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一次的基底と代数的基底について

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Academic year: 2021

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(1)

一次的基底と代数的基底について

中 田

道 孝

 ベクトル空間の一次的基底や,体の超越的拡大の代数的基 底については,基底の集合としての濃度が有限の場合はよく 知られています。(例えば浅野啓三「行列と行列式」共立基 礎数学講座,正田建次郎「代数学提要」共立出版,B・L・

van der Waerden「Algebraj参照のこと)

 S七eini七zはこれ等の理論を基底の濃度が無限の場合に拡張 したが,このことは余り多くの人には知られていないと思い ますので,簡単に紹介します。

 [1] ベクトル空間の一次的基底

 この節ではGを斜体△上のベクトル空間とする。

 よってGは加群で,かつ,△∈廿αG∈廿▽に対してαvが 定義され,

 1 avEG

 2.α(u+v)コ伽+αv

 3. ( u+19)u=: fuu+3u  4. ((uB)u==a(3u)

 5 1 u==u

 Gの元Vと,Gの部分集合Uに対し, Uの適当な有

限個の元u、,……,u、が存在して,βキ0で  Bv+Biui+ +Bnun=:O

という一次関係が成り立つとき,vはuに一次従属である という。このことは

 v==alul十 十anun

と表わされることと同値である。

 定理1.U∋Uaに対して, uはUに一次従属である。

 定理2.vが{u}uUに一次従属で,Uには一次従属で ないならば,Uは{V}UUに一次従属である。

 証明Vは{U}UUに一次従属だから, Uの適当な有限個 の元u・,……,u、が存在して,βキ0で

 βv+βユu1+一。・・… +βnUn・+βノu==0

 ここでβ =oならばvはUに一次従属となって矛盾。

よってβノキ0。

 これはuが{v}UUに一次従属なことを示す。

 定理3.wがVに一次従属で, V∋廿▽がUに一次従

属ならばwはUに一次従属である。

 証明wはV}C一一次従属だから,Vの適当な有限個の元

V1,…,▽mをとれば  W=配IV1十……+αmVm

 各v至はUに一次従属だから,Uの適当な有限個の元

u1,……, Ul、をとれば

 Vi=β孟1uユ+・・・… +βfllu1、(i=1,……∫皿)

   のユ      む       ねミ       れユ

 W=Σα二(Σ BijUj)=ΣΣα主βij U」=Σ(Σαiβi」)Uj

   i=1  」=1      i=1j=1       j=1 i=1

 これよりwはuに一次従属になる。

 定理4.wがVに一次従属ならばV⊆Uに対し, wはU

に一一次従属になる。

 証明V∋Uvに対し,▽∈Uだから定理1によりvはU

に一次従属となる。よって定理3よりwはUlc一一.次従属

となる。

 定義Uのどの元をとっても,それが残りの元に一次従属 でないとき,Uは一次独立であるという。これはUの任

意の有限個の元Ul,……, Ul,に対し

 a・IUi 十・……偽Uユ、=0

ならばev1==……= ev1、 ・  Oになるという意味である。

 定理5Uが一次独立で{u}UUが一 i次独立でなけれ ばuはUに一次従属である.

 証明H {U}UUは一次独立でないから,

 {u}UUの中に適当な元が存在して,残りの元に一・次従

属になる。

 その適当な元がuならば証明は終り。

 その適当な元がuとは別なvであるとすれば,

 vは({U}UU)一{V}={U}U(U一{V})に一次従属 である。

 Vは勿論Uが一次独立なことによりU一{V}には・一 次従属でない。よって定理2によりuは{v}u(U一{v})

=Uに一次従属である。

 定理6Uの適当な一次独立な部分集合をとれば, Uの全 ての元がこれに一次従属になるように出来る。

 証明U∋uキ0に対し{u}は一次独立になる。

51

(2)

津山高専紀要(第1巻 第2号)

 そこでUの一次独立な部分集合の全体をΣとすれば,

Σは集合の包含関係のもとに順序集合となる。

 Σの任意の全順序部分集合Trをとり,.s・= UPとおく。

       PE ll

 S.が一次独立でなければ,Sの中に適当な元vが存在し て,vは残りの元に一次従属となる。

 よってVでないSの有限個の元V1,……,V.が存在して,

αキOで

 av +  divi  + evnvn == O

 v∈ヨP∈T,Vi∈ヨPi∈T(i二1,……, n)

 Tの全順序性よりMax(P, P1,……,:P。)==・P。とおけば,

v, vi, ・・… , vnET[£

 これはP。が一一・L次独立なることに反する。

 よってSは一次独立となりS∈Σ  SはTのΣにおける上限に外ならない。

 これよりΣは帰納的順序集合となり,Zorn .の補題によ り極大元S。を.もつ。

 U∋廿uに対し,u∈S。ならば定理1よりuはS。に一次

従属である。

 UξS。ならば{U}US。はもはや一次独立でないから定理 5よりuはS。に一次従属である。

 S。は定理の性質を満す集合である。

 定義,2つの部分集合U,Vは, Uの各元がVに, Vの 各元がUに一一次従属なとき,同値であるという。

 同値という性質は定義から対称的,定理1か日反射的,定 理3から推移的である。

 1つの元wが同値な部分集合の一方に一次従属ならば,

定理3よりwは他方にも一次従属であ多。

 定理6より,すべての部分集合は適当な一次独立な部分集 合に同値になる。

 定理7Vは一次独立で, Vの各元はUに一次従属と する。Uの適当な部分集合U。をとると, U。一V で, U の1=[コでU。をVで入れかえてできた新しい集合とUを 同値にできる。従って特にV〈Uである。(但しUはU

の集合としての濃度を表わす。)

 証明V⊇{v}に対し,v∈{v}はUに一次従属だか

ら,Uの適当な有限個の元Ul,……, u、に対し,βキOで

 3v+evlUl rF evnUn=O

 vキ0だからα1,……,α1、の全ては0でないから,eViギO とすればU1はUの中でUlをVで入れかえた集合に一次

従属となる。

 よってUの中でU1をVで入れかえた集合はUに同

値になり{Ul } ・ {v}=1である。

 よって{V}に対して定理は成立っ。

 そこで定理が成立つVの部分集合Sの全体を考える。

Sに対してUの部分集合丁が存在して,Uの中でTを

Sで入れかえた集合がUと同値に出来て,S=T,

 そこでS=TとなるSからTの上への一対一一一・対応をψ,

として@,S,T)なる組の全体Σを考える。

 (op, S, T),(ψア, S7, Tノ)∈Σに対して, S⊆Sノ, T⊆Ttでかつ,

S∋Uuに対してψ(u)=qノ(u)のとき,(q, S, T)≦(qノ, S,, Tノ)

として順序を定義すれば,Σは順序集合となる。

 Σの任意の全順序部分集合Tに対して,

 S。=US,T。一UTとおく。

  Cq.S,T)e  {ip,s,T)EJ

 T。∋廿uに対し,ヨ(q,S,T)∈T,u∈T

よってuはUの中でTをSで入れかえた集合がUに

同値になる過程でSの元,従ってS。の元に入れかえられ ている。だからUの中でT6をS。で入れかえた集合はU

に同値になる。

 S。∋Uvに対し,ヨ@, S, T)∈T, v∈S

 qo(v) == op (v) EIT[To

と定義すればq。はs8からT。の中への対応となる。

 この時別の(q ,S , Tt)∈Tに対し, v∈Sfとすれば, Tの

全順序性から,(q,S, T)〈(opノ, Sノ, Tつとすれば,

q(u)=op (u)

 よってq。は(q, S, T)の選び方に関係せず,一・意的であ

る。

 q。がS。からT。の上への一対一対応であること.も,容 易に確かめられ,S。=T。 ∴@。,S。,T。)∈Σ

 (q。,S。,T。)はTのΣにおける上限となる。

 Σの任意の全順序部分集合がΣにおいて上限をもつから,

Σは帰納的順序集合となり,Zornの補題により,極大元

(OP*, S*, U。)をもつ。

 S*⊆VだがS*⊂Vと仮定すれば,ヨves*,V

 VはUに一次従属だから,これに同値なUの中でU。

をS*で入れかえた集合に一次従属となる。

 よってe牛。として

 3v+tgivi+ +3nvn+eviui+ +evmieSm=O  vE S*, uj(IIIU−Uo

 (一β)V+(一β1)Vユ+・・・… +(一βn)Vn == evlUI+・・・… α1nUln

 Vは一次独立だから上の等式は左辺が0でなく,従って右 辺も0でない。

 よってα1キ0とすれば,UlはUの中で{Ul}uU。を

{v}Us*で入れかえた集合に一次従属になる。

 従って,Uの中でU。をS*で入れかえた集合は, Uの

一52一

(3)

申田道孝 一次的基底と代数的基底について

中で{U、}UU。を{V}US*で入れかえた集合に同値になる。

 よってUの中で{U1}UU。を{V}US*で入れかえた集

・合は U に同値になる。

 q*(v)=u1とψ* を拡張すれば

 ( go ¥  , S*, U.) 〈 (gp*, {v} U S*, {ui} U Uo) E Z

 これは(q*,S*,U。)が極大元であることに反する。よっ

てS*=VとなりUの中でU。をVで入れかえた集合が

Uに同値になり,U。==V

 定理8一次独立な二つの集合UとVが同値ならば,それ

らの集合の濃度は等しい。

 証明,定理7からU≦:VかつU≧Vだから

 Gの部分集合Mはそれの適当な一次独立部分集合U

に同値である。UをMの(一次的)基底という。

 定理8より,Mのどんな基底も,濃度が一定である。こ の濃度を皿の次元と呼ぶ。

 定理9:M⊇NならばNの次元はMの次元を越えない。

 証明M,Nの基底をそれぞれU, Vとすれば, Vは一 次独立でVの各元はMの元だから,Uに一次従属となり,

定理6よりV≦U

 〔豆〕体の超越的拡大の代数的基底

 この節では9を体kの超越的拡大体とする。

 ρの元vと9の部分集合uに対し,uの適当な有限

個の元Ul,……, UT、が存在して,

 Vが体k(Uユ,……,U。)で代数的のときVはUに代数的 従属であるという。

 即ちvは代数方程式

 a。(u)vg+a・(u)v9一1+……+a、(u)一〇

を満たす。

 ここにai(u)はkの元を係数とするすべては0でないUl,

…一一・CU。の多項式であるQ

 定理1U∋廿uに対してuはUに代数的従属である。

 定理2vが{u} UUに代数的従属で, Uには代数的従 属でないならば,uは{v}UUに代数的従属である。

 証明vは{U}UUに代数的従属で, Uには代数的従属

でないから,Uの有限個の元ui,・・…・, U.が存在して, Vは k(u,u1……u,)で代数的で, k(u1,……u。)で代数的でない。

 ki=k(Ul,……, u。)とすれば, vはk (u)で代数的だから

 ao(u)vg+ai(u)vg一 i+・・一…+ag(u)=O・・… (1)

 ここにai(u)はkノの元を係数とする全ては0でないu

の多項式。

 これを書きかえて,

 b.(v)ui 十bi(v)uh−i十 ・ 十bh(v)=O (2)

 ここにbj(v)はktの元を係数とするvの多項式。

 vはk =k(Ul,……, u。)で代数的でないからbj(v)=0と なるのは恒等的に0のときに限る。

 ところが全てのj=O,1,……,hに対してb」(v)=0とはな

らない。

 もしそうならば,(1)の左辺はvについて恒等的に0とな

り,

 ao(u)===a1(u)=……=ag(u)一・・Oとなり,仮定に反する。

 よって(2)の左辺の係数bj(v)が全部0にはならないか

ら,Uはk,(V)=k(V, U1,……Un)で代数的となり, uは {V}U Uに代数的従属になる。

 定理3wがVに代数的従属で, V∋廿vがUに代数的

従属ならば,wはuに代数的従属になる。

 証明wはVに代数的従属だから,Vの有限個の元v1,

…… CV、が存在してWはk(V1,……, V。)で代数的になる。

 各Viが代数的になるkに付加する有限個の元の全体を

Ul,……, Umとする。

 Wはk(V1,……,V・)で代数的だから, k(U1,……JUm, V1,

…… D▽。)でも代数的である。又,各vlはk(u1,……, Um)で

代数的だから,k(Ul,・・…・,・Urn, Vl,……, v。)はk(Ul,……Um)

の代数的拡大である。

 よってwはk(Ul,……,Um)で代数的になる。(東京図書

「現代代数学」1の140頁を見よ)

 従ってwはUに代数的従属になる。

 前節の定理4から定理9において一一次独立,一次従属なる 語を代数的独立,代数的従属で置きかえたものがすべて成り 立つことが同様の証明で確かめられる。

 Uのどの元をとっても,それが残りの元に代数的従属で ないとき,Uは代数的独立であるという。

 換言すればUの任意の有限個の元U1,……,U,、に対し て,fを多項式として,

 f(ul, ・・・… , u.) =O

ならばこの多項式の各係数は0である。

 二つの部分集合U,Vは, Uの各元がVに, Vの各 回がUに代数的従属のとき同値であるという。

 どんな部分集合も適当な代数的独立な部分集合に同値にな る。(定理6)

 二つのたがいに同値な代数的独立な部分集合は同じ濃度を もっている。(定理8)

 、9の部分集合Mが同値になるMの代数的独立な部分 集合をMの(代数的)基底と呼ぶ。

 Mの基底の濃度は一定で,Mの超越次数と呼ばれる。

一53一

(4)

      津山高専紀要(第1巻第2号)

 Mの部分集合の超越次数はMの超越次数をこえない。(定 理9)

 kに代数的独立な集合Uを付加して生ずる拡大のことを 純超越的拡大という。

 kの拡大体9の代数的基底をUとすると,2の全て

の要素はUに代数的従属だからk(U)で代数的である。

 だからkの超越的拡大体9を得るには,まず純超越的 拡大k(U)を行ない,次いで代数的拡大を行なえばよい。

一54一

参照

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