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肝炎ウイルス感染状況と感染後の長期経過に関する研究

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厚生労働科学研究費補助金(肝炎等克服政策研究事業)

平成28-30年度 総合研究報告書

肝炎ウイルス感染状況と感染後の長期経過に関する研究

日本における HCV 新規感染の現状 -献血者と患者の実態-

研究分担者 氏名 佐竹正博 所属 日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所 研究要旨

1.20148月から20157月までの1年間の全国のべ献血者4,953,084人(実献血者2,986,175人)を 対象にHCVに関するデータを集計した。この間にHCV-NATが陽性と判定された献血者は合計375人、その うち陽転者は55人であった。

献血者集団においてはHCVの新規感染は年々減少している。種々のHCV撲滅対策が功を奏してHCV感染 者が多く見いだされ、陽性者が献血に訪れることが少なくなってきたと思われる。しかしながら依然として 少なくとも20万人がHCV感染を認識していないと推定される。新規感染では遺伝子型1bが少なく、2a, 2b が多く、ALT値が抗体キャリアより高いことがわかった。

2.医療機関で治療を受ける患者の中で、治療終了後にHCV抗体が陽転した例がしばしば報告される。何ら

かの医療手技が感染を起こした可能性がある。某医療機関の協力を得て、入院患者の入院時と退院後2~5 か月の検体を収集し、同一の方法でHCV抗体検査を全数行っている。これまで399例の検査を終え、16 の退院後陽性検体を見出したが、いずれも入院時も陽性であった。明らかな陽転例はまだ見つかっていない が、症例数がまだ少ないため結論を出すには至っていない。

A. 研究目的

このHCV研究は、献血者集団と、医療行為を受け た患者群で、HCVの新たな感染がどれくらい起きて いるかを調べるものである。

1) 献血者での感染状況

HCV感染者を早期に見いだし、診療に誘導する施 策が全国的に進められている。それを実行するとと もにその効果を判定・分析し、結果を新たな政策に 反映させなければならない。そのためには、適切な 集団におけるHCV感染の実態を詳細に解析する必要 がある。日本赤十字社血液センターは、日本の輸血 用血液のすべてを供給している組織である。そこで は、年間500万人近くの献血者から血液を得て、

HIV・HBV・HCV等に関するスクリーニング検査をし

ている。献血者集団は、その数とカバーする地域の 広さにおいて格好のデータを提供する。この研究で は初回献血者でのHCV感染状況と、頻回献血者での HCV抗体陽転の頻度について調査をし、過去ではな く現在の...

日本人集団での感染状況を推察する。

2) 医療行為によるHCV感染の可能性の探索 今日、輸血によりHCV感染を起こす機会は、輸血

された血液が、HCVスクリーニング検査で陽性とな る前のウイルス血症の時期(ウィンドウ期)にあっ た場合である。NATによる血液スクリーニング体制 下でのHCVのウィンドウ期は2~3日である。一般 人がHCV感染後この短いウィンドウ期に献血をする 確率は非常に低く、今日輸血用血液のHCV感染リス クはほとんどないと考えられている。

しかしながら、医療機関からの輸血HCV感染疑い 報告数は毎年30~40例と全く減っていない。原因と された血液の保管検体を高感度のID(個別)-NAT 調べてみても、HCV RNAが陽性であった例はここ7 年間ゼロである。また、疑われた献血者のその後の 献血でも抗体は陽転しておらずわずかのウィンドウ 期の可能性も完全に否定される例が半数を超える。

残りの半数においては、その後の献血がまだ得られ ていないが、ウィンドウ期であった可能性は理論上 非常に低い。

また感染したとされる患者の原疾患をみると、一 般的な輸血患者の原疾患の分布に比べて、血液疾患 等の割合が低く、骨折や泌尿器系等の外科系疾患の 割合が高い。またそれらの症例が特定の医療機関に

(2)

集中する傾向がある。報告を受けたどの例も入院時 は未感染であったことが確認されているので、医療 機関での医療行為の中で感染した可能性が否定でき ない。なお、これらの感染疑い例は、輸血を行われ ていた症例であり、そのために血液センターに問い 合わせがあったものであるが、輸血が施行されてい ない例でも同様の侵襲の手技が施されているわけで、

それらにおいても感染が起きているとすればさらに 大きな問題である。

この研究は、現在でも医療機関から報告される新 たなHCV感染が、何らかの観血的な医療手段によっ て起きていないかどうかを、医療機関での全数調査 によって明らかにしようとするものである。

B. 研究方法

1) 献血者での感染状況

20148月から20157月までの1年間の献血 者を対象とする。複数回献血者は、前回の献血結果 で何らかの感染症が陽性であれば通知がなされ、通 常再び献血に来ることはない。したがって、これら 複数回献血者が多くを占める献血者全体は、感染症 を持たない健康人がより選択された集団といえる。

一方、初回献血者は問診チェックによるある程度の スクリーニングがなされるものの、上記の偏りは少 なく、国民全体の感染状況に近い感染率を表すと考 えられる。

複数回献血者の陽転(抗体またはNAT)の頻度か ら、献血者における年間の新規感染数を推定するこ とができる。また、HCV抗体陽性者はいつ感染した のか不明であるのに対して、ID-NAT陽性かつHCV 抗体陰性の献血者は、直近の2,3か月の間に感染を 受けた新規感染者と見なすことができる。

最後に、新規感染のHCVの遺伝子型を調べること によって、現在の日本での感染HCV遺伝子型の状況 を類推することができる。以上の研究で、NAT陽性 者のみを集計した場合には、抗体のみ陽性者、すな わちHCV感染後に治癒したと思われる集団は含まな いことになる。

2) 医療行為によるHCV感染の可能性の探索 全数調査は、患者の入院治療前後のHCV抗体を非 選択的に検査することによって、医療と関連した HCV感染がどのような規模で起きているか、その実

めて多くの症例を集めなければならないため、この 調査研究は、そのような大規模な調査が必要となる かどうかを判断するためのpreliminary studyと位置 付けている。

まず研究に協力してくれる医療機関を探し出す。

そしてできるだけ観血的な治療や検査を行う診療 科を中心に医師の協力を得る。

主治医が患者からインフォームドコンセント(資

1)を得る。

入院患者のベースライン検体は、入院日の2週間 前から入院後1週間までの間で採取されたものと する。

退院後検体は、退院後2カ月以上経過し、5か月 までの間に採取されたものとする。退院後期間を 置くのは、抗体が検出感度に達するまでの期間を 考慮したものである。

• HCV抗体検査は、検査法の統一のためすべて日赤 中央血液研究所でAbbott Architectを用いて行う。

実際には、退院後検体について最初に抗体を検査 し、陽性であった場合にベースライン検体を検査 し、費用と仕事量の節減を図る。

両者のHCV抗体のデータを比較し、新規感染を把 握する。

• 4,000人の患者の検査を目標とする。

入院時検査でHCV感染が判明した場合は、治療方 針について専門医と協議する。

入院後の新たなHCV感染であることが判明した場 合には、その原因を調査し、輸血を含めた今回の 医療に関連したものであれば、生物由来製品感染 等被害救済制度または医薬品等副作用被害救済制 度等に基づいて治療を開始する。

(倫理面への配慮)

献血者の個人情報については、その年齢、性別、

居住地方名のみを扱い、倫理上問題となることはな い。

医療機関から日赤中央研究所へ送られる患者血液 検体は、検体番号のみが記載され、日赤側では個人 の同定はできない。ただし、患者背景として、性別、

年代、疾患の大分類についての情報を得る。医療機 関側は、感染が判明した場合に本人への告知と必要 な治療等のために個人と検体番号を連結する表を保

(3)

C. 研究結果

1) 献血者での感染状況

研究対象とした1年間に、495万人の献血があっ た。男女比は7.1:2.9であった。実献血者数は299 人、初回献血者は約365千人であった。HCV RNA が陽性と判定された献血者は合計375人、男女比は

7.8:2.2で、全献血者での比と比べるとわずかに男

性に多かった。このうち初回献血者は274人、初回 献血者中のHCV陽性率は0.075%であった。図1 見るように陽性率には大きな男女差があり、60歳代 で見ると男性は0.9%であるのに対し、女性は0.2%

である。また男女とも高齢であるほど陽性率は高く、

特に男性では50歳以上になると陽性率が跳ね上が る。女性では40代以降陽性率が高止まりになる傾向 がある。

献血の受付では、まず問診において肝炎ウイルス に感染するような機会がなかったかどうかが尋ねら れる。虚偽の回答が有りうることは別として、この 問診を通過して血液検査でRNA陽性とわかった人た ちは、いわば自分のHCV感染を知らないグループに 属する。年代別RNA陽性率を2014年の年代別人口 にかけ合わせると、HCV感染を知らないで普通の生 活をしている人口が、少なくとも献血可能年齢層で は男性166千人、女性47千人、と計算された。

(図2)。

2014年の初回献血者での年代別陽性率を2010 のそれと比較した(図3)。10年区切りのどの年代に おいても2014年の陽性率は2010年のそれより低く なっているが、10年前の陽性率から予想される1 代(10年)あとの陽性率よりも低い。しかしながら 実際には4年しか経過していない。この陽性率の低 下は出生コホート効果のみで説明することは不可能 で、他の要因があることを示している。

初回献血者の陽性率を地域別に見たものが図4 ある。北海道・近畿・九州・沖縄での陽性率が高い ことがわかる。

先行研究班の報告において、過去から見た前方視 コホートスタディを行い、複数回献血者での新規 HCV感染率を計算した。その結果は、男性は619 人年中46人がHCV陽転し、女性は291万人年中20 人が陽転し、ともに10万人年あたり0.7の新規HCV 感染率であった。この数値を2014年の15~69歳の 日本の全人口に乗じて、HCV感染の期待値を計算す

ると、この年齢人口では1年に614人が新たにHCV に感染するという結果が得られた。

この1年間の調査期間中にHCVについてマーカ ーが陽転(抗体またはNAT)した献血者は55人であ った(男性43人、女性12人)。年代では、30歳代 26人と最も多く、次いで40代が14人であった。

多く認められた都道府県は、大阪11人、北海道7人、

兵庫6人、千葉、東京、神奈川、広島、沖縄がそれ ぞれ3人であった(表1)。HCVの遺伝子型は、2b 22人(40%)、2a19人(34.5%)、1b12

(22%)であった(表2)。遺伝子型の分布を、初回 献血者、持続陽性者(RNA陽性を告知したにもかか わらず献血会場に来所する人)、陽転者別にみると

(図5)、その順に1bが多く、2bが少なくなってい

る。すなわち最近感染したと思われる集団ほど1b 割合が少なく、2bの割合が多くなっている。また、

これらの人々の献血時のALT値を見ると(表3)、最 も最近感染したと思われる陽転者の集団でALT値が 高く、また陽転者集団では1b感染の集団でALT値が 高いことがわかる。

HCV-NAT陽性/HCV抗体陰性のドナーは、感染

が起きてから2,3か月までの期間にあると考えられ るので、その数は長期経過したキャリアではなく、

現在起きている新規感染の状況を反映するものであ る。その数は2000年のNAT開始時から順調に下降 しており、ここ5年間は毎年4人以下である(図6)。

また、これら新規感染のHCVの遺伝子型を見ると、

Ib27%、2a44%、2b28%(図7)と、医療 機関で加療を受けている慢性C型肝炎患者での比率

(1b70%、2a20%、2b10%)と大きく異 なっている。

2) 医療行為によるHCV感染の可能性の探索

陽転について

研究の手段が、医療機関での医療過誤を見つけ出 す性格を帯びているため、なかなか協力医療機関を 得ることができなかったが、平成30年に入って、某 大規模病院の全面的な協力を得ることができた。平 305月より患者検体の収集を開始し、平成31 121日の時点で、ベースライン検体1008本、

退院後検体(退院後検体)482本が収集された。こ のうちベースラインと退院後検体のペアがそろって いるものは399組である。

退院後検体482本のうち、462本が陰性、20本が

(4)

陽性であった。複数の退院後検体が採取された患者 4人いたので、退院後陽性者は16人となる。これ 16人のベースライン検体を検査すると15本が陽 性で、治療開始時にすでにHCVに感染していたこと がわかった。残りの1人が入院時陰性であった。こ 1例は入院後に陽転した可能性がある。ベースラ イン検体をArchitectで確認する必要があったが、こ の患者に限りそれが保存されていなかった。当該病 院ではFujirebio Lumipulse Presto IIHCV検査を行 っており、0.6(陰性)であった。中央研究所で同患 者の退院後検体を、同じ試薬を用いるLumipulse

G1200で検査したところ同様に0.5(陰性)であった。

またこの検体をコスモバイオ社のline immunoassay 法(INNO-LIA)で検査したところ陽性であった。た だしバンドの濃さから抗体価は低いものとも思われ る。ArchitectにてもS/CO4.81と弱陽性であった。

すなわち、この患者は入院時からHCV抗体は陽性で あるが極めて低い力価であったため、感度の高い Architectline immunoassayでは弱陽性であったが、

Lumipulseでは陰性になったものと考えられる。なお

抗体陽性の退院後検体は高感度NATではすべてHCV RNAは陰性であった。総じて、これまでの399例の 検討では、事後に陽転した事例は把握されていない。

入院患者のHCV感染状況について

この調査にエントリーした患者数は入院時検体取 得数と同じ1008人である。その内訳は、男性518 人(51%)、女性490人(49%)、年齢は、60,70 歳代が約4分の1ずつ、40,50歳代が8分の1ずつ であった(図8)。診療科別では、消化器外科、整形 外科、呼吸器外科、乳腺外科からのエントリーが多 い(図9)。

退院後検体陽性者16人の年齢は40歳から86 まで分布し、平均年齢は72.4歳、中央値は76歳と、

15人が60歳以上の高齢であった。

また、退院後検体でのHCV抗体陽性率は4.0%

(16/399)であったが、日本での、何らかの入院治 療を受けるような患者の一般的なHCV陽性率を示す ものだろうと思われる。

D. 考察

日本での献血可能年齢は16歳から69歳までであ る。初回献血者36万人余りの集団でのHCV RNA

陽性率は0.075%であり、これは日本全国の健康人集

団の陽性率に近いものと考えられる。献血には、本 人が健康であると自覚している人が訪れ、さらに問 診において現在の健康状態や既往歴を詳しくチェッ クされるため、実際に献血のできた人は、非常に健 康である人がほとんどである。このため、ほぼどの ような疾患についても、献血者集団での罹患率や陽 性率は一般人全体のそれよりも低く出るのが通常で ある。上記の0.075%というのも起こりうる最低の数 値と見なすべきである。

今回得られたHCV RNAの男女別・年齢別陽性率は これまでの調査結果とほぼ同じパターンを示した。男 性での高年齢ほど顕著に高くなる陽性率は、性感染症

(HBVなど)のそれとは全く別のパターンであり、

出生コホートの影響によるものである。女性での陽性 率は、男性よりずっと少ないが、中高年で特異的に高 いパターンを取っている。これが何によるものかはわ からない。地方別の陽性率の差はこれまで言われて きた事実と符合するが、今日においても過去の高い 陽性率を引きずっているようである。

自分がHCVに感染していることを知らない人口が、

献血可能年齢(16~69歳)に男女合わせて少なくと 20万人いることが示された。また、2010年の陽 性率と比べると、2014年の陽性率はコホートの追跡 から予想されるよりも低い値を示していた。日常生活 においてHCV感染のリスクを自覚することは、一般 の人々には困難と思われるので、「自分の健康に心当 たりのある人は献血に来ないでほしい」という血液セ ンターのキャンペーンが奏功しているとは考えにく い。むしろこれらは、国が進めるHCV感染者の掘り 起こしと治療への早期誘導などの施策により、検診な どでHCV感染が判明して献血には来ない人が増えた ため、初回献血者での比率が下がったものと思われる。

過去から見た前方視コホートスタディの結果を適 用すると、献血可能年齢の人口で、年間600人あま りが新たにHCVに感染していると推定された。実際、

今回の献血者の調査では1年間に55人が新たに感染 しており、献血者と総人口の比から見ると、推定に近 い値であった。

(5)

HCV-NATが導入された2000年以降に、HCV-NAT 陽性/HCV抗体陰性のドナーの数、すなわち感染し 2,3か月以内のドナーの数は、漸減してきている。

このことは、輸血用血液の安全性に関しては、NAT ウィンドウ期の献血も少なくなっていることを推定 させ、歓迎すべき状況である。実際に一般人の中で HCVに感染するリスクのある施術(例えば民間で 行われる観血的な治療・美容手技など)が衛生的に なってきたことが考えられる。

初回献血で陽性とわかった献血者や、以前より HCVが陽性であることが告知されている持続陽性者 に比べて、陽転者での感染の時期は献血時に近いも のである。すなわち最近感染を受けた人々である。

それらの集団でのHCVの遺伝子型を調べると、前2 者よりも1bの頻度が低く、2aまたは2bの頻度が高 い。2,3か月前に感染した集団においても1b4 分の1ほどである。これらは、医療機関で観察され HCV肝炎患者のHCV遺伝子型は1b70%以上を 占める事実と合わない。その説明としては次の二つ が挙げられる。1)近年日本で感染を起こすHCV 2a2bにシフトしている。2)以前より2a2b 1bと同様に感染を起こしていたが、1bの病勢の強さ から、治療を受けている患者群では1bが目立つこと となった。流布するHCVの遺伝子型が変化する特別 の要因は考えられないので、2)が事実であると思わ れる。

新たな陽転者は、男性が43人と女性(12人)の 3.6倍である。これは献血者の男女比(2.4:1)と比 べても現行の感染がやはり男性が多いことがわかる。

陽転者は30代と40代に多く、HBVなどの性感染症 よりも高年齢によっている。

思いがけないことに、陽転の時期が不明であるに もかかわらず、新たな陽転者のALT値はキャリアよ りも高かった。C型肝炎は、感染後かなり長期にわ たって肝障害が続き、時間をかけてALT60U/L 後のキャリアに落ち着いてくるものと思われる。し かも遺伝子型1bは初感染の時から遺伝子型2a、2b に比べてALT値が高い傾向があることが分かった。

医療行為によるHCV感染(医原性感染)の可能性 を探る調査は、参加医療機関が1カ所のみであった ため十分なサンプル量が得られなかった。399例の 検討では、医原性HCV感染と思われる例は捕まえら れていない。目標は4000例であり、まだ結論が出せ

る状況ではなく、研究期間が終了してからも、内部 で引き続き調査を継続していく予定である。

E. 結論

献血者集団においては

• HCVの新規感染は年々減少している。

種々のHCV撲滅対策が功を奏してHCV感染 者が多く見いだされ、献血に訪れることがな くなってきたと思われる。

少なくとも20万人がHCV感染を認識してい ない。

新規感染では遺伝子型1bが少なく、2a, 2b が多い。

F. 健康危険情報 無し。

G. 研究発表 1. 論文発表 無し。

2. 学会発表

52回日本肝臓学会総会 2016520 千葉市

口演「輸血によるHCV感染と院内HCV感染」

H. 知的財産権の出願・登録状況 無し。

(6)

1 初回献血者のHCV-RNA陽性率

2 HCV感染を知らない人口(推定)

3 初回献血者のHCV-RNA陽性率 [20102014の比較]

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

16-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69

男性

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

16-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69

女性

0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000

15- 20- 30- 40- 50- 60-

男性 女性

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9

16-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 2010

2014

(7)

4 地域別初回献血者HCV RNA陽性率 (%)

5 献血者カテゴリー別のHCV遺伝子型

初回献血者(274)

持続陽性者(46)

陽転者(55)

6 HCV-RNA陽性/HCVAb陰性の献血者数の推移 0.000

0.020 0.040 0.060 0.080 0.100 0.120 0.140

0 5 10 15 20

2000 2010 2016

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1b 2a 2b

(8)

7 HCV-RNA陽性/HCVAb陰性ドナーのHCVの遺伝子型

8 入院時エントリー患者の年齢分布

9 エントリー患者の診療科

1a, 1%

27%1b,

44%2a, 28%2b,

25 42 62

126 130 241

281

87

14 0

50 100 150 200 250 300

10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代 90代

人数(人)

305

184 175 152

94 64

30 4

0 50 100 150 200 250 300 350

人数(人)

(9)

1 陽転者が多く認められた都道府県

Males (43) Females (12)

大阪 11 9 2

北海道 7 7 0

兵庫 6 5 1

千葉 3 2 1

東京 3 1 2

神奈川 3 3 0

広島 3 3 0

沖縄 3 2 1

2 陽転者のHCV遺伝子型

年代 1a 1b 2a 2b N.T Total

16-19 0 0 0 0 0 0

20-29 0 0 3 2 1 6

30-39 0 5 8 13 0 26 (47 %)

40-49 1 4 6 3 0 14 (25 %)

50-59 0 3 2 3 0 8

60-69 0 0 0 1 0 1

1 12 (22 %) 19 (35 %) 22 (40 %) 1 55

3 HCV陽性者の平均ALT値(U/L)

1b 2a 2b Total

初回献血者 72.5 66.5 66.0 69.1 持続陽性者 64.2 50.1 43.1 52.3

陽転者 193.2 104.8 122.6 129.7

(10)

C 型肝炎ウイルス感染の実態調査研究へのご協力のお願い(案)

□1. 研究の目的について

C 型肝炎ウイルス(HCV)に感染し、適切な治療を受けずに放置すると、慢性 C 型肝炎の時期を経て、数十 年後に肝硬変や肝不全、肝がんなどに至ることがあります。HCV に感染する経路としてはこれまで、HCV 感 染者から採血された血液の輸血、感染者の血液から作られた血漿製剤の投与、HCV に汚染された注射器や注 射液の使用、消毒の不完全な医療器具の再使用(使いまわし)、HCV に汚染された器具を用いた入れ墨や鍼治 療などが知られていました。しかしこれらのいずれも、HCV の検査法の改善や衛生的な手順の導入などによ って安全性は格段に高まり、現在の日本では一般集団における HCV の新規の感染はごくわずかになっていま す。しかし、依然として日本各地から次のような報告がされています。輸血後に HCV 抗体が検出され輸血に よる感染が疑われたが、輸血された血液に HCV が全く含まれていなかった例、また、極く少数ですが、輸血 をしていないにもかかわらず、手術などの後に HCV 感染が疑われた例などです。この報告例の感染経路はい ずれも解明されておりません。また、HCV 抗体検査の疑陽性反応によって感染例と疑われた報告の可能性も あると考えられます。国立感染症研究所のサーベイランス報告では、急性 C 型肝炎の感染経路の約 6 割は原 因不明とされており、総じて、現時点では医療機関から報告される HCV 感染の実情や原因は不明です。

そこで、上記報告例の HCV 感染の現状とその原因を検討し、適切な HCV 検査の時期や手順を構築する目的 で調査研究を計画しました。この調査研究は、入院患者さんの入院時と退院後に行う通常の検査に加えて HCV 抗体の検査を行い、新たな HCV 感染の有無とその頻度を調べ、対策を講じるための基礎資料とするものです。

この研究計画に賛同いただいた施設を対象とし、平成 29、30 年度に輸血や検査・治療を受けた入院患者さん を対象としています。

□2. 研究方法、研究期間について

研究期間は平成 29 年度途中から平成 30 年度末までとします。

まず、入院時の一般採血の際に、今回の調査のために入院時一般検査の残りの血液か、または 2~3mL の血 液を追加でいただき、それを保管します。次に、退院後 3 か月を過ぎた頃に外来を受診される場合は、同様に 追加で採血をします。外来受診の日時は、退院時にお伝えします。

入院前後の血液を用いて HCV 抗体を検査します。HCV 抗体が入院時に陰性で退院 3 ヶ月後に陽性と判定さ れた場合には、その間に HCV 抗体が上昇する何らかの原因(感染など)があった可能性があります。

退院 3 ヶ月後に HCV 抗体が陽性と判定され、かつ HCV に感染していることが分かった場合は、通常の治療 が行われます。なお、何らかの理由で検査結果の再確認が必要となった場合には、再採血をお願いすることが あります。

あなたに関する情報のうち利用させていただくのは、性別、年齢、疾患名、受けられた主な検査・治療法であ り、あなたの名前や生年月日、住所など個人を特定できる情報を知ることは一切ありません。

□3. 検査項目について

あなたの血液を用いて HCV に対する抗体を検査します。陽性であれば HCV に感染している可能性があり ますので、ウイルス量やウイルスの型、また肝機能の検査をする場合があります。これらの検査は、一般の診

資料

1

(11)

自身の遺伝子を解析することは一切ありません。検査後に残った血液試料はこの研究の終了時までに廃棄され ます。

□4. 検査で陽性となった場合について

入院時に HCV 抗体が陽性であることが分かった場合は、入院以前にあなたが HCV に感染していた可能性が 高いので、主治医の先生にご相談いただき、詳しい検査や必要な治療を受けるようにしてください。

入院時に HCV 抗体が陰性で、退院後の検査で HCV 抗体が陽性となった場合にはその原因を調査し、今回の 医療に関連したものであれば医薬品等副作用被害救済制度等に基づいて治療を開始します。現在、C 型肝炎は、

効果的な抗ウイルス薬投与により 90%以上の方々が治癒しています。

□5. 個人情報の取扱いについて

提供していただいた血液には新たに検体番号を付与します。それには氏名、生年月日、住所などの、個人を 特定できる情報は含まれません。どの患者さんがどの検体番号に当てはまるかを記載した対応表は、当該医療 機関の主治医が厳重に保管します。この研究には、あなたが入院した医療機関のほかに広島大学と日本赤十字 社が参加しますが、これら二施設は、この検体番号のみが付いた血液検体を用いて検査を行います。これら二 施設の研究者は、採血された患者さんの性別、年齢、疾患名、受けられた主な検査・治療法、HCV 抗体検査 の結果について情報を得ますが、それらがどの患者さんのデータなのか知ることは決してありません。これら の情報は研究終了後 5 年間保管されたのちに廃棄されます。医療機関の主治医は、診療の必要上、患者さんの 抗体検査の結果を知る必要があります。

□6. 提供者にもたらされる利益および不利益について

HCV 抗体の検査を今まで受けたことのない人は、自身の HCV 感染の有無を知ることができます。HCV 感染 が判明した場合には、早期に診断・治療を受けることができる利点があります。この研究の成果は、最終的に 国民全体の HCV 感染の予防対策の立案に貢献するものと期待されます。

今回実施する採血は、医療機関で行われる一般的な検査用採血と同じですので、採血に伴う危険性はほとん どなく、また採血量も数 mL と極めてわずかです。

□7. 研究成果の開示と公表について

解析した結果については、希望される方にお知らせすることができます。また検査や結果についてご質問があ れば、かかりつけの医療機関の外来担当医師が説明いたします。

あなたの協力によって得られた研究成果は、国への報告、学会発表や学術雑誌等で公に発表されることがあり ますが、個人が特定される形では公表しませんので、あなたのプライバシーを侵害する恐れはありません。

□8. 費用負担と謝金について

この研究に必要な費用をあなたが負担することはありません。しかし、退院 3 ヶ月後、今回の調査研究の検 査のためだけに来院するという場合には、外来診療費と受診のための交通費などの支給はないことをご了承く ださい。

(12)

□9. 研究協力の決定と協力撤回の自由について

この説明文書をよくお読みになり、疑問の点は担当医師に何でもお聞きください。十分に内容を理解したう えで、あなたの自由意思に基づいて、研究に協力するかどうかを決めてください。この研究に協力しなかった ことによりあなたが不利益を受けることは一切ありません。

また、一旦同意した場合であっても、いつでも同意を取り消すことができます。取り消すことによりあなた が不利益を受けることは一切ありません。ただし、検査データは通常の診療で必要とされるデータですので、

診療録(カルテ)から削除することはできません。また、研究結果が報告や論文などで公表されたのちに同意 取り消しのお申し出を受けた場合には、あなたのデータの削除にお応えすることはできません。

□10.研究機関、研究責任者、問合せ連絡先について

この研究は、厚生労働科学研究国庫補助を受けた、肝炎等克服政策研究事業「肝炎ウイルス感染状況と感染 後の長期経過に関する研究」の一環として行われるもので、次の三者がそれぞれの機関の許可を得て共同研究 として遂行しております。

・日本赤十字社中央血液研究所 所長 佐竹正博 (研究責任者)

・広島大学大学院医歯薬保健学研究科 疫学・疾病制御学 教授 田中純子(研究統括者)

・当該医療機関〇〇

本研究に関するお問い合わせ

日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所 所長 佐竹正博 〒135-8521 東京都江東区辰巳 2-1-67

電話番号:03-5534-7500 FAX 番号:03-5534-7516

図 1    初回献血者の HCV-RNA 陽性率  図 2  HCV 感染を知らない人口(推定)  図 3  初回献血者の HCV-RNA 陽性率    [2010 と 2014 の比較] 0.00.20.40.60.81.016-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69男性0.00.20.40.60.81.0 16-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69女性0100002000030000400005000060000700008000015-20-30
図 4    地域別初回献血者 HCV RNA 陽性率  (%)  図 5  献血者カテゴリー別の HCV 遺伝子型  初回献血者(274)  持続陽性者(46)  陽転者(55)                                    図 6  HCV-RNA 陽性/HCVAb 陰性の献血者数の推移 0.0000.0200.0400.0600.0800.1000.1200.140 05101520 2000                       2010
図 7  HCV-RNA 陽性/HCVAb 陰性ドナーの HCV の遺伝子型  図 8  入院時エントリー患者の年齢分布  図 9  エントリー患者の診療科 1a, 1%27%1b, 44%2a, 28%2b, 254262 126 130 241 281 87 14050100150200250300 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代 90代人数(人) 305 184 175 152 94 64 30 4 050100150200250300350人数(人)
表 1    陽転者が多く認められた都道府県  Males (43)  Females (12)  大阪  11  9  2  北海道  7  7  0  兵庫  6  5  1  千葉  3  2  1  東京  3  1  2  神奈川  3  3  0  広島  3  3  0  沖縄  3  2  1  表 2    陽転者の HCV 遺伝子型  年代  1a  1b  2a  2b  N.T  Total  16-19  0  0  0  0  0  0  20-29  0  0  3  2  1

参照

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