スターリングエンジンのポータブル化
○清水 勲、荒井光一、下垣喜司郎、西村義隆
熊本大学工学部ものづくり創造融合工学教育センター ものクリ工房
1.はじめに
昨年度稼動までこぎつけたスターリングエンジンを教材として活用できないものか検討した結果、教 材としての実用化にはポータブル化が不可欠で、それにより利用範囲と価値が広がるとの結論に達した。
2.ポータブル化の目的
持ち運び可能な教材にして大学の講義、高校訪問や出前授業等のデモ機材、展示作品として使用する。
3.ポータブル化への全体のアウトラインとして
・ディスプレッサー部の冷却効果を高めるため、循環水冷式を採用する ・ヒートキャップの均熱化と小型化
・一人で持ち運びやデモ運転が可能で乗用車に積載可能な大きさと重量にする 4.ポータブル化にあたっての1号機の改良対策
ポータブル化であるから可能な限り小さく、軽く、どこでも運転可能なことが求められる。これらの ことに対応するための問題点はヒートキャップの加熱とディスプレッサーシリンダの冷却方法にあ ることが分かったので加熱法、冷却法と全体の大きさでの対策、対応を主に行った。
5.ポータブル化への取り組み
取り組みにあたり製品、部品の調達を以下のように行った。
自作対応部品 次の部品は市販品で対応不可能なので,自作した。
冷却フィン、 整流ボックス、 水冷帯、 フレーム 、電気炉、 オイル容器関連等 市販品を利用したものは次の製品である。
水ポンプ、 温度コントローラ、水容器、 冷却ファン、ヒーター電流コントローラ等である。
ヒートキャップの加熱は小型ヒーター(小型電気炉)を手作りした、ディスプレッサー部の冷却は、
水冷で正常動作することは初号機の実績が示しているので水冷方式とし技術的な難しさはあるが効率 が高く,確実な直接冷却容器(水冷帯)を取り付ける循環冷却方式とした。
このための改良を行うにあたり製作作業分担者を次のように決めた
・エンジン本体部の加工 荒井、清水 ・循環冷却装置の製作 下垣、西村
・電気関係 下垣、西村 ・オイル容器関連製作 清水
・フレーム製作 清水、西村 ・水冷帯の製作 清水
・整流ボックス 西村 ・電気炉の製作 清水
冷却装置は次のようなものより構成されている。
1. 水容器 2.水ポンプ 3.水冷ジャケット 4.整流ボックス 5.冷却フィン 6.冷却ファンから成り、
水容器中の水は水ポンプにより圧送されて上記 1~5 間を循環しディスプレッサー部を冷却する。
6.改良点とその効果
ポータブル化で初号機は以下の点で改良された
・冷却方法 循環式水冷方式とした。循環水冷方式にした ことによりポータブル化できた。
・電気ヒーターの採用 これによりヒートキャップの均熱化が可能となりエンジンが安定に回転する為 の大きな要因となり、また水冷方法と共にポータブル化に大きく寄与した。これは市販品などなく、
すべて手作りであり水冷ジャケットの製作と同じ難問のひとつであった。
・ヒーターの温度制御 1号機ではスライダックスを用いての感に頼る温度コントロールが、電子化さ れたことで、きめの細かい温度コントロールが可能となった。
・温度センサー取り付け位置の変更 1号機ではヒーター線直上に設置してありヒートキャップ本来の 温度が計測されていなかったので、これをヒートキャップヘッド部に変更しヒートキャップそのもの の温度を計測できるようにした。これで本当の意味での温度制御となりヒートキャップの正確な温度 を把握できようになった。このことは大変重要なことで、このエンジン本来の利用目的とする廃熱エ ネルギー利用に重要な要素である運転時のヒートキャップとディスプレッサーシリンダ冷却部の温 度差を正確に知ることができるようになったからである。
・軽量化 ディスプレッサー部関連のピストン、コンロッド等の部分では約 50%減量できた。
・精度向上とフリクションの低減ができた。
・オイル容器設置による自動給油潤滑運転が可能となり,授業等に専念できるようになり耐久性向上に もなった。
7.エンジン性能と緒元一覧
・本体寸法 W210 D300 H400 単位 mm
・エンジン総重量 約 10kg
・エンジン回転数 約 400rpm-500rpm ヒートキャップ温度約 450℃
・最高回転数 現在未知数
・通常運転時の温度差 約 400℃
ヒートキャップとディスプレッサーシリンダ冷却部 8.まとめ
完成品は大変コンパクトに出来上がり、ポータブル化と教材としての目的を十分果たすことができ るものに仕上がった。エンジンの回転もヒートキャップの温度約 250℃より開始し、連続運転を約 3 時間行ったが終了まで問題は生じなかった。
写真 エンジン外観
運転するにあたっては、教卓位のスペースに 100V 電源と水 2ℓ があれば運転可能である。また搬送 から操作、終了まで全てが1人で出来、運転開始から終了まで 40 分もあれば十分で、出前授業時間 内のデモ運転等に十分対応可能である。
最後に製作にあたり本学部機器製作技術系からの指導、助言に感謝いたします。