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(1)

■アブストラクト

本稿は,保険自由化から10年経過した後の⽛2006年からの10年間⽜におけ る保険業法上の規制緩和について概説することを目的とする。まず,本論に 入る前の導入として,保険自由化後10年間(1996年~2005年)の保険業法上 の規制緩和の概要を簡単に振り返ったうえで,2006年からの10年間の動きを,

⽛⑴ 保険グループ規制⽜,⽛⑵ 相互会社規制⽜,⽛⑶ 保険商品規制⽜,⽛⑷ 保 険募集規制⽜,⽛⑸ 資産運用規制⽜に類別したうえで概説する。これを通じ,

保険自由化後10年間の規制緩和の進展と比べると,2006年からの10年間の規 制緩和の進展は,総論として見れば,小規模に止まる内容と評価される一方,

各論として見ていく中では,保険グループ規制のように,金融審議会等での 数次の議論・検討を重ね,小幅ながらも,毎年のように規制緩和が進展した 分野もあり,また,銀行による保険募集の全面解禁とその後の見直しのよう に,マーケットに相応のインパクトを与える規制緩和の進展もあったという ことを述べる。

■キーワード

保険業法,規制緩和,保険自由化

*平成29年⚖月⚒日の日本保険学会関東部会報告による。

/ 平成29年⚙月⚗日原稿受領。

保険業法上の規制緩和

2006年からの10年間

上 原 純

(2)

⚑.はじめに

保険業に大きな規制緩和をもたらした1996年の新保険業法施行を保険自由 化の元年としたとき,それから20年が経過した。この保険自由化については,

既に,保険学雑誌2010年12月号(第611号)において,⽛保険自由化10年⽜を テーマとする特集号が組まれ,多面的な検証がなされている。

そして,今般,保険学雑誌の特集として⽛保険自由化20年⽜というテーマ が設定され,論文執筆の機会が与えられた。当該特集の趣旨については,原 稿募集要項によれば,保険自由化から10年が経過した後の,さらにその先の 10年間において⽛この間に進展した規制緩和・自由化によって何が起き,何 がもたらされているかを分析・検討する必要がある⽜旨,説明されている。

そこで,具体的に何を分析・検討すべきか,であるが,本稿では,保険業法 上の規制緩和をテーマとして取り上げる。すなわち,保険自由化20年の後半 10年間,2006年以降の保険業法上の規制緩和について整理し,概説すること を目的とする。

このテーマを設定した理由は,次のとおりである。すなわち,前回の特集

⽛保険自由化10年⽜においては,経済学・商学の研究者による執筆が中心で あったことから,今般の特集⽛保険自由化20年⽜において法制面,とりわけ,

保険自由化というテーマにおいて中心的な意味を持つ保険業法上の規制緩和 をテーマとすることは,前回の特集を補足する試みになり得ると考えたため である。また,本稿執筆時,筆者は,勤務先の生命保険会社において,保険 関係法制の改正動向等を調査する職務を数年間担当しており,近年の保険業 法改正の動きを具にフォローする中で無秩序に蓄積されてきた雑多な情報を,

⽛規制緩和⽜というキーワードのもとに一旦整理をしておくことは,(かかる テーマで書かれた公刊文献も管見の限り見当たらないことから)一定程度意 義のある試みになり得るのではないか,と考えたことも,テーマ設定の理由 の一つである。

本稿の構成は,次のとおりである。まず,次章⽛⚒.保険自由化後の10年

(3)

間⽜では,本論に入る前の導入として,保険自由化後10年間(1996年~2005 年)の保険業法上の規制緩和の概要を簡単に振り返り,⽛⚓.保険業法上の 規制緩和 2006年からの10年間 ⽜では,2006年からの10年間の動きを,

⽛⑴ 保険グループ規制⽜,⽛⑵ 相互会社規制⽜,⽛⑶ 保険商品規制⽜,⽛⑷ 保 険募集規制⽜,⽛⑸ 資産運用規制⽜に類別したうえで概説する。そして,

⽛⚔.おわりに⽜では,これらの動きを踏まえた今後の展望について,若干 の私見を述べることとしたい。

⚒.保険自由化後の10年間

まず,本論に入る前の導入として,保険自由化後10年間(1996年~2005年)

の保険業法上の規制緩和の概要を簡単に振り返る。

1996年,新保険業法の施行により,いくつかの重要な規制緩和がなされた。

その主なものとしては,⽛子会社方式による生損保相互参入⽜,⽛相互会社規 制の緩和⽜,⽛一部商品の届出制の導入⽜,⽛生保募集人の一社専属制の緩和⽜,

⽛保険仲立人制度の創設⽜,⽛財産利用方法書の廃止⽜等が挙げられるが,以 下,本章では,これらを出発点として,その後の10年間で進展した保険業法 上の規制緩和事項を⚕つに類別したうえで,順次,述べていくこととしたい。

まず,類別の一点目は⽛保険グループ規制⽜の緩和である。1996年の新保 険業法の施行による⽛子会社方式による生損保相互参入⽜の解禁の後,子会 社業務範囲規制に関しては,1998年の⽛金融システム改革のための関係法律 の整備等に関する法律⽜,いわゆる⽛金融システム改革法⽜により,生損保 以外の金融他業態(銀行・証券会社)との子会社相互参入が解禁された1) そして,その後も,従属業務と金融関連業務の兼営を可能とする見直し(2001 年保険業法改正),従属業務子会社の持株比率(原則全額出資要件の撤廃)

1) なお,1998年法改正の当初は,破綻金融機関(保険会社)に該当する場合に 限り子会社とすることが認められており,完全な相互参入は,保険会社による 銀行子会社は1999年10月から,銀行による保険子会社は2000年10月から実現し ている。

(4)

や収入依存度(50%への引き下げ)の規制緩和(2002年事務ガイドライン改 正),従属業務子会社の保険会社グループでの共同利用や複数の保険会社に よる共同保有を認める規制緩和(2005年保険業法改正)が進んでいる。

また,本体業務範囲規制についても,新保険業法の施行により規定が整備 された後,1998年の金融システム改革法による付随業務の拡大(金融先物取 引,金融等デリバティブ取引,有価証券店頭デリバティブ取引等の追加)や,

2003年の保険業法改正による付随業務の拡大(従前の⽛保険業に係る業務の 代理又は事務の代行⽜を⽛金融業に係る業務の代理又は事務の代行⽜に拡 大)等,段階的に緩和が進んでいる。

さらに,1997年の独占禁止法改正に伴う,保険持株会社の解禁も重要な保 険グループ規制の緩和として挙げられる。具体的には,⽛持株会社の設立等 の禁止の解除に伴う金融関係法律の整備等に関する法律⽜により,銀行法改 正による銀行持株会社制度の導入とともに,保険業法改正による保険持株会 社制度が導入された。

類別の二点目は⽛相互会社規制⽜の緩和である。具体的には,1996年の新 保険業法の施行により,⽛相互会社の株式会社化⽜が可能となったこと,お よび,剰余金処分の対象となる金額の⚘割(損害保険相互会社は⚖割)を社 員配当準備金等の積立割合の下限とする⽛社員配当規制⽜が整備されたこと

(従前は定款で⚙割を規定)である。

⽛相互会社の株式会社化⽜については,その後,2000年の保険業法改正に よる,相互会社の株式会社化を容易にする手続き規定の整備(端株一括売却 制度の導入,組織変更時の増資制度の導入等)がなされ,さらに,2003年の 保険業法改正でも規定整備(組織変更時の取締役等のてん補責任免除規定の 新設等)がなされている。

また,⽛社員配当規制⽜については,2002年の保険業法施行規則改正によ り,前記⚘割(損害保険相互会社⚖割)の下限規制が現行の⚒割に緩和され ている。

さらに,1996年の新保険業法の施行により,相互会社の資金調達(基金再

(5)

募集・社債発行)についての明文規定が整備されたが,基金関連の規制につ いては,その後,基金調達手続きの弾力化(総代会決議で定めた時期とする ことが可能であることの明確化(2002年事務ガイドライン改正))や,基金 償却積立金の取崩し目的の制限(損失のてん補に充てる場合に限定)の撤廃

(2003年保険業法改正)といった規制緩和も進展した。

類別の三点目は⽛保険商品規制⽜の緩和である。1996年の新保険業法の施 行に伴い,一部商品(大口の企業物件に係る保険,国際的取引に係る保険,

専門的知識を有する者を保険契約者とする保険)を対象に,認可制を届出制 に改める規制緩和がなされたが,その後も,2001年の届出制対象商品の拡大

(勤労者財産形成給付金保険,勤労者財産形成基金保険等),2002年の届出制 対象商品の拡大(確定拠出年金保険,確定給付年金保険等)が進んだ。

また,保険商品規制という観点では,第三分野商品の生損保相互参入の解 禁が重要である。すなわち,1996年の新保険業法の施行後,保険業法附則 121条の激変緩和措置に基づき,監督当局による商品審査において実質的に 制限されてきた第三分野商品の生損相互参入が,1996年の日米保険協議にお ける合意等を踏まえ,最終的に2001年に完全に自由化されたことは,最も大 きなインパクトをもつ規制緩和の一つであったと思われる。

なお,こうした大きな規制緩和に比べるとマイナーな規制緩和であるが,

第三分野商品の引受範囲の拡大もなされた。すなわち,健康体である骨髄提 供者(ドナー)が受ける骨髄採取手術を保険給付の対象としたい旨の規制緩 和要望を受け,2005年に保険業法施行規則が改正された。

さらに,保険商品の価格の弾力化を促進する観点から,2006年の保険業法 施行規則改正2)により,保険数理に直接よらない予定事業費率についての具 体的詳細な記載を算出方法書記載事項から削除する規制緩和がなされた。こ れにより,付加保険料に関しては係数によらず定性的な表現での算出方法書 2) 本件改正時期は2006年であるが,本件改正案が実質的に検討され,パブリッ クコメントに付された時期(2005年)に鑑み,本稿においては保険自由化後10 年間(2005年まで)の方に分類した。

(6)

の記載で足りることとなった。

類別の四点目は,⽛保険募集規制⽜の緩和である。具体的には,1996年の 新保険業法の施行により,⽛生保募集人の一社専属制の緩和⽜および⽛保険 仲立人制度の創設⽜がなされたが,その後の動きとしては,銀行による保険 募集の解禁が重要なトピックとして挙げられる。すなわち,2001年の第一次 解禁,2002年の第二次解禁を経て,個人年金保険を主力商品とした銀行によ る保険募集が幕開けしたことは,保険業界・マーケットに大きなインパクト を与える規制緩和となった。なお,その後,銀行による保険募集は2005年の 第三次解禁,2007年の全面解禁へと続いていくが,この点については,本論 で後述する。

最後に,類別の五点目は,⽛資産運用規制⽜の緩和である。これは,1996 年の新保険業法の施行による,基礎書類としての財産利用方法書の廃止が挙 げられるが,この資産運用規制に関しては,その後の10年間で特段の大きな 規制緩和の進展は見られなかった。

以上の10年間の動きを踏まえ,次章の本論においても,上記の⚕類別に基 づき2006年からの10年間の保険業法上の規制緩和について概観する3)

⚓.保険業法上の規制緩和 2006年からの10年間

⑴ 保険グループ規制

①総 論

前章に見た1996年からの10年間の規制緩和の進展と比べると,以下本章で 3) なお,保険業法では⽛健全性規制⽜や⽛セーフティネット制度⽜も重要な論 点となるが,これらについては,規制の⽛緩和⽜というよりも,むしろ,これ ら以外の分野で進展した規制緩和に伴う諸リスクの増大に対応するための規制 の厳格化・高度化ないし制度整備の文脈で捉える方が適切であるため,本稿で は取り上げなかった。また,保険自由化後の大きな保険業法改正として,2005 年改正法に基づく⽛少額短期保険制度の創設⽜や,2010年改正法に基づく⽛認 可特定保険業者の特例制度の創設⽜もあるが,これらも規制の⽛緩和⽜という 文脈で捉えるよりも,いわゆる⽛根拠法のない共済⽜に係るルール整備・適正 化の一環でできた制度と捉えられるため,本稿では取り上げなかった。

(7)

述べる2006年からの10年間の規制緩和の進展は,全体として小規模に止まる 内容と評価されるものと思われるが,その中で,金融審議会等で最も活発に 議論されたのは,この⽛保険グループ規制⽜の類別であると思われる。

この類別の規制緩和については,大きくは二つの動きから説明できる。

一つは,銀行法並びでの規制緩和の動きである。保険自由化以降,保険業 法は,その姉妹法とも言える銀行法との横並びが,特にグループ規制・業務 範囲規制において強く意識されてきており,両業法の改正がセットで検討さ れてきた経緯がある。具体的には,後述する⽛金融審議会金融分科会第二部 会報告~銀行・保険会社グループの業務範囲規制のあり方等について~(以 下⽛2007年第二部会報告⽜)⽜を受けた2008年改正や,⽛金融審議会 金融シ ステム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ報 告書(以下⽛2013年銀行規制 WG 報告書⽜)⽜を受けた2013年改正,2014年 改正等がこの文脈から説明される。

他方,2006年からの10年間に特徴的な動きとして,銀行法並びではない,

保険業法発の規制緩和も進んだという点が挙げられる。すなわち,後述する

⽛金融審議会 保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキング・

グループ報告書(以下⽛2011年保険グループ規制 WG 報告書⽜)⽜を受けた 2012年改正や,⽛金融審議会 保険商品・サービスの提供等の在り方に関す るワーキング・グループ報告書(以下⽛2013年保険商品・サービス WG 報 告書⽜)⽜を受けた2014年改正等は,保険業法オリジナルの規制緩和の文脈か ら説明される。

以下,順次各論で述べる。

②本体業務

保険会社の本体業務範囲規制については,この10年間で以下の規制緩和が 進展した。

まず,2008年に,保険会社本体が行なう⽛業務の代理又は事務の代行(保 険業法施行規則51条)⽜の範囲が拡大され,⽛投資顧問契約・投資一任契約⽜

(8)

および⽛信託⽜に係る業務の代理・事務の代行を可能とする改正がなされた。

また,2007年第二部会報告を受けた2008年改正による規制緩和として,従 来は差金決済に限定されていた商品デリバティブの現物決済,いわゆる温室 効果ガスに係る排出権取引,投資助言・代理業が,銀行本体業務と合せて保 険会社の本体業務として認められた。

さらに,2010年の金融庁による⽛金融資本市場及び金融産業の活性化等の ためのアクションプラン⽜を受けた2011年改正による規制緩和として,従来 は子会社業務(金融関連業務)としてしか認められていなかったファイナン ス・リース業務およびその代理・媒介が,これも銀行本体業務と合せて保険 会社の本体業務として認められた。

③子会社業務

子会社業務範囲規制の緩和については,この10年間で数次の規制緩和が進 展した。以下,時系列順に言及していく。

まず,前出の2007年第二部会報告を受けた2008年改正による規制緩和とし て,イスラム金融が銀行法並びで子会社業務として追加された。

2009年には,前年に閣議決定された規制改革推進計画を踏まえ,保険業に 係る業務の代理又は事務の代行を行なう子会社についての兼営制限が撤廃さ れ,すべての従属業務及び金融関連業務との兼営が認められた。また,同年 の⽛資金決済に関する法律⽜の制定に伴い,資金移動専門会社が保険会社・

銀行の子会社として認められた。

2010年には,保険会社のために投資業務を行なう従属業務子会社について,

従前の従属要件である⽛保険会社による全額出資要件⽜に加え,資金調達の 総額の50%以上が保険会社により供給されている場合にも,従属業務子会社 として認める金融庁告示の改正がなされた。この規制緩和により,従来では 対応できなかった,共同出資スキームによる投資プロジェクト等が可能とな った。

2011年には,前出の2010年⽛金融資本市場及び金融産業の活性化等のため

(9)

のアクションプラン⽜を受けた規制緩和として,保険会社の同一グループ内 で行なわれる業務の代理・事務の代行について,認可制から届出制に移行す る改正が行なわれた。

2012年には,動産担保融資(ABL)の開発・普及に資する子会社業務範 囲規制の緩和として,従来から保険会社の従属業務子会社に認められていた 担保評価・担保物件管理等に加え,担保権実行の際の⽛担保の目的となって いる財産の換価・処分⽜まで認める改正が,銀行法並びで手当てされた。

最後に,2013年保険商品・サービス WG 報告書を受けた2014年改正にお いて,⽛保育所の運営業務⽜および⽛古物競りあっせん業(自動車に係るも のに限る)⽜が子会社業務範囲として追加された4)

④議決権保有制限

保険業法107条は,保険会社本体・子会社合算による一般事業会社の株式 等投資上限を10%とする規制(議決権保有制限・いわゆる⽛10%ルール⽜)

を規定しているが,ベンチャーキャピタル子会社を通じて行なうベンチャー 企業等への出資については議決権保有制限の対象外とする特例が設けられて いる。この議決権保有制限の特例に関しても,この10年間で数次の規制緩和 が進んでいる。

まず,前出の2007年第二部会報告を受けた2008年改正では,特例の対象と なる出資先ベンチャー企業の要件を緩和(⽛設立⚕年未満⽜を⽛設立10年未 満⽜に改正)するとともに,企業再生中の会社への出資も特例の対象とする 改正がなされた。

また,前出の2013年銀行規制 WG 報告書を受けた2013年改正(保険業法)

では,保険会社グループがベンチャー企業等を子会社化することにより当該 保険会社グループに入る当該ベンチャー企業等の子会社の議決権について,

議決権保有制限の対象外とする改正がなされた。さらに,同 WG 報告書を 4) 2014年改正による子会社業務範囲規制の緩和について,上原純⽛平成26年保 険業法等改正における規制緩和⽜生命保険論集第192号61頁以降(2015)参照。

(10)

受けた2014年改正(保険業法施行規則)では,特例の対象となるベンチャー 企業の要件をさらに緩和5)するとともに,議決権保有制限の特例が認められ る保有期間を10年から15年に延長する改正がなされた。これら2008年,2013 年,2014年改正は,いずれも銀行法並びでなされた改正である。

さらに,銀行法並びではない,保険業法固有の規制緩和として,⽛金融審 議会 新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキン グ・グループ報告書(2013年)⽜の提言を受けた2014年改正(保険業法施行 規則)により,保険会社のベンチャーキャピタル子会社がリードベンチャー キャピタルである場合における出資先企業の中小企業要件が緩和6)されてい る。

⑤海外展開

この10年間においては,保険会社の海外展開に係る規制緩和として,2012 年の保険業法改正と2014年の保険業法改正が実現している。

まず,2012年改正は,2011年保険グループ規制 WG 報告書の提言を受け た規制緩和である。すなわち,保険会社が外国保険会社を買収した場合に,

当該外国保険会社の子会社のうち,日本の子会社業務範囲規制で認められて いない業務を行なう会社についても一定期間(⚕年間)の保有を認める特例 措置が設けられた。これにより,日本の保険会社が,子会社業務範囲規制外 の子会社を保有する外国保険会社を買収することが可能となり,当該業務範 囲規制外子会社の処置については⚕年間という時間をかけて対応することが 可能となった。

5) 設立年数上限規制の起算点につき,従来の⽛設立日⽜のほか⽛新事業活動開 始(いわゆる第二創業)日⽜を追加するとともに,従来の⽛研究者数⽜要件の ほかサービス業等を念頭に⽛新事業活動従事者数⽜要件を追加する改正。

6) 具体的には,保険会社の子会社であるリードベンチャーキャピタルの出資先 企業が,事業の発展により中小企業要件を満たさなくなった以後も,当該リー ドベンチャーキャピタルによる追加出資を可能とする規制緩和である。上原・

前掲注4)64頁以降参照。

(11)

この2012年改正は保険業法発の規制緩和であったが,翌2013年,銀行法も 後追いで改正された。その際,銀行法上,この特例措置の対象となる買収先 の外国会社は,保険会社だけでなく,銀行,資産運用会社等の幅広い金融業 態が認められることとなったため,特例措置の対象となる買収先が外国の保 険会社に限定されていた保険業法とアンバランスな状態が生じていた。そこ で,2014年改正では,外国保険会社のみならず,外国金融機関等の買収時に も⚕年間の保有を認める特例措置が保険業法上も講じられ,その結果,銀行 法並びでの規制緩和が実現した7)

⑥役職員兼職

2007年第二部会報告を受けた2008年改正により,保険業法のいわゆるファ イアーウォール規制の見直しとして,保険会社の役員と同一グループ内の銀 行等・証券会社の役職員との兼職規制が撤廃された。これは,同年改正によ り保険会社に利益相反管理体制の整備(保険業法100条の⚒の⚒)が義務付 けられたことと合せて措置された規制緩和である。

⑦契約移転

従来の保険業法では,保険会社が保険契約の移転を行なう場合には,⽛責 任準備金の算出の基礎が同一である保険契約⽜を包括して移転しなければな らないという規制(移転単位規制)が設けられていたが,保険会社グループ の事業再編等をより容易にし,業務の効率化を図る観点から,2011年保険グ ループ規制 WG 報告書の提言を受けた2012年改正により,当該移転単位規 制が撤廃された。なお,この規制緩和に際しては,同 WG 報告書の提言を 踏まえ,保険契約者保護の措置として,保険契約移転の当局認可要件の厳格 化,異議申立て手続きにおける情報提供の充実,異議を述べた契約者の保護 の充実といった手当てもなされている8)。また,従来,契約移転の移転元保

7) 上原・前掲注4)52頁以降参照。

8) 2012年の契約移転規制の見直しについて,椎野友介⽛保険会社のグループ経

(12)

険会社は,移転手続き中,移転対象保険契約と同種の保険契約を締結しては ならないとする規制(販売停止規定)が設けられていたが,移転手続き中に 必要な保険契約の更新等ができなくなる可能性があるといった指摘もあり,

同 WG 報告書の提言を踏まえ,(保険契約が移転先保険会社に移転されるこ とにつき保険契約者の承諾を得ることとした上で)2012年改正で当該販売停 止規定が撤廃されている。

なお,契約移転規制については,2014年の改正でも追加で規制緩和が手当 てされている。すなわち,複数の保険会社が同一の保険契約を割合に応じて 引き受ける共同保険契約の契約移転に当たり,引受割合の小さい(10%以 下)保険会社について,移転対象契約者に対する個別の通知を不要とする規 制緩和がなされている。これにより,個別の保険契約者のデータを有してい ない共同保険契約の非幹事保険会社における契約移転時の個別通知の負荷が 軽減されることになった9)

⑧保険募集再委託

保険業法では,保険募集人が保険会社から直接委託されている保険募集を 他の者に再委託すること(保険募集再委託)は禁止されている。この規制に ついて,保険会社グループ内の他の保険会社の販売基盤を有効に活用する観 点から,2011年保険グループ規制 WG 報告書の提言を受けた2012年改正に より,見直しがされている。すなわち,保険会社グループ内の他の保険会社 を再委託者とし,当該再委託者が保険募集を委託している保険募集人を再受 託者とする場合に限定し,保険募集の再委託を可能とする規制緩和がなされ 10)

営に関する規制の見直し⽜生命保険経営第80巻第⚖号16頁以降(2012)参照。

9) 2014年の契約移転規制の見直しについて,上原・前掲注4)55頁以降参照。

10) 椎野・前掲注8)10頁以降参照。

(13)

⑵ 相互会社規制

相互会社規制に関しては,前章に見たとおり,1996年からの10年間におい て,株式会社化規定の整備や社員配当規制等,相当程度の規制緩和が進展し たが,対照的に,2006年からの10年間では,会社法改正に伴う相互会社関連 規定の整備を除けば,特段の規制緩和の進展は見られない。

⑶ 保険商品規制

①不妊治療保険

保険商品規制についても,前章に見た1996年からの10年間と比べると,

2006年からの10年間での大きな規制緩和の進展は見られないが,その中で特 筆すべきテーマとして,金融審議会の報告書(2013年保険商品・サービス WG 報告書)で提言された二つの論点である,⽛不妊治療保険⽜と⽛保険金 の直接支払い⽜について言及したい。

まず,不妊治療保険についてである。金融審議会で議論された,その問題 の所在は,現行の保険業法において引受可能とされる⽛疾病⽜を原因とする 不妊治療ではない不妊治療,すなわち,原因が特定できない不妊治療につい ての保険引き受けを認めるか否か,という論点である。この点につき,2013 年保険商品・サービス WG 報告書では,積極意見・消極意見の賛否両論が 併記される形で,最終的には⽛今後,当該保険の特性を踏まえた適切な商品 設計・リスク管理が行えるよう,実務的に更なる検討を行い諸課題を解決し 得る商品設計とした上で,実際の保険引受けが行われることが適当である⽜

として,今後の商品設計に結論を委ねる形で提言が取りまとめられた11) そして,この WG 報告書の提言を受けた2014年の保険業法施行規則改正 のタイミングでは,不妊治療保険の引き受けを可能とする手当ては見送られ たものの,その後の検討で,⽛不妊治療に係る保険については,不妊事由の 発生には偶然性が認められ,不妊治療に要する費用を経済的にてん補するニ 11) 上原純⽛新しい保険商品・サービス,募集ルールに係る金融審議会報告の概

説⽜生命保険経営第82巻第⚑号⚖頁以降(2014)参照。

(14)

ーズもあることから,保険の対象となる要素を備えている12)⽜との判断から,

2016年の保険業法施行規則改正により,引き受けが認められることとなった。

また,この規制緩和を受け,実際に保険商品も開発・提供された。

②保険金直接支払い

保険商品規制に係る論点の二点目は,⽛保険金直接支払い⽜についてであ る。これは,金融審議会の議論を経て,2013年保険商品・サービス WG 報 告書において,⽛保険会社が特定の財・サービスを提供する提携先の事業者

(提携事業者)を顧客に紹介し,顧客が提携事業者からの財・サービスの購 入を希望した場合に,保険金を受取人ではなく当該事業者に対してその代金 として支払う⽜サービス(保険金直接支払いサービス)が,現行保険業法上,

定額保険においても可能であることが明確化されたものである13)。したがっ て,厳密に言えば,これは規制緩和ではなく,現行法令の解釈の明確化に止 まるものである。なお,当該明確化に伴い,2014年の保険業法改正と,それ に伴う保険業法施行規則の改正により,保険金直接支払いサービスを実施す る際の情報提供義務や体制整備義務等の所要のルールが整備されている。

⑷ 保険募集規制

①銀行による保険募集

保険募集規制に関しては,1996年の新保険業法の施行により⽛生保募集人 の一社専属制の緩和⽜がなされたが,その後の20年間において最もマーケッ

12) 2016年⚓月25日付パブリックコメント金融庁回答。また,⽛モラルリスクや 逆選択等の諸課題については,実際の商品化に当たり,各保険会社において適 切に検討が行われるものと考えていますが,金融庁としては,その状況を引き 続き注視してまいります⽜との考え方が示されている。

13) 金融審議会では,当初,定額保険における現物給付の解禁の可否が議論され たが,これは⽛将来の検討課題⽜として見送られ,最終的に,保険金直接支払 いサービスに係る提言として報告書が取りまとめられるに至った。かかる経緯 について,上原・前掲注11)⚘頁以降参照。

(15)

トにインパクトを与えた規制緩和が,銀行による保険募集の順次解禁であろ うと思われる。前章で述べたとおり,2005年までの10年間においては,2001 年(第一次),2002年(第二次)の解禁により,個人年金保険を中心に銀行 による保険募集が開始された。その後,2005年には,融資先募集規制14)等の 新たな弊害防止措置が設けられるとともに,一時払終身保険,一時払養老保 険,短満期平準払養老保険等の取扱いが解禁された(第三次解禁)。

さらに,その後の2006年からの10年間では,二次にわたる規制緩和がなさ れている。一つは,2007年12月の銀行による保険募集の全面解禁である。こ れは2005年の第三次解禁の際に,新たな弊害防止措置の実効性を確認し,見 直しの必要性を検討した上で,⚒年後に銀行等が取り扱える保険契約の制限 の撤廃を行なうことが予定されていたことを受けた措置であり,これにより,

銀行による保険募集においてすべての保険種類を取り扱うことが可能となっ た。

もう一つは,全面解禁後の規制見直しとなった2011年の改正である。これ は,全面解禁時の2007年12月において,⽛弊害防止措置等について,概ね⚓

年後に,所要の見直しを行う⽜ことが予定されていたことを受けたものであ る。具体的には,一時払終身保険(法人契約を除く)や一時払養老保険(法 人契約を除く)等を融資先募集規制の対象となる商品から除外する見直し,

融資申込者に対する保険募集を禁ずる規制(タイミング規制)の対象から非 事業性資金の融資申込者を除外する見直し,地域金融機関が選択できる特例 の選択肢を追加する見直し等を内容とする規制緩和がなされている15)

②保険仲立人

1996年の新保険業法の施行とともに始まった保険仲立人制度についても,

14) 銀行等が,事業性資金の融資先に対し,手数料を得て保険募集を行なうこと を禁止する規制。

15) 全面解禁後の規制見直しについては,上原純⽛銀行等による保険募集に係る 弊害防止措置の見直し⽜生命保険論集第179号213頁(2012)参照。

(16)

この10年間において規制緩和がなされている。すなわち,2013年保険商品・

サービス WG 報告書で,保険仲立人について⽛制度導入時の想定と比べて,

十分に活用されているとは言えない状況⽜にあり,⽛保険分野においては保 険仲立人についてもその機能が適切に発揮される環境整備が必要⽜であると して,規制緩和の提言がなされ,これを受けた2014年改正が実現している16)

具体的には,保険業法の改正により,長期(保険期間⚕年以上)の保険契 約の媒介に係る認可制が廃止されている。これは,1996年の新保険業法施行 以来,⽛保険仲立人に関する経過措置⽜として⽛当分の間⽜の規制とされて いたものを終了する改正である。

また,保険仲立人の新規参入を促進する観点から,保険業法施行令の改正 により,保険仲立人の賠償資力確保のための保証金について,最低金額を 4000万円から2000万円へ引き下げる規制緩和もなされている。

⑸ 資産運用規制

①同一人与信規制

この10年間における資産運用規制の緩和については,2012年に行なわれた 二つの見直しが挙げられる。

一点目は,同一人与信規制の緩和である。同一人与信規制とは,特定の先 に対する与信の集中を排除する観点から,保険会社の同一人に対する与信

(株式の取得を含む)を総資産の10%(貸付金及び債務の保証の合計額につ いては⚓%)以下とする規制である。この規制については,与信先が子会社 であっても適用されることから,保険会社が大規模な保険会社を買収しよう とする場合等において,規制の上限値を超える場合があり得るという問題が 指摘されていた。そこで,2011年保険グループ規制 WG 報告書において,

保険会社が,保険子会社を与信先として株式取得をする場合については,資 産運用に係る信用リスクというよりも,保険本業の事業リスクの側面が強い ことから,同一人与信規制の対象から除外すべきことが提言され,2012年の

16) 上原・前掲注4)58頁以降参照。

(17)

保険業法施行規則改正によりこれが実現している17)

②資産運用比率規制

二点目は,資産運用比率規制の撤廃である。資産運用比率規制とは,保険 会社の財務の健全性を確保する観点から,国内株式,不動産,外貨建資産の 保有に関して,それぞれ保険会社の総資産の額の30%,20%,30%を限度と する規制である。この規制について,2010年の金融庁⽛金融資本市場及び金 融産業の活性化等のためのアクションプラン⽜において,機動的な資産運用 の妨げになっているとの指摘があることから撤廃することとされ,2012年の 保険業法施行規則改正によりこれが実現している。

⚔.おわりに

前章に見たとおり,1996年の新保険業法の施行から始まる10年間の規制緩 和の進展と比べると,2006年からの10年間の規制緩和の進展は,総論として 見れば,小規模に止まる内容と評価されるものと思われる。しかし,各論と して見ていく中では,保険グループ規制のように,金融審議会等での数次の 議論・検討を重ね,小幅ながらも,毎年のように規制緩和が進展した分野も あった。また,銀行による保険募集の全面解禁(2007年)とその後の見直し

(2011年)のように,マーケットに相応のインパクトを与える規制緩和の進 展もあったと言うことができる。

最後に,本章では,前章までに概観した保険業法上の規制緩和の動きを踏 まえた今後の展望について,上記の⚕類別に沿って若干の私見を述べたい。

第一に,保険グループ規制に関する事項である。この点については,2016 年に業務範囲規制が緩和された銀行法との横並び(イコールフッティング)

が問題となる。すなわち,同年の銀行法改正により,いわゆる FinTech の 進展に銀行が戦略的に対応することを可能とする観点から,銀行・銀行持株 会社が認可を受けて金融関連 IT 企業等へ出資することを可能とすること,

17) 椎野・前掲注8)⚗頁以降参照。

(18)

また,銀行グループによる戦略的 IT 投資を促進する観点から,システム管 理等の従属業務につき親銀行グループからの収入依存度規制を緩和すること 等を内容とする規制緩和がなされているが,本稿執筆時点で,これらは保険 業法の業務範囲規制において手当てがなされていない。私見では,こうした 銀行法の業務範囲規制の見直しは,保険業法上においても同様に見直しが検 討されてよいものと考えており18),今後の保険業法の改正が期待される事項 であると思われる。

第二に,相互会社規制に関する事項である。この点については,既に見た とおり,2006年からの10年間では特段の規制緩和の進展は見られないところ であるが,私見としては,これは保険自由化後,1996年からの10年間で相当 程度の規制緩和が進んだことの帰結であるように思われる。今後も,会社法 の改正に伴う規定整備等を除けば,保険業法固有の規制緩和という観点での 大きな見直しは想定されないのではないかと思われる。

第三に,保険商品規制に関する事項である。この点については,今後,IT やゲノム医療,自動運転技術等の進展に伴い,従来の規制では対応できない,

あるいは想定していない新型保険商品の開発が進む可能性があり,仮にその ような事態が生じた場合には,単なる規制緩和のみならず,一定の規制整 備・強化も含めた,保険商品規制の見直しが必要となるように思われる。前 章に見たとおり,保険商品規制については,2006年からの10年間の規制緩和 は小規模なものに止まったが,今後の技術革新等の進展度合いによっては,

最も大きく動く規制分野となる可能性も有しているように思われる。

第四に,保険募集規制に関する事項である。この点については,近時の金 融行政の方針として,金融機関等における⽛顧客本位の業務運営⽜の確立と 定着が重点施策として掲げられており,⽛民間の自主的な取組みを支援して

18) 当該論点に係る私見については,上原純⽛金融グループ制度の見直しに係る 金融審議会報告の概要と保険会社法制⽜生命保険論集第196号165頁(2016)参 照。

(19)

いく⽜旨の方向性が示されている19)。したがって,保険募集に関しては,今 後,規制の緩和あるいは強化といったルールベースの見直しの議論よりも,

当面は事業者の自主的な取組みを通じた状況が注視されていくことになるよ うに思われる。

第五に,資産運用規制に関する事項である。この点については,前述のと おり,2011年保険グループ規制 WG 報告書を受けた2012年改正により,保 険会社が保険子会社を与信先として株式取得をする場合について同一人与信 規制の対象から除外する規制緩和がなされている。一方,同報告書では,

⽛貸付けや債務の保証等⽜の株式取得以外の与信については,⽛今後の運用の 実態等も見ながら,問題がないことが確認された場合には,適用除外として いくことが適当⽜であると提言されていることから,株式取得以外の与信に 規制の適用除外の対象を拡大していくかどうかが,今後の検討論点の一つと なるように思われる。

(筆者は明治安田生命保険相互会社勤務)

19) 金融庁⽛平成28事務年度 金融行政方針⽜10-11頁。

参照

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