」
Author(s)
添田, 裕; 木場, 岩毅
Citation
長崎大学教育学部教育科学研究報告. 第2分冊, 26, pp.129-150; 1979
Issue Date
1979-03-20
URL
http://hdl.handle.net/10069/29587
Right
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
「教師の行動の評価」
添 田 裕
山 訳
木 場 石 毅
Valette−Disick:
“EVALUATING TEACHER PERFORMANCE”
Translatedby
YuTAKA SOEDA and IwAKI KOBA
これは,Rebecca M.ValetteとRen6eS.Disick共著“ModemLanguage Performance Objectives and Individualization:A Handbook” (New York:Harcourt BraceJovanovich,Inc.,1972)の第1部,第6章“EVALUATING TEACHER PERFORM−
ANCE”(PP.108−122)の訳である。本書や著者については,武居・木場訳Valette−Disick 「態度,感情,価値の発達と測定」(長崎大学教育学部教育科学研究報告 第24号,昭和 52年)および武居・木場訳ヴァレットーディシック「態度,感情,価値」(同第25号,昭和 53年)を参照されたい。 原著書は,B.S.Bloomの「教育目標分類学」(Taxonomy ofEducational Objectives) の理論を外国語教育に適応発展させたものとして特色がある。ここに訳出する第6章は, 認知・情意の両域における教師の行動の分類,教員養成における行動目標の利用,教師の 監督,教師の自己評価にっいて,具体的な例をあげながら体系的に外国語教師論を展開して いる。日常の教育活動はもちろんのこと,教育実習に携わる者として得るところが大である。訳注にあげた“GUIDELINE FOR TEACHER PREPARATION IN FOREIGN
LANGUAGES”なども参考にしながら,実態に即したよりよい実習生の指導のあり方や 英語教師としてのあり方を追求し実践していきたい。 最後に,訳語について簡単に触れておくことにする。原著者の用語の中で,behavior は,タキソノミーの各段階の個々の具体的な行動を表わし,performanceは,目標達成 度,学習成果,期待される行動(desiredbehaviors),といった抽象的な用語で,前者の上 位概念として用いられている。しかし,訳語の上では適切なものが見当たらなかったので, 強いて両者を区別せず,ともに「行動」とした。それは,また,本書の中に,「行動目標」 として同義の他の用語‘δ6加∂10名召l or1%ε!名%6!♂oκ召l o顔66伽6sヲを用いずに‘performance oblectives’を選んだのは‘simplicity’のためである,という言及があることや(P.10),‘A performance objective must describe the student behavior,or“performance,”that isdesired。’(p.15)など同義的に用いられた表現があることにもよる。したがって,‘perform− ance oblective(s)7は「行動目標」,‘behavior(s)’は「行動」としたが,‘pe㎡ormanceヲが 単独で用いられている場合は訳語の次に(performance)を付して,‘behavlor(s)’と区別 した。同様に,「目標」にも,特定の具体的な目標(oblective(s))とより広い意味の一般 的な目標(goa1(s),aim)があるが,すべて「目標」と訳し,‘goa1(s〉’や‘aim’の場合だ け括弧の中に原語を示しておいた。 また,「情意タキソノミー」の第5段階,「個性化」は,「特性表示」の意味の‘characteri・ zation’の訳である。 末尾ではあるが,今回の訳出に際して,前長崎大学教育学部武居正太郎教授より貴重な 助言や指導をいただいたことをここに記して感謝の意を表わしたい。 (備考):(訳者注)とある以外はすべて原著者の注である。
第6章
教師の行動の評価(EVALUATING TEACHER
PERFORMANCE)
り 行動目標は,生徒の行動(performance)のほかに教師の行動(performance)も評価す るように開発することができる。教師を養成する諸機関は,現在,履修課程の評価(志願 者はどのコースを選んだか。州の免許状取得の資格があるか。卒業するのに十分な単位を 履修しているか。成績の平均点は満足なものであるか。)を教育成果の評価(志願者は外国 語をどれくらいうまく使いこなすことができるか。どのような指導技術を駆使することが できるか。専門の組織団体とそれらが言語教育に対してなした貢献に精通しているかどう か。)で補足している。教員養成の結果は行動目標を用いることによって客観的評価ができ るようになるのである。 行動目標は,また,単位取得のために勉強中の教育実習生であろうと,在任資格取得を めざしているより経験を積んだ教師であろうと,教室における教師の教育効果を評価する ことに用いることができる。 6.1 一一般的考察 教師の評価には相補的な二面が考えられる。すなわち,教師の個人的な資質の評価と教 室における効果の二面である。6.L1個人的資質
教師の個人的資質は,教材能力,職業的能力,個人的態度の3っの範疇に分類される。 外国語の教授においては,教材能力とは,教師の当該外国語を自由にあやつる力,その外国文化についての習熟度,その言語が話されている国の文学や文明にっ・いての知識を指し ている。職業的能力とは,教室における教師の行動,指導計画作成能力,特定の指導技術 の使用,適切なテストの準備などのことである。教師の態度とは,教師の職業的活動の情 意的側面のことであって,教材,同僚,生徒および生徒の持っ問題に対するかれの態度に 関わるものである。
6.1.2教室効果
教室における教師の効果は,結果から評価することができる。教材の領域においては, このことは,生徒の教材行動目標の達成の度合いを言っている。情意領域では,これは, 授業中の生徒の態度,かれらの動機,外国語学習に関するかれらの課外活動を指す。 6.2 教師の行動の分類 教師の資質は,行動目標の用語で述べることができる。たとえば,「要求される資賓を備 えていることを証明するには,教師は何をしなければならないか。」のように。そうすれ ば,望ましい教師の行動のリストは,第2章において生徒の行動が分類されたように,タ ラ キソノミーの形式で分類されるであろう。このタキソノミーの分類では,評価者は教師の 行動を最も単純で,最も基本的なものから最も複雑なものへと並べることができる。その ような分類を行うことによって,ある型の行動の欠落があるかどうかがわかるし,そして, もし欠落があるとしたら,それが正当なものであるかどうかの決定をくだすことができる のである。6.2.1教材能力.ひとつのタキソノミー
教材能力の領域における教師の行動の分類は,教材領域における生徒の行動に相当する。 教師はその外国語を満足に発音することができるか(第1段階)。その教師の語いの大きさ はどうか(第2段階)。名詞,動詞,形容詞などの屈折形を知っているか(第2段階)。文 法規則や文法パターンを知っているか(第2段階)。新しい文を作ったり,新しい練習問題を 正確に書くことができるか(第3段階)。会話と口頭呈示にその言語を流暢に使うことがで きるか(第4段階)。本物のように思える対話,物語,説明文を書くことができるか(第4 段階)。1っのパラグラフとか放送を分析して,単語,構造,イントネーションなどの選択 について意見を述べることができるか(第5段階)。 6.2.2職業的能力:ひとつのタキソノミー 職業的能力に関する行動のタキソノミーは,教材行動のタキソノミーと同じ様式に従っ ている。段階と範疇はそのままであるが,外国語教育の目標を反映させるために,その内 容が変わるだけである。タキソノミーの各段階について,以下に説明することにする。教の 師の行動の実例は,第14章を参照されたい。
第1段階 機械的技能
教師の行動の最初の段階は機械的技能である。教師は教室および生徒の物理的な状況に 注意する。生徒に対して最大の効果をあげるために,自分の話し方や動きをコントロール する。これらの行動は物理的であって,それ自体では外国語教授に特有のものではなく, 一般の教授過程に適用できる。 第1段階の内相は知覚である。教師は照明,温度,黒板などの外的状態に気づく。どの 生徒が欠席しているかに気づく。生徒が興味深げな様子をしているか,あるいは退屈そう な様子をしているかどうかを感じ取る。誰が私語をしたり,短信を回したりしているかが 分かる。教師は,1人の生徒が級友たちに聞こえるくらいの大きな声で話しているかどう かが分かる。この段階では,教師は,これらのことを単に意識しているだけであって,必 要ならば,参観者にそれらを列挙することはできる。しかし,まだ,これらの外部に現わ れた徴候に応じた行動をすることはない。 この段階の外相は再生である。教師は,授業中の活動の中で効果的な授業に不可欠な身 体的動作を行う。快活な声調で,はっきりと明瞭に話す。黒板やオーバーヘッド・プロジェ クターに読み易い文字を書く。授業中ずっと教卓に向かっていないで,机間巡視をする。 この段階では,教師の教室における一般的な行動だけが評価される。この範疇には,教室 の状況に応じてその態度を変える技能は含まれない。第2段階.知
識 知識が,職業的能力のタキソノミーの第2段階である。教師として履修していなければ ならないものの中には,教育心理,教育哲学,教育史などのような多くの領域が含まれて いるが,このタキソノミーは,第二言語の教授に特有な知識分野に限られる。この段階で は,教師は専門的文献に精通している。(この行動は,普通,外国語教授法ないし教科課程 コースで修得される。) この段階の内相は認知である。教師は,種々の理論,技術,調査,用語などの知識を, 多肢選択法,組み合わせ法,真偽法などのテストで実証することができる。 想起(外的行動)としては,外国語教授法に関する用語,概念,練習などを定義し,説 明することができなければならない。視聴覚装置を使うために学んだ使用法を復唱するこ とができる。また,精通しなければならないテキストや教室資料を的確にあげることがで きる。第3段階 転
移 タキソノミーの第3段階は,転移と呼ばれる。手引きに従って,実際の授業や模範授業 の準備をしたり,実際に授業を行ったりする。この段階では,指示に従い,あらかじめ定められた方針に従って共同研究や教授活動を行う。教師は,まだこの段階では,教えてい る生徒の反応に応じた行動をしているのではない。 このレベルの内相は受容である。自分自身の発想とか想像力とかを働かせるというより はむしろ,他人の着想を応用する段階である。教師用手引きとか指導教師とかによって定 められたひな型に従って1つの課を教える。製作者の指示に従って視聴覚装置を使用する。 一定の型に適したテスト項目を書くことができる。指導を受けて行動目標を書く。 この段階の外相は応用である。教師は,ここでは,自主的に行動する。自分独特の練習 問題,ドリル,テストを書く。自分で作成した指導案に従って教え,自分自身の行動目標 を書く。この範疇における活動は,それまでに修得してきた内容を実際の教室場面へ応用 することである。
第4段階 伝
達 教師の資質の職業的タキツノミーにおける第4段階は,伝達である。この段階は,発明 工夫の才のある教師と,良心的ではあるが想像力に欠ける教師とを区別する段階である。 想像力に欠ける教師は,授業を計画したり,あるいは,期待されている活動を遂行したりす るなどして,応用のレベルではうまく任務を果たす。発明工夫の才のある教師は,生徒,同僚, 管理者,同職の他の教師達との相互交流を始める。 この段階の内相は理解である。教室の範囲内では,生徒の気分や行動(performance)に 敏感である。顔つきとか反応の様子などから,生徒が理解したかどうかが分かる。たとえ, 必ずしも同意するとはかぎらないとしても,同じ科の他の教師の要求や関心事,あるいは 管理者の希望に対して敏感である。 外相は自己表現である。刻々と変わっていくクラスの要求や気分に応じて,教室活動を 変化させるのがはやい。生徒のために設定した行動目標を達成しようとして,自分の指導 技術を修正する。同僚と協調して働き,教師としての目標(goals)の達成に積極的に努め る。第5段階 批
評 批評がタキソノミーの第5段階の構成要素である。教師は自分の指導法を改善しようと して,自分自身の行動(pe㎡ormance)を検討する。この自主研究活動は,通常,正規の日 課が終わってから行われる。 この段階の第1の内相は分析である。ひとりで,あるいは,同僚,教師,友人の協力を 得て,自分の授業をできるかぎり客観的に検討する。(生徒がある行動目標にまで到達しな かった,生徒がテストで不正行為をした,など〉教室で何かがうまく行かなかったことを 察知したので,その場面を分析することによってその理由を探ろうとする。 第5段階の外相は統合である。いったん,その失敗の背後にあるほんとうの理由を発見 すれば,その問題に迫る別の方法を考案することになる。おそらく,行動目標を修正する 必要があるだろう。多分,不正行為へつながった状況は変えることができるだろう。たとの えば,小集団学習とかパフォーマンス・コントラクトを用いることによって,より大きな 規模で,自分のクラスを改造する計画を立てることもできよう。 この段階の第2の内相は評価である。この範疇における行動は,分析と統合の行動と密 接に関連している。自分の授業における弱点を見出し,生徒の学習を促進する種々の方法 の を実験するとき,教師は自分自身の効果を評価するのである。第4.5節に示したような特 別の自己評価法を使用することもできよう。 6.2.3教師の態度:ひとつの情意タキソノミー 自分の職業に対する教師の感情や態度は,情意行動の領域に分類される。教師タキソノ の ミーの段階は生徒のそれと同じである(第2.3.1節を参照のこと)。
第1段階●受
容 第1段階の教師の専門的学習活動は,主任教師,大学の教員養成プログラム,あるいは, 短期講座などのように,自分以外のものによって方向づけられる。教師は与えられた指示 に従う。そして,その職業に対する態度は,少なくとも,中立的である。その態度は,た とえば,次のようであるかもしれない。「結局,それは仕事なのだ。それで,金をかせぐた めには,われわれはすべて働かねばならないんだ。」学習することに反発することもなく, また,提示された資料に対しても偏見をもたない。第2段階.反 応 性
第2段階における教師の特徴は,その職業とそれに関わる諸活動に対して,おおむね, 好意的な態度をとることである。教師間の相違や教授法の相違に対して寛大である。個人 研修ならびに教室の授業の両面において,概して,その仕事を楽しむ。その態度は,次の 陳述に表わされている。すなわち,「働かねばならないかぎり,語学を教えることができる のをうれしく思う。もともと,教えることと若者たちと一緒に勉強することを楽しむ方であ る。」教科の会合に参加したり,各種の言語会議に出席したり,先輩の示唆に従って専門誌 を予約購読する。第3段階.真価の認識
第3段階では,教師はその専門的な研究に価値を見出す。専門の研究団体に自発的に 加入したり,地方または地域の会合に出席したり,自分の教える言語の運用能力を高める ために,企画された諸活動に参加したりする。専門誌を,少なくとも1冊は,定期的に購 読する。この段階での教師の態度は,次の陳述に示されている:「よりすぐれた教師にな るために,自分にできることは何でもやりたい。」第4段階 内 面 化
第4段階における教師は,言語学習を生徒にとって価値あるものとみなして,すべての 生徒が第二言語とその文化にっいての積極的な学習経験を持てるように,援助に努める。 今や,「専門職としての語学教育に命を賭けるのだ」と言い,専門的な見解を身につける。 担当するクラスのずべての生徒に対して関心を示すほか,自分の時間と精力の大部分を, さまざまな専門的活動に充てる。数種類の専門誌を読む。年に1回は,地方や地域レベル (できれば,全国レベル)の数種類の専門的会合に出席する。共同研究に加入し,夏期講 習会に通い,近くの大学で教職または外国語の大学院課程を履修する。定期的に海外旅行 をするように努力する。自分の教授法を改善しようとして,自己評価を行う。第5段階 個 性 化
第5段階では,教師は,その職業において指導的任務を引き受ける。「言語教育の改善に 貢献したい」というのがその態度である。その全精力を地域レベルに集中させるが,結 果的には,他の教師を鼓舞するようなプログラムを構築することになろう。また,州,地 方,全国の各会合を組織するために援助したり,種々の研究会や大会で講演をしたり,本 や論説を書いたり,言語学習ないしは文学の研究に従事したりする。 6.3 教員養成における行動目標の利用 外国語の教員養成を行う単科大学や総合大学において,その教科課程に行動目標を導入 することは有効であると思われる。事実,総合大学レベルでは,ひとりひとりの教授に自 由裁量権が与えられているので,特定の学生の行動に関して外国語か教職のいずれかの課 程をつくり替えることは容易である。行動目標は,また,教育実習実施計画に受け入れら れる以前に,学生が何をできなければならないかを記述することにも用いられよう。 6.3.1単科大学課程における行動目標 よく知られていることであるが,若い教師は,教職課程や教科教育法の課程の履修にも かかわらず,最終的には,自分達自身が教えられたやり方で授業をする,ということがき わめて多い。行動目標について講義する教科教育法の教師自身が,いわゆる「私のやる通 りでなく,私が言う通りにしなさい」という名文句の典型である場合があまりにも多く, したがって,通例,学生の行動に望ましい変容をきたすことができないのである。 6.3.1a ボストン単科大学での1つの実験 ボストン単科大学での外国語教科教育法課程の目標の1つは,学生が,たとえば,“minimalpair”,“pattem drill”などのような,ある用語と概念を同定することができるということ である。1967年の課程では,教師は,最終試験の「知識」部門に備えて学生が勉強しなけ ればならない70の用語のリストを配布した。試験の結果は,15名のうち,わずかに2人の学 生が90パーセントの得点をとっただけであった。与えられた用語を全部の学生が同定でき ることに,そのねらいを置いていたので,教師はこの結果に満足しなかった。翌年,同じ リストを配布して,次のような行動目標を考案した。 目的:言語教育に関する用語を知ること。 期待される行動:言語教育に関するある用語が与えられると,それを記述し,適切なと ころでその例を1つあげて説明すること。 条件=70の用語のリストは,テストの1週間前に配布される。□月□日に実施されるテ ストに実際に出るのは,そのうちの約50から60の用語である。メモを使用してはならない。 規準:合格点は90パーセント(評定B+)である。テストは3回受けてよい。テストを 何回受けても,何の罰点も与えられない。ただ,最高得点のみが記録される。 学生たちは,最高点を獲得するチャンスが3回あることが分かった。18名中15名の学生 が第1回のテストで合格し,残りの3名も第2回のテスト(第1回のテストを組み変えた もの)で90パーセントの合格点をとったことに,教師は満足したのであった。
6.3.1b検 討
上述の事例では,前の年に学生に専門用語を習得させることに15パーセント以下の効果 しかあげることができなかった教師が,行動目標と「テストー再テスト」方式の採用によっ て,100パーセントの効果をあげることができた。学生たちは,そのシステムが自分たちに 不利になるように用意されたものでなく,また,いわゆる「鐘型分布曲線」がクラスを支 配するのでもなく,教師が自分たちに一定の専門用語を習得させるのに専念しているとい うことが,実感として分かったのである。 教材内容の学習における進歩よりも一層重要なことは,情意領域での進歩であった。学 生たちは,「テストー再テスト」方式が持つ弛緩効果を経験した。このような抑圧のない状 況では,すべての学生が,他の場合よりも一層熱心に,そして,より多くのことを学習した。 90パーセントの規準はきわめて高い要求水準であるが,すべての学生がそこに到達したの である。おそらく,それまでにこのレベルまで達することのなかった学生たちは,かなり 大きな自信を身にっけたと言えよう。さらに,この教科教育法の課程をとった学生は,お そらく,自分のクラスの指導において,従来の伝統的な方法で教えられた前年の同級生よ りも,一層熱心に,行動目標の実験を行うであろう。 6.3.2教育実習のための最低必要条件の明確化 大ボストン地区の高校や単科大学の語学教師は,マサチュセッツ外国語協会の後援のももに,学生が,教育実習実施計画に受け入れられる前に,満足させねばならない最小限の 基準を設定するための共同研究を行ってきた。このことは,最終的には,同州の免許状の 取得基準を上げるための,外国語教師による間接的な試みである。 この教師グループは2つの報告書を作成し,それは1971年の春に配布された。最初の報 告書は,教育実習を志願する学生に期待される最小限の資格を,行動的表現用語でリスト にしたものである。2番目の報告書は,実習生が勤務校で従事しなければならない諸活動 の代表例を記述したリストである。中学校は,最低必要条件を満足しない学生を拒否する ことができると思われている。一方,大学側も,リストに指定されているさまざまな活動 を遂行できない学生を,中学校に送るのを拒むことができる。同リストは,大学入学の初 期に将来の語学専攻の学生に配布される。かくして,教育実習中に,どのようなタイプの 行動が自分たちに期待され,また,どのようなタイプの事柄の手ほどきを受けるかを,学生 ぐ の自身知ることになるのである。(この両方の報告書の第1版の写しが「付録B」にある。) 総合大学もまた,その語学専攻の学生のために適切な用意をするために,教科課程を修正 することが奨励されるところである。 6.4 教師の監督 学科の主任教師は,特に在任資格を考慮されている若い教師の監督をしばしば要請され る。おそらく,クラスの主任教師は,配当された実習生の監督を要求されるであろう。行 動目標は,ここでも,教室における教師の効果を判定する客観的な規準を与えてくれる。 6.4.1 1つの実例:Evan Gard学校区の場合 興奮と緊張と不安が,「エバン・ガード学校区は,ただいま,新しい外国語科の整合係兼 指導主事を任命した」という告示を迎えた。反応は,関係する教師の個性と同じく,まっ たく種々さまざまであった。 Lotta RapPortは,自信たっぷりな微笑を浮かべた。かの女は人並み以上に美しく,魅 力的な女性で,当然のことながら人々に好感を持たれていた。生徒は,かの女の親切さ,温 かさ,ものわかりのよさ,寛大さを高く評価した。かの女のクラスを観察する時はいつで も,生徒たちは,いっになく,非常に協力的であった。質問に答えようと何十人もの手が 勢いよく挙がり,熱心な期待感がどの顔にも現われていた。事実,ロッタ・ラポーツのク ラスは参観の時は普段よりずっとよく活躍するので,かの女は新しい指導主事がひんぱん に訪れてくれるのを望んだ。 MartinEtteは,告示を威勢よくさっと読んだ。自分の教えている言語のネイティブ・ス ピーカーであるかれは,きびしく,しかも,効果的に運営されている自分のクラスを自慢 していた。45分の授業時間内に,一連の目も眩むばかりの10種類の活動を見せることがで きた。その授業を特徴づけるものは,細心の準備と秒刻みの時間配分,そして,きびしい訓 練であった。かれの授業についていけないのろまな生徒こそ禍いであった!参観者は,常 に,かれの授業に感銘を受けたものだった。
1.Mona Stageは,早くも,新しい指導主事の訪問を楽しみにしていた。演劇,美術,音 楽などの経歴のおかげで,かの女のクラスのできばえは目を見張るばかりのものであった。 生徒は待っていたとばかりに,本物の原住民の民族舞踊をおどった。求められるとすぐ, 四部合唱の歌をうたった。衣装や小道具の全部そろった寸劇を演じたりもした。生徒たち は,訪問者をもてなすために,正規の授業を中断するのを歓迎した。 MacAnickは告示を読むやいなや,自分の最新のこっけい劇を考えだし始めた。生れつ き,視聴覚装置に対する才能に恵まれていたので,参観のための準備として,授業のどの 段階ででも使える文化フィルム・ストリップを手もとに置こうと決心した。フィルム・ス トリップがシンクロナイズド・テープと一緒に送られてきたので,新しい語いを書き留め,そ れをオーバーヘッドを使ってスクリーンに映すことが自由にできた。ひとりひとりの生徒の 動作がビデオテープに録画されている間に,生徒の反応をもう1台のテープレコーダーに録音 することにした。たしかに,かれの指導法が時代遅れなどと言うものは1人としていなかった。 TerryFideは何を考えてよいか分からなかった。かの女は,教職第1年目を始めようと していたが,指導主事の訪問には絶えずいらいらさせられてきた。大学では優等生だった し,うまく教えることができると思ったが,誰かに見られているときは,きまって,うま くいかなかった。かの女は,自分の普通の授業が自分の知らない間に観察してもらえさえ すればいいのに……,と思った。 Heidi Evidentzは,ただ肩をすくめただけだった。自分が教えている言語についてのかの 女の知識は,せいぜい,「印象主義的」であったが,ずっと以前から申し分のない外観を装 うことに成功していた。まず第1に,非のうちどころのない文法と発音で,その外国語を 使って指示を与えることを覚えた。次に,観察されているときはいつでも,その授業中に 行う作文を課した。したがって,それ以上先を教えるという責任をまぬがれていたのであ る。なぜ,かの女の授業がその日の指導計画書の授業と一致しなかったのかと質問される と,かの女は,柔軟性のない指導計画の弊害と個々の状況に敏感に即応することの必要性 とについて,もったいぶった態度でまくしたてた。数人の指導主事たちは,かの女の授業 を見るのを,もうとっくに,あきらめてしまっていた。 01afA.Minitはこのニュースを聞いたとき,くすくす笑いをした。かれは,子供のころ 道化役者になりたかったが,結局,教師の仕事の方がより実利的な職業だという結論に達 した。しかしながら,かれの陽気なお騒ぎ好きは根深く残っていた。かれのクラスは,普 通,「ハイド・アンド・ゴー・スピーク」,「バービンゴ」,「ピン・ザ・テイル・オン・ザ・ ラ ナウン」,「リング・アラウンド・ア・プロナウン」をして遊んだ。かれは,指導主事たち とはいつもうまくやっていた。 PhilomelaGrenchは心配げな様子だった。かの女は,同僚たちの自分より一層はなやか な演出手腕に引けを取らないようにすることができたらと願ったが,そうすれば,自分に 忠実でなくなる。生来,もの静かで表面に出ないかの女は,職員会議では,いともたやすく 忘れ去られる存在だった。しかし教室では,賞賛に値する指導技術はもちろんのこと,そ の外国語を自由にあやつるみごとな能力を発揮していた。新しい指導主事は自分の努力を 認めてくれるだろうか,とかの女はいぶかった。 数週間が過ぎ,指導主事が遂に到着した。指導主事は,顔見知りになり,自分の考えも
述べておきたかったので,語学教師たちに集まってもらった。指導主事が話したことの原 文を読む前に,まず,次にあげた問題を考えてもらいたい。 1.もし,あなたが教室の教師であるとしたら,何を基準にしてあなたの指導法を評価 してもらいたいか。 2.もし,あなたが指導主事であるとしたら,このエバン・ガード学校区の教師のよ うに,ひとりひとり異なっている教師を評価するのに,どんな規準を適用するか。 指導主事の見解 「まず,先生方,どうぞお楽にしてください。私がここに参りましたのは,指導法のこと をお話するためではありません。研究者たちですら,これまでのところ,何が良い授業を 構成する要素なのかを厳密に定義することができないでいるのです。これこそまさしく 他にまさってすぐれていると証明された人格とか指導方法とかは,これまでにあったためしが ないのです。ですから,私が先生方に,ある1っの標準的な指導手順というようなものを押し っけようとすることは,馬鹿げたことと言えましょう。ここにおられる先生方は,どなたも,そ れぞれ異なった個性の持ち主であり,ご自分とご自分の受け持ちの特定のクラスに,それぞ れ,うまく合った指導技術を展開されてきている(あるいは,展開されつつある)という ことを,私は認めております。 また一方では,良い授業の絶対的な客観的規準といったものはありませんが,ある指導 技術が他のものより一層効果的だと言える場合があることは明らかです。しかし同じ指導 技術でも,ある状況ではうまく行くが,他の場合には効果がないこともあります。それで は,さまざまなタイプの指導を,一体どうやって,公平に評価することができるでしょう か。さらに,これはもっと重要なことなのですが,どうすればエバン・ガードの外国語教 育をより効果のあがるものにすることができるでしょうか。 私が提案したいのは次のことです。私は,授業参観はほんの限られた価値しかないと考 えていますので,指導過程そのものではなく,指導の結果について先生方ひとりひとりと検 討していきたいと思います。言葉を換えて言いますと,私が関心を持っていますのは,先 生方が授業でなされていることを見ることよりは このことも考慮されることにはなり ますが むしろ,指導の結果として,生徒が何をすることができるようになるか,とい うことです。このように考えますので,私は先生方個人を判断するのではなく,先生方が 先徒のために何をなされるかを見ることになります。 このことに成功するためには,先生方の援助が必要なのです。みなさんの選出された代 表者が作成したこの地区の言語カリキュラムの写しを,先生方はめいめい持っておられま す。その総括目標の大綱の範囲で,受け持ちの各クラスのための特定の行動目標を,先生 方全員に作成してもらいたいと思います。各学習単元を終えたあとで,生徒は,それ以前 に出来なかったことで何ができるようになるか,ということを書いていくのです。 はっきりお分かりのことと思いますが,私は,先生方全員が同じ目標を作成することを 期待しているわけではありません。各言語技能に対する重点の置き方次第で目標は変わっ
てきます。それは先生方の個人的な興味や経歴によっても異なりましょう。また,生徒の能 力差によっても違いが出てまいります。それで結構なのです。先生方の授業を参観したあ とで,2つの質問が,私達の協議を通じて最大の関心事となるでしょう。第1の質問は, 選択された行動目標(performancegoals)が,先生方の特定の授業場面に適切であったか どうか。第2は,生徒が設定された目標(goals)を達成したかどうか,ということです。 もしも生徒たちがその目標(goals)を達成しなかったとすれば,私たちはその原因を検討 することができます。それは,おそらくは,目標(goals)が現実的でなかったのかもしれ ません。また,おそらくは,他の指導技術の方が授業の質を向上させることができるかも しれません。あるいはその原因は,まったく異なった性質のものであるかもしれません。 ご承知のとおり,先生方が目標を達成するのに役立つと思われるなら,どんなやり方で 教えても,それは自由です。ですから,私の監督のおもなねらいは,先生方が自分の授業 を評価するのを手伝い,授業を改善できる方法を先生方と検討することなのです。こうし て,先生方と私は,おたがいに,エバン・ガードの生徒の外国語学習の成績(performance) を向上させるという,共通の目標(goa1)を持つことになります。 このように,おたがいに協力し尊敬し合うなかで,先生方と一緒に研究できるのを楽し みにしております。一緒に集まって衆知を出し合えば,これまでの古い問題に対する新し い解決法を見出すことができるかもしれません。」
6.4.2産高規準
エバン・ガード学校区の事例は,教師は,職業的能力のタキソノミーの第4段階の行動に達 したかどうかという観点で評価されるべきだ,ということを示唆している。換言すれば, 教師は,身体的な風さい,性格,あるいは,教室に行きわたっている秩序とか無秩序とかといっ たことで判断されてはならない,ということである。また,その専門的知識を持っている とか,あるいは,特定の指導技術に熟達しているとかで判断されることがあってもならな い。問われなければならないことは,次の2つの質問だけである。 1.自分の生徒のために適切な行動目標を設定しているか。 2.どのような方策を用いようとも,設定された行動目標を生徒が達成できるようにし ているか。 6.4.2a 教材行動目標の達成 教材目標の適切さを評価することが,絶対,必要である。ある教師は生徒にその行動目標 を達成させることができるかもしれないが,その目標自体がきわめて低次元なものである かもしれないのである。たとえば,聴覚・口頭用テキストから抜粋した対話文を暗記した り,伝統的なテキストの語いや語形変化表を暗記したりするように。また,他のクラスの 生徒は,教師が行動目標をあまり高い次元で設定したため,その目標を満足できないとい うこともありうる。たとえば,普通の1年生が第2学期の終わるころまでにフランス語を流暢にしゃべるのを期待するのは,非現実的である。この2つのいずれの場合も,指導主 事と教室教師とは,どうすればこれらの目標が,それぞれの授業場面に一層適切なものと なるか,を検討することができる。 さらに,ある教師は授業の各時間の行動目標を設定するが,他の教師は,単元の行動目 標に向かって努力を傾けるかもしれない。後者の場合は,単元の途中の,ぽつんとした1 回の教室訪問を基準にして,その教師を評価することは好ましいことではない。その教師 に,単元の初めに事前テストを,単元の終了時に同等の事後テストを,それぞれ実施させ, 生徒がどれほどの進歩をしたかを客観的に測定させる方が,より適切であると思われる。 もし,1つの学校や地区の全部のクラスのための行動目標が設定されるならば一そし て特に,使用されている教材に対して,単元の事前テストと事後テストがあるならば一教 材目標の達成ということにおいての教師の効果を,客観的に評価することができるのである。 6.4.2b 情意目標の達成 教師はまた,自分のクラスに対する情意目標を設定することもあるであろう。その目標 は,たとえば,次のようになるかもしれない。すなわち,「生徒は,授業の活動に積極的 に,楽しく参加する」(第2段階)。この教師のクラスを訪問すると,指導主事は,まず第 1に,生徒の反応(生徒が活発に参加しているかどうか,自分たちが行っていることを楽し んでいる様子をしているかどうか)を,メモすることになろう。 別の教師の目標(aim)は次のようなものかもしれない。「生徒は,たとえば,公告,新 聞の切り抜き,実物教材など,独力で見つけた関係資料をクラスに持ってきて,外国に対 する関心を示す」(第3段階)。ただし,もしこの活動に対して,評定とか点数などが与え られないとすれば,生徒が授業以外でその外国文化の見本や外国語の実例を探すという活 動は,まさしく第3段階の行動を示すものである。実際のところ,資料をクラスに持って くるということで,教材学習の欠陥を埋め合わせることができるという考えを,生徒に持 たせないように注意しなければならない。いったん,これらの条件が満足されれば,生徒 が余分な資料をクラスに持ってきているかどうかを,指導主事はチェックすることができ る。さらに,情意タキソノミーのこの段階の行動を達成しつつあれば,生徒は,必ず,授 業中よく緊張しており,しかも積極的になるものである(第2段階)。全校的規模のレベルで は,情意行動は,年ごとに登録者が増加し,それに応じて,脱落率が減少するという形をとる であろう。3,4年生の語学のクラスの生徒数は,まさに,学科が情意目標(goals)の達 成を図ろうとする,その教育効果のよき測定規準である。
6.5教師の自己評価
教師の自己評価は,職業タキソノミーの第5段階に分類できる。しかし,この自己評価 は,多くの形を取りうるけれども,その結果は,常に個人的なものである。その調査結果 を受け取って分析するのは,ほかならぬ教師自身であるからである。自分の職業的な欠陥 を意識するのも,その教師ただひとりであり,その弱点を改善するための方策を講じ,その長所をさらに発展させることのできるのも,その教師ただひとりであるからである。そ の教師は自分で目標(goa1)を設定するかもしれない。その目標(goal)の達成に成功する か失敗するかは,かれひとりにしか分からない。「自己評価」という用語は,教室における 教育効果を増進させるために教師自身が積極的な行動をとることを,暗に示している。 しかしながら,自己評価を行う際に,他の教師に助言や援助を請うことはかれの自由であ る。
6.5.1生徒の行動目標をとおしての評価
教師は,自分のクラスに対して,教材目標(goals),情意目標(goals)のうちのいずれか 一方の,あるいはその両方の,生徒行動目標を設定する。たとえば,脱落率を減少させるた めに,その計画を修正する決心をするかもしれない。そうすると,その翌年の登録者の増 加が,その教師の規準となる。また,単元ごとの教材行動目標と,生徒がこれらの目標 (goals)に到達すると期待される期限とを設定することもできる。予告した期限どおり に,あるいは,その前に,完了すれば,それは成功したと認められる。6.5.2生徒の反応をとおしての評価
学期か学年の終わりに評価用紙を配布し,生徒に記入させる。生徒はその用紙に名前を 書く必要はない。その課程を改善する方策についての提言を生徒に求めることは,きわめ て有益である。 授業中の生徒の反応もまた,妥当性のある自己評価の方法である。生徒が討議に進んで 参加するか。しきりに質問に答えたがるか。ときどき,命じられた課業以外の活動をした り,言われなくても,その外国語や外国文化の実例をクラスに持ってきたりするか。もし 出席が義務づけられていないならば,授業に.出席する生徒の百分率が,それ自体,教師の 効果の尺度となる。 6。5.3相互反応分析 相互反応分析(lnteraction Analysis1)は,単位時間内においてどの種類の相互反応が起 きるかを客観的に示す。誰が話をしているか。誰が討論を始めているか。非生産的な沈 黙の時間にどれだけの時間が浪費されているか。教師がすべての活動の主導権を握って いるか,あるいは,生徒と教師,または,生徒同志の間でかなりの相互反応があるか。 相互反応分析は,学習が実際に成立しているかどうかを判定することはできないが,そ の時間中にどんな型のやりとりが行われるかを検討するための,ひとっの効果的な方法を 提供してくれる。6.5.4 ネイティブ・インフォーマントをとおしての評価 もしも教師が,自分の教えている言語のネイティブ・スピーカーでないならば,自分自 身の教材能力を高めるために,ネイティブ・インフォーマントの助けを借りることで益す る場合が多い。あるアメリカのドイツ語の教師は,土地の生粋のドイツ婦人に金を払っ て,ときどき、受け持ちの1つのクラスを見にきてもらい,自分の誤りのすべてをメモし てもらった。そのあとで,その婦人と個人的に会合を持ち,自分の文法や発音を正しても らうのだった。 自分の教える言語のネイティブ・スピーカーであり,英語が第二言語である教師も,ア メリカ人のインフォーマントの助けを借りることで,同じように得るところがあるかもし れない。英語で自分が犯す小さな誤りを直そうとして,このインフォーマントと定期的に 面談することもできよう。生徒は,英語を自由にあやつる力を伸ばすために,教師自身が勉強 していることを知れば,外国出身の教師からの訂正を,より一層喜んで受け入れるものである。 6.5。5 個人評定尺度と質問をとおしての評価 教師は,前月の自分自身の活動を定期的に検討し,次のように自問することで,その職 業的成長を評価することができる。すなわち,「今月は専門雑誌を何冊読んだか。教科会議 に積極的に参加したか。非常に覚えが遅い学習者と非常に覚えが早い学習者に対する対策 を,授業中に講じたか。外国語の映画を見に行ったことがあるか。教室外で,その外国語 を話したことがあるか。」また,次のように,その翌月の決意をすることもあるであろう。 「今月は,各週20分問の外国語放送を,少なくとも1つは聴く。」あるいは,「自分のクラ スで抱えている1つの問題を確認し,1人か2人の同僚とそれを検討する。」 1.Gertrude Moskowitzは,“The Effects of Training Foreign Language Teachers in Interaction Analysis,”Eo泥忽%L朋9%α96、4nnαls,voL1(1968),PP.218−35と“lnteraction Analysis一一A New Modem Language for Supervisors,”Fo解忽nL観g磁96・4nnαZs,vol.5(1971),PP.211−21において, (訳者注9) 相互反応分析の手法を説明している。 2.Ray H.Simpsonは,その著書“7盈6h67&ゲーE∂認磁!Jon”(New York l Macmillan,1966)で, 自己の教室活動の評価を志す教師のために,多くの参考になることを提言している。 注 者 訳 1.ValetteとDisickは,「行動目標」(pe㎡ormance objectives)を教材領域と情意領域とに分類し,体 系づけている。p.144とp.145の表1と表2は各領域の生徒の行動目標の要約である。 (表1)の「外的行動」(extemal behaviors)とは,表面に現われた観察可能な行動で,言語技能の領域に っいて言えば「話すこと」,「書くこと」に当たる。「内的行動」(intemal behaviors)は,学習者の内面 に関わることで直接的には観察不可能である。「聞くこと」,「読むこと」の技能に当たる。第6節以下に ある「外相」(extemal aspect),「内相」(intemal aspect)も同様である。
(表1) 教材タキソノミーの要約 段 階 内 的 行 動
外 的 行 動
1.機械的技能: 生徒は,理解よりも, むしろ,機械的な記 憶によって学習を遂 行する。 知覚:2ないしそれ以上の音や 文字,あるいは身ぶり間の差違を 知覚し,それらを区別する。 再 生:外国語の話し方,書き方, 身ぶり,歌,ことわざ等を模倣す る。 2.知 識: 外国語学習に関係の ある事実,規則,資 料についての知識が あることを実証する。 認知:真偽テストや多肢選択質 問に答えることによって,学習事 実を認知していることを示す。 想 起:空所を埋めたり,ショー ト・アンサーで答えたりする質問 に答えることによって,教えられ た情報を記憶していることを示す。 3.転 移二 知識を新しい場面で 用いる。 受 容:再構成された,口述によ る(または,書かれた)未習の文 章や引用文を理解する。 応 用:指示に従った練習場面で, 話したり,書いたり,あるいは, 本国人の役を演じたりする。 4.伝 達: 伝達のための自然な 表現手段として,外 国語と外国文化を利 用する。 理 解:未知の場面で,しかも, 未習事項を含む,外国語の通信文 や文化シグナルを理解する。 自己表現:個人的な思想を口頭 または文字で表現するために,外 国語を用いる。表現の一部として, 身ぶりを用いる。 5.批 評: 外国語を分析したり, 評価したり,あるい は,独創的な研究を 遂行したりする。 分析:文体,口調,主題等の本 質的な要素に,言語や作品の一節 を分解する。 評価:用語例や作品の一節の, 適切さと効果を評価したり,判定 したりする。 統合:独創的な組織研究,ない しは,個人研究を遂行したり,そ のような研究課題のための計画を 創案したりする。 (同書 P.41) 生徒の「情意行動目標」の具体例については,武居・木場訳 ヴァレットーディシック:「態度,感情,価値 の発達と測定」,同「態度,感情,価値」を参照されたい。 2.上掲の(表1),(表2)を参照のこと。 3.第14章は「文明」に関する生徒の行動目標を例示してある。おそらく「第14章」は「第4章」の誤り であろう。第4章には,完全学習理論を踏まえ,「個別学習」指導を展開する際の手立てや教師の活動を 含む実例があげられている。 4.Performance Contract。ある単元の学習内容を習得したことを証明するために,学習者が達成しなけ ればならない行動の一覧表で,「契約学習」において学習者が教師と結ぶ一種の契約である。それには, 評価規準,テスト項目の例とテストを受けるまでに踏まねばならない学習ステップや語いリスト,練習 問題,読みの課題,テープでの口頭練習,作文といった授業中の活動と宿題などが含まれる。契約内 容は,教師と学習者が相談して決める場合もある。この学習方法は,教師中心の一斉指導でも用いるこ ともできるが,学習者自身の進度と学習方法に応じる個別学習において,その本領が最も発揮される。(表2) 情意タキソノミーの要約 段 階 内 的 行 動
外 的 行 動
1.受 容: 生徒は,外国語と外 国文化を学習する用 意がある。 意 識:自国以外の言語や文化の 存在とそれらの間に差違のある事 実とを意識する。 注 意:授業中や授業以外で,外 国語や外国文化についての情報に 注意をはらう。課題の準備に細心 の注意をはらう。 2.反応性: 外国語と外国文化の 学習に,積極的に反 応する。 寛 容:外国語の表現および外国 の生活様式における違いに寛容で ある。なじみのない様式を拒否し たり,あざ笑ったりしない。 興味と喜び:外国語学習に関連し た諸活動に興味を持ち,与えられ た活動を楽しみ,それに参加する ことで満足感を味わう。 3.真価の認識: 言語と文化的体験を 積極的に重んじる。 価値づけ:外国語と外国文化の学 習を,有益でやりがいがあり,し かも,重要であると考える。 没頭:言語技能を高めたり,そ の外国語と外国文化についての知 識を増したりするために,計画さ れた諸活動に時々自発的に参加す る。 4。内面化: 外国語の学習経験に 基づいた自分自身の 思想や価値を形成す る。 概念化:外国語の研究に関して, 個人的な価値体系を発展させる。 傾倒:さらに進んだ学問の追究 に,大部分の時問と精力を費やす。 5.個性化: 外国語と外国文化の 分野における活動が 自己の特徴となるく らいに,外国語や外 国文化が生活の構成 要素となってしまう。 統合:外国語の価値を個人的な 価値体系に統合する。 指導性:外国語学習と外国語教育 の促進を図ることで,重要な役割 を演じる。 (同書 P.48) 原書の巻末に「契約」の見本がある(PP.216−30)。 5.これは,第6.5節の誤植であろう。 6.上掲の(表2〉を参照のこと。 7.“GUIDELINE FOR TEACHER PREPARATION IN FOREIGN LANGUAGES”を「訳者注」の末尾にあ げておいた。 8.ここにあげられたものは,既存の遊びをもじって言語ゲームにしたものである。 ・(hlde and go speak)<hide and go seek ・(verbmgo)<verba1+bingo(bingo cardの数字のかわりに単語を用いる。) ・(pln the tall on the noun)<pin the tail on the donkey ・(rlng around a pronoun)<ring around a rosy 9.lnteractlon Analysis.Gertmde Moskowitzの論文については未見であるが,ValetteはEdward D. Allenとの共著“Classroom Techniques:Foreign Languages and English as a Second Language”(NewYork:HarcourtBraceJovanovich,Inc。,1977),PP。6−7において,G。Moskowitz著“The ClassroQm Interaction of Outstanding Foreign Language Teachers,”Fo耀㎏n加%g襯g召∠4n襯ls9, no.2(April1976)の中の‘lnteraction Analysis’を改作して,次の32項目を「傑出した教師の教室行 動」としてあげている。 1.教師や生徒が話しているといないにかかわらず,目標言語が教室の相互反応を支配している。 2.その教師たちは,目標言語のすぐれた運用力を持っている。 3.第1レベルのクラスでさえも,英語(ここでは母国語一訳者)はほとんど使われない。 4.その教師たちには,言語障害のあるものは少ない。 5.生徒は質問をするのに,その外国語を使う。 6.その教師たちの話す量はより少ない。 7.その教師たちは,非言語的に活発で,より多くの手ぶりを使う。 8.その教師たちは,より表情に富み,活気に満ちている。 9.その教師たちは,非常によく机間巡視をする。 10.その教師たちは,外国語や英語で話すにせよ,非言語的に伝達するにせよ,生徒の参加を励ました り強化したりするような行動を多くする。 11.その教師たちは,生徒に,より即時的なフィードバックを与える。 12.そのクラスのふんい気は暖かくて好意的である。 13.その教師たちは,よくにこにこしたり,ほめたり,冗談を言ったりする。 14.そのほめ言葉は,より長く,変化に富み,しかも,多くの非言語的なほめ方をよくする。 15.そのクラスには笑い声がより多い。 16.その教師たちは,その笑いの内容をより一層自分に向けられたものとして受けとめる。 17.生徒は,無関心だったり,いたずらをしたりするよりは,むしろ,教師と「一体」となっている。 18.生徒は,授業に参加する熱意のあることを,より一層,身ぶりや態度で示す。 19.生徒の行動は非難されることがほとんどない。 20.黙読や書く作業に授業時問が使われることがより少ない。 21.教師による板書がより少ない。 22.授業の前後に生徒が教師に話しかける。 23.その教師たちは,授業が正式に始まる前に生徒にあいさつする。 24.非常に多くの準備運動的な質問や復習と話す技能への集中がある。 25.1課ごとに,非常に多くの変化に富んだ活動がある。 26.授業の進度が一般的に速い。 27.練習が迅速に行われる。 28.その教師たちは,すぐれた教室管理能力を持っている。 29.その教師たちは,しんぼう強い。 30.その教師たちは,生徒の行動を訂正するとき,よく冗談を言ったり,生徒と目くばせして連絡し合 う傾向がある。 31.その教師たちは,生徒の誤りを訂正するときは,親切に行う。 32.生徒は,視聴覚装置を準備したり操作したりして,教師たちの手助けをする。 GUIDELINE FOR TEACHER PREPARATION IN FOREIGN LANGUAGES Competence must be demonstrated before the student−teaching experience. The following checklist defines the preparation of the foreign−language teacher in behavioral terms,that is,in terms of what the stu(ient should be able to do before he is accepted for student
teaching.
Minimum acceptable competence is given on the left, and additional desirable competence is listed on the right.
Examples are given for French only. Guidelines using this model will be prepared for the other
commonly taught languages.
Minimum Preparation Preferred Preparation I. Language Skills
1.The student can speak for three minutes
using prepared material and making no
more than five phonemic mistakes
(including rhythm, intonation, stress, as well as specific sounds) .
2.Given leamer recordings of familiar
material, the student can identify nine out of ten phonemic mistakes.
3.Within the limitations of Francais
Fondamental, premier degre , the student can do the following in both spoken and written French at a rate of 95 percent accuracy :
a. Use all nouns with the appropriate gender markers.
b. Find mistakes in gender with these
nouns.
c_ Use the appropriate forms of the
adjectives and determiners.
d. Find mistakes in adjective and
determiner form and agreement.
e. Conjugate all verbs listed in the tenses
included .
f. Find mistakes in the forms of the
verbs above in the tenses above.
g. Use the grammatical forms and
structures listed.
h. Find mistakes in the grammatical forms and structures above.
4.The student can read and summarize an unfamiliar article of a general nature
taken from a recent newspaper or
periodical.
5.The student can listen to and summarize the content of an unfamiliar recording
The student can speak for three minutes on
unprepared material making no more than five phonemic or phonetic mistakes.
Given learner recordings of unfamiliar
material, the student can identify nine out of ten phonemic and phonetic mistakes.
Within the limitations of Francais
Fonda-menta!, deuxi ;ne degre . .
The student can interpret the article.
The student can listen to and summarize the
Minimum Preparation Preferred Preparation taken from commonly used Level Three
or Four secondary school materials.
II. Literature
6.The student can scan an unfamiliar
poem (rhyme scheme, meter, form) .
7.The student can read an unfamiliar short story and identify the point of view, plot
development, order of presentation of
events.
8. Given any brief unfamiliar work of
literature, the student can identify key
words or phrases, relating to theme,
character, tone, as appropriate to the passage.
The student can demonstrate familiarity with
French literature by identifying authors,
works, periods, movements, and so on. The student can identify familiar quotations taken from literature.
The student can recite a French
memory .
poem f rom
III. Culture
9.Using an accepted reference work, such
as Wylie-B gu6's Les Francais, the student can answer questions about
aspects of French culture, including their historical and geographical origins. 10.Given a map of France, the student can
locate important geographical features (cities, main rivers, mountains, and so
on) .
11.Given an example of a French cultural
pattern, the student can describe the
corresponding American pattern, point-ing out similarities in the basic needs which the pattern manifests and showing the differences in their outward forms.
12.0n viewing a French film depicting
contemporary life, the student can
identify at least five cultural pattems (status symbols, gestures, parent-child relations, and so on) .
IV. Professional Preparation
13.The student can run a standard ditto machine, a tape recorder, an overhead
The student can answer such questions without a reference work, either because he has studied French culture closely or because he has lived abroad.
Given a map, the student can describe cultural, historical, geographic and linguistic differences by region.
Given an example of an American
pattern, the student can describe one corresponding French patterns.
cultural
or more
On viewing a French film, the student can
identify five linguistic features (change from vous to tu, Ievel of language, regional accents, intonation patterns, and so on) .
Mmnnum Preparation Pref erred Pre paration
projector, a slide projector, a film-strip projector, and a movie projector. 14.The student can prepare a ditto master
(by typewriter or photostat technique) , and an overhe d transparency.
15.The student can prepare and splice a
ta pe.
16.The student can use a console (language lab, electronic classroom) to monitor, correct, and test students.
17.The student can write behavioral
objectives for a lesson he intends to
teach. These objectives will be
accom-panied by suggested activities and a
sample test.
18.The student can demonstrate and describe three alternate classroom
techniques to be used at Levels One and Two. . .
a. to present and practice a new point of structure (at least one technique must be entirely in French) .
b. to present and practice new
voca-bulary (at least one technique must be entirely in French) .
c. to present and practice a feature of the
sound system.
19.The student can demonstrate and
describe three classroom techniques for
developing student comprehension at Levels One and Two.
a. via listening b. via reading
20.The student can demonstrate and
describe three classroom techniques for
developing student self-expression at Levels One and Two.
a. via speaking b, via writing
21.The student can demonstrate and
describe three classroom techniques for
The student can write behavioral objectives for a variety of different programs.
The student can demonstrate and describe
three alternate classroom techniques to be used at Levels Three and Four.
The student can demonstrate and describe
three classroom techniques for developing student comprehension at Levels Three and Four. . .
The student can demonstrate and describe
three classroom techniques for developing student self-expression at Levels Three and Four. . . .
The
three
student can classroom
demonstrate and describe techniques for teaching a
Minimum Preparation Pref erred Pre paration
teaching a cultural concept at Levels
One and Two.
22.The student can demonstrate or describe
three ways to adapt modern
foreign-language instruction to current trends
in curriculum development
(individ-ualized instruction, multi - media, and so on) , at Levels One and Two.
V. The Language-teaching Profession
23.The student can describe the functions
and the publications of the following
regional and national professional groups : MFLA, the Northeast Con-ference, AATF, ACTFL.
24.The student has joined at least one of the groups above.
cultural concept at Levels Three and Four.
25.In a mock discussion, the student can defend persuasively the values of foreign-language instruction.
26.The student can informally evaluate his
performance in a micro-teaching
situation and suggest two areas for self-im provement.
The student can demonstrate or describe three
ways to adapt modern foreign-language
instruction to current trends in curriculum development at Levels Three and Four.
The student can describe the functions and the
publications of the following regional and national professional groups : NEMLA, MLA,
NALLD, TESOL.
The student has joined two or more
pro-fessional groups, and attended a propro-fessional regional meeting. The student technique to teacher. can use a analyze
These tentative guidelines, developed by a subcommittee of the Massachusetts
Committee on Teacher Education, were prepared by Rebecca M. Valette (Boston College the assistance of Elizabeth Ratt6 (Boston University; committee chairman), Richard Penta James Powers (Cambridge Public Schools) .
formal self-evaluation
his performance as a
Foreign-Language Association subcommittee chairman) with
(Belmont Public Schools) , and