37 丹羽英之 ほか:ノウルシ分布の経年変化と撹乱要素との関係 応用生態工学 23(1),37-46,2020
はじめに
不定期に発生する撹乱によって生息環境が空間的不均 質性をもつ氾濫原生態系では,多様な生物が生息してい る(Tockner and Stanford 2002).撹乱により他種との競 争が緩和されることで個体群を持続する生活史戦略をも つ植物は撹乱依存種と呼ばれる(Grime 2002).氾濫原 生態系は世界的に減少の著しい生態系で,氾濫原生態系に生育・生息する生物(撹乱依存種)の多くが絶滅の危 機にある(Tockner and Stanford 2002).氾濫原生態系の 減少要因としては,ダムなどによる流量制御や河道の改 修などによる水文の変化が大きいとされている(Merritt and Wohl 2002;Nilsson and Svedmark 2002;Shafroth et al. 2002;Tockner and Stanford 2002).日本の氾濫原生 態系も多くの絶滅危惧植物の生育地となっているが,多 くは河川改修により消失し,現在では河川沿いにわずか に残存している(Washitani 2001).さらに,近代的な治 水や利水による水文の変化,工事によるハビタットの分 2020 年 3 月 1 日受付,2020 年 5 月 11 日受理 *e-mail:
ORIGINAL PAPER
本梅川におけるノウルシ分布の経年変化と撹乱要素との関係
丹羽 英之
*・堀 正樹
京都先端科学大学バイオ環境学部 〒621
-8555 京都府亀岡市曽我部町南条大谷 1
-1
Hideyuki NIWA*, Masaki HORI: Patch dynamics of Euphorbia adenochloraand relationship between patch area of E. adenochlora and disturbance elements in the Honme River. Ecol. Civil Eng. 23(1), 37-46, 2020
1-1 621-8555
Abstract: In order to conserve disturbance-dependent species on the floodplain, it is neces-sary to make a conservation plan based on knowledge on the patch dynamics of species and their habitats. Approximately 6.3 km of Honme River, the secondary tributary of the Katsura River in the Yodogawa River system, was investigated. Aerial images obtained us-ing unmanned aerial vehicles from 2016 through 2019 were utilized. Interpretation of these images allowed us to document the distribution of , the submerging areas during flood events, and the area of vegetation loss caused by cutting the grass and open burning. Using the spatial analysis function of GIS, we analyzed the relationship be-tween and these disturbance elements, aggregated patch area of
. The total patch area of decreased from 285 m2 in 2016 to 236 m2
in 2018, but it increased to 298 m2 in 2019, exceeding the 2016 value. The increase in the
total patch size in 2019 is attributed to both development of new as well as expansion of existing patches. Based on the results of our 4-year survey, it can be stated that the popula-tion of in Honme River is sustainable. However, the data suggest that de-creases in patch area are dependent on the frequency and magnitude of flooding, a natural disturbance that was found to occur on a 3-year cycle, as well as the extent of artificial dis-turbances such as cutting the grass and open burning. In particular, cutting the grass was noted to occur on a yearly basis in early July. Suitable ranges for were de-termined from the analysis results of these three disturbance elements. Thus, this study clarifies the patch dynamics of over a 4-year period.
Key words: floodplain, disturbance dependent species, , flooding, UAV
38 応用生態工学 23(1),2020 以上から,本研究は,4 年間のノウルシのパッチ動態 および撹乱要素の生態学的な閾値を明らかにすることを 目的とした.
方 法
対象地 淀川水系桂川の 2 次支川である本梅川の約 6.3 km を 対象地とした(Fig. 1).本梅川が盆地を流下する区間で, 丹羽・谷口(2018)によりノウルシの分布が確認されて いる範囲を調査対象とした. UAV による空撮 2016 年から 2019 年の空撮画像を使用した.同じ飛行 経路による自動操縦で飛行高度 40 m,オーバーラップ 率 80 % で 空 撮 し た が, こ の 間, 使 用 し た UAV は, Phantom 3(DJI 社),Phantom 4 Pro(DJI 社),Mavic 2 Pro(DJI 社)の 3 機種であった.Phantom 3 の撮影画像 は 4000×3000 pixel で地上分解能は 1.72 cm/pixel であ った.Phantom 4 Pro の撮影画像は 5472×3648 pixel で 地上分解能は 1.05 cm/pixel であった.Mavic 2 Pro の撮 影画像は 5472×3648 pixel で地上分解能は 0.90 cm/pixel であった.空撮は晴れまたは曇りの日に行った. 撮影データの処理空撮画像はフォトグラメトリ・ソフトウェア(Photos-can Pro., Agisoft社)で処理し,オルソモザイク画像を 作成した.使用した機体の違いからオルソモザイク画像 の地上分解能のレンジは 1.00 cm/pixel から 1.93 cm/ pixelとなった.フォトグラメトリによる画像の処理で は, 撮 影 し た 画 像 の Exchangeable Image File Format (EXIF)に記録されている位置情報の誤差により作成し たオルソモザイク画像に位置のずれが生じる(丹羽 2016).そのため,対象地周辺に Ground Control Points (GCPs)を 13 地点設定し,GNSS 測量により計測した xyz座標を使いフォトグラメトリ・ソフトウェア上で位 置補正した. 空撮日および空撮画像の用途 2016 年から 2019 年の空撮日および空撮画像の用途を 示した(Table 1). 本梅川におけるノウルシの画像判読適期は 4 月中旬と されているため(丹羽・谷口 2018),その時期に空撮し た画像をノウルシの分布調査に用いた(Table 1 の Survey period for distributions).GIS でオルソモ ザイク画像を縮尺 1:60 で表示し,目視判読によりノウ ルシのポリゴンを作成した(Fig. 2:a).ノウルシはク 断化,外来種の侵入により氾濫原生態系が改変され,撹 乱依存種の多くが絶滅の危機にある(Washitani 2001). 氾濫原の撹乱依存種を保全するためには,撹乱依存種 の個体数の変化や生育環境などの知見をもとに保全計画 を立てる必要がある.特に,撹乱要素の生態学的な閾値, 長期的な個体数の動態は重要な知見となる(Tockner and Stanford 2002).しかし,日本では,氾濫原の撹乱 依存種の生育環境に関する知見が乏しい(萱場・片桐 2019).さらに,自然撹乱は減少しているが,伝統的な 農業や農村生活による人為撹乱により自然撹乱が代替さ れ氾濫原生態系が維持されていることがある(鷲谷・矢 原 1996).そのため,氾濫原の撹乱依存種を保全するた めには,自然撹乱に加えて人為撹乱が個体数の動態に及 ぼす影響を明らかにすることも重要である. ノウルシ は,河川敷,池や沼 のほとり,湿原などの明るく湿った場所に生える植物で, 肥大した根茎が発達し群生する(黒沢 2015).シュート が見られるのは 3 ~ 6 月で,この時期以外は休眠する春 植物である(Yamasaki 1999;黒沢 2015).ノウルシは 環境省レッドリスト 2020 では準絶滅危惧(NT)に京都 府レッドデータブック 2015 では準絶滅危惧種に指定さ れている.北海道,本州,四国,九州に分布し日本固有 種である. 氾濫原に生育するノウルシは,河川の出水による自然 撹乱が生育環境要素として重要な撹乱依存種である(梅 原・栗林 1991).また,火入れや草刈りなどの人為撹乱 に依存している場合もある(小幡 2007).先行研究では, 自然撹乱である出水の生態学的な閾値については,1 年 に数回の冠水(西野 2008),不定期の出水(梅原・栗林 1991)など定性的な記述にとどまっている.実際にノウ ルシの冠水を定量的に調査した例もなく,標高(1 m× 1 m の digital elevation model)からノウルシの冠水を推 定した例(小幡ほか 2012)にとどまっている.人為撹 乱である火入れや草刈りについても,定性的な影響の示 唆(小幡 2007)にとどまっている.これら自然撹乱や 人為撹乱と生育との関係を明らかにすることは,ノウル シのような撹乱依存種の保全にとって重要である. 自然撹乱要素である冠水範囲のように,撹乱要素を広 域で空間的に連続して観察することは困難であったが, 丹羽・谷口(2018)は,UAV(Unmanned Aerial Vehicles) を使うことでノウルシ分布と撹乱要素が簡便に調査でき ることを示した.しかし,ノウルシ分布と撹乱要素の関 係は解明されておらず,経年調査が必要だとしている (丹羽・谷口 2018).
39 丹羽英之 ほか:ノウルシ分布の経年変化と撹乱要素との関係 閾値(第三四分位数+1.5×四分位範囲)は -0.5 m から 0 m の間にあった.この集計結果と空撮画像の有無を勘 案し,水位観測所(小山)の水位が 0 m を超えるとノ ウルシが冠水する可能性がある比較的規模の大きい出水 と定義した.水位 0 m は低水敷が冠水する水位で,水 位 0.5 m が水防団待機水位である.水位が 0 m を超え る出水は 14 回あり(Table 2),その内 2 回は空撮画像 がなかったため 12 回分の冠水範囲のポリゴンを作成し た. 対象地では河川維持作業として河川の草刈りが実施さ れている.この草刈りは集落ごとに実施されているため, 場所により草刈り時期が異なる.草刈り範囲は,ノウル シのシュートが観察できる期間に 4 つの空撮期間を設定 し(Table 1 の Survey period for cutting the grass Ⅰ-Ⅳ), GISでオルソモザイク画像を縮尺 1:300 で表示し,前 ローナル植物であるため相互に 20 cm 以上離れているシ ュートのまとまりを 1 つのパッチと判別し 1 つのポリゴ ンとした.調査 2 年目以降は,不変,拡大,新出,減少 を区分しポリゴンの属性とした.減少は,河川工事によ り明らかに人為的に減少したパッチ(工事)とその他の 要因により減少したパッチ(その他)に区分した. 冠水範囲の判読は,出水後できるだけ早い時期に空撮 した画像を使用した(Table 1 の Survey period for flood area).GIS でオルソモザイク画像を縮尺 1:125 で表示 し,丹羽・谷口(2018)に従い,冠水により植生が倒伏 した範囲や漂流物が線状に堆積した線を目視判読するこ とで冠水範囲のポリゴンを作成した(Fig. 2:d).対象 地の最寄りの水位観測所(小山)は,本梅川が合流する 園部川に京都府が設置している.2016 年 4 月から 2019 年 4 月の水位データを集計した結果(Fig. 3),外れ値の
Fig.1 Study area. Gray shading is the Yodo river system
調査対象地
Fig. 1. Study area. Gray shading is the Yodo river system.. 灰色は淀川水系
40 応用生態工学 23(1),2020 1:300 で表示し,火入れの痕跡が見られる範囲を判読 しポリゴンを作成した(Fig. 2:e). データ解析 GIS の空間解析機能を用い,ノウルシのポリゴンと 3 つの撹乱要素のポリゴンの包含関係を解析した.ノウル シのポリゴンが撹乱要素のポリゴンに一部でも含まれる 場合を包含とした.冠水は 12 回の冠水それぞれに対す 回の空撮から新たに草刈りされた範囲を目視判読しポリ ゴンを作成した(Fig. 2:b, c).4 つの空撮期間は 5 月中 旬(Ⅰ),6 月上旬(Ⅱ),6 月下旬(Ⅲ),7 月上旬(Ⅳ) とした. 火入れ範囲は,2 月下旬から 3 月上旬(Ⅰ),4 月上旬 (Ⅱ)に空撮期間を設定し(Table 1 の Survey period for
open burning Ⅰ-Ⅱ),GIS でオルソモザイク画像を縮尺
Table 1 Taken date of aerial images obtained using UAV and survey purpose. ●:
Taken date of aerial images obtained using UAV, □: The survey period, top notes are
research purposes, □(chain line): Survey for flood area
UAV による空撮日と調査目的. ●:UAV による空撮日, □:調査期間で上部の注釈は
調査目的
, □(鎖線):出水による冠水範囲の調査.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 Survey period for open burning(Ⅰ) 2 2016 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2017 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ 2018 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ 2019 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 2016 ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2017 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2018 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2019 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
Survey period for open burning(Ⅱ) Survey period for E. adenochlora distributions
4 2016 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2017 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2018 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2019 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
Survey period for cutting the grass(Ⅰ)
5 2016 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2017 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2018 ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
Survey period for cutting the grass(Ⅱ) Survey period for cutting the grass(Ⅲ)
6 2016 ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2017 ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2018 ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
Survey period for cutting the grass(Ⅳ)
7 2016 ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2017 ・ ・ ● ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2018 ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 2016 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ 2017 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2018 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ 9 2016 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2017 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2018 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 10 2016 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2017 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2018 ● ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ Date Month Year
Table 1. Taken date of aerial images obtained using UAV and survey purpose. ● : Taken date of aerial images obtained using UAV, □ : The survey period, top notes are research purposes, □(chain line): Survey for flood area.
UAVによる空撮日と調査目的.●:UAV による空撮日,□:調査期間で上部の注釈は調査目的,□(鎖線): 出水による冠水範囲の調査.
41 丹羽英之 ほか:ノウルシ分布の経年変化と撹乱要素との関係
Table 2. Maximum water level and the observation date of the flood that was judged to be large based on the records of the water level observatories. In parentheses: Taken date of aerial images obtained using UAV.
水位観測所の記録から規模が大きいと判断した出水の最大水位とその観測日.( )内:UAV による空撮日.
Year Water level [m]
total 0.0-0.5 0.5-1.0 1.0-1.5
1.5-2016 16-May (23-May) 20-Sep (21-Sep) 29-Aug (30-Aug)
29-Sep (13-Oct)
number of times 3 0 1 0 4
2017 18-Apr (18-Apr) 23-Oct (23-Oct)
17-Sep (18-Sep) 29-Oct NA
number of times 3 0 0 1 4
2018 25-Apr (1-May) 4-Sep NA 24-Aug (27-Aug) 5-Jul (9-Jul) 8-Sep (16-Sep) 30-Sep (1-Oct)
number of times 1 2 2 1 6
Fig. 2. Examples of image interpretation. b-f: Red polygons are patches of , a: Patches of , b: Traces of cutting the grass in survey period (Ⅰ); not cutting the grass, c: Traces of cutting the grass in survey period (Ⅱ); cut between b and c, d: Traces of floods, e: Traces of open burning in survey period (Ⅰ), f: Reduction due to
riv-er modification
画像判読例.a:ノウルシのパッチ,b:調査時期(Ⅰ)の草刈り痕跡(草刈りされていない),c:調査時期(Ⅱ) の草刈り痕跡(b から c の間に草刈りされた),d:冠水痕跡,e:調査時期(Ⅰ)の火入れの痕跡,f:工事によ る減少,b-f:ポリゴン(赤線)はノウルシのパッチ.
Fig.2 Examples of image interpretation. b-f: Red polygons are patches of
E. adenochlora,
a: Patches of
E. adenochlora
, b: Traces of cutting the grass in survey period(Ⅰ); not
cutting the grass, c: Traces of cutting the grass in survey period(Ⅱ); cut between b
and c, d: Traces of floods, e: Traces of open burning in survey period(Ⅰ), f: Reduction
due to river modification
画像判読例
. a:ノウルシのパッチ, b:調査時期(Ⅰ)の草刈り痕跡(草刈りされていない),
c: 調査時期(Ⅱ)の草刈り痕跡(b から c の間に草刈りされた), d:冠水痕跡, e: 調査時期
(Ⅰ)の火入れの痕跡
, f:工事による減少, b-f:ポリゴン(赤線)はノウルシのパッチ.
42 応用生態工学 23(1),2020 ノウルシのパッチ面積と撹乱要素との関係 ノウルシと 3 つの撹乱要素の包含関係の解析結果から, 撹 乱 要 素 ご と に ノ ウ ル シ の パ ッ チ 面 積 を 集 計 し た (Fig. 5). 3 年間のうち 1 回以上冠水したノウルシは 86.9%であ った(Fig. 5).3 年間のうち 1 回冠水したノウルシの割 合が 27.8%で最も高かった. 草刈りは,時期Ⅰ~Ⅲでは草刈りが行われなかった範 囲(0 回)に含まれるノウルシの割合が最も高かった. 時期Ⅳは毎年草刈りされていることに相当する 3 回が 77.9%と最も割合が高く,他の時期と異なる傾向を示し た. 火入れは,時期Ⅰは 0 回が 77.7%で,回数が増える ほどノウルシが減少する傾向があった.時期Ⅱは 2 回が 51.1%で最大であった(Fig. 5). 時期Ⅰ~Ⅲには草刈りが行われず時期Ⅳに草刈りが行 われる範囲に含まれるノウルシが最も多かった.そのた め,草刈りは時期Ⅳの回数,火入れは時期ⅠとⅡの合計 回数,冠水回数の 3 つの撹乱要素の関係を図示した る包含の有無と包含回数,草刈りは 4 つの空撮期間ごと の包含回数,火入れは 2 つの空撮期間ごとの包含回数を ノウルシのポリゴンの属性に付与し面積を集計した.な お,ノウルシの分布は 2016 年 4 月から 2019 年 4 月の 4 年のデータ,3 つの撹乱要素は 2016 年 4 月から 2019 年 4 月までの 3 年間のデータを解析に用いた.
結 果
ノウルシの分布 ノウルシの合計パッチ面積は 2016 年の 285 m2から 2018 年の 237 m2に減少したが,2019 年は 298 m2に増 加し 2016 年を超えた(Fig. 4).新出パッチ面積と拡大 パッチ面積がともに最大であったために,2019 年の合 計パッチ面積が最大となった.2017 年に護岸工事によ り生育地が消失したことで 25 m2減少したほか(Fig. 2: f),毎年,減少するパッチがあり,2018 年の減少が最 大であった.護岸工事および水際における生育立地ごと の流出以外の減少要因は画像判読では特定できなかった. Fig. 3. Results of total water level data at the water levelobservatory (Koyama) from April 2016 to April 2019. 水位観測所(小山)の 2016 年 4 月から 2019 年 4 月 の水位データの集計結果.
Fig. 3 Results of total water level data at the water level observatory (Koyama) from
April 2016 to April 2019
水位観測所(小山)の
2016 年 4 月から 2019 年 4 月の水位データの集計結果
Fig. 4. Secular change in patch area of . ノウルシのパッチ面積の経年変化.
Fig.4 Secular change in patch area of E. adenochlora ノウルシのパッチ面積の経年変化
43 丹羽英之 ほか:ノウルシ分布の経年変化と撹乱要素との関係 布の変化を把握することができた.撮影に使用した機体 は変わったが,地上分解能が向上していたため目視判読 の精度に影響はなく,おおよそ 3 本以上のシュートから なるパッチが判別可能であった.本研究では,現地調査 による画像判読の精度検証は行っていないが,同じ方法 を用いた先行研究では,現地の目視調査のみで確認でき たパッチ数は 12.6%で小さいパッチが画像判読では判 別しにくいとされている(丹羽・谷口 2018).経年調査 でも同程度の画像判読精度が得られていると考えられる が,数本程度のシュートからなる新出パッチの判読精度 は低いと考えられる.新出パッチの動態は経年変化を分 析する際に重要な要素となることから,今後,撮影機器 の改良などによる,小さいパッチの判読精度の向上が必 要だと考えられる. ノウルシの合計パッチ面積は 2016 年から 2018 年にか けて減少したが,2019 年は増加し 2016 年を超えた(Fig. 4).新出パッチ面積と拡大パッチ面積がともに最大であ ったために,2019 年の合計パッチ面積が最大となった. (Fig. 6).火入れ 2 回(x=2),草刈り 3 回(y=3),冠 水 1 回(z=1)に分布するノウルシが最も多かった.火 入れは 2 回(x=2),草刈りは 3 回(y=3)にノウルシ の分布が集中していた.冠水は 1 回(z=1)から 4 回 (z=4)に分布するノウルシが多かった.ノウルシと 3 つの撹乱要素との解析結果から,ノウルシの生育に適し た撹乱条件として,3 年間で 1 回は冠水する(=3 年間 の最大水位の冠水範囲),時期Ⅳに毎年草刈りされる, 火入れは 4 年間で 2 回以下の条件を設定し,GIS ですべ ての条件が揃う範囲を抽出した.ノウルシの生育適地は 分布範囲の下流の一部に限られていた(Fig. 7).
考 察
ノウルシの分布の経年変化 本梅川におけるノウルシの画像判読適期は 4 月中旬と されている(丹羽・谷口 2018).本研究では,その時期 に空撮した画像を用いることで,4 年間のノウルシの分Fig. 5. Relationship between patch area of and number of disturbances (Period from 2016 to 2019). ノウルシのパッチ面積と撹乱回数との関係(期間:2016-2019 年). Number of times Pa tc h ar ea o f E . a de no ch lo ra [ ㎡ ] 13.1% 27.8% 14.5% 5.7%9.7%2.9%4.6%4.5%5.3%5.8%2.6%1.4%2.1% 0 100 200 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Floods 96.7% 2.7% 0.0% 0.6% 0 200 400 0 1 2 3
Cutting the grass in survey period(Ⅰ)
89.1% 7.2% 3.6% 0.0% 0 200 400 0 1 2 3
Cutting the grass in survey period(Ⅱ)
84.3% 6.3% 5.2% 4.2% 0 200 400 0 1 2 3
Cutting the grass in survey period(Ⅲ)
19.4% 2.6% 0.1% 77.9% 0 200 400 0 1 2 3
Cutting the grass in survey period(Ⅳ)
77.7% 9.6% 4.5% 7.5% 0.6% 0 200 400 0 1 2 3 4
Open burning in survey period(Ⅰ)
40.4% 8.4% 51.1% 0 200 400 0 1 2 3 4
44 応用生態工学 23(1),2020 2018 年は,水位観測所(小山)の水位が 0 m を超える 出水が 6 回,そのうち 0.5 m を超える出水が 5 回あり, 規模の大きい出水が最も多い年であった(Table 2). 2019 年に新出パッチ面積と拡大パッチ面積が最大とな った要因は,2018 年の冠水による撹乱の多さが,ノウ ルシの生育に正の影響を与えたためだと考えられる.4 年間の経年調査結果から,本梅川のノウルシ個体群は持 続していると考えられる.しかし,出水による撹乱の頻 度や規模によっては減少することが示唆された. 氾濫原や撹乱依存種を保全するためには,長期的な個 体数の動態を明らかにする必要がある(Tockner and Stanford 2002).本研究により 4 年間のノウルシのパッ チ動態が明らかになった.ただし,植生による被覆で見 えなくなっていると推定されるパッチがあったことから, 減少が必ずしも個体の消失を表していない可能性がある. 今後,植生による被覆の影響を最小化する方法を検討し, 長期的なノウルシのパッチ動態を明らかにしていく必要 がある. ノウルシのパッチ面積と撹乱要素との関係 丹羽・谷口(2018)が示した方法により,ノウルシの Fig. 6. Relationship between patch area of and
distur-bance elements. The radius of the sphere is 1/100 times the area [m2]
, x: Number of times of open buming, y: Number of times of cutting the grass in survey period Ⅳ , z: Number of times of floods.
ノウルシのパッチ面積と撹乱要素との関係.球体の半径は面積 [m2]の 1/100 倍,x:火入れ回数,y:時期Ⅳの草刈り回数,z:
冠水回数.
Fig.6 Relationship between patch area of
E. adenochlora
and disturbance elements.
The radius of the sphere is 1/100 times the area [m
2], x: Number of times of open
buming, y: Number of times of cutting the grass in survey period Ⅳ, z: Number of
times of floods
ノウルシのパッチ面積と撹乱要素との関係
. 球体の半径は面積[m
2]の 1/100 倍, x: 火入れ
回数
, y: 時期Ⅳの草刈り回数, z: 冠水回数
Fig. 7. Suitable ranges of . ノウルシの生育適地.
Fig.7 Suitable ranges of E. adenochlora
ノウルシの生育適地
45 丹羽英之 ほか:ノウルシ分布の経年変化と撹乱要素との関係 すなわち,3 年間で 1 回の冠水,時期Ⅳ(7 月上旬)に おける毎年の草刈りが閾値だと考えられた.本梅川のノ ウルシは人為撹乱がなくなると減少すると考えられるが, 人為撹乱が適切な条件でないと生育に負の影響を与える と考えられる.農地や河川の伝統的な管理は,生活や農 業の近代化により失われてきており(Washitani 2001), 地域に対し適切な条件を提示しながら,草刈りや火入れ が継続されるようマネジメントしていく必要がある.
摘 要
氾濫原の撹乱依存種を保全するためには,撹乱依存種 の個体数の変化や生育環境などの知見をもとに保全計画 を立てる必要がある.本研究は,4 年間のノウルシのパ ッチ動態および撹乱要素の生態学的な閾値を明らかにす ることを目的とした.淀川水系の桂川の 2 次支川である 本梅川の約 6.3 km を対象地とした.2016 年から 2019 年の UAV による空撮画像を使用した.画像判読により, ノウルシの分布,冠水範囲,草刈り範囲,火入れ範囲の 経年データを作成した.GIS の空間解析機能を用い,ノ ウルシと 3 つの撹乱要素の包含関係を解析し,ノウルシ のパッチの面積を集計した.ノウルシの合計パッチ面積 は 2016 年の 285 m2から 2018 年の 236 m2に減少したが, 2019 年は 298 m2に増加し 2016 年を超えた.新出パッ チ面積と拡大パッチ面積がともに最大であったために, 2019 年の合計パッチ面積が最大となった.4 年間の経年 調査結果から,本梅川のノウルシ個体群は持続している と考えられる.しかし,出水の頻度や規模によっては減 少することが示唆された.自然撹乱である冠水に関して は,3 年間で 1 回は冠水する立地,人為撹乱である草刈 りに関しては,時期Ⅳ(7 月上旬)に毎年草刈りされる 立地が重要なことが明らかになった.ノウルシと 3 つの 撹乱要素との解析結果から,ノウルシの生育適地を抽出 することができた. 引用文献Goodson J. M., Gurnell A. M., Angold P. G. & Morrissey I. P. (2001) Riparian seed banks: structure, process and
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46 応用生態工学 23(1),2020
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