水素生成法の開発
・・ こき'!;二̲ /也.d7.J,」・Nこ.A‑‑YP・Z' 1・・.iIi‑1yl ・;̲・.≡,芝t2.i:ち
平成 21年度
三重大学大学院 工学研 究科 博 士前期課程 分子素材 工学専攻 生物機能 工学講座
408M358
研 究領域F:
先進 物質 ・先進材料 : 分析環境化 学研 究室三輪 託也
三 重 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科
目次
第
1
章 序論1 ‑ 1
地球環境 と水素エネル ギー1 ‑ 2
水素生成 法1 ‑ 3
燃料電池1 ‑ 4
半導体光触媒1 ‑ 5
本研究 の 目的 第2
章 実験2 ‑ 1
使用機器2‑ 2
実験試薬2 ‑ 3
実験装置2 ‑ 4
実験手順 第3
章 結果 と考察3 ‑ 1
ナ ノコンポ ジ ッ ト光触媒 の作製3 ‑ 1 ‑ 1 p‑ 2 5Ti 02
を用 いた水素生成3 ‑ 1 ‑ 2
剛Ti 02
の 白金担時濃度 の影響3 ‑ 1 ‑ 3 Zn O汀i 02
の酸化 亜鉛担持濃度 の影響3 ‑ 1 ‑ 4 Si O2 汀i 02
の酸化 ケイ素担持濃度 の影響3 ‑ 1 ‑ 5 Sn O2 汀i 02
の酸化 スズ担持濃度 の影響3 ‑ 1 ‑ 6 Cu O汀i 02
の酸化銅 担持濃度 の影 響3 ‑ 1 ‑ 7 Al 2 0JTi 02
の酸化 アル ミニ ウム担持濃度 の影響3 ‑ 1 ‑ 8 Pu Cu O汀i 02
の担持濃度 の影響3 ‑ 1 ‑ 9 Al 2 0JCu O汀i 02
の担持濃度 の影響3 ‑ 2
メタノール水溶液‑ の支持電解 質 の添加3‑ 2‑ 1
各種 支持電解 質 の添加 の影響3‑ 2‑ 2
ギ酸 カ リウム濃度 の影 響3 ‑ 2 ‑ 3
ギ酸 ア ンモニ ウム濃度 の影 響3 ‑ 2‑ 4
温度 の影 響3 ‑ 2 ‑ 5
光強度 の影響3‑ 3
硝酸銅 の添加濃度 の影 響3 ‑ 4
光触媒 の評価3 ‑ 4 ‑ 1 XRD
測 定3 ‑ 4 ‑ 2 BET
表 面積測 定:̲重
大
学大学 院 II字 研 究 科01 0 3 0 7 l l 1 3
1 4 1 5 1 6 1 8
20
21
2 3
2 5
2 7
2 9
31
3 3
3 4
4 7
5 0
5 3
5 6
5 9
6 0
第
4
章 結論 参考文献本研究に関連 した論文
謝辞
71
72
79
80
二重 大学 大学
院
仁学 研 究 科1
第 1 章 序論
1 ‑ 1
地球環境 と水素エネル ギー近年 になって、先進国の高度な経済活動に伴い石油、石炭、天然ガスな どの化石燃料 の使用量が増大 し、これによる都市の大気汚染、 NOx 、 SOxによる酸性雨、酸性霧及び 二酸化炭素( C
O 2)による地球の温暖化 な どの問題 が大きく取 り上げ られている。特に、
地球の温暖化問題については、大気 中の CO
2濃度の上昇が最大の原因 と考えられてお り、化石燃料に起因す るエネル ギーの消費 と密接な関係がある。年間に使用す る石油、
石炭、天然ガスなどの化石燃料中の炭素量は数 1 0 億 トンと言われてお り、それに伴い
C0
2が生成 され大気中に放出 され、現在のその濃度は 3 5 0p p m である。 これが地球の 温暖化 に繋がっている。現在、 CO
2放出量は地球のもつ処理能力 をもはるかに超 え、
C0
2の濃度は上昇 している。今世紀後半には大量かつ長期的に放出され る C
0 2の濃度 は現在の濃度の 2 倍 とな り、地球の年平均気温が 2‑3 ℃ 上昇す るもの と予測 されてい る。 このよ うな地球の温暖化 に伴い、極氷や氷河の融解によって、海面が 1 ‑2m 上昇 し、 日本海岸では 26
%の砂浜が失われ るな どかな り大きな気象変動が予想 され る。 こ の間題 は、化石燃料を使用す る限 り解決できず、長期的な地球規模での対策が必要 とさ れている。
20 0 9 年 1 2 月に第 1 5 回気候変動枠組条約締約国会議 ( COP1 5 ) がデ ンマー ク ・コペ ン ハーゲンで開催 され、世界各国は CO
2削減 に対 して国際的な枠組み と積極的な C
0 2の 削減 目標 を掲げたコペ ンハーゲン合意が承認 された。 この会議で各国は、 2 0 2 0 年まで の温室効果ガスの削減 目標値 を掲 げた。主な国別削減 目標の内訳 ( 1 9 9 0 年比) は欧州連合
( EU) 20 ‑ 3 0
%、米国 3
%、 日本 2 5
%、ロシア 2 0 ‑ 2 5
%、オース トラ リア 2 4
%である。 日 本における 2 0 0 7 年度の二酸化炭素な ど温室効果ガスの排出量は、 CO
2換算で約 1 3 億
7 4 0 0 万 トンである。この値 は、前年度 に比べて 2. 4
%増え、京都議定書の削減 目標の基 準である 1 9 9 0 年の総排出量 を 9. 0
%上回ってお り、 2 0 2 0 年の CO
2排出量を 1 9 9 0 年比 で 25
%削減す るとい う国際的な 目標 を果たすのは、困難な状況 となってい る。
C0
2の排出量を削減 し、地球温暖化 を防 ぐため には、当面 CO
2排出の少ないエネル ギー源‑の転換 をはかるとともに、産業分野はもとより、各家庭において も個人一人一 人が生活の中でのエネルギーの無駄 を省 き、省エネルギーに努める工夫に取 り組む必要 がある。また一方で、環境に優 しい新 しいエネルギーを早急に導入 してい く必要がある。
新たに求め られ るク リー ンなェネル ギー として、再生可能な太陽光、風力、地熱、海洋、
水力な どの 自然エネルギー と、近年注 目されてきた水素エネルギーが挙げ られ る。
水素は、地球上で無限に存在す る水や水素を含む有機化合物 を原料 とし、様々な産業 発展のために広 く利用 され、太陽光、風力、地熱、海洋、水力な どの 自然エネルギーか ら得 られた電力 を用いて水の電気分解 によ り得 ることができる。また、水素は、いかな
:.̲重 入 学 人 学院 l∵芋 研 究 科
る過程の燃焼 においても容易にもとの水に戻 り、自然環境の循環作用になん ら妨げにな らないク リー ンなェネル ギーである。将来的には、水素はエネルギー媒体 としてク リー ンエネルギーの開発 と環境問題 の解決に重要な役割 を担 うもの として期待 されてお り、
水素エネル ギー社会が到来す ると考えられてい る。
近年、水素エネル ギー社会の実現に向けて、特に関心が高ま り、研究開発 されている 分野の中に燃料電池がある。燃料電池は、電気化学エネル ギーを熱エネルギーに変換す ることな く、直接、電気エネルギー として取 り出せ るため、発電効率が高い。燃料電池 の種類 にもよるが、すでに 40‑50
%の発電効率は達成 されている。 これは大規模火力 発電 と同程度であ り、現在、 さらなる効率向上 を 目指 した研究開発が進 め られている。
燃料電池の場合には、規模や出力によらず高いエネルギー効率が実現できる特徴がある。
特に、省エネル ギー効果が大きいのは運輸部門におけるエネル ギー消費である。従来の ガ ソリン車の場合、エネルギー効率は 1 5
%程度である。 さらに、原油の堀削、精製、
輸送な どもプロセスにお けるエネル ギー消費 も考慮 した トータルエネル ギー効率はこ れ よりも若干低 くなる。一方、燃料電池 自動車の トータルエネルギー効率は、燃料の種 類や製造方法に依存す るが、ガ ソリン車の 2倍 か ら3倍程度向上す ると見 られている。
また、家庭用や業務用の分散電源 として定置式燃料電池システムを用いる場合には、電 気 とともに熱 を供給す るコージェネ レーシ ョンシステムが想定 されてお り、電気 と熱 を 合計す るとエネル ギー効率は 80
%程度にも達 し、民生部門における省エネルギー効果 が期待 されている。
このよ うな優れた要素をもつ水素を、水 と太陽光による自然サイクルのように、どの よ うに して地球環境 に優 しいエネルギーサイクル及びシステムとして組み立てるか、ま た、どのよ うに貯蔵 ・輸送 ・供給 をす るのかが、今後の課題 とされている。現在、国内 外では、水素エネルギー利用システムに関す る要素技術について積極的に研究開発が進 め られている。燃料電池 自動車など水素利用技術の進展 とともに確実に水素の需要が増 加の傾向を辿 る水素エネルギー時代に向けて、今後、これ ら個々の要素技術 を連携 させ
た、地球規模での水素エネルギーシステムが構築 され ることが期待 されている。
.車大 学 人
学
院 巨芋研 究 科3
1‑ 2
水素生成法水素エネ ルギー は燃料電池 との組 み合 わせ に よ り、地球温暖 化 を防 lLす る最 も有 望な 次 世代燃 料 と して期待 され てい るC今 後 、水素エネ ルギー‑システ ムが 普及 してい くと、
当然 、水素の需要 も増加す る。この需要 を満 たす量の水素 を どの よ うに製造 してい くか が、水素エネ ルギー システムの普及 に とって大 きな課題 であ り、またその方式 は水素 エ ネル ギ一一システム導入 の効用 を大 き く左 右す る と考え られ てい る。
水素 の製造方式 は多様 であ り、原料、プ ロセ ス、場所 な どさまざまな観 点か らの分類 が可能 である。 現在 、実用化 されてい るの は、化石資源 の改質 と水の電気分解 で あ る。
また、化石資源 を用いない方法 は、二酸化炭素排 出や 化石資源消費 が実質的 にゼ ロ とな る反 面、技術開発や コス ト面で課題 があ り、実用化に向けた研 究開発 が進 め られ てい る。
以 下に.、
I
.化石資源改質 として水蒸 気改質、部分酸化、 自己熱改質 、I l.
化石資源 を 用 いない方法 と して水の電気分解 、水の熱 分解、バイオマス転換、水 の光分解 、Ⅲ.オ ンサイ ト水素製造 と副生水素利用 と してオ ンサイ トでの水素製造、副生水素 の利用 の順
に各水素製造法 について説明す る。I.化 石資源 か らの水素製造
■ 水蒸気改質法
天然ガス、ナ フサな どの炭 素資源 を高温 ・触媒存在 下で水蒸気 と反応 させ水 素 と一酸化炭素 の合成ガス (改質 ガス)を得 る方法である。炭化水素 と水蒸気 の主 反応 は以下のガス化反応 で表す こ とができる。
CnHm+nH20‑ nco +(∩十m/2)H2 (吸熱)
水蒸気改質法 は、改質 ガス中の水素存在比 が高 く、メタンやナ フサな ど軽質 の炭 化水素 を原料 とす る水素製造 に適 してい るが、十 方で、ガス化反応 は吸熱反応 で あ るため、多量の投入エネル ギ一一を必要 と し、触媒劣化や炭素析出な どの問題 か
ら、炭 化水素原料‑ の適用 は困難 であ る と考え られてい る。
■ 部分酸化法
触媒 を必要 と しないため、原料 中の不純物 に よる制約 がほ とん どな く、軽質 の 炭 化水素 のみ な らず、石炭や 董質 油な ども原料 と し用 いることができる方法 であ るO 欠点 と しては、合成 ガス中 の H2/CO 比が水蒸気改質法 に比べ低い こと、反 応 温度 が非常に高 く、反
応
炉 材料 が高
価 になることが考え られ てい るO:.重 大 学 人学院 卜守 研 究科
雷 自己熱改質法
水蒸気改質反応 を発熱反応 である部分酸化反応 とともに ・ つ の反応器内部 で 進行 させ、熱的 に自立 させ る方法である
OTl
.化石資源 を用いない水素製造
t
水の電気分解
水に電流 を流 して水素 を発生す る方法で、主な工業的水竃解法には、アルカ リ 水竃解法、固体高分子電解質水電解法、 高 温水蒸気竃解法がある。
・アル カ リ水竃解法
電解質 と して
25%程度の
KOH水溶液 を用い る方法で、生成 され る水素の純 度が高いので外販用 として用い られてい る。装置の構造はシンプルであるが、
エネルギ一一 効率が低 く、電力料金が水素製造 コス トに影響す る問題があるO
・固体高分子電解法
イオ ン交換膜 を隔膜お よび電解質 として用い、その両側 に電極 を接合 し、純 水 を電解す る方法である。 この方法は、電流密度やエネル ギー効率が高 く、装 置のコンパ ク ト化 が可能であ り、商業化 に向けた研究開発 が進 め られてい る。
また、一方で、イオ ン交換膜や 白金族触媒の価格 が高い ことが課題 となってい る。
・高温水蒸気電解法
酸化物固体電解質 を用 い、 900‑1 1 00℃ で水蒸気の電気分解 を行 う方法であ る。水電解 に必要な電気エネル ギーの一部 を熱エネル ギーで補い、電力のコス
トを下げることを目的 としている。
}
水の熱分解
新 しい水素製造方法の一つで、熱エネル ギー を用いて水 を分解 し水素 と酸素 を 製造す る方法である。水 を直接 に熱分解す るためには
2500℃以上の高温 を必要 とす るため、プラン トの構築は非現実的である。 しか し、い くつかの熱化学反応 を組み合わせ ることによ り、 1 0 00℃ 以下の温度領域で水 を分解 し、水素 を取 り出 す ことが可能な熱化学サイ クルが多数提案 されてい る。
車 入学人学院 巨予研究 科
5
■ バイオマ スか らの水素製造
バイオマ スを大別す ると、植物 な どを栽培す る生産系バイオマス と農林水産業 の廃棄物 あるいは都市廃棄物 な どの未利用資源 系バイオマスがあ り、これ らに由 来す るバイオエ ネルギ一一を利用 し、水素 を製造す る方法であるC
■ 水の光分解
半導体光触媒 を用いて、太陽光エネルギー弓こよ り、水 を分解 し水素 を生成す る 方法である。現在、光合成 によづて水か ら水素 を生成す る光合成微生物 を介 して 水素 を生成す る光生物的水素生産の可能性 について も検討 されてお り、光合成微 生物 の開発 には遺伝子工学的手法 も適用 されてい るo Lか し、生産 に関わ る投 入 エネル ギ一一が高 く現実性 に乏 しく、実用化 には微生物の水素生成能 を大幅 に向上
させ ることが不可欠 である。
現在われ われ が利用 してい るエネルギ一一源 は、石油、石炭天然 ガスである。 こ れ らの化石燃料以外 には、巨大な一次エ ネルギー一一源 として、原子力.、水力 、太陽 ェネル ギ一一があるが、原子力については U235の資源 が少なす ぎることと、安全性 が確立 していない ことか ら将来的 な展望には乏 しい。また水力 は限 られた国 にお いて しか得 られ ないO残 るは太陽エ ネルギーーだけであ り、安全性 な どの点で も非 常に優れ てい る。太陽の放射 してい るエネル ギ一一は 3.8xlO26Js‑1であるが、地 球 にはその 22億分の 1が到達 してい るにす ぎない。しか しそれで も 1ffF間に 5.5
x1024Jの太陽エネルギーーを受 け取 り、 これ は現在 人類が 1年間に消費 してい る 全エネル ギーの
1
万倍 に相 当す る。将来的 に太陽光のエネル ギ一一が利用 可能 な半導体光触媒 を用いた水素生成 法 は、エネルギー的な観点か ら見ると、最 も有望な水素生成技術 である とい え る。
Ⅲ.オ ンサイ ト水素製造 と副生水素利用
} オ ンサイ トでの水素製造
定置式燃料電池 システ ムや燃料電池 自動車 に改質器 を設置 して、水素 を製造す る方法である。オ ンサイ トでの改質の燃料 としては、自動車の場合 にはメタ ノー ルやガ ソ リン、定置式燃料電池 の場合 には都市ガスや灯油が主 として考 え られて い る。しか し、規模 が小 さい ことや メイ ンテナ ンスの必要性、水素の輸送 ・貯蔵 ・ 供給 に関す る技術の問題 がある。
:.重入学人 学院 JJ芋
研
究科■
副生水素の利用
製鉄業でのコークス製造プロセス、塩素や苛性 ソーダの生産のための食塩電解 プロセス、石油化学プロセスな どでは水素が副生 している。これ らの水素 を有効 利用 し、短中期的な水素需要の相当部分を満たす試みの方法。
このよ うに、水素製造に関 しては、何か ら、どのよ うに、どこで製造す るのかがポイ ン トとなる。水素は、水、化石資源および化石資源起源の液体燃料、バイオマス、廃棄 物な どさまざまな原料か ら作 ることができ、実用段階か ら基礎研究段階のものまで、多 様な製造プロセスが開発 されている。水素製造は、水素の製造か ら貯蔵 ・輸送を経て利 用に至 る連鎖の起点に位置 してお り、今後の貯蔵 ・輸送 ・利用技術 も含 めた技術開発、
燃料電池システムの普及な どに応 じて決定 されてい くと考えられ る。
二
中
人 守 人学 院 仁学 研究科7
1‑3 燃料電池
燃料電池は、乾電池な どの一次電池や鉛蓄電池などの二次電池 とは異な り、水素な ど の燃料 と酸素な どの酸化剤 を供給 し続 けることで継続的に電力 を取 り出す ことができ る。また、熱機 関を用いる通常の発電システムと異な り、化学エネルギーか ら電気エネ ル ギー‑の変換途上で熱エネルギーや運動エネルギー とい う形態 を経ないため、熱機 関 特有のカル ノー効率に依存 しないので発電効率が高 くシステム規模の大小にあま り影 響 されず、騒音や振動 も少ない。そのため、ノー トパ ソコン、携帯電話な どの携帯機器 か ら、自動車、民生用 ・産業用 コジェネ レーシ ョン、発電所まで多様な用途 ・規模 をカ バーす るエネルギー源 として期待 されている。
燃料電池には様々な燃料が用い られ るが、主 として水の電気分解の逆反応である2H
2+0
2‑ 2H
20 によって電力 を取 り出す場合が多い。用い られ る電気化学反応、電解質 の種類な どによって燃料電池はい くつかのタイプに分け られ る。以下に、アルカ リ型燃 料電池、固体高分子型燃料電池、直接 メタノール型燃料電池、リン酸型燃料電池、溶融 炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、バイオ燃料電池の説明をす る。
■ アルカ リ型燃料電池( AFC)
水酸化物イオンをイオン伝導体 とし、アルカ リ電解液 を電極間のセパ レー トに し み こませてセル を構成す る燃料電池である。最近では、固体高分子型燃料電池 と同 様、高分子膜 を用いるタイプも報告 されている。最 も構造が簡単であ り、アルカ リ 雰囲気での使用であることか ら、ニ ッケル酸化物な どの安価な電極触媒 を使用す る
ことができること、常温で液体電解質を用いることか らセル構成 も単純にできるた め、信頼性が高 く、現在宇宙用途な どに実用化 されている燃料電池である。一方、
空気 を酸化剤 として用いると電解液が二酸化炭素を吸収 して劣化す るため、純度の 高い酸素を酸化剤 として用い る必要がある。原燃料 として純度の高い水素が用い ら れ る。電池反応 は以下のよ うである。
・燃料極反応
H
2+20H → 2H
20
+2e
・空気極反応
1 / 20
2+H
20
+2eー→ 20H
・全電池反応
H
2+1 / 20
2‑ ⇒ H
20
二重
入 学 大 学院 仁 子研 究 科t 固体高分子型燃料電池
(PEFC)イオ ン伝導性 を有す る高分子膜 を電解質 として用いる燃料電池のことである。固 体高分子膜は、燃料極で生成 したプロ トンを空気極‑ と移動す る働きを持つ。現在 では、プロ トン伝導性の高 さと安定性か ら、主にナフイオンな どのスルホン酸基 を 持 ったフッ素系ポ リマーが用い られ ることが多い。燃料に水分を含ませ る必要があ るため、0℃以下、または 1 00℃以上での使用が困難であるとい うのが欠点である。
そのため、無加湿 ・中高温条件 において使用可能 な高分子膜の開発が急務である。
燃料極はカーボンブラック担体上に白金触媒、あるいはルテニ ウム一日金合金 を担 持 したものが用い られ る。空気極 はカーボンブラック担体上に白金を担持 したもの が用い られ る。
源燃料 として水素、天然ガス、ガ ソリン、石炭、メタノールな どが使用できるが、
水素以外は燃料 を改質 して水素を生成 させ る必要がある。また、電極触媒 として用 い られている白金は一酸化炭素で容易 に被毒 され、す ぐに活性 を失って しま うため、
燃料中の一酸化炭素が 10
ppm以下であるとい う条件がつ く。電池反応 はアルカ リ 型燃料電池 と同 じ反応である。
■ 直接 メタノール型燃料電池
(DMFC)固体高分子型燃料電池の一種で、燃料 として水素の代わ りにメタノール水溶液 を 供給 し、空気極では酸化還元反応が起 こる。
・燃料極反応
CH
30H
+H
20 ‑ CO
2+6H+
+6e
・空気極反応
3/ 20
2+6H'
+6e‑‑ 3H
20
・全電池反応
CH
30H
+3 / 20
2→ CO
2+2
日20
固体高分子型燃料電池 と比較 して水素 を製造す る改質器や変成器の よ うな補機や 大 きく重い水素タンクを必要 としないので小型 ・軽量化が可能である。 このため、
携帯電話や ノー トパ ソコンといったモバイル機器用の電源 として期待 され る。しか し、メタノールが水 と一緒に燃料極側 か ら電解質膜 を通過 して空気極側 に浸透 して しま う「 クロスオーバー
」と呼ばれ る現象が起 き、空気極の電位低下を引き起 こす。
このためメタノール透過性 が低 くかつプ ロ トン伝導率が高い電解質膜の開発 が強 く望まれている。
:̲重大 学 人 学 院 巨 芋 研究 科
9
『 リン酸型燃料電池( PAFC)
電解質 として リン酸を用いる。動作温度は 200℃程度で、発電効率は、約 40 %LHV である。源燃料 としては水素、天然ガス、ガ ソリン、メタノールな どが使用できる が、固体高分子型燃料電池 と同様 に白金 を触媒 としているため、燃料中に一酸化炭 素が存在す ると触媒の白金が劣化す る。電池反応はアルカ リ型燃料電池 と同様であ
る。
■
溶融炭酸塩型燃料電池( MCFC)
プロ トンの代わ りに炭酸イオ ン( CO
32‑ ) を用い、溶融 した炭酸塩 を電解質 として用 いる。そのため、水素に限 らず天然ガスや石炭ガスを源燃料 とす ることが可能であ る。動作温度は 600℃〜700℃程度。発電効率は約 45 %LHV である。 白金触媒 を用 いないため固体高分子型燃料電池や リン酸型燃料電池 と異な り一酸化炭素による 被毒の心配がな く、排熱の利用 にも有利である。溶融炭酸塩型燃料電池は炭酸イオ ンが電池反応 に介在 し、空気極側 の二酸化炭素 と酸素が選択的に燃料極側 に移動 ・ 蓄積す るため燃料極側排ガスの二酸化炭素濃度は 80
%程度に達す る。この性質を利 用 し、溶融炭酸塩型燃料電池で二酸化炭素の回収を行 うことが試み られている。電 池反応は以下のようである。
・燃料極反応
H
2+CO
32‑‑ H
20
+CO
2+2e一
・空気極反応
1 / 20
2+CO
2+2e一一 CO
32‑・全電池反応
H
2+1 / 20
2→ H
20
:̲̲tj匡入 学 人 学 院 U字 研究 科・
} 固体酸化物型燃料電池 ( SOF C)
動作温度は 700‑1 000℃ 程度で溶融炭酸塩型燃料電池 よ りも高く、排熱の利用 は 更に有利であるが、高耐熱の材料が必要 となる。また、起動停止時間 も長 くな りが ちである。電解質 として酸化物イオ ンの透過性が高い安定化 ジル コニアや ランタ ン ・ガ リウムのベ ロブスカイ ト酸化物な どのイオン伝導性セ ラミックスを用いてお り、空気極で生成 した酸化物イオンが電解質を透過 し、燃料極で反応す ることによ りエネルギーを発生 させている。
・燃料極反応
H2+02 ‑ H20+2e
・空気極反応
1 / 20
2+2e ‑ 02‑・全電池反応
H2
+1 / 20
2→
H20そのため、水素だけではな く天然ガスや石炭ガスな ども源燃料 として用いることが 可能である。発電効率は
37.5%LHVである。内部改質方式であ り、改質器 は不要 と
され る。触媒 も特に必要ない。電極材 としては導電性セ ラミックスを用いる。
■ バイオ燃料電池
食物か らエネル ギーを取 り出す生体システムを応用 した燃料電池のことである。
生体触媒の働 きによ り糖分を分解 し、電気エネルギーを取 り出す。環境の変化 に対 しても安定 して働 く強力な酵素が不可欠であ り、研究開発では、酵素の寿命 を延 ば す ことが課題 となっている。実用化では、血液中の糖分を利用す る体内埋め込み型 ペースメーカーの開発、ノー トパ ソコンや携帯機器の電源な ど‑の応用が期待 され る。その他、光合成 による植物の生体システムを応用 した 「 太陽光バイオ燃料電池
」の研究開発が行 われてい る。
以上のように多 くの燃料電池において、水素が必要であることが分かる。将来的にこれ らの燃料電池の開発が進み、実用化 されるようになると、燃料電池の燃料になる水素の需 要は劇的に増大すると考えられる。
二̲重 )(学 人 学院 巨芋 研 究 科
l l
1 ‑ 4
半導体光触媒( Ⅰ)光触媒について
光触媒は、光エネルギーを化学的エネル ギーに変える光化学変換や、光 を用いた合成 化学、環境汚染物質の除去処理な どの分野で重要度 を高めつつある。その代表例は、生 命エネルギーの源である自然界の光合成反応のほか、学問 ・応用の分野では、半導体 を 用いた光化学、増感剤な ど、注 目されている領域が広い。
触媒の条件は、
(1)反応速度 を高めた り、通常は起 こりにくい反応 を起 こるよ うに し た りす る、
(2)自身は分解せずに繰 り返 し作用す る、である。光触媒は、熱力学的 に可 能な反応系 となることはもちろん、熱力学的には不可能な反応 も光の助 けを借 りて可能 にす ることが特徴であ り、通常の触媒 の定義だけでは納ま らない。つま り、光触媒 は、
反応 の活性化エネルギー を低 くす る場合だけでな く、光励起によ り反応性 の高い電子 ( または正孔) を生ず ること、または、光励起により不安定な状態をつ くり出す ことによ
り、暗時で熱力学的に起 こらないよ うな反応 を可能にす る。
(Ⅱ)
光触媒反応 のメカニズム
光触媒は、光励起 した光触媒が反応基質に作用 して反応が起 こる。バ ン ドギャップェ ネル ギー よ りも大 きなェネル ギーの光 を照射す ると価電子帯の電子が伝導帯に光励起 されて、伝導帯には自由電子が価電子帯には正孔が生成 し、これがそれぞれ還元反応 と 酸化反応 を起 こす ことができれば光触媒反応が進行す る。この とき電子 と正孔が再結合
して しま うと反応は起 こらないが、これ らを分離す るメカニズムが半導体表面に存在す る。
(Ⅲ)
Ti O
2半導体について
光触媒 として さまざまな半導体が検討 されているが、 その中でも本実験で用いた Ti 0
2は最 も優れた光触媒 と考えられている。
¶0
2は、常温常圧の通常の使用条件で酸、アル カ リ、水、有機溶剤 に溶解せず、フッ化水素、塩素、硫化水素など反応性の強いガス と
も反応 しない、きわめて安定な物質であ り、光触媒 として耐久性に優れ、経済性、安定 性、実用性な どで多 くの利点 を持 ってい る。また、 Ti 0
2は
n型半導体で、正方晶系であ るルチル型、アナターゼ型、斜方晶系であるブル ッカイ ト型の 3 種類の結晶構造 を持 っ てお り、この うち、一般的なものはルチル型 とアナターゼ型であ り、水の光分解 に対す る活性 は、アナターゼの方が一般 に高 く、その差は等倍 に及ぶ。ルチルのバ ン ド幅 は 3. OeVであるのに対 し、アナターゼのバ ン ド幅は 3. 2eVであ り、その分だけアナター ゼの伝導帯位置が負 になって水素生成 に有利になると考えられ る。本実験では、アナタ ーゼ型 80%とルチル型 20%を混合 させた ものを用いた。
L̲重 入 学 人 学 院 仁′芋研 究 科
(Ⅳ)
担持について
光触媒効率を高める方法の一つ として、ミクロンサイズの白金等の金属微粒子を酸化 チタン粉末に担持 し、酸化チタン表面に正孔を、金属電極表面に電子 をそれぞれ分離 さ せ る方法が提案 されている。このタイプの光触媒はシ ョッ トキー型の光化学ダイオー ド を小 さくしたものと同等なのでマイ クロ光電気化学セル と呼ばれ ることがある。電極間 でイオンが移動す るために電解質が必要な光電極セル と異な り、このタイプの光触媒は 電解質が無 くても働 く。これ は金属 と半導体間の距離がきわめて短 く、電解質が無 くと もイオ ンが移動できるためである。そのため、様々な光触媒反応が促進す ると考えられ る。
:̲重 大 字 大 学 院 巨芋 研 究 科
1 3
1 ‑ 5
本研究の 目的前述か ら、石油、石炭、天然ガスな どの化石資源か ら水素を製造する技術はほぼ確立 されていることが分かった。 しか し、温暖化 な どの地球環境破壊の問題 を考えると、水 素エネルギー利用時の生成物である水、再生可能な原料であるバイオマスな どか ら水素 を生成す る技術が期待 されている。水か らは電気分解 により水素を製造す ることができ るが、既存の電気エネル ギーを使用す るのではエネルギーを生み出す ことにな らず、む しろマイナス と考えられ、太陽光な ど新 しいクリー ンなェネルギーを用いた系での水素 生成法の構築が望まれている。
そこで本研究では、将来的に太陽光エネル ギーの利用が可能な、半導体光触媒 を用い た安価で簡便な水素生成法を検討 した。
また、半導体光触媒‑金属酸化物 を担持す ることで、ナ ノコンポジッ ト光触媒 を作成 し、水素生成効率の向上の検討 を行 った。
また、水素の生成に効果的なメタノール水溶液‑、支持電解質を加 えることで さらな る水素生成効率の向上を検討 した。
さらに、水素生成に効果的な光析出法を用いて、銅 を半導体光触媒‑担持 させなが ら 水素を同時に生成 させ ることで、 さらなる水素生成効率の向上を検討 した。
: .重大学 大学院 仁子研究科
第 2 章 実験 2‑ 1
使用機器ブ ラ ックライ ト 恒温層
マ グネ チ ックスター ラー
ホ ッ トスター ラー 分析天ぴん マイ クロシ リンジ ナ フロンテープ
減圧源過用 フィル ター フォル ダー 減圧容器
吸 引ポ ンプ
EFD1 5BLB SB‑ 35 SB‑ 350 SR200 SRSl ll AA SRS1 1 6AA TR‑ 500H AUT220 MS‑ GANO25 TOMBO9001 KG‑ 47 VT‑ 500 FTR‑ 10A
TOSH旧A EYEUl EYEUl ADWl NTEC ADVANTEC I ADⅥl NTEC Pas ol l na S川MADZU I TOCo.
ニチアス(秩)
ア ドバ ンテ ック東洋(樵) ア ドバ ンテ ック東洋(樵) 岩城硝子(株)
メ ンブ ランフィル ター (セル ロー ス混合エ ステル、孔径
0. 45L J m)
ア ドバ ンテ ック東洋(樵) 紫外線 強度計
メ ノ ウ乳鉢 アル ミナ乳鉢 電気炉
UVR‑ 400
KBF828N
ガス クロマ トグラム
( Ther maJ Conduc t i vi t yDet ec t or , TCD) GC320
分析対象 カ ラム充填剤
TCD
ブ リッジ電流 カ ラム温度イ ンジェク ト温度 キャ リアーガス 分析時間 分析サ ンプル量
(株)井内盛栄堂 アズ ワン(秩) アズ ワン(樵)
光洋サーモ システ ム(秩)
ジーエルサイエ ンス(秩)
H
2Mol ecul arSi ev e5A mesh60‑80 60mA
50℃
50℃
Ar ( 99. 9%)
,7. 0mL /mi n 15
分250L JL
:̲重 入 学 人 学 院 JJう,''研 究 科
1 5
X
線 回折装置BET
表面積測 定装置Ul t i ma Ⅳ
( Aut os or b‑ 1 ‑ C
,Chemi s or pt i on‑ Physi sor pt i onAnal y zer ) TEM
最大加速電圧
2‑ 2
試薬酸化 チ タ ン
H‑ 7000 1 25k V
p‑ 25Ti O
2( anat as e80
%,r ut i l e20
%,suHac ear ea50m
2g
‑1,par t i cl esi ze30nm)
‑ キサ クロロ白金酸 六水和物
( 99. 9 %) H
2Pt C
l6・ 6H
20 ( 98. 5 %) H
2Pt C 1 6 ・ 6H
20
次亜 リン酸H
2PO
3酸化 亜鉛
ZnO
( su
rf acear ea15‑ 25m
2g
ll,par t i cl esi ze50‑ 70nm)
酸化 ケイ素 SiO2
( par t i cl esi z el 325mesh)
酸化 スズ SnO2
( su佃 cea帽a47. 2m
2g
1,di amet er18. 3nm)
酸化銅
CuO
( sur f acear ea29m
2g
‑1,pa
rt J L cl esi ze33nm)
酸化 アル ミニ ウムA
l20
3( sur f acear ea351 40m
2g
ll, par t i cl esi ze40‑ 47nm) メタノール
アル ゴン
( 99. 9%)
水素標 準ガス( 99. 9%) Mo一 ecul arSi ev e5A
塩化 ナ トリウム 炭酸水 素ナ トリウム 炭酸ナ トリウム 硫 酸 カ リウムギ酸 ギ酸エチル
ギ酸 ア ンモ ニ ウム ギ酸 リチ ウム
CH
30H Ar H
2mesh60‑80 NaCI NaHCO
3Na
2CO
3K
2SO
4HCOOH HCOOC
2H 5 HCOONH
4HCOOLi
:̲重入 学 人学院 巨i,I:研究 科
RI GAKU Quant achr ome I ns t r ument s Hi t achi
Deguss aCo.
Johns onMat t eyCo.
関東化 学(秩) 和光純薬 工業(秩)
Ar dr i ch
Ar dr i ch
Ar dr i ch
Ar dr i ch
Ar dr i ch
ナカライテスク( 秩)
川瀬産業(秩)ジーエルサイエ ンス( 秩)
ジーエルサイエ ンス( 秩)
ナカライテスク( 秩)
ナカライテスク( 秩)
ナカライテスク( 秩)
ナカライテスク( 秩)
ナカライテスク( 秩)
ナカライテスク( 樵)
ナカライテスク( 秩)
Al f aAeas ar
ギ酸ナ トリウム ギ酸カ リウム ギ酸セシ ウム ギ酸カル シウム
硝酸銅 三水和物2‑ 3
実験装置HCOONa HCOOK HCOOCs ( HCOO) 2 Ca Cu( NO
3)2・3H
20
ナカライテスク( 秩)
関東化学(秩)AI f aAeas er Al f aAeas er
関東化学(秩)本実験装置図 を
Fi g. 2‑ 3
に示す。反応セル を恒温層 に入れ、横 か ら光 を照射 し、授拝 しなが ら実験 を行 った。
:̲重 入 学 大 学 院 仁学 研 究 科
2‑ 4
実験手順実験は以下の手順に従い行 った。
Schemelに光触媒の作成手順 を示す。
(Ⅰ) 金属酸化物担持酸化チタンの調製法
1.
酸化チタンと金属酸化物粉末を混合 した。
2. 1 を 1 5 分間、乳鉢 と乳棒で混合 した。
3. 電気炉 を用いて 5 0 0℃ の温度で 3 時間焼成 した。
(Ⅱ)
光触媒試料に白金 を担持す る方法
1. 光触媒試料に‑キサクロロ白金酸 ・六水和物、水、次亜 リン酸 を加 えた。
2. ホ ッ トスターラーを用いて 1 の溶液 を 9 0℃ の温度で 1 時間反応 させた。
3. 2を吸引ろ過 した。
4. 固形物 を 1 1 0 ℃ の温度で乾燥 させた。
5. 4を粉砕 した。
6. 電気炉 を用いて 5 0 0 ℃ の温度で 3 時間焼成 した。
:̲重 入学大学院 巨 予 研 究 科
1 9
(Ⅲ)
水素の生成
1.
反応セルにメタノール水溶液( または塩 を含むメタノール水溶液)と光触媒試料 を加 えた。
2. 反応セル と蓋の間にナ フロンシー トを被せ、密栓 した。
3.
マグネチ ックスター ラーで撹拝 しなが ら、恒温槽で温度 を
50℃に した。
4. 温度が一定になった ら、横 か ら光照射 し、実験 を開始 した。
5. 3 時間の反応後、生成 した気体はガスクロマ トグラフィーを用いて測定 した。
・‑.重 入 学 大学 障 巨 i,I:研 究 科
第
3章 結果 と考察
3‑1
ナ ノコンポジッ ト光触媒の作製
3‑1‑1 p‑25Ti02を用いた水素生成
p‑ 25Ti 0
2を用いて水素生成実験 を行 った.実験条件 を TabJ e3‑ 1 1 1 ‑ a、結果 を Tabl e 3‑ 1 ‑ 1 ‑ bに示す。
Table3‑1‑1‑a.Experimentalconditions.
Photocatalyst
Medium Temperature Time
Reactor Lightsource AnalysI●S
:TiO220mg
DegussaP‑25(80% anataseand20% rutile
,
Surfacearea50m2g‑1,
ave.panicJesize30nm) :10% methanolaqueousso山tion(30mL):50℃
:3h
:Glassvessel(volume:56mI) :Blacklight(0.6mW cm
2 )
:GCwithTCD
市販 の酸化チタン光触媒 を用いた場合の水素生成量 と、金属酸化物 を担持 した酸化チ タン光触媒 を用いた場合の水素生成量を比較す るために、まず、最初に Degus sa社 の p‑ 25Ti 0
2の水素生成量を調べた。
今回メタノール水溶液 を用いた 1 つ 目の理由は、他の研究者の文献に、メタノール は エタノール、酪酸等の水溶液 を用いた ときよ りも水素生成に有効であると書かれていた ためである。そ して、 2 つ 目の理由は、燃料電池の分野において、ダイ レク トメタノー ル形燃料電池の開発が進んでお り、将来的にメタノールが安定供給 され ると考えられた ためである。
また、メタノール濃度については、本研究室の過去の実験結果 より、水素生成に最適 であった濃度の 1 0
%とした。
結果か ら、p‑ 25Ti 0
2を用いた場合の水素生成量は、2. 7L J mOf だった.
従 って、担持濃度 o wt . %の時の水素生成量を 2. 7L J mOlとし、以後の実験 を行 った。
‑ T abl e3‑ 1 ‑ 1 ‑ b,H
2Pr oduc t i onwi t hP‑ 25Ti O
2.光触媒 p‑ 25Ti 0
2:.̲重 入 学 人 学 院
巨芋
研究科21
3‑1‑2 P
t
汀i02の 白金担持濃度の影響次に、P
uTi 0
2の白金担持濃度の水素生成‑の影響について検討 を行 った.実験条件 を I r abJ e 31 1 ‑ 2‑ a 、結果 を Tabl e 3‑ 1 ‑ 2‑ b 、Fi g. 3‑ 1 ‑ 2に示す.
Table3‑1‑2la.ExperimentaJconditions.
Photocatalyst Medium
Temperature Time
Reactor Lightsource AnaJysJ■S
P
t
汀iO220
mg10% methano一aqueoussolution(30ml) :50℃
:3h
:GIassvessel(volume:56mJ) :B一ack一ight(0.6mW cm
2 )
:GCwithTCD
白金を担持 した理由は、水素生成に白金担持酸化チタンが一般的に用いられてお り、 白 金を担持す ることで水素生成の高い活性が得 られると報告 されているか らであるO今回、
白金の最適担持濃度を求め、他の金属酸化物担持酸化チタンとの比較を行 うために、実験 を行った。
本研究か ら、白金担持濃度が増加す ると、水素生成量 も増加す ることが分かった。ま た、白金担持濃度が 1. Owl . %の とき水素の発生が最大 とな り、それ以降では減少す るこ とが分かった。これ は、白金担持量が増加す ると白金が酸化チタン表面に過剰 に皮膜 し、
その結果酸化チタン表面に光が当た りに くくなることが原因 と考 えられ る。
‑ r abJ e 3‑ 1 ‑ 2l b.H
2Pr oduc t i onwi t hP
tqi O
2.担持濃度/wt . % 0 0. 1 5 0. 3 0. 5 0. 7 1. 0 1. 5 H
2生成量/
LJ mOl 2. 7 3. 9 3. 8 8. 5 1 4. 1 27. 7 1 2. 7
工区大 字 大 字院 巨 i,I:研 究 科
一〇
∈ rT J u O !P n P O
LdNH0 0. 5 1 1. 5 Dopl ■ ngCOnCent r at i on / wt . %
Fi g.3‑ 1‑ 2.日
2Pr oduct i onwi t hP t 汀 i O
2.
Photocatalyst 20mg Reactiontime 3h
: .重
大 学 人学
院 巨 芋研
究 科23
3‑1‑3 ZnO汀i02の酸化亜鉛担持濃度の影響
次に、ZnO汀i 0
2の酸化亜鉛担持濃度の水素生成‑の影響について検討 を行 った。実 験条件 を TabJ e3‑ 1 ‑ 3‑ a、結果 を Tabl e3‑ 1 ‑ 3‑ b、Fi g.3‑ 1 ‑ 3に示す.
Table3‑1‑3‑a.Experimentalconditions.
Photocatalyst Medium
Temperature Time
Reactor Lightsource AnalysI●S
:ZnO什iO220mg
:10
%
methano一aqueoussolution(30ml) :50℃:3h
:Glassvessel(volume:56m]) :Blacklight(0.6mW cm‑2) :GCwithTCD
酸化亜鉛 も半導体光触媒であ り、 バン ドギャップが酸化チタンのアナターゼ と同じ3. I 2e V であ り、アナターゼよりも酸化に有利な電位 を持つ。そのため、光触媒反応 において、 よ り水を酸化 し、プロ トンの生成が促進 され、結果的に水素の生成量が増加す ると考えられ る。以上が酸化亜鉛を担持 した理由である。
本研究か ら、酸化亜鉛担持濃度が 1 . 5 wt . %の とき、非担持の場合 よ りも水素生成量が 増加 したが、その増加量はあま り大き くなかった。また、その他の担持濃度においては、
水素生成の活性 が下がった。これ は、酸化亜鉛のバ ン ドギャップは水の酸化 には有利 で あるが、プロ トンの還元には不利 なために、水素の生成が起 こりにくくなって しまった ためであると考 えられ る。
' r abJ e3‑ 1 ‑ 3‑ b.H
2Pr oduc t i onwi t hZnOqi O
2.担持濃度/wt . % 0 0. 5 1 . 0 1 . 5 2. 0
:̲̲重大 学 人学 院 巨 芋 研 究 科
0 1 2
Do p l ■ n gC O n C e n t r a t i o n
/wt . %
Fi g.3‑ 1 ‑ 3.日 2 Pr oduc t i onwi t hZnO什i O 2 .
Photocatalyst ‑20mg Reactiontime 3h
:̲̲重 入 学 大学院 卜 学 研究PI
25
3‑1‑4 SiO2汀i02の酸化ケイ素担持濃度の影響
次に、
SiO2汀i02の酸化 ケイ素担持濃度の水素生成‑の影響について検討 を行 った。
実験条件 を
Table311‑4‑a、結果 を
Table311‑4‑b、
Fig.3‑114に示す。
TabJe3‑1‑4‑a.Experimentalconditions.
Photocatalyst Medium
Temperature Time
Reactor Lightsource AnalysJ■S
:SiO2汀iO220mg
:10% methanolaqueoussolution(30mJ) :50℃
:3h
:Glassvesse一(vo一ume:56ml) :Black一ight(0.6mW cm
2 )
:GCwithTCD
酸化ケイ素は様々な用途に使用 されてお り、比較的安価な材料である。そのため、酸化 チタン‑の担持の検討を行った。
本研究か ら、酸化 ケイ素を担持 しても、水素生成の活性が下がって しま うことが分か った.これは、酸化チタンの粒径
(30nm)よ りも、酸化ケイ素の粒径が
325mesh(47LJm)と大き過 ぎたため、作成 した酸化ケイ素担持酸化チタンの粒径 も大きかったためである と考えられ る。
Table3‑1‑4‑b.H2ProductionwithSiO 2qiO 2.
担持濃度/wt . %
0 0.5 1.0 1.5̲ 革
入学 人 守 院 巨 羊 研 究 科0 0
211
0 ∈ rT J u O !P n P OLd N
H
0 0. 5 1 1. 5 Dopl ● n9COnCent r at i on / wt . %
Fi g.3 ‑ 1‑ 4.日
2Pr oduc t i onwi t hSi O
2什i O
2.
Photocatalyst 20mg Reactiontime 3h
̲重入 学 大 学 院 ト∵羊研究 科
27
3‑1‑5 Sno2什i02の酸化スズ担持濃度の影響
次に、
SnO2汀i02の酸化 スズ担持濃度の水素生成‑の影響 について検討 を行 った。実 験条件 を
TabJe3‑1‑5‑a、結果 を
Table3‑1‑5‑b、
Fig.3‑1‑5に示す。
Table3‑1‑5‑a.Experimentalconditions.
PhotocataJyst Medium
Temperature Time
Reactor Lightsource AnalySl■S
:SnO2m 022
0
mg:
1
0%
methanolaqueoussolution( 30
mJ) :50℃
:
3
h:Glassvessel(volume:
56
m[) :Black一ight(0.6mW cm2 )
:GCwithTCD
酸化スズも半導体光触媒であ り、バン ドギャップがアナターゼよりも大きい
3.5eVであ るが、アナターゼ、酸化亜鉛 よりも酸化 に有利な電位である。そのため、水を酸化 しやす い と考えられる。以上が酸化スズを担持 した理由である。
本研究か ら、酸化 スズ担持濃度 が
0.5wt . %の とき、非担持の場合の水素生成量の約
2倍水素が生成 した。これ は、酸化 スズが効率 よく水 を酸化す ることで、プロ トンが生成
し、その結果多 くの水素が生成 した と考えられ る。
Table3‑1‑5‑b.H2ProductionwithSnO2qiO2.
担持濃度/wt . %
0 0.3 0..5 1.0 1.5:̲車 大 学 人守院 I∵
) ,
I:研究 科0 0. 5 1 1. 5 Dopl ● n9COnCent r at i on / wL %
Fi g.3‑ 1‑ 5.H2Pr oduc t i onwi t hSnO2 mi O2 .
Photocatalyst 20mg Reactiontime 3h
工区入学 人学 院 卜学研究科
29
3‑1‑6 CuO汀i02の酸化銅担持濃度の影響
次に、
CuO汀i02の酸化銅担持濃度の水素生成‑の影響について検討 を行 った。実験 条件 を
TabJe3‑1‑6‑a、結果 を
TabJe3‑1‑6lb、
Fig.3‑1‑6に示す.
Tabfe3‑1‑6‑a.ExpenLmentalconditions.
Photocatalyst Medium
Temperature Time
Reactor Lightsource AnalySl●S
:CuO汀iO220mg
:10% methano一aqueoussolution(30ml) :50℃
:3h
:Glassvessel(volume:56m]) :BJackJight(0.6mW cm‑2) :GCwithTCD
酸化銅 を担持 した理由は、酸化銅がメタノールを酸化 しやすい性質を持つ とい う過去の 報告があったからである。また、もう
1つの理由は、本研究室でも過去に、酸化チタン光 触媒に銅粉末を同時に添加 して実験を行った ところ、水素の生成量が増加 した とい う報告 があったからである。
本研究か ら、酸化銅担持濃度が
0.5‑2.Owl . %の とき、比較的高い活性 を示す ことが分 かった。これ は、酸化チタンに担持 した酸化銅がメタノールまたは水 を効率 よく酸化 し て、プロ トンの生成がよく起 こったためであると考え られ る。また、酸化銅 のバ ン ドギ ャップの還元電位に光励起 した電子が移動 したことで、電子ホール対の再結合が抑制 さ れた ことも影響 してい ると思われ る。
‑Table3‑1‑6‑b.H2ProductionwithCuOqiO2.
担持濃度/wt . %
0 0.5 1.0 1.5 2.0 3.0:.重 入 学 人守院 巨芋研究 科
0 1 2 3
Dopl ■ ngCOnCent r at i on
/wL%
TO ∈ r T JuO!Pn P O
JdNH
Fi g.31 1 ‑ 6.日
2Pr oduc t i onwi t hCuO汀i O
2.
Photocatalyst 20mg Reactiontime 3h
:.重人 守 人 ;,''院 JJ予研 究科