<エッセイ>プログレは終わったのか
著者 入木田 浩幸
雑誌名 日文研
巻 57
ページ 55‑57
発行年 2016‑09‑30
URL http://doi.org/10.15055/00006499
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プ ロ グ レ は 終 わ っ た の か
入木 田 浩 幸 最近
︑ロ ック ミュ ージ シャ ンの 訃報 が相 次い でお り︑ ロッ クフ ァン とし ては 心が 痛い とこ ろ です 表 ︒ 題に あり ます
﹁プ ログ レ﹂ とは
︑﹁ プロ グレ ッシ ヴ・ ロッ ク﹂ のこ とで
︑一 九六
〇年 代後 半に イギ リス から 発生 した ロッ ク音 楽の ジャ ンル のひ とつ です
︒ビ ート ルズ のラ スト アル バム
﹁ア ビー
・ロ ード
﹂を 全英 チャ ート 第一 位か ら引 きず り下 ろし たの が︑ キン グ・ クリ ムゾ ン
︵以 下﹁ クリ ムゾ ン﹂
︶の 一九 六九 年の デビ ュー アル バム
﹁ク リム ゾン
・キ ング の宮 殿﹂ だっ た とい う話 は聞 いた こと があ るか と思 いま す︒ その クリ ムゾ ン︑ ピン ク・ フロ イド
︵以 下﹁ フロ イド
﹂︶
︑イ エス
︑エ マー ソン
・レ イク
&パ ーマ ー︵ 以下
﹁E L& P﹂
︶︑ ジェ ネシ スの 五つ のバ ンド は︑ プロ グレ 五大 バン ドと 言わ れて いま す︒ プロ グレ とは どの よう な音 楽か
﹁何 故に
﹂﹁ どこ が﹂ プロ グレ ッシ ヴ︵ 前衛 的・ 進歩 的︶ な のか
︑一 人の プロ グレ ファ ンの 偏執 狂的 な観 点か ら︑ プロ グレ の音 楽要 素な どに つい てお 話し たい と思 いま す︒ 一つ 目は
︑演 奏者 の超 絶技 巧で す︒ EL
&P のキ ース
・エ マー ソン はハ モン ドオ ルガ ンを 弾き なが ら下 敷き にな って みた り︑ 反対 側か ら弾 いて みた り︑ 挙句 の果 てに はナ イフ を鍵 盤に 突き 刺し て感 電? した り︑ ピア ノの 弦部 分を ハー プの よう にか き鳴 らし たり する 凄腕 でし た︒ イエ スの リッ ク・ ウェ イク マン はキ ーボ ード 群を 自分 の周 囲を 取り 囲む よう に配
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置して︑ それ らを 自由 自在 に弾 いて いま す︒ プロ グレ バン ドは 演奏 者の その 超絶 技巧 ゆえ に︑ 曲に 変拍 子や 転調 が多 いの が特 徴で
︑ラ イヴ でも アル バム と同 じよ うに 曲を 再現 して いま す︒ 二つ 目は
︑ク ラシ ック やジ ャズ の音 楽要 素を 取り 入れ てい るこ とで す︒ 特に
︑E L& Pは
︑ク ラシ ック の要 素を 強く 取り 入れ てい ます
︒﹁ 未開 人﹂ とい う曲 では
︑バ ルト ーク のピ アノ 曲
﹁ア レグ ロ・ バル バロ
﹂を
︑﹁ ナイ フ・ エッ ジ﹂ とい う曲 では
︑ヤ ナー チェ クや
︑バ ッハ を取 り 入れ てい ます し︑ ムソ ルグ スキ ーの
﹁展 覧会 の絵
﹂は
︑組 曲全 体を ロッ クに アレ ンジ して いま す︒ 極め 付き は︑
﹁タ ルカ ス﹂ とい うア ルバ ムで
︑プ ログ レフ ァン で作 曲家 の吉 松隆 氏が
︑逆 に表 題曲 をク ラシ ック のオ ーケ スト ラ用 に編 曲し てい ます
︒ク リム ゾン にお いて は︑ ジャ ズの 要素 であ るイ ンプ ロヴ ィゼ ーシ ョン が演 奏の 核に もな って いま すし
︑フ ロイ ドの キー ボー ド奏 者の リッ ク・ ライ トは
﹁狂 気﹂ のア ルバ ム中 の曲 のコ ード 進行 はマ イル ス・ デイ ビス から 影響 を受 けた と語 って いま す︒ クラ シッ クや ジャ ズの 音楽 要素 を単 にモ チー フと して 使う だけ でな く︑ ロッ クに まで 昇華 して いる 点が 凄い と思 いま す︒ 三つ 目は
︑ア ルバ ム自 体が コン セプ トア ルバ ムに なっ てい るこ とで す︒ ムー ディ ー・ ブル ース の﹁ デイ ズ・ オブ
・フ ュー チャ ー・ パス ト﹂ のア ルバ ムが 先駆 けで す︒ コン セプ トア ルバ ムは
︑曲 が長 尺に なる 傾向 があ り︑ 当時 はレ コー ドの 片面 が︑ 丸々 一曲 にな って いる こと は当 たり 前で した
︒ジ ェネ シス の最 高傑 作﹁ 幻惑 のブ ロー ドウ ェイ
﹂は
︑レ コー ド
2
枚組 で︑ 九〇 分強 の間︑物 語が 展開 され る作 品で
︑全 体を 聴く だけ で疲 れて しま いま す︒ 四つ 目は
︑当 時の 最先 端の 楽器 や技 術を 駆使 した 音創 りが され てい るこ とで す︒ モー グシ ンセ サイ ザー やメ ロト ロン など 中で もメ ロト ロン はプ ログ レに は必 須の 楽器 です
︒メ ロト ロン は︑ スト リン グス など のサ ンプ ル音 源が 録音 され た磁 気テ ープ を使 用し た鍵 盤楽 器で
︑通 常の スト リン グス など の生 音に 比べ て︑ 摩訶 不思 議で 心地 良い
?音 がし
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ます
︒ま た︑ 楽器 類だ けで なく
︑イ ンタ ビュ ー音 源や
︑様 々な 音が サン プリ ング され て使 われ てい ます
︒こ こで 忘れ ては なら ない のが
︑富 田勲 氏で す︒ 富田 氏は
︑ド ナウ 川で のパ フォ ーマ ンス とい い︑ かな りプ ログ レ
です
︒五 つ目 は︑ その 影響 力で す︒ 今ま で申 し上 げて きた プロ グ レの 音楽 要素 は︑ 色々 な国 のロ ック バン ドに 影響 を与 えて いま す︒ それ ぞれ の国 に合 うよ うな 形で その 音楽 要素 が取 り込 まれ て︑ 個性 的で 特色 のあ るプ ログ レバ ンド が各 国に 存在 して いま す︒ また
︑前 衛的 な芸 術活 動に も影 響を 与え てい て︑ 例を 挙げ ると 世界 的な 舞踏 カン パニ ーで ある 山海 塾は 初期 の頃 にタ ンジ ェリ ン・ ドリ ーム の曲 を使 用し たパ フォ ーマ ンス を行 って いま した 今 ︒ まで お話 して きま した プロ グレ です が︑ 一九 七〇 年代 中頃 から 衰退 して いき ます
︒解 散・ 再結 成を 繰返 した り︑ ポッ プ路 線に 方向 転換 した り︑ メン バー チェ ンジ をし たり して
︑悲 しい こと に現 在で はバ ンド は形 骸化 して いま す︒ レデ ィオ ヘッ ドや
︑ア イス ラン ドの シガ ー・ ロス など
︑新 しい バン ドが 現れ てい る昨 今︑ それ らの バン ドの 曲を 聴き なが ら︑ その 中に プロ グレ の要 素を 見つ けて は︑
﹁ま だま だ︑ プロ グレ は終 わっ てな いぞ
!﹂ と︑ 一人 ほく そ笑 んだ りし てい ます
︒ 最後 に︑ 四月 の日 本公 演の 直前 に亡 くな られ たキ ース
・エ マー ソン 氏の ご冥 福を お祈 りい た しま す︒
︵国 際日 本文 化研 究セ ンタ ー管 理部 総務 課長
︶