はじめに
近年,障害児 ・ 者の就学 ・ 就労の機会が,大きく前 進している.特に,テレビや新聞報道により,発達障 害児 ・ 者に関する一般の人々の理解が進んだ.周りの 人の見守りやちょっとした手助けにより,彼らが学校 に通ったり,仕事を続けたりすることが可能であるこ とが,多くの人々に理解されるようになってきた.
そのような中,障害児の放課後の居場所としての放 課後等デイサービスが,2012年4月に,児童福祉法に 位置付けられた.新たな支援として,小学校及び特別 支援学校小学部から高等学校及び特別支援学校高等部 に在籍する,知的障害から肢体不自由,発達障害など の障害児が利用する放課後等デイサービス事業として 制度化された.全国の放課後等デイサービスの事業所 数は,2013年の3,909事業所から,2017年の1万1,301事 業所へと,わずか4年の間に約3倍に急増している.
事業所の設立条件が緩かったこともあり,営利目的の 事業者の参入があいつぎ,「障害児が放課後を過ごすだ けの単なる居場所ではないか.資格のない指導員が多 く,専門的な療育とはほど遠いのではないか.」など,
支援内容の質の低下が問題視された.そのため,国は 放課後等デイサービス事業所の児童発達管理責任者の 資格要件の見直し(障害児 ・ 児童 ・ 障害者の支援の3 年以上の経験を必須化),人員配置基準の見直し(児童 指導員又は保育士を半数以上配置)を行った.さらに,
「放課後等デイサービスガイドライン」(2015年)が公 表され,事業所にはガイドラインの遵守と自己評価結 果公表が義務付けられた.
熊谷市は,2018年度からの「第1期障害児福祉計画」
において,障害児及びその家族に対して,乳幼児期か
ら学校卒業までの一貫した効果的な支援を,身近な場 所で提供する体制の確保を掲げている.本市の放課後 等デイサービスを提供する事業所は,年を追うごとに 増え,障害児の放課後や休日の居場所の確保が急速に 進んできた.
そこで本研究では,急増する障害児が通う放課後等 デイサービスに焦点をあて,事業所が提供しているサー ビスや支援内容を明らかにすることを目的に訪問調査 を実施した.なお,今回の調査実施に関しては,「立正 大学大学院社会福祉学研究科倫理指針」を遵守し,調 査結果は統計的に処理すること,個人が特定できない ように表記すること等を説明し,関係者の了承を得た 上で行った.
1 .熊谷市における障害児
熊谷市の総人口は,年々減少傾向にあり,2017年4 月に19万9,029人となり,20万人を割っている.障害者 手帳所持者の総数は,2016年度末では8,880人であっ た.そのうち,身体障害者手帳の所持者は6,311人と最 も多く,療育手帳の所持者は1,415人で,精神障害者保 健福祉手帳の所持者は1,154人であった.また,自立支 援医療受給者は2,295人であった.
放課後等デイサービスを利用している障害児は,療 育手帳や精神障害者手帳を所持しているか,自立支援 医療受給者である.特別支援学校の児童には,重度身 体障害児(医療的ケア児を含む)のほか,自閉症,ダ ウン症,知的障害,身体障害,自閉症スペクトラム障 害など重複している児童が多い.小学校 ・ 中学校の普 通学級や特別支援学級の児童には,発達障害児が多く,
自閉症スペクトラム障害,アスペルガー症候群,学習 障害,注意欠陥多動性障害(ADHD)など,低年齢に
*立正大学大学院社会福祉学研究科研究生
キーワード:放課後等デイサービス,障害児支援,放課後活動
熊谷市における放課後等デイサービス
篠 崎 美佐子*
おいて発現している児童である.
2019年3月末現在で,小学校は29校,児童数は9,337 人であった.27校に特別支援学級があり,62学級に約 180人の発達障害児等が在籍していた.中学校は16校,
生徒数は4,656人であった.15校に特別支援学級があ り,34学級に約90人の発達障害児等が在籍していた.
熊谷特別支援学校は肢体不自由児が対象で,本市の重 度身体障害児が34人在籍していた.近隣の深谷はばた き特別支援学校に128人,行田特別支援学校に37人,東 松山特別支援学校に13人が在籍していた.放課後等デ イサービスを利用するため,218人が受給者証を所持し ていた.
2 .放課後等デイサービスの利用状況
熊谷市では,2012年4月から,障害児を対象とした サービスは,児童福祉法に根拠規定が一本化され,サー ビス体系も再編された.障害児通所支援は,障害児の 療育と保護者の介護負担を解消する観点から,徐々に 放課後等デイサービスの施設整備が進められ,必要と されるサービス量を見極め,障害児支援が展開されて いる.なかでも,放課後等デイサービスでは,授業の 終了後や学校の休業日に,生産能力の向上のために必 要な訓練,社会との交流の促進等の支援を行うことを 目指している.
放課後等デイサービス事業を行っている事業所は,
2014年7月末では3事業所であったが,2017年10月末 では12事業所に増加している.放課後等デイサービス 利用の見込量と実績を表1に示した.2017年度は,月 平均の利用者数の見込量140人に対し,実績は約1.51倍 の212人であった.月平均の利用日数の見込量の1,400 日に対し,実績は約1.67倍の2,332日であった.また,
実際の利用者数は,2015年度の122人に対し,2017年度 は約1.74倍の212人であった.利用者全体の月平均の利 用日数は,2015年度の1,259日に対し,2017年度は約1.85 倍の2,332日であった.このように,実績は常に見込量 を上回り,実際の利用者や利用日数も年を追うごとに 大幅に増加していることがわかった.事業所も毎年増 えており,利用要望に応えることができるところまで 来ていると言える.
3 .放課後等デイサービス事業所への 訪問調査
⑴ 調査の目的と方法
放課後等デイサービスは,障害児の療育と保護者の 介護負担を解消する観点から,施設整備が進められて きた.授業の終了後や学校の休業日に,どのような支 援を行っているのかを明らかにすることを目的とする 訪問調査を2018年10月から11月の間に実施した.また,
障害児や放課後等デイサービスの利用状況を把握する ために,2019年4月17日と5月30日に障害福祉課と学
表 1 熊谷市の放課後等デイサービス見込量と実績(月平均)
年度 2015 2016 2017 2018
見込量 利用日数(日) 810 1120 1400 2827
利用者数(人) 90 112 140 257
実績 利用日数(日) 1259 1777 2332 ※
利用者数(人) 122 167 212 ※
出所:『第4期熊谷市障がい福祉計画』(2015)p.36 『第5期熊谷市障害福祉計画 第1期熊谷 市障害児福祉計画』(2018)p.44を基に筆者作成(※実績は2019年10月末に公表される)
表 2 事業所の類型
介護型(2) 定員は5人で,5~6人の指導員で対応,重度身体障害児及び医療 的ケア児が利用,送迎あり
見守り型(7) 定員は10人で,5~7人の指導員で対応,発達障害・身体障害・知 的障害の児童が利用,送迎あり
トレーニング型(2) 定員は10人で,個別形式と授業形式があり,主に発達障害の児童が利用,送迎なし
( )内の数字は事業所数
校教育課を訪問し,資料やデータの収集を行った.
熊谷市では,2017年10月現在で12の放課後等デイサー ビス事業所の登録があったが,そのうち1事業所は開 所準備中であり,11事業所への訪問調査を実施した.
調査対象者は,療育内容等に詳しい担当職員(児童発 達管理責任者)である.なお,11事業所の運営主体は,
「株式会社」が6事業所,「NPO 法人」が4事業所,
「社会福祉法人」が1事業所であった.
調査の結果,支援内容 ・ 障害の程度 ・ 支援上の課題 から,事業所の類型は表2のように,①介護型,②見 守り型,③トレーニング型の3つのグループに分類す ることができた.
⑵ 「放課後等デイサービス事業所への訪問調査」の結果 1 )日課からみえる支援内容
放課後等デイサービスは,小学校入学から高校卒業
(6~18歳)までの身体障害 ・ 知的障害 ・ 発達障害など の児童が,授業の終了後又は休業日に利用する.療育 機能 ・ 居場所機能を備えたサービスである.「介護型」
は,定員5人に対し,1日あたりの平均利用児童数は 5~6人で,5~6人の指導員が対応していた.「見守 り型」は,定員10人に対し,1日あたりの平均利用児 童数は,6人が1事業所,6~10人が2事業所,10人 が1事業所,10~13人が1事業所,「13人」が2事業所 で,5~7人の指導員が対応していた.トレーニング 型は,定員10人に対し,1日あたりの平均利用児童数 は,個別形式が10人,授業形式が2人であった.
まず,介護型と見守り型の日課からみえる支援内容 による違いを見ていく.表3には,平日の日課および 支援内容を示した.介護型の特徴として,トイレ(お むつ交換),健康チェック(体の状態 ・ 検温),リハビ リがあげられる.事業所に到着するとすぐ,トイレや 健康チェックをし,おやつや昼食(休業日)の時も1 対1対応で,児童の様子をよく見ながら,スプーンで 口へ運んでいた.全員が身体障害と知的障害が重複し ている特別支援学校の児童で,障害が重く話すことも できず,車いすや布団の上で過ごしていた.看護師が 配置され,理学療法士によるリハビリ訓練が実施され ていた.少しの変化にも気付けるように,細かく対応 していた.安心 ・ 安全を第一に,個人を尊重し,リス クマネジメントを考慮したプログラムとなっていた.
個別支援活動では,ブランコ ・ ボッチャ ・ 散歩 ・ 絵本 読み聞かせ ・ 手遊びなどが実施されていた.学校まで
迎えに行き,家まで送っていた.
見守り型の特徴として,挨拶 ・ 手洗い ・ うがい ・ お やつ ・ 宿題及び課題 ・ 自由遊び ・ 外出(近くの公園で の遊び)などがあげられる.障害の重い児童には,ト イレ(おむつ交換)や食事の補助をしていた.基本的 な生活習慣や学習習慣が,スムーズにいくように支援 していた.事業所に到着するとすぐに,「おかえりなさ い」という指導員の呼びかけは,第二のおうち的な場 であることが,理解できた.児童にとって,安心して 遊べ,くつろげる場所であった.自閉症,ダウン症,
発達障害,身体障害,知的障害などの児童が利用して いる.話すことができず意思の疎通の難しい児童が多 い事業所がある一方で,普通学級や特別支援学級に在 籍する障害の軽い児童が多い事業所があった.生活習 慣として,挨拶,手洗い,うがい,おやつや昼食(休 業日)・ 宿題などを習慣化している.普通学級や特別支 援学級の児童の利用が多い事業所では,はじまりの会 や終わりの会を実施している.障害によっては,うが いをできない児童もいるため,手洗いのみの所も多い.
生活態度やコミュニケーションに注意を払い,友達と の関わりが円滑にいくように支援していた.ハロウィ ンやクリスマスなどの行事を大事にし,いろいろな催 しに参加できるように支援していた.平日には近くの 公園,休業日には外出して,広い公園や児童館等で過 ごしていた.学校まで迎えに行き,家まで送っていた.
続いて,トレーニング型には,個別形式(1:1)
と授業形式の2つがあった.個別形式は,1対1対応 で,教材を使用して45分間支援した後,保護者と15分 間面談していた.授業形式の平日(13:30~19:30)
表 3 平日の日課及び支援内容
介護型 見守り型
14:30 迎え 迎え
15:00 到着
トイレ(おむつ交換)・
健康チェック おやつ・水分補給 個別支援活動
(リハビリ・絵本読み聞 かせ・手遊び・散歩など)
到着うがい・手洗い
(始まりの会)
おやつ個別活動(宿題・課題)
集団活動(自由遊び)
外出(近くの公園など)
16:45 トイレ・帰宅準備 17:00 出発(送り)
17:15 帰宅準備
終わりの会
17:30 出発(送り)
出所:訪問調査を基に筆者が作成
は,余暇時間(13:30~17:00),1限目(17:00~
17:30),2限目(17:40~18:10),3限目(18:20
~18:50),余暇時間(18:50~19:30)で,休業日
(9:00~17:00)は,4時限と昼食が組み込まれてい た.自閉症スペクトラム障害や ADHD などの発達障 害児が多く,自閉症児も数人いた.発達状況や保護者 の意向を聞いたうえで,支援計画を立て,本部からく る教材や手作り教材を使用して,療育を行っていた.
フランチャイズ形式で,トレーニングが主であるとい う印象を受けた.特に,個別形式の方は,その傾向が 強いと思われる.授業形式は,グループワークによる スキルトレーニングである.両形式とも,発達障害児 向けで,障害の程度も軽く,療育手帳所持率も低かっ た.生活習慣,コミュニケーション,感情面,学習面 等の能力向上を目指していた.送迎はないので,保護 者が送迎をするか,本人がバスや電車を使って通うか のどちらかである.
2 )登録者数と在籍校等
放課後等デイサービスを利用している障害児の登録 先や在籍校等を表4に示した.介護型の登録者数は,
両事業所とも20人であった.見守り型は,13~15人が 4事業所,20人以上が2事業所,30人以上が1事業所 であった.トレーニング型は,8~10人が1事業所,
30人以上が1事業所であった.
介護型を利用しているのは,特別支援学校に通う重 度身体障害児及び医療的ケア児である.小学部と中学 部の児童はほぼ同数で,高等部は小学部の半分以下と 少なかった.2017年10月までに開設していた介護型の 事業所は2つと少ないため,数か所に登録している児
童が多かった.訪問時には,医療的ケア児の登録があっ た事業所でも,入院中のため,利用者は重度身体障害 児のみであった.当日キャンセルした児童が2人いた ため,両事業所とも4人の利用であった.前日や当日 のキャンセルが非常に多いことがわかった.身体障害 と知的障害が重複している児童がほとんどで,全員が 療育手帳を所持し,身体障害者手帳を所持している児 童もいた.
見守り型を利用しているのは,特別支援学校に通う 児童が最も多く,普通学級と特別支援学級を合わせた 児童数の2倍以上であった.小学部(小学生)の利用 が多く,中学部(中学生)と高等部(高校生)は,小 学部の4分の1程度であった.発達障害児の多くは,
特別支援学級に在籍していた.普通学級は,特別支援 学級の3分の1以下,特別支援学校に通う児童の9分 の1以下であった.また,見守り型を利用している児 童の半数は発達障害児で,自閉症スペクトラム障害,
ADHD,アスペルガー,学習障害などで,知的障害を 重複している児童であった.自閉症と知的障害を重複 している児童が4分の1で,知的障害児が7分の1で あった.ほかに,自閉症児が5人,身体障害児が5人,
ダウン症児が4人,医療的ケア児が1人利用していた.
約8割の児童が療育手帳を所持し,身体障害者手帳を 併せ持つ児童もいた.
トレーニング型を利用しているのは,普通学級と特 別支援学級の児童がほとんどで,特別支援学級の児童 は,普通学級の児童の約2倍であった.個別形式は特 別支援学級の児童が多く,授業形式は普通学級の児童 が多かった.特別支援学校の児童の利用は1人だけで あった.半数の児童の支援計画を保護者が作成してい
表 4 登録者数と在籍校等
(単位:人)
介護型 見守り型 トレーニング型
登録者数 小学生 17 92 28
中学生 16 25 11
高校生 7 22 2
合計 40 139 41
在籍校等 普通学級 0 10 14
特別支援学級 0 36 26
特別支援学校 40 93 1
合計 40 139 41
注 重複して登録している児童を含む
た.療育手帳の所持者も少なかった.
3 )指導員の就業形態と免許・資格
昨今,放課後等デイサービスで働く指導者の質が問 われているため,常勤(正社員)と非常勤(パート ・ アルバイト社員)の比率と,所持している免許 ・ 資格 について調査した.
指導員の就業形態と免許 ・ 資格を表5に示した.介 護型では,A事業所は正社員が多かった.B事業所は 看護師が4人配置されていた(児童発達支援と生活介 護を同じ部屋で実施していた).両事業所には,看護師 と理学療法士が配置されていることに特徴があった.
万全な体調管理とリハビリによる機能保持 ・ 回復のた めであると考えられる.
見守り型では,常勤は約3割で,非常勤が約7割と 多かった.なかでも,C,E,G,H事業所は非常勤 の割合が高かった.数種類の資格を所持する職員もい るため,専門資格を所持しているものは,4割以下で あった.しかし,2年以上勤務すると児童指導員とし て働くことができるので,約4分の1が児童指導員資 格を持っていた.なかでも,C,D,F,H事業所に は,児童指導員資格を持つ経験豊富な指導員が多かっ た.所持資格では,介護福祉士が10人と最も多く,保 育士と教員免許(小 ・ 中 ・ 高)が9人ずつ,幼稚園教
諭が6人であった.理学療法士や言語聴覚士や臨床心 理士を配置している事業所もあった.看護師がいたD 事業所は,医療的ケア児を1人受け入れていた.見守 り型の事業所には,保育士や幼稚園教諭や教員免許所 持者が,どの事業所にも配置されていたため,特色あ る療育を実践していた.ハロウィン ・ クリスマス ・ ひ な祭りなどの工作,クリスマス会やお誕生会,お花見 や工場見学などが,年中行事に組み込まれていた.ST 訓練 ・ SST 訓練 ・ 音楽療法(歌 ・ ダンス ・ リトミッ ク)・ 英語教室 ・ 買い物ごっこ遊びなども実施されてい た.知的遊具が多数用意されている事業所もあった.
また,高校生は就労に向けて,作業的な課題(ボール ペンの組み立て ・ ナットのつけ方 ・ 歯ブラシのセット ・ 切手やシール貼り)にも取り組んでいた.
トレーニング型では,全員が常勤で,免許所持者で あった.J,K事業所の指導員は,保育士や教員免許 を所持していた.指導するには専門性が問われるため,
資格が必要となってくると考えられる.
4 )見守る上での課題と解決方法
各事業所の指導員が障害児を療育する過程で,どん な課題に直面し,どのように解決しているのかを把握 するために,見守る上での課題と解決方法について尋 ねた.
表 5 指導員の就業形態と免許・資格
(単位:人)
グループ名 介護型 見守り型 トレーニング型
事業所名 A B C D E F G H I J K
就業形態 就業 常勤 5 4 2 6 3 3 3 4 4 3 5
非常勤 1 7 14 7 9 6 9 12 6
免許・資格
所持免許 保育士 3 3 1 1 2 1 1 3 1 4
幼稚園 2 1 1 1 1 3
教員 4 3 2 3 1 2 1
看護師 1 4 1
社会福祉士 1 1
精神保健福祉士 1 1
介護福祉士 2 1 1 3 3 2
理学療法士 2 1 1
言語聴覚士 1
臨床心理士 1
児童指導員 5 5 8 3
注:数種類の免許所持者を含む.児童発達支援や生活介護を同じ部屋で実施している事業所を含む.Aの理学療法士 は,同じ施設内からの派遣である.
課題と解決方法の回答を表6に示した.介護型では,
「キャンセルが多いので,まんべんなく使ってほしい.」,
「2つないし3つの放デイ(放課後等デイサービスの略 称)を利用している児童が多いので,相談員(相談支 援専門員を指す)が間に入って調整している(全員に 相談員がついている).」,「1対1で細かく対応して,
少しの変化にも気付けるようにしている.」を,両事業 所があげていた.安心 ・ 安全を第一に,個人の尊重や リスクマネジメントを考えたプログラムのもと療育し ていた.そのため,特別養護老人ホームやデイサービ スなどの高齢者介護と類似していた.重度身体障害児 は健康面に不安があるため,キャンセルが非常に多い ことがわかった.
見守り型では,「新学期が大変だが(初めて入ってく るので,慣れるまでが大変),時間が経つと解決する.」,
「担当者会議で話し合い,相談員に相談している(相談 員のいない児童がいる).」が最も多く,5事業所があ げていた.次いで,「学校 ・ 放デイ ・ 相談員 ・ 家庭で情 報を共有し協力し合う(原因を見極める,学校での様 子を聞く,母親との連携が取れない時がある).」,「職 員間でのミーティングや情報共有が大事である.」を,
3事業所があげていた.初めて利用する時や新学期な ど,環境に慣れるまでが,児童や職員にとって大変で あることがわかった.児童の障害については,相談員 や保護者から情報提供を受け,担当職員で情報を共有 していた.問題行動があった場合は,担当者で話し合っ たり,相談員や母親と話し合ったり,本部に相談して いた.児童だけで遊んでいる時でも,注意深く見守っ ていた.なかには,話すことや意思の疎通もできない 児童がほとんどという事業所が2つあった.
表 6 見守る上での課題と解決方法
介護型
・キャンセルが多いので,まんべんなく使ってほしい.(2件)
・2つないし3つの放デイを利用している児童が多いので,相談員が間に入って調整している(全員 に相談員がついている).(2件)
・1対1で細かく対応して,少しの変化にも気付けるようにしている.(2件)
・保護者とは,面談や送迎の際に話し合っている.
・発作の場合は,すぐに救急車を呼び,対応している(数回あった).
・外出(公園)は難しいので,近くや施設内を車いすで散歩している.
・安心・安全を第一に行っている.
・個人の尊重やリスクマネジメントを考えたプログラムを行っている.
・研修会や小児学会に参加し,ボディメカニズムや感染について学んでいる.
見守り型
・新学期が大変だが(初めて入ってくるので,慣れるまでが大変),時間が経つと解決する.(5件)
・担当者会議で話し合い,相談員に相談している(相談員のいない児童がいる).(5件)
・学校・放デイ・相談員・家庭で情報を共有し協力し合う(原因を見極める,学校での様子を聞く,
母親との連携が取れない時がある).(3件)
・職員間でのミーティングや情報共有が大事である.(3件)
・県の研修に参加して,情報を共有している.(2件)
・話ができない子や意思の疎通ができない子がほとんどなので,注意深く見守っている.(2件)
・困った時は本部に聞く,本部の研修に参加している.(2件)
・職員が目を離さず見守っている(子どもだけで遊んでいる時でも).
・母親と相談し解決している.
・今後の事を考えて手助けしていきたい.
・ツールを使った科学的根拠のある教材を取り入れていかねばならない.
・月に2回5時半から会議を含めた研修を行っている(事例研究,かみつき・拘束・虐待など).
・ヒヤリハット(シートベルトの抜け出し,下駄箱の移動,ドアを開けての飛び出し)に気を付けて
・友達の髪をつかんだり,暴力をふるったりする児童を注意深く見守っている.いる.
・心理士の話を聞く.
トレーニング型 ・困った時は,本部に相談している(外部研修・本部研修に参加,社内研修がメイン).
・一人ひとり違うので,個別対応している.
・市の研修会(連絡協議会)に参加している.
・4か月ごとに保護者との話し合いをもっている(学校と連絡をとることもある).
・その都度職員どうしで話し合っている(職員間の情報の共有).
・受給者証がいるが,利用計画は,相談員又は母親がたてている(相談事務所が混んでいるため).
・ペアトレーニングをこれからしたいと考えている.
( )内は回答数
トレーニング型では,障害の比較的軽い発達障害児 が多いため,利用計画は,相談員又は母親がたててい た.一人ひとり症状が違うので,個別対応していた.
困った時は,本部に相談するか,職員どうしで話し合っ ていた.
5 )保護者からの要望
事業所への保護者からの要望を表7に示した.介護 型では,「利用日数を増やしてほしい(受け入れをお断 わりしている状況で,休みが出た時には,追加利用の 連絡をしている).」を,両事業所があげていた.楽し く,安全に過ごしてほしいと考えている保護者が多く,
支援面での要望はあまりないことがわかった.
見守り型では,「宿題をみてほしい(家で集中できな いなど).」,「就労しているがゆえに利用している.」が 最も多く,4事業所があげていた.次いで,「母親の休
息(レスパイト)という側面がある.」,「リラックスし て,楽しく過ごしてもらいたい.」を,3事業所があげ ていた.宿題や学習習慣に対する希望が多かった.ま た,母親の就労や休息のために利用しているという側 面を持っていた.お友達とのコミュニケーションをと れるようになってほしいも多かった.ST 訓練 ・ SST 訓練 ・ 音楽療法などを取り入れた療育を行っている事 業所もあり,保護者からの希望が多いことがわかった.
トレーニング型では,個別形式と授業形式の要望に 違いがみられた.個別形式では,SST 訓練等により,
人との接し方を学んでほしいや,学校でついていける ように,生活する上で困らないようにという要望が多 かった.授業形式では,不登校児が多いため,早い時 間から預かってほしいや長時間預かってほしいという 要望が多いことがわかった.
表 7 保護者からの要望
介護型 ・利用日数を増やしてほしい(受け入れをお断わりしている状況で,休みが出た時には,追加利用の 連絡をしている).(2件)
・5人に対して5人で対応している(支援面での要望はあまりない).
・楽しく,安全に過ごしてくれればよい.
・半年に1回保護者会を行い,個別面接,個別対応をしている.
・アンケート調査から,ニーズに応えている.
見守り型
・宿題をみてほしい(家で集中できないなど).(4件)
・就労しているがゆえに利用している(4件)
・母親の休息(レスパイト)という側面がある.(3件)
・リラックスして,楽しく過ごしてもらいたい.(3件))
・お友達との関わり(コミュニケーション)をとれるようになってほしい.(2件)
・身辺自立(身のまわりの事をできるようになってほしい,トイレなど).
・支援学級では親の送迎が前提の学校がある.
・ST 訓練は,保護者の希望から始まっている(7・8人の保護者).
・小学生の母親はあまり働いていない(休息が主)が,中・高生の母親は働いている.
・兄弟で来ている(4組).
・学習習慣をつけて欲しい(教材が充実).
・高校生は,就労に向けて作業的な課題を多めにしている(ボールペンの組み立て,ナットのつけ方,
歯ブラシのセット,切手・シール貼り,B型・生活介護にむけて).
・安心・安全に過ごさせて欲しい.
・他の子どもを傷つけたりしないでほしい.
・帰りの時間に臨機応変に対応している.
・保護者に問題があるケースが多い(スケジュール管理ができない母親がいる).
・送っていく時間に対する要望が多い(5時半,母親の就労の関係).
・子どもの障害特性の相談が多い.
・支援学級の児童で不登校のため,みんなといらいらしないで過ごして欲しい(小2が2人).
・母親の心のフォローを大事にしている.
トレーニング型
・SST 訓練で,人との接し方を学んでほしい.
・学校でついていけるようになってほしい.
・生活する上で困らないようになってほしい.
・早い時間から預かってほしい(不登校が多い).
・長時間預かってほしい.
( )内は回答数
4 .考 察
本市の放課後等デイサービスは,平成31年2月末で は,事業所数も16と増えていることから,利用要望に 応えられるところまで来ているのがわかる.しかし,
なかには児童が集まらず,いまだ開設準備中の所や,
閉所に至った事業所もある.
本稿では,訪問調査を進めていく中で,一概に放課 後等デイサービスといっても,その対象児童や支援内 容には明らかな違いがあり,介護型 ・ 見守り型 ・ トレー ニング型に分類し検討してきた.
介護型の場合,利用者は重度身体障害児及び医療的 ケア児であるため,支援内容は要介護度3以上の高齢 者介護に似ていた.看護師と理学療法士が配置され,
健康チェックやトイレ(おむつ交換)やリハビリに特 徴があった.同じ事業所を週5日利用することが難し いため,2つないし3つの事業所に登録している児童 がほとんどであった.また,前日や当日のキャンセル が多いことが,事業所の一番の悩みとなっていた.保 護者からは,受け入れ施設を増やして欲しいという要 望が多いが,新しい事業所ができるとそちらに移って しまい,事業所の経営を難しくしていることがわかっ た.
見守り型の場合,挨拶 ・ 手洗い ・ うがい ・ おやつ ・ 宿題 ・ トイレなどの生活習慣 ・ 学習習慣の自立を目指 して,見守るように支援していた.初めて利用する時 や新学期など,環境に慣れるまでが,児童や職員にとっ て大変であることがわかった.一人ひとり障害や抱え ている課題も違うので,各自の療育プランにそっての 指導が実施されていた.事業所への保護者からの要望 には,宿題をみてほしいが最も多かった.利用に関し ては,母親の就労支援や休息という面が大きかった.
第2のおうち的な場として,リラックスして楽しく過 ごせる場所を望む声も多かった.また,事業所は児童 の障害特性に関する相談や母親の心のフォローにも応 じており,専門的な教育を受けた指導員の確保が,今 後は必要となってくると思われる.
トレーニング型の場合,利用する児童には,障害の 比較的軽い発達障害児が多かった.個別形式と授業形 式があり,トレーニングにより,生活習慣 ・ コミュニ
ケーション ・ 感情面 ・ 学習面等の能力向上を目指して いた.事業所による送迎がなくても,多くの障害児が 利用していた.
本市の放課後等デイサービスは,現在発展途上にあ ると言える.見守り型では,単価が低くなったことや 送迎費が出なくなることをあげる事業所が多く見られ た.研修や交流の場となる連絡協議会の開催を望む声 も多く聞かれた.今後は,利用の増加が見込まれる中 学部や高等部の障害児の自立に向けた療育プログラム を,充実させていく必要があると思われる.
本稿を終わるにあたり,本研究の目的を理解し訪問 調査にご協力いただきました皆様に,感謝申し上げま す.指導教員として,研究当初より温かくご指導 ・ ご 助言を賜りました稲葉一洋教授,本稿執筆にあたり,
ご指導 ・ ご助言を賜りました清水海隆教授,中村尚子 教授に,厚くお礼申し上げます.
参考文献
石井由依・相沢雅文(2018)「放課後等デイサービスの現状と課 題―特別支援学校の保護者への調査から」特別支援教育臨床 実践センター年報第8号 pp.79-88
江上瑞穂・田村光子(2017)「放課後等デイサービス利用者の ニーズについての検討―アンケート調査の結果と考察から―」
植草学園短期大学研究紀要第18号 pp.37-45
小澤温(2018)「放課後等デイサービスの展開と課題について」
地域リハビリテーション13(10) pp.738-741
塩見洋介(2017)「障害児通所支援の多様化と療育の今日的課 題」障害者問題研究45(1) pp.10-18
中島麻衣(2016)「放課後等デイサービスの現状と課題」ノーマ ライゼーション8月号 pp.19-21
中村尚子(2013)『障害のある子どものくらしと権利』全国障害 者問題研究会出版部
中村尚子(2018)「放課後等デイサービス」総合リハビリテー ション46(4) pp.319-323
中村尚子(2019)「放課後等デイサービスに見る2018年報酬改定 の問題点」障害者問題研究46(4) pp.312-318
原田徹(2015)「放課後等デイサービスの現状と課題」月刊福祉 2月号 pp.23-27
松本幸弘(2018)「放課後等デイサービスは地域の障害児を支え ているのか」月刊福祉12月号 pp.42-45
村岡真治(2008)『ゆうやけで輝く子どもたち―障害児の放課後 保障と実践のよろこび』全国障害者問題研究会出版部 山本佳代子(2015)「障害のある子どもの放課後活動における制
度化の展開」西南女学院大学紀要第19号 pp.79-87
(2019年10月1日受理)