・2019 年度修士論文
・都市部高齢者における医療・介護サービスの 利用に関する不安感の関連要因:独居高齢者 に着目して
・首都大学東京大学院
・都市環境科学研究科
・都市政策科学域
・18855508 張鵬
・指導教員 杉原陽子
1
2 目次
第 1 章 緒論 ... 3
1.1 研究背景 ... 3
1.2 先行研究の到達点と課題 ... 6
1.3 本研究の目的と分析課題 ... 9
第 2 章 研究方法 ... 11
2.1 調査の対象と方法 ... 11
2.2 分析項目 ... 11
2.3 分析方法 ... 12
2.4 倫理的配慮 ... 14
第 3 章 研究結果 ... 15
3.1 高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感と分析項目の概況 ... 15
3.2 高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感の関連要因 ... 18
3.3 独居高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感の関連要因:同居者の有無 別にみた比較 ... 22
3.4 独居高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感の機序 ... 25
第 4 章 考察 ... 29
謝辞 ... 32
引用文献 ... 33
3 第 1 章 緒論
1.1 研究背景
国勢調査によると、日本の老年人口は 1935 年以降増加が続き、2019 年 12 月 1 日現在(概 算値)で 65 歳以上人口は 3,593 万人(高齢化率 28.5%)と過去最高を更新している1)。高 齢者の中でも 75 歳以上の後期高齢者の増加が大きく、2018 年 3 月には後期高齢者数が 65
~74 歳の前期高齢者数を上回り2)、今後も後期高齢者数は 2054 年まで増加傾向が続くこと が予想されている3)(図 1-1)。
75 歳以上になると疾病や要介護のリスクが高まることから、生涯医療費は 75~84 歳で最 も高く、70 歳以降に生涯医療費の 50%が費やされることが報告されている4)。そのため、
団塊の世代(1947~49 年生まれ)が全員 75 歳以上となる 2025 年以降は、医療や介護の需 要の急増が予想され、国としての対応が検討されてきた5)6)。
図 1-1 日本における前期と後期高齢者数の推移
総務省. (2019). 人口推計-令和 1 年 11 月報に基づいて筆者作成
1764 1770 1740 1848
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
2018年3月 2019年9月(最新)
前期高齢者 後期高齢者
(万人)
4
急増する医療・介護需要への対応として、厚生労働省は「地域包括ケアシステム」の構築 を推進している。地域包括ケアシステムとは、「ニーズに応じた住宅が提供されることを基 本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために医療や介護のみならず、福祉サ ービスも含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供でき るような地域での体制」と定義され、その構成要素として「住まい」「生活支援」「介護」「医療」
「予防」の 5 つが対応すべき分野として特定されている7)。
これらの分野の中でも特に「医療」と「介護」は、高齢者にとって関心の高い課題である。
内閣府の「平成 26 年度高齢者の日常生活に関する意識調査」では、「将来の自分の日常生活 全般について、どのようなことに不安を感じるか」の設問に対し、「自分や配偶者の健康や 病気のこと」(67.6%)が最多で、次いで「自分や配偶者が寝たきりや身体が不自由になり介 護が必要な状態になること」(59.9%)で8)、病気や介護への不安が高いことが報告されてい る(図 1-2)。
加齢に伴い、病気や介護への不安が高まるのは必然的ではあるが、医療や介護を要する状 態になったとしても、適切な医療・介護サービスを受けることができるという安心を住民が 感じることのできる地域づくりを目指すことは、地域包括ケアシステムの目的である「生活 上の安心」の確保にも合致する喫緊の課題である。そのため、高齢者の医療や介護サービス の利用への不安感を規定する要因を解明し、このような不安の低減につながる対応を検討 することは、地域包括ケアシステムの構築に資する知見になるであろう。
図 1-2 将来の自分の日常生活全般について、どのようなことに不安を感じるか?
出典:内閣府(2014)平成 26 年度高齢者の日常生活に関する意識調査 67.6
59.9
33.7
28.5
23.1
0% 20% 40% 60% 80% 100%
自分や配偶者の健康や病気のこと
自分や配偶者が寝たきりや身体が不自由 になり介護が必要な状態になること
生活のための収入のこと
子どもや孫などの将来
頼れる人がいなくなり一人きりの暮らし になること
不安を感じる高齢者の割合
5
高齢者の医療や介護サービスの利用への不安を考える上で、同居家族の有無によって差 異があると考えられる。独居高齢者では、同居家族がいる高齢者と比べて家族からのサポー トを得にくいため、医療や介護サービスへの期待や依存度が高く、それゆえ不安感も高いの ではないかと予想される。内閣府の「一人暮らし高齢者に関する意識調査」9)でも、一人暮 らしの高齢者の毎日の生活の不安について一番多かった答えは「健康や病気のこと
(58.9%)」で、次いで「寝たきりや身体が不自由になり介護が必要な状態になること
(42.6%)」で、医療や介護を要する状況になった時のことを不安に感じている人が多いこ とがわかる。近年、独居高齢者が増加しており1)、特に東京都では、高齢者人口に占める独 居高齢者の割合が全国一となっている(図 1-3)10)。そのため、東京のような都市部において は、高齢者全体だけでなく、独居高齢者に着目して医療や介護サービスの利用に関する不安 感を低減するための対応を検討する必要がある。
図 1-3 都道府県別にみた高齢者人口に占める独居高齢者人口の割合(上位 10 都道府県)
出典:総務省統計局「国勢調査結果」(平成 27 年 10 月 1 日)をもとに作成 24.6
23.1 22.8 22.1
20.5 19.9 19.8 19.5 19.4 19.4
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
東京都 鹿児島県 大阪府 高知県 北海道 福岡県 和歌山県 愛媛県 京都府 山口県
6 1.2 先行研究の到達点と課題
「医療・介護サービスの利用への不安感」とその関連要因に関する研究報告は現状では少 ないが、「医療・介護サービスの利用」を促進・阻害する要因については、国内外で多く検討 されている。そこで本研究は、医療・介護サービスの利用を規定する要因が、サービス利用 への不安感の関連要因とも重なると考え、医療・介護サービスの利用に関する先行研究をレ ビューし、本研究の分析枠組みを検討する際の参考とした。
医療・介護サービスの利用を規定する要因を説明する概念モデルとして最も多用されて いるのは、Andersen らの行動モデルである11) 12)。Andersen と Newman は、保健・医療サービ スの利用を規定する要因を、技術や規範などの「社会的要因」、医療サービスに関係する人 的・物的資源や組織のあり方などの「ヘルスサービスシステム」、サービスの受け手となる 人々の「個人的要因」の 3 種類に分類した。このうち、サービス利用に直接影響する個人的 要 因 に つ い て は 、「 素 因 (predisposing characteristics) 」「 利 用 促 進 要 因 (enabling resources)」「ニード要因(needs)」に分類し、これらの要因によって保健・医療サービスの 利用が規定される「行動モデル」を示した。(図 1-4)13)
図 1-4 保健・医療サービスの利用を規定する個人的要因:Andersen らの行動モデル 出典:Andersen, R., & Newman, J. F. (1973) p.107 及び Andersen, R. M. (1995) p.2 より作成(杉原,2007)
7
素因とは、発症前、すなわちニードが発生する以前から個人が持っている特性で、年齢、
性、婚姻状況などの「人口学的特性」、学歴、人種、職業などの「社会構造的特性」、健康や 病気、サービスに対する態度、価値観、知識などの「信念(ヘルスビリーフ)」に細分され る。利用促進要因は、サービス利用を可能にする資源のことで、収入や保険などの「家族(ま たは個人)資源」と、居住地における医療従事者数や施設数などの「地域資源」に分けられ る。ニード要因は、モデルの中で最も直接的かつ中心的にサービス利用に影響する要因で、
症状や全体的な健康状態の自己評価といった「主観的ニード」と、専門家によって診断され た症状などの「客観的ニード」がある。
行動モデルは、当初は保健・医療サービスの利用を説明する概念モデルとして考案された が、今日では介護・福祉サービスの利用にも適用されている。Andersen らの行動モデルに基 づき在宅医療・介護サービスの利用に関連する要因を分析した論文のうち、1985~2000 年に 発表されたものをシステマティック・レビューした研究によると、高齢、ADL/IADL 障害、
独居、インフォーマルなサポートの少なさ、メディケイド(米国の低所得者向け公的医療保 険制度)加入が、在宅医療・介護サービスの利用に関連することが示された 14)。同様に Andersen らの行動モデルを用いて保健医療サービスの利用の関連要因を分析した 1998~
2011 年の論文のシステマティック・レビューでは、年齢、婚姻状況、性別、学歴、エスニシ ティ、収入/経済状態、医療保険の種類、かかりつけ医(家庭医)の有無、主観的健康、罹 患状況といった変数が多くの分析で使用されていたが、保健医療サービスの利用との関連 性が多くの研究で証明されたのは、疾病、精神的健康、健康度自己評価といった「ニード要 因」であり、その他の変数については保健医療サービス利用との関連性について統一的な知 見が得られていなかった15)。
医療・介護サービスの利用を促進・阻害する要因に関する先行研究を外観した結果、以下 の課題が残されていると考える。第一に、Andersen らの行動モデルに基づき様々な関連要 因が検討されてきたが、健康状態等の「ニード要因」が医療・介護サービスの利用に影響す る点については統一的な知見が得られているものの、「素因」や「利用促進要因」として指 摘されている要因については、サービス利用との関連性が一貫していないという点である。
その理由として、健康状態等のニード要因は多くの人に共通する要因だが、それ以外の要因 は、属性や状況によってサービス利用との関連性が異なるため、研究によって結果が異なっ た可能性が考えられる。この可能性を検証するためには、対象者の属性や状況によってサー ビス利用の関連要因や影響度が異なる可能性を調べる必要があるが、先行研究では、その点 を考慮した分析は、筆者の知る限りほとんど行われていない。
第二に、「利用促進要因」の中に介護者等のサポートの利用可能性が指摘されているもの の、家族・親族からの介護サポートに関する研究が多く、家族以外の人から提供されるサポ ートやサポートの種類による違いについては、研究蓄積が十分ではない。ソーシャル・サポ ートは、提供源(家族、友人、専門職等)や種類(手段的、情緒的、情報的等のサポート)
によって効果が異なる可能性が多くの研究で指摘されているが、医療・介護サービスの利用
8
に関する先行研究では、サポートの提供源や種類による違いを検討したものは少ない。さら に近年では、地域住民の信頼や社会規範、ネットワークといった特徴を総合的に表すソーシ ャル・キャピタルへの関心が高まっており、医療・介護サービスの利用に関する実証研究に おいても、ソーシャル・キャピタルの指標の一つである「社会的凝集性」が、ヘルスケアサ ービスへのアクセスを促進する可能性が報告されている 16)17)。しかし、これらの研究報告 は北米のもので、医療・介護サービスの提供体制やソーシャル・キャピタルの状況が異なる 日本においても同様の傾向があるかについては検討されていない。
9 1.3 本研究の目的と分析課題
上述のように、病気や介護を要する状態になることに不安を感じている高齢者が多い状 況を踏まえ、本研究では、医療や介護サービスの利用に関する高齢者の不安感の関連要因を 解明し、不安の低減につながる対応を検討することで、地域包括ケアシステムの構築に資す る知見を得ることを目的とした。
先行研究の課題を踏まえた本研究の新規性は、二点ある。第一に、先行研究では、サポー トの提供源や種類による関連性の違いを検討したものが少ないため、本研究では、サポート の「提供源(家族、友人、専門職)」や「種類(手段的、情緒的、情報的サポート)」を分類 して不安感との関連性を検討した。加えて、地域住民相互の助け合いの指標でもある「居住 地域の社会的凝集性」もサポートの一種として、不安感との関連性を検討した。
第二に、先行研究では、高齢者の状況による関連要因の違いを考慮した分析が少ないため、
本研究では、「同居家族の有無」に着目し、それによる関連要因の違いを検討することにし た。同居家族の有無による違いに着目した理由は、近年、都市部では独居高齢者が増加して おり、独居高齢者を地域でどのように支えるかが焦眉の課題となっているからである。独居 高齢者への対応を、より詳細に検討するために、本研究では、同居家族の有無による不安感 の関連要因の差異を検討するだけでなく、独居高齢者において医療・介護サービス利用に関 する不安感が生じる機序についても検討し、不安感を低減するための対応を検討すること を試みた。
具体的な分析課題は以下である。分析枠組みは、Andersen らの行動モデルを参考にした。
(図 1-5)
(1) 都市部の地域在住高齢者において、医療・介護サービスの利用への不安感に関連する要 因は何か。特に、サポートの提供源(家族、友人、専門職)や種類(手段的、情緒的、情報 的サポート)、居住地域の社会的凝集性によって不安感に差があるだろうか。
(2) 同居者の有無によって、医療・介護サービス利用への不安感の関連要因が異なるだろう か。
(3) 独居高齢者では、どのような機序で医療・介護サービス利用に関する不安感が生じてい るのだろうか。
上記の分析課題について、それぞれ以下の仮説を考えた。
(1) 医療・介護サービス利用に関する先行研究の結果と同様に、ニード要因(心身の健康 状態)が悪い人ほどサービス利用に関する不安感が高い。素因については、同居者の有無の 影響が大きく、独居高齢者の方が、同居者がいる人よりも医療・介護サービス利用への不安 感が高い。利用促進要因については、家族からの手段的・情緒的・情報的サポートだけでな く、専門職から手段的・情緒的・情報的サポートを得ている人、さらに社会的凝集性の認知 が高い人では、不安感が低い。
10
(2) 同居者の有無によって医療・介護サービス利用への不安感の関連要因に違いがあり、
独居高齢者の方が、家族からのサポートを得にくい分、その代替となる専門職からのサポー トや社会的凝集性が不安感を低減する効果が大きい。
(3) 独居高齢者で不安感が高い理由として、家族からのサポートを受領しにくく、地域住 民とのつながり(社会的凝集性)も希薄化しがちであるため、不安感が高くなりやすいとい う機序が考えられる。
図 1-5 本研究の分析枠組み
11 第 2 章 研究方法
2.1 調査の対象と方法
2016 年 9 月 1 日時点で東京都内 A 市在住の 65 歳以上住民 39,707 人のうち、特別養護老 人ホーム入居者等を除外した後、無作為に 1 割相当数を抽出した 3,956 人を調査対象とし た。調査は、郵送法にて行った。有効回収数は、2,698 票(回収率 68.2%)であった。
A 市の概況は、2015 年の国勢調査の結果では老年人口割合が 21.3%で、全国(26.6%)
よりは低く、東京都(22.7%)の数値と比べても若干低い状況であった。他方、高齢者世帯 の中で高齢者単身世帯が占める割合は 34.4%で、全国(27.3%)より高く、東京都(35.8%)
の中では若干低い状況であった。
2.2 分析項目
1) 医療・介護サービスの利用に関する不安感
「必要な時に十分な医療を受けられないこと(医療)」「必要な時に十分な介護サービスを 受けられないこと(介護)」「急に具合が悪くなった時に対応してくれる人がいないこと(対 応)」の各項目について、「非常に不安」「やや不安」「あまり不安はない」「まったく不安はな い」の 4 件法で回答を得、不安の強い回答から順に 3〜0 点を配点した。この 3 項目につい て主成分分析を行った結果、固有値が 1.0 以上の主成分は 1 つのみで、第 1 主成分の寄与 率は 77%と高く、いずれの項目とも主成分負荷量が 0.7 以上であった。3 項目のクロンバ ックの α 信頼性係数も 0.847 であったことから、3 項目は一元的な尺度を構成するものと みなし、3 項目を単純加算して、「医療・介護サービスの利用に関する不安感」(以下、「不 安感」)という変数を作成した。
2) 素因
年齢(実年齢:連続変量)、性別(男性=1、女性=2)、独居(同居者あり=0、独居=1)を素 因として測定した。
3) 利用促進要因
年収、サポート、社会的凝集性の認知を利用促進要因として測定した。
年収は、世帯年収について「120 万円未満(=1)」「120~180 万円未満(=2)」「180~240 万 円未満(=3)」「240~300 万円未満(=4)」「300~360 万円未満(=5)」「360~480 万円未満(=6)」
「480~720 万円未満(=7)」「720 万円以上(=8)」の選択肢から回答を得て、それぞれの選択 肢にカッコ内のスコアを適用した。
サポートは、「手段的サポート」「情緒的サポート」「情報的サポート」の 3 種類について、
各サポートの提供者を以下のように把握した。
手段的サポートは、「必要な時に手助けしてくれる人がいますか」と質問し、「家族・親戚」
「近隣の人」「友人・知人」「ホームヘルパー・ケアマネジャー」「その他」「誰もいない」の 選択肢から、該当するものを全て選んでもらった。「家族・親戚」から手段的サポートを得
12
ているか否かによって「家族からの手段的サポート」ダミーを、「近隣の人または友人・知 人」から手段的サポートを得ているか否かによって「友人からの手段的サポート」ダミーを、
「ホームヘルパー・ケアマネジャーから手段的サポートを得ているか否かによって「専門職 からの手段的サポート」ダミーを作成した。
情緒的サポートは、「あなたの話を聴いてくれたり、理解してくれる人はいますか」と質 問し、手段的サポートと同様の選択肢から回答を得た後、「家族からの情緒的サポート」ダ ミー、「友人からの情緒的サポート」ダミー、「専門職からの情緒的サポート」ダミーを作成 した。
情報的サポートは、「健康・生活・福祉のことで、相談にのってくれたり、情報を提供し てくれる人はいますか」と質問し、同様の選択肢から回答を得た後、「家族からの情報的サ ポート」ダミー、「友人からの情報的サポート」ダミー、「専門職からの情報的サポート」ダ ミーを作成した。
社会的凝集性の認知18)は、居住地域の住民について「信頼できる」「結束が強い」「喜んで 近所の人を手助けする」「お互いに関係が良くない(逆転項目)」「同じ価値観を持った人は あまりない(逆転項目)」と質問し、「そう思わない」~「そう思う」の 5 件法で回答を得た。
「そう思う」という回答から順に 4~0 点を配点し(逆転項目は「そう思わない」に高得点 を配点)、5 項目のスコアを単純加算した。(クロンバックのα信頼性係数=.833)
4) ニード要因
健康度自己評価と抑うつ傾向をニード要因として測定した。
健康度自己評価は、現在の自分の健康状態について、「良くない」~「良い」の 5 件法で回 答を得、健康度の高い回答から順に 5~1 点を配点した。
抑うつ傾向は、気分・不安障害の傾向を測定する K619)を用いた。「神経過敏」「絶望的」等 の 6 項目について、そのように感じる頻度を質問し、「まったくない」~「いつも」の 5 件 法で回答を得、高頻度の回答から順に 4~0 点を配点し、6 項目のスコアを単純加算した。
(クロンバックのα信頼性係数=.853)
2.3 分析方法
1) 高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感の関連要因
「医療・介護サービスの利用に関する不安感」を従属変数とし、Andersen らの行動モデ ルに基づいて、素因(年齢、性別、独居)、利用促進要因(年収、種類別・提供源別サポー ト、社会的凝集性の認知)、ニード要因(健康度自己評価、抑うつ傾向)を独立変数とする 単相関分析(カテゴリカル変数についてはt検定または一元配置分散分析)と重回帰分析を 行った。尚、「医療・介護サービスの利用に関する不安感」は離散変量であるが、変数のレ ンジは 0~9 で、歪度・尖度ともに極端な値ではなく、ヒストグラムの分布も正規分布に近 似できる分布であったため、間隔尺度に準ずるものと見なし、重回帰分析を適用した。
2) 独居高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感の関連要因
13
医療・介護サービスの利用に関する不安感の関連要因が、同居者の有無によって異なるか 否かを検証するために、まずは、同居者の有無別に 2 群に分けて、各群について医療・介護 サービスの利用に関する不安感を従属変数とし、年齢、性別、独居、年収、サポート、社会 的凝集性の認知、健康度自己評価、抑うつ傾向を独立変数とする重回帰分析を行った。次い で、医療・介護サービスの利用に関する不安感を従属変数とし、上記の独立変数とともに、
各独立変数と独居ダミーの交互作用項を投入する重回帰分析を行った。
3) 独居高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感の機序
不安感を従属変数とし、年齢、性別、独居、年収、サポート、社会的凝集性の認知、健康 度自己評価、抑うつ傾向を独立変数とする共分散構造分析を行った(図 2-1)。独居は、不 安感に対する直接効果とともに、家族からのサポート(手段的・情緒的・情報的)、専門職 からのサポート(手段的・情緒的・情報的)、社会的凝集性の認知、健康状態(健康度自己 評価、抑うつ傾向)を介する間接効果も調べた。尚、上記 1)2)の重回帰分析では、不安感は 3 項目(医療、介護、対応)を単純加算して変数化したものを用いたが、共分散構造分析で は潜在変数を設定できるため、不安感に関する 3 項目を観測変数とし、それらに共通する因 子(潜在変数)を「不安感」として分析に導入した。同様に、家族からのサポート、専門職 からのサポート、社会的凝集性、抑うつ傾向も、潜在変数を導入して分析を行った。友人か らのサポート(手段的・情緒的・情報的)については、単相関分析や重回帰分析の結果、不 安感に対する有意な効果が見られなかったため、共分散構造分析から除外した。モデルの適 合度は、GIF、AGFI、CFI、RMSEA を指標として総合的に判断した。
図 2-1 共分散構造分析の枠組み
注)独居と健康度自己評価は観測変数を用いたが、家族サポート、専門職サポート、社会的 凝集性、抑うつ傾向、不安感は、潜在変数を導入して分析した。
以上の分析について、記述統計は有効回収数(n=2,698)に基づく結果を示したが、1)~
3)の分析においては、分析に使用した項目に欠損があったケースは分析から除外した
14
(n=1,951)。分析は、IBM SPSS Statistics 24 と AMOS 24 を使用した。
2.4 倫理的配慮
調査の趣旨と調査への協力は強制ではないこと、拒否したとしても対象者に何ら不利益 は生じないことを依頼上に明記し、調査票の返送をもって同意とみなした。調査票には個人 名や住所の詳細など個人の特定につながる情報は含まず、匿名化したデータを用いて分析 した。分析や結果の公表のすべてのプロセスにおいて個人情報の保護に配慮している。その ため、本論文では対象地域の具体的名称は示していない。尚、調査に先立ち、首都大学東京 研究安全倫理委員会の審査を受け、承認を得た上で調査を実施した。(承認番号:H28-66、
承認日:2016 年 7 月 1 日)
15 第 3 章 研究結果
3.1 高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感と分析項目の概況
医療・介護サービスの利用に関する不安感について、「必要な時に十分な医療を受けられ ないこと(医療)」、「必要な時に十分な介護サービスを受けられないこと(介護)」、「急に具 合が悪くなった時に対応してくれる人がいないこと(対応)」のいずれについても、3 割以 上の人が「非常に不安」または「やや不安」と回答していた(図 3-1) 。3 項目を単純加算し た不安感尺度の平均値は、3.70(SD=2.22)であった(欠損値を含むケースを除外したため、
n=1,951)(表 3-1)。
図 3-1 医療・介護サービスの利用に関する不安感の分布 (n=2,689)
表 3-1 医療・介護サービスの利用に関する不安感の質問項目の記述統計 (n=1,951)
項目 平均値 標準偏差 レンジ
必要な時に十分な医療を受けられないこと 1.14 0.82 0-3 必要な時に十分な介護サービスを受けられないこと 1.35 0.85 0-3 急に具合が悪くなった時に対応してくれる人がいないこと 1.20 0.87 0-3 医療・介護サービスの利用に関する不安感尺度 3.70 2.22 0-9
6.5 10 8.9
24.8 32.7 25.4
44.5 39.3 42.4
20.7 14.4 20.3
3.5 3.5 3.1
0% 20% 40% 60% 80% 100%
医 療 介 護 対 応
不安感を感じる高齢者の割合(%)
非常に不安 やや不安 あまり不安はない まったく不安はない 不明
16
独立変数の記述統計を表 3-2 に示した。男性 47.1%、女性 52.9%、平均年齢は 74.7 歳、
独居高齢者は 15.3%であった。所得段階は、「300~360 万円未満」が 15.3%と最も多く、
次いで「240~300 万円未満」14.9%、「360~480 万円未満」14.7%という状況であった。
日常生活で、ちょっとした手助けが必要な時に手助けしてくれる人(手段的サポート)に ついては、「家族・親戚」が最も多く(85.2%)、次いで「友人」が 23.8%、「専門職」が 6.9%
であった。話を聴いてくれたり、理解してくれる人(情緒的サポート)は、「家族・親戚」
が最も多く(88.8%)、次いで「友人」49.7%、「専門職」7.2%であった。健康・生活・福 祉のことで相談にのってくれたり、情報を提供してくれる人(情報的サポート)も、「家族・
親戚」が最も多く(79.9%)、次いで「友人」41.2%、「専門職」11.4%であった。
独居高齢者と同居者がいる高齢者を 2 群に分けてみると、同居者がいる高齢者より、独居 群の方が、女性が多く、経済状態も悪かった。独居高齢者の方が、家族からのサポート(手 段・情緒・情報)は少ないが、友人からのサポート(手段・情緒・情報)は、同居者がいる 群より多かった。
17 表 3-2 独立変数の記述統計
項目 全体
(n=1,951)
同居者あり (n=1,653)
同居者なし
(n=298)
P
性別,N(%)
女性 1032(52.9) 824(49.8) 208(69.8) <.001 年齢,
M(±SD)
74.70(±7.00) 74.44(±6.94) 76.13(±7.16) .026 同居者,N(%)
なし 298(15.3) - -
年収,
N(%)
120 万円未満 188(9.6) 123(7.4) 65(21.8)
<.001 120~180 万円未満 229(11.7) 152(9.2) 77(25.8)
180~240 万円未満 270(13.8) 204(12.3) 66(22.1) 240~300 万円未満 290(14.9) 256(15.5) 34(11.4) 300~360 万円未満 298(15.3) 278(16.8) 20(6.7) 360~480 万円未満 286(14.7) 269(16.3) 17(5.7) 480~720 万円未満 228(11.7) 215(13.0) 13(4.4) 720 万円以上 162(8.3) 156(9.4) 6(2.0) 家族からのサポート,
N(%)
手段的サポートあり 1663(85.2) 1500(90.7) 163(54.7) <.001 情緒的サポートあり 1732(88.8) 1531(92.6) 201(67.4) <.001 情報的サポートあり 1558(79.9) 1388(84.0) 170(57.0) <.001 友人からのサポート,
N(%)
手段的サポートあり 465(23.8) 347(21.0) 118(39.6) <.001 情緒的サポートあり 970(49.7) 864(52.3) 181(60.7) <.001 情報的サポートあり 804(41.2) 651(39.4) 153(51.3) <.001 専門職からのサポート,
N(%)
手段的サポートあり 134(6.9) 99(6.0) 35(11.7) .003 情緒的サポートあり 140(7.2) 104(6.3) 36(12.1) .004 情報的サポートあり 223(11.4) 177(10.7) 46(15.4) .035 社会的凝集性の認知,
M(±SD)
12.49(±3.69) 12.58(±3.67) 11.98(±3.80) .252 健康度自己評価,M(±SD)
3.47(±1.09) 3.50(±1.09) 3.33(±1.09) .018 抑うつの傾向(K6),M(±SD)
3.44(±3.64) 3.30(±3.62) 4.72(±3.66) <.001 注)M
:平均値SD
:標準偏差同居者の有無別にみた平均値の比較は
t
検定、割合の比較はχ
2独立性の検定を行った。18
3.2 高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感の関連要因
独立変数のうち、カテゴリカル変数(性別、独居、年収、各サポートの有無)について、
医療・介護サービスの利用に関する不安感の平均値に統計的に有意な差があるか否かを確 認するために、各項目のt検定または一元配置分散分析を行った(表 3-3)。
その結果、男性よりも女性で医療・介護サービスの利用に関する不安感が高く、独居高齢 者は同居者がいる高齢者よりも不安感が高いこと、年収が低い人ほど不安感が高いことが 示された。サポートについては、家族からの手段的、情緒的、情報的サポートがない人は、
サポートがある人に比べて不安感が高かったが、友人からのサポートについては、手段的、
情緒的、情報的サポートのいずれについても統計的な有意差は見られなかった。専門職から のサポートについては、手段的、情緒的、情報的サポートのいずれについても、サポートが ある人の方が、サポートがない人よりも不安感が高かった。
医療・介護サービスの利用に関する不安感と各独立変数との単相関分析の結果を、表 3-4 に示した。単相関分析の結果、女性、独居、専門職からの手段的サポート・情緒的サポート・
情報的サポートがあること、抑うつ傾向が強いことが、不安感と正の相関を示した。他方、
年収が高いこと、家族からの手段的サポート・情緒的サポート・情報的サポートがあること、
社会的凝集性の認知、健康度自己評価が高いことが、不安感と負の相関を示した。高齢者の 年齢と友人からのサポートの有無については、不安感との間に統計的に有意な相関が認め られなかった
19
表 3-3 医療・介護サービスの利用に関する不安感の平均値の比較 (n=1,951) 項目 カテゴリー 不安感の平均値(±
SD
)P
性別 男性 3.38(2.23)
<.001 女性 3.98(2.17)
同居者 なし(独居) 4.57(2.28)
<.001 あり 3.54(2.17)
年収 120 万円未満 4.66(2.45)
<.001 120~180 万円未満 4.33(2.37)
180~240 万円未満 3.97(2.15) 240~300 万円未満 3.87(2.23) 300~360 万円未満 3.58(1.99) 360~480 万円未満 3.62(2.05) 480~720 万円未満 2.78(1.82) 720 万円以上 2.70(2.22) 家族からのサポート
手段的サポート ある 3.53(2.17)
<.001 ない 4.65(2.24)
情緒的サポート ある 3.61(2.19)
<.001 ない 4.42(2.32)
情報的サポート ある 3.51(2.18)
<.001 ない 4.44(2.21)
友人からのサポート
手段的サポート ある 3.68(2.07)
.858 ない 3.70(2.26)
情緒的サポート ある 3.64(2.12)
.278 ない 3.75(2.31)
情報的サポート ある 3.70(2.08)
.957 ない 3.69(2.31)
専門職からのサポート
手段的サポート ある 4.49(2.43)
.001 ない 3.64(2.19)
情緒的サポート ある 4.38(2.58)
<.001 ない 3.74(2.24)
情報的サポート ある 4.21(2.37)
<.001 ない 3.63(2.19)
注)2 郡の比較はt検定、3 群以上の比較は分散分析を行った。
SD
:標準偏差20
表 3-4 各変数の単相関 (n=1,951)
変数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
1 不安感 -
2 女性 .136** -
3 年齢 .036 .020 -
4 独居 .168** .144** .087** -
5 年収 -.260** -.170** -.131** -.298** -
6 家族・手段 -.178** .007 -.001 -.366** .180** -
7 家族・情緒 -.117** -.017 .019 -.287** .167** .562** -
8 家族・情報 -.168** -.052* .018 .241** .166** .458** .570** -
9 友人・手段 -.004 .133** -.061** .157** -.063** -.106** -.087** -.025 -
10 友人・情緒 -.025 .218** -.107** .094** .004 -.037 -.130** -.071** .493** -
11 友人・情報 .001 .212** -.100** .087** .009 .005 -.052* -.086** .441** .659** -
12 専門・手段 .074** .045* .212** .082** -.087** -.258** -.147** -.111** -.028 -.027 -.096** -
13 専門・情緒 .099** .048* .243** .081** -.104** -.174** -.134** -.098** -.016 -.074** -.092** .678** -
14 専門・情報 .082** .052* .202** .053* -.069** -.155** -.117** -.205** -.012 -.012 -.104** .603** .668** -
15 社会的凝集性 -.121** -.013 .074** -.023 .023 .063** .068** .061** .104** .037 .079** -.012 .014 .024 -
16 健康度自己評価 -.276** -.032 -.243** -.056* .225** .071** .050* .085** .063** .124** .128** -.159** -.212** -.173** .048* - 17 抑うつ傾向 .415** .073** .213** .096** -.220** -.126** -.156** -.180** -.069** -.119** -.110** .190** .247** .214** -.070** -.452** - 注)*:P <.05, **:P <.01
21
上記の分析結果を踏まえ、高齢者の「医療・介護サービスの利用に関する不安感」を従属 変数とし、性別、年齢、独居、年収、家族からの手段的サポート、家族からの情緒的サポー ト、家族からの情報的サポート、友人からの手段的サポート、友人からの情緒的サポート、
友人からの情報的サポート、専門職からの手段的サポート、専門職からの情緒的サポート、
専門職からの情報的サポート、社会的凝集性の認知、健康度自己評価、抑うつ傾向を独立変 数とする重回帰分析を行なった(表 3-5)。
重回帰分析の結果、高齢者の「医療・介護サービスの利用に関する不安感」と統計的に有 意な相関を示したのは、女性(
β
=.089,P
< .001)、年齢(β
=-.057,P
< .01)、独居(
β
=.052,P
< .05)、年収(β
=-.115,P
< .001)、家族からの手段的サポート(β
= -.105,P
< .001)、家族からの情緒的サポート(β
=.069,P
< .01)、社会的凝集性の認知(
β
=-.156,P
< .001)、健康度自己評価(β
=-.094,P
< .001)、抑うつ傾向(β
=.312,P
< .001)であった。家族からの情緒的サポートについては、単相関係数と偏相関係数の符 号が逆転しており、弱いながらも多重共線性の可能性がうかがわれた。表 3-5 不安感に関連する要因の重回帰分析 (n=1,951)
r B SE β
性別(ref.男性) .136** .359 .092 .089***
年齢 .036 -.018 .007 -.057**
独居 .168** .321 .137 .052* 年収 -.260** -.122 .023 -.115***
家族からの手段的サポート -.178** -.657 .161 -.105***
家族からの情緒的サポート -.117** .483 .187 .069* 家族からの情報的サポート -.168** -.229 .140 -.041 友人からの手段的サポート -.004 -.008 .122 -.001 友人からの情緒的サポート -.025 -.073 .124 -.017 友人からの情報的サポート .001 .238 .122 .053 専門職からの手段的サポート .074** -.202 .249 -.023 専門職からの情緒的サポート .099** -.018 .261 -.002 専門職からの情報的サポート .082** -.021 .197 -.003 社会的凝集性の認知 -.258** -.094 .013 -.156***
健康度自己評価 -.276** -.191 .046 -.094***
抑うつ傾向 .415** .190 .014 .312***
切片 - 6.389 .584 -
調整済み決定係数R2=.254
Ref:参照カテゴリー,
r
:単相関係数,B
:偏回帰係数,SE
:標準誤差,β
:標準化偏回帰係 数, *:P
<0.05, **:P
<0.01, ***:P
<0.00122
3.3 独居高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感の関連要因:同居者の有無 別にみた比較
まず、独居高齢者と同居者がいる高齢者の 2 群に分けて、医療・介護サービスの利用に関 する不安感を従属変数とする重回帰分析をそれぞれ行った。独居高齢者では、女性(
β
=.204,
P
< .001)、家族からの手段的サポート(β
=-.195,P
< .01)、家族からの情緒的 サポート(β
=.170,P
< .05)、社会的凝集性の認知(β
=-.172,P
< .01)、抑うつ傾向(
β
=.307,P
< .001)が不安感に関連していた。同居者がいる高齢者では、女性(β
=.069,P
< .001)、年齢(β
=-.064,P
< .01)、年収(β
=-.122,P
< .001)家族からの手段的 サポート(β
=-.075,P
< .01)、社会的凝集性の認知(β
=-.156,P
< .001)、健康度自 己評価(β
=-.103,P
< .001)、抑うつ傾向(β
=.320,P
< .001)が不安感に関連してい た(表 3-6)。表 3-6 同居者の有無別にみた不安感に関連する要因の重回帰分析 同居者あり(n=1,653)
β
同居者なし(n=298)
β
性別(ref.男性) .069** .204***
年齢 -.064** -.040
年収 -.122*** -.058
家族からの手段的サポート -.075** -.195**
家族からの情緒的サポート .040 .170*
家族からの情報的サポート -.031 -.106
友人からの手段的サポート -.003 .000
友人からの情緒的サポート -.005 -.078
友人からの情報的サポート .046 .096
専門職からの手段的サポート -.018 -.071 専門職からの情緒的サポート -.009 .026 専門職からの情報的サポート .002 .008 社会的凝集性の認知 -.156*** -.172**
健康度自己評価 -.103*** -.048
抑うつ傾向 .320*** .307***
Ref:参照カテゴリー,
β
:標準化偏回帰係数, *:P
<0.05, **:P
<0.01, ***:P
<0.00123
上記のような違いは、独居高齢者と同居者がいる高齢者の標本数の違いに起因している 可能性があるため、各独立変数と独居ダミーとの交互作用項を重回帰モデルに追加投入し、
同居者の有無による関連要因の違いを検討した。その結果、性別と独居ダミーの交互作用項 が統計的に有意で(
β
=.185,P
< .05)、独居高齢者の場合、特に女性で不安感が高いこと が明らかとなった(表 3-7、図 3-2)。しかし、独居高齢者は家族からのサポートを得にくい 分、専門職や友人、地域住民からのサポートの効果が大きいのではないかと予想したが、そ の仮説は支持されなかった。表 3-7 独居と各独立変数との交互作用効果の分析 (n=1,951)
B SE β
独居×性別 .643 .261 .185*
独居×年齢 .007 .017 .009
独居×年収 .043 .066 .017
独居×家族からの手段的サポート -.077 .279 -.010 独居×家族からの情緒的サポート .254 .300 .035 独居×家族からの情報的サポート -.052 .268 -.007 独居×友人からの手段的サポート -.008 .255 -.001 独居×友人からの情緒的サポート -.111 .248 -.015 独居×友人からの情報的サポート .125 .243 .015 独居×専門職からの手段的サポート -.046 .401 -.003 独居×専門職からの情緒的サポート .067 .396 .004 独居×専門職からの情報的サポート -.031 .347 -.002 独居×社会的凝集性の認知 .005 .032 .003 独居×健康度自己評価 .082 .112 .016
独居×抑うつ傾向 -.012 .033 -.008
B
:偏回帰係数,SE
:標準誤差,β
:標準化偏回帰係数, *:P
<.05, **:P
<.01, ***:P
<.001 注)表には示していないが、性別、年齢、独居、年収、家族からの手段的サポート、家族 からの情報的サポート、専門職からの手段的サポート、専門職からの情報的サポート、健 康度自己評価、抑うつ傾向の主効果も分析に投入している。24 図 3-2 「独居×性別」の交互作用
0 1 2 3 4 5 6
同居者あり 同居者なし
不 安 感
男性 女性
25
3.4 独居高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感の機序
図 2-1 に示した分析枠組みで、共分散構造分析を行った。分析に使用した変数の記述統計 を表 3-10 に、各変数と不安感(3 項目)との単相関係数を表 3-9 に示した。表 3-9、表 3- 10 に略語で示した変数の詳細は、表 3-8 に示した。
単相関、及び重回帰分析の結果から、友人からのサポート(手段的、情緒的、情報的)は 不安感と無相関であったため、共分散構造分析から除外することにした。
表 3-8 共分散構造分析に用いた変数一覧
高齢者の医療・介護サービスの利用に関する不安感 WR1 必要な時に十分な医療を受けられないこと
WR2 必要な時に十分な介護サービスを受けられないこと WR3 急に具合が悪くなった時に対応してくれる人がいないこと 家族からのサポート
FS1 日常生活で、ちょっとした手助けが必要な時に、手助けしてくれる FS2 あなたの話を聴いてくれたり、理解してくれる
FS3 健康・生活・福祉のことで、相談にのってくれたり、情報を提供してくれる 専門職(ホームヘルパー・ケアマネジャー)からのサポート
SS1 日常生活で、ちょっとした手助けが必要な時に、手助けしてくれる SS2 あなたの話を聴いてくれたり、理解してくれる
SS3 健康・生活・福祉のことで、相談にのってくれたり、情報を提供してくれる 社会的凝集性の認知
SC1 この地域の人は信頼できる SC2 この地域の人は結束が強い
SC3 この地域の人は、喜んで近所の人を手助けする
SC4 この地域の人は、お互いに関係がよくない(逆転項目)
SC5 この地域では、同じような価値観をもった人はあまりいない(逆転項目)
健康度自己評価
現在の健康状態は、いかがですか 抑うつ
DP1 神経過敏に感じましたか DP2 絶望的だと感じましたか
DP3 そわそわしたり、落ち着きなく感じましたか
DP4 気分が沈みこんで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか DP5 何をするのも骨折りだと感じましたか
DP6 自分は価値のない人間だと感じましたか