線形代数
I演習
− 演習問題の解答と補足 − 担当:佐藤 弘康
¤ 平面ベクトルの演算,線形独立・線形従属,内積 問題 1.1 (1)
c1
( 1 2
) +c2
( 3 4
)
=0 (1)
とおき、これを満たすスカラーc1, c2を求める.これは連立方程式 {
c1+ 3c2 = 0
2c1+ 4c2 = 0 (2)
の解を求めることと同値である.方程式(2)の解はc1 =c2 = 0 だけなので,(1)を 満たすスカラーはc1 = c2 = 0のみである.したがって,
( 1 2
) ,
( 3 4
)
は線形 独立である.
(2) 例えば,2 ( −1
2 )
+ (
2
−4 )
= 0 が成り立つので,線形従属.
(3) 線形独立 (証明は(1)と同様). (4) 任意の実数c ∈ Rに対してc
( 0 0
)
= (
0 0
)
であるから,
( 0 0
)
は線形 従属.
(5) 例えば,5 (
0 3
)
−9 (
2 1
) + 6
( 3
−1 )
= 0 が成り立つので,線形従属.
問題 1.2 (1) 任意のx, y ∈R2に対し,
( x y
)
= 3y−4x 4
( 2 4
)
+2x−y 2
( 3 4
)
と表すことができるので,
( 2 4
) ,
( 3 4
)
はR2を張る.また,線形独立であるこ
とも問題1.1(1)と同様に証明できる.よって,基底である.
( 1 2
)
= 1 2
( 2 4
) +
0 (
3 4
)
. (2) 例えば,
( 1 0
) を
( 1 2
)
の線形結合で表すことはできないので,
( 1 2
) は R2を張らない.したがって,基底ではない.
(3) 任意のx, y ∈R2に対し,
( x y
)
= (y−x) (
0 1
)
−x ( −1
−1 )
と表すこと ができるので,
( 0 1
) ,
( −1
−1 )
はR2を張る.また,線形独立であることも問
題1.1(1)と同様に証明できる.よって,基底である.
( 1 2
)
= (
0 1
)
− ( −1
−1 )
. 問題 1.3 (1) 0=c1(a+ 2b) +c2(3a+ 4b) = (c1+ 3c2)a+ (2c1+ 4c2)b とおくと,
a,bは線形独立だから,c1 + 3c2 = 0,2c1+ 4c2 = 0 が成り立つ.しかし,これを 満たすのはc1 =c2 = 0のときだけなので,a+ 2b,3a+ 4bは線形独立である.
(2) 2(−a+ 2b) + (2a−4b) = 0であるから,−a+ 2b,2a−4bはどんなベクト ルa,bに対しても線形従属である.
問題 1.4 「a,bが線形独立⇐⇒ a1b2 −a2b1 6= 0」を示すには,「a,bが線形従属
⇐⇒a1b2−a2b1 = 0」を示せばよい.
a,bが線形従属⇐⇒a =kb (k ∈R)
⇐⇒a1 =kb1, a2 =kb2
⇐⇒a1 :b1 =a2 :b2
⇐⇒a1b2−a2b1 = 0.
問題 2.1(1) kuk=
√5
2 , kvk= 2√
5, (u,v) = 0.なす角は π 2. (2) kuk=√
5, kvk= 3√
5, (u,v) = −15.なす角はπ. (3) kuk = 2, kvk =
√
2(4−2√ 2) =
√ 2(√
3−1)2 = √ 2(√
3−1), (u,v) = 2(√
3−1).なす角は π 4.
(4) kuk = kvk = 1, (u,v) = cosθcosϕ+ sinθsinϕ = cos(θ −ϕ).なす角は (θ−ϕ).
問題 2.2 a = (
a1 a2
) ,b =
( b1 b2
)
とおくと,a+b = (
a1+b1 a2+b2
)
,a−b = (
a1−b1
a2−b2 )
であるから,(a+b,a−b)を計算すると
(a+b,a−b) = (a1+b1)(a1−b1) + (a2+b2)(a2−b2)
= (a1)2−(b1)2+ (a2)2−(b2)2
={
(a1)2+ (a2)2}
−{
(b1)2+ (b2)2}
=kak2− kbk2.
したがって,(a +b,a −b) = 0,すなわち,a +bとa −bが直交することと kak = kbkは同値である(つまり,対角線が直交する平行四辺形はひし形である ということ).
問題 2.3 aとbのなす角をθとおくと,三角形OABの面積は1
2kakkbksinθに等 しい.(a,b) =kakkbkcosθより,
1
2kakkbksinθ = 1
2kakkbk√
1−cos2θ
= 1
2kakkbk
√ 1−
( (a,b) kakkbk
)2
= 1 2
√kak2kbk2 −(a,b)2.
問題 2.4 a= (
a1 a2
) ,b=
( b1 b2
)
とおくと,
ka+bk2 = (a1+b1)2+ (a2+b2)2
= (a1)2+a1b1+ (b1)2+ (a2)2+a2b2+ (b2)2
=kak2+kbk2+ (a,b).
同様にka−bk2 =kak2+kbk2−(a,b).したがって,
ka+bk2 +ka−bk2 = 2(kak2+kbk2) (3) が成り立つ.(3)は高校の数学Aの「平面図形」で学習した(と思われる)中線定 理に他ならない.
AB2+AC2= 2(AM2+BM2)
A
B C
M
図 1: 中線定理
問題 3.1 v = 2a+b−3cとおくとv = (
4 3
) .
(1) kvk= 5.したがって,vと同じ向きの単位ベクトルは 1 5v=
( 4 5 3 5
)
.
(2) 逆向きだから,(1)のベクトルに(−1)倍して ( −45
−35 )
.
(3) 求めるベクトルをu= (
x y
)
とおく.vとuは直交するから0 = (v,u) = 4x+ 3y.また,uは長さが1であるからx2+y2 = 1.これら2式から,x=±35, y =
∓45 を得る(複号同順).したがって求めるベクトルは ( 3
−545
) ,
( −35
4 5
)
. 問題 3.2(1) (i) a,bが線形従属のとき,xa+yb=0を満たす,少なくとも一方 は0でないx, yが存在する.このとき,xa+yb+ 0·c=0が成り立つので,a,b,c も線形従属である.
(ii) a,bが線形独立のときを考える.a = (
a1 a2
) ,b =
( b1 b2
) ,c=
( c1 c2
) と おき,
xa+yb+zc=0 (x, y, z ∈R) とおく.この式は
a1x+b1y+c1z = 0, (4) a2x+b2y+c2z = 0 (5) と書き換えることができる.(4)式にa2をかけ,(5)式にa1をかけて引き算してx を消去すると
(b1a2−b2a1)y+ (c1a2−c2a1)z = 0
を得る.ここで,a,bは線形独立だから,問題1.4 の結果からb1a2 −b2a1 6= 0が 成り立つので,
y=−c1a2−c2a1
b1a2−b2a1z (6)
を得る.zを0でない適当な実数とすれば,(6), (4) からx, yが定まる.したがっ て,a,b,cは線形従属であることがわかる.
(2) n個(n ≥ 3)のベクトルから3個のベクトルa1,a2,a3 を選ぶと,(1)の結 果より,c1a1 +c2a2 +c3a3 = 0を満たすスカラーc1, c2, c3が存在する(ただし,
c1, c2, c3のうち少なくとも1つは0でない).このスカラーに対して,
c1a1+c2a2+c3a3 + 0·a4+. . .+ 0·an =0 が成り立つ.したがって,a1, . . . ,anは線形従属である.
¤ 複素数
問題 4.1 (1) zを−1の4乗根とする.つまり,zはz4 =−1を満たす複素数であ る.このとき,
0 =z4+ 1 =(z4+ 2z2+ 1)−2z2
=(z2+ 1)2−(√ 2z)2
=(z2+ 1 +√
2z)(z2+ 1−√ 2z).
したがって,−1の4乗根は ±√ 2±√
−1√ 2
2 である(ただし,複合任意).
(2) zを−1の6乗根とする.つまり,zはz6 =−1を満たす複素数である.この とき,
0 = z6+ 1 = (z2+ 1)(z4−z2+ 1)
= (z2+ 1){
(z2+ 1)2−3z2}
= (z2+ 1)(z2+ 1 +√
3z)(z2+ 1−√ 3z).
したがって,−1の6乗根は±√
−1,
√3±√
−1 2 ,−
√3±√
−1
2 .
(2)の別解:√
−1の6乗根をz =r(cosϕ+√
−1 sinθ)とおくと z6 =r6(cos 6θ+√
−1 sin 6θ), (7)
−1 = 1·(cosπ+√
−1 sinπ). (8)
今,z6 =−1だから,(7)と(8)の絶対値,偏角をそれぞれ比較すると r6 = 1 , 6θ =π+ 2nπ (nは整数)
を得る.したがって,√
−1の6乗根は絶対値が1,偏角が π 6,π
2,5π 6 ,7π
6 ,3π 2 ,11π の複素数である. 6
問題 4.2 (1) √
−1 = cosπ 2 +√
−1 sin π 2. (2) −5 = 5·(−1) = 5(
cosπ+√
−1 sinπ) . (3) √
3 + 3√
−1 = 2√ 3
( 1 2+√
−1
√3 2
)
= 2√ 3
( cosπ
3 +√
−1 sinπ 3
) 問題 4.3 (1) z =a+b√
−1とおくと z
1 +z2 = a+b√
−1 1 + (a2 −b2+ 2ab√
−1)
= a+b√
−1 (1 +a2 −b2) + 2ab√
−1· (1 +a2−b2)−2ab√
−1 (1 +a2−b2)−2ab√
−1
=a(1 +a2+b2) +√
−1(1−a2−b2)b (1 +a2−b2)2+ 4a2b2 .
したがって, z
1 +z2 が実数となるためには(1−a2−b2)b = 0とならなければなら ない.仮定より,b 6= 0だから1−a2 −b2 = 0.また,このとき z
1 +z2 の分母は 4(1−b2)となるので,b2 6= 1.したがって,求める条件は「1−a2 −b2 = 0かつ b 6= 0, ±1」.
(2) z4が実数になることとz4 −(z4) = 0は同値である.共役複素数の性質 (w1w2) =w1·w2 (w1, w2 ∈C) (9) より,
0 =z4−(z4) =z4−(z)4 = (z−z)(z+z)(z2+z2).
仮定より,z2+z2 = 2(a2−b2)6= 0.したがって,z4が実数になるのはz±z = 0, すなわち,「a = 0かつb6= 0」かまたは「b = 0かつa6= 0」のときである(つまり,
0でない実数かまたは純虚数のどちらかの場合).
問題 1. (9)を証明せよ.また,
(w1 w2
)
= (w1) (w2) を証明せよ.
問題 4.4 証明には偏角の性質
arg(z1z2) = arg(z1) + arg(z2) (10) を用いる(証明は教科書p.11 を参照).
(1) (10)より,arg(cz) = arg(c) + arg(z).c ≥ 0ならばarg(c) = 0であるから,
arg(cz) = arg(z).またc < 0ならば,arg(c) = πであるから,arg(cz) = arg(z) +π.
(2) zz =|z|2 >0であるから,0 = arg(zz) = arg(z) + arg(z). (3) z
w = 1
|w|2(zw), 1
|w|2 >0であるから,問題4.4(1), (2)を用いると arg
(z w
)
= arg(zw) = argz+ argw= argz−argw となる.
問題 4.5 arg(z) =φ,arg(w) = ψとおくと z =|z|(cosφ+√
−1 sinφ), w =|w|(cosψ+√
−1 sinψ) と書ける.このとき
zw+zw=|z| · |w|{(
cos(φ−ψ) +√
−1 sin(φ−ψ)) + (
cos(ψ−φ) +√
−1 sin(ψ−φ))}
=2|z| · |w|cos(φ−ψ).
したがって,zw+zw= 0とφ−ψ = π
2 は同値である.
別解その1:zw= (zw)であるから,
zw+zw= 0⇐⇒zw=k√
−1 (ただし,k ∈R)
⇐⇒arg(zw) =±π 2
(= arg(k√
−1))
⇐⇒argz−argw=±π 2. 別解その2:z =a1+√
−1a2,w=b1+√
−1b2とおき,z, w ∈Cをそれぞれ平 面ベクトルa =
( a1 a2
) ,b=
( b1 b2
)
と同一視すると
zw+zw=(a1−√
−1a2)(b1+√
−1b2) + (a1+√
−1a2)(b1−√
−1b2)
=2(a1b1 +a2b2)
=2(a,b).
したがって,zw+zw= 0が成り立つことと,a,bが直交する(つまりzとwの偏 角の差がπ/2になる)ことは同値である.
問題 4.6
(2 +√
−1)(3 +√
−1) = 6 + 5√
−1 + (−1)
= 5(1 +√
−1)
= 5 (
cosπ 4 +√
−1 sinπ 4
) であるから,arg(2 +√
−1) + arg(3 +√
−1) = π
4.ここで,θ1 = arg(2 +√
−1), θ2 = arg(3+√
−1)とおくと,tanθ1 = 1
2,tanθ2 = 1
3,すなわち,θ1 = tan−1 (1
2 )
, θ2 = tan−1
(1 3
)
.したがって,tan−1 (1
2 )
+ tan−1 (1
3 )
= π
4 を得る.
¤ n項数ベクトル 問題 4.7(1)
1 2 3
−2
4 5 6
+
7 8 9
= 0が成り立つので線形従属.
(2)
c1
1 2
−1
+c2
2 4 0
+c3
0 3
−2
=0 (11)
とおき、この式を満たすスカラーc1, c2, c3を求める.これは連立方程式
c1+ 2c2 = 0
2c1+ 4c2+ 3c3 = 0
−c1−2c3 = 0
の解であるが,この解はc1 =c2 =c3 = 0のみである.したがって,(11)を満たす スカラーはc1 =c2 =c3 = 0だけなので,
1 2
−1
,
2 4 0
,
0 3
−2
は線形独
立である.
問題 4.8(1)
c1
1 0 0 ... 0
+c2
1 1 0 ... 0
+· · ·+cn
1 1 1 ... 1
= 0
とおく.このとき,c1, . . . , cnは
c1+c2+· · ·+cn= 0 c2+· · ·+cn= 0
... cn= 0
を満たす.しかし,これは(c1, . . . , cn) = (0, . . . ,0)の場合だけであるから,線形独 立である.
(2) n≥3のとき,
x1 =
1 2 3 ... n
, . . . ,xk =
n(k−1) + 1 n(k−1) + 2 n(k−1) + 3
... kn
, . . . ,xn=
n(n−1) + 1 ... ... ... n2
とおくと,
x2−x1 =n
1
... 1
, x3 −x1 = 2n
1
... 1
であるから,x3−x1 = 2(x2 −x1).つまり,x1−2x2+x3 = 0が成り立つ.こ こで,
c1 = 1, c2 =−2, c3 = 1, c4 =· · ·=cn= 0 は
c1x1+· · ·+cnxn = 0
を満たすので,x1, . . . ,xnは線形従属である.n = 1,2のときは線形従属である (n = 1のときは明らか.n= 2のときは問題1.1(1)で証明した).
問題 4.9
0 =c1(a+ 2b) +c2(2a+ 4b+ 3c) +c3(−a−2c)
= (c1 + 2c2−c3)a+ (2c1+ 4c2)b+ (3c2−2c3)c とおく.a,b,cは線形独立なので,
c1+ 2c2−c3 = 0, 2c1+ 4c2 = 0, 3c2−2c3 = 0
が成り立つ.しかし,この連立方程式を満たす(c1, c2, c3)は(0,0,0)だけなので(こ れは連立方程式を解けばわかる),a+ 2b,2a+ 4b+ 3c,−a−2cは線形独立であ ることがわかる.
問題 4.10 (a+ 4b+ 7c)−2(2a+ 5b+ 8c) + (3a+ 6b+ 9c) = 0が成り立つので,
どんなベクトルa,b,cに対しても,a+ 4b+ 7c,2a+ 5b+ 8c,3a+ 6b+ 9cは線 形従属である.
問題 5.1(1) ベクトルa, b, cが線形独立となるための条件を求めるために xa+yb+zc=0 (x, y, z∈R) (12) とおき,これを満たすスカラーx, y, zを調べる.これは連立方程式
x+ 2y+ 3z = 0 (13)
2x+ky+ 3z = 0 (14)
3x−2y+z = 0 (15)
の解である.(13), (14)と(13), (15)からそれぞれxを消去すると
(k−4)y−3z = 0 (16)
y+z = 0 (17)
を得る.また,(16), (17)からzを消去すると
(k−1)y= 0 (18)
を得る.
ここで,k = 1のとき,y=l (l ∈R)とおくと(17)からz =−l,(13)からx=l を得る.これらは(12)を満たすので,この場合a,b,cは線形従属となる.
k 6= 1ならば,(18)からy= 0.(17)からz = 0,(13)からx= 0.したがって,
(12)を満たすスカラーはx = y =z = 0だけなので,この場合a,b,cは線形独立 となる.
したがって,解はk 6= 1.
(2) 上の議論から,線形従属となるのはk= 1のとき.
¤ 行列の演算・いろいろな行列 問題 6.1 B =
( a b c d
)
とおくと
AB = (
0 −1 1 0
) ( a b c d
)
=
( −c −d a b
) , BA =
( a b c d
) (
0 −1 1 0
)
= (
b −a d −c
) .
AとBが可換ならば,d=a, c=−b.したがって,B = (
a b
−b a )
(a, b∈R).
問題 6.2 X = (
x1 x2
x3 x4 )
, Y = (
y1 y2
y3 y4 )
とおく.
(1)
AX = (
3 1
−6 −2 ) (
x1 x2 x3 x4
)
= (
3x1+x3 3x2+x4
−6x1−2x3 −6x2−2x4 )
.
AX =Oより,x3 =−3x1, x4 =−3x2.したがって,X = (
x1 x2
−3x1 −3x2
)
(x1, x2 ∈ R).一方,
Y A= (
y1 y2 y3 y4
) (
3 1
−6 −2 )
= (
3y1−6x2 3x1−2x2 3x3−6x4 x3−2x4
)
であるから,Y A=Oならば,y1 = 2y2, y3 = 2y4.したがって,Y = (
2y2 y2 2y4 y4
)
(y2, y4 ∈ R).
(2)
AX = (
1 2 3 4
) (
x1 x2
x3 x4 )
= (
x1+ 2x3 x2 + 2x4
3x1+ 4x3 3x2+ 4x4 )
. AX =Oより,x1, x2, x3, x4は
x1+ 2x3 = 0, (19)
3x1+ 4x3 = 0, (20)
x2+ 2x4 = 0, (21)
3x2+ 4x4 = 0 (22)